(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】車両用ドアクローザ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/38 20140101AFI20250226BHJP
E05B 81/20 20140101ALI20250226BHJP
E05B 81/36 20140101ALI20250226BHJP
E05B 81/74 20140101ALI20250226BHJP
【FI】
E05B77/38
E05B81/20 B
E05B81/36
E05B81/74
(21)【出願番号】P 2021110967
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 晨鳴
(72)【発明者】
【氏名】片川 峰孝
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-36598(JP,A)
【文献】特開2020-176394(JP,A)
【文献】特開平11-153211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0284069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられ、
前記車両の車体に設けられたストライカと係脱可能に係合するロック機構部と、
前記ロック機構部を動作させるアクチュエータ部と、
を備える、車両用ドアクローザ装置であって、
前記ロック機構部は、
前記ストライカと係合及び離脱するラッチと、
前記ラッチと係合して、前記ラッチと前記ストライカとの係合状態を維持するラチェットと、
前記ラッチを動作させるラッチレバーと、
前記ラッチとの係合を解除するように前記ラチェットを動作させるリリースレバーと、を備え、
前記アクチュエータ部は、
駆動モータと、
前記駆動モータの動力によって回転するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤと噛合する歯部が設けられており、前記ピニオンギヤの回転によって回動し、前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを動作させるセクタギヤと、を備え、
前記セクタギヤは、前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを押圧して前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを動作させる押圧部を有し、
前記セクタギヤの回動位置は、前記セクタギヤの前記押圧部が前記ラッチレバー及び前記リリースレバーから離間した位置である中立位置を含み、
前記セクタギヤには、前記セクタギヤと一体に回動し、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記セクタギヤの一部と重なるように形成された、樹脂ギヤ部材が設けられており、
前記樹脂ギヤ部材には、前記ピニオンギヤと噛合する歯部が設けられており、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部は、
前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記ピニオンギヤと噛合し、
前記セクタギヤの回動方向において、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに前記ピニオンギヤと噛合する位置を含む、前記セクタギヤの前記歯部の一部のみと重なるように設けられており、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部の歯面は、
前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、少なくとも一部が前記セクタギヤの前記歯部の歯面よりも前記ピニオンギヤに近づく方向に向かって突出するように形成されている、車両用ドアクローザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記アクチュエータ部は、被検出部が所定位置にあるか否かを検出することによって、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるか否かを検出する、中立位置検出部をさらに備え、
前記被検出部は、前記樹脂ギヤ部材に設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記樹脂ギヤ部材には、前記セクタギヤの回動軸方向と平行に固定部材が挿通する固定部が設けられており、
前記固定部は、前記セクタギヤの回動軸方向から見て前記セクタギヤと重なる位置に設けられており、
前記樹脂ギヤ部材は、前記固定部を挿通する前記固定部材によって、前記セクタギヤに固定されている、車両用ドアクローザ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部は、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記ピニオンギヤと当接するように形成されており、
前記樹脂ギヤ部材には、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記樹脂ギヤ部材の前記歯部と前記固定部との間に、前記樹脂ギヤ部材の前記歯部が前記セクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように前記樹脂ギヤ部材が撓むことを許容する撓み部が設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記撓み部は、前記樹脂ギヤ部材を前記セクタギヤの回動軸方向に貫通する孔部を備える、車両用ドアクローザ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記孔部は、前記セクタギヤの回動方向を長手方向とする長孔形状を有する、車両用ドアクローザ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記孔部は、
前記セクタギヤの回動方向において、前記歯部の一端部よりも外側から、前記歯部の他端部よりも外側まで、前記セクタギヤの回動方向に延在し、
前記歯部と対向して前記セクタギヤの回動方向に延在する外径側壁部と、前記外径側壁部よりも前記セクタギヤの回動軸の径方向内側で、前記セクタギヤの回動方向に延在する内径側壁部と、を有し、
前記外径側壁部は、
前記セクタギヤの回動軸方向から見て、波形状に前記セクタギヤの回動方向に延在し、
前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記セクタギヤの回動方向において前記歯部の歯先部とオーバーラップしている位置で、前記セクタギヤの回動軸の径方向外側に向かって凸状に湾曲して前記セクタギヤの回動方向に延在しており、前記セクタギヤの回動方向において前記歯部の歯底部とオーバーラップしている位置で、前記内径側壁部に向かって凸状に湾曲して前記セクタギヤの回動方向に延在している、車両用ドアクローザ装置。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一項に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記アクチュエータ部は、被検出部が所定位置にあるか否かを検出することによって、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるか否かを検出する、中立位置検出部をさらに備え、
前記被検出部は、前記樹脂ギヤ部材に設けられており、
前記固定部は、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記被検出部と重なる位置に設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記樹脂ギヤ部材は、前記セクタギヤの回動軸方向における、前記セクタギヤの一方側のみに設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられる車両用ドアクローザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアの開閉動作を行う車両用ドア開閉システムが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、車両の車体後部に設けられたバックドアの開閉動作を行う車両用ドア開閉システムが開示されている。特許文献1及び特許文献2に記載の車両用ドア開閉システムは、車両の後部開口の下方部分に設けられたストライカと係脱可能に構成される車両用ドアクローザ装置(ドアラッチ装置)を備える。車両用ドアクローザ装置は、車両のストライカと係脱可能に係合するロック機構部(噛合機構)と、ロック機構部を電動で動作させるアクチュエータ部(駆動機構)と、を備える。そして、アクチュエータ部は、ラッチ駆動モータと、ラッチ駆動モータの動力によって回転するピニオンギヤと、ピニオンギヤと噛合し、ロック機構部を動作させるセクタギヤと、を備える。
【0003】
通常、バックドアを含む車両の各ドアが操作されるのは車両の駐停車時であり、車両の走行時にバックドアを含む車両の各ドアは操作されないので、車両の走行時において、セクタギヤの回動位置は中立位置に維持される。一方、車両は、駐停車時に振動が生じることは少なく、悪路走行時や段差を乗り越える際など、走行時に振動が生じることが多い。そして、車両に搭載された車両用ドアクローザ装置は、車両が振動すると、それに伴って振動が生じやすい。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載の車両用ドアクローザ装置は、車両の走行時、すなわち、セクタギヤの回動位置が中立位置であるときに、振動が生じやすい。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載の車両用ドアクローザ装置におけるセクタギヤは、鋼鉄等の金属材料によって作製されているので、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、ピニオンギヤとセクタギヤとが衝突すると、大きな歯打ち音が発生する、という課題があった。
【0005】
そこで、特許文献3には、セクタギヤに付勢力を付与する補助付勢手段を備える車両用ドアクローザ装置が開示されている。
【0006】
また、車両用ドアクローザ装置に限らず、歯車同士の衝突による歯打ち音を低減するために、例えば、特許文献4から特許文献6に記載された技術が知られている。
【0007】
特許文献4及び特許文献5に記載の技術は、いずれもラック・アンド・ピニオン機構におけるラックの歯部とピニオンとの歯打ち音を低減するものである。特許文献4に記載の技術は、ラックをピニオンから離れる側に押圧して、ラックの歯部とピニオンとの隙間を常に適正に維持することによって、ラックの歯部とピニオンとが衝突することを抑制し、歯打ち音を低減するものである。特許文献5に記載の技術は、ラックをピニオンから近づく側に押圧し、ラックとピニオンとが確実に当接状態となるようにすることによって、歯打ち音を低減するものである。
【0008】
特許文献6に記載の技術は、ドリブンギヤを挟み込むように、ドリブンギヤの軸方向両側に鋼鉄製のクッションギヤを配置し、ドリブンギヤよりも先にクッションギヤがドライブギヤと衝突するようにクッションギヤを構成することによって、ドライブギヤとドリブンギヤとが直接衝突することによる歯打ち音を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6442772号公報
【文献】特許第6442773号公報
【文献】特許第5320648号公報
【文献】特許第3749074号公報
【文献】特許第4012756号公報
【文献】特開2001-336610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3の車両用ドアクローザ装置では、セクタギヤの回動軸方向から見て、セクタギヤの外側に補助付勢手段を配置しているため、セクタギヤの回動軸方向から見た車両用ドアクローザ装置の寸法が大きくなってしまう、という課題があった。
【0011】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の車両用ドアクローザ装置に特許文献4及び特許文献5に記載の技術を適用しても、セクタギヤの回動軸方向から見て、セクタギヤの外側にラックを押圧する部材を配置する必要があるため、セクタギヤの回動軸方向から見た車両用ドアクローザ装置の寸法が大きくなってしまう。
【0012】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の車両用ドアクローザ装置に特許文献6に記載の技術を適用すると、セクタギヤを挟み込むように、セクタギヤの軸方向両側にクッションギヤが配置される。このとき、クッションギヤは鋼鉄製であるので、バックラッシに起因する程度の歯打ち音は低減可能であったとしても、車両の悪路走行時や段差を乗り越える際など、車両の振動に起因した車両用ドアクローザ装置の振動によって、ピニオンギヤとセクタギヤとが衝突した場合の歯打ち音を低減することは困難である。また、セクタギヤの軸方向両側の全面を覆うようにクッションギヤが配置されることとなるので、クッションギヤが大型となり、車両用ドアクローザ装置が大型化してしまう。
【0013】
本発明は、大型化することを抑制しつつ、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる車両用ドアクローザ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
車両のドアに設けられ、
前記車両の車体に設けられたストライカと係脱可能に係合するロック機構部と、
前記ロック機構部を動作させるアクチュエータ部と、
を備える、車両用ドアクローザ装置であって、
前記ロック機構部は、
前記ストライカと係合及び離脱するラッチと、
前記ラッチと係合して、前記ラッチと前記ストライカとの係合状態を維持するラチェットと、
前記ラッチを動作させるラッチレバーと、
前記ラッチとの係合を解除するように前記ラチェットを動作させるリリースレバーと、を備え、
前記アクチュエータ部は、
駆動モータと、
前記駆動モータの動力によって回転するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤと噛合する歯部が設けられており、前記ピニオンギヤの回転によって回動し、前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを動作させるセクタギヤと、を備え、
前記セクタギヤは、前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを押圧して前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを動作させる押圧部を有し、
前記セクタギヤの回動位置は、前記セクタギヤの前記押圧部が前記ラッチレバー及び前記リリースレバーから離間した位置である中立位置を含み、
前記セクタギヤには、前記セクタギヤと一体に回動し、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記セクタギヤの一部と重なるように形成された、樹脂ギヤ部材が設けられており、
前記樹脂ギヤ部材には、前記ピニオンギヤと噛合する歯部が設けられており、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部は、
前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記ピニオンギヤと噛合し、
前記セクタギヤの回動方向において、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに前記ピニオンギヤと噛合する位置を含む、前記セクタギヤの前記歯部の一部のみと重なるように設けられており、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部の歯面は、
前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、少なくとも一部が前記セクタギヤの前記歯部の歯面よりも前記ピニオンギヤに近づく方向に向かって突出するように形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両用ドアクローザ装置は、大型化することを抑制しつつ、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の車両用ドアクローザ装置を備える車両用ドア開閉システムが搭載された車両の後部を右側から見た図である。
【
図2】
図1の車両において、バックドアを開けた状態の車両の後部を右側から見た図である。
【
図3】本発明の一実施形態の車両用ドアクローザ装置を前方右斜め上側から見た図である。
【
図4】
図3の車両用ドアクローザ装置を前方斜め下側から見た図である。
【
図5】
図3の車両用ドアクローザ装置を左側から見た側面図である。
【
図6】
図3の車両用ドアクローザ装置を、バックプレートを外した状態で上方斜め前側から見た図である。
【
図7】
図3の車両用ドアクローザ装置を、バックプレート及び本体ボディを外した状態で上方斜め前側から見た図である。
【
図8】
図3の車両用ドアクローザ装置における、ラッチに対するハーフラッチ検出スイッチ及びフルラッチ検出スイッチの配置を示す図である。
【
図9A】
図3の車両用ドアクローザ装置において、ラッチがアンラッチ位置にあるときのロック機構部の要部の状態を示す図である。
【
図9B】
図3の車両用ドアクローザ装置において、ラッチがハーフラッチ位置にあるときのロック機構部の要部の状態を示す図である。
【
図9C】
図3の車両用ドアクローザ装置において、ラッチがフルラッチ位置にあるときのロック機構部の要部の状態を示す図である。
【
図10】
図3の車両用ドアクローザ装置において、セクタギヤの回動位置が中立位置であるときのセクタギヤ周辺を前方斜め下側から見た図である。
【
図11】
図10の樹脂ギヤ部材の歯部周辺をさらに拡大して示した図である。
【
図12】
図10のセクタギヤ周辺の要部を、セクタギヤの背面側から見た図である。
【
図13】本発明の一実施形態の車両用ドアクローザ装置におけるセクタギヤ及び樹脂ギヤ部材の第1変形例をセクタギヤの前面側から見た図である。
【
図14】本発明の一実施形態の車両用ドアクローザ装置におけるセクタギヤ及び樹脂ギヤ部材の第2変形例をセクタギヤの背面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両用ドアクローザ装置を備える車両用ドア開閉システムが搭載された車両の一実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。各図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。なお、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0018】
図1及び
図2に示すように、車両100は、車両100の車体後面に形成された後部開口104を開閉するバックドア101を備える。バックドア101は、テールゲートとも称される。バックドア101の上端部には、ヒンジ102が設けられている。
【0019】
<ドア開閉制御システム>
本実施形態の車両用ドア開閉システム1は、車両100の車体後部に設けられたバックドア101の開閉を行うものである。車両用ドア開閉システム1は、車両用ドア開閉装置2と、車両用ドアクローザ装置3と、電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)7と、を備える。
【0020】
車両用ドア開閉装置2は、車両100のテールゲートとも称されるバックドア101をモータの動力を用いて開閉する電動装置である。本実施形態では、車両用ドア開閉装置2は、車両100のバックドア101のヒンジ102を回動することによってバックドア101を開閉できるように、車両100の天井に固定される。
【0021】
車両用ドアクローザ装置3は、車両100の後部開口104の下端部に設けられたストライカ103と係脱可能に構成される電動装置である。車両用ドアクローザ装置3は、バックドア101が後部開口104を閉じた状態(
図1に示す閉状態)にした際、ストライカ103と係合できるように、バックドア101の下方部分に設けられる。そして、車両用ドアクローザ装置3とストライカ103とが係合すると、車両100のバックドア101は、閉状態にロックされる。車両用ドアクローザ装置3とストライカ103との係合が解除されると、車両100のバックドア101は、開閉動作可能となる。
【0022】
電子制御装置7は、前述した車両用ドア開閉装置2及び車両用ドアクローザ装置3の各動作を制御する装置である。電子制御装置7は、不図示の配線等を介して車両用ドア開閉装置2及び車両用ドアクローザ装置3と電気的に接続され、例えば、車両100の車体側部内に設けられる。
【0023】
なお、本実施形態では、車両用ドア開閉装置2、車両用ドアクローザ装置3、及び電子制御装置7が設けられた車両100は、ワンボックスカーやステーションワゴン等、後部開口104が荷物載置スペースや座席に通じるタイプの車両である。したがって、車両100は、バックドア101が開状態になって開放される後部開口104から、荷物の出し入れが可能となっている。さらに、車両100は、バックドア101が開状態になって開放される後部開口104から、乗員の乗り降りが可能であってもよい。
【0024】
<ドア開閉装置>
次に、車両用ドア開閉装置2の構成について説明する。車両用ドア開閉装置2は、車両100のバックドア101を電動で開閉するPTG(Power Tail Gate)ドライブユニットである。車両用ドア開閉装置2は、動力源であるPTGモータ21と、PTGモータ21の動力によって旋回するアーム22と、回転自在にアーム22に支持されたロッド23と、を備える。
【0025】
PTGモータ21は、車両100の車載電源から給電されて駆動し、これにより、バックドア101を開閉する動力を発生させる。PTGモータ21の駆動軸(回転軸)には、アーム22の基端部分が取り付けられる。アーム22は、PTGモータ21の動力によってPTGモータ21の駆動軸を中心に旋回する。アーム22の先端部分には、ロッド23の一端が回転自在に支持される。ロッド23の他端は、バックドア101のヒンジ102に接続する。ヒンジ102の一端は、ブラケット等を用いて回転自在に車両100の天井に取り付けられる。ヒンジ102の他端は、バックドア101に固定される。
【0026】
PTGモータ21の駆動軸とロッド23とが接続されたアーム22は、ロッド23及びヒンジ102を介してバックドア101に連係される。また、アーム22は、PTGモータ21の動力を受けて旋回するとともに、受けた動力をロッド23及びヒンジ102に伝達する。これにより、アーム22は、ロッド23を介してヒンジ102をバックドア101の開方向又は閉方向(
図2参照)に移動させる。
【0027】
なお、バックドア101の開方向は、バックドア101が車両100の後部開口104から離間する回動方向である。バックドア101の閉方向は、バックドア101が車両100の後部開口104に近接する回動方向である。車両用ドア開閉装置2は、PTGモータ21の動力を用いてアーム22を開方向に旋回させることにより、バックドア101を開く開動作を行う。また、車両用ドア開閉装置2は、PTGモータ21の動力を用いてアーム22を閉方向に旋回させることにより、バックドア101を閉じる閉動作を行う。
【0028】
<車両用ドアクローザ装置>
次に、車両用ドアクローザ装置3の構成について説明する。
【0029】
図3~
図7に示すように、車両用ドアクローザ装置3は、車両100に設けられたストライカ103(
図1及び
図2参照)と係脱可能に係合するロック機構部30と、ロック機構部30を動作させるアクチュエータ部50と、ロック機構部30及びアクチュエータ部50が取り付けられるブラケット70と、を備える。本実施形態では、アクチュエータ部50は、ロック機構部30を電動で動作させる。
【0030】
(ロック機構部の構成)
ロック機構部30は、車両100に設けられたストライカ103(
図1及び
図2参照)と係合及び離脱するラッチ31と、ストライカ103とラッチ31との係合状態を解除可能に維持するラチェット32と、ラチェット32の回動を規制するストッパ33と、ラッチ31と連係して回動するラッチレバー34と、ラッチ31とラチェット32との係合状態を解除するリリースレバー35と、を備える。
【0031】
ロック機構部30は、ロック機構部30のラッチ31と、ラチェット32と、ストッパ33と、を収容するケーシング40を備える。ケーシング40は、本体ボディ41と、本体ボディ41の下部を覆うカバープレート42と、本体ボディ41の上部を覆うバックプレート43と、を有する。
【0032】
カバープレート42は、比較的板厚の厚い金属板によって成形される。カバープレート42は、前端から後端に向かって上方に傾斜して延びる略平板状の底壁部42aと、底壁部42aの前端部から前方斜め上方向に延びる前壁部42bと、底壁部42aの左端部及び右端部から上方向に延びる左右一対の側壁部42cと、左右一対の側壁部42cそれぞれの上端部から車幅方向外側に向かって略平板状に延びる左右一対のフランジ部42dと、を有する。カバープレート42には、底壁部42aと、前壁部42bと、左右一対の側壁部42cと、によって囲まれた収容空間が形成される。カバープレート42の底壁部42aの上部は、本体ボディ41によって覆われている。
【0033】
カバープレート42の底壁部42aには、ラッチ31が固定されるラッチ軸36と、ラチェット32が固定されるラチェット軸37と、が回転自在に軸支されている。ラッチ軸36及びラチェット軸37は、カバープレート42の底壁部42aに対して略垂直に、カバープレート42の底壁部42aから前方斜め上方向へ延在するように設けられており、互いに平行に延在している。ラッチ31とラッチ軸36とは、ラッチ軸36を回動軸として一体に回動する。ラチェット32とラチェット軸37とは、ラチェット軸37を回動軸として一体に回動する。本実施形態では、ラッチ軸36とラチェット軸37とは、左右方向において、ラッチ軸36がラチェット軸37よりも左側、ラチェット軸37がラッチ軸36よりも右側、となるように配置されている。
【0034】
ロック機構部30は、ラッチ31がハーフラッチ位置に回動したことを検出するハーフラッチ検出スイッチ38aと、ラッチ31がフルラッチ位置に回動したことを検出するフルラッチ検出スイッチ38bと、ラチェット32が所定のセット位置にいるか否かを検出するラチェット検出スイッチ38cと、をさらに備える。ハーフラッチ検出スイッチ38a、フルラッチ検出スイッチ38b、及び、ラチェット検出スイッチ38cは、いずれも、ケーシング40の内部、すなわち、カバープレート42に形成された前述の収容空間内に配置されている。
【0035】
ラッチ31の「フルラッチ位置」とは、ラッチ31と車両100のストライカ103とが完全に係合する状態となるラッチ31の位置を指し、ラッチ31の「ハーフラッチ位置」とは、ラッチ31と車両100のストライカ103とが辛うじて係合する状態となるラッチ31の位置を指し、ラッチ31の「アンラッチ位置」とは、ラッチ31と車両100のストライカ103とが係合しない状態となるラッチ31の位置を指す。
【0036】
ラッチ31がフルラッチ位置にあるとき、バックドア101は、全閉位置で全閉状態の「フルラッチ状態」となる。ラッチ31がハーフラッチ位置にあるとき、バックドア101は、全閉位置の直前の位置で、ストライカ103がラッチ31に辛うじて係合して、バックドア101に荷重がかからなければ開動作しないものの全閉状態ではない「ハーフラッチ状態」となり、ラッチ31がアンラッチ位置にあるとき、バックドア101は、自由に開動作が可能な「アンラッチ状態」となる。
【0037】
ケーシング40には、ストライカ進入溝45が形成されている。ストライカ進入溝45は、カバープレート42の前壁部42bの左右略中央部から後方に向かって凹状に切り欠かれて形成されており、前述のストライカ103が進入可能となっている。ストライカ進入溝45は、左右方向において、ラッチ軸36とラチェット軸37との間に形成されている。
【0038】
図6に示すように、本体ボディ41は、カバープレート42の底壁部42aの上部を覆う区画壁部41aを有する。区画壁部41aは、互いに平行なラッチ軸36及びラチェット軸37の上端側から見て、ラッチ軸36、ハーフラッチ検出スイッチ38a、及び、フルラッチ検出スイッチ38bが配置される領域と、ラチェット軸37及びラチェット検出スイッチ38cが配置される領域と、においては、本体ボディ41の下端部近傍で延在する。一方、区画壁部41aは、互いに平行なラッチ軸36及びラチェット軸37の上端側から見て、ストライカ進入溝45が形成される領域においては、本体ボディ41の上端部近傍で延在する。したがって、区画壁部41aは、ストライカ進入溝45が形成される領域が、ラッチ軸36、ハーフラッチ検出スイッチ38a、及び、フルラッチ検出スイッチ38bが配置される領域と、ラチェット軸37及びラチェット検出スイッチ38cが配置される領域と、に対して上方に窪むように形成されている。
【0039】
ラッチ軸36及びラチェット軸37は、カバープレート42に形成された前述の収容空間内に、本体ボディ41の区画壁部41aを挿通して配置されている。ラッチ31、ラチェット32、及びストッパ33は、カバープレート42に形成された前述の収容空間内であって、区画壁部41aの下方に配置されている。ハーフラッチ検出スイッチ38a、フルラッチ検出スイッチ38b、及び、ラチェット検出スイッチ38cは、カバープレート42に形成された前述の収容空間内であって、区画壁部41aの上方に配置されている。ストライカ進入溝45は、ストライカ進入溝45が形成される領域の区画壁部41aが、ラッチ軸36、ハーフラッチ検出スイッチ38a、及び、フルラッチ検出スイッチ38bが配置される領域の区画壁部41aと、ラチェット軸37及びラチェット検出スイッチ38cが配置される領域の区画壁部41aと、に対して上方に窪んだ窪み形状によって形成される。したがって前述のストライカ103は、ストライカ進入溝45が形成された領域の区画壁部41aの下方に進入する。
【0040】
図3及び
図4に示すように、バックプレート43は、本体ボディ41の上部を覆う略平板状のカバー部43aと、カバー部43aの左右両端部からそれぞれ車幅方向外側に向かって略平板状に延びる左右一対のフランジ部43bと、を有する。左右一対のフランジ部43bは、カバープレート42の左右一対のフランジ部42dとそれぞれ対向して延在する。さらに、バックプレート43は、カバー部43aの後端部の右側領域から上方に延在する取付部43cを有する。
【0041】
図7に示すように、ラッチ31は、略中央に形成された貫通孔にラッチ軸36が挿通される板状の部材である。ラッチ31には、外周縁から貫通孔(ラッチ軸36)に向かって窪んだ凹形状を有し、バックドア101のストライカ103が挿入される係合溝31aが形成されている。ラッチ31は、係合溝31aがストライカ進入溝45と交差してラッチ軸36を回動軸として回動するように、カバープレート42に形成された前述の収容空間内に配置される。ラッチ31は、ラッチ軸36に設けられたラッチばね36aにより、ラッチ軸36を中心として、フルラッチ位置からハーフラッチ位置を経由しアンラッチ位置に至る方向、すなわち、ラッチ軸36の上端側から見て反時計回りの方向に付勢されている。ラッチばね36aは、カバープレート42に形成された前述の収容空間内であって、本体ボディ41の区画壁部41aの上方に配置されている。
【0042】
ラッチ31は、バックドア101が閉じる際に、ハーフラッチ位置及びフルラッチ位置で車両100のストライカ103を係合保持する。すなわち、ラッチ31は、バックドア101が閉じるとともにストライカ進入溝45に沿って進入するストライカ103を係合溝31aに当接させる。その後、ラッチ31は、ストライカ103を係合溝31aに当接した状態を維持しながら、ラッチばね36aの付勢力に抗してアンラッチ位置からハーフラッチ位置に回動し、ハーフラッチ位置でストライカ103を係合溝31aに係合させてストライカ103を係合溝31a内に保持する。さらに、ラッチ31は、このストライカ103を係合溝31aに係合した状態を維持しながら、ラッチばね36aの付勢力に抗してハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動し、これにより、係合溝31a内にストライカ103を完全に保持する。
【0043】
一方、ラッチ31は、後述するラチェット32との係合状態が解除された際、ラッチばね36aの付勢力によって、フルラッチ位置からハーフラッチ位置を経由してアンラッチ位置に回動する。これにより、ラッチ31は、係合溝31aとストライカ103との係合状態を解除し、係合溝31aからストライカ103を解放する。
【0044】
ラチェット32は、ラッチ31の回動位置を規制する部材である。ラチェット32は、略中央に形成された貫通孔にラチェット軸37が挿通される板片状の部材である。ラチェット32は、後述するリリースレバー35の下側アーム部35aと当接可能に後方に延出したレバーアーム32aと、ラッチ31と係合可能にラチェット軸37の径方向外側に延出したラッチ係合アーム32bと、を有する。ラチェット32は、ラチェット軸37を回動軸として回動するように、カバープレート42に形成された前述の収容空間内に配置される。ラチェット32は、ラチェット軸37に設けられたラチェットばね37aにより、ラチェット軸37を中心として、ラッチ31に近接する方向、すなわち、ラチェット軸37の上端側から見て時計回りの方向(以下、係合方向という)へ付勢されている。ラチェットばね37aは、カバープレート42に形成された前述の収容空間内であって、本体ボディ41の区画壁部41aの上方に配置されている。
【0045】
ラチェット32は、ラチェットばね37aの付勢力によって係合方向に回動し、これにより、ラッチ31と係合して、ラッチ31の回動を規制するとともにラッチ31とストライカ103との係合状態を維持する。一方、ラチェット32は、後述するリリースレバー35の作用により、ラチェットばね37aの付勢力に抗してラッチ31から離間する方向、すなわち、ラチェット軸37の上端側から見て反時計回りの方向(以下、解除方向という)に回動する。これにより、ラチェット32は、ラッチ31との係合状態を解除する。
【0046】
ラチェット32の係合方向への回動は、カバープレート42の底壁部42aに配置されたストッパ33によって規制される。ストッパ33は、例えば、弾性部材である。本実施形態では、ストッパ33は、カバープレート42に形成された前述の収容空間内の右前端部に設けられている。
【0047】
図8に示すように、ハーフラッチ検出スイッチ38a及びフルラッチ検出スイッチ38bは、ラッチ31の回動位置を検出するスイッチである。ハーフラッチ検出スイッチ38a及びフルラッチ検出スイッチ38bは、いずれも、対象物との接触によって沈み込むプッシュボタン式の検出端子を用いて構成されている。ハーフラッチ検出スイッチ38aは、フルラッチ検出スイッチ38bよりも上方に配置されており、ラッチ軸36の周方向において、ラッチ軸36の上端側から見てフルラッチ検出スイッチ38bから反時計回り方向に所定角度ずれた位置に配置されている。
【0048】
ラッチ31の上面には、ラッチ31の上面から上方に突出したカム部31eが設けられている。カム部31eは、ラッチ31と一体に回動する。カム部31eは、ラッチ31の回動軌跡に沿った円弧形状のカム面31fを有する。カム面31fは、ラッチ31の上面から上方に延在し、本体ボディ41の区画壁部41aに形成された孔部を挿通して、本体ボディ41の区画壁部41aの上方に延出している。カム面31fは、ラッチ31の回動軌跡に沿ってラッチ31の周方向に延在する円弧形状を有する第1カム面31f1と、第1カム面31f1の上端から上方に延在し、ラッチ31の周方向における第1カム面31f1の反時計回り方向側の端部から、ラッチ31の回動軌跡に沿ってラッチ31の周方向に延在する円弧形状を有する第2カム面31f2と、を有する。第1カム面31f1と第2カム面31f2とは、ラッチ31の回動軌跡に沿った同一の円弧面を形成している。第2カム面31f2の周方向長さは、第1カム面31f1よりも小さくなっており、カム面31fは、一部幅広のカム面部分をもつ二段構造となっている。第1カム面31f1は、ラッチ31の回動と一体にカム部31eが回動することによって、フルラッチ検出スイッチ38bの検出端子と摺接可能である。第2カム面31f2は、ラッチ31の回動と一体にカム部31eが回動することによって、ハーフラッチ検出スイッチ38aの検出端子と摺接可能である。
【0049】
ハーフラッチ検出スイッチ38aは、ラッチ31がハーフラッチ位置に回動したことを検出するハーフラッチ検出部として機能する。
【0050】
具体的には、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置である場合、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、カム部31eの第2カム面31f2と接触した状態となり、オン状態になる。そして、ラッチ31がアンラッチ位置からハーフラッチ位置まで回動する間、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、第2カム面31f2との接触が継続され、オン状態が維持される。そして、ラッチ31の回動位置が、ハーフラッチ位置になると、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、第2カム面31f2から離れてオフ状態になる。このように、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、オン状態からオフ状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置からハーフラッチ位置に変化したことを検出する。なお、ラッチ31がハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで回動する間、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、第2カム面31f2から離れた状態を継続して、オフ状態を維持する。
【0051】
一方、ラッチ31がフルラッチ位置からハーフラッチ位置まで回動する間、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、第2カム面31f2から離れた状態が維持され、オフ状態が維持される。そして、ラッチ31の回動位置がハーフラッチ位置になると、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、第2カム面31f2に接触してオン状態になる。さらに、ラッチ31がハーフラッチ位置からアンラッチ位置まで回動する間、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、第2カム面31f2との接触が維持され、オン状態が維持される。このように、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、オフ状態からオン状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置からハーフラッチ位置に変化したことを検出する。
【0052】
フルラッチ検出スイッチ38bは、ラッチ31がフルラッチ位置に回動したことを検出するフルラッチ検出部として機能する。
【0053】
具体的には、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置である場合、フルラッチ検出スイッチ38bは、カム部31eの第1カム面31f1と接触した状態となり、オン状態になる。そして、ラッチ31がアンラッチ位置からハーフラッチ位置を経てフルラッチ位置まで回動する間、フルラッチ検出スイッチ38bは、第1カム面31f1との接触が継続され、オン状態が維持される。そして、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置になると、フルラッチ検出スイッチ38bは、第1カム面31f1から離れてオフ状態になる。このように、フルラッチ検出スイッチ38bは、オン状態からオフ状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置であることを検出する。
【0054】
一方、ラッチ31の回動位置がフルラッチ位置である場合、フルラッチ検出スイッチ38bは、カム部31eの第1カム面31f1から離れた状態となり、オフ状態になる。そして、ラッチ31がフルラッチ位置からアンラッチ位置に向かって回動すると、フルラッチ検出スイッチ38bは、第1カム面31f1に接触してオン状態になる。そして、ラッチ31が、フルラッチ検出スイッチ38bと接触した後、ハーフラッチ位置を経由してアンラッチ位置まで回動する間、フルラッチ検出スイッチ38bは、第1カム面31f1との接触が維持され、オン状態が維持される。このように、フルラッチ検出スイッチ38bは、このようなオフ状態からオン状態への切り替わりによって、ラッチ31の回動位置が、フルラッチ位置からハーフラッチ位置又はアンラッチ位置に変化したことを検出する。なお、ラッチ31の回動位置がアンラッチ位置である場合、フルラッチ検出スイッチ38bは、カム部31eの第1カム面31f1と接触した状態となり、オン状態になる。
【0055】
前述したハーフラッチ検出スイッチ38a及びフルラッチ検出スイッチ38bは、それぞれ、ラッチ31の回動位置の検出結果を示す電気信号、すなわち、オン状態又はオフ状態を示す検出信号を電子制御装置7に順次送信する。
【0056】
図7に戻って、ラチェット検出スイッチ38cは、ラチェット32がセット位置にいるか否かを検出するラチェット検出部として機能する。セット位置とは、ラッチ31がハーフラッチ位置又はフルラッチ位置にあるときに、ラッチ31と係合してラッチ31の回動を規制するラチェット32の位置である。ラチェット32は、セット位置にあるとき、ラチェットばね37aによって付勢されてストッパ33に当接している。
【0057】
ラチェット検出スイッチ38cは、対象物との接触によって沈み込むプッシュボタン式の検出端子を用いて構成されている。ラチェット検出スイッチ38cは、ラチェット32近傍の所定位置に配置される。
【0058】
ラチェット32の上面には、ラチェット32の上面から上方に突出した突起部32cが設けられている。突起部32cは、ラチェット32と一体に回動する。突起部32cは、ラチェット32の上面から上方に延在し、本体ボディ41の区画壁部41aに形成された孔部を挿通して、本体ボディ41の区画壁部41aの上方に延出している。突起部32cは、ラチェット32と一体に回動することによって、ラチェット検出スイッチ38cの検出端子と当接可能である。ラチェット検出スイッチ38cは、ラチェット32がセット位置にいる場合、突起部32cと当接しておらず、オン状態になる。ラチェット検出スイッチ38cは、ラチェット32がセット位置にない場合、突起部32cと当接してオフ状態になる。このように、ラチェット検出スイッチ38cは、オン状態とオフ状態との切り替わりによって、ラチェット32がセット位置にあるか否かを検出する。ラチェット検出スイッチ38cは、ラチェット32がセット位置にあるか否かの検出結果を示す電気信号、すなわち、オン状態又はオフ状態を示す検出信号を電子制御装置7に送信する。
【0059】
ラッチレバー34は、ラッチ31をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ回動させるためのものである。本実施形態では、ラッチレバー34は、バックプレート43の上面に近接又は当接する位置に配置される。ラッチレバー34は、ラッチ軸36の上端側から見て、角丸長方形状を有する。ラッチ軸36の上端側から見て、ラッチレバー34の長手方向の一端部は、ラッチ軸36の上端部に固定される。ラッチレバー34とラッチ軸36とは、ラッチ軸36を回転軸として一体に回動する。したがって、ラッチレバー34と、ラッチ軸36と、ラッチ31とは、ラッチ軸36を回転軸として一体に回動する。ラッチレバー34は、ラッチ軸36の上端側から見て、ラッチレバー34の長手方向の他端部(ラッチ軸36に固定された側と反対側の端部)がラッチ軸36よりも後方となるように配置されている。ラッチレバー34の長手方向の他端部には、ラッチレバー34の上面からラッチ軸36と略平行に上方に延出した当接部34aが設けられている。当接部34aは、ラッチ軸36と略平行に上方に延出した略円柱形のピンである。当接部34aは、後述するセクタギヤ53の回動時に、セクタギヤ53の押圧部53cが当接可能な位置まで、ラッチレバー34の上面からラッチ軸36と略平行に上方に延出している。
【0060】
リリースレバー35は、ラッチ31とラチェット32との係合状態を解除するためのものである。本実施形態では、バックプレート43の取付部43cに、リリースレバー軸39が固定されており、リリースレバー35は、リリースレバー軸39に回動可能に軸支されている。リリースレバー軸39は、左右方向において、ラッチ軸36よりも右方に設けられている。リリースレバー35は、前後方向において、バックプレート43の取付部43cの背面に回動可能に設けられている。リリースレバー軸39及びリリースレバー35は、リリースレバー35の回動軸と直交する平面と、ラチェット32及びラチェット軸37の回動軸と直交する平面とが略垂直に交わるように配置されている。
【0061】
リリースレバー35は、リリースレバー軸39から左下方に延在する下側アーム部35aと、リリースレバー軸39から上方に延在する上側アーム部35bと、を有する。リリースレバー35は、リリースレバー軸39に設けられたリリースレバーばね39aにより、リリースレバー35の下側アーム部35aがラチェット32から離間する方向、すなわち、リリースレバー35の回動軸方向の前端側から見て反時計回りの方向へ付勢されている。リリースレバー35の下側アーム部35aは、後述するセクタギヤ53の回動時に、セクタギヤ53の押圧部53cが当接可能な位置まで、左下方に延出している。リリースレバー35は、後述するセクタギヤ53の押圧部53cによって、下側アーム部35aが押圧された場合、リリースレバーばね39aの付勢力に抗して、リリースレバー35の回動軸方向の前端側から見て時計回りの方向に回動する。すると、リリースレバー35の下側アーム部35aは、ラチェット32のレバーアーム32aに当接してレバーアーム32aを押圧し、ラチェット32を解除方向に回動させる。これにより、ラチェット32は、ラッチ31から離間して、ラッチ31との係合状態が解除される。この結果、ラッチ31は、ラッチばね36aの付勢力によって、フルラッチ位置又はハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回動する。
【0062】
リリースレバー35の上側アーム部35bは、ラッチ31とラチェット32との係合状態を手動で解除する手動解除手段として機能する。例えば、電気系統の故障やバッテリの消耗等によって、後述するラッチ駆動モータ51に電力供給ができず、車両用ドアクローザ装置3からストライカ103を解放することができない非常時に、バックドア101の車内側から蓋体等(不図示)を取り外してリリースレバー35の上側アーム部35bを手動で操作してリリースレバー35を回動させることにより、ラッチ31とラチェット32との係合状態を手動で解除することができる。
【0063】
(ロック機構部のストライカとの係合動作)
続いて、車両100のバックドア101を開閉する際における、ロック機構部30のストライカ103(
図1及び
図2参照)との係合動作について、
図9A~
図9Cを参照しながら説明する。
図9Aは、ラッチ31がアンラッチ位置にあるときのラッチ31及びラチェット32の状態を示す図である。
図9Bは、ラッチ31がハーフラッチ位置にあるときのラッチ31及びラチェット32の状態を示す図である。
図9Cは、ラッチ31がフルラッチ位置にあるときのラッチ31及びラチェット32の状態を示す図である。
【0064】
図9A~
図9Cに示すように、ラッチ31は、前述したように、外周面に開口する係合溝31aと、ストライカ103と噛み合うフック部31bと、フルラッチ状態の際にラチェット32と噛み合うフルラッチ係止部31cと、ハーフラッチ状態の際にラチェット32と噛み合うハーフラッチ係止部31dと、を有する。
【0065】
図9Aに示すように、ラッチ31がアンラッチ位置にあるアンラッチ状態において、係合溝31aの開口は、ラッチ軸36の軸方向から見て、ロック機構部30のケーシング40のカバープレート42に形成されたストライカ進入溝45と重なる位置となっており、ストライカ進入溝45の開口に向かって開口している。一方、係合溝31aよりも左側に位置するフック部31bは、ストライカ進入溝45から退避した状態、すなわち、ラッチ軸36の軸方向から見て、ストライカ進入溝45と重ならない位置となっている。そして、アンラッチ状態において、ラッチ31は、ストライカ103と係合しておらず、ストライカ進入溝45内に進入するストライカ103を受け入れることも可能であり、ストライカ進入溝45からストライカ103を解放することも可能である。したがって、ラッチ31がアンラッチ位置にある場合、車両用ドアクローザ装置3のロック機構部30は、バックドア101の閉状態のロックを解除している。この場合、バックドア101は、バックドア101に設けた不図示の操作ハンドル等を操作しなくとも、開閉することができる。
【0066】
また、ラッチ31がアンラッチ位置にある場合、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、カム部31eのカム面31f(詳細には、第2カム面31f2)と接触しており、フルラッチ検出スイッチ38bは、カム部31eのカム面31f(詳細には、第1カム面31f1)と接触している。したがって、ハーフラッチ検出スイッチ38a及びフルラッチ検出スイッチ38bは、双方ともオン状態となっている。
【0067】
次いで、バックドア101が閉動作されると、車両用ドアクローザ装置3は、車両100の後部開口104の下端部に設けられたストライカ103に係合するように接近する。この際、ストライカ103が、ストライカ進入溝45に沿ってロック機構部30の内部へ進入する。ラッチ31は、ストライカ進入溝45に進入してきたストライカ103を、フルラッチ係止部31cに当接させるとともに係合溝31a内に受け入れる。その後、ラッチ31は、係合溝31a内にストライカ103を受け入れた状態を維持しながら、ラッチ軸36を回動軸として、
図9Aに示すアンラッチ位置から
図9Bに示すハーフラッチ位置へと、ラッチ軸36の上端側から見て時計回り方向に回動する。このラッチ31の回動に伴い、フック部31bは、ストライカ進入溝45の前端側から後方へと移動しながら、
図9Bに示すようにストライカ進入溝45を横切る状態となる。そして、ラッチ31は、ハーフラッチ位置への回動が完了し、
図9Bに示すようにハーフラッチ位置でストライカ103と係合する。詳細には、フック部31bは、ストライカ103と係合して、ストライカ進入溝45からのストライカ103の解放を阻止するとともに、係合溝31a内にストライカ103を係合保持する。
【0068】
図9Bに示すように、ラッチ31がハーフラッチ位置にある場合、ラチェット32のラッチ係合アーム32bは、ハーフラッチ係止部31dでラッチ31と係合する。これにより、ハーフラッチ位置にあるラッチ31が、アンラッチ位置に向かって回動することが規制される。そして、ラッチ31がハーフラッチ位置にある場合、車両用ドアクローザ装置3のロック機構部30は、バックドア101を半ドア状態に維持する。この場合、操作ハンドルが操作される等によって、ラッチ31がアンラッチ位置へと回動しない限り、バックドア101が開かないようになっている。なお、半ドア状態とは、次のように定義される。すなわち、全閉状態のときに、万一何らかの原因でラッチ31のフルラッチ係止部31cとラチェット32のラッチ係合アーム32bとの係合が外れても、不意にバックドア101が開かないように、ラッチ31には、フルラッチ位置とアンラッチ位置との間において、ラチェット32のラッチ係合アーム32bがラッチ31のハーフラッチ係止部31dと係合して、バックドア101を半閉状態に保持し得るようになっているハーフラッチ位置が設定されている。このバックドア101の半閉状態のことを、「半ドア状態」という。
【0069】
また、ラッチ31がハーフラッチ位置にある場合、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、カム部31eのカム面31f(詳細には、第2カム面31f2)から離れてオン状態からオフ状態に切り替わる。一方、フルラッチ検出スイッチ38bは、カム部31eのカム面31f(詳細には、第1カム面31f1)との接触が継続され、オン状態が維持される。また、ラチェット32のラッチ係合アーム32bがハーフラッチ係止部31dと係合する前後の回動に伴って、ラチェット32が解除方向に回動して前述したセット位置から離れたときに突起部32cがラチェット検出スイッチ38cに一時的に接触し、ラチェット検出スイッチ38cはオフ状態に切り替わり、ラチェット32が係合方向に回動してセット位置に復帰すると、突起部32cがラチェット検出スイッチ38cから離間して、ラチェット検出スイッチ38cはオン状態に切り替わる。
【0070】
ハーフラッチ位置にあるラッチ31が、ラッチ軸36を回動軸として、フルラッチ位置へと、ラッチ軸36の上端側から見て時計回り方向に回動すると、
図9Cに示すように、フック部31bは、ハーフラッチ位置よりも後方で、ストライカ進入溝45を横切る状態となって、ストライカ進入溝45の開口を閉塞する。そして、ラッチ31は、フルラッチ位置への回動が完了し、
図9Cに示すようにフルラッチ位置でストライカ103と完全に係合する。詳細には、フック部31bは、ストライカ103との係合を進行して、ストライカ進入溝45からのストライカ103の解放を阻止し続けながら、係合溝31aの後端部近傍でストライカ103を完全に係合保持する。
【0071】
ラッチ31がフルラッチ位置にある場合、ラチェット32のラッチ係合アーム32bは、フルラッチ係止部31cでラッチ31と係合する。これにより、フルラッチ位置にあるラッチ31が、ハーフラッチ位置又はアンラッチ位置に向かって回動することが規制される。そして、ラッチ31がフルラッチ位置にある場合、車両用ドアクローザ装置3のロック機構部30は、バックドア101を全閉状態でロックする。この場合、車両用ドアクローザ装置3のアクチュエータ部50によってラッチ31をアンラッチ位置へ回動させない限り、バックドア101が開かないようになっている。
【0072】
また、ラッチ31がフルラッチ位置にある場合、ハーフラッチ検出スイッチ38aは、カム面31f(詳細には、第2カム面31f2)から離間した状態を継続してオフ状態を維持する。フルラッチ検出スイッチ38bは、カム面31f(詳細には、第1カム面31f1)から離れてオン状態からオフ状態に切り替わる。また、ラチェット検出スイッチ38cは、ラチェット32がフルラッチ係止部31cと係合する前後の回動に伴って、ラチェット32が解除方向に回動して前述したセット位置から離れたときに突起部32cがラチェット検出スイッチ38cに一時的に接触し、ラチェット検出スイッチ38cはオフ状態に切り替わり、ラチェット32が係合方向に回動してセット位置に復帰すると、突起部32cがラチェット検出スイッチ38cから離間して、ラチェット検出スイッチ38cはオン状態に切り替わる。
【0073】
一方、
図9Bに示すハーフラッチ位置、又は、
図9Cに示すフルラッチ位置にあるラッチ31と係合状態にあるラチェット32が、ラチェット軸37を回動軸として解除方向に回動すると、ラッチ31とラチェット32との係合が解除される。前述したように、ラチェット32は、アクチュエータ部50が動作して、リリースレバー35が、リリースレバー35の回動軸方向の前端側から見て時計回りの方向に回動することによって、ラチェット軸37を回動軸として解除方向に回動する。なお、アクチュエータ部50の動作の詳細については、後述する。ラチェット32は、ラチェット軸37を中心として係合方向へ回動するよう付勢されている。また、ラチェット軸37を中心としたラチェット32の係合方向への回動は、
図9A~
図9Cに示すように、ストッパ33がラチェット32と当接することによって、所定位置以上に回動しないように規制される。
【0074】
(アクチュエータ部の構成)
図3~
図7、及び
図10に示すように、アクチュエータ部50は、アクチュエータ部50の駆動源であるラッチ駆動モータ51と、ラッチ駆動モータ51の動力によって回転するピニオンギヤ52と、ピニオンギヤ52と噛合し、ロック機構部30のラッチレバー34及びリリースレバー35を動作させるセクタギヤ53と、セクタギヤ53を支持するセクタギヤ軸54と、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるか否かを検出する中立位置検出スイッチ55と、を備える。セクタギヤ軸54、及び、中立位置検出スイッチ55は、ブラケット70に固定されている。ラッチ駆動モータ51は、ブラケット70の背面に固定された駆動ユニットケース60に固定されている。ピニオンギヤ52は、回転自在に駆動ユニットケース60に軸支され、少なくとも一部が駆動ユニットケース60の前面から前方に向かって、駆動ユニットケース60の外部に露出している。セクタギヤ軸54は、上下方向において、バックプレート43のカバー部43aの前端と同程度の高さの位置でブラケット70に固定されており、セクタギヤ53は、セクタギヤ軸54に回動可能に支持されている。このようにして、セクタギヤ53は、セクタギヤ軸54を介してブラケット70に取り付けられている。
【0075】
ラッチ駆動モータ51は、車両用ドアクローザ装置3の動力を発生させる電動式の駆動モータ(駆動源)である。ラッチ駆動モータ51は、上下方向においてアクチュエータ部50の上下中央より上側に配置されており、長手方向が車幅方向に延在するように、駆動ユニットケース60の左端部に取り付けられている。本実施形態では、ラッチ駆動モータ51は、駆動ユニットケース60の左方に延出するように配置されている。このように、ラッチ駆動モータ51は、駆動ユニットケース60を介してブラケット70の背面に固定されている。ラッチ駆動モータ51は、車両100の車載電源から給電されて駆動し、動力を発生させる。ラッチ駆動モータ51の動力は、駆動ユニットケース60の内部に収容された不図示のギヤ機構等を介してピニオンギヤ52に伝達される。
【0076】
ピニオンギヤ52は、ブラケット70に形成された開口71を挿通してブラケット70の背面側から前面側へ突出するように配置されている。ピニオンギヤ52は、鋼鉄等の金属材料によって作製されている。本実施形態では、ピニオンギヤ52は、回転軸が前方に向かって下方に傾斜して前後方向に延在するように配置されている。
【0077】
したがって、ラッチ駆動モータ51は、正転作動又は逆転作動することによって、ピニオンギヤ52を一方側又は他方側に回転させる。
【0078】
セクタギヤ軸54は、ブラケット70の前面から前方に突出するように設けられており、前方に向かって下方に傾斜して前後方向に延在し、ピニオンギヤ52の回転軸と平行となるように配置されている。
【0079】
セクタギヤ53は、ラッチ駆動モータ51の動力を用いて、ロック機構部30を動作させるものである。セクタギヤ53は、上方にセクタギヤ軸54を中心とする円弧状の外周面が形成された略扇形のギヤ部材であり、円弧状の外周面に歯部53aが設けられている。セクタギヤ53は、鋼鉄等の金属材料によって作製されている。セクタギヤ53は、バックプレート43の取付部43cとブラケット70との間に配置される。セクタギヤ53の歯部53aは、ピニオンギヤ52と噛合している。
【0080】
したがって、セクタギヤ53は、ピニオンギヤ52の回転により、セクタギヤ軸54を回動軸として回動する。このように、ピニオンギヤ52は、ラッチ駆動モータ51の動力をセクタギヤ53に伝達し、セクタギヤ53は、ラッチ駆動モータ51の動力によって、セクタギヤ軸54を回動軸として回動する。セクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て、ラッチ駆動モータ51の動力によってピニオンギヤ52が時計回り方向に回転すると、セクタギヤ53は、反時計回り方向に回動し、ラッチ駆動モータ51の動力によってピニオンギヤ52が反時計回り方向に回転すると、セクタギヤ53は、時計回り方向に回動する。
【0081】
セクタギヤ53には、セクタギヤ軸54の軸方向と平行に、セクタギヤ53の前面から前方に突出した押圧部53cが設けられている。押圧部53cは、略円柱状のピン(シャフト)形状を有する。押圧部53cは、セクタギヤ53と一体に回動する。押圧部53cは、左右方向において、ロック機構部30のラッチレバー34の当接部34aとリリースレバー35との間に設けられている。セクタギヤ53の押圧部53cは、セクタギヤ53と一体に、セクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て時計回り方向に回動したときに、ラッチレバー34の当接部34aと当接可能に形成されている。加えて、押圧部53cは、セクタギヤ53と一体に、セクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て反時計回り方向に回動したときに、リリースレバー35の下側アーム部35aと当接可能に形成されている。
【0082】
セクタギヤ53の回動位置は、セクタギヤ53の押圧部53cが、ラッチレバー34とリリースレバー35との間で、ラッチレバー34及びリリースレバー35の双方から離間した位置である中立位置を含む。ラッチ駆動モータ51が駆動していないとき、セクタギヤ53の回動位置は、中立位置に維持される。
【0083】
そして、ピニオンギヤ52を介して伝達されるラッチ駆動モータ51の動力によって、セクタギヤ53が、中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て時計回り方向に回動すると、セクタギヤ53の押圧部53cは、ラッチレバー34の当接部34aに当接して、ラッチレバー34の当接部34aを左方向に押圧して、ラッチレバー34を動作させる。
【0084】
また、ピニオンギヤ52を介して伝達されるラッチ駆動モータ51の動力によって、セクタギヤ53が、中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て反時計回り方向に回動すると、セクタギヤ53の押圧部53cが、リリースレバー35の下側アーム部35aに当接して、リリースレバー35の下側アーム部35aを右方向に押圧して、リリースレバー35を動作させる。
【0085】
セクタギヤ53には、樹脂材料によって作製された樹脂ギヤ部材56が設けられている。樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、セクタギヤ53と少なくとも一部が重なる位置に配置されており、セクタギヤ53と同一の回動軸を有し、セクタギヤ53と一体に回動する。
【0086】
樹脂ギヤ部材56には、ピニオンギヤ52と噛合する歯部56aが設けられている。樹脂ギヤ部材56の歯部56aは、セクタギヤ軸54を中心とする円弧状に形成されている。樹脂ギヤ部材56の歯部56aは、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、ピニオンギヤ52と噛合し、セクタギヤ53の回動方向において、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときにピニオンギヤ52と噛合する位置を含む、セクタギヤ53の歯部53aの一部のみと重なるように設けられている。
【0087】
通常、バックドア101を含む車両100の各ドアが操作されるのは車両100の駐停車時であり、車両100の走行時にバックドア101を含む車両100の各ドアは操作されないので、車両100の走行時において、セクタギヤ53の回動位置は中立位置に維持される。一方、車両100は、駐停車時に振動が生じることは少なく、悪路走行時や段差を乗り越える際など、走行時に振動が生じることが多い。車両100に搭載された車両用ドアクローザ装置3は、車両100が振動すると、それに伴って振動が生じやすい。したがって、車両用ドアクローザ装置3は、車両100の走行時、すなわち、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、振動が生じやすい。
【0088】
さらに、ピニオンギヤ52及びセクタギヤ53は、前述したように、鋼鉄等の金属材料によって作製されているので、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合にピニオンギヤ52とセクタギヤ53とが直接衝突すると、大きな歯打ち音が発生する。
【0089】
しかしながら、
図11に示すように、樹脂ギヤ部材56の歯部56aの歯面56bは、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、少なくとも一部がセクタギヤ53の歯部53aの歯面53bよりもピニオンギヤ52に近づく方向に向かって突出するように形成されている。
【0090】
したがって、車両100の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合、セクタギヤ53の歯部53aの歯面53bよりも先に、樹脂ギヤ部材56の歯部56aの歯面56bがピニオンギヤ52と当接する。これにより、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合に、セクタギヤ53の歯部53aとピニオンギヤ52とが直接衝突するのを防ぐことができるので、セクタギヤ53の歯部53aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
【0091】
そして、樹脂ギヤ部材56は、樹脂材料によって作製されているので、鋼鉄等の金属材料によって作製されたセクタギヤ53よりもヤング率が小さく弾性変形しやすい。そのため、樹脂ギヤ部材56の歯部56aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音は、セクタギヤ53の歯部53aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音よりも小さい。これにより、車両100の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合に生じる歯打ち音は低減される。
【0092】
さらに、樹脂ギヤ部材56の歯部56aは、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、ピニオンギヤ52と噛合し、セクタギヤ53の回動方向において、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときにピニオンギヤ52と噛合する位置を含む、セクタギヤ53の歯部53aの一部のみと重なるように設けられているので、樹脂ギヤ部材56を小型化でき、且つ、車両用ドアクローザ装置3が大型化することを抑制できる。
【0093】
このように、車両用ドアクローザ装置3は、大型化することを抑制しつつ、車両100が振動した場合に、セクタギヤ53の歯部53aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
【0094】
さらに、本実施形態では、樹脂ギヤ部材56の歯部56aは、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、ピニオンギヤ52と当接するように形成されている。
【0095】
したがって、車両100の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合でも、樹脂ギヤ部材56の歯部56aとピニオンギヤ52とは当接しているので、樹脂ギヤ部材56の歯部56aとピニオンギヤ52とによって歯打ち音が生じることを防止できる。これにより、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合に、セクタギヤ53の歯部とピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができるだけでなく、樹脂ギヤ部材56の歯部56aとピニオンギヤ52とによって歯打ち音が生じることも防止できるので、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合に生じる歯打ち音をより低減することができる。
【0096】
なお、樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53の回動軸方向における、セクタギヤ53の一方側のみに設けられている。本実施形態では、樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53の前方側のみに設けられている。
【0097】
これにより、車両用ドアクローザ装置3は、部品点数及び製造コストを抑制し、且つ、大型化することをより抑制しつつ、車両100の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合に、セクタギヤ53の歯部53aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
【0098】
図3、
図4、及び
図10に示すように、樹脂ギヤ部材56には、樹脂ギヤ部材56の歯部56aよりも前方に突出する突出部56cが設けられている。樹脂ギヤ部材56の突出部56cは、セクタギヤ53及び樹脂ギヤ部材56の回動軌跡に沿った円弧形状のカム面56dを有する。突出部56cは、樹脂ギヤ部材56と一体成形されており、樹脂ギヤ部材56及びセクタギヤ53と一体に回動する。
【0099】
図12に示すように、樹脂ギヤ部材56には、下端部近傍に、位置決め部56eが形成されている。位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向と平行に後方に突出した円柱状のボスである。位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見てセクタギヤ53と重なる位置に設けられている。
【0100】
セクタギヤ53には、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向に貫通する第1挿通孔53eが形成されている。第1挿通孔53eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eと重なる位置に形成されている。第1挿通孔53eは、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eが挿通可能、且つ、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eとの間の隙間が小さくなるように形成されている。
【0101】
樹脂ギヤ部材56には、セクタギヤ53の回動軸の径方向において、位置決め部56eと歯部56aとの間に、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向と平行に固定部材57が挿通する固定部56fが設けられている。固定部56fは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見てセクタギヤ53と重なる位置に設けられている。本実施形態では、固定部材57はボルトであり、固定部56fは、固定部材57が螺合可能なネジ穴である。
【0102】
セクタギヤ53には、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向に貫通する第2挿通孔53fが形成されている。第2挿通孔53fは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、樹脂ギヤ部材56の固定部56fと重なる位置に形成されている。第2挿通孔53fは、固定部材57が挿通可能、且つ、固定部材57との間の隙間が小さくなるように形成されている。
【0103】
樹脂ギヤ部材56は、まず、位置決め部56eを、セクタギヤ53の前方からセクタギヤ53の第1挿通孔53eに挿通して、下端部を位置決めする。そして、固定部材57を、セクタギヤ53の後方からセクタギヤ53の第2挿通孔53fに挿通して、樹脂ギヤ部材56の固定部56fに挿通し螺合する。これにより、樹脂ギヤ部材56は、固定部材57によってセクタギヤ53に共締めされ、セクタギヤ53に固定される。
【0104】
このように、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56e及び固定部56fは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見てセクタギヤ53と重なる位置に設けられており、樹脂ギヤ部材56は、固定部56fを挿通する固定部材57によってセクタギヤ53に固定されている。これにより、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見た樹脂ギヤ部材56の寸法を大きくすることなく、樹脂ギヤ部材56をセクタギヤ53に固定できるので、車両用ドアクローザ装置3が大型化することをより抑制できる。
【0105】
また、樹脂ギヤ部材56が固定部材57によってセクタギヤ53に固定された状態において、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eは、セクタギヤ53の第1挿通孔53eに挿通している。そのため、樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53に対して固定部材57を中心に回動することが規制されている。したがって、樹脂ギヤ部材56は、樹脂ギヤ部材56の歯部56aとピニオンギヤ52との噛合によって樹脂ギヤ部材56にセクタギヤ53の回動方向の荷重が入力された場合でも、セクタギヤ53に対して固定部材57を中心に回動しないように、セクタギヤ53に固定される。
【0106】
本実施形態では、樹脂ギヤ部材56の固定部56fは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、突出部56cと重なる位置に設けられている。
【0107】
このとき、突出部56cは、樹脂ギヤ部材56の前面から前方に突出しているので、固定部材57が螺合可能なネジ穴である固定部56fのネジ穴の深さをより深く形成することができる。これにより、より長いボルトを固定部材57に用いることができ、樹脂ギヤ部材56が大型化することを抑制しつつ、樹脂ギヤ部材56をより強固にセクタギヤ53に固定することができる。
【0108】
樹脂ギヤ部材56には、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、樹脂ギヤ部材56の歯部56aと固定部56fとの間に、撓み部56gが設けられている。撓み部56gは、樹脂ギヤ部材56の歯部56aが、セクタギヤ53の回動軸、すなわちセクタギヤ軸54に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材56が撓むことを許容する。
【0109】
撓み部56gは、樹脂ギヤ部材56をセクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向に貫通する孔部56hを備える。
【0110】
本実施形態では、孔部56hは、セクタギヤ53の回動方向を長手方向とする長孔形状を有する。
【0111】
このように、樹脂ギヤ部材56には、撓み部56gが設けられているので、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52に寸法誤差や位置バラつきが生じた場合でも、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように、樹脂ギヤ部材56が撓むことができる。したがって、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材56が撓むことによって、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52の寸法誤差や位置バラつきを吸収し、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがピニオンギヤ52と確実に当接するように構成できる。これにより、樹脂ギヤ部材56の歯部56aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音をより確実に低減することができるので、車両用ドアクローザ装置3が振動した場合に生じる歯打ち音をより確実に低減することができる。
【0112】
また、撓み部56gは、樹脂ギヤ部材56をセクタギヤ53の回動軸方向に貫通する孔部56hを備えるので、樹脂ギヤ部材56は、孔部56hが変形することによって、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように容易に撓むことができる。これにより、製造コスト及び製造工数を抑制して撓み部56gを形成することができる。
【0113】
さらに、孔部56hは、セクタギヤ53の回動方向を長手方向とする長孔形状を有するので、樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53の回動方向のより広範囲において、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように撓むことができる。これにより、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52の寸法誤差や位置バラつきを、セクタギヤ53の回動方向においてより広範囲で吸収でき、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがピニオンギヤ52とより確実に当接するように構成できる。
【0114】
中立位置検出スイッチ55は、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるか否かを検出する中立位置検出部として機能する。具体的には、中立位置検出スイッチ55は、対象物との接触によって沈み込むプッシュボタン式の検出端子を用いて構成されている。中立位置検出スイッチ55は、セクタギヤ53の前方に位置するようにブラケット70の前面に固定されている。
【0115】
中立位置検出スイッチ55の検出端子は、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるときに、樹脂ギヤ部材56に設けられた突出部56cのカム面56dと接触する位置に設けられている。また、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、セクタギヤ53の回動位置が中立位置ではないときに、突出部56cのカム面56dから離間するように設けられている。このように、樹脂ギヤ部材56に設けられた突出部56cは、中立位置検出スイッチ55の被検出部として機能する。
【0116】
セクタギヤ53の回動位置が中立位置である場合、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、突出部56cのカム面56dと接触状態となるため、中立位置検出スイッチ55は、オフ状態となる。一方、セクタギヤ53の回動位置が中立位置でない場合、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、突出部56cのカム面56dと非接触状態となるため、中立位置検出スイッチ55は、オン状態となる。このように、中立位置検出スイッチ55は、樹脂ギヤ部材56に設けられた突出部56cが所定位置にあるか否かを検出することによって、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるか否かを検出する。さらに、中立位置検出スイッチ55は、このようなオン状態とオフ状態との切り替わりによって、セクタギヤ53が、後述するクローズ動作又はリリース動作の実行後に、中立位置に正しく復帰したか否かを検出できる。
【0117】
このとき、中立位置検出スイッチ55の被検出部として機能する突出部56cは、樹脂ギヤ部材56に設けられているので、万が一、樹脂ギヤ部材56がセクタギヤ53から離脱してしまった場合、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、突出部56cのカム面56dと非接触状態となるため、中立位置検出スイッチ55は、オン状態となり、セクタギヤ53の回動位置が中立位置でないと検出する。換言すると、樹脂ギヤ部材56がセクタギヤ53に固定されていなければ、中立位置検出スイッチ55は、オフ状態にはならないため、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるとは検出されない。したがって、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であると中立位置検出スイッチ55が検出したときは、樹脂ギヤ部材56がセクタギヤ53に固定されており、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがピニオンギヤ52と噛合している状態となる。これにより、セクタギヤ53の回動位置が中立位置にあるときに、セクタギヤ53の歯部53aとピニオンギヤ52とが衝突することによって生じる歯打ち音をより確実に低減することができる。
【0118】
さらに、樹脂ギヤ部材56の固定部56fは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、突出部56cと重なる位置に設けられているので、樹脂ギヤ部材56は、突出部56cと重なる位置で固定部材57によってセクタギヤ53に固定されている。したがって、突出部56cは、セクタギヤ53に対する位置ずれが生じにくい。これにより、中立位置検出スイッチ55は、セクタギヤ53の回動位置が中立位置であるか否かをより高精度に検出できる。
【0119】
中立位置検出スイッチ55は、セクタギヤ53の回動位置の検出結果を示す電気信号、すなわち、オン状態又はオフ状態を示す検出信号を電子制御装置7(
図1及び
図2参照)に出力する。
【0120】
(アクチュエータ部の動作)
続いて、アクチュエータ部50の動作について、
図7及び
図10を参照しながら説明する。
【0121】
まず、車両用ドアクローザ装置3のクローズ動作時におけるアクチュエータ部50の動作について説明する。車両用ドアクローザ装置3のクローズ動作とは、ラッチ31をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させる動作である。
【0122】
車両用ドアクローザ装置3のクローズ動作時において、ラッチ駆動モータ51は、セクタギヤ53が、中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て時計回り方向に回動するように駆動する。セクタギヤ53が、ピニオンギヤ52を介して伝達されるラッチ駆動モータ51の動力によって、中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て時計回り方向に回動すると、押圧部53cが、ラッチレバー34の当接部34aに当接して、ラッチレバー34の当接部34aを左方向に押圧し、ラッチレバー34を動作させる。ラッチレバー34の当接部34aがセクタギヤ53の押圧部53cによって左方向に押圧されると、ラッチレバー34、ラッチ軸36、及びラッチ31が、ラッチばね36aの付勢力に抗して、ラッチ軸36の軸方向上端側から見て時計回り方向に一体に回動する。この結果、ラッチ31は、ラッチばね36aの付勢力に抗して、ハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動する。
【0123】
このようにして、セクタギヤ53の押圧部53cが、ラッチレバー34とともにラッチ31をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させることによって、車両用ドアクローザ装置3は、クローズ動作を行う。
【0124】
そして、車両用ドアクローザ装置3のクローズ動作により、ラッチ31は、
図9Cに示すようにフルラッチ位置でストライカ103と完全に係合する。さらに、ラチェット32のラッチ係合アーム32bが、フルラッチ係止部31cでラッチ31と係合することによって、ラッチ31とストライカ103とは、完全に係合した状態が維持されるので、バックドア101は、全閉状態でロックされる。
【0125】
なお、車両用ドアクローザ装置3のクローズ動作によって、セクタギヤ53が中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て時計回り方向に回動すると、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、樹脂ギヤ部材56に形成された突出部56cのカム面56dとの接触状態から非接触状態へと遷移するため、中立位置検出スイッチ55は、オフ状態からオン状態に切り替わる。そして、車両用ドアクローザ装置3のクローズ動作が完了し、セクタギヤ53が中立位置に復帰すると、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、突出部56cのカム面56dとの非接触状態から接触状態へと遷移するため、中立位置検出スイッチ55は、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0126】
次に、車両用ドアクローザ装置3のリリース動作時におけるアクチュエータ部50の動作について説明する。車両用ドアクローザ装置3のリリース動作とは、ラッチ31をフルラッチ位置又はハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回動させる動作である。
【0127】
車両用ドアクローザ装置3のリリース動作時において、ラッチ駆動モータ51は、セクタギヤ53が、中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て反時計回り方向に回動するように駆動する。セクタギヤ53が、ピニオンギヤ52を介して伝達されるラッチ駆動モータ51の動力によって、中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て反時計回り方向に回動すると、押圧部53cが、リリースレバー35の下側アーム部35aに当接して、リリースレバー35の下側アーム部35aを右下方向に押圧する。リリースレバー35の下側アーム部35aが、セクタギヤ53の押圧部53cによって右下方向に押圧されると、リリースレバー35は、リリースレバーばね39aの付勢力に抗して、リリースレバー35の回動軸方向の前端側から見て時計回りの方向に回動する。すると、リリースレバー35の下側アーム部35aは、ラチェット32のレバーアーム32aに当接してレバーアーム32aを右方向に押圧し、ラチェット32を解除方向に回動させる。これにより、ラチェット32は、ラッチ31から離間して、ラッチ31との係合状態が解除される。この結果、ラッチ31は、ラッチばね36aの付勢力によって、フルラッチ位置又はハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回動する。
【0128】
このようにして、セクタギヤ53の押圧部53cが、リリースレバー35を介してラッチ31とラチェット32との係合状態を解除させ、ラッチばね36aの付勢力によって、ラッチ31をフルラッチ位置又はハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回動させることによって、車両用ドアクローザ装置3は、リリース動作を行う。
【0129】
そして、車両用ドアクローザ装置3のリリース動作により、ラッチ31とラチェット32との係合が解除されると、ラッチばね36aの付勢力によって、ラッチ31は、
図9Aに示すアンラッチ位置に回動するので、ラッチ31とストライカ103との係合状態は解除され、ストライカ103はラッチ31から離脱可能な状態となる。すなわち、バックドア101は閉状態のロックが解除されてアンラッチ状態となり、開動作可能になる。
【0130】
なお、車両用ドアクローザ装置3のリリース動作によって、セクタギヤ53が中立位置からセクタギヤ軸54の軸方向前端側から見て反時計回り方向に回動すると、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、樹脂ギヤ部材56に形成された突出部56cのカム面56dとの接触状態から非接触状態へと遷移するため、中立位置検出スイッチ55は、オフ状態からオン状態に切り替わる。そして、車両用ドアクローザ装置3のリリース動作が完了し、セクタギヤ53が中立位置に復帰すると、中立位置検出スイッチ55の検出端子は、突出部56cのカム面56dとの非接触状態から接触状態へと遷移するため、中立位置検出スイッチ55は、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0131】
(ブラケット)
図3~
図7に戻って、ブラケット70は、前述したように、ロック機構部30及びアクチュエータ部50の各構成要素が適宜取り付けられる部材である。
【0132】
本実施形態では、ロック機構部30のケーシング40が、ブラケット70の下端部分にボルトによって取り付けられている。詳細には、カバープレート42の左右一対のフランジ部42dとバックプレート43の左右一対のフランジ部43bとがブラケット70の下端部分を挟持して、カバープレート42のフランジ部42dと、ブラケット70の下端部分と、バックプレート43のフランジ部43bとがボルトで共締めされることによって、ロック機構部30のケーシング40が、ブラケット70の下端部分に取り付けられている。また、セクタギヤ53及び中立位置検出スイッチ55が、ブラケット70の前面に取り付けられている。また、駆動ユニットケース60が、ブラケット70の背面に取り付けられている。
【0133】
このようにして、ロック機構部30及びアクチュエータ部50の各構成要素が取り付けられたブラケット70は、バックドア101にボルト等によって固定される。これにより、車両用ドアクローザ装置3は、バックドア101に固定される。その際、車両用ドアクローザ装置3は、ストライカ103と噛合するロック機構部30がバックドア101から車体内部側に向かって露出するように、バックドア101に固定される。
【0134】
(セクタギヤ及び樹脂ギヤ部材の第1変形例)
次に、セクタギヤ53及び樹脂ギヤ部材56の第1変形例について、
図13を参照しながら説明する。
【0135】
図13に示すように、本変形例では、孔部56hは、セクタギヤ53の回動方向を長手方向とする長孔形状を有し、さらに、セクタギヤ53の回動方向において、セクタギヤ軸54を中心とする円弧状の外周面に形成された歯部56aの一端部よりも外側から、歯部56aの他端部よりも外側まで、セクタギヤ53の回動方向に延在している。
【0136】
本変形例では、孔部56hは、歯部56aと対向してセクタギヤ53の回動方向に延在する外径側壁部56iと、外径側壁部56iよりもセクタギヤ53の回動軸の径方向内側、すなわち、外径側壁部56iよりもセクタギヤ軸54の径方向内側で、セクタギヤ53の回動方向に延在する内径側壁部56jと、を有する。
【0137】
外径側壁部56iは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、波形状にセクタギヤ53の回動方向に延在する。より詳細には、外径側壁部56iは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯先部56mとオーバーラップしている位置で、セクタギヤ53の回動軸の径方向外側に向かって、すなわち、歯部56aに向かって凸状に湾曲してセクタギヤ53の回動方向に延在しており、且つ、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯底部56nとオーバーラップしている位置で、内径側壁部56jに向かって、すなわち、セクタギヤ53の回動軸に近づく方向に向かって凸状に湾曲してセクタギヤ53の回動方向に延在している。
【0138】
樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52に寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、樹脂ギヤ部材56の歯部56aの歯先部56mの近傍が、ピニオンギヤ52と当接しやすい。したがって、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52に寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯先部56mとオーバーラップしている位置の近傍に、セクタギヤ53の回動軸に近づく方向の荷重がかかりやすい。
【0139】
このとき、本変形例では、外径側壁部56iは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯先部56mとオーバーラップしている位置で、セクタギヤ53の回動軸の径方向外側に向かって、すなわち、歯部56aに向かって凸状に湾曲している。そのため、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯先部56mとオーバーラップしている位置の近傍に、セクタギヤ53の回動軸に近づく方向の荷重がかかった場合、孔部56hの外径側壁部56iは、歯部56aに向かって凸状に湾曲した部分が潰れるように変形しやすい。
【0140】
さらに、外径側壁部56iは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯底部56nとオーバーラップしている位置で、内径側壁部56jに向かって凸状に湾曲しているので、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯底部56nとオーバーラップしている位置の近傍で、外径側壁部56iから歯面56bまでのセクタギヤ53の厚みが均一化する。これにより、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯先部56mとオーバーラップしている位置の近傍に、セクタギヤ53の回動軸に近づく方向の荷重がかかった場合、孔部56hの外径側壁部56iにおいて局所的に応力が集中することが抑制される。そのため、セクタギヤ53の回動方向において歯部56aの歯先部56mとオーバーラップしている位置の近傍に、セクタギヤ53の回動軸に近づく方向の荷重がかかった場合、孔部56hの外径側壁部56iは、内径側壁部56jに向かって凸状に湾曲した部分がセクタギヤ53の回動方向に伸展するように変形しやすい。
【0141】
したがって、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52に寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、孔部56hは、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するようにより変形しやすくなる。さらに、孔部56hの外径側壁部56iは、歯部56aに向かって凸状に湾曲した部分が潰れるように変形しやすく、内径側壁部56jに向かって凸状に湾曲した部分がセクタギヤ53の回動方向に伸展するように変形しやすい。これにより、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52に寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、樹脂ギヤ部材56は、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するようにより撓みやすくなり、さらに、樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53の回動軸から見て、歯部56aの歯面56bの形状がセクタギヤ53の歯部53aの歯面53bの形状に追従するように撓みやすい。
【0142】
一方、内径側壁部56jは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、セクタギヤ53の回動軸、すなわち、セクタギヤ軸54を中心とする略円弧状にセクタギヤ53の回動方向に延在する。そのため、内径側壁部56jは、セクタギヤ53の回動軸方向から見て、波形状にセクタギヤ53の回動方向に延在する外径側壁部56iよりも変形しにくい。したがって、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材56が撓んだ場合、孔部56hよりもセクタギヤ53の回動軸の径方向外側がセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変形しやすく、孔部56hよりもセクタギヤ53の回動軸の径方向内側は変形しにくい。これにより、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材56が撓みやすくしつつ、孔部56hよりもセクタギヤ53の回動軸の径方向内側が変形することを抑制できる。よって、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材56が撓んだ場合でも、孔部56hよりもセクタギヤ53の回動軸の径方向内側に設けられた部材、例えば突出部56cやカム面56d等が、変位することを抑制できる。
【0143】
(セクタギヤ及び樹脂ギヤ部材の第2変形例)
次に、セクタギヤ53及び樹脂ギヤ部材56の第2変形例について、
図14を参照しながら説明する。
【0144】
図14に示すように、本変形例では、樹脂ギヤ部材56の固定部56fは、樹脂ギヤ部材56の下端部近傍に設けられている。セクタギヤ53の第2挿通孔53fは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、樹脂ギヤ部材56の固定部56fと重なる位置に形成されている。第2挿通孔53fは、固定部材57が挿通可能、且つ、固定部材57との間の隙間が小さくなるように形成されている。
【0145】
本変形例では、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、樹脂ギヤ部材56の歯部56aと固定部56fとの間に設けられている。より詳細には、本変形例では、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、突出部56cと重なる位置に設けられている。位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向と平行に後方に突出した円柱状のボスである。セクタギヤ53の第1挿通孔53eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向から見て、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eと重なる位置に形成されている。第1挿通孔53eは、樹脂ギヤ部材56の位置決め部56eが挿通可能に形成されている。
【0146】
本変形例では、第1挿通孔53eは、セクタギヤ53の回動軸の径方向を長手方向とする長孔形状を有する。そして、位置決め部56eが、セクタギヤ53の回動軸の径方向において、第1挿通孔53eの径方向内側端部から所定距離離間するようにして、樹脂ギヤ部材56は、セクタギヤ53に固定されている。
【0147】
したがって、樹脂ギヤ部材56及びピニオンギヤ52に寸法誤差や位置バラつきが生じた場合でも、樹脂ギヤ部材56は、位置決め部56eが第1挿通孔53eの径方向内側端部に当接することなく、樹脂ギヤ部材56の歯部56aがセクタギヤ53の回動軸に近づく方向に変位するように撓むことが可能となる。
【0148】
このように、本変形例では、位置決め部56eが、撓み部56gとして機能する。換言すると、本変形例では、樹脂ギヤ部材56の歯部56aが、セクタギヤ53の回動軸、すなわちセクタギヤ軸54に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材56が撓むことを許容する撓み部56gは、位置決め部56eを有する。
【0149】
<電子制御装置>
電子制御装置7は、前述したように、不図示の配線等を介して車両用ドア開閉装置2及び車両用ドアクローザ装置3と電気的に接続され、例えば、
図1及び
図2に示すように、車両100の車体側部内に設けられる。
【0150】
電子制御装置7は、車両用ドアクローザ装置3の中立位置検出スイッチ55、ハーフラッチ検出スイッチ38a、フルラッチ検出スイッチ38b、及び、ラチェット検出スイッチ38cの各検出信号や、車両100のバックドア101を開操作及び閉操作するための開操作部及び閉操作部の操作等に基づいて、車両用ドア開閉装置2のPTGモータ21及び車両用ドアクローザ装置3のラッチ駆動モータ51を適宜制御する。
【0151】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0152】
例えば、本実施形態では、車両用ドア開閉システム1は、車両100の後部開口104に設けられたバックドア101の開閉を行うものとしたが、車両用ドア開閉システム1は、車両100の車体側部に設けられたドアの開閉を行うものであってもよい。
【0153】
また、例えば、本実施形態では、位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向と平行に後方に突出した円柱状のボスであるものとしたが、位置決め部56eは、樹脂ギヤ部材56を、セクタギヤ53の回動軸方向、すなわちセクタギヤ軸54の軸方向に貫通する孔部であってもよい。この場合、セクタギヤ53には、第1挿通孔53eに替えて、セクタギヤ53には、セクタギヤ53の前面から前方に突出し、位置決め部56eに挿通可能なボス部が設けられる。
【0154】
このとき、変形例においては、位置決め部56eは、セクタギヤ53の回動軸の径方向において、径方向内側端部がセクタギヤ53のボス部から径方向内側に所定距離離間するように形成された孔部であってもよい。
【0155】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0156】
(1) 車両(車両100)のドア(バックドア101)に設けられ、
前記車両の車体に設けられたストライカ(ストライカ103)と係脱可能に係合するロック機構部(ロック機構部30)と、
前記ロック機構部を動作させるアクチュエータ部(アクチュエータ部50)と、
を備える、車両用ドアクローザ装置(車両用ドアクローザ装置3)であって、
前記ロック機構部は、
前記ストライカと係合及び離脱するラッチ(ラッチ31)と、
前記ラッチと係合して、前記ラッチと前記ストライカとの係合状態を維持するラチェット(ラチェット32)と、
前記ラッチを動作させるラッチレバー(ラッチレバー34)と、
前記ラッチとの係合を解除するように前記ラチェットを動作させるリリースレバー(リリースレバー35)と、を備え、
前記アクチュエータ部は、
駆動モータ(ラッチ駆動モータ51)と、
前記駆動モータの動力によって回転するピニオンギヤ(ピニオンギヤ52)と、
前記ピニオンギヤと噛合する歯部(歯部53a)が設けられており、前記ピニオンギヤの回転によって回動し、前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを動作させるセクタギヤ(セクタギヤ53)と、を備え、
前記セクタギヤは、前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを押圧して前記ラッチレバー及び前記リリースレバーを動作させる押圧部(押圧部53c)を有し、
前記セクタギヤの回動位置は、前記セクタギヤの前記押圧部が前記ラッチレバー及び前記リリースレバーから離間した位置である中立位置を含み、
前記セクタギヤには、前記セクタギヤと一体に回動し、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記セクタギヤの一部と重なるように形成された、樹脂ギヤ部材(樹脂ギヤ部材56)が設けられており、
前記樹脂ギヤ部材には、前記ピニオンギヤと噛合する歯部(歯部56a)が設けられており、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部は、
前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記ピニオンギヤと噛合し、
前記セクタギヤの回動方向において、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに前記ピニオンギヤと噛合する位置を含む、前記セクタギヤの前記歯部の一部のみと重なるように設けられており、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部の歯面(歯面56b)は、
前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、少なくとも一部が前記セクタギヤの前記歯部の歯面(歯面53b)よりも前記ピニオンギヤに近づく方向に向かって突出するように形成されている、車両用ドアクローザ装置。
【0157】
(1)によれば、樹脂ギヤ部材の歯部の歯面は、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときに、少なくとも一部がセクタギヤの歯部の歯面よりもピニオンギヤに近づく方向に向かって突出するように形成されているので、車両の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置が振動した場合、セクタギヤの歯部の歯面よりも先に、樹脂ギヤ部材の歯部の歯面がピニオンギヤと当接する。これにより、車両の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
さらに、樹脂ギヤ部材の歯部は、セクタギヤの回動方向において、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときにピニオンギヤと噛合する位置を含む、セクタギヤの歯部の一部のみと重なるように設けられているので、樹脂ギヤ部材を小型化でき、且つ、車両用ドアクローザ装置が大型化することを抑制できる。
このように、車両用ドアクローザ装置は、大型化することを抑制しつつ、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
【0158】
(2) (1)に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記アクチュエータ部は、被検出部(突出部56c)が所定位置にあるか否かを検出することによって、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるか否かを検出する、中立位置検出部(中立位置検出スイッチ55)をさらに備え、
前記被検出部は、前記樹脂ギヤ部材に設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【0159】
(2)によれば、被検出部は樹脂ギヤ部材に設けられているので、セクタギヤの回動位置が中立位置であると中立位置検出部が検出したときは、樹脂ギヤ部材の歯部がピニオンギヤと噛合している状態となる。これにより、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときに、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音をより確実に低減することができる。
【0160】
(3) (1)又は(2)に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記樹脂ギヤ部材には、前記セクタギヤの回動軸方向と平行に固定部材(固定部材57)が挿通する固定部(固定部56f)が設けられており、
前記固定部は、前記セクタギヤの回動軸方向から見て前記セクタギヤと重なる位置に設けられており、
前記樹脂ギヤ部材は、前記固定部を挿通する前記固定部材によって、前記セクタギヤに固定されている、車両用ドアクローザ装置。
【0161】
(3)によれば、樹脂ギヤ部材は、セクタギヤの回動軸方向から見てセクタギヤと重なる位置に設けられた固定部を挿通する固定部材によって、セクタギヤに固定されているので、セクタギヤの回動軸方向から見た樹脂ギヤ部材の寸法を大きくすることなく、樹脂ギヤ部材をセクタギヤに固定できる。これにより、車両用ドアクローザ装置が大型化することをより抑制できる。
【0162】
(4) (3)に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記樹脂ギヤ部材の前記歯部は、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるときに、前記ピニオンギヤと当接するように形成されており、
前記樹脂ギヤ部材には、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記樹脂ギヤ部材の前記歯部と前記固定部との間に、前記樹脂ギヤ部材の前記歯部が前記セクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように前記樹脂ギヤ部材が撓むことを許容する撓み部(撓み部56g)が設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【0163】
(4)によれば、樹脂ギヤ部材の歯部は、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときに、ピニオンギヤと当接するように形成されている。したがって、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができるだけでなく、樹脂ギヤ部材の歯部とピニオンギヤとによって歯打ち音が生じることも防止できるので、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に生じる歯打ち音をより低減することができる。
さらに、樹脂ギヤ部材には、撓み部が設けられているので、樹脂ギヤ部材及びピニオンギヤに寸法誤差や位置バラつきが生じた場合でも、樹脂ギヤ部材の歯部がセクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材が撓むことができる。したがって、樹脂ギヤ部材の歯部がセクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように樹脂ギヤ部材が撓むことによって、樹脂ギヤ部材及びピニオンギヤの寸法誤差や位置バラつきを吸収し、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときに、樹脂ギヤ部材の歯部がピニオンギヤと確実に当接するように構成できる。
【0164】
(5) (4)に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記撓み部は、前記樹脂ギヤ部材を前記セクタギヤの回動軸方向に貫通する孔部(孔部56h)を備える、車両用ドアクローザ装置。
【0165】
(5)によれば、撓み部は、樹脂ギヤ部材をセクタギヤの回動軸方向に貫通する孔部を備えるので、樹脂ギヤ部材は、孔部が変形することによって、樹脂ギヤ部材の歯部がセクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように容易に撓むことができる。これにより、製造コスト及び製造工数を抑制して撓み部を形成することができる。
【0166】
(6) (5)に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記孔部は、前記セクタギヤの回動方向を長手方向とする長孔形状を有する、車両用ドアクローザ装置。
【0167】
(6)によれば、孔部は、セクタギヤの回動方向を長手方向とする長孔形状を有するので、樹脂ギヤ部材は、セクタギヤの回動方向のより広範囲において、樹脂ギヤ部材の歯部がセクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように撓むことができる。これにより、樹脂ギヤ部材及びピニオンギヤの寸法誤差や位置バラつきを、セクタギヤの回動方向においてより広範囲で吸収でき、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときに、樹脂ギヤ部材の歯部がピニオンギヤとより確実に当接するように構成できる。
【0168】
(7) (6)に記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記孔部は、
前記セクタギヤの回動方向において、前記歯部の一端部よりも外側から、前記歯部の他端部よりも外側まで、前記セクタギヤの回動方向に延在し、
前記歯部と対向して前記セクタギヤの回動方向に延在する外径側壁部(外径側壁部56i)と、前記外径側壁部よりも前記セクタギヤの回動軸の径方向内側で、前記セクタギヤの回動方向に延在する内径側壁部(内径側壁部56j)と、を有し、
前記外径側壁部は、
前記セクタギヤの回動軸方向から見て、波形状に前記セクタギヤの回動方向に延在し、
前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記セクタギヤの回動方向において前記歯部の歯先部(歯先部56m)とオーバーラップしている位置で、前記セクタギヤの回動軸の径方向外側に向かって凸状に湾曲して前記セクタギヤの回動方向に延在しており、前記セクタギヤの回動方向において前記歯部の歯底部(歯底部56n)とオーバーラップしている位置で、前記内径側壁部に向かって凸状に湾曲して前記セクタギヤの回動方向に延在している、車両用ドアクローザ装置。
【0169】
樹脂ギヤ部材及びピニオンギヤに寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、樹脂ギヤ部材の歯部の歯先部の近傍が、ピニオンギヤと当接しやすい。したがって、樹脂ギヤ部材及びピニオンギヤに寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、セクタギヤの回動方向において歯部の歯先部とオーバーラップしている位置の近傍に、セクタギヤの回動軸に近づく方向の荷重がかかりやすい。
(7)によれば、外径側壁部は、セクタギヤの回動軸方向から見て、セクタギヤの回動方向において歯部の歯先部とオーバーラップしている位置で、セクタギヤの回動軸の径方向外側に向かって凸状に湾曲しており、セクタギヤの回動方向において歯部の歯底部とオーバーラップしている位置で、内径側壁部に向かって凸状に湾曲している。そのため、セクタギヤの回動方向において歯部の歯先部とオーバーラップしている位置の近傍に、セクタギヤの回動軸に近づく方向の荷重がかかった場合、孔部の外径側壁部は、歯部に向かって凸状に湾曲した部分が潰れるように変形しやすく、内径側壁部に向かって凸状に湾曲した部分がセクタギヤの回動方向に伸展するように変形しやすい。これにより、樹脂ギヤ部材及びピニオンギヤに寸法誤差や位置バラつきが生じた場合、樹脂ギヤ部材の歯部がセクタギヤの回動軸に近づく方向に変位するように、樹脂ギヤ部材がより撓みやすくなり、さらに、樹脂ギヤ部材は、セクタギヤの回動軸から見て、歯部の歯面の形状がセクタギヤの歯部の歯面の形状に追従するように撓みやすい。
【0170】
(8) (3)から(7)のいずれかに記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記アクチュエータ部は、被検出部(突出部56c)が所定位置にあるか否かを検出することによって、前記セクタギヤの回動位置が前記中立位置であるか否かを検出する、中立位置検出部(中立位置検出スイッチ55)をさらに備え、
前記被検出部は、前記樹脂ギヤ部材に設けられており、
前記固定部は、前記セクタギヤの回動軸方向から見て、前記被検出部と重なる位置に設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【0171】
(8)によれば、被検出部は樹脂ギヤ部材に設けられているので、セクタギヤの回動位置が中立位置であると中立位置検出部が検出したときは、樹脂ギヤ部材の歯部がピニオンギヤと噛合している状態となる。これにより、セクタギヤの回動位置が中立位置にあるときに、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音をより確実に低減することができる。
さらに、固定部は、セクタギヤの回動軸方向から見て、被検出部と重なる位置に設けられているので、樹脂ギヤ部材は、被検出部と重なる位置で固定部材によってセクタギヤに固定されている。これにより、被検出部は、セクタギヤに対する位置ずれが生じにくい。これにより、中立位置検出部は、セクタギヤの回動位置が中立位置であるか否かをより高精度に検出できる。
【0172】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の車両用ドアクローザ装置であって、
前記樹脂ギヤ部材は、前記セクタギヤの回動軸方向における、前記セクタギヤの一方側のみに設けられている、車両用ドアクローザ装置。
【0173】
(9)によれば、樹脂ギヤ部材は、セクタギヤの回転軸方向における、セクタギヤの一方側のみに設けられているので、車両用ドアクローザ装置は、部品点数及び製造コストを抑制し、且つ、大型化することをより抑制しつつ、車両の悪路走行時など、車両用ドアクローザ装置が振動した場合に、セクタギヤの歯部とピニオンギヤとが衝突することによって生じる歯打ち音を低減することができる。
【符号の説明】
【0174】
3 車両用ドアクローザ装置
30 ロック機構部
31 ラッチ
32 ラチェット
34 ラッチレバー
35 リリースレバー
50 アクチュエータ部
51 ラッチ駆動モータ(駆動モータ)
52 ピニオンギヤ
53 セクタギヤ
53a 歯部
53b 歯面
53c 押圧部
55 中立位置検出スイッチ(中立位置検出部)
56 樹脂ギヤ部材
56a 歯部
56b 歯面
56c 突出部(被検出部)
56f 固定部
56h 孔部
57 固定部材
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