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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】感熱転写媒体及び情報記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/385 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
B41M5/385 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021554261
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038194
(87)【国際公開番号】W WO2021079752
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2019193371
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】浦田 誠子
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0326718(US,A1)
【文献】特開2003-170685(JP,A)
【文献】特開2009-045931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルと
を備え、
前記複数のインクパネルは、
前記熱転写インクが、第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び
前記熱転写インクが、第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インクである第3光輝性インクパネル
を含み、前記第2透明無機化合物は、前記第1透明無機化合物とは異なる感熱転写媒体。
【請求項2】
前記第3着色材料は、前記第2着色材料と等しい請求項に記載の感熱転写媒体。
【請求項3】
前記第3透明材料は、前記第2透明材料と等しい請求項1又は2に記載の感熱転写媒体。
【請求項4】
支持体と、
前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルと
を備え、
前記複数のインクパネルは、
前記熱転写インクが、第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インクである第1光輝性インクパネル、
前記熱転写インクが、第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び、
前記熱転写インクが、第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インクである第3光輝性インクパネル
からなる群より選ばれる2以上のインクパネルを含み、
前記第1乃至第3透明材料は合成マイカであり、前記第1乃至第3着色材料は酸化鉄(III)であり、前記第1透明無機化合物は酸化チタンであり、前記第2透明無機化合物は二酸化ケイ素である感熱転写媒体。
【請求項5】
支持体と、
前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルと
を備え、
前記複数のインクパネルは、
前記熱転写インクが、合成マイカからなる第1核と、前記第1核を覆った酸化鉄(III)からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インクである第1光輝性インクパネル、
前記熱転写インクが、合成マイカからなる第2核と、前記第2核を覆った酸化チタンからなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び、
前記熱転写インクが、合成マイカからなる第3核と、前記第3核を覆った二酸化ケイ素からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有した第3光輝性インクである第3光輝性インクパネル
からなる群より選ばれる2以上のインクパネルを含んだ感熱転写媒体。
【請求項6】
記録媒体と、
前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンと
を備え、
前記光輝性パターンは、
第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、
第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、
第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インク
からなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、
前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されており、
前記光輝性パターンは、前記第2及び第3光輝性インクを含み、
前記第2透明無機化合物は、前記第1透明無機化合物とは異なる情報記録体。
【請求項7】
前記第3着色材料は、前記第2着色材料と等しい請求項に記載の情報記録体。
【請求項8】
前記第3透明材料は、前記第2透明材料と等しい請求項6又は7に記載の情報記録体。
【請求項9】
記録媒体と、
前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンと
を備え、
前記光輝性パターンは、
第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、
第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、
第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インク
からなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、
前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されており、
前記第1乃至第3透明材料は合成マイカであり、前記第1乃至第3着色材料は酸化鉄(III)であり、前記第1透明無機化合物は酸化チタンであり、前記第2透明無機化合物は二酸化ケイ素である情報記録体。
【請求項10】
記録媒体と、
前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンと
を備え、
前記光輝性パターンは、
合成マイカからなる第1核と、前記第1核を覆った酸化鉄(III)からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、
合成マイカからなる第2核と、前記第2核を覆った酸化チタンからなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、
合成マイカからなる第3核と、前記第3核を覆った二酸化ケイ素からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有した第3光輝性インク
からなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、
前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されている情報記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポート、識別(ID)カード、チケット、及び通帳等の、セキュリティ性が必要とされ、偽造又は改竄がされにくく、真贋判定を容易に行える個人認証媒体を製造するための感熱転写媒体に関する。また、本発明は、この感熱転写媒体を用いて製造される情報記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や絵柄が種々の方法で印刷された印刷物には、パスポート及びIDカード等の個人認証媒体、クレジットカード、並びに通帳などのセキュリティ性を求められる情報記録体がある。そのような情報記録体には、顔画像及び文字の画像に加え、偽造若しくは改ざんを困難にするためのセキュリティ性、本物であることを示す真正性、又は意匠性を付与するべく、特殊な視覚効果を有する画像を記録することがある。
【0003】
特殊な視覚効果を有する画像を記録する手法としては、転写箔を使用して、ホログラムや回折格子などの光学デバイスを記録媒体に貼着することが広く行われている。これらの光学デバイスは、虹色表示、三次元(3D)画像表示、観察方向の変化に伴う色変化、及び、観察方向の変化に伴うパターンの変化(所謂、画像チェンジング)などの特殊な視覚効果を呈し得る。また、これら光学デバイスの製造は、真空プロセスを要するなどの理由で難易度が高い。これらの理由から、上記の光学デバイスは、偽造防止に一定の効果を奏するものとして知られ、広く利用されている。
【0004】
しかしながら、これらの光学デバイスが広く利用されるようになったことに伴い、類似物を入手し易くなった。また、製造プロセス上の理由で、光学デバイスには、通常、個人情報などの個別常法を個別のパターンとして記録することは困難であり、同一のパターンを記録できるだけである。そのため、これら光学デバイスによる偽造や改竄の防止効果は限定的なものとなっていた。また、これらの光学デバイスには、類似の視覚効果を持つもので代用された場合に、専門家でないと真贋判定が困難であるという問題があった。
【0005】
また、カラーコピー機や家庭用のカラープリンタなどが普及し、これらの機器で容易に高精度のカラー印刷が行えるようになってきた。このため、これらの機器では再現が困難な記録、例えば、特色インク、金銀インク、又は光輝性を有するパールインクを用いたパターンの記録も行われている。しかしながら、これらのインクも入手しやすくなってきており、それ故、簡単なパターンであれば複製が容易になってきている。従って、上記のインクにより達成されるセキュリティ性は、不十分になってきている。
【0006】
通常のカラーインクとカラーシフトインクとを組み合わせてパターンを記録する手法もある。そのようなパターンは、例えば、通常のカラーインクで形成した部分と、カラーシフトインクで形成した部分とが、或る観察条件下では同色に見え、観察方向を変化させることにより異なる色に見えるように形成することができる。この手法は、意匠性を高めるために用いられることが多い。この手法は、セキュリティ性を付与するために用いられることもある。しかしながら、通常のインクとカラーシフトインクとは質感が異なるため、異なる種類のインクが組み合わされていることが分かりやすい。そのため、これらインクの組み合わせによって記録した情報は秘匿性に欠け、セキュリティ性は不十分なものであった。
【0007】
特許文献1には、蛍光インクを用いて潜像を記録する手法が記載されている。この手法は、オフセット印刷等の従来の印刷技術を用いて、蛍光物質を含む無色の蛍光インクをカードに印刷することにより潜像を形成するというものである。この方法は、同種のカードに共通の潜像を記録するのに適している。そのような潜像は、例えば、カード基材が本物かどうかの識別に利用することができる。しかしながら、個人情報などの個別の情報を蛍光インクで記録するためには、カードごとに異なる印刷版を作成する必要がある。そのような記録は、現実的ではない。
【0008】
特許文献2には、光透過性が高い第1着色インク層と、光透過性が低く且つパターニングされた第2着色インク層と、第2着色インク層と同色であり且つ光透過性が高い第3着色インク層とを、この順に透明カード基材上に形成したカードが記載されている。このカードからの反射光を観察した場合には、第2着色インク層のパターンは見えない。このカードからの透過光を観察した場合には、第2着色インク層に対応した部分とそれ以外の部分との間の透過率の差によって、透過画像にコントラストを生じる。それ故、目視で第2着色インク層のパターン形状を確認できる。しかしながら、特許文献2の技術は、第1乃至第3着色インク層を形成する必要があり、同種のカードには図柄のような共通の画像しか記録できない点は、先に述べた技術と同様である。また、この技術は、透明なカード基材を用いなければならず、適用範囲が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本国実用新案登録第3029273号公報
【文献】日本国特開2007-30391号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、個々の情報記録体が真正なものであるかどうかの真贋判定を容易とし、且つ、セキュリティ性の高いパターンを個別にオンデマンドで記録可能とすることにより、高い偽造防止効果を達成し得る技術を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の一側面によると、支持体と、前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルとを備え、前記複数のインクパネルは、前記熱転写インクが、第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インクである第1光輝性インクパネル、前記熱転写インクが、第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び、前記熱転写インクが、第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インクである第3光輝性インクパネルからなる群より選ばれる2以上のインクパネルを含んだ感熱転写媒体が提供される。
【0012】
本発明の他の側面によると、支持体と、前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルとを備え、前記複数のインクパネルは、前記熱転写インクが、合成マイカからなる第1核と、前記第1核を覆った酸化鉄(III)からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インクである第1光輝性インクパネル、前記熱転写インクが、合成マイカからなる第2核と、前記第2核を覆った酸化チタンからなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び、前記熱転写インクが、合成マイカからなる第3核と、前記第3核を覆った二酸化ケイ素からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有した第3光輝性インクである第3光輝性インクパネルからなる群より選ばれる2以上のインクパネルを含んだ感熱転写媒体が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、記録媒体と、前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンとを備え、前記光輝性パターンは、第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インクからなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されている情報記録体が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、記録媒体と、前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンとを備え、前記光輝性パターンは、合成マイカからなる第1核と、前記第1核を覆った酸化鉄(III)からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、合成マイカからなる第2核と、前記第2核を覆った酸化チタンからなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、合成マイカからなる第3核と、前記第3核を覆った二酸化ケイ素からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有した第3光輝性インクからなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されている情報記録体が提供される。
【0015】
上記の感熱転写媒体は、光輝性顔料を色材として含んだ光輝性インクからなり、光輝性顔料の構造及び組成の少なくとも一方が異なる2以上のインクパネルを含んでいる。この感熱転写媒体を使用すると、例えば、上記の情報記録媒体の製造において、光輝性パターンをオンデマンドで形成することができる。そして、光輝性パターン又はその一部として、個人情報などの個別情報を記録することもできる。即ち、上記の感熱転写媒体によると、セキュリティ性の高いパターンを個別にオンデマンドで記録することが可能である。
【0016】
また、第1光輝性顔料は、干渉色を呈さない。他方、第2及び第3光輝性顔料の各々は、干渉色を呈し得る。そして、第2及び第3光輝性顔料は、核を覆う被覆の光学膜厚又は組成が異なっているので、強め合う干渉を生じる条件が異なる。それ故、上記光輝性パターンは、例えば、種類が異なる光輝性インクからなる部分が、正面から肉眼で観察した場合に同じ色を表示し、斜め方向から肉眼で観察した場合に互いに異なる色を表示するものとすることができる。即ち、これら部分によって、正面から肉眼で観察した場合には識別できず、観察方向を傾けることで顕像化する潜像を構成することができる。このような潜像として記録された情報は、観察方向を傾けることにより肉眼で容易に確認できる。それ故、上記の構成を採用すると、個々の情報記録体が真正なものであるかどうかの真贋判定が容易になる。
従って、高い偽造防止効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る感熱転写媒体の斜視図。
図2】本発明の他の実施形態に係る感熱転写媒体の斜視図。
図3】観察者が情報記録体を観察している様子を示す図。
図4】一例に係る光輝性パターンについて得られた色相チャート。
図5】一例に係る光輝性パターンについて得られた分光反射率チャート。
図6】情報記録体の製造に使用可能な間接転写記録装置の一例を概略的に示す図。
図7】本発明の一実施形態に係る情報記録体の平面図。
図8図7に示す情報記録体に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
図9図7に示す情報記録体に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図。
図10A図8の構造を採用した情報記録体が、ほぼ正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
図10B図8の構造を採用した情報記録体が、観察角度を30°として観察した場合に表示する画像を示す図。
図11A図9の構造を採用した情報記録体が、ほぼ正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
図11B図9の構造を採用した情報記録体が、観察角度を30°として観察した場合に表示する画像を示す図。
図11C図9の構造を採用した情報記録体が、観察角度を60°として観察した場合に表示する画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下において、同一の構成要素又は同じ機能を発揮する構成要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る感熱転写媒体の斜視図である。
図1に示す感熱転写媒体1は、帯形状を有している。図1において、感熱転写媒体1は、一端が巻き出されたロールの形態にある。感熱転写媒体1は、他の形状を有していてもよい。
【0020】
感熱転写媒体1は、支持体2と、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBとを含んでいる。
【0021】
支持体2は、帯形状を有している。支持体2は、他の形状を有していてもよい。
支持体2は、転写時の熱に対して十分な耐性を有している。支持体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリマーフィルムである。支持体2は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0022】
インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBは、支持体2の一方の主面上に設けられている。より詳細には、支持体2の上記主面上では、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBから各々がなる複数のインクパネル群が、面内方向に、ここでは、支持体2の長手方向に配列している。各インクパネル群では、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBは、面内方向に配列している。ここでは、各インクパネル群では、支持体2の長手方向に、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBがこの順に配列している。また、ここでは、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBは、支持体2の幅方向の伸びた帯形状を各々が有している。
【0023】
インクパネルBk、Cy、Ma及びYeは、それぞれ、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのカラーインクパネルである。インクパネルBk、Cy、Ma及びYeの各々は、熱転写インクからなる。ここでは、熱転写インクは、色材とバインダ樹脂とを含んだカラーインクである。インクパネルBk、Cy、Ma及びYeが含んでいる色材は、1種以上の顔料、1種以上の染料又はそれらの組み合わせである。インクパネルBk、Cy、Ma及びYeが含んでいるバインダ樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂である。インクパネルBkを構成しているカラーインク、インクパネルCyを構成しているカラーインク、インクパネルMaを構成しているカラーインク、及びインクパネルYeを構成しているカラーインクは、それぞれ、白色光で照明した場合に、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー色を呈する。
【0024】
インクパネルA及びBは、それぞれ、第1及び第2光輝性インクパネルである。第1及び第2光輝性インクパネルの各々は、色材とバインダ樹脂とを含んだ熱転写インクからなる。バインダ樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂である。
【0025】
インクパネルAの熱転写インクは、色材として第1光輝性顔料を含有した第1光輝性インクである。第1光輝性顔料は、合成マイカからなる第1核と、第1核を覆った酸化鉄(Fe)からなる第1被覆とを含んでいる。
【0026】
インクパネルBの熱転写インクは、色材として第2光輝性顔料を含有した第2光輝性インクである。第2光輝性顔料は、合成マイカからなる第2核と、第2核を覆った酸化チタン(TiO)からなる第2被覆と、第2被覆を覆った酸化鉄(III)、即ちFeからなる第3被覆とを含んでいる。
【0027】
インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBの各々の寸法は、適宜設定すること、例えば、感熱転写媒体1から熱転写インクを転写すべき記録媒体における記録領域の寸法等に合わせることができる。
【0028】
感熱転写媒体1は、センサマークSを更に含んでいる。センサマークSは、省略することができる。
【0029】
感熱転写媒体1は、支持体2のインクパネルBk、Cy、Ma、Ye、A及びBとは反対側に、耐熱層及び滑性層などのバックコート層を更に含んでいてもよい。
【0030】
第1光輝性顔料は、上記の通り、合成マイカからなる第1核を、酸化鉄(III)からなる第1被覆で覆った構造を有している。合成マイカは、透明誘電体であって、互いに平行な一対の主面を有する鱗片状粒子である。それ故、合成マイカの一方の主面に入射した光は、合成マイカ内で反射を繰り返し得る。しかしながら、合成マイカは厚いため、合成マイカ内での繰り返し反射干渉によって、強い干渉光は生じない。また、第1光輝性顔料では、合成マイカからなる第1核は、酸化鉄(III)からなる第1被覆で覆われている。第1核に入射した光は、第1核と第1被覆との界面で反射されるたびに、第1被覆によって一部が吸収される。それ故、第1光輝性顔料は、観察方向に拘らず、酸化鉄の色である赤茶色に見える。従って、光輝性インクを記録媒体上に転写してなる光輝性パターンのうち、第1光輝性インクからなる部分も赤茶色に見える。
【0031】
他方、第2光輝性顔料は、上記の通り、合成マイカからなる第2核を、酸化チタンからなる第2被覆で覆い、これを更に酸化鉄(III)からなる第3被覆で覆った構造を有している。即ち、第2光輝性顔料では、合成マイカからなる第2核と、酸化鉄(III)からなる第3被覆との間に、酸化チタンからなる第2被覆が介在している。酸化チタンは透明誘電体であるので、第2被覆に入射した光は、第2核と第2被覆との間の界面によって反射され得る。また、第2被覆は、略均一な厚さを有している薄い層である。従って、第2被覆に入射した光は、第2被覆の表面及び第2核と第2被覆との間の界面を反射面とする繰り返し反射干渉を生じ、その結果、強い干渉光を生じ得る。強め合う干渉を生じる光の波長は、光路長に応じて変化する。そして、光路長は、観察角度θに応じて変化する。即ち、干渉色は、観察角度θに応じて変化する。
【0032】
また、第2光輝性顔料の表面は、第2核の表面に対してコンフォーマルである。即ち、第2光輝性顔料は、第2核と厚さ方向が等しい鱗片状粒子である。それ故、インクパネルBや、光輝性インクを記録媒体上に転写してなる光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分において、第2光輝性顔料は、その厚さ方向がインクパネルBの厚さ方向又は光輝性パターンの厚さ方向と略一致するように配向する。
【0033】
従って、光輝性インクを記録媒体上に転写してなる光輝性パターンのうち、第2光輝性インクからなる部分は、観察角度θに応じて異なる色相を呈する。
【0034】
例えば、図3に示すように、観察者OBが、観察角度θを0°乃至15°の範囲内として、光輝性パターンを有する情報記録体Pを観察した場合、即ち、情報記録体Pをほぼ正面から観察した場合、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分は、干渉色を殆ど生じることなく、酸化鉄の色である赤茶色に見える。観察角度θを30°程度とすると、干渉色が見えるようになり、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分は緑色に見えるようになる。そして、観察角度θを60°程度とすると、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分は青色に見えるようになる。
【0035】
図2は、本発明の他の実施形態に係る感熱転写媒体の斜視図である。
図2に示す感熱転写媒体3は、前述の感熱転写媒体1と同様に、帯形状を有している。図2において、感熱転写媒体3は、一端が巻き出されたロールの形態にある。感熱転写媒体3は、他の形状を有していてもよい。
【0036】
感熱転写媒体3は、支持体4と、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCとを含んでいる。
【0037】
支持体4は、帯形状を有している。支持体4は、他の形状を有していてもよい。支持体4としては、例えば、支持体2について上述したものを使用することができる。
【0038】
インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCは、支持体2の一方の主面上に設けられている。より詳細には、支持体2の上記主面上では、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCから各々がなる複数のインクパネル群が、面内方向に、ここでは、支持体2の長手方向に配列している。各インクパネル群では、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCは、面内方向に配列している。ここでは、各インクパネル群では、支持体2の長手方向に、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCがこの順に配列している。また、ここでは、インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCは、支持体2の幅方向の伸びた帯形状を各々が有している。即ち、感熱転写媒体3のインクパネル群は、インクパネルAの代わりにインクパネルCを含み、インクパネルBがインクパネルYeとインクパネルCとの間に位置していること以外は、感熱転写媒体1のインクパネル群と同様である。
【0039】
インクパネルCは、第3光輝性インクパネルである。第3光輝性インクパネルは、色材とバインダ樹脂とを含んだ熱転写インクからなる。バインダ樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂である。
【0040】
インクパネルCの熱転写インクは、色材として第3光輝性顔料を含有した第3光輝性インクである。第3光輝性顔料は、合成マイカからなる第3核と、第3核を覆った二酸化ケイ素(SiO)からなる第4被覆と、第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んでいる。第3核は、第1核及び第2核と同様に鱗片状粒子である。ここでは、一例として、第3核の厚さは、第2核の厚さとほぼ等しいとする。
【0041】
インクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCの各々の寸法は、適宜設定すること、例えば、感熱転写媒体3から熱転写インクを転写すべき記録媒体における記録領域の寸法等に合わせることができる。
【0042】
感熱転写媒体3は、センサマークSを更に含んでいる。センサマークSは、省略することができる。
【0043】
感熱転写媒体3は、支持体4のインクパネルBk、Cy、Ma、Ye、B及びCとは反対側に、耐熱層及び滑性層などのバックコート層を更に含んでいてもよい。
【0044】
第3光輝性顔料は、上記の通り、合成マイカからなる第3核を、二酸化ケイ素からなる第4被覆で覆い、これを更に酸化鉄(III)からなる第5被覆で覆った構造を有している。即ち、第3光輝性顔料では、合成マイカからなる第3核と、酸化鉄(III)からなる第5被覆との間に、二酸化ケイ素からなる第4被覆が介在している。二酸化ケイ素は透明誘電体であるので、第4被覆に入射した光は、第3核と第4被覆との間の界面によって反射され得る。また、第4被覆は、略均一な厚さを有している薄い層である。従って、第4被覆に入射した光は、第4被覆の表面及び第3核と第4被覆との間の界面を反射面とする繰り返し反射干渉を生じ、その結果、強い干渉光を生じ得る。強め合う干渉を生じる光の波長は、光路長に応じて変化する。そして、光路長は、観察角度θに応じて変化する。即ち、干渉色は、観察角度θに応じて変化する。
【0045】
また、第3光輝性顔料の表面は、第3核の表面に対してコンフォーマルである。即ち、第3光輝性顔料は、第3核と厚さ方向が等しい鱗片状粒子である。それ故、インクパネルCや、光輝性インクを記録媒体上に転写してなる光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分において、第3光輝性顔料は、その厚さ方向がインクパネルCの厚さ方向又は光輝性パターンの厚さ方向と略一致するように配向する。
【0046】
従って、光輝性インクを記録媒体上に転写してなる光輝性パターンのうち、第3光輝性インクからなる部分は、観察角度θに応じて異なる色相を呈する。
【0047】
また、第2光輝性顔料では、第2核を覆っている第2被覆は酸化チタンからなるのに対し、第3光輝性顔料では、第3核を覆っている第4被覆は二酸化ケイ素からなる。酸化チタン及び二酸化ケイ素は、屈折率が異なっている。
【0048】
それ故、光輝性インクを記録媒体上に転写してなる光輝性パターンのうち、第2光輝性インクからなる部分と第3光輝性インクからなる部分とは、例えば、情報記録体をほぼ正面から観察した場合には同じ色に見え、観察方向を傾けた場合には異なる色に見える。
【0049】
例えば、図3に示すように、観察角度θを0°乃至15°の範囲内として、光輝性パターンを有する情報記録体Pを観察した場合、即ち、情報記録体Pをほぼ正面から観察した場合、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分は、干渉色を殆ど生じることなく、酸化鉄の色である赤茶色に見える。観察角度θを30°程度とすると、干渉色が見えるようになり、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分は緑色に見えるようになる。そして、観察角度θを60°程度とすると、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分は青色に見えるようになる。
【0050】
また、図3に示すように、観察角度θを0°乃至15°の範囲内として、光輝性パターンを有する情報記録体Pを観察した場合、即ち、情報記録体Pをほぼ正面から観察した場合、光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分も、干渉色を殆ど生じることなく、酸化鉄の色である赤茶色に見える。観察角度θを30°程度とすると、干渉色が見えるようになり、光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分は緑色に見えるようになる。但し、観察角度θを60°程度としても、光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分は、大きな色変化を生じずに、緑色のままである。
【0051】
図4は、一例に係る光輝性パターンについて得られた色相チャートである。図4において、曲線C21は、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分の観察角度θに応じた色の変化を表している。また、曲線C31は、光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分の観察角度θに応じた色の変化を表している。
【0052】
上記の通り、光輝性パターンのうち第1光輝性インクからなる部分は、観察角度θを変化させても、色の変化を生じない。光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分では、観察角度θが0°乃至15°程度の範囲内においては、干渉色は、弱く且つ黄色味が強い色相を呈するため、赤茶色の酸化鉄の色に紛れて目立たない。この部分では、観察角度θが大きくなるにつれて干渉色が表示色へ及ぼす影響が大きくなり、観察角度θが30°程度になると緑色を呈するようになり、観察角度θが60°程度になると青色を呈するようになる。これに対し、光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分では、観察角度θが0°乃至15°程度の範囲内においては、干渉色は上記と同様に目立たないが、角度が大きくなるにつれて干渉色が表示色へ及ぼす影響が大きくなり、観察角度θが30°程度になると緑色を呈するようになるが、観察角度θが60°程度にまで更に大きくなっても、色相の変化は少なく緑色に見える。
【0053】
図5は、一例に係る光輝性パターンについて得られた分光反射率チャートである。図5において、曲線C2a及びC2bは、それぞれ、光輝性パターンのうち第2光輝性インクからなる部分の、観察角度θが15°及び60°である場合における分光反射率を表している。また、曲線C3a及びC3bは、それぞれ、光輝性パターンのうち第3光輝性インクからなる部分の、観察角度θが15°及び60°である場合における分光反射率を表している。
【0054】
図5に示すように、観察角度θが変化すると、光輝性パターンのうち第2光輝性顔料を含んだ部分及び第3光輝性顔料を含んだ部分の各々は、反射率のピークのシフトを生じ、色相が変化する。光輝性パターンのうち第2光輝性顔料を含んだ部分は、観察角度θの変化に応じた反射率ピークのシフト量が、光輝性パターンのうち第3光輝性顔料を含んだ部分と比較して大きいことが分かる。
【0055】
なお、上記の各実施形態においては、観察角度θを大きくするのに応じて、光輝性顔料による表示色が先ず緑色に変化し、場合によっては青色へ更に変化する例を示したが、表示色は上記の例に限られない。合成マイカからなる核を覆う被覆の厚さを変更することで光路長を変え、例えば、赤色又は青色の干渉色を呈するようにすることもでき、それに応じた表示色を呈する光輝性インク及びインクパネルを形成することもできる。
【0056】
図6は、情報記録体の製造に使用可能な間接転写記録装置の一例を概略的に示す図である。
【0057】
本発明の実施形態に係る情報記録体は、上述のような感熱転写媒体と熱転写プリンタとを使用して製造することができる。図6には、熱転写プリンタを間接転写方式のプリンタで構成した例を示している。
【0058】
図6に示す間接転写記録装置100では、感熱転写媒体1は、巻出しロール5から巻き出され、中間転写フィルム8への熱転写プリントを行う一次転写部101のサーマルヘッド7とプラテンローラ12との間を通過し、その後、巻取りロール6に巻き取られる。また、中間転写フィルム8が、巻出しロール9から巻き出され、一次転写部101のサーマルヘッド7とプラテンローラ12との間を通過し、次いで、被転写体である記録媒体13に熱圧転写を行う二次転写部102でヒートローラ11とプラテンローラ12との間を通過し、その後、巻取りロール10に巻き取られる。
【0059】
一次転写部101においては、感熱転写媒体1から中間転写フィルム8の受像層ともなるオーバレイ層上に、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色のインクパネルBk、Cy、Ma及びYeからカラー画像や文字等のパターンが転写されるとともに、光輝性顔料を色材とするインクパネルから光輝性パターンが転写される。各パターンが形成された中間転写フィルム8は、二次転写部102に搬送され、ヒートローラ11により記録媒体13に熱圧着されることで、一次転写部101で形成された各パターンがオーバレイ層と共に記録媒体13に転写される。カラー画像や文字等のパターン及び光輝性パターンは、サーマルヘッド7の動作を適宜制御することで任意の形状及び配置とすることができる。それ故、任意の個別情報を、中間転写フィルム8に、そして、記録媒体13に記録することができる。
【0060】
図7は、本発明の一実施形態に係る情報記録体の平面図である。
図7に示す情報記録体14は、IDカードなどのカード状である。情報記録体は、シート状又は冊子状であってもよく、平坦な記録面を持つ記録体であれば特に制限はない。情報記録体14には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色のインクパネルBk、Cy、Ma及びYeから転写され、カラー画像や文字等を表示するパターン15と、光輝性顔料を色材とする2種類の光輝性インクのインクパネルから転写されたパターンの組み合わせからなる光輝性パターン16とが形成されている。
【0061】
図8は、図7に示す情報記録体に採用可能な構造の一例を示す断面図である。
図8には、図1に例示した感熱転写媒体1を使用して間接転写記録方式で光輝性パターン16’を形成した情報記録体14’を示している。
【0062】
この情報記録体14’は、基材である記録媒体13と、接着層18と、パターン15と、光輝性パターン16’と、オーバレイ層17とを含んでいる。
【0063】
記録媒体13は、プラスチックからなるカードである。記録媒体13は、シートなどの他の形態であってもよい。記録媒体13の材質に特に制限はない。記録媒体13の材質は、例えば、プラスチックなどのポリマー、紙、金属、又はそれらの組み合わせである。
【0064】
接着層18は、記録媒体13上に設けられている。パターン15及び光輝性パターン16’は、接着層18上に設けられている。接着層18は、接着剤からなる。接着層18は、省略することができる。
【0065】
パターン15は、感熱転写媒体1から中間転写フィルムに転写されたものであり、カラー画像や文字等を表示する。パターン15は、パターンPBk、PCy、PMa及びPYeの組み合わせによって構成されている。パターンPBk、PCy、PMa及びPYeは、感熱転写媒体1から中間転写フィルムへ転写され、中間転写フィルムから記録媒体13へ更に転写されたものである。パターンPBk、PCy、PMa及びPYeは、それぞれ、インクパネルBk、Cy、Ma及びYeのカラーインクからなる。
【0066】
光輝性パターン16’は、第1光輝性顔料を色材とする第1光輝性インクからなる第1光輝性パターンPAと、第2光輝性顔料を色材とする第2光輝性インクからなる第2光輝性パターンPBとの組み合わせによって構成されている。第1光輝性パターンPA及び第2光輝性パターンPBは、感熱転写媒体1から中間転写フィルムに転写され、中間転写フィルムから記録媒体13へ更に転写されたものである。第1光輝性パターンPA及び第2光輝性パターンPBは、それぞれ、インクパネルAの第1光輝性インク及びインクパネルBの第2光輝性インクからなる。
【0067】
オーバレイ層17は、接着層18、パターン15、及び光輝性パターン16’上に設けられている。オーバレイ層17は、パターン15及び光輝性パターン16’とともに、中間転写フィルムから接着層18上に転写されている。オーバレイ層17は、例えば、エポキシ系樹脂などの透明なポリマーからなる。オーバレイ層17は、省略することができる。
【0068】
図10Aは、図8の構造を採用した情報記録体が、ほぼ正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0069】
例えば、観察角度θを0°とした場合、第1光輝性パターンPAと第2光輝性パターンPBとは、何れも酸化鉄の色である赤茶色に見える。それ故、第2光輝性パターンPBが表示する画像B1(ここでは、T字型の画像)を、第1光輝性パターンPAが表示する画像A1から見分けることができず、それらは潜像を構成する。
【0070】
図10Bは、図8の構造を採用した情報記録体が、観察角度を30°として観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0071】
この情報記録体14’を、図10Bに示すように30°程度傾けた状態で観察すると、第1光輝性パターンPAが表示する画像は、観察角度を0°とした場合に表示する画像A1と同じ色に見える。即ち、第1光輝性パターンPAが表示する画像は、知覚されるほどの色の変化を生じず、赤茶色のままである。これに対し、第2光輝性パターンPBが表示する画像は、干渉色が強まり、赤茶色の画像B1から、緑色の画像B2へ変化する。従って、正面から観察する状態と30°程度傾けて観察する状態との間で観察条件を切り替えることで、T字型の画像が見えなくなったり、緑色に見えるようになったりする。
【0072】
このような画像の変化は、例えば、真正性を判定するためのセキュリティ機能として利用することができる。なお、第2光輝性パターンPBの形状は、T字型に限らず、例えば、名前及びID番号等の任意の個別情報のパターンとすることができる。
【0073】
図9は、図7に示す情報記録体に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図である。
図9には、図2に例示した感熱転写媒体3を使用して間接転写記録方式で光輝性パターン16”を形成した情報記録体14”を示している。
【0074】
この情報記録体14”の構成は、基本的には情報記録体14’と同様である。但し、光輝性パターン16”は、第2光輝性顔料を色材とする第2光輝性インクからなる第2光輝性パターンPBと、第3光輝性顔料を色材とする第3光輝性インクからなる第3光輝性パターンPCとの組み合わせによって構成されている。中間転写フィルムのオーバレイ層17は、パターン15及び光輝性パターン16”とともに、接着層18上に転写されている。
【0075】
図11Aは、図9の構造を採用した情報記録体が、ほぼ正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。
例えば、観察角度θを0°とした場合、第2光輝性パターンPBと第3光輝性パターンPCとは、何れも酸化鉄の色である赤茶色に見える。それ故、第2光輝性パターンPBが表示する画像B1(ここでは、T字型の画像)を、第3光輝性パターンPCが表示する画像C1から見分けることができず、それらは潜像を構成する。
【0076】
図11Bは、図9の構造を採用した情報記録体が、観察角度を30°として観察した場合に表示する画像を示す図である。
この情報記録体14”を、図11Bに示すように30°程度傾けた状態で観察すると、第2光輝性パターンPBが表示する画像は、干渉色が強まり、赤茶色の画像B1から、緑色の画像B2へ変化する。他方、第3光輝性パターンPCが表示する画像も、干渉色が強まり、赤茶色の画像C1から、緑色の画像C2へ変化する。画像B2及びC2はほぼ同色であり、それらは潜像を構成する。即ち、観察角度を0°から30°へ変化させると、第2光輝性パターンBPが表示する画像及び第3光輝性パターンPCが表示する画像は、潜像を構成したまま、色変化を生じる。
【0077】
図11Cは、図9の構造を採用した情報記録体が、観察角度を60°として観察した場合に表示する画像を示す図である。
この情報記録体14”を、図11Cに示すように60°程度傾けた状態で観察すると、第3光輝性パターンPCが表示する画像C2の色は、大きくは変化せず、緑色のままである。これに対し、第2光輝性パターンPBが表示する画像は、緑色の画像B2から、青色の画像B3へ変化する。その結果、T字型の画像が見えるようになる。従って、正面から観察する状態と、30°程度傾けて観察する状態と、60°程度傾けて観察する状態との間で観察条件を切り替えることで、赤茶色と緑色との間での潜像の色変化や、T字型の青色画像の顕像化を生じる。
【0078】
このような画像の変化は、例えば、真正性を判断するためのセキュリティ機能として利用することができる。なお、第2光輝性パターンPBの形状は、T字型に限らず、任意の個別情報のパターンとすることができるのは前述の通りである。
【0079】
以上のように、上述した実施形態によれば、光輝性パターンを情報記録体に形成することによって、記録媒体に個別情報を記録することができる。光輝性パターンは、オンデマンドで記録媒体に形成することができる。従って、上述した実施形態によると、セキュリティ性の高いパターンを個別にオンデマンドで記録することが可能となる。
【0080】
また、光輝性パターンが表示する画像は、観察角度を変えることで、例えば、潜像と顕像との間で切り替わる。このような画像の変化を、セキュリティ機能として利用することで、個々の情報記録体が真正なものであるかどうかの真贋判定が容易になる。
【0081】
それ故、上記の実施形態によると、高い偽造防止効果を達成することができる。
【0082】
上述した感熱転写媒体及び情報記録体には、様々な変形が可能である。
図1に示す感熱転写媒体は、第1及び第2光輝性インクパネルを含んでいる。この感熱転写媒体を用いて得られる情報記録体の光輝性パターンは、第1及び第2光輝性インクを含んでいる。他方、図2に示す感熱転写媒体は、第2及び第3光輝性インクパネルを含んでいる。この感熱転写媒体を用いて得られる情報記録体の光輝性パターンは、第2及び第3光輝性インクを含んでいる。感熱転写媒体は、第1乃至第3光輝性インクパネルを含んでいてもよい。そして、情報記録体の光輝性パターンは、第1乃至第3光輝性インクを含んでいてもよい。
【0083】
第1核は、第1透明材料からなり且つ鱗片状であれば、合成マイカからなるものでなくてもよい。第2核は、第2透明材料からなり且つ鱗片状であれば、合成マイカからなるものでなくてもよい。第3核は、第3透明材料からなり且つ鱗片状であれば、合成マイカからなるものでなくてもよい。第1乃至第3透明材料としては、合成マイカ以外のマイカを使用してもよく、マイカ以外の透明材料、例えば、マイカ以外の透明無機化合物を使用してもよい。
【0084】
第1乃至第3透明材料は、互いに等しくてもよく、互いから異なっていてもよい。好ましくは、第1乃至第3透明材料は、互いに等しい。
【0085】
第1乃至第3核の各々は、厚さ方向に対して垂直な方向における平均寸法Lが、0.1乃至0.9μmの範囲内にあることが好ましく、0.2乃至0.7μmの範囲内にあることがより好ましい。また、第1乃至第3核の各々は、厚さdと上記平均寸法Lとの比d/Lが、0.004乃至0.18の範囲内にあることが好ましく、0.008乃至0.14の範囲内にあることがより好ましい。なお、平均寸法Lは、多数の核を電子顕微鏡で撮像し、それら核の厚さ方向に垂直な主面の面積を測定し、これら面積の平均値と等しい面積を有している円の直径を算出することにより得られる値である。
【0086】
第2被覆は、第1透明無機化合物からなり、第2核の表面に対してコンフォーマルな表面を有してれば、酸化チタン以外の材料からなる層であってもよい。第4被覆は、第2透明無機化合物からなり、第3核の表面に対してコンフォーマルな表面を有してれば、二酸化ケイ素以外の材料からなる層であってもよい。
【0087】
第1及び第2透明無機化合物は、透明無機誘電体であってもよく、透明無機導電体であってもよい。第1及び第2透明無機化合物としては、例えば、Sb(屈折率n=3.0)、FeO(n=2.7)、TiO(n=2.6)、CdS(n=2.6)、CeO(n=2.3)、ZnS(n=2.3)、PbCl(n=2.3)、CdO(n=2.2)、Sb(n=2.0)、WO(n=2.0)、SiO(n=2.0)、Si(n=2.5)、In(n=2.0)、PbO(n=2.6)、Ta(n=2.4)、ZnO(n=2.1)、ZrO(n=2.2)、SnO(n=2.0)、ITO(indium tin oxide;n=2.0)、MgO(n=1.6)、SiO(n=1.5)、MgF(n=1.4)、CeF(n=1.6)、CaF(n=1.3乃至1.4)、AlF(n=1.6)、Al(n=1.6)、及びGaO(n=1.7)が挙げられる。
【0088】
第1透明無機化合物は、第1透明材料の屈折率との差が大きな屈折率を有しているものであることが好ましい。第2透明無機化合物は、第2透明材料の屈折率との差が大きな屈折率を有しているものであることが好ましい。この屈折率差を大きくすると、核と被覆殿間の界面における反射率が高くなる。
【0089】
第1及び第2透明無機化合物は、同じものであってもよく、異なっていてもよい。前者の場合、第2及び第4被覆が異なる光学膜厚を有するように、それらの厚さを異ならしめる。後者の場合、第2及び第4被覆は、厚さが等しくてもよく、異なっていてもよい。何れの場合であっても、第2及び第4被覆は、可視域内の何れかの波長で異なる光学膜厚を有する。なお、或る層の「光学膜厚」は、その層の材料の屈折率nとその層の厚さdとの積n×dである。また、屈折率nは、波長が550nmである光に対する屈折率である。第2及び第4被覆の光学膜厚は、100乃至900nmの範囲内にあることが好ましい。
【0090】
第1被覆は、第1核を覆った第1着色材料からなる層であれば、酸化鉄(III)からなるものでなくてもよい。第3被覆は、第2被覆を覆った第2着色材料からなり、第2被覆において強め合う干渉を生じる光を透過させ得る層であれば、酸化鉄(III)からなるものでなくてもよい。第5被覆は、第4被覆を覆った第3着色材料からなり、第4被覆において強め合う干渉を生じる光を透過させ得る層であれば、酸化鉄(III)からなるものでなくてもよい。
【0091】
第1乃至第3着色材料としては、有色金属酸化物、例えば、酸化鉄(III)などの酸化鉄、酸化銅(I)などの酸化銅、酸化コバルト(II)などの酸化コバルト、酸化クロム(VI)などの酸化クロム、及び酸化ニッケル(II)などの酸化ニッケルを使用することができる。第1乃至第3着色材料は、互いに等しくてもよく、互いから異なっていてもよい。好ましくは、第1乃至第3着色材料は、互いに等しい。第1乃至第3着色材料は、酸化鉄(III)であることが特に好ましい。
【0092】
第1、第3及び第5被覆の光学膜厚は、250nm以下であることが好ましく、210nm以下であることがより好ましい。これらの光学膜厚が大きくなると、可視光に関するそれらの透過率が低下し、その結果、構造色が見えにくくなる。例えば、第1、第3及び第5被覆が酸化鉄(屈折率n=3.0)からなる場合、それらの幾何学膜厚は、80nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
【0093】
第1、第3及び第5被覆の光学膜厚は、50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましい。例えば、第1、第3及び第5被覆が酸化鉄(屈折率n=3.0)からなる場合、それらの幾何学膜厚は、20nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがより好ましい。
【0094】
第1、第3及び第5被覆は、光学膜厚が互いに等しくてもよく、互いから異なっていてもよい。好ましくは、第1、第3及び第5被覆は、光学膜厚が互いに等しい。
【0095】
第1乃至第3光輝性インク又は第1乃至第3光輝性インクパネルは、蛍光体を更に含んでいてもよい。蛍光体は、バインダ中に分散させる。蛍光体としては、例えば、ペリレン、1,1,4,4-テトラフェニル-1,3ブタジエン、及びポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)等の青色蛍光体;クマリン系色素、キナクリドン系色素、ポリ(p-フェニレンビニレン)、及びポリ(フルオレン)等の緑色蛍光体;又は、4-ジシアノメチレン-4H-ピラン誘導体、2,3-ジフェニルフマロニトリル誘導体、及びクマリン系色素等の赤色蛍光体を使用することができる。
【0096】
以下に、本発明の具体例を記載する。
<例1>
(光輝性顔料の準備)
〔第1光輝性顔料〕
以下の第1光輝性顔料を準備した。
・酸化鉄(III)/合成マイカ
この第1光輝性顔料は、合成マイカ(合成ガラス)からなる第1核を、酸化鉄(III)からなる第1被覆で覆うことにより得られたものである。第1光輝性顔料は、何れの観察角度でも、酸化鉄(III)の色である赤茶色を呈した。
【0097】
〔第2光輝性顔料の準備〕
以下の第2光輝性顔料を準備した。
・酸化鉄(III)/酸化チタン/合成マイカ
この第2光輝性顔料は、合成マイカ(合成ガラス)からなる第2核を、酸化チタンからなる第2被覆で覆い、これを酸化鉄(III)からなる第3被覆で更に覆うことにより得られたものである。
【0098】
(感熱転写媒体の製造)
支持体として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。このフィルムの片面に、バインダ樹脂としてのポリエステル系樹脂と顔料とを含有したインクをグラビアコータにより塗工して、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの顔料をそれぞれ含む4色のカラーインクパネルと、第1光輝性顔料を含む第1光輝性インクからなる第1光輝性インクパネルと、第2光輝性顔料を含む第2光輝性インクからなる第2インクパネルとを形成した。これらインクパネルの形成に使用したインクの組成は、以下の通りとした。カラーインクパネルは乾燥時の厚さが1.0μmとなるように形成し、第1光輝性インクパネルは乾燥時の厚さが1.0μmとなるように形成し、第2インクパネルは乾燥時の厚さが1.5μmとなるように形成した。以上のようにして、感熱転写媒体を得た。なお、以下に示す組成において、「MEK」はメチルエチルケトンを表している。
【0099】
〔シアンインクの組成〕
シアン顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0100】
〔マゼンタインクの組成〕
マゼンタ顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0101】
〔イエローインクの組成〕
イエロー顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0102】
〔ブラックインクの組成〕
カーボンブラック顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0103】
〔第1光輝性インクの組成〕
第1光輝性顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0104】
〔第2光輝性インクの組成〕
第2光輝性顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0105】
(中間転写フィルムの製造)
厚さ12μmのPETフィルムの片面に、エポキシ系樹脂を含有したインクをグラビアコータにより塗工して、厚さが0.8μmのオーバレイ層を形成した。これにより、中間転写フィルムを得た。オーバレイ層の形成に使用したインクの組成を以下に示す。
【0106】
〔オーバレイ層形成用インクの組成〕
jER1003(三菱ケミカル株式会社) 20質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0107】
(情報記録体の製造)
上記のようにして製造した感熱転写媒体及び中間転写フィルムを用い、塩化ビニルからなるカード状の記録媒体の片面に、図10Aに例示したものと同様のパターンを印刷した。この印刷には、間接転写記録方式のプリンタであるカードプリンタCP500(凸版印刷株式会社)を使用した。以上のようにして、情報記録体を得た。
【0108】
(検証)
この情報記録体を、目視により観察した。この情報記録体を正面から観察した場合には、第1及び第2光輝性パターンは、何れも赤茶色に見え、互いから区別することはできなかった。この情報記録体を30°程度傾けて観察した場合、第1光輝性パターンは赤茶色のままであった。他方、第2光輝性パターンは緑色を呈した。その結果、T字型の画像が見えた。即ち、観察角度を変化させることにより潜像と顕像との間で切り替わる画像を表示する光輝性パターンを形成できた。また、情報記録体のうち、第1光輝性パターンに対応した部分と第2光輝性パターンに対応した部分とは、質感の違いがなく、それら2種の光輝性パターンが設けられていることは、上述した色変化を生じることを知らず且つこの色変化を確認していない人に気付かれることはなかった。
【0109】
<例2>
(光輝性顔料の準備)
〔第2光輝性顔料〕
例1と同様の第2光輝性顔料を準備した。
【0110】
〔第3光輝性顔料〕
以下の第3光輝性顔料を準備した。
【0111】
・酸化鉄(III)/二酸化ケイ素/合成マイカ
この第3光輝性顔料は、合成マイカ(合成ガラス)からなる第3核を、二酸化ケイ素からなる第4被覆で覆い、これを酸化鉄(III)からなる第5被覆で更に覆うことにより得られたものである。
【0112】
(感熱転写媒体の製造)
支持体として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。このフィルムの片面に、バインダ樹脂としてのポリエステル系樹脂と顔料とを含有したインクをグラビアコータにより塗工して、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの色素をそれぞれ含む4色のカラーインクパネルと、第2光輝性顔料を含む第2光輝性インクからなる第2光輝性インクパネルと、第3光輝性顔料を含む第3光輝性インクからなる第3インクパネルとを形成した。これらインクパネルの形成に使用したインクの組成は、以下の通りとした。カラーインクパネルは乾燥時の厚さが1.0μmとなるように形成し、第2インクパネルは乾燥時の厚さが1.5μmとなるように形成し、第3インクパネルは乾燥時の厚さが1.8μmとなるように形成した。以上のようにして、感熱転写媒体を得た。
【0113】
〔シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックインクの組成〕
シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックインクの組成は、例1と同様とした。
【0114】
〔第2光輝性インクの組成〕
第2光輝性インクの組成は、例1と同様とした。
【0115】
〔第3光輝性インクの組成〕
第3光輝性顔料 5質量部
バイロン(登録商標)500(東洋紡株式会社) 15質量部
MEK(東洋インキ株式会社) 80質量部
【0116】
(中間転写フィルムの製造)
例1と同様の中間転写フィルムを製造した。
【0117】
(情報記録体の作製)
上記のようにして製造した感熱転写媒体及び中間転写フィルムを用い、塩化ビニルからなるカード状の記録媒体の片面に、図11Aに例示したものと同様のパターンを印刷した。この印刷には、間接転写記録方式のプリンタであるカードプリンタCP500(凸版印刷株式会社)を使用した。以上のようにして、情報記録体を得た。
【0118】
(検証)
この情報記録体を、目視により観察した。この情報記録体を正面から観察した場合には、第2及び第3光輝性パターンは、何れも赤茶色に見え、互いから区別することはできなかった。この情報記録体を30°程度傾けて観察した場合、第2及び第3光輝性パターンの双方が緑色を呈した。この情報記録体を60°程度まで更に傾けて観察した場合、第3光輝性パターンは緑色のままであったが、第2光輝性パターンは青色を呈した。その結果、T字型の画像が見えた。即ち、観察角度を変化させることにより、潜像と顕像との間で切り替わる画像を表示する光輝性パターンを形成できた。また、情報記録体のうち、第2光輝性パターンに対応した部分と第3光輝性パターンに対応した部分とは、質感の違いがなく、それら2種の光輝性パターンが設けられていることは、上述した色変化を生じることを知らず且つこの色変化を確認していない人に気付かれることはなかった。
以下に、当初の請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
支持体と、
前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルと
を備え、
前記複数のインクパネルは、
前記熱転写インクが、第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インクである第1光輝性インクパネル、
前記熱転写インクが、第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び、
前記熱転写インクが、第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インクである第3光輝性インクパネル
からなる群より選ばれる2以上のインクパネルを含んだ感熱転写媒体。
[2]
前記複数のインクパネルは、前記第1及び第2光輝性インクパネルを含んだ項1に記載の感熱転写媒体。
[3]
前記第2着色材料は、前記第1着色材料と等しい項2に記載の感熱転写媒体。
[4]
前記第2透明材料は、前記第1透明材料と等しい項2又は3に記載の感熱転写媒体。
[5]
前記複数のインクパネルは、前記第2及び第3光輝性インクパネルを含んだ項1に記載の感熱転写媒体。
[6]
前記第3着色材料は、前記第2着色材料と等しい項5に記載の感熱転写媒体。
[7]
前記第3透明材料は、前記第2透明材料と等しい項5又は6に記載の感熱転写媒体。
[8]
前記第2透明無機化合物は、前記第1透明無機化合物とは異なる項5乃至7の何れか1項に記載の感熱転写媒体。
[9]
前記第1乃至第3透明材料は合成マイカであり、前記第1乃至第3着色材料は酸化鉄(III)であり、前記第1透明無機化合物は酸化チタンであり、前記第2透明無機化合物は二酸化ケイ素である項1に記載の感熱転写媒体。
[10]
支持体と、
前記支持体上に各々が設けられ、熱転写インクから各々がなる複数のインクパネルと
を備え、
前記複数のインクパネルは、
前記熱転写インクが、合成マイカからなる第1核と、前記第1核を覆った酸化鉄(III)からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インクである第1光輝性インクパネル、
前記熱転写インクが、合成マイカからなる第2核と、前記第2核を覆った酸化チタンからなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インクである第2光輝性インクパネル、及び、
前記熱転写インクが、合成マイカからなる第3核と、前記第3核を覆った二酸化ケイ素からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有した第3光輝性インクである第3光輝性インクパネル
からなる群より選ばれる2以上のインクパネルを含んだ感熱転写媒体。
[11]
記録媒体と、
前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンと
を備え、
前記光輝性パターンは、
第1透明材料からなる鱗片状の第1核と、前記第1核を覆った第1着色材料からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、
第2透明材料からなる鱗片状の第2核と、前記第2核を覆った第1透明無機化合物からなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った第2着色材料からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、
第3透明材料からなる鱗片状の第3核と、前記第3核を覆った第2透明無機化合物からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った第3着色材料からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有し、前記第4被覆は前記第2被覆とは光学膜厚が異なる第3光輝性インク
からなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、
前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されている情報記録体。
[12]
前記光輝性パターンは、前記第1及び第2光輝性インクを含んだ項11に記載の情報記録体。
[13]
前記第2着色材料は、前記第1着色材料と等しい項12に記載の情報記録体。
[14]
前記第2透明材料は、前記第1透明材料と等しい項12又は13に記載の情報記録体。
[15]
前記光輝性パターンは、前記第2及び第3光輝性インクを含んだ項11に記載の情報記録体。
[16]
前記第3着色材料は、前記第2着色材料と等しい項15に記載の情報記録体。
[17]
前記第3透明材料は、前記第2透明材料と等しい項15又は16に記載の情報記録体。
[18]
前記第2透明無機化合物は、前記第1透明無機化合物とは異なる項15乃至17の何れか1項に記載の情報記録体。
[19]
前記第1乃至第3透明材料は合成マイカであり、前記第1乃至第3着色材料は酸化鉄(III)であり、前記第1透明無機化合物は酸化チタンであり、前記第2透明無機化合物は二酸化ケイ素である項11に記載の情報記録体。
[20]
記録媒体と、
前記記録媒体上に設けられた光輝性パターンと
を備え、
前記光輝性パターンは、
合成マイカからなる第1核と、前記第1核を覆った酸化鉄(III)からなる第1被覆とを含んだ第1光輝性顔料を色材として含有した第1光輝性インク、
合成マイカからなる第2核と、前記第2核を覆った酸化チタンからなる第2被覆と、前記第2被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第3被覆とを含んだ第2光輝性顔料を色材として含有した第2光輝性インク、及び、
合成マイカからなる第3核と、前記第3核を覆った二酸化ケイ素からなる第4被覆と、前記第4被覆を覆った酸化鉄(III)からなる第5被覆とを含んだ第3光輝性顔料を色材として含有した第3光輝性インク
からなる群より選ばれる2種以上の光輝性インクを含み、
前記光輝性パターンには、前記2種以上の光輝性インクの少なくとも1種によって個別情報が記録されている情報記録体。
【符号の説明】
【0119】
1…感熱転写媒体、2…支持体、3…感熱転写媒体、4…支持体、5…巻出しロール、6…巻取りロール、7…サーマルヘッド、8…中間転写フィルム、9…巻出しロール、10…巻取りロール、11…ヒートローラ、12…プラテンローラ、13…記録媒体、14…情報記録体、14’…情報記録体、14”…情報記録体、15…パターン、16…光輝性パターン、16’…光輝性パターン、16”…光輝性パターン、17…オーバレイ層、18…接着層、100…間接転写記録装置、101…一次転写部、102…二次転写部、A…第1光輝性インクパネル、A1…画像、B…第2光輝性インクパネル、B1…画像、B2…画像、B3…画像、Bk…インクパネル、C…第3光輝性インクパネル、C1…画像、C2…画像、C2a…曲線、C2b…曲線、C21…曲線、C3a…曲線、C3b…曲線、C31…曲線、Cy…インクパネル、Ma…インクパネル、P…情報記録体、PA…第1光輝性パターン、PB…第2光輝性パターン、PBk…パターン、PC…第3光輝性パターン、PCy…パターン、PMa…パターン、PYe…パターン、S…センサマーク、Ye…インクパネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C