(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】発光部品、光計測装置、画像形成装置および発光部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/028 20060101AFI20250226BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20250226BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20250226BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20250226BHJP
H01S 5/42 20060101ALI20250226BHJP
H10H 20/84 20250101ALI20250226BHJP
H10H 20/824 20250101ALI20250226BHJP
H10H 20/813 20250101ALI20250226BHJP
H10H 29/14 20250101ALI20250226BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01S5/028
H01S5/026 650
H01S5/042 630
H01S5/183
H01S5/42
H10H20/84
H10H20/824
H10H20/813
H10H29/14
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2021074496
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】村田 道昭
(72)【発明者】
【氏名】早川 純一朗
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴史
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212742(JP,A)
【文献】特開2018-004867(JP,A)
【文献】特開平09-092885(JP,A)
【文献】特開平01-238962(JP,A)
【文献】特開2004-356191(JP,A)
【文献】特開2020-120018(JP,A)
【文献】特開2019-057647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0117103(US,A1)
【文献】特開2003-101125(JP,A)
【文献】特開2014-086558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H10H 20/00 - 20/858
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、当該基板の面と交差する方向に光を出射する発光素子と、
を備え、
前記発光素子は、
発光を行う発光部と、当該発光部上に設けられるサイリスタと、当該サイリスタに形成され
当該発光部からの光を
その底面に当たる出射部から出射する開口部とを有し、当該開口部の内面が、光の透過を抑制する光遮断体で覆われる発光部品。
【請求項2】
前記光遮断体は、金属からなり、前記サイリスタと当該光遮断体との間に絶縁部を備える請求項1に記載の発光部品。
【請求項3】
前記金属は、前記サイリスタに電気的に接続する電極から前記開口部の内面に延びる請求項2に記載の発光部品。
【請求項4】
前記金属は、前記サイリスタに電気的に接続する電流供給配線から前記開口部の内面に延びる請求項2に記載の発光部品。
【請求項5】
前記光遮断体は、絶縁性体からなる請求項1に記載の発光部品。
【請求項6】
前記発光素子は、電極をさらに備え、
前記光遮断体は、前記電極をさらに覆う請求項1に記載の発光部品。
【請求項7】
前記光遮断体は、金属であり、絶縁部を介して電極を覆う請求項1に記載の発光部品。
【請求項8】
前記光遮断体は、光を吸収する光吸収体である請求項1に記載の発光部品。
【請求項9】
前記サイリスタを構成する層の少なくとも一層は、出射する前記光より長波長の光を吸収する請求項8に記載の発光部品。
【請求項10】
前記光遮断体は、前記開口部の内面の一部を覆う請求項1に記載の発光部品。
【請求項11】
前記光遮断体は、光を反射する光反射体である請求項1に記載の発光部品。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の発光部品と、
前記発光部品から光が照射された対象物から、反射光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した光に関する情報を処理して、前記発光部品から対象物までの距離、または当該対象物の形状を計測する処理部と、
を備える光計測装置。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の発光部品と、
画像信号の入力を受け付け、前記発光部品から出射される光によって二次元画像が形成されるように、当該画像信号に基づき当該発光部品を駆動する駆動制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項14】
基板上に、
発光を行う発光部と、当該発光部上に設けられるサイリスタ
とを形成する層形成工程と、
前記層形成工程により形成された前記サイリスタに、
前記発光部からの光をその底面に当たる出射部から前記基板の面と交差する方向
に出射する開口部を形成する開口部形成工程と、
前記サイリスタ上および前記開口部形成工程により形成された前記開口部の内面を光の透過を抑制する光遮断体で覆う被覆工程と、
を含む発光部品の製造方法。
【請求項15】
前記光遮断体は、金属であり、前記被覆工程で、電極として前記開口部の内面から前記サイリスタ上に延びるように形成される請求項14に記載の発光部品の製造方法。
【請求項16】
前記光遮断体は、金属であり、前記被覆工程で、前記サイリスタに電気的に接続する電流供給線として前記開口部の内面から前記サイリスタ上に延びるように形成される請求項14に記載の発光部品の製造方法。
【請求項17】
基板上に、
発光を行う発光部と、当該発光部上に設けられるサイリスタ
とを形成する層形成工程と、
前記層形成工程により形成された前記サイリスタに電極を形成する電極形成工程と、
前記電極形成工程の後に、
前記発光部からの光をその底面に当たる出射部から前記基板の面と交差する方向
に出射する開口部を形成する開口部形成工程と、
前記サイリスタ上および前記開口部形成工程により形成された前記開口部の内面を光の透過を抑制する光遮断体で覆う被覆工程と、
を含む発光部品の製造方法。
【請求項18】
前記光遮断体は、金属であり、前記被覆工程で、前記電極と絶縁部を介して前記電極を覆うように形成される請求項17に記載の発光部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光部品、光計測装置、画像形成装置、発光部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、pnpnpn6層半導体構造の発光素子を構成し、両端のp型第1層とn型第6層、および中央のp型第3層およびn型第4層に電極を設け、pn層に発光ダイオード機能を担わせ、pnpn4層にサイリスタ機能を担わせることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、しきい電圧もしくはしきい電流が外部から光によって制御可能な露光素子多数個を、一次元、二次元、もしくは三次元的に配列し、各発光素子から発光する先の少なくとも一部が、各発光素子近傍の他の発光素子に入射するように構成し、各発光素子は、外部から電圧もしくは電流を印加させるクロックラインを接続した発光素子アレイが記載されている。
【0004】
特許文献3には、基板と基板上にアレイ状に配設された面発光型半導体レーザと基板上に配設され、前記面発光型半導体レーザの発光を選択的にオン・オフさせるスイッチ素子としてのサイリスタとを備える自己走査型の光源ヘッド、及びそれを利用した画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-308385号公報
【文献】特開平1-238962号公報
【文献】特開2009-286048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3Dセンシングなどでは、発光素子を配置した発光部が採用されている。この個々の発光素子において、オン状態にさせることにより、発光素子を点灯状態又は消灯状態に設定して発光させる発光装置が存在する。
ところが、発光素子になんらかの光、例えば外光が入射した場合、消灯状態であるにも拘わらず点灯状態となる誤動作が生じることがある。そのため、なんらかの光が入射した場合でもこのような誤操作が生じにくいことが望ましい。
本発明は、発光素子になんらかの光が入射した場合でも誤動作が生じにくい発光部品、光計測装置、画像形成装置および発光部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板と、前記基板上に設けられ、当該基板の面と交差する方向に光を出射する発光素子と、を備え、前記発光素子は、発光を行う発光部と、当該発光部上に設けられるサイリスタと、当該サイリスタに形成され当該発光部からの光をその底面に当たる出射部から出射する開口部とを有し、当該開口部の内面が、光の透過を抑制する光遮断体で覆われる発光部品である。
請求項2に記載の発明は、前記光遮断体は、金属からなり、前記サイリスタと当該光遮断体との間に絶縁部を備える請求項1に記載の発光部品である。
請求項3に記載の発明は、前記金属は、前記サイリスタに電気的に接続する電極から前記開口部の内面に延びる請求項2に記載の発光部品である。
請求項4に記載の発明は、前記金属は、前記サイリスタに電気的に接続する電流供給配線から前記開口部の内面に延びる請求項2に記載の発光部品である。
請求項5に記載の発明は、前記光遮断体は、絶縁性体からなる請求項1に記載の発光部品である。
請求項6に記載の発明は、前記発光素子は、電極をさらに備え、前記光遮断体は、前記電極をさらに覆う請求項1に記載の発光部品である。
請求項7に記載の発明は、前記光遮断体は、金属であり、絶縁部を介して電極を覆う請求項1に記載の発光部品である。
請求項8に記載の発明は、前記光遮断体は、光を吸収する光吸収体である請求項1に記載の発光部品である。
請求項9に記載の発明は、前記サイリスタを構成する層の少なくとも一層は、出射する前記光より長波長の光を吸収する請求項8に記載の発光部品である。
請求項10に記載の発明は、前記光遮断体は、前記開口部の内面の一部を覆う請求項1に記載の発光部品である。
請求項11に記載の発明は、前記光遮断体は、光を反射する光反射体である請求項1に記載の発光部品である。
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れか1項に記載の発光部品と、前記発光部品から光が照射された対象物から、反射光を受光する受光部と、前記受光部が受光した光に関する情報を処理して、前記発光部品から対象物までの距離、または当該対象物の形状を計測する処理部と、を備える光計測装置である。
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至11の何れか1項に記載の発光部品と、画像信号の入力を受け付け、前記発光部品から出射される光によって二次元画像が形成されるように、当該画像信号に基づき当該発光部品を駆動する駆動制御部と、を備える画像形成装置である。
請求項14に記載の発明は、基板上に、発光を行う発光部と、当該発光部上に設けられるサイリスタとを形成する層形成工程と、前記層形成工程により形成された前記サイリスタに、前記発光部からの光をその底面に当たる出射部から前記基板の面と交差する方向に出射する開口部を形成する開口部形成工程と、前記サイリスタ上および前記開口部形成工程により形成された前記開口部の内面を光の透過を抑制する光遮断体で覆う被覆工程と、を含む発光部品の製造方法である。
請求項15に記載の発明は、前記光遮断体は、金属であり、前記被覆工程で、電極として前記開口部の内面から前記サイリスタ上に延びるように形成される請求項14に記載の発光部品の製造方法である。
請求項16に記載の発明は、前記光遮断体は、金属であり、前記被覆工程で、前記サイリスタに電気的に接続する電流供給線として前記開口部の内面から前記サイリスタ上に延びるように形成される請求項14に記載の発光部品の製造方法である。
請求項17に記載の発明は、基板上に、発光を行う発光部と、当該発光部上に設けられるサイリスタとを形成する層形成工程と、前記層形成工程により形成された前記サイリスタに電極を形成する電極形成工程と、前記電極形成工程の後に、前記発光部からの光をその底面に当たる出射部から前記基板の面と交差する方向に出射する開口部を形成する開口部形成工程と、前記サイリスタ上および前記開口部形成工程により形成された前記開口部の内面を光の透過を抑制する光遮断体で覆う被覆工程と、を含む発光部品の製造方法である。
請求項18に記載の発明は、前記光遮断体は、金属であり、前記被覆工程で、前記電極と絶縁部を介して前記電極を覆うように形成される請求項17に記載の発光部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、発光素子になんらかの光が入射した場合でも誤動作が生じにくい。
請求項2に記載の発明によれば、光遮断性に優れる材料により光遮断体を形成できる。
請求項3に記載の発明によれば、電極を形成する際に、光遮断体も形成できる。
請求項4に記載の発明によれば、電流供給線を形成する際に、光遮断体も形成できる。
請求項5に記載の発明によれば、層構成がより簡単になる。
請求項6に記載の発明によれば、電極とは別に光遮断体を形成できる。
請求項7に記載の発明によれば、光遮断性に優れる材料により光遮断体を形成できるとともに、電極と絶縁することができる。
請求項8に記載の発明によれば、光吸収により光の透過を抑制することができる。
請求項9に記載の発明によれば、サイリスタの層の中に光を吸収する層があっても誤動作が生じにくくなる。
請求項10に記載の発明によれば、開口部の内面を全て覆わなくても誤動作が生じにくくなる。
請求項11に記載の発明によれば、光反射により光の透過を抑制することができる。
請求項12に記載の発明によれば、発光素子を二次元状に並列点灯させた光計測装置が得られる。
請求項13に記載の発明によれば、発光素子を二次元状に並列点灯させた画像形成装置が得られる。
請求項14に記載の発明によれば、電極や電球供給線を光遮断体として利用できる。
請求項15に記載の発明によれば、電極を形成する際に、光遮断体も形成できる。
請求項16に記載の発明によれば、電流供給線を形成する際に、光遮断体も形成できる。
請求項17に記載の発明によれば、表面状態が綺麗なサイリスタ上に電極を形成できる。
請求項18に記載の発明によれば、光遮断性に優れる材料により光遮断体を形成できるとともに、電極と絶縁することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】発光部の平面レイアウトの一例を示す図である。
【
図3】(a)、(b)は、駆動サイリスタ/レーザダイオードの断面図である。
【
図4】駆動サイリスタ/レーザダイオードの拡大平面図である。
【
図5】設定サイリスタ、接続ダイオードを含むアイランドと、転送サイリスタ、結合ダイオード、接続ダイオードを含むアイランドの断面図である。
【
図6】(a)~(b)は、開口部の内面を上側から見たときに、出射面保護膜として、円筒状の内面を覆う領域がより小さい場合を示している。
【
図7】(a)~(b)は、出射面保護膜が、設定サイリスタのゲート層を覆う場合を示している。
【
図8】(a)~(b)は、出射面保護膜が、設定サイリスタのnカソード層を覆う場合を示している。
【
図9】(a)~(b)は、出射面保護膜の他の形態の第2の例を示した図である。
【
図10】(a)~(b)は、出射面保護膜の他の形態の第3の例を示した図である。
【
図11】(a)~(b)は、出射面保護膜の他の形態の第4の例を示した図である。
【
図12】(a)~(c)は、レーザダイオードと駆動サイリスタとの積層構造をさらに説明する図である。
【
図13】(a)~(b)は、発光部の製造方法において、各工程の順について示したフローチャートである。
【
図14】発光装置において、レーザダイオードの点灯/非点灯を制御する例を示す図である。
【
図15】発光装置を駆動するためのタイミングチャートである。
【
図16】発光装置を用いた光計測装置を説明する図である。
【
図17】発光装置を用いた画像形成装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
[発光装置10]
図1は、発光装置10の等価回路図である。
発光装置10は、発光部100と制御部110とを備える。
発光部100は、発光素子の一例としてレーザ光を出射するレーザダイオードLDを備える。そして、発光部100は、次に説明するように自己走査型発光素子アレイ(SLED:Self-Scanning Light Emitting Device)として構成されている。なお、レーザダイオードLDは、例えば垂直共振器面発光レーザVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。
【0012】
図1においては、発光部100は、発光部品の一例であり、4×4のマトリクス(二次元状)に配列された16個のレーザダイオードLDを備える。なお、二次元状とは、次元の数が二つあることをいい、例えば次に説明するx方向とy方向とに広がっていることをいう。ここで、
図1の紙面において、右から左へ向かう方向をx方向、下から上に向かう方向をy方向と定義する。x方向とy方向とは直行する。すると、x方向にレーザダイオードLD11、LD21、LD31、LD41が配列された発光素子部101、レーザダイオードLD12、LD22、LD32、LD42がx方向に配列された発光素子部102、レーザダイオードLD13、LD23、LD33、LD43がx方向に配列された発光素子部103、レーザダイオードLD14、LD24、LD34、LD44がx方向に配列された発光素子部104を備える。発光素子部101~104は、基板80(後述する
図2参照)上に設けられ、基板80の面と交差する方向に光を出射する発光素子として機能する。ここで、「面」は、基板80の表面や裏面である。
【0013】
また、発光素子部101~104に含まれる各1個のレーザダイオードLDが、y方向に配列されている。つまり、レーザダイオードLD11、LD12、LD13、LD14がy方向に配列され、レーザダイオードLD21、LD22、LD23、LD24がy方向に配列され、レーザダイオードLD31、LD32、LD33、LD34がy方向に配列され、レーザダイオードLD41、LD42、LD43、LD44がy方向に配列されている。
このように、レーザダイオードLDをそれぞれ区別する場合は、「LD11」のように二桁の数字を付す。なお、x方向の数字の代わりに「i」を、y方向の数字の代わりに「j」を付して、「LDij」と表記する場合もある。また、他の場合も同様であるが、x方向のみに数字を付す場合、個々の数字を付す代わりに「i」を、y方向のみに数字を付す場合、個々の数字を付す代わりに「j」を付す場合がある。ここでは、i、jは1~4の整数である。
【0014】
そして、16個の駆動サイリスタDTを備える。各駆動サイリスタDTは、各レーザダイオードLDと接続されている。ここでは、各駆動サイリスタDTは、各レーザダイオードLDと直列接続されている。つまり、駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDとが組を構成する。よって、駆動サイリスタDTには、接続されたレーザダイオードLDと同じ数字を付して、それぞれを区別する。
【0015】
本明細書では、「~」は、番号によってそれぞれが区別された複数の構成要素を示すもので、「~」の前後に記載されたもの及びその間の番号のものを含むことを意味する。例えば、発光素子部101~104は、発光素子部101から番号順に発光素子部104までを含む。
【0016】
そして、発光部100は、4個の転送サイリスタT、4個の設定サイリスタS、4個の結合ダイオードD、それぞれ4個の接続ダイオードDa、Db、4個の抵抗Rgを備える転送素子部105を備える。さらに、転送素子部105は、スタートダイオードSD、電流制限抵抗R1、R2を備える。
【0017】
転送サイリスタTは、転送サイリスタT1、T2、T3、T4の順にx方向に配列されている。そして、結合ダイオードDは、結合ダイオードD1、D2、D3、D4がx方向に配列されている。なお、結合ダイオードD1、D2、D3は、転送サイリスタT1、T2、T3、T4の各間に設けられ、結合ダイオードD4は、転送サイリスタT4の結合ダイオードD3が設けられた側と反対側に設けられている。
設定サイリスタSは、設定サイリスタS1、S2、S3、S4の順にx方向に配列されている。
接続ダイオードDa、Db、抵抗Rgも、同様にx方向に配列されている。
転送サイリスタT、設定サイリスタS、結合ダイオードD、接続ダイオードDa、Db、抵抗Rgは、x方向に配列されているので、一桁の数字が付される。なお、個々の数字を付す代わりに「i」を付す場合がある。
【0018】
レーザダイオードLD、結合ダイオードD、接続ダイオードDa、Dbは、アノードとカソードとを備える2端子素子である。駆動サイリスタDT、転送サイリスタT、設定サイリスタSは、アノード、カソード、ゲートを備える3端子素子である。なお、駆動サイリスタDTij(i,j=1~4)のゲートをゲートGdij、転送サイリスタTi(i=1~4)のゲートをゲートGti、設定サイリスタSi(i=1~4)のゲートを、ゲートGsiと区別する。
ここで、駆動サイリスタDTは、駆動素子の一例であり、転送サイリスタTは、転送素子の一例であり、設定サイリスタSは、設定素子の一例である。
【0019】
次に、上記の各素子(レーザダイオードLD、駆動サイリスタDT、転送サイリスタTなど)の接続関係を説明する。
前述したように、レーザダイオードLDij(i,j=1~4)と駆動サイリスタDTijとは直列接続されている。つまり、レーザダイオードLDijは、アノードが基準電位Vsub(接地電位(GND)など)に接続され、カソードが駆動サイリスタDTijのアノードに接続されている。
【0020】
基準電位Vsubは、後述するように、発光部100を構成する基板80の裏面に設けられた裏面電極92(後述する
図3参照)を介して供給される。
【0021】
そして、発光素子部101に含まれる駆動サイリスタDTi1のカソードが、点灯信号線74-1に接続されている。なお、点灯信号線74-1は、φI1端子に接続され、制御部110から点灯信号φI1が供給される。
発光素子部102に含まれる駆動サイリスタDTi2のカソードが、点灯信号線74-2に接続されている。なお、点灯信号線74-2は、φI2端子に接続され、制御部110から点灯信号φI2が供給される。
また、発光素子部103に含まれる駆動サイリスタDTi3のカソードが、点灯信号線74-3に接続されている。なお、点灯信号線74-3は、φI3端子に接続され、制御部110から点灯信号φI3が供給される。
同様に、発光素子部104に含まれる駆動サイリスタDTi4のカソードが、点灯信号線74-4に接続されている。なお、点灯信号線74-4は、φI4端子に接続され、制御部110から点灯信号φI4が供給される。
つまり、駆動サイリスタDTijのカソードは、点灯信号線74-jに接続され、点灯信号線74-jは、φIj端子に接続されている。そして、φIj端子には、制御部110から点灯信号φIjが供給されることになる。
【0022】
転送素子部105において、転送サイリスタTiは、アノードが基準電位Vsubに接続されている。奇数番号の転送サイリスタT1、T3は、カソードが転送信号線72に接続されている。転送信号線72は、電流制限抵抗R1を介してφ1端子に接続され、制御部110から転送信号φ1が供給される。偶数番号の転送サイリスタT2、T4は、カソードが転送信号線73に接続されている。転送信号線73は、電流制限抵抗R2を介してφ2端子に接続され、制御部110から転送信号φ2が供給される。
【0023】
結合ダイオードDiは、直列接続されている。つまり、一つの結合ダイオードDのカソードがx方向に隣接する結合ダイオードDのアノードに接続されている。スタートダイオードSDは、アノードが転送信号線73に接続され、カソードが結合ダイオードD1のアノードに接続されている。
そして、スタートダイオードSDのカソードと結合ダイオードD1のアノードとが、転送サイリスタT1のゲートGt1に接続されている。結合ダイオードD1のカソードと結合ダイオードD2のアノードとが、転送サイリスタT2のゲートGt2に接続されている。結合ダイオードD2のカソードと結合ダイオードD3のアノードとが、転送サイリスタT3のゲートGt3に接続されている。そして、結合ダイオードD3のカソードと結合ダイオードD4のアノードとの接続点が、転送サイリスタT4のゲートGt4に接続されている。
【0024】
また、設定サイリスタSi(i=1~4)は、アノードが基準電位Vsubに接続され、カソードが設定信号線75に接続されている。設定信号線75は、φs端子に接続され、制御部110から設定信号φsが供給される。
【0025】
転送サイリスタTiのゲートGtiは、抵抗Rgを介して、電源線71に接続されている。電源線71は、Vgk端子に接続され、制御部110から電源電位Vgk(一例として、-3.3V)が供給される。
転送サイリスタTiのゲートGtiは、接続ダイオードDaiを介して、設定サイリスタSiのゲートに接続されている。そして、設定サイリスタSiのゲートGsiは、接続ダイオードDbiを介して、駆動サイリスタDTijのゲートGdijに接続されている。
つまり、それぞれの接続サイリスタSには、駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDとの組が複数(ここでは、4組)接続されている。
【0026】
制御部110の構成を説明する。
制御部110は、点灯信号φIjなどの信号を生成して、信号を発光部100に供給する。発光部100は、供給された信号によって動作する。制御部110は、電子回路で構成されている。例えば、制御部110は、集積回路(IC)として構成されている。
制御部110は、転送信号生成部120、設定信号生成部130、点灯信号生成部140、基準電位生成部160及び電源電位生成部170を備える。
【0027】
転送信号生成部120は、転送信号φ1、φ2を生成し、転送信号φ1を発光部100のφ1端子に、転送信号φ2をφ2端子に供給する。
設定信号生成部130は、設定信号φsを生成し、発光部100のφs端子に供給する。
点灯信号生成部140は、点灯信号φIjを生成し、発光部100のφIj端子に供給する。
【0028】
基準電位生成部160は、基準電位Vsubを生成し、発光部100のVsub端子に供給する。電源電位生成部170は、電源電位Vgkを生成し、発光部100のVgk端子に供給する。
【0029】
転送信号生成部120、設定信号生成部130、点灯信号生成部140、基準電位生成部160及び電源電位生成部170の生成する信号については、後述する。
【0030】
以上においては、発光部100は、レーザダイオードLDが4×4の二次元的に配置されているとしたが、4×4に限定されない。i×jにおけるi及びjは、4以外の複数の数値であってもよい。そして、転送サイリスタT、設定サイリスタSの数は、iであればよい。なお、転送サイリスタT、設定サイリスタSの数は、iを超える数であってもよいし、iより少ない数であってもよい。
【0031】
(発光部100のレイアウト)
発光部100は、レーザ光を出射しうる半導体材料で構成される。例えば、発光部100は、GaAs系の化合物半導体で構成されている。つまり、後述する断面図(後述する
図3(a)、(b)、
図5参照)に示すように、p型のGaAsで構成された基板80上に、GaAs系の化合物半導体層が複数積層された半導体層積層体にて構成されている。そして、基板80は、基板80の裏面に形成された裏面電極92に基準電位Vsubが供給されて、基準電位Vsubに設定されている。まず、平面レイアウトを説明する。
【0032】
図2は、発光部100の平面レイアウトの一例を示す図である。
ここでは、
図2に示されたアイランド301~307により、発光部100の平面レイアウトを説明する。なお、アイランドとは、半導体層積層体がメサエッチングにより分離された構成をいう。
【0033】
アイランド301は、アイランド301-j(j=1~4)を備え、各々には、レーザダイオードLD1jと駆動サイリスタDT1jとが設けられている。なお、レーザダイオードLD1jと駆動サイリスタDT1jとは、積層されることで直列接続されている。よって、
図2では、レーザダイオードLD1jと駆動サイリスタDT1jとを、DT/LD1jと表記する。なお、アイランド301(アイランド301-j)と同様な複数のアイランドがアイランド301(アイランド301-j)とx方向に並列して設けられ、DT/LDij(i=2~4、j=1~4)が設けられている。
【0034】
アイランド302には、接続ダイオードDb1と設定サイリスタS1とが設けられている。なお、アイランド302と同様な複数のアイランドがアイランド302のx方向において並列して設けられ、接続ダイオードDbi(i=2~4)と設定サイリスタSi(i=2~4)が設けられている。
アイランド303は、接続ダイオードDa1と転送サイリスタT1と結合ダイオードD1を備える。なお、アイランド303と同様な複数のアイランドがアイランド303のx方向において並列して設けられ、接続ダイオードDai(i=2~4)と転送サイリスタTi(i=2~4)と結合ダイオードDi(i=2~4)が設けられている。
【0035】
アイランド304には、抵抗Rg1が設けられている。なお、アイランド304と同様な複数のアイランドがアイランド304のx方向において並列して設けられ、抵抗Rgi(i=2~4)が設けられている。
【0036】
アイランド305には、スタートダイオードSDが設けられている。アイランド306には、電流制限抵抗R1が、アイランド307には、電流制限抵抗R2が設けられている。
【0037】
次に、発光部100の断面構造を説明する。
図3は、駆動サイリスタDT/レーザダイオードLDの断面図である。
図3(a)は、
図2におけるIIIA-IIIA線での断面図、
図3(b)は、
図2におけるIIIB-IIIB線での断面図である。
図3(a)に示すように、p型のGaAsの基板80上に、レーザダイオードLDを構成するp型のアノード層(以下では、pアノード層と表記する。以下同様である。)81、発光を行う発光層82、n型のカソード層(nカソード層)83が積層されている。そして、レーザダイオードLDを構成するnカソード層83上に、トンネル接合層84が積層されている。そして、トンネル接合層84上に、駆動サイリスタDTを構成するp型のアノード層(pアノード層)85、n型のゲート層(nゲート層)86、p型のゲート層(pゲート層)87、n型のカソード層(nカソード層)88が設けられている。そして、これらの半導体層積層体がメサエッチングにより分離されている。
【0038】
また、レーザダイオードLDの中心部は、nカソード層88、pゲート層87、nゲート層86、pアノード層85及びトンネル接合層84がエッチングにより除去され、光を出射する開口部δが形成されている。これにより、レーザダイオードLDのnカソード層83が露出されている。この露出したnカソード層83の部分が、レーザダイオードLDの光の出射口γである。
【0039】
つまり、この半導体層積層体は、レーザダイオードLDの光の出射口γを取り囲み設定サイリスタSが構成される。これは、開口部δの周囲に、サイリスタ構造を有するpアノード層85、nゲート層86、pゲート層87、nカソード層88が残されている、と言うこともできる。
【0040】
そして、レーザダイオードLDのpアノード層81には、電流狭窄層が含まれている。つまり、電流狭窄層とは、AlAsのように、Alの酸化によりAl2O3が形成されることで、電気抵抗が高くなって、電流が流れにくくなる層をいう。すなわち、メサエッチングにより露出した部分(周辺部)から酸化が進むため、中央部は酸化されないようにすることができる。そこで、中央部に電流が流れやすい領域(電流通過領域α)を残し、周辺部を酸化により電流が流れにくい領域(電流阻止領域β)としている。メサエッチングに起因した欠陥が多い周辺部は、非発光再結合が起こりやすい。電流阻止領域βを設けることで、非発光再結合に消費される電力が抑制されるので、低消費電力化及び光取り出し効率の向上が図れる。なお、光取り出し効率とは、電力当たりに取り出すことができる光量である。
【0041】
nカソード層88上には、nカソード層88とオーミック接触が形成しやすい金属材料で構成されたnオーミック電極321(nオーミック電極321-1、321-2、321-3、321-4)が設けられている。なお、nオーミック電極321は、矢印で示すレーザ光が出射する出射口γを取り囲み、馬蹄形に設けられている(後述する
図4参照)。そして、nオーミック電極321を除いて、絶縁層91が設けられている。そして、絶縁層91上に、nオーミック電極321を接続するように点灯信号線74(点灯信号線74-1、74-2、74-3、74-4)が設けられている。なお、駆動サイリスタDT11/レーザダイオードLD11のnオーミック電極321-1には、点灯信号線74-1、駆動サイリスタDT12/レーザダイオードLD12のnオーミック電極321-2には、点灯信号線74-2、駆動サイリスタDT13/レーザダイオードLD13のnオーミック電極321-3には、点灯信号線74-3、駆動サイリスタDT14/レーザダイオードLD14のnオーミック電極321-4には、点灯信号線74-4が接続されている。
【0042】
また、開口部δの内面は、出射面保護膜351-1、351-2、351-3、351-4(以下、単に、「出射面保護膜351」と言うことがある。)で覆われる。出射面保護膜351は、光の透過を抑制する光遮断体の一例である。「光遮断体」は、光を遮断し光の透過を抑制する機能を有する物質である。なおこここで、「内面」とは、開口部δの側面である。この場合、内面は、円筒形状を有する。
また、出射面保護膜351は、開口部δの内面を覆うだけで足り、開口部δの底面に設ける必要はない。開口部δの底面に出射面保護膜351を設けると、出射する光が吸収されてしまうことがある。
図3の例でも、開口部δの底面には、出射面保護膜351は設けられていない。
【0043】
nオーミック電極321-1、321-2、321-3、321-4は、それぞれ、コンタクトビア321a-1、321a-2、321a-3、321a-4(以下、単に「コンタクトビア321a」と言うことがある。)と、コンタクトメタル321b-1、321b-2、321b-3、321b-4(以下、単に「コンタクトメタル321b」と言うことがある。)とからなる。そして、出射面保護膜351は、コンタクトメタル321bから延びて、開口部δの内面に形成される。
【0044】
pオーミック電極331-1は、コンタクトビア331a-1と、コンタクトメタル331b-1とからなる。そして、出射面保護膜351は、コンタクトメタル331bから延びて、開口部δの内面に形成される。
【0045】
この場合、設定サイリスタSに電気的に接続する電極であるnオーミック電極321やpオーミック電極332から開口部δの内面に延びて、出射面保護膜351を形成する、と言うこともできる。つまり、開口部δの内面に設けられる出射面保護膜351は、nオーミック電極321やpオーミック電極331を開口部δの内面にまで延長したものである。また、出射面保護膜351は、nオーミック電極321やpオーミック電極331と一体として形成されると言うこともできる。
【0046】
出射面保護膜351は、上述したように光遮断体である。光遮断体としては、光の透過を抑制する機能を有するものであれば、特に限られるものではない。光遮断体は、例えば、光を吸収する光吸収体である。また、光遮断体は、光を反射する光反射体である。出射面保護膜351により吸収や反射を行う光は、例えば、外から入射する光である外光である。つまり、設定サイリスタSを構成する層の少なくとも一層が、出射する光より長波長の光を吸収することがある。また、設定サイリスタSを構成する層の少なくとも一層が、発光層82から出射される光を吸収する場合もある。このような波長の光が、開口部δに入射し、設定サイリスタSに吸収された場合、この光エネルギーに起因して、設定サイリスタSがON状態になることがある。そして、サイリスタの特性上、設定サイリスタSは、ON状態のままとなる。即ち、設定サイリスタSに誤動作が生じる。よって、本実施の形態では、出射面保護膜351を設けることで、光を遮断し、設定サイリスタSの誤動作を防止する。
【0047】
出射面保護膜351は、例えば、金属であることが好ましい。金属としては、金(Au)、白金(Pt)、ゲルマニウム(Ge)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、チタン(Ti)などが挙げられる。また、これらの金属を含む合金であってもよい。出射面保護膜351を金属とした場合、光を吸収する機能のみならず、光を反射する機能も期待でき、光を遮断する効果に優れる。
また、出射面保護膜351を金属とした場合、図示するように、設定サイリスタSと出射面保護膜351-1、351-2、351-3、351-4との間にそれぞれ絶縁部352-1、352-2、352-3、352-4(以下、単に「絶縁部352」と言うことがある。)が設けられる。これにより、出射面保護膜351と設定サイリスタSとの電気的な接触が防止される。
【0048】
なお、出射面保護膜351として、金属ではなく絶縁性体を使用することもできる。この場合、絶縁部352は、不要となる。本実施の形態で使用する絶縁性体としては、二酸化珪素(SiO2),窒化珪素(Si3N4)、ポリイミド、BCB(Benzocyclobutene)などが挙げられる。なお、絶縁性体や絶縁部352は、使い方において絶縁性を示せばよく、常に絶縁性しか示さない物質以外にも、物質としては半導体でも抵抗が高くVCSELに流れる電流や外光などに対しては、絶縁性を示すというものなどを採用してもよい。
なお、出射面保護膜351は、開口部δの内面を覆うだけで、開口部の底面に当たる出射部全体を覆うことはない。なぜなら内面を覆う部材は光吸収してしまうので、このようにすることで光の出射を妨げないようにしている。一方、絶縁部352は出射面保護膜351に比較して光吸収しにくい。そこで開口部δの側面に当たる内面を覆うようにしている。ここで出射面保護膜351として絶縁性体を使用した場合も同様に絶縁部352のように開口部δの底面に当たる出射部の全部は覆うようにはしない。
【0049】
そして、本実施の形態では、アイランド301間の設けられる孔部301aに、層間膜353が設けられる。層間膜353は、絶縁性体であり、絶縁部352と同様の材料とすることができるが、絶縁部352とは異なる材料からなる絶縁性体にしてもよい。出射面保護膜351と層間膜353とは、同じ材料から形成することができるが、異なる材料により形成してもよい。また、出射面保護膜351と層間膜353とは、同じ工程でに形成してもよく、別々の工程で形成してもよい。
【0050】
図3(b)に示すように、IIIB-IIIB線での断面図では、駆動サイリスタDTにおいて、nカソード層88の一部が除去されて、pゲート層87を露出させている。そして、露出させたpゲート層87上にpゲート層87とオーミック接触が形成しやすい金属材料で構成されたpオーミック電極331(
図3(b)では、pオーミック電極331-1のみが示されている。)が設けられている。そして、絶縁層90上に、pオーミック電極331-1と、アイランド302に設けられた接続ダイオードDb1の領域312上のnオーミック電極322とを接続する配線76(
図4参照)が設けられている。
【0051】
なお、
図3(b)において、nオーミック電極321-1に接続された点灯信号線74-1は、他の駆動サイリスタDT21(DT/LD21)、駆動サイリスタDT31(DT/LD31)、駆動サイリスタDT41(DT/LD41)のnオーミック電極321-1と同様のnオーミック電極と接続されている。
【0052】
図4は、駆動サイリスタDT/レーザダイオードLDの拡大平面図である。ここでは、駆動サイリスタDT11/レーザダイオードLD11を説明するが、y方向に配列された駆動サイリスタDT12/レーザダイオードLD12、駆動サイリスタDT13/レーザダイオードLD13、駆動サイリスタDT14/レーザダイオードLD14にも同様であるので、「j」を付した符号を合わせて示している。なお、点灯信号線74-1は、他と区別するために破線で示している。
【0053】
図4に示すように、駆動サイリスタDT11/レーザダイオードLD11(駆動サイリスタDT1j/レーザダイオードLD1j)は、アイランド301-1(アイランド301-j)に設けられている。アイランド301-1(アイランド301-j)は、平面形状が円形であって、中央部が光を出射する円形の出射口γとなっている。なお、アイランド301-1(アイランド301-j)の平面形状は、円形でなくてもよく、四角形状、四角形を超える多角形など他の形状であってもよい。出射口γも同様である。
【0054】
そして、周辺部の一部のnカソード層88が除去されて、pゲート層87が露出している。露出したpゲート層87上にpオーミック電極331-1(331-j)が設けられている。pオーミック電極331-1(331-j)は、コンタクトビア331a-1(331a-j)とコンタクトメタル331b-1(331b-j)とからなる。そして、pオーミック電極331-1(pオーミック電極331-j)のコンタクトメタル331b-1(331b-j)が配線76に接続されている。
一方、出射口γを囲み、nカソード層88上に馬蹄形にnオーミック電極321-1(nオーミック電極321-j)が設けられている。nオーミック電極321-1(nオーミック電極321-j)は、コンタクトビア321a-1(321a-j)とコンタクトメタル321b-1(321b-j)とからなる。そして、nオーミック電極321-1のコンタクトメタル321b-1(321b-j)は、点灯信号線74-1に接続されている。なお、点灯信号線74-1は、光の出射口γの部分が開口部δになっている。これにより、レーザダイオードLD1jが出する光が点灯信号線74-1で遮光されない。
【0055】
なお、
図3(a)、(b)から分かるように、レーザダイオードLD1jが出射する光は、駆動サイリスタDT1jを介して、出射される。その他の例として、レーザダイオードLD1jが出射する光が通過する位置にある駆動サイリスタDT1jの一部もしくはすべてを除去し、駆動サイリスタDT1jでの光吸収を低減もしくは無くしてもよい。または、レーザダイオードLD1jが出射する光の方向が、基板80側(裏面出射)であってもよい。
【0056】
以上においては、y方向に配列された駆動サイリスタDT1j/レーザダイオードLD1jを説明したが、x方向に配列された駆動サイリスタDT/レーザダイオードLDも同様である。
【0057】
図5は、設定サイリスタS1、接続ダイオードDb1を含むアイランド302と、転送サイリスタT1、結合ダイオードD1、接続ダイオードDa1を含むアイランド303の断面図である。
図5は、
図2のV-V線での断面図である。
図5の左側(x方向の正の側)より、結合ダイオードD1、転送サイリスタT1、接続ダイオードDa1、設定サイリスタS1、接続ダイオードDb1が示されている。
【0058】
p型のGaAsの基板80上に、pアノード層81、発光層82、nカソード層83、トンネル接合層84、pアノード層85、nゲート層86、pゲート層87、nカソード層88が積層されている。つまり、アイランド302、303でも、半導体層積層体の構造は、
図3(a)、(b)に示した駆動サイリスタDT/レーザダイオードLDと同じである。
【0059】
しかし、
図5に示すように、アイランド302、303の外側は、基板80に到達するまでメサエッチングされている。一方、アイランド302、303の間は、pアノード層85に到達するまでメサエッチングされている。そして、pアノード層85が、配線78により、基板80(基準電位Vsub)に接続されている。つまり、アイランド302、303においては、アイランド301でレーザダイオードLDとして機能するpアノード層81、発光層82、nカソード層83は、配線78で短絡され、レーザダイオードLDとして機能しないようになっている。ここで、配線78は、pアノード層81、発光層82、nカソード層83の露出した側面に接して設けられている。上述したように、レーザダイオードLDとして機能させないので、側面に露出した各層を短絡させて設けてもよい。なお、配線78は、p型の基板80とpアノード層85とを接続するので、pオーミック電極331などと、同時に形成してもよい。
【0060】
なお、
図5では図示していないが、アイランド304、305、306、307も、アイランド302、303とpアノード層85が接続された状態になっている。
つまり、
図2に示すように、基板80は、半導体層積層体が基板80までメサエッチングされた領域80Bと、pアノード層85が露出するまでメサエッチングされた領域80Aとを備える。そして、領域80Aでは、アイランド302、303、304、305、306、307及びこれらと同様なアイランドが含まれる。一方、領域80Bは、アイランド301-j及びこれらと同様のアイランドが含まれる。ただし、領域80Aでは、pアノード層81に電流阻止領域βが形成されればよく、pアノード層81の一部が残っていてもよい。また、領域80Bでは、pアノード層85が残ればよく、pアノード層85が厚さ方向の一部がエッチングされていてもよい。
【0061】
次に、アイランド302、303の詳細を説明する。
アイランド302は、nカソード層88の領域312、313を残して、pゲート層87を露出させている。そして、接続ダイオードDb1は、nカソード層88の領域312をカソード層とし、領域312上に設けられたnオーミック電極322をカソードとする。そして、接続ダイオードDb1は、pゲート層87をアノード層とし、隣の設定サイリスタS1のゲート層87に接続される。もしくは、接続ダイオードDb1は、pゲート層87上に設けられたpオーミック電極332をアノードとする。
設定サイリスタS1は、nカソード層88の領域313をカソード層とし、pゲート層87をpゲート層、nゲート層86をnゲート層を挟んで設けられたpアノード層85をアノード層とする。なお、pアノード層85は、基板80(基準電位Vsub)に接続されている。そして、pゲート層87上に設けられたpオーミック電極332をゲートとする。
【0062】
アイランド303は、nカソード層88の領域314、315、316を残して、pゲート層87を露出させている。そして、接続ダイオードDa1は、nカソード層88の領域314をカソード層とし、領域314上に設けられたnオーミック電極324をカソードとする。そして、接続ダイオードDa1は、pゲート層87をアノード層とし、pゲート層87上に設けられたpオーミック電極333(
図2参照)をアノードとする。同様に、結合ダイオードD1は、nカソード層88の領域316をカソード層とし、領域316上に設けられたnオーミック電極326をカソードとする。そして、結合ダイオードD1は、pゲート層87をアノード層とし、隣の転送サイリスタT1のpゲート層87に接続される。もしくは、結合ダイオードD1は、pゲート層87上に設けられたpオーミック電極333(
図2参照)をアノードとする。
【0063】
転送サイリスタT1は、nカソード層88の領域315をカソード層とし、pゲート層87をpゲート層、nゲート層86をnゲート層を挟んで設けられたpアノード層85をアノード層とする。なお、pアノード層85は、基板80(基準電位Vsub)に接続されている。そして、pゲート層87上に設けられたpオーミック電極333(
図2参照)をゲートとする。
【0064】
図2に戻ってアイランド304、305、306、307を説明する。
アイランド304は、nカソード層88が除去して、pゲート層87を露出させている。そして、抵抗Rg1は、露出したpゲート層87上に設けられたpオーミック電極334、335の間のpゲート層87を抵抗として用いている(
図2参照)。
【0065】
アイランド305は、nカソード層88の領域317を残して、pゲート層87を露出させている。そして、スタートダイオードSDは、nカソード層88の領域317をカソード層とし、領域317に設けられたnオーミック電極327をカソードとする。そして、pゲート層87上に設けられたpオーミック電極336をアノードとする。
【0066】
アイランド306、307は、アイランド304と同様に、nカソード層88を除去して、pゲート層87を露出させている。そして、電流制限抵抗R1、R2は、抵抗Rg1と同様に、pゲート層87上にそれぞれ設けられた一組のpオーミック電極(符号なし)間のpゲート層87を抵抗として用いている。
【0067】
図2において、アイランド301~307間の接続関係を説明する。アイランド301~304と並列して設けられたアイランドも同様であるので説明を省略する。
電源線71は、Vgk端子から抵抗Rg1が設けられたアイランド304のpオーミック電極335に接続されている。
次に、転送信号線72は、φ1端子からアイランド306に設けられた電流制限抵抗R1を介して、アイランド303に設けられた転送サイリスタT1のnオーミック電極325に接続されている。なお、転送信号線72は、アイランド306と同様に設けられた奇数番号の転送サイリスタTに接続されている。
【0068】
転送信号線73は、φ2端子からアイランド307に設けられた電流制限抵抗R2を介して、アイランド303と同様のアイランドに設けられた偶数番号の転送サイリスタTのnオーミック電極(符号なし)に接続されている。また、転送信号線73は、スタートダイオードSDのpオーミック電極336に接続されている。
【0069】
点灯信号線74-jは、アイランド301-jに設けられた駆動サイリスタDT1j/レーザダイオードLD1j(DT/LD1j)のnオーミック電極321-jに接続されている。
【0070】
設定信号線75は、アイランド302に設けられた設定サイリスタS1のnオーミック電極323に接続されている。
【0071】
アイランド301-jの駆動サイリスタDT1j/レーザダイオードLD1j(DT/LD1j)のpオーミック電極331-j(
図4参照)と、アイランド302の接続ダイオードDb1のnオーミック電極322とは、配線76によりに接続されている。
【0072】
アイランド302の設定サイリスタS1のゲートGs1であるpオーミック電極332と、アイランド303の接続ダイオードDa1のnオーミック電極324とは、配線77で接続されている。
【0073】
アイランド303のpオーミック電極333と、アイランド304の抵抗Rg1のpオーミック電極334と、スタートダイオードSDのnオーミック電極327とは、配線79で接続されている。なお、アイランド303の結合ダイオードD1のnオーミック電極326は、隣接するアイランド303と同様なアイランドに設けられた転送サイリスタT2のゲートGt2に、配線79と同様な配線で接続されている。
【0074】
なお、アイランド302、303、304、305、306、307の間のメサエッチングは、前述したように、pアノード層85が露出するまで行われている。そして、pアノード層85は、基板80と配線78で接続されている。
図5における配線78の位置とは異なるが、
図2では、紙面の右側に示している。つまり、配線78は、基板80の領域80Aと領域80Bとを接続する。
【0075】
また、出射面保護膜351は、
図3、4で説明した形態に限られるものではない。以下、出射面保護膜351の他の形態について説明を行う。
【0076】
図6~
図8は、出射面保護膜351の他の形態の第1の例を示した図である。
ここでは、出射面保護膜351は、開口部δの内面の一部を覆う場合について示している。
このうち、
図6(a)~(b)は、開口部δの内面を上側から見たときに、出射面保護膜351として、円筒状の内面を覆う領域がより小さい場合を示している。
なお、以下の説明では、アイランド301-1を例示して図示しているが、他のアイランド301-2、301-3、301-4等でも同様である。
このうち、
図6(a)は、
図4と同様の方向からアイランド301-1を見た図である。また、
図6(b)は、
図6(a)のVIB-VIB断面図である。
この場合、nオーミック電極321から開口部δの内面に延びる出射面保護膜351が、
図3に示した場合より幅が狭くなっている。このように、開口部δの内面を全て覆わなくても、例えば、外光が入射しやすい箇所に出射面保護膜351を設けることで、他には設けなくても上記誤動作が、抑制できる。
【0077】
図7(a)~(b)は、出射面保護膜351が、設定サイリスタSのゲート層を覆う場合を示している。
このうち、
図7(a)は、
図4と同様の方向からアイランド301-1を見た図である。また、
図7(b)は、
図7(a)のVIIB-VIIB断面図である。
この場合、nゲート層86およびpゲート層87を覆う場合を示している。この形態は、誤動作を誘発しやすいnゲート層86およびpゲート層87を覆う場合である。このように、開口部δの内面を全て覆わなくても上記誤動作が、抑制できる。
【0078】
図8(a)~(b)は、出射面保護膜351が、設定サイリスタSのnカソード層88を覆う場合を示している。
このうち、
図8(a)は、
図4と同様の方向からアイランド301-1を見た図である。また、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIB-VIIIB断面図である。
この形態は、nカソード層88が、外光等の光を吸収しやすく、他の層は、外光等の光を吸収しにくいときに採用される。つまり、出射面保護膜351が、誤動作を誘発しやすいnカソード層88を覆い、誤動作を誘発しにくい他の層を覆わない場合である。このように、開口部δの内面を全て覆わなくても上記誤動作が、抑制できる。
【0079】
図9(a)~(b)は、出射面保護膜351の他の形態の第2の例を示した図である。
図9(a)~(b)は、出射面保護膜351-1の構成が、
図3とは異なる場合を示している。本実施の形態でも、開口部δの内面は、出射面保護膜351-1で覆われる。また本実施の形態では、設定サイリスタSに電気的に接続する電流供給配線である点灯信号線74-1から開口部δの内面に延びて、出射面保護膜351-1を形成する。つまり、開口部δの内面に設けられる出射面保護膜351-1は、点灯信号線74-1を開口部δの内面にまで延長したものである。また、出射面保護膜351-1は、点灯信号線74-1と一体として形成されると言うこともできる。
【0080】
また、出射面保護膜351-1を金属とした場合、図示するように、設定サイリスタSと出射面保護膜351-1との間に絶縁部352-1および層間膜353が設けられる。これにより、出射面保護膜351-1と設定サイリスタSとの電気的な接触が防止される。
また、出射面保護膜351として、金属ではなく絶縁性体を使用する場合は、絶縁部352、層間膜353は、不要となる。
【0081】
図10(a)~(b)は、出射面保護膜351の他の形態の第3の例を示した図である。
図10(a)~(b)は、
図9の場合と同様に、出射面保護膜351-1の構成が、
図3とは異なる場合を示している。本実施の形態でも、開口部δの内面は、出射面保護膜351-1で覆われる。また本実施の形態では、nオーミック電極321-1、pオーミック電極331-1および点灯信号線74-1とは、電気的に接続せずに出射面保護膜351-1を形成する。本実施の形態では、層間膜353が外側にあり、層間膜353から開口部δの内面に延びて、出射面保護膜351-1を形成する。出射面保護膜351-1を金属とした場合、層間膜353も同様の金属となる。つまり、開口部δの内面に設けられる出射面保護膜351-1は、層間膜353を開口部δの内面にまで延長したものである。また、出射面保護膜351-1は、層間膜353と一体として形成されると言うこともできる。
【0082】
また、出射面保護膜351-1を金属とした場合、図示するように、設定サイリスタS、nオーミック電極321-1および点灯信号線74-1と、出射面保護膜351-1との間に絶縁部352-1が設けられる。これは、出射面保護膜351は、絶縁部352-1を介して設定サイリスタS、nオーミック電極321-1および点灯信号線74-1を覆う、と言うこともできる。これにより、出射面保護膜351-1と設定サイリスタSとの電気的な接触が防止されるとともに、出射面保護膜351-1と点灯信号線74-1との電気的な接触が防止される。
また、出射面保護膜351-1として、金属ではなく絶縁性体を使用する場合は、絶縁部352-1は、不要となる。
【0083】
図11(a)~(b)は、出射面保護膜351の他の形態の第4の例を示した図である。
図11(a)~(b)では、
図9、10の場合と同様に、出射面保護膜351の構成が、
図3とは異なる場合を示している。本実施の形態では、アイランド301-1は、pアノード層181、nゲート層182、発光層183、pゲート層184、nカソード層185が順に設けられている。
【0084】
ここでは、アイランド301-1は、pアノード層181、nゲート層182、pゲート層184、nカソード層185からなるサイリスタ構造を有している。また、アイランド301-1は、サイリスタと、サイリスタを構成する層の間に設けられ発光を行う発光層183とを備える層構造をなす、と言うこともできる。
本実施の形態でも、開口部δの内面は、出射面保護膜351-1で覆われる。また、アイランド301-1の上側の電極や配線の構成は、
図3の場合と同様である。
【0085】
<駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDの積層構造>
次に、
図3(a)、(b)に示した、アイランド301-j(j=1~4)における駆動サイリスタDT1jとレーザダイオードLD1jとの積層構造を説明する。ここでは、駆動サイリスタDT11とレーザダイオードLD11の積層構造を例に、駆動サイリスタDT1jとレーザダイオードLD1jとの積層構造を説明する。駆動サイリスタDT11とレーザダイオードLD11の積層構造において、基板80の裏面電極92に基準電位Vsubが印加され、nカソード層88上に設けられたnオーミック電極321-1に接続された点灯信号線74-1に点灯信号φI1が供給される。そして、
図3(b)に示したpゲート層87上に設けられたゲートGd11であるpオーミック電極331-1に、ゲート電圧が印加される。
以下では、駆動サイリスタDT11を駆動サイリスタDT、レーザダイオードLD11をレーザダイオードLD、nオーミック電極321-1をnオーミック電極321、点灯信号φI1を点灯信号φI、ゲートGd11に印加されるゲート電圧をゲートGdの電位と表記する。
【0086】
駆動サイリスタDTは、トンネル接合層84を介してレーザダイオードLD上に積層され、駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDとが直列接続されている。
まず、トンネル接合層84を説明する。
図12は、レーザダイオードLDと駆動サイリスタDTとの積層構造をさらに説明する図である。
図12(a)は、レーザダイオードLDと駆動サイリスタDTとの積層構造における模式的なエネルギーバンド図、
図12(b)は、トンネル接合層84の逆バイアス状態におけるエネルギーバンド図、
図12(c)は、トンネル接合層84の電流電圧特性を示す。
【0087】
図5(a)、(b)に示すnオーミック電極321に印加される点灯信号φIと裏面電極92の基準電位Vsubとの間に、
図12(a)のエネルギーバンド図に示すように、レーザダイオードLDと駆動サイリスタDTとのそれぞれが順バイアスになる電圧を印加すると、トンネル接合層84を構成するn
++層84aとp
++層84bとの間が逆バイアスになる。
【0088】
トンネル接合層84は、n型の不純物を高濃度に添加したn
++層84aと、p型の不純物を高濃度に添加したp
++層84bとの接合である。このため、空乏領域の幅が狭く、順バイアスされると、n
++層84a側の伝導帯(コンダクションバンド)からp
++層84b側の価電子帯(バレンスバンド)に電子がトンネルする。この際、負性抵抗特性が表れる(
図12(c)の順バイアス側(+V)参照)。
【0089】
一方、
図12(b)に示すように、トンネル接合層84は、逆バイアス(-V)されると、p
++層84b側の価電子帯(バレンスバンド)の電位Evが、n
++層84a側の伝導帯(コンダクションバンド)の電位Ecより上になる。そして、p
++層84bの価電子帯(バレンスバンド)から、n
++層84a側の伝導帯(コンダクションバンド)に電子がトンネルする。そして、逆バイアス電圧(-V)が大きくなるほど、電子がトンネルしやすくなる。すなわち、
図12(c)の逆バイアス側(-V)に示すように、トンネル接合層84(トンネル接合)は、逆バイアスが大きいほど、電流が流れやすい。
【0090】
よって、
図12(a)に示すように、駆動サイリスタDTがターンオンすると、トンネル接合層84が逆バイアスであっても、レーザダイオードLDと駆動サイリスタDTとの間で電流が流れる。
【0091】
なお、トンネル接合層84の代わりに、金属的な導電性を有し、III-V族の化合物半導体層にエピタキシャル成長するIII-V族化合物層を用いてもよい。金属的導電性III-V族化合物層の材料の一例として説明するInNAsは、例えばInNの組成比xが約0.1~約0.8の範囲において、バンドギャップエネルギが負になる。また、InNSbは、例えばInNの組成比xが約0.2~約0.75の範囲において、バンドギャップエネルギが負になる。バンドギャップエネルギが負になることは、バンドギャップを持たないことを意味する。よって、金属と同様な導電特性(伝導特性)を示すことになる。すなわち、金属的な導電特性(導電性)とは、金属と同様に電位に勾配があれば電流が流れることをいう。
【0092】
そして、GaAs、InPなどのIII-V族化合物(半導体)の格子定数は、5.6Å~5.9Åの範囲にある。そして、この格子定数は、Siの格子定数の約5.43Å、Geの格子定数の約5.66Åに近い。
これに対して、同様にIII-V族化合物であるInNの格子定数は、閃亜鉛鉱構造において約5.0Å、InAsの格子定数は、約6.06Åである。よって、InNとInAsとの化合物であるInNAsの格子定数は、GaAsなどの5.6Å~5.9Åに近い値になりうる。
また、III-V族化合物であるInSbの格子定数は、約6.48Åである。よって、InNの格子定数の約5.0Åであるので、InSbとInNとの化合物であるInNSbの格子定数は、GaAsなど5.6Å~5.9Åに近い値になりうる。
【0093】
すなわち、InNAs及びInNSbは、GaAsなどのIII-V族化合物(半導体)の層に対してモノリシックにエピタキシャル成長させうる。また、InNAs又はInNSbの層上に、GaAsなどのIII-V族化合物(半導体)の層をエピタキシャル成長によりモノリシックに積層させうる。
【0094】
よって、トンネル接合層84の代わりに、金属的導電性III-V族化合物層を介して、レーザダイオードLDと駆動サイリスタDTとを直列接続して積層すれば、レーザダイオードLDのnカソード層83と駆動サイリスタDTのpアノード層85とが逆バイアスになることが抑制される。
【0095】
<駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDとの基本的な動作>
次に、駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDとの基本的な動作を説明する。
ここで、レーザダイオードLDは、立ち上がり電圧を1.5Vとする。つまり、レーザダイオードLDのアノード/カソード間に1.5V以上の電圧が印加されていれば、レーザダイオードLDが点灯(発光)する。
また、駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDが直列接続された構造の中で、主要な直列抵抗成分はレーザダイオードLD内のpアノード層81やpアノード層81内の電流狭窄層として機能する電流阻止領域βが有している。これにより、オン状態の駆動サイリスタDTのアノード、ゲート電圧が、点灯信号φIの電圧から0.8V(保持電圧)だけ高い値となる。
点灯信号φIは、ここでは、0V、-3.1V、-2.5V、-3.1Vより絶対値が大きい負の電位(ここでは、-3.5Vとする。)をとる。点灯信号φIにおいて、0Vは、レーザダイオードLDをオフ状態にする電位、-3.1Vは、レーザダイオードLDをオフ状態からオン状態にする電位、-2.5Vは、オン状態のレーザダイオードLDのオン状態を維持する電位、-3.5Vは、オン状態のレーザダイオードLDを予め定められた光量で点灯(発光)させる電位である。
【0096】
レーザダイオードLDをオフ状態からオン状態にする場合、点灯信号φIは、-3.1Vに設定される。このとき、ゲートGdに-1.5Vが印加されると、駆動サイリスタDTのしきい値は、ゲートGdの電位(-1.5V)からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた、-3Vになる。このとき、点灯信号φIは、-3.1Vであるので、レーザダイオードLDはオフ状態から、オン状態に移行する。つまり、レーザダイオードLDは、レーザ発振して点灯(発光)する。すると、オン状態の駆動サイリスタDTに印加される電圧(保持電圧)は、0.8Vであるので、レーザダイオードLDには、2.3Vが印加される。
【0097】
次に、点灯信号φIを-3.1Vから-2.5Vに移行させる。すると、オン状態の駆動サイリスタDTの保持電圧は0.8Vであるので、レーザダイオードLDには、1.7Vが印加される。1.7Vは、レーザダイオードLDの立ち上がり電圧である1.5V以上であるので、点灯(発光)を継続する。
【0098】
そして、点灯信号φIを-3.5Vにすると、オン状態の駆動サイリスタDTの保持電圧は0.8Vであるので、レーザダイオードLDには、2.7Vが印加される。つまり、レーザダイオードLDに印加される電圧が最も高くなり、レーザダイオードLDは最も光量が高い状態(強く発光する状態)になる。
【0099】
そして、点灯信号φIを0Vにすると、駆動サイリスタDTとレーザダイオードLDとの直列接続に0Vが印加されることになり、駆動サイリスタDTがオン状態からオフ状態に移行(ターンオフ)し、レーザダイオードLDが消灯する。
発光装置10の動作については、後に詳述する。
【0100】
なお、駆動サイリスタDTがオン状態からオフ状態に移行すると、駆動サイリスタDTのアノードとレーザダイオードLDのカソードとの間に、電荷が残ることになる。しかし、駆動サイリスタDTのアノードとレーザダイオードLDのカソードとの間の電圧は、基準電位Vsub(0V)から、レーザダイオードLDの立ち上がり電圧(1.5V)だけ低い電圧(-1.5V)であり、駆動サイリスタDTのアノードとゲート間は、オフ状態では電気的に断絶され、スイッチング電圧には影響を与えない。よって、駆動サイリスタDTの動作が安定に行われやすい。
【0101】
(発光部100の層構成および製造方法)
ここで、
図3を参照して、発光部100の層構成および製造方法を説明する。
まず、p型の基板80上に、pアノード(DBR)層81、発光層82、nカソード(DBR)層83、トンネル接合層84、pアノード層85、nゲート層86、pゲート層87、nカソード層88を順にエピタキシャル成長させて、半導体積層体を形成する(層形成工程)。ここでは、基板80は、p型のGaAsを例として説明するが、n型のGaAs、不純物を添加していないイントリンシック(i)型のGaAsでもよい。
【0102】
DBR層は、例えばAl0.9Ga0.1Asの高Al組成の低屈折率層と、例えばAl0.2Ga0.8Asの低Al組成の高屈折率層との組み合わせで構成されている。低屈折率層及び高屈折率層のそれぞれの膜厚(光路長)は、例えば中心波長の0.25(1/4)に設定されている。なお、低屈折率層と高屈折率層とのAlの組成比は、0~1の範囲で変更してもよい。
【0103】
pアノード(DBR)層81は、下側pアノード(DBR)層81a、電流狭窄層81b、上側pアノード(DBR)層81cを順に積層して構成されている。下側pアノード(DBR)層81a及び上側pアノード(DBR)層81cは、例えば不純物濃度1×1018/cm3である。電流狭窄層81bは、例えばAlAs又はAlの不純物濃度が高いp型のAlGaAsである。Alが酸化されてAl2O3が形成されることにより、電気抵抗が高くなって、電流経路を狭窄するものであればよい。
【0104】
pアノード(DBR)層81における電流狭窄層81bの膜厚(光路長)は、採用する構造によって決定される。取り出し効率やプロセス再現性を重要視する場合は、DBR層を構成する低屈折率層及び高屈折率層の膜厚(光路長)の整数倍に設定されるのがよく、例えば中心波長の0.75(3/4)に設定されている。なお、奇数倍の場合は、電流狭窄層81bは、高屈折率層と高屈折率層とで挟まれるとよい。また、偶数倍の場合は、電流狭窄層81bは、高屈折率層と低屈折率層とで挟まれるとよい。すなわち、電流狭窄層81bは、DBR層による屈折率の周期の乱れを抑制するために設けられるとよい。逆に、酸化された部分の影響(屈折率や歪)を低減したい場合は、電流狭窄層81bの膜厚は、数十nmが好ましく、DBR層内に立つ定在波の節の部分に挿入されるのが好ましい。
【0105】
発光層82は、井戸(ウエル)層と障壁(バリア)層とが交互に積層された量子井戸構造である。井戸層は、例えばGaAs、AlGaAs、InGaAs、GaAsP、AlGaInP、GaInAsP、GaInPなどであり、障壁層は、AlGaAs、GaAs、GaInP、GaInAsPなどである。なお、発光層82は、量子線(量子ワイヤ)や量子箱(量子ドット)であってもよい。
【0106】
nカソード(DBR)層83は、例えば不純物濃度1×1018/cm3である。
【0107】
トンネル接合層84は、n型の不純物を高濃度に添加したn
++層84aとn型の不純物を高濃度に添加したp
++層84bとの接合(後述する
図12(a)参照。)で構成されている。n
++層84a及びp
++層84bは、例えば不純物濃度1×10
20/cm
3と高濃度である。なお、通常の接合の不純物濃度は、10
17/cm
3台~10
18/cm
3台である。n
++層84aとp
++層84bとの組み合わせ(以下では、n
++層84a/p
++層84bで表記する。)は、例えばn
++GaInP/p
++GaAs、n
++GaInP/p
++AlGaAs、n
++GaAs/p
++GaAs、n
++AlGaAs/p
++AlGaAs、n
++InGaAs/p
++InGaAs、n
++GaInAsP/p
++GaInAsP、n
++GaAsSb/p
++GaAsSbである。なお、組み合わせを相互に変更したものでもよい。
【0108】
pアノード層85は、例えば不純物濃度1×1018/cm3のp型のAl0.9GaAsである。Al組成は、0~1の範囲で変更してもよい。
nゲート層86は、例えば不純物濃度1×1017/cm3のn型のAl0.9GaAsである。Al組成は、0~1の範囲で変更してもよい。
pゲート層87は、例えば不純物濃度1×1017/cm3のp型のAl0.9GaAsである。Al組成は、0~1の範囲で変更してもよい。
nカソード層88は、例えば不純物濃度1×1018/cm3のn型のAl0.9GaAsである。Al組成は、0~1の範囲で変更してもよい。
【0109】
これらの半導体層は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)などによって積層され、半導体積層体が形成される。
【0110】
次に、nカソード層88、pゲート層87、nゲート層86、pアノード層85、トンネル接合層84、nカソード(DBR)層83、発光層82、pアノード(DBR)層81を順にエッチングし、積層構造体301、302などの積層構造体に分離する。同時に、積層構造体301における孔部301aを形成する(孔部形成工程)。このエッチングは、硫酸系のエッチング液(重量比において硫酸:過酸化水素水:水=1:10:300)などを用いたウェットエッチングで行ってもよく、例えば塩化ホウ素などを用いた異方性ドライエッチング(RIE)で行ってもよい。この積層構造体に分離するエッチングは、メサエッチング又はポストエッチングと呼ばれることがある。
【0111】
次に、nカソード層88、pゲート層87、nゲート層86、pアノード層85、トンネル接合層84を順にエッチングし、出射口γに開口部δを形成する(開口部形成工程)。
【0112】
次に、積層構造体の縁辺部及び孔部301aにおいて、側面が露出した電流狭窄層81bを側面から酸化して、電流阻止領域βを形成する(電流狭窄層形成工程)。電流狭窄層81bの酸化は、例えば、300~400℃での水蒸気酸化により、AlAs、AlGaAsなどである電流狭窄層81bのAlを酸化させることで行う。このとき、露出した側面から酸化が進行し、Alの酸化物であるAl2O3による電流阻止領域βが形成される。電流狭窄層81bの酸化されなかった部分が、電流通過部αとなる。
【0113】
次に、nカソード層88をエッチングして、pゲート層87を露出させる(ゲート層露出工程)。このエッチングは、硫酸系のエッチング液(重量比において硫酸:過酸化水素水:水=1:10:300)を用いたウェットエッチングで行ってもよく、例えば塩化ホウ素を用いた異方性ドライエッチングで行ってもよい。そして、pゲート層87上に、pオーミック電極(pオーミック電極331、332など)を形成する。pオーミック電極は、例えばpゲート層87などのp型の半導体層とオーミックコンタクトが取りやすいZnを含むAu(AuZn)などである。そして、pオーミック電極(pオーミック電極331、332など)は、例えばリフトオフ法などにより形成される。
【0114】
次に、絶縁部352および出射面保護膜351を、開口部δに形成する。即ち、サイリスタの構成を有するnカソード層88、pゲート層87、nゲート層86、pアノード層85上および開口部形成工程により形成された開口部δの内面を光を吸収する出射面保護膜351で覆う(被覆工程)。
出射面保護膜351として金属を使用する場合、例えば、スパッタリングにより出射面保護膜351を形成することができる。具体的には、真空状態にて、出射面保護膜351の材料となる金属からなるターゲットに、アルゴンイオンを衝突させ、これにより放出した金属原子を、開口部δの内面に付着させる。
【0115】
次に、nカソード層88上に、nオーミック電極321、323、324などが形成される(電極形成工程)。nオーミック電極(nオーミック電極321、323、324など)は、例えばnカソード層88などのn型の半導体層とオーミックコンタクトが取りやすいGeを含むAu(AuGe)などである。nオーミック電極(nオーミック電極321、323、324など)は、例えばリフトオフ法などにより形成される。
【0116】
そして、オーミック電極(nオーミック電極321、323、324など)及びpオーミック電極(pオーミック電極331、332など)を接続する配線(電源線71、転送信号線72、転送信号線73、設定信号線75など)及び裏面電極92が形成される(配線形成工程)。配線及び裏面電極92は、Al、Auなどである。
【0117】
以上のようにして、発光部100が製造される。
なお、基板80には、InP、GaN、InAs、その他III-V族、II-VI材料からなる半導体基板、サファイア、Si、Geなどを用いてもよい。基板を変更した場合、基板上にモノリシックに積層される半導体積層体の材料は、基板の格子定数に略整合(歪構造、歪緩和層、メタモルフィック成長を含む)する材料を用いる。一例として、InAs基板上には、InAs、InAsSb、GaInAsSbなどを使用し、InP基板上にはInP、InGaAsPなどを使用し、GaN基板上又はサファイア基板上には、GaN、AlGaN、InGaNを使用し、Si基板上にはSi、SiGe、GaPなどを使用する。ただし、結晶成長後に他の支持基板に貼りつける場合は、支持基板に対して半導体材料が略格子整合している必要はない。
【0118】
なお、発光部100の製造方法において、各工程の順は、上述した場合に限られるものではない。
図13(a)~(b)は、発光部100の製造方法において、各工程の順について示したフローチャートである。
このうち、
図13(a)は、上述した場合と同様の工程順を示したフローチャートである。つまり、層形成工程(ステップ101)、孔部形成工程(ステップ102)、開口部形成工程(ステップ103)、電流狭窄層形成工程(ステップ104)、ゲート層露出工程(ステップ105)、被覆工程(ステップ106)、電極形成工程(ステップ107)、配線形成工程(ステップ108)の順に各工程が並ぶ。この場合、孔部301aや開口部δを形成し、後に、電極を形成する。そのため、
図3、4、6~8、9、11で示したような構造が実現できる。
【0119】
対して、
図13(b)のフローチャートは、層形成工程(ステップ201)、電極形成工程(ステップ202)、孔部形成工程(ステップ203)、開口部形成工程(ステップ204)、電流狭窄層形成工程(ステップ205)、ゲート層露出工程(ステップ206)、被覆工程(ステップ207)、配線形成工程(ステップ208)の順に各工程が並ぶ。即ち、
図13(a)でステップ107にあった電極形成工程が、
図13(b)では、ステップ202となり、より上流側の工程になっている。即ち、電極を後の方の工程で形成するのではなく、より前の方の工程で形成する。これにより、半導体積層体の上側にまず電極を形成し、それから孔部301a等を形成する工程順となっている。これにより、より滑らかな表面を有する半導体積層体の上側に電極を形成することが期待できる。対して、
図13(a)の工程では、孔部301a等を形成する際に、半導体積層体の上側の表面が荒れる可能性がある。また、電極の上側を出射面保護膜351で覆うことができ、
図10に示したような構造が実現できる。
【0120】
(発光装置10の動作)
図14は、発光装置10において、レーザダイオードLDの点灯/非点灯を制御する例を示す図である。ここでは、
図1、
図2などで説明したレーザダイオードLDが4×4で配列された場合を一例として説明する。
図14において、点灯(発光)させる(点灯対象の)レーザダイオードLDを「〇」、非点灯(消灯)させるレーザダイオードLDを「×」で示している。ここでは、レーザダイオードLD11、LD12、LD14、LD21、LD23、LD31、LD32、LD41、LD43、LD44を点灯(発光)させ、レーザダイオードLD13、LD22、LD24、LD33、LD34、LD42を非点灯(消灯)させるとする。
【0121】
つまり、発光装置10を見た場合、
図14の「〇」部分が点灯(発光)した状態(画像)が見られることになる。なお、
図14で見られる状態は、
図1、
図2を、そのまま見た状態に対応する。
【0122】
(タイミングチャート)
図15は、発光装置10を駆動するためのタイミングチャートである。発光装置10は、4×4のレーザダイオードLDを備え、
図14で示した点灯/非点灯の状態に制御される。
図15において、アルファベット順(a、b、c、…)に時間が経過するとする。
図15に示すタイミングチャートには、レーザダイオードLDを点灯に設定するか、非点灯に設定するかを決める設定期間U(1)~U(4)と、点灯に設定されたレーザダイオードLDの点灯状態を並列に維持する点灯維持期間Ucとが設けられている。
【0123】
時刻aから時刻fまでは、レーザダイオードLD11、LD21、LD31、L41に対する設定期間U(1)、時刻fから時刻kまでは、レーザダイオードLD12、LD22、LD32、L42に対する設定期間U(2)、時刻kから時刻pまでは、レーザダイオードLD13、LD23、LD33、L43対する設定期間U(3)、時刻pから時刻uまでは、レーザダイオードLD14、LD24、LD34、L44対する設定期間U(4)である。そして、時刻uから時刻vまでは、点灯に設定されたレーザダイオードLDを並列に点灯状態に維持する点灯維持期間Ucである。
ここでは、設定期間U(1)を第1の期間の一例とすると、設定期間U(2)~U(4)が第2の期間の一例である。また、点灯維持期間Ucが第3の期間の一例である。
図15では、設定期間U(1)が、点灯維持期間Ucより、長く記載されているが、点灯維持期間Ucが設定期間U(1)より、長く設定されるのがよい。第1の期間の一例である設定期間U(1)が第3の期間の一例である点灯維持期間Ucより長い場合に比べ、複数のレーザダイオードLD間において発光順に依存する発光量の差が低減する。
【0124】
図1を参照しつつ、
図15のタイミングチャートを説明する。
時刻aにおいて、
図1に示す制御部110に電源が供給される。すると、基準電位Vsubが「H(0V)」、電源電位Vgkが「L(-3.3V)」に設定される。
次に、各信号(転送信号φ1、φ2、設定信号φs、点灯信号φI1、φI2、φ13、φI4)の波形を説明する。なお、設定期間U(1)、U(2)、U(3)、U(4)は、基本的に同じであるので、設定期間U(1)を中心に説明する。
【0125】
転送信号φ1は、「H(0V)」と「L(-3.3V)」との電位を有する信号である。転送信号φ1は、設定期間U(1)の時刻aにおいて「H(0V)」であって、時刻aと時刻bとの間において「L(-3.3V)」に移行する。そして、時刻cにおいて、「H(0V)」に戻る。時刻cから時刻eは、時刻aから時刻cを繰り返す。そして、時刻eから時刻fにおいて、「H(0V)」を維持する。転送信号φ1は、設定期間U(2)~U(4)において、設定期間U(1)を繰り返す。
【0126】
転送信号φ2は、「H(0V)」と「L(-3.3V)」との電位を有する信号である。転送信号φ2は、設定期間U(1)の時刻aにおいて「H(0V)」であって、時刻bと時刻cとの間において「L(-3.3V)」に移行する。そして、時刻dにおいて、「H(0V)」に戻る。時刻dから時刻fは、時刻bから時刻dを繰り返す。転送信号φ2は、設定期間U(2)~U(4)において、設定期間U(1)を繰り返す。
【0127】
設定信号φsは、「H(0V)」と「L(-3.3V)」との電位を有する信号である。設定信号φsは、
図14に示したレーザダイオードLDを点灯に設定する際に、「H(0V)」から「L(-3.3V)」に移行する。つまり、設定期間U(1)は、レーザダイオードLD11、LD21、LD31、LD41のすべてを点灯に設定する期間である。よって、設定信号φsは、時刻aにおいて、「H(0V)」であって、時刻bにおいて、レーザダイオードLD11を点灯に設定するために「L(-3.3V)」に移行する。そして、設定信号φsは、時刻bと時刻cとの間において、「H(0V)」に戻る。次に、設定信号φsは、時刻cにおいて、レーザダイオードLD21を点灯に設定するために「L(-3.3V)」に移行する。そして、設定信号φsは、時刻bと時刻cとの間において、「H(0V)」に戻る。同様に、設定信号φsは、時刻dにおいて、レーザダイオードLD31を点灯に設定するために「L(-3.3V)」に移行する。そして、設定信号φsは、時刻dと時刻eとの間において、「H(0V)」に戻る。さらに、設定信号φsは、時刻eにおいて、レーザダイオードLD41を点灯に設定するために「L(-3.3V)」に移行する。そして、設定信号φsは、時刻eと時刻fとの間において、「H(0V)」に戻る。
【0128】
なお、設定信号φsは、レーザダイオードLDを非点灯に設定する場合には、「H(0V)」から「L(-3.3V)」に移行しない。例えば、設定期間U(2)では、レーザダイオードLD12、LD32を点灯に設定し、レーザダイオードLD22、L42を非点灯に設定する。よって、時刻g、iでは、「L(-3.3V)」に移行するが、設定信号φsは、時刻h、jでは「L(-3.3V)」に移行しないで、「H(0V)」を維持する。
他の設定期間U(3)、U(4)も同様である。
つまり、設定期間U(1)~U(4)において、点灯対象のレーザダイオードLDを順次点灯(発光)させる。そして、順次点灯が完了した時刻uにおいて、点灯対象のレーザダイオードLDを並行して点灯(発光)させている。
【0129】
点灯信号φI1、φI2、φI3、φI4は、前述したように「H(0V)」、「L1(-3.1V)」、「L2(-2.5V)」、「L3(-3.5V)」の4つの電位を有する信号である。
まず、点灯信号φI1を説明する。点灯信号φI1は、設定期間U(1)の時刻aにおいて、「H(0V)」であって、時刻aと時刻bとの間において、「L1(-3.1V)」に移行する。そして、設定期間U(1)が終了し、設定期間U(2)が開始する時刻fにおいて、「L2(-2.5V)」に移行する。そして、設定期間U(4)が終了し、点灯維持期間Ucが開始する時刻uにおいて、「L3(-3.5V)」に移行する。そして、点灯維持期間Ucが終了する時刻vにおいて、「H(0V)」に戻る。
【0130】
点灯信号φI2は、設定期間U(1)では、「H(0V)」であって、設定期間U(2)の時刻fと時刻gとの間において、「L1(-3.1V)」に移行する。そして、設定期間U(2)が終了し、設定期間U(3)が開始する時刻kにおいて、「L2(-2.5V)」に移行する。そして、設定期間U(4)が終了し、点灯維持期間Ucが開始する時刻uにおいて、「L3(-3.5V)」に移行する。そして、点灯維持期間Ucが終了する時刻vにおいて、「H(0V)」に戻る。
【0131】
点灯信号φI3は、設定期間U(1)、U(2)では、「H(0V)」であって、設定期間U(3)の時刻kと時刻lとの間において、「L1(-3.1V)」に移行する。そして、設定期間U(3)が終了し、設定期間U(4)が開始する時刻pにおいて、「L2(-2.5V)」に移行する。そして、設定期間U(4)が終了し、点灯維持期間Ucが開始する時刻uにおいて、「L3(-3.5V)」に移行する。そして、点灯維持期間Ucが終了する時刻vにおいて、「H(0V)」に戻る。
【0132】
点灯信号φI4は、設定期間U(1)、U(2)、U(3)では、「H(0V)」であって、設定期間U(4)の時刻pと時刻qとの間において、「L1(-3.1V)」に移行する。そして、設定期間U(4)が終了し、点灯維持期間Ucが開始する時刻uにおいて、「L3(-3.5V)」に移行する。そして、点灯維持期間Ucが終了する時刻vにおいて、「H(0V)」に戻る。つまり、点灯信号φI4は、「L2(-2.5V)」の期間を有しない。
【0133】
以上説明したように、点灯信号φI1~φI4は、設定期間Uだけずれた波形となっている。
【0134】
そして、レーザダイオードLD11、LD21、LD31、LD41、LD12、LD22、LD32、LD42、LD13、LD23、LD33、LD43、LD14、LD24、LD34、LD44において、点灯している場合の光量の大きさを線の太さで示している。なお、線が引かれていないところは、点灯していないこと、つまり非点灯であることを示す。
【0135】
以上説明したようにして、発光装置10は、
図15に示したタイミングチャートに基づいて動作する。なお、点灯しているレーザダイオードLDを非点灯にするには、時刻vにおいて、すべての点灯信号φIを「H(0V)」に設定すればよい。つまり、時刻aから時刻vまでを繰り返し行うことで、レーザダイオードLDの点灯/非点灯は時系列で制御される。
上記において、「L1(-3.1V)」と「L3(-3.5V)」とは異なる電位で表記してあるが、「L1」と「L3」とは同じ電位であってもよい。
【0136】
また、発光部100の動作を安定させるために、ゲートGsと電源電位Vgkとの間や、ゲートGd(配線76)と電源電位Vgkとの間を、抵抗を介して接続してもよい。
【0137】
また、結合ダイオードDはトランジスタで構成してもよい。また、設定サイリスタS、転送サイリスタTのアノード側にダイオードを直列接続させてもよい。これら変更に合わせて、それぞれの駆動電圧を調整するために、ダイオードや抵抗を発光部100内に付加し、動作を安定化させてもよい。また、駆動サイリスタDTのpゲート層87と配線76との間に抵抗成分を持たせて、オン状態の駆動サイリスタDTのゲートGdの電圧の影響を、配線76を共有する他のオン状態の駆動サイリスタDTのゲートGdに与えにくくさせてもよい。
【0138】
なお、複数のパッド(φ1端子、φ2端子、Vgk端子、φs端子、φIj端子)は、発光装置10の基板80上において転送サイリスタTの配列と略平行して設けられてもよい。このようにすることで、複数のレーザダイオードLDの配列によっては、均一に電流又は/及び電圧が供給される。
【0139】
また、転送素子部105(
図1参照)上にBCB(ベンゾシクロブテン:Benzocyclobutene)等の厚膜絶縁膜を設け、その上に複数の端子(φ1端子、φ2端子、Vgk端子、φs端子、φIj端子)を設けることで、小型化、低コスト化される。また、転送サイリスタTや設定サイリスタSからの光が遮られる。
【0140】
また、本実施の形態では、転送サイリスタT、設定サイリスタSの数はiと同じ数で記載されているが、駆動の高速化のため、転送サイリスタTに複数の設定サイリスタSを接続させたり、設定信号線75を複数本設けたりしてもよい。また、同一基板上または分割された複数の基板上に、発光部100を複数個並べて並行に駆動してもよい。このようにすれば、駆動が高速化される。
【0141】
以上詳述した発光部100や発光装置10では、開口部δの内面に、出射面保護膜351を備える。これにより、開口部δに外光等のなんらかの光が入射した場合でも誤動作が生じにくい発光部100や発光装置10を提供できる。
【0142】
[光計測装置1]
上記した発光装置10は、光計測に用いうる。
図16は、発光装置10を用いた光計測装置1を説明する図である。
光計測装置1は、上記した発光装置10と、光を受光する受光部20と、データを処理する処理部30とを備える。そして、光計測装置1に対向して計測対象物(対象物)40が置かれている。なお、
図16において、計測対象物40は、一例として人である。そして、
図16は、上方から見た図である。
【0143】
発光装置10は、前述したように二次元状に配置されたレーザダイオードLDを点灯して、実線で示すように発光装置10を中心として円錐状に広がった光を出射する。この際、設定期間U(1)、又は最初から点灯維持期間Ucとして、複数の点灯信号φIjを同時に「L1(-3.1V)」又は「L3(-3.5V)」にしてもよい。
【0144】
受光部20は、計測対象物40により反射された光を受光するデバイスである。受光部20は、破線で示すように受光部20に向かう光を受光する。受光部20は、二次元方向から光を受光する撮像デバイスであるとよい。
【0145】
処理部30は、データを入出力する入出力部を備えたコンピュータとして構成されている。そして、処理部30は、光に関する情報を処理して、計測対象物40までの距離や計測対象物40の3次元形状を算出する。
光計測装置1の処理部30は、発光装置10を制御し、発光装置10から短い期間において光を出射させる。つまり、発光装置10は、パルス状に光を出射する。すると、処理部30は、発光装置10が光を出射したタイミング(時刻)と、受光部20が計測対象物40からの反射光を受光したタイミング(時刻)との時間差から、発光装置10から出射されてから、計測対象物40に反射して、受光部20に到達するまでの光路長を算出する。発光装置10及び受光部20の位置やこれらの間隔は予め定められている。よって、処理部30は、発光装置10、受光部20からの距離又は基準とする点(基準点)から、計測対象物40までの距離を計測(算出)する。なお、基準点とは、発光装置10及び受光部20から予め定められた位置に設けられた点(ポイント)である。
【0146】
この方法は、光の到達時間を基にした測量法であって、タイムオブフライト(TOF)法と呼ばれる。
この方法を、計測対象物40上の複数の点(ポイント)に対して行えば、計測対象物40の三次元的な形状が計測される。前述したように、発光装置10からの出射光は、二次元に広がって計測対象物40に照射される。そして、計測対象物40における発光装置10との距離が短い部分からの反射光が、いち早く受光部20に入射する。上記した二次元画像を取得する撮像デバイスを用いた場合、フレーム画像には、反射光が到達した部分に輝点が記録される。一連の複数のフレーム画像において記録された輝点から、それぞれの輝点に対して、光路長が算出される。そして、発光装置10、受光部20からの距離又は基準とする点(基準点)からの距離が算出される。つまり、計測対象物40の三次元形状が算出される。
【0147】
また、別の方法として、ストラクチャードライト法を用いた光測量法にも本実施の形態の発光装置10を使用してもよい。使用する装置は
図16に示した発光装置10を用いた光計測装置1とほぼ同じである。異なる点は、計測対象物40に照射する光のパターンは無数の光ドット(ランダムパターン)であり、これを受光部20で受光する。そして処理部30は、光に関する情報を処理する。ここで、処理の仕方として、前出の時間差を求めるものではなく、無数の光ドットの位置ずれ量を算出することで計測対象物40までの距離や計測対象物40の三次元形状を算出する。従来この方式に用いられる光源は、ランダムに配置された二次元VCSELアレイ等が使用されるが、照射するランダムパターンは、予め定められた1~4パターン程度である(ストラクチャードFix方式)。一方、本実施の形態の発光装置10は、照射させたい光ドットを外部からの信号によって自由に設定できるため、より多くのランダムパターンで光を照射することができる。
【0148】
以上のような、光計測装置1は、物品までの距離を算出することに適用させうる。また、物品の形状を算出させて、物品の識別に適用されうる。そして、人の顔の形状を算出させて、識別(顔認証)に適用されうる。さらに、車に積載することにより、前方、後方、側方などにおける障害物の検出に適用されうる。このように、光計測装置1は、距離や形状などの算出に広く用いられうる。
【0149】
[画像形成装置2]
上記した発光装置10は、画像を形成する画像形成に用いうる。
図17は、発光装置10を用いた画像形成装置2を説明する図である。
画像形成装置2は、上記した発光装置10と、駆動制御部50と、光を受光するスクリーン60とを備える。
【0150】
画像形成装置2の動作を説明する。
発光装置10は、前述したように、二次元状に配置されたレーザダイオードLDを点灯/非点灯に設定する。そして、点灯維持期間Ucにおいて、レーザダイオードLDを並行して点灯させる。つまり、二次元の静止画像(二次元画像)が得られる。よって、画像信号が入力を受け付け、二次元画像が形成されるように、画像信号に基づき発光装置10を駆動する駆動制御部50により、点灯維持期間Ucをフレームとして、順次書き換えることにより、二次元画像の動画像が得られる。これらの二次元状の静止画像や動画像が、スクリーン60に投影される。
【0151】
以上においては、レーザダイオードLDは、非点灯から点灯(発光)するとしたが、発光状態における発光強度が増加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…光計測装置、2…画像形成装置、10…発光装置、20…受光部、30…処理部、40…計測対象物、50…駆動制御部、60…スクリーン、71…電源線、72、73…転送信号線、74…点灯信号線、75…設定信号線、80…基板、81…pアノード層、82…発光層、83…nカソード層、84…トンネル接合層、85…pアノード層、86…nゲート層、87…pゲート層、88…nカソード層、100…発光部、110…制御部、120…転送信号生成部、130…設定信号生成部、140…点灯信号生成部、160…基準電位生成部、170…電源電位生成部、301~307…アイランド、321…nオーミック電極、331…pオーミック電極、351…出射面保護膜、352…絶縁部、353…層間膜、α…電流通過領域、β…電流阻止領域、γ…出射口、δ…開口部、φ1、φ2…転送信号、φI…点灯信号、D…結合ダイオード、DT…駆動サイリスタ、Da、Db…接続ダイオード、LD…レーザダイオード、R1、R2…電流制限抵抗、Rg…抵抗、S…設定サイリスタ、SD…スタートダイオード、T…転送サイリスタ、U…設定期間、Uc…点灯維持期間、Vgk…電源電位