(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/266 20060101AFI20250226BHJP
H10D 12/00 20250101ALI20250226BHJP
H10D 12/01 20250101ALI20250226BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250226BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250226BHJP
【FI】
H01L21/265 M
H10D12/00 101T
H10D12/01 A
H10D30/01 301A
H10D30/66 101T
(21)【出願番号】P 2021116414
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 文人
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁志
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-204920(JP,A)
【文献】特開2015-099937(JP,A)
【文献】特開平06-097066(JP,A)
【文献】特開平01-179314(JP,A)
【文献】特開平01-101633(JP,A)
【文献】特開平11-135450(JP,A)
【文献】国際公開第2004/097914(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0063342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/266
H10D 12/00
H10D 12/01
H10D 30/01
H10D 30/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入によって半導体基板(1)に対して不純物層(3)を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板を用意することと、
前記半導体基板の上に所望パターンとされるレジスト(2)を形成することと、
前記レジストに対して、前記イオン注入の温度以上の温度において紫外線を照射することと、
前記紫外線の照射の後で、前記レジストをマスクとして前記イオン注入を行うことで、前記半導体基板に対して前記不純物層を形成することと、を含
み、
前記不純物層を形成することでは、前記イオン注入におけるイオン種としてAlを用い、前記イオン注入時の前記半導体基板の温度を200℃以上、ドーズ量を1.0×10
14
cm
-2
以上とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記不純物層を形成したのち、
O
2
プラズマアッシングによって前記レジストを除去することと、
前記
O
2
プラズマアッシング時に形成される
前記Alの酸化膜をフッ化水素で除去することと、を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板を用意することでは、該半導体基板のウェハを用意することであり、
前記レジストを形成することでは、前記所望パターンの前記レジストとして、前記ウェハのうちの外縁部に形成された部分を除去したパターンとすることを含んでいる、請求項
1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)などを半導体材料として用いる半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiC半導体装置、例えばパワー半導体の製造プロセスにおいて、SiC基板と電極とのコンタクトを取るために高不純物濃度のイオン注入を行う必要があるが、イオン注入により結晶欠陥が発生するために、高温でイオン注入を行っている。例えば、MOSFETにおけるp型ベース領域とソース電極との電気的接続を行うためのコンタクトp型層を形成する際には、高不純物濃度のイオン注入が行われ、高温でのイオン注入が用いられている。
【0003】
高温、高不純物濃度、高エネルギーでのイオン注入を行う際には、マスクとして酸化膜、例えばSiO2膜を用いることが一般的であるが、酸化膜を用いたマスクプロセスは工程数が増えるので、高コストプロセスとなる。このため、工程数の増加に伴うコスト高を抑制するために、レジストマスクで代用することが考えられている。ただし、高不純物濃度でのイオン注入においてレジストマスク化するためには、結晶欠陥の発生抑制のためにイオン注入を高温で行う必要がある反面、レジストの耐熱が必要になるというトレードオフを解決することが必要になる。
【0004】
これに対して、特許文献1に、耐熱温度1000℃のレジストを用いて、レジスト成膜後に窒素雰囲気下でイオン注入と同等の温度でレジストを焼き締めすることで、レジストを高温でのアルミニウム(Al)イオン注入のマスクとして使用できることが示されている。この技術を用いれば、耐熱温度1000℃というレジストを用いることで、高温イオン注入においてもレジストマスク化が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、耐熱温度1000℃のレジストという半導体製造プロセスとして一般的には使用していないレジストを使用する場合、レジストの種類を増やすことになり、現像の際に用いる現像液の廃液の問題が発生したり、工程管理が複雑になるため好ましくない。このため、半導体製造プロセスとして一般的に用いられている例えば耐熱温度300℃のレジストを用いて、特許文献1のように窒素雰囲気下で熱を加えて確認したところ、レジスト形状が崩れてマスクとして使用できないことが判った。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、結晶欠陥の発生を抑制しつつ、レジストの耐熱が必要になるというトレードオフを解決し、レジストを用いたイオン注入が行えるようにする半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、イオン注入によって半導体基板(1)に対して不純物層(3)を形成する半導体装置の製造方法であって、半導体基板を用意することと、半導体基板の上に所望パターンとされるレジスト(2)を形成することと、レジストに対して、イオン注入の温度以上の温度において紫外線(以下、UVという)を照射することと、UV照射の後で、レジストをマスクとしてイオン注入を行うことで、半導体基板に対して不純物層を形成することと、を含んでいる。具体的には、不純物層を形成することでは、イオン注入におけるイオン種としてAlを用い、イオン注入時の半導体基板の温度を200℃以上、ドーズ量を1.0×10
14
cm
-2
以上としている。
【0009】
このように、レジストにUV照射を行うことでレジストに硬化層を形成することができる。そして、硬化層を形成してからイオン注入を行っている。このため、イオン注入時に高温とされても、硬化層にてデガスの吹き出しを抑制できる。より詳しくは、UV照射をイオン注入時の温度以上の高温で行って硬化層を形成しているため、イオン注入時に高温とされても、硬化層が崩れることなく形を維持できる。したがって、イオン注入時に高温とされても、硬化層によってデガスをレジスト内に閉じ込めることが可能となり、デガスがレジストの外部に吹き出すことを抑制できる。
【0010】
これにより、一般的なレジストをマスクとして使用しても、結晶欠陥の抑制を行うことが可能な高温でのイオン注入を行うことが可能となる。よって、結晶欠陥の発生を抑制しつつ、レジストの耐熱が必要になるというトレードオフを解決し、一般的なレジストを用いたイオン注入を行うことが可能となる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図1B】
図1Aに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図1C】
図1Bに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図1D】
図1Cに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図1E】
図1Dに続く半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【
図2】
図1Cにおけるイオン注入後の様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、半導体素子を構成するSiC基板に対してイオン注入により不純物層を形成する工程を含むSiC半導体装置の製造方法を説明する。なお、SiC半導体装置に形成される半導体素子としては、縦型MOSFETやIGBTなど、どのようなものであっても良いため、ここでは半導体素子の構造については省略する。また、SiC基板に形成する不純物層としては、縦型MOSFETやIGBTなどの半導体素子そのものを構成するための不純物層だけでなく、イオン注入によって形成するどのような不純物層であっても良い。特に、高温、高不純物濃度、高エネルギーのイオン注入によって形成する不純物層に対して適用されると好ましい。
【0015】
〔
図1Aに示す工程〕
まず半導体素子を構成するSiC基板1を用意する。ここでいうSiC基板1は、イオン注入により形成する不純物層の形成前の工程まで行った試料のことを意味している。例えば、縦型MOSFETの場合、SiCからなるn
+型基板の主表面上にn
-型ドリフト層をエピタキシャル成長させたのち、n
-型ドリフト層の上にチャネル層に相当するp型ベース領域およびn
+型ソース領域を順に形成する。そして、p型ベース領域のうちn
+型ソース領域が配置された場所と異なる位置の表層部にp型不純物濃度を部分的に高くするコンタクトp型層を形成する。イオン注入により形成する不純物層がコンタクトp型層である場合、その前のp型ベース領域およびn
+型ソース領域の形成工程まで行ったものが
図1Aに示すSiC基板1となる。勿論、これ以外の部分の不純物層の形成をイオン注入で行う場合も想定される。例えば、イオン注入により形成する不純物層がn
+型ソース領域であれば、その前のp型ベース領域の形成工程まで行ったものが
図1Aに示すSiC基板1となる。
【0016】
そして、SiC基板1の上にレジスト2を成膜したのち、フォトリソグラフィ工程を行ってレジスト2を所望パターンにパターニングし、コンタクトp型層の形成予定領域以外がレジスト2で覆われるようにする。レジスト2としては、例えば住友化学株式会社製のPFI89のように耐熱温度300℃程度と耐熱温度が1000℃のような高耐熱ではない一般的に使用されているフォトレジストを使用している。レジスト2の厚みについては、イオン注入のドーズ量や加速エネルギーなどに応じて任意に決めれば良いが、ここでは1.7μm±10%の範囲に調整している。
【0017】
〔
図1Bに示す工程〕
レジスト2に対してUV照射を行うUVキュア工程を行う。具体的には、レジスト2をパターニングした試料を図示しないUVキュア装置のチャンバー内におけるステージ上に搭載したのち、ステージを加熱することで試料を高温にし、その状態でUVキュアを行う。このときの試料の温度については、この後に行うイオン注入の温度よりも高い温度となるようにしており、200℃以上、例えば200~250℃となるようにしている。UVキュアの時間については任意であるが、数十秒から数百秒の時間行うようにしている。このUVキュアにより、UVが照射された部分となるレジスト2のうちの表層部に硬化層2aが形成される。
【0018】
このときに形成される硬化層2aは、UVキュアの時間に応じた厚みで形成される。例えば、UVキュアの時間が100秒であれば硬化層2aの厚みが100nm、200秒であれば250nmとなり、UVキュアの時間が長いほど硬化層2aの厚みが厚くなる。硬化層2aは、この後のイオン注入の際にSiC基板1中にイオンが注入されることを保護する役割も果たすが、イオン注入の際の高温により硬化層2aの内側に発生するデガスを内部に閉じ込めて外部に吹き出すことをガードする役割を果たす。これらの役割を考慮して、イオン注入時のドーズ量や加速エネルギー、温度に基づいて硬化層2aの厚みを設定している。ここでは、例えばUVキュアの時間を100秒としており、硬化層2aの厚みが100nm程度となるようにしている。なお、ここではUVキュアの時間の一例を挙げているが、上記役割を果たす厚みで硬化層2aが形成されれば良いため、UVキュアの時間については適宜調整すれば良い。
【0019】
〔
図1Cに示す工程〕
硬化層2aを形成したレジスト2をマスクとして用いてイオン注入を行うことで、SiC基板1のうちレジスト2で覆われていない部分に、例えばコンタクトp型層のような不純物層3を形成する。例えば、レジスト2を形成したSiC基板1の試料を図示しないイオン注入装置のチャンバー内におけるステージ上に搭載し、ステージを加熱することによってSiC基板1の温度を200℃以上に加熱する。この状態で、p型不純物、例えばAl(アルミニウム)などをイオン種としてイオン注入を行う。例えば、不純物層3としてコンタクトp型層のように高不純物濃度のものを形成する場合、1.0×10
14cm
-2以上のドーズ量でイオン注入を行うようにしている。ただし、ドーズ量については誤差があるため、狙い値を1.0×10
14cm
-2以上として、±15%程度でイオン注入が行われる。また、加速エネルギーについては、~200keVとしている。
【0020】
このとき、イオン注入時の高温によってレジスト2内にデガスが発生し得るが、これがレジスト2の外部に吹き出そうとしても、硬化層2aが形成されているため、硬化層2aによってガードされ、外部に吹き出すことが抑制される。デガスがレジスト2の外部に吹き出すと、イオン注入時に異常放電が生じることがあるため、デガスの吹き出しを抑制することで異常放電の発生を抑制でき、安定したイオン注入を行うことが可能となる。
【0021】
なお、このようにしてイオン注入を行うと、硬化層2aがより硬化し、
図2に示すように、レジスト2内、特に硬化層2a内にAlが残った状態になる。
【0022】
〔
図1Dに示す工程〕
アッシング装置10内に不純物層3を形成したSiC基板1を設置し、高温アッシングによりレジスト2の除去工程を行う。なお、本図では、ウェハ状態のSiC基板1を示してあるため、不純物層3については示されていないが、実際には所望位置に不純物層3が形成された状態になっている。具体的には、O
2プラズマアッシングによってSiC基板1の上に残っているレジスト2を除去する。このとき、硬化層2aを含むレジスト2内に残ったAlがO
2プラズマアッシング時に不揮発性の酸化物(Al
2O
3)に変化してしまうことが確認された。この酸化物は不揮発性のものであるため、O
2プラズマアッシングでは除去が困難であり、O
2プラズマアッシングを行っただけではSiC基板1の表面に残渣として残ってしまうことになる。このため、次の
図1Eに示す工程を行う。
【0023】
〔
図1Eに示す工程〕
HF(フッ化水素)洗浄による酸化物除去工程を行う。上記したように、O
2プラズマアッシングを行っただけではSiC基板1の表面に不揮発性の酸化物が残渣として残ってしまう。このため、HF洗浄を行うことで、不揮発性の酸化物を溶解度の高いAlOFに変化させて溶解させる。これにより、SiC基板1の表面の残渣を無くすことが可能となる。
【0024】
このようにして、SiC基板1の表層部にイオン注入による不純物層3を形成することができる。図示しないが、この後も、SiC半導体装置の製造プロセスを行い、縦型MOSFETもしくはIGBTなどの半導体素子を備えたSiC半導体装置を製造することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態では、イオン注入のマスクとして耐熱温度300℃程度の一般的に使用されているレジスト2を用い、レジスト2にUV照射を行うことで硬化層2aを形成してからイオン注入を行うようにしている。このため、イオン注入時に高温とされても、硬化層2aがデガスの吹き出しを抑制することが可能となる。より詳しくは、UV照射をイオン注入時の温度以上の高温で行って硬化層2aを形成しているため、イオン注入時に高温とされても、硬化層2aが崩れることなく形を維持できる。したがって、イオン注入時に高温とされても、硬化層2aによってデガスをレジスト2内に閉じ込めることが可能となり、デガスがレジスト2の外部に吹き出すことを抑制できる。
【0026】
これにより、一般的なレジスト2をマスクとして使用しても、結晶欠陥の抑制を行うことが可能な高温でのイオン注入を行うことが可能となる。よって、結晶欠陥の発生を抑制しつつ、レジスト2の耐熱が必要になるというトレードオフを解決し、一般的なレジスト2を用いたイオン注入を行うことが可能となる。特に、不純物層3を高不純物濃度とする場合に、高ドーズ量でのイオン注入を行うことになる。そのような場合にレジスト2が崩れ易いが、本実施形態の製造方法を用いることでレジスト2が崩れることなく安定したイオン注入が行える。
【0027】
さらに、本実施形態の製造方法によれば、以下の効果を得ることもできる。
【0028】
(1)イオン種としてAlを用いる場合、イオン注入時に硬化層2aを含むレジスト2内にAlが残ることから、O2プラズマアッシングを行っただけではSiC基板1の表面に不揮発性の酸化物が残渣として残ってしまう。この残渣を除去するために、O2プラズマアッシングの後にHF洗浄工程を行うようにしている。これにより、SiC基板1の表面の残渣を無くすことが可能となる。
【0029】
(2)本実施形態では、イオン注入時の基板温度を200℃以上、ドーズ量を1.0×1014cm-2±15%以上とするような高温、高不純物濃度、高エネルギーでのイオン注入を行う場合に、一般的なレジスト2をマスクとして用いている。高温、高不純物濃度、高エネルギーでのイオン注入を行う際には、マスクとして酸化膜を用いるのが一般的であるが、このような場合に一般的なレジスト2を用いてイオン注入を行えると、特に工程数の増加に伴うコスト高の抑制として高い効果を得ることができる。
【0030】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0031】
(1)例えば、上記実施形態では、半導体素子として縦型MOSFETやIGBTを例に挙げ、これらの構成要素の1つの不純物層3を形成する場合について説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、他の半導体素子の構成要素となる不純物層の形成や、半導体素子以外の不純物層、例えば外周耐圧領域に形成される不純物層などを形成する際のイオン注入において、本発明を適用することができる。
【0032】
(2)上記実施形態では、SiC半導体装置を製造する際のウェハのうちのチップとして取り出す有効領域での製造方法を記載しているが、チップとして取り出されないウェハの外縁部に位置する不要領域を考慮した製造方法とすると好ましい。
【0033】
具体的には、レジスト2を成膜する際には、表面張力の影響で、ウェハの外縁部の不要領域において、その内側の有効領域よりもレジスト2が厚く形成される。このため、不要領域のレジスト2をそのまま残しておくと、UV照射を行って硬化層2aを形成しても、レジスト2の厚みが厚いためにイオン注入時に硬化層2aが崩れてデガスが吹き出してしまう可能性がある。したがって、レジスト2をパターニングする際に、ウェハの外縁部のうち不要領域の全域において、少なくともレジスト2の膜厚が有効領域よりも厚くなっている部分の全域を除去する。このようにすれば、イオン注入時にウェハの外縁部からデガスが吹き出して異常放電を生じさせてしまうことを抑制することが可能となる。
【0034】
(3)上記実施形態では、イオン注入を行うイオン種としてAlを例に挙げたが、他の不純物となるイオン種、例えばN(窒素)、P(リン)、B(ボロン)を用いる場合にも、本発明を適用できる。
【0035】
(4)また、上記実施形態では、高耐熱ではない一般的なレジスト2として、PFI89を例に挙げたが、勿論、他の材料のレジストであっても良い。つまり、高耐熱の他の工程で使用されないような材料のレジストではなく、他の工程でも使用されるような一般的なレジストであれば、他の材料で構成されたものであっても良い。また、耐熱温度も300℃程度のものを例に挙げているが、それに限るものではない。
【0036】
(5)また、上記実施形態では、半導体材料としてSiCを用いる場合を例に挙げ、SiC基板1に対して不純物層3を形成する場合について説明した。しかしながら、交代熱ではない一般的なレジスト2を用いて半導体基板に対してイオン注入を行って不純物層を形成する場合であれば、半導体材料がSiC以外のものであっても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 SiC基板
2 レジスト
2a 硬化層
3 不純物層