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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20250226BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250226BHJP
   C07D 213/75 20060101ALN20250226BHJP
   C07D 213/74 20060101ALN20250226BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
C07D213/75
C07D213/74
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021104133
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2022031136
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020133189
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 尊書
(72)【発明者】
【氏名】石部 徹
(72)【発明者】
【氏名】安池 伸夫
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200439(JP,A)
【文献】国際公開第2019/193854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
C07D 213/75
C07D 213/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)及び式(2)中、Xは4価の有機基である。Xは、下記式(3)で表される2価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基である。)
【化2】
(式(3)中、A及びAは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。ただし、A及びAのうち少なくとも一方は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。
及びYは、それぞれ独立して、単結合、「-O-」、「-S-」、「-NR-」、「-COO-」、「-NR-CO-」、又は含窒素非芳香族複素環を有する2価の基である。
は、炭素数2~20の2価の飽和脂肪族炭化水素基における少なくとも1個の任意のメチレン基が、「-O-」、「-S-」、及び下記式(4)~式(10)
【化3】
のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種に置き換えられてなる2価の有機基である。ただし、Rは、上記式(4)~式(10)のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種を合計1個以上含む。Rにおいて、「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基は互いに隣接しておらず、かつ「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基の2個の結合手は、炭化水素基、含窒素非芳香族複素環又は含窒素芳香族複素環を構成する炭素原子にそれぞれ結合している。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは1価の有機基であるか、又はRとRとが互いに合わせられて、Rが結合する窒素原子及びRが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。
ただし、Rが上記式(5)~式(7)で表される2価の基のうちのいずれかを含む場合、Y、Y及びRのうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有する。
は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【請求項2】
前記Xは、極性官能基の保護基を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記Xは、2個以上の極性官能基の保護基を有する、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記Xが有する極性官能基の保護基は、tert-ブトキシカルボニル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記Xは、下記式(11)で表される基、下記式(12)で表される基、又は下記式(13)で表される基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化4】
(式(11)~式(13)中、Y及びYは、それぞれ独立して「*-NR-CO-」又は「-NR-CO-*」である。「*」は、「-(CH-」との結合手を示す。R、R10、R11 、R 13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。ただし、式(12)中、Y、Y、R10及びR11のうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有する。rは1~6の整数である。s及びtは、それぞれ独立して0~6の整数である。ただし、1≦r+s+t≦12を満たす。v、w、e及びfは、それぞれ独立して1~6の整数である。uは0~2の整数である。A、A、Y、及びYは、上記式(3)と同義である。「*」は結合手を示す。)
【請求項6】
前記Xは、下記式(14)~式(21)のうちいずれかで表される4価の基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化5】
(式(14)~(21)中、「*」は結合手を示す。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【請求項9】
下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体。
【化6】
(式(1)及び式(2)中、Xは4価の有機基である。Xは、下記式(3)で表される2価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基である。)
【化7】
(式(3)中、A及びAは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。ただし、A及びAのうち少なくとも一方は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。
及びYは、それぞれ独立して、単結合、「-O-」、「-S-」、「-NR-」、「-COO-」、「-NR-CO-」、又は含窒素非芳香族複素環を有する2価の基である。
は、炭素数2~20の2価の飽和脂肪族炭化水素基における少なくとも1個の任意のメチレン基が、「-O-」、「-S-」、及び下記式(4)~式(10)
【化8】
のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種に置き換えられてなる2価の有機基である。ただし、Rは、上記式(4)~式(10)のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種を合計1個以上含む。Rにおいて、「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基は互いに隣接しておらず、かつ「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基の2個の結合手は、炭化水素基、含窒素非芳香族複素環又は含窒素芳香族複素環を構成する炭素原子にそれぞれ結合している。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは1価の有機基であるか、又はRとRとが互いに合わせられて、Rが結合する窒素原子及びRが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。
ただし、Rが上記式(5)~式(7)で表される2価の基のうちのいずれかを含む場合、Y、Y及びRのうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有する。
は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、テレビやモバイル機器、各種モニターなどに広く利用されている。こうした多用途化に伴い、液晶素子には更なる高品質化が求められており、駆動方式や素子構造の改良とともに、液晶素子の構成材料の1つである液晶配向膜の改良が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、N,N’-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)アミノ)エチル)ウレア等の窒素含有ジアミンを含むジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸を液晶配向剤に含有させることにより、塗膜の光反応性やラビング耐性、液晶配向性、AC残像特性及び電圧保持率をバランス良く改善することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-200439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶素子としては、近年の更なる高精細化の要求を満たすべく、液晶配向性及び電圧保持率の更なる改善が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液晶配向性及び電圧保持率が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
<1> 下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体(P)を含有する、液晶配向剤。
【化1】
(式(1)及び式(2)中、Xは4価の有機基である。Xは、下記式(3)で表される2価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基である。)
【化2】
(式(3)中、A及びAは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。ただし、A及びAのうち少なくとも一方は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。
及びYは、それぞれ独立して、単結合、「-O-」、「-S-」、「-NR-」、「-COO-」、「-NR-CO-」、又は含窒素非芳香族複素環を有する2価の基である。
は、炭素数2~20の2価の飽和脂肪族炭化水素基における少なくとも1個の任意のメチレン基が、「-O-」、「-S-」、及び下記式(4)~式(10)
【化3】
のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種に置き換えられてなる2価の有機基である。ただし、Rは、上記式(4)~式(10)のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種を合計1個以上含む。Rにおいて、「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基は互いに隣接しておらず、かつ「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基の2個の結合手は、炭化水素基、含窒素非芳香族複素環又は含窒素芳香族複素環を構成する炭素原子にそれぞれ結合している。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは1価の有機基であるか、又はRとRとが互いに合わせられて、Rが結合する窒素原子及びRが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。
ただし、Rが上記式(5)~式(7)で表される2価の基のうちのいずれかを含む場合、Y、Y及びRのうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有する。
は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【0009】
<2> 上記<1>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<3> 上記<2>の液晶配向膜を具備する液晶素子。
<4> 上記式(1)で表される部分構造及び上記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体。
<5> 下記式(22)で表される化合物。
【化4】
(式(22)中、A、A、Y、Y及びRは上記式(3)と同義である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤によれば、液晶配向性及び電圧保持率が良好な液晶素子を得ることができる。特に、液晶素子を長時間駆動した場合にも、AC残像が生じにくく、かつ電圧保持率を高く維持できる液晶素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0012】
なお、本明細書において「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0013】
「飽和脂肪族炭化水素基」とは、飽和鎖状炭化水素基及び飽和脂環式炭化水素基を包含する意味である。「芳香族基」とは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環、又は置換若しくは無置換の芳香族複素環の環部分からn個(nは整数)の水素原子を取り除いてなる基を意味する。ただし、芳香族基が環を複数個有する場合、同一の環からn個の水素原子を取り除いてなる基及び異なる環からn個の水素原子を取り除いてなる基を含む。「複素環式芳香族基」とは、芳香族複素環の環部分からn個(nは整数)の水素原子を取り除いてなる基を意味する。ただし、複素環式芳香族基が環を複数個有する場合、同一の環からn個の水素原子を取り除いてなる基及び異なる環からn個の水素原子を取り除いてなる基を含む。「保護基」とは、反応性の高い特性基を一時的に不活性な官能基に変換しておく原子団をいう。
【0014】
本開示の液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体(P)を含有する。
【化5】
(式(1)及び式(2)中、Xは4価の有機基である。Xは、下記式(3)で表される2価の有機基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6の1価の有機基である。)
【化6】
(式(3)中、A及びAは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。ただし、A及びAのうち少なくとも一方は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。
及びYは、それぞれ独立して、単結合、「-O-」、「-S-」、「-NR-」、「-COO-」、「-NR-CO-」、又は含窒素非芳香族複素環を有する2価の基である。
は、炭素数2~20の2価の飽和脂肪族炭化水素基における少なくとも1個の任意のメチレン基が、「-O-」、「-S-」、及び下記式(4)~式(10)
【化7】
のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種に置き換えられてなる2価の有機基である。ただし、Rは、上記式(4)~式(10)のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種を合計1個以上含む。Rにおいて、「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基は互いに隣接しておらず、かつ「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)で表される基の2個の結合手は、炭化水素基、含窒素非芳香族複素環又は含窒素芳香族複素環を構成する炭素原子にそれぞれ結合している。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは1価の有機基であるか、又はRとRとが互いに合わせられて、Rが結合する窒素原子及びRが結合する窒素原子と共に構成される環構造を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。ただし、Rが上記式(5)~式(7)で表される2価の基のうちのいずれかを含む場合、Y、Y及びRのうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有する。Aは、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【0015】
上記式(1)及び式(2)において、Xは、テトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基である。なお、本明細書において、「テトラカルボン酸誘導体」は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステル及びテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を含む意味である。
【0016】
を構成するテトラカルボン酸誘導体としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの製造において使用することができるテトラカルボン酸誘導体として公知の化合物を使用することができる。化合物の入手容易性や、重合体の製造容易性等の観点から、Xは、下記式(14)~式(21)のうちいずれかで表される4価の基であることが好ましい。光配向法により液晶配向膜を得る場合、Xは、シクロブタン環構造を有する4価の基であることが好ましく、具体的には下記式(14)又は式(15)で表される4価の基であることが特に好ましい。
【化8】
(式(14)~(21)中、「*」は結合手を示す。)
【0017】
上記式(1)及び式(2)において、Xは、上記式(3)で表される部分構造を有するジアミン化合物(以下、「特定ジアミン」ともいう)に由来する2価の有機基である。上記式(3)において、A及びAのうち少なくとも一方は、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である。窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基としては、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、キノリン環、カルバゾール環、ビピリジン環等の含窒素芳香族複素環を有する2価の基を挙げることができる。なお、A及びAの複素環式芳香族基には、含窒素芳香族複素環に置換基が導入されていてもよい。当該置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、保護基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0018】
及びAのうち一方のみが窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基である場合、他方の基の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、フルオレン環等の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する2価の基を挙げることができる。
及びAは、合成容易性の観点から、上記のうち、ベンゼン環又はピリジン環を有する2価の基が好ましく、フェニレン基、ピリジレン基、ビフェニレン基又はビピリジレン基がより好ましい。また、電気特性の観点から、塩基性を有する構造が好ましく、ピリジン環、イミダゾール環又はベンズイミダゾール環を有する2価の基がより好ましく、ピリジン環を有する2価の基が更に好ましく、ピリジレン基が特に好ましい。
【0019】
及びYは、それぞれ独立して、単結合、「-O-」、「-S-」、「-NR-」、「-COO-」若しくは「-NR-CO-」であるか、又は含窒素非芳香族複素環を有する2価の基である。Y及びYにおいて、含窒素非芳香族複素環を有する2価の基としては、ピペリジン-1,4-ジイル基、ピペラジン-1,4-ジイル基、-CO-B-(ただし、Bはピペリジン-1,4-ジイル基又はピペラジン-1,4-ジイル基)等が挙げられる。
及びYは、上記式(1)及び式(2)中のXがシクロブタン環構造を有する場合に重合体(P)の光反応性を高める観点から、隣接する芳香族基(Y、Y)の電子密度を高める電子供与性基が好ましく、「-O-」、「-S-」、「-NR-」又はピペリジン-1,4-ジイル基であることがより好ましく、「-NR-」又は「-O-」であることが更に好ましい。
【0020】
「-NR-」中のRは、水素原子若しくは1価の有機基であるか、又は、上記式(4)~式(7)中のRと互いに合わせられて、Rが結合する窒素原子及びRが結合する窒素原子と共に環構造を構成している。当該環構造としては、ピペラジン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
重合体(P)の溶解性を高める観点から、Rは、保護基又は炭素数1~6の1価の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、保護基又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、保護基であることが更に好ましい。
【0021】
が保護基である場合、当該保護基は、熱及び光のうち少なくともいずれかにより脱離する脱離性基であることが好ましく、熱脱離性基であることがより好ましい。Rが熱脱離性基である場合、液晶配向剤を基板に塗布し加熱して液晶配向膜を形成する過程において保護基を脱離させることができる。このため、脱保護のための工程を別途設けなくてもよく、プロセスの簡略化を図ることができる点で好ましい。液晶配向膜を形成する過程で脱保護する観点から、熱脱離性基は、120~300℃の温度において分解し、水素原子に置き換わる基であることが特に好ましい。
【0022】
は、炭素数2~20の2価の飽和脂肪族炭化水素基における少なくとも1個の任意のメチレン基が、「-O-」、「-S-」及び上記式(4)~式(10)のそれぞれで表される基のうち少なくとも一種に置き換えられてなる2価の有機基である。Rにおいて、上記2価の脂肪族炭化水素基は、重合体(P)の液晶配向性の観点から、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数2~12のアルキレン基がより好ましく、炭素数4~12のアルキレン基が更に好ましく、炭素数4~8のアルキレン基が特に好ましい。
【0023】
は、上記式(4)~式(10)のそれぞれで表される基(以下、「特定窒素含有基」ともいう)のうち少なくとも一種を合計1個以上含む。ここで、上記式(8)~式(10)中のAについて、窒素原子を有する2価の複素環式芳香族基の具体例としては、A及びAの説明で例示した基が挙げられる。これらのうち、Aは、電気特性及び力学特性の観点から、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環又はプリン環を有し、分子間で水素結合を形成する2価の基が好ましい。合成容易性及び電気特性の観点から、これらの中でも、ピリジン環を有する2価の基がより好ましく、ピリジレン基が特に好ましい。なお、Aは、複素環部分に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0024】
重合体(P)の溶解性の観点からすると、Rが有する特定窒素含有基は、上記式(4)及び式(8)~(10)のうちいずれかで表される基であることが好ましい。また、重合体(P)の電気特性の観点からすると、Rが有する特定窒素含有基は、上記式(4)~(7)のうちいずれかで表される基であることが好ましい。Rが有する特定窒素含有基の数は特に限定されず、特定窒素含有基の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、Rが有する特定窒素含有基が上記式(4)で表される基である場合、特定窒素含有基の数は2個以上が好ましく、2又は3個がより好ましい。Rが有する特定窒素含有基が上記式(5)~(10)のうちいずれかで表される基の場合、特定窒素含有基の数は1個であることが好ましい。
【0025】
が上記構造であることにより、ラビング法により液晶配向膜を形成する場合には、ラビング処理での重合体(P)の分子鎖の延伸を促すことができる。また、光配向法により液晶配向膜を形成する場合には、露光後の熱処理での重合体(P)の分子鎖の熱再配列(自己組織的な異方性増幅)を促すことができる。これにより、優れた液晶配向性を有する液晶配向膜を得ることができる。さらに、Rが有する特定窒素含有基が分子間で水素結合を形成することにより、力学特性や電気特性に優れた液晶配向膜を得ることができる。なお、上記式Rにおいて、特定窒素含有基における2個の結合手はいずれも、炭化水素基含窒素非芳香族複素環又は含窒素芳香族複素環を構成する炭素原子に結合している。すなわち、Rが有する特定窒素含有基の2個の結合手は、炭化水素基、含窒素非芳香族複素環又は含窒素芳香族複素環を構成する炭素原子のみに結合している。
【0026】
、R、R及びRにおける1価の有機基は、重合体(P)の溶解性を高める観点から、保護基又は炭素数1~6の1価の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、保護基又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、保護基であることが更に好ましい。なお、保護基についての説明は、上記Rにおける保護基の説明を援用することができる。
【0027】
は、極性官能基の保護基を有していることが好ましい。Xが有する極性官能基の保護基は、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の保護基とすることができる。当該保護基は、熱及び光のうち少なくともいずれかにより脱離する脱離性基であることが好ましく、熱脱離性基であることがより好ましい。液晶配向膜を形成する過程において脱保護を行わせる観点から、Xが有する極性官能基の保護基は、120~300℃の温度において分解し、水素原子に置き換わる基であることが特に好ましい。
【0028】
電気特性を高める観点から、Xは、アミノ基、アミド基、ウレア結合、オキサリルジアミド結合及びジアシルヒドラジド結合よりなる群から選択される少なくとも一種を不活性にしておくための官能基を極性官能基の保護基として有していることが好ましい。例えば、Xがアミノ基の保護基を含む場合、脱離反応により塩基性の1級又は2級アミンが発生し、ポリアミック酸のイミド化反応を促進すること、液晶中に存在する酸性不純物を捕捉すること、分子間で非共有結合性の架橋を形成すること等が想定される。
【0029】
が極性官能基の保護基を有する場合、A、A、Y、Y及びRのうちいずれが極性官能基の保護基を有していてもよく、また、X中における保護基の数も特に限定されない。ただし、Rが上記式(5)~式(7)で表される2価の基のいずれかを含む場合、Y、Y及びRのうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有し、好ましくは、R~Rのうち少なくとも1個が保護基である。
液晶配向剤の状態では重合体(P)の溶解性を高め、かつ液晶配向膜の形成後には電気特性を高くする観点から、Xは、極性官能基の保護基を2個以上有することが好ましい。Xにおいて、極性官能基の保護基の数は、重合体(P)の製造容易性及び液晶配向膜の力学特性の観点から4個以下が好ましい。
【0030】
熱脱離性基の具体例としては、メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-へキシルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基等を挙げることができる。これらのうち、液晶配向膜の焼成温度(好ましくは、120~300℃)で効率よく脱離反応が進行する構造が好ましく、tert-ブトキシカルボニル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基がより好ましく、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が特に好ましい。
【0031】
は、上記においてA、A、Y、Y及びRの各説明で例示した基を適宜組み合わせることにより形成される2価の基である。液晶配向性、電気特性及び力学特性により優れた液晶素子を得ることができる点で、Xは、下記式(11)で表される基、下記式(12)で表される基又は下記式(13)で表される基であることが好ましい。
【化9】
(式(11)~式(13)中、Y及びYは、それぞれ独立して「*-NR-CO-」又は「-NR-CO-*」である。「*」は、「-(CH-」との結合手を示す。R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。ただし、式(12)中、Y、Y、R10及びR11のうち少なくともいずれかは極性官能基の保護基を有する。rは1~6の整数である。s及びtは、それぞれ独立して0~6の整数である。ただし、1≦r+s+t≦12を満たす。v、w、e及びfは、それぞれ独立して1~6の整数である。uは0~2の整数である。A、A、Y、及びYは、上記式(3)と同義である。「*」は結合手を示す。)
【0032】
上記式(11)~式(13)において、R、R10、R11、R12、R13及びR14の1価の有機基の具体例及び好ましい例の説明は、上記Rの説明を援用することができる。
s及びtは、液晶素子の液晶配向性を高める観点から1以上が好ましく、2以上が好ましい。また、液晶素子の電気特性を確保する観点から、s及びtは4以下が好ましい。rは1~4が好ましい。
【0033】
v、w、e及びfは、液晶素子の液晶配向性を高める観点から2以上が好ましく、液晶素子の電気特性を確保する観点から4以下が好ましい。
、A、Y、及びYについては、上記式(3)のA、A、Y、及びYの具体例及び好ましい例の説明を援用することができる。
【0034】
は特に、下記式(11-1)で表される2価の基又は下記式(12-1)で表される2価の基であることが、液晶素子の液晶配向性(特にAC残像の低減)及び電気特性(特に長期信頼性)の改善効果が高い点で好適である。なお、AC残像は、交流電圧の印加に伴う残像であり、液晶素子の長時間の駆動に伴い液晶の初期配向方向が製造当初の方向からずれてくることに起因して生じる残像である。
【化10】
(式(11-1)及び式(12-1)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の1価の脂肪族炭化水素基又は熱脱離性基である。ただし、式(12-1)中、R15、R16、R17及びR18のうち少なくともいずれかは熱脱離性基である。pは1~4の整数である。「*」は結合手を示す。)
【0035】
上記式(11-1)において、重合体(P)の溶解性、液晶配向性及び電圧保持率の観点から、R15、R16、R17及びR18のうち少なくともいずれかは熱脱離性基であることが好ましく、2個以上が熱脱離性基であることがより好ましい。また、同様の理由から、上記式(12-1)において、R15、R16、R17及びR18のうち2個以上が熱脱離性基であることが好ましい。
【0036】
重合体(P)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。重合体(P)は、テトラカルボン酸誘導体に由来する部分構造と、特定ジアミンに由来する部分構造とを有する。重合体(P)の合成方法は特に限定されず、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより得ることができる。
【0037】
<ポリアミック酸>
重合体(P)がポリアミック酸である場合、当該ポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(P)」ともいう)は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、特定ジアミンを含むジアミン化合物と、を反応させることにより得ることができる。
【0038】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸(P)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物は特に限定されないが、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0039】
これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等を;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等を;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3-プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビフタル酸二無水物等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0040】
特定ジアミンとの組み合わせにおいて液晶配向性及び電気特性をより良好にできる点で、ポリアミック酸(P)の合成に際して使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記の中でも、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、及び4,4’-ビフタル酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「特定酸無水物」ともいう)が好ましい。
【0041】
ポリアミック酸(P)の合成に際して特定酸無水物を用いる場合、特定酸無水物の使用割合は、合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の合計量に対して、10モル%以上とすることが好ましい。より好ましくは30モル%以上であり、更に好ましくは50モル%以上であり、より更に好ましくは70モル%以上である。なお、重合体(P)の合成に際し、テトラカルボン酸二無水物としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
(ジアミン化合物)
特定ジアミンとしては、下記式(22)で表される化合物が挙げられる。
【化11】
(式(22)中、A、A、Y、Y及びRは、それぞれ、上記式(3)中のA、A、Y、Y及びRと同義である。)
【0043】
上記式(22)中のA、A、Y、Y及びRの具体例及び好ましい例については、上記式(3)の説明をそれぞれ援用することができる。特定ジアミンの具体例としては、例えば下記式(d-1)~式(d-112)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【0044】
【化12】
【化13】
【0045】
【化14】
【化15】
【0046】
【化16】
【化17】
【化18】
【0047】
【化19】
【化20】
【化21】
【0048】
【化22】
【化23】
【化24】
【0049】
【化25】
【化26】
【化27】
【0050】
【化28】
【化29】
【化30】
【0051】
特定ジアミンとしては、これらのうち、上記式(d-1)~式(d-3)、式(d-5)、式(d-7)、式(d-9)~式(d-11)、式(d-13)~式(d-15)、式(d-17)、式(d-19)~式(d-24)、式(d-27)、式(d-29)~式(d-38)、式(d-41)、式(d-42)、式(d-51)~式(d-53)、式(d-55)~式(d-60)、式(d-67)、式(d-77)、及び式(d-107)~式(d-112)のそれぞれで表される化合物が好ましく、上記式(d-1)~式(d-3)、式(d-5)、式(d-7)、式(d-13)~式(d-15)、式(d-17)、式(d-22)~式(d-24)、式(d-51)~式(d-53)、式(d-55)、式(d-56)、及び式(d-107)~式(d-112)のそれぞれで表される化合物が特に好ましい。なお、特定ジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
ポリアミック酸(P)の合成に際しては、ジアミン化合物として特定ジアミンのみを用いてもよいが、特定ジアミンと共に、特定ジアミンとは異なるジアミン化合物(以下、「その他のジアミン」ともいう)を使用してもよい。
【0053】
その他のジアミンとしては、上記式(3)で表される基を有しないジアミン化合物であれば特に限定されず、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン及びジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を;
脂環式ジアミンとして、例えばp-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等を;
芳香族ジアミンとして、例えばドデカノキシジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、2,5-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン、下記式(E-1)
【化31】
(式(E-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-であり、Rは炭素数1~3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1~3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0~2の整数であり、cは1~20の整数であり、dは0又は1である。ただし、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物等の側鎖型ジアミン:
パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、N,N’-ジ(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、ビス(4-アミノフェニル)アミン、N,N-ビス(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)-ピペラジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4-(4-アミノフェノキシカルボニル)-1-(4-アミノフェニル)ピペリジン、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン等の非側鎖型ジアミンを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミン化合物を用いることができる。なお、ポリアミック酸(P)の合成に際し、その他のジアミンとしては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
特定ジアミンの使用割合は、本開示の効果を十分に得る観点から、ポリアミック酸(P)の合成に際して使用するジアミン化合物の合計量に対して、10モル%以上とすることが好ましい。より好ましくは20モル%以上であり、更に好ましくは30モル%以上であり、より更に好ましくは40モル%以上である。
【0055】
特定ジアミンは、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって得ることができる。その一例としては、上記式(21)中の一級アミノ基に代えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法などが挙げられる。
【0056】
ジニトロ中間体を合成する方法は、目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。例えば、構造「-Y-A-NO」(AはA又はRであり、YはY又はYである)を有するアミン化合物と、構造Rを有するジカルボン酸又はジカルボン酸クロリドとを反応させる方法;構造「-Y-A-NO」(AはA又はRであり、YはY又はYである)を有するカルボン酸と、構造Rを有するジアミン化合物とを反応させる方法;構造Rを有するジアミン化合物と構造Aを有するハロゲン化合物とを反応させる方法;構造「-Y-A-NO」を有するアミン化合物と炭酸ビス(4-ニトロフェニル)とを反応させる方法;等が挙げられる。ただし、特定ジアミンの合成方法は上記に限定されるものではない。
【0057】
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸(P)は、上記の如きテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤(末端封止剤ともいう)とともに反応させることによって得ることができる。分子量調整剤としては、例えば、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等が挙げられる。ポリアミック酸(P)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1モル当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2モル当量となる割合が好ましい。
【0058】
ポリアミック酸(P)の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等が挙げられる。特に好ましい有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と、他の有機溶媒(例えばブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル等)との混合物である。有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計量が、反応溶液の全量に対して、0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。ポリアミック酸(P)を溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(P)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0059】
<ポリアミック酸エステル>
重合体(P)としてのポリアミック酸エステルは、上記式(1)で表される部分構造において、R及びRの少なくとも一方が炭素数1~6の1価の有機基である構造単位を有する重合体である。当該ポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記で得られたポリアミック酸(P)とエステル化剤(例えばメタノールやエタノール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール等)とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルと、特定ジアミンを含むジアミン化合物とを、好ましくは有機溶媒中、適当な脱水触媒(例えば4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、リン系縮合剤等)の存在下で反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物と、特定ジアミンを含むジアミン化合物とを、好ましくは有機溶媒中、適当な塩基(例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンや、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類)の存在下で反応させる方法、等によって得ることができる。
【0060】
上記[II]で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、テトラカルボン酸二無水物をアルコール類などで開環することにより得ることができる。上記[III]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。
ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、上記反応によりポリアミック酸エステルを溶液として得た場合、該溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0061】
<ポリイミド>
重合体(P)としてのポリイミドは、上記式(2)で表される部分構造を有する重合体である。当該ポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸(P)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸(P)が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。該ポリイミドは、そのイミド化率が40~100%であることが好ましく、60~90%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0062】
ポリアミック酸(P)の脱水閉環は、ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われることが好ましい。脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。使用する有機溶媒としては、ポリアミック酸(P)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃であり、反応時間は、好ましくは1.0~120時間である。こうして得られたポリイミドを含有する反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0063】
重合体(P)の溶液粘度は、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、重合体(P)の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
重合体(P)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000である。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。なお、液晶配向剤に含有させる重合体(P)は1種のみでもよく、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0064】
≪その他の成分≫
本開示の液晶配向剤は、重合体(P)以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、上記式(1)で表される部分構造及び上記式(2)で表される部分構造をいずれも有さない重合体(以下、「他の重合体」ともいう)、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物、官能性シラン化合物、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤、酸発生剤、塩基発生剤、ラジカル発生剤等が挙げられる。これらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0065】
<他の重合体>
他の重合体の主骨格は特に限定されないが、例えば、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを主骨格とする重合体が挙げられる。他の重合体は、これらのうち、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0066】
本開示の液晶配向剤の重合体成分を重合体(P)と他の重合体とにより構成する場合、重合体(P)が有するアミノ基やアミド基等の水素結合性基のうち少なくとも1個は保護基により保護されていることが好ましい。水素結合性基に保護基を導入することにより重合体(P)が低極性となり、液晶配向膜を形成した際に重合体(P)が空気界面側に偏在しやすくなる結果、液晶配向性及び電圧保持率を良化できる点で好適である。
【0067】
他の重合体を液晶配向剤に配合する場合、他の重合体の含有割合は、重合体(P)の配合による効果を十分に得る観点から、液晶配向剤中の重合体成分の全量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。なお、他の重合体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
<溶剤>
本開示の液晶配向剤は、重合体(P)及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは、適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0069】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1質量%以上であると塗膜の膜厚を十分に確保でき、良好な液晶配向膜を得やすい点で好適である。また、固形分濃度が10質量%以下であると、塗膜の膜厚が過大となりすぎず良好な液晶配向膜を得ることができるとともに、液晶配向剤の粘性を適度に確保でき、塗布性を良好にすることができる。
【0070】
液晶配向剤中の重合体(P)の含有割合は、重合体(P)の配合による効果を十分に得る観点から、液晶配向剤中の固形成分(溶媒以外の成分)の合計100質量部に対して、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上である。
【0071】
≪液晶配向膜及び液晶素子≫
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を備える。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型(VA-MVA型、VA-PVA型等を含む)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(fringe field switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型等といった種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
【0072】
(工程1:塗膜の形成)
先ず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一方の面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。基板への液晶配向剤の塗布は、電極形成面上に、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
【0073】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜、又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。
【0074】
(工程2:配向処理)
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットン等で擦るラビング処理、又は塗膜に光照射を行って液晶配向能を付与する光配向処理を用いることが好ましい。垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用してもよく、液晶配向能をさらに高めるために該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
【0075】
光配向処理における光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
【0076】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。放射線の照射量は、好ましくは400~20,000J/mであり、より好ましくは1,000~5,000J/mである。塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。
【0077】
液晶配向膜の製造に際し、光照射処理が施された塗膜を120℃以上280℃以下の温度範囲内で加熱してもよい。こうした加熱処理により、液晶配向性が更に改善され(加熱再配向)、AC残像がより低減された液晶素子を得ることができる点で好ましい。この加熱は、ポストベークであってもよく、ポストベークとは別にポストベーク後に行う加熱処理であってもよい。加熱温度は、加熱による分子鎖の再配向を促進させる観点から、140℃以上とすることが好ましく、150℃~250℃とすることがより好ましい。加熱時間は、好ましくは5分~200分、より好ましくは10分~60分である。
【0078】
液晶配向膜の製造に際し、光照射処理が施された塗膜を、水、水溶性有機溶媒、又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒に接触させる接触工程を更に含んでいてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンが挙げられる。塗膜と溶媒との接触方法としては、例えば噴霧(スプレー)処理、シャワー処理、浸漬処理、液盛り処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塗膜と溶媒との接触時間は特に限定されないが、例えば5秒~15分である。接触工程の後に塗膜の加熱処理を行ってもよい。
【0079】
(工程3:液晶セルの構築)
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、(1)液晶配向膜が対向するように間隙(スペーサー)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法、(2)液晶配向膜を形成した一方の基板上の所定の場所にシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げる方法(ODF方式)等が挙げられる。製造した液晶セルに対し更に、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷する処理を行うことにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0080】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。スペーサーとしては、フォトスペーサー、ビーズスペーサー等を用いることができる。
【0081】
液晶としては、ポジ型及びネガ型のいずれを用いてもよい。IPS型及びFFS型の液晶素子においてネガ型液晶を用いた場合、電極上部での透過損失を小さくでき、コントラスト向上を図ることができる点で好ましい。また、液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。ネマチック液晶としては、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等を用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
【0082】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。これにより液晶素子が得られる。
【0083】
本開示の液晶素子は種々の用途に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は、位相差フィルム等の光学フィルムに適用することもできる。
【実施例
【0084】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
以下の例で使用した主な化合物の構造と略号は以下の通りである。
(テトラカルボン酸二無水物)
TA-1;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TA-2;(1R,2R,3S,4S)-1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物
TA-3;2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
TA-4;ピロメリット酸二無水物
TA-5;4,4’-ビフタル酸二無水物
【化32】
【0086】
(ジアミン)
DA-1;N,N-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)アミノ)エチル)スクシンアミド
DA-2;N,N-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)スクシンアミド
DA-3;N,N’-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)アミノ)エチル)ウレア
DA-4;N,N’-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)ウレア
DA-5;N,N-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)アミノ)エチル)ピリジン-2,6-ジアミン
DA-6;N,N-ビス(2-((5-アミノピリジン-2-イル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)-N,N-ジ(tert-ブトキシカルボニル)ピリジン-2,6-ジアミン
DA-7;N,N’-ビス(5-アミノピリジン-2-イル)-N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)エチレンジアミン
DA-8;N,N-ビス(4-アミノフェネチル)-N,N-ジ(tert-ブトキシカルボニル)アジパミド
DA-9;p-フェニレンジアミン
DA-10;3,5-ジアミノ安息香酸
DA-11;2,2’-ジメチルベンジジン
DA-12;4,4’-ジアミノジフェニルメタン
DA-13;N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン
DA-14;N,N-ビス(5-アミノピリジン-2-イル)スクシンアミド
DA-15;N,N-ビス(5-アミノピリジン-2-イル)-N,N-ジメチルスクシンアミド
【0087】
【化33】
【化34】
【化35】
【0088】
(末端封止剤)
EC-1;N-(tert-ブトキシカルボニル)-エチレンジアミン
EC-2;無水マレイン酸
EC-3;4-アミノ安息香酸
【化36】
【0089】
(添加剤)
AD-1;N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン
AD-2;3-グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン
AD-3;ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート
【化37】
【0090】
(溶剤)
NMP;N-メチル-2-ピロリドン
BC;ブチルセロソルブ
THF;テトラヒドロフラン
EDC;1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
【0091】
<化合物の合成>
[合成例1]
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、エチレンジアミン(100mL)、炭酸ナトリウム(120mmol)を入れた。窒素下で2-クロロ-5-ニトロピリジン(120mmol)のTHF溶液を滴下し、50℃で6時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し、濃縮残渣にNMPを加えて溶解させた。得られた溶液をろ過して不溶の塩を除去することにより、N-(5-ニトロピリジン-2-イル)エチレンジアミンのNMP溶液を得た。
【化38】
【0092】
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、こはく酸(10mmol)、EDC(22mmol)、NMP(20mL)を入れて30分間撹拌し、N-(5-ニトロピリジン-2-イル)エチレンジアミン(22mmol)のNMP溶液を加えた後、室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を水に注いで生成物を沈殿させた。沈殿をろ過し、水により洗浄することにより、ジニトロ体(N,N-ビス(2-((5-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)エチル)スクシンアミド)を得た(収率83%)。
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、上記ジニトロ体(5.0mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(11mmol)、NMP(10mL)を入れ、室温で8時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、水により分液洗浄した。有機相を減圧濃縮することにより、Boc保護ジニトロ体(N,N-ビス(2-((5-ニトロピリジン-2-イル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)スクシンアミド)を得た(収率57%)。
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、上記Boc保護ジニトロ体(2.0mmol)、Pd/C(0.1g)、ヒドラジン一水和物(20mmol)、エタノール(10mL)を入れ、室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をセライトろ過して、酢酸エチルを加え、水により分液洗浄した。有機相を減圧濃縮することにより、上記式(DA-2)で表されるジアミンを得た(収率28%)。
【化39】
【0093】
[合成例2]
上記式(DA-1)で表されるジアミンを以下の合成スキームに従い合成した。
【化40】
【0094】
[合成例3]
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、N-(5-ニトロピリジン-2-イル)エチレンジアミン(30mmol)のNMP溶液、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)(10mmol)を入れ、室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を1晩静置することにより生成物が沈殿した。沈殿をろ過し、水により洗浄することにより、ジニトロ体(N,N’-ビス(2-((5-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)エチル)ウレア)を得た(収率78%)。
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、上記ジニトロ体(4.4mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(9.7mmol)、DMAP(0.44mmol)、NMP(10mL)を入れ、室温で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、水により分液洗浄した。有機相を減圧濃縮することにより、Boc保護ジニトロ体(N,N’-ビス(2-((5-ニトロピリジン-2-イル)(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル)ウレア)を得た(収率86%)。
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、上記Boc保護ジニトロ体(2.0mmol)、Pd/C(0.1g)、ヒドラジン一水和物(20mmol)、エタノール(10mL)を入れ、室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をセライトろ過して、酢酸エチルを加え、水により分液洗浄した。有機相を減圧濃縮することにより、上記式(DA-4)で表されるジアミンを得た(収率23%)。
【化41】
【0095】
[合成例4]
上記式(DA-3)で表されるジアミンを以下の合成スキームに従い合成した。
【化42】
【0096】
[合成例5]
上記式(DA-6)で表されるジアミンを以下の合成スキームに従い合成した。
【化43】
【0097】
[合成例6]
上記式(DA-5)で表されるジアミンを以下の合成スキームに従い合成した。
【化44】
【0098】
[合成例7]
上記式(DA-14)で表されるジアミンを以下の合成スキームに従い合成した。
【化45】
【0099】
[合成例8]
上記式(DA-15)で表されるジアミンを以下の合成スキームに従い合成した。
【化46】
【0100】
<重合体の合成>
[合成例9]
ジアミン((DA-1)50モル部及び(DA-11)50モル部)、末端封止剤((EC-1)10モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して(TA-2)100モル部)を加え、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸の溶液を得た。得られた溶液に、脱水剤として、ポリアミック酸のカルボキシル基に対して0.75モル当量の1-メチルピペリジン及び無水酢酸を加え、60℃で3時間加熱撹拌した。得られた溶液に対して、減圧濃縮とNMPによる希釈を繰り返して、下記式(PI-1)で表される部分構造を有するポリイミド(PI-1)の10質量%溶液を得た。ポリイミド(PI-1)のH-NMRスペクトル(DMSO-d,400MHz)を測定し、芳香族プロトン(δ6.4~9.0ppm)、主鎖アミドプロトン(δ9.8~10.3ppm)の積分比よりイミド化率を計算したところ、イミド化率は76%であった。
【化47】
【0101】
[合成例10~16]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例9と同様にしてポリイミド(PI-2~PI-8)をそれぞれ得た。なお、表1中の数値は、テトラカルボン酸二無水物については、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量(100モル%)に対する各化合物の使用割合(モル%)を示し、ジアミンについては、合成に使用したジアミンの合計量(100モル%)に対する各化合物の使用割合(モル%)を示す。脱水剤については、ポリアミック酸のカルボキシル基量(100モル%)に対する使用割合(モル%)を示す。
【0102】
[合成例17]
ジアミン((DA-4)50モル部及び(DA-9)50モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して(TA-2)75モル部及び(TA-1)25モル部)を加え、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸の溶液を得た。得られた溶液に、ポリアミック酸のカルボキシル基に対して0.50モル当量の1-メチルピペリジン及び無水酢酸を加え、60℃で3時間加熱撹拌した。得られた溶液に対して、減圧濃縮とNMPによる希釈を繰り返して、下記式(PI-9)で表される部分構造を有するポリイミド(PI-9)の10質量%溶液を得た。ポリイミド(PI-9)のH-NMRスペクトル(DMSO-d,400MHz)を測定し、芳香族プロトン(δ6.4~9.0ppm)、主鎖アミドプロトン(δ9.8~10.3ppm)、アセチル末端アミドプロトン(δ9.6~9.8ppm)の積分比よりイミド化率を計算したところ、イミド化率は52%であった。
【化48】
【0103】
[合成例18]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例17と同様にしてポリイミド(PI-10)を得た。
【0104】
[合成例19]
ジアミン((DA-2)50モル部及び(DA-11)50モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して(TA-2)100モル部)を加え、室温で6時間反応を行い、下記式(PI-11)で表される部分構造を有するポリアミック酸(PI-11)の15質量%溶液を得た。
【化49】
【0105】
[合成例20]
窒素導入管を備えた3つ口フラスコに、テトラカルボン酸二無水物(TA-2)(40mmol)、NMP(40mL)を入れて100℃で30分間撹拌し、ジアミン(DA-11)(20mmol)のNMP溶液を滴下した後、100℃で1時間撹拌した。さらに、無水酢酸(60mmol)、N-メチルピペリジン(10mmol)を加えて、100℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、水に注いで生成物を沈殿させた。沈殿をろ過し、沸騰水中で撹拌洗浄し、60℃で真空乾燥した。得られた固体を過剰の無水酢酸/酢酸中で無水化することにより、下記式(PI-12-1)で表される中間体(PI-12-1)を得た。
続いて、中間体(PI-12-1)をNMPに溶解し、中間体に対して1.0モル当量のジアミン(合成に使用したジアミンの合計量100モル部に対して(DA-2)50モル部)を加え、室温で6時間反応を行い、下記式(PI-12)で表される部分構造を有するポリイミド(PI-12)の10質量%溶液を得た。
【化50】
【0106】
[合成例21]
ジアミン((DA-2)75モル部及び(DA-11)25モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して(TA-1)75モル部及び(TA-3)25モル部)を加え、室温で6時間反応を行った。さらに末端封止剤((EC-2)10モル部)を加えて室温で3時間反応を行い、下記式(PI-13)で表される部分構造を有するポリアミック酸(PI-13)の15質量%溶液を得た。
【化51】
【0107】
[合成例22~25]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例21と同様にしてポリアミック酸(PI-14~PI-17)をそれぞれ得た。
[合成例26]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例17と同様にしてポリイミド(PI-18)を得た。
【0108】
[合成例27]
ジアミン((DA-2)50モル部及び(DA-8)50モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して(TA-4)50モル部及び(TA-3)50モル部)を加え、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸(PI-19)の15質量%溶液を得た。
【0109】
[合成例28~30]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例27と同様にしてポリアミック酸(PI-20~PI-22)をそれぞれ得た。
【0110】
[合成例31]
ジアミン((DA-10)75モル部及び(DA-12)25モル部)、末端封止剤((EC-3)10モル部)をNMPに溶解し、ジアミン合計量に対して0.95モル当量のテトラカルボン酸二無水物(合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の合計量100モル部に対して(TA-3)75モル部及び(TA-1)25モル部)を加え、室温で6時間反応を行い、ポリアミック酸(PI-23)の15質量%溶液を得た。
【0111】
[合成例32~34]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例31と同様にしてポリアミック酸(PI-24~PI-26)をそれぞれ得た。
【0112】
[合成例35、36]
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの種類及びモル比、及び脱水剤のモル比をそれぞれ下記表1に記載の通りに変更した以外は合成例17と同様にしてポリイミド(PI-27、PI-28)をそれぞれ得た。
【0113】
【表1】
【0114】
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1:光配向FFS型液晶表示素子]
(1)液晶配向剤の調製
重合体(固形分換算:(PI-1)100質量部)をNMP及びブチルセロソルブ(BC)により希釈することにより、固形分濃度が4.0質量%、溶剤組成比がNMP:BC=70:30(質量比)となる溶液を得た。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(R-1)を調製した。
【0115】
(2)溶解性の評価
上記(1)において重合体の溶解性の評価を併せて行った。重合体を希釈でき、その溶液をフィルターで濾過したときに十分量の濾液を回収できる場合を「良好」とし、重合体を希釈した際に懸濁又は凝集等が発生し、その溶液をフィルターで濾過したときに十分量の濾液を回収できない場合を「不良」とした。その結果、この実施例では「良好」の評価であった。
【0116】
(3)光配向法による液晶配向膜の形成
平板電極、絶縁層及び櫛歯状電極がこの順で片面に積層されたガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とのそれぞれの面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤(R-1)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間乾燥した後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥を行い、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜表面に、Hg-Xeランプを用いて、直線偏光された254nmの輝線を含む紫外線300mJ/cmを基板法線方向から照射して光配向処理を行った。上記光配向処理が施された塗膜を、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分加熱して熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。
【0117】
(4)液晶表示素子の製造
上記(3)で作製した液晶配向膜を有する一対の基板について、液晶配向膜を形成した面の縁に液晶注入口を残して直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をディスペンサー塗布した後、基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、一対の基板間に液晶注入口よりネガ型ネマチック液晶(Merck社製、MJ20195NCMP)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、120℃で加熱してから室温まで徐冷した。
【0118】
(5)液晶配向性(AC残像特性)の評価
上記(4)で製造した液晶表示素子について、複屈折計(AXOMETRICS社製、AXOSTEP高精度ミュラー行列イメージングポラリメータ)により、交流電圧12Vで7日間駆動させた前後での液晶方位角の変化を測定した。液晶方位角の変化が、1度未満を「良好」とし、1度以上を「不良」とした。液晶方位角の変化が小さいほど、液晶表示素子を長時間駆動した場合にもAC残像が生じにくく、液晶配向性が良好であるといえる。その結果、この実施例では「良好」の評価であった。
(6)電圧保持率(長期信頼性)の評価
ガラス基板をECB(Electrically Controlled Birefringence)に変更した以外は上記(3)及び(4)と同様にしてECB型液晶表示素子を製造した。この液晶表示素子について、バックライト上に7日間静置した後、70℃のオーブンで加熱した状態で、電圧保持率測定装置(東陽テクニカ社製、VHR-1)により電圧保持率を測定した。1秒周期で1Vの電圧を60マイクロ秒印加し、印加解除から1秒後の電圧保持率が90%以上を「良好」とし、90%未満を「不良」とした。電圧保持率の測定値が高いほど、液晶表示素子の信頼性が高いといえる。その結果、この実施例では「良好」の評価であった。
【0119】
[実施例2~13、比較例1~3]
上記実施例1において、液晶配向剤に含有させる重合体及び添加剤を下記表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、液晶配向剤を調製して光配向法により液晶配向膜を形成するとともに、液晶表示素子を製造して各種評価を行った。評価結果を下記表2に示した。
【0120】
【表2】
【0121】
表2に示すように、重合体(P)を含む実施例1~13の液晶配向剤は、重合体の溶解性が良好であり、光配向法により液晶配向膜を形成してFFS型液晶表示素子を製造した際に、液晶配向性(AC残像特性)及び電圧保持率(長期信頼性)が共に「良好」であった。これに対して、重合体(P)を含まない比較例1~3の液晶配向剤は、重合体の溶解性、液晶配向性及び電圧保持率のうち少なくともいずれかが実施例よりも劣っていた。
【0122】
ここで、実施例1~13、比較例1~3の結果について考察すると、重合体の溶解性に関しては、実施例1~13はいずれも「良好」であり、比較例1は「不良」であった。分子間で強く相互作用する水素結合性基を有する重合体は溶媒への溶解性が低いことが課題として挙げられるが、重合体(P)は、特定のスペーサー構造(-Y-R-Y-)及びこのスペーサー構造に結合する含窒素芳香族環を有しているため、重合体の溶解性が良好であったと推測される。
【0123】
具体的には、熱脱離性基(嵩高い置換基は重合体の溶解性を改善できるが、膜表面に存在すると液晶配向を乱すため、熱で脱離することが望ましい)を有する例では、水素結合性基を有する場合にも重合体の溶解性が良好であった。例えば、実施例3では、重合体(P)がウレア結合を有するとともに保護基としてBoc基を2個有しており、重合体の溶解性が改善されたと推測される。なお、溶解性が改善された他の要因として、アミノ基が保護されることにより重合体の塩基性が低下し、残存するポリアミック酸部位との相互作用が抑制されることによる影響も考えられる。
一方、比較例1では、重合体がウレア結合を有しているが、熱脱離性基を有していないため、重合体の溶解性(特に、貧溶媒であるBCへの溶解性)が不良であったと推測される。
【0124】
液晶配向性に関しては、実施例1~13はいずれも「良好」であり、比較例3は「不良」であった。これは、実施例1~13では、Y、Yが結合した芳香族環がイミド基に連結しているため、ジアミン部分構造からシクロブタン環への光誘起電子移動(電子移動増感反応)により、シクロブタン環のレトロ[2+2]反応による光分解が促進されたものと推測される。さらに、実施例1~13では、重合体(P)が2価の飽和脂肪族炭化水素基を有しており、分子鎖の柔軟性が高く、露光後の熱処理工程において、分子運動による分子鎖の自己組織的な配向が誘起され、異方性が増大したと推測される。それらの結果として実施例1~13では、少ない露光量で分子配向の異方性が効率よく発現し、液晶配向性が良好であったと推察される。一方、比較例3では、光分解反応が十分に起こっていなかったため、液晶配向性が不良であったと推測される。
【0125】
電圧保持率に関しては、実施例1~13はいずれも「良好」であり、比較例2及び3は「不良」であった。実施例1~13では、重合体(P)は水素結合性基(アミド結合、ウレア結合又は2,6-ジアミノピリジン骨格)を有しているため、分子間で多点水素結合が形成されることで、液晶表示素子の使用温度領域での分子運動性が抑制され、液晶配向膜の誘電分極が抑制されるとともに、液晶配向膜に捕捉された不純物の移動や拡散が抑制され、電圧保持率が向上したと推測される。さらに、重合体(P)は塩基性基(2-アミノピリジン骨格)を有しているため、液晶中に存在する不純物(ネガ型ネマチック液晶由来の不純物及び熱/光分解物、液晶シール剤から液晶への溶出物等)のうち、酸性成分(ギ酸等)を効率よく捕捉することができ、電圧保持率が向上したと推測される。また更に、重合体(P)が塩基性基を有することで、重合体(P)や他の重合体、添加剤等に含まれる酸性基(カルボキシル基等)と分子間で相互作用することにより物理架橋を形成でき、電圧保持率がより向上したと推察される。
【0126】
なお、長期間の駆動後においても電圧保持率が良好であると、液晶表示素子を長期間使用した際に発生する液晶中不純物に由来する種々の表示欠陥(例えば線残像;白黒の市松パターン表示をした後に全面をグレイスケール表示に切り替えた際に観察されるパターン境界に発生する線状の残像現象)を抑制でき、長期信頼性に優れた液晶表示素子を得ることができる傾向にある。
【0127】
実施例12及び13の重合体(P)は、モノマー組成は同一であるが重合シーケンスが異なる。実施例12の重合体(P)は重合シーケンスが制御されていないランダム共重合体(PI-11)であるのに対し、実施例13の重合体(P)は重合シーケンスが制御された交互共重合体(PI-12)であり、ジアミン(DA-2)及び(DA-11)由来の繰り返し単位がそれぞれ交互に連結された構造を有している。液晶配向性に関しては、実施例12及び13のいずれも「良好」であったが、実施例13は液晶方位角の変化が実施例12よりも小さく、液晶配向性がより良好であることが分かった。
【0128】
これは、交互共重合体(PI-12)では、一つのシクロブタン環部位に対し、光反応性が高くスペーサー構造(アルキレン基等)を有するジアミン及びメソゲン構造(芳香族環が相対的に多く含まれる構造)を有するジアミンが両方結合しており、重合体の光反応性や分子運動性が分子内で均一となっていることによるものと推測される。そのため、光反応によって生じる構造変化がメソゲン部位の分子配向の変化をより直接的に促すことができたと推測される。一方、ランダム共重合体(PI-11)では、一つのシクロブタン環部位に、光反応性が高くスペーサー構造を有するジアミン及びメソゲン構造を有するジアミンのいずれか一方のみが二つ結合している部分構造を含み、重合体の光反応性や分子運動性が分子内で不均一となっていると推測される。そのため、特に焼成温度が高い場合には、分子運動性が局所的に高くなり、光反応によって生じる構造変化に伴う分子配向の異方性が緩和しやすいと推測される。なお、比較例2の重合体(P)はランダム共重合体であるが、重合シーケンスが制御された交互共重合体とした場合には、同様に液晶配向性が改善されることが分かっている。
【0129】
[実施例14]
重合体(P)は、水素結合性基及び塩基性基を有しているため高極性となりやすく、そのため、表面自由エネルギーの低い低極性の他の重合体と混合して塗膜を形成すると、空気界面側よりも基板界面側に偏在しやすいと考えられる。そこで、重合体(P)と他の重合体とのポリマーブレンドによる効果を検証するために、下記表3に示す配合処方に変更した点以外は実施例1と同様にして液晶配向剤を調製して光配向法により液晶配向膜を形成するとともに、液晶表示素子を製造して各種評価を行い、上記実施例1~13の結果と比較した。
【0130】
【表3】
【0131】
その結果、実施例14では、他の重合体を配合しなかった実施例1に比べて液晶配向性及び電圧保持率が低下した。この結果は、重合体(PI-1)が基板界面側に偏在しやすいことに起因すると推測される。
【0132】
一方、重合体(P)がアミノ基等の極性官能基の保護基として熱脱離性基を有する場合は、他の重合体を配合した場合にも、実施例14に比べて液晶配向性及び電圧保持率が良好であった(実施例2,3,5~13)。これは、重合体(P)がアミノ基等の極性官能基の保護基として熱脱離性基を有する場合は相対的に低極性となり、他の重合体とのポリマーブレンドとして塗膜を形成しても、重合体(P)が空気界面側に偏在しやすくなり、その結果、良好な液晶配向性及び電圧保持率を発現できたと推測される。
【0133】
[実施例15:ラビング配向FFS型液晶表示素子]
(1)液晶配向剤の調製
重合体(固形分換算:(PI-11)10質量部、(PI-19)45質量部、(PI-21)45質量部)及び添加剤((AD-1)5質量部)をNMP及びBCにより希釈することにより、固形分濃度が4.0質量%、溶剤組成比がNMP:BC=70:30(質量比)となる溶液を得た。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(R-15)を調製した。
【0134】
(2)溶解性の評価
上記(1)において重合体の溶解性の評価を併せて行った。重合体を希釈でき、その溶液をフィルターで濾過できる場合を「良好」とし、重合体を希釈した際に懸濁又は凝集等が発生し、その溶液をフィルターで濾過できない場合を「不良」とした。その結果、この実施例では「良好」の評価であった。
【0135】
(3)ラビング法による液晶配向膜の形成
平板電極、絶縁層及び櫛歯状電極がこの順で片面に積層されたガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とのそれぞれの面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤(R-15)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間乾燥した後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分間乾燥を行い、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜表面に、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度30mm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmにて2回ラビング処理を行った。上記ラビング配向処理が施された塗膜を、超純水中で1分間超音波洗浄した後、100℃のオーブンで10分間乾燥を行い、液晶配向膜を形成した。
【0136】
(4)液晶表示素子の製造
上記(3)で作製した液晶配向膜を有する一対の基板について、実施例1と同様にしてFFS型液晶表示素子を製造した。
(5)液晶配向性(AC残像特性)の評価
上記(4)で製造した液晶表示素子について、実施例1と同様にして液晶配向性(AC残像特性)の評価を行った。その結果、この実施例では「良好」の評価であった。
(6)電圧保持率(長期信頼性)の評価
ガラス基板をECBに変更した以外は上記(3)及び(4)と同様にしてECB型液晶表示素子を製造した。この液晶表示素子について、実施例1と同様にして電圧保持率(長期信頼性)の評価を行った。その結果、この実施例では「良好」の評価であった。
【0137】
[実施例16~21、比較例4~5]
上記実施例15において、液晶配向剤に含有させる重合体及び添加剤を下記表4に示す通りに変更した以外は実施例15と同様にして、液晶配向剤を調製してラビング法により液晶配向膜を形成するとともに、液晶表示素子を製造して各種評価を行った。評価結果を下記表4に示した。
【0138】
【表4】
【0139】
表4に示すように、重合体(P)を含む実施例15~21の液晶配向剤は、重合体の溶解性が良好であった。また、ラビング法により液晶配向膜を形成してFFS型液晶表示素子を製造した際に、液晶配向性(AC残像特性)及び電圧保持率(長期信頼性)が共に「良好」であった。これに対して、重合体(P)を含まない比較例4及び5の液晶配向剤は、電圧保持率が実施例よりも劣っていた。
【0140】
ここで、実施例15~21、比較例4、5の結果について考察すると、重合体の溶解性に関しては、実施例15~21はいずれも「良好」であった。これは、実施例15~21の重合体(P)は特定のスペーサー構造を有しており、上述の通り、水素結合性基を有するにもかかわらず重合体の溶解性はいずれも良好であった。
【0141】
液晶配向性に関しては、実施例15~21はいずれも「良好」であった。これは、実施例15~21の重合体(P)は2価の飽和脂肪族炭化水素基を有しており、分子鎖の柔軟性が高く、ラビング法により膜にせん断応力が印加された際に膜が延伸されやすいため、分子鎖の配向が効率よく誘起されるためであると推測される。
【0142】
電圧保持率(長期信頼性)に関しては、実施例15~21はいずれも「良好」であり、比較例4及び5は「不良」であった。実施例15~21の重合体(P)は水素結合性基と塩基性基とを有しており、上述の通り電圧保持率が良好であったと推測される。一方、比較例4及び5で用いた重合体は、水素結合性基及び塩基性基の一方又は両方を有していないため、電圧保持率が不良であったと推測される。なお、本考察はあくまでも推測であり、本開示の内容を何ら限定するものではない。
【0143】
[実施例22及び23]
上記実施例1において、液晶配向剤に含有させる重合体を下記表5に示す通りに変更し、光配向処理における紫外線の照射量を500mJ/cmに変更した以外は実施例1と同様にして、液晶配向剤を調製して光配向法により液晶配向膜を形成するとともに、液晶表示素子を製造して各種評価を行った。評価結果を下記表5に示した。
【0144】
【表5】
【0145】
表5に示すように、重合体(P)を含む実施例22及び23の液晶配向剤は、重合体の溶解性が良好であった。また、得られた液晶表示素子は、液晶配向性(AC残像特性)及び電圧保持率(長期信頼性)が共に「良好」であった。
【0146】
以上により、重合体(P)を含む本開示の液晶配向剤によれば、液晶配向性及び電圧保持率が良好な液晶素子を得ることができることが分かった。