(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】クリーニングテープおよびカートリッジ
(51)【国際特許分類】
G11B 5/41 20060101AFI20250226BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20250226BHJP
D04H 3/011 20120101ALI20250226BHJP
【FI】
G11B5/41 D
G11B5/41 P
D04H1/435
D04H3/011
(21)【出願番号】P 2021567669
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048720
(87)【国際公開番号】W WO2021132561
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2019239476
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】中塩 栄治
(72)【発明者】
【氏名】岩間 孝信
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-063718(JP,A)
【文献】特開平07-249156(JP,A)
【文献】特開平06-176327(JP,A)
【文献】実開平07-019805(JP,U)
【文献】特開昭57-179935(JP,A)
【文献】実開昭60-054213(JP,U)
【文献】特開平07-287823(JP,A)
【文献】特表2016-502224(JP,A)
【文献】特開平11-296826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
G11B5/40-5/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の不織布と、
前記不織布が巻かれたリールと、
前記リールを収容するケースと
を備え、
前記不織布の目付量が、25g/m
2以下であ
り、
前記不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
前記不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
前記不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるカートリッジ。
【請求項2】
前記不織布の平均繊維径が、11μm以下である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記不織布の平均繊維径が、9μm以上11μm以下である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記不織布が、バインダを含まない請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記不織布の平均厚みが、100μm以下である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記不織布の動摩擦係数が、0.04以下である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記不織布の引張強度が、15N/50mm以上である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記不織布が、ポリエステル繊維により構成されている請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記カートリッジが、リニア記録フォーマット用の記録再生装置に用いられる請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記不織布の幅が、1/2インチである請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記カートリッジが、1リールタイプである請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記不織布の巻き終わり側の一端に設けられたリーダーピンをさらに備える請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項13】
テープ状の不織布と、
前記不織布が巻かれたリールと、
前記リールを収容するケースと
を備え、
前記不織布の平均繊維径が、11μm以下であ
り、
前記不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
前記不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
前記不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるカートリッジ。
【請求項14】
前記不織布の平均繊維径が、9μm以上11μm以下である請求項
13に記載のカートリッジ。
【請求項15】
テープ状の不織布を含み、
前記不織布の目付量が、25g/m
2以下であ
り、
前記不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
前記不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
前記不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるクリーニングテープ。
【請求項16】
テープ状の不織布を含み、
前記不織布の平均繊維径が、11μm以下であ
り、
前記不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
前記不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
前記不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるクリーニングテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーニングテープおよびカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子データの保存のため、磁気テープカートリッジ(例えばLTO Ultrium規格のカートリッジ)が幅広く利用されている。磁気テープカートリッジ用のドライブでは、磁気ヘッドをクリーニングするために、クリーニングカートリッジが使用される。リニア記録フォーマット用のクリーニングカートリッジ(例えばUniversal Cleaning Cartridge:UCC)では、クリーニングテープとして磁気テープが用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クリーニングテープとして磁気テープを用いたクリーニングカートリッジでは、磁気ヘッドのクリーニング効果が低いという問題がある。
【0005】
近年では、磁気テープを高記録密度化(例えば高トラック密度化)するために、ドライブの磁気ヘッドとしてGMR(Giant MagnetoResistive)ヘッドやTMR(Tunnel Magnetoresistive)ヘッド等の高性能な磁気ヘッドが用いられている。このような高性能な磁気ヘッドに数nm程度の付着物が付着すると、ドライブの記録再生性能に大きな影響が及ぼされる。このため、高性能な磁気ヘッドを備えたドライブでは、クリーニングカートリッジのクリーニング効果の低さは特に問題となる。
【0006】
本開示の目的は、良好なクリーニング効果を有するクリーニングテープおよびカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、第1の開示は、
テープ状の不織布と、
不織布が巻かれたリールと、
リールを収容するケースと
を備え、
不織布の目付量が、25g/m2以下であり、
不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるカートリッジである。
【0008】
第2の開示は、
テープ状の不織布と、
不織布が巻かれたリールと、
リールを収容するケースと
を備え、
不織布の平均繊維径が、11μm以下であり、
不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるカートリッジである。
【0009】
第3の開示は、
テープ状の不織布を含み、
不織布の目付量が、25g/m2以下であり、
不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるクリーニングテープである。
【0010】
第4の開示は、
テープ状の不織布を含み、
不織布の平均繊維径が、11μm以下であり、
不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であるクリーニングテープである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るカートリッジの構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2A、
図2Bはそれぞれ、クリーニングテープと磁気ヘッドとの間の動摩擦係数の測定方法を説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態の変形例に係るカートリッジの構成の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態について、以下の順序で説明する。
1 クリーニングカートリッジの構成
2 クリーニングテープの構成
3 効果
4 変形例
【0013】
[1 クリーニングカートリッジの構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るクリーニングカートリッジ(以下単に「カートリッジ」という。)10の構成の一例を示す分解斜視図である。カートリッジ10は、リニア記録フォーマット用の記録再生装置に用いられる。具体的には例えば、カートリッジ10は、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠している。カートリッジ10は、1リールタイプである。
【0014】
カートリッジ10は、下シェル12Aと上シェル12Bとで構成されるカートリッジケース12の内部に、クリーニングテープCTが巻かれたリール13と、リール13の回転をロックするためのリールロック14およびリールスプリング15と、リール13のロック状態を解除するためのスパイダ16と、下シェル12Aと上シェル12Bに跨ってカートリッジケース12に設けられたテープ引出口12Cを開閉するスライドドア17と、スライドドア17をテープ引出口12Cの閉位置に付勢するドアスプリング18と、カートリッジメモリ11とを備える。リール13は、中心部に開口を有する略円盤状であって、プラスチック等の硬質の材料からなるリールハブ13Aとフランジ13Bとにより構成される。クリーニングテープCTの巻き終わり側の一端には、リーダーピン19が設けられている。
【0015】
クリーニングテープCTの巻き終わり側の一端にリーダーテープが設けられていてもよい。この場合、スプライステープを介してリーダーテープの一端とクリーニングテープCTの一端が接続され、リーダーテープの他端にリーダーピンが設けられていてもよい。但し、クリーニングテープCTとスプライステープの接着性が低いたので、クリーニングテープCTの一端に直接リーダーピン19を設けることが好ましい。
【0016】
カートリッジ10は、記録再生装置に対してロード可能に構成されている。カートリッジメモリ11は、カートリッジ10の1つの角部の近傍に設けられている。カートリッジ10が記録再生装置にロードされた状態において、カートリッジメモリ11は、記録再生装置のリーダライタと対向するようになっている。カートリッジメモリ11は、例えば、LTO規格に準拠した無線通信規格で記録再生装置、具体的には記録再生装置のリーダライタと通信を行う。カートリッジメモリ11には、カートリッジ10に巻かれているテープがクリーニングテープCTであることを確認できる情報等が記憶されている。
【0017】
[2 クリーニングテープの構成]
クリーニングテープCTは、記録再生装置に備えられた磁気ヘッドに摺動されることで、磁気ヘッドをクリーニングする。クリーニングテープCTの幅は、1/2インチであってもよいし、1/2インチよりも広くてもよい。カートリッジ10がLTO規格に準拠するものである場合には、クリーニングテープCTの幅は、1/2インチである。クリーニングテープCTは、テープ状の不織布により構成されている。クリーニングテープCTがテープ状の不織布により構成されているカートリッジ10では、クリーニングテープが磁気テープにより構成されている従来のカートリッジ(例えばUCC)に比べてクリーニング効果を向上することができる。
【0018】
不織布は、例えば、合成繊維により構成されている。合成繊維は、例えば、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維およびレーヨン繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。ポリエステル繊維は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT繊維)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0019】
本開示において、不織布とは、JIS L 0222の規定に準拠するものである。すなわち、本開示において、不織布とは、繊維シートまたはウェブ等で、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、および/または融着、および/または接着によって繊維間が結合されたものである。但し、紙、織物、編物、タフトおよび縮絨を除く。
【0020】
不織布を構成する繊維は、クリーニングテープCTの長手方向に配向していることが好ましい。このように繊維が長手方向に配向していることで、クリーニングテープCTの幅方向の両端面からの発塵を抑制することができる。不織布が、バインダを含まないことが好ましい。不織布がバインダを含まないことで、磁気ヘッドをクリーニングテープCTに摺動させた際に、磁気ヘッドの表面にバインダが付着することを抑制することができる。本明細書において、磁気ヘッドとは、記録ヘッドおよび再生ヘッドを意味する。
【0021】
不織布が、バインダを含むか否かは以下のようにして確認される。まず、カートリッジ10からクリーニングテープCTを巻き出し、切断することにより、長さ100mm×クリーニングテープCTの幅(例えば1/2インチ)の測定サンプルを得る。次に、溶剤としてメチルエチルケトンを用いて測定サンプルからバインダの抽出を行い、液体クロマトグラフィーを用いて解析することにより、不織布がバインダを含むか否かが確認される。
【0022】
(不織布の目付量)
不織布の目付量の上限値が、25g/m2以下であることが好ましい。不織布の目付量が25g/m2以下であると、不織布が十分な量の空隙を含むことができるので、クリーニング効果を向上することができる。また、不織布が十分な量の空隙を含むことで、不織布が固くなることを抑制することができる。したがって、クリーニングによる磁気ヘッドのダメージを抑制することができる。
【0023】
不織布の目付量の下限値は、10g/m2以上であることが好ましい。不織布の目付量が10g/m2以上であると、不織布を構成する繊維量の減少を抑制することができるので、不織布の引張強度の低下を抑制することができる。
【0024】
不織布の目付量は以下のようにして求められる。まず、カートリッジ10からクリーニングテープCTを巻き出し、切断することにより、長さ100mm×クリーニングテープCTの幅(例えば1/2インチ)の測定サンプルを得る。次に、測定サンプルの質量Mを測定したのち、下記の式から不織布の目付量を求める。
不織布の目付量[mg/cm2]=(測定サンプルの質量M)/(測定サンプルの面積S)
【0025】
(不織布の平均繊維径)
不織布の平均繊維径の上限値が、11μm以下であることが好ましい。不織布の平均繊維径が11μm以下であると、不織布が十分な量の空隙を含むことができるので、クリーニング効果を向上することができる。また、不織布が十分な量の空隙を含むことで、不織布が固くなることを抑制することができる。したがって、クリーニングによる磁気ヘッドのダメージを抑制することができる。
【0026】
不織布の平均繊維径の下限値が、9μm以上であることが好ましい。不織布の平均繊維径が9μm以上であると、不織布を構成する繊維が細くなりすぎることを抑制することができるので、不織布の引張強度の低下を抑制することができる。
【0027】
不織布の平均繊維径は以下のようにして求められる。まず、測定対象となるクリーニングテープCTを巻き出し、切断することにより測定サンプルを作製する。次に、測定サンプルの表面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により、下記の条件で観察しSEM像を得る。
装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S-4800
加速電圧:5kV
倍率:2500倍
【0028】
次に、得られたSEM像から、観察面とほぼ平行になっている平行箇所を有し、且つ、繊維径を明らかに確認できる繊維を50個選び出す。そして、選び出された50個の繊維それぞれの繊維径を測定する。繊維径の測定位置は、選び出された繊維のうちの上記平行箇所から無作為に選ばれる。次に、測定した繊維径を単純に平均(算術平均)して平均繊維径を求める。
【0029】
(不織布の平均厚み)
不織布の平均厚みの上限値は、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下である。不織布の厚みが100μm以下であると、クリーニングテープCTとヘッドブロックの接触が適切に保たれ、安定したクリーニング効果を発揮することができる。
【0030】
不織布の平均厚みの下限値は、好ましくは40μm以上である。不織布の平均厚みが40μm以上であると、不織布の引張強度の低下を抑制することができる。
【0031】
不織布の平均厚みは、以下のようにして求められる。まず、カートリッジ10からクリーニングテープCTを巻き出し、長手方向に5点以上の位置で不織布の厚みを測定する。次に、測定値を単純に平均(算術平均)して、不織布の平均厚みを算出する。厚みの測定は、JIS L 1913:2010に記載のA法に準拠して行われる。測定位置は、クリーニングテープCTの長手方向の位置から無作為に選ばれる。
【0032】
(不織布の動摩擦係数μ)
不織布の動摩擦係数μは、好ましくは0.04以下、より好ましくは0.03以下である。不織布の動摩擦係数μが0.04以下であると、クリーンングによる磁気ヘッドのダメージを抑制することができる。ここで、不織布の動摩擦係数μは、磁気ヘッドが摺動されるクリーニング面における動摩擦係数を意味する。
【0033】
動摩擦係数μは以下のようにして求められる。まず、カートリッジ10から、クリーニングテープCTを巻き出し、長さ30cm切り取る。次に、
図2Aに示すように、切り取ったクリーニングテープCTを、互いに離間して平行に配置された1インチ径の円柱状の2本のガイドロール73Aおよび73Bにクリーニング面が接触するように載せる。2本のガイドロール73Aおよび73Bは、硬い板状部材76に固定されており、これにより互いの位置関係が固定されている。
【0034】
次いで、LTO5ドライブに搭載されているヘッドブロック(記録再生用)74に対し、クリーニングテープCTを、クリーニング面が接触するように且つ抱き角θ1(°)=5.6°となるように接触させる。ヘッドブロック74は、ガイドロール73Aおよび73Bの略中心に配置される。ヘッドブロック74は、抱き角θ1を変更することができるように、板状部材76に移動可能に取り付けられているが、抱き角θ1(°)が5.6°となったらその位置が板状部材76に対して固定され、これにより、ガイドロール73Aおよび73Bとヘッドブロック74との位置関係も固定される。
【0035】
クリーニングテープCTの一端を、ジグ72を介して可動式ストレインゲージ71と繋ぐ。クリーニングテープCTは、
図2Bに示される通りにジグ72に固定される。クリーニングテープCTの他端に錘75を繋ぐ。錘75によって、0.6Nのテンション(T
0[N])がクリーニングテープCTの長手方向に付与される。可動式ストレインゲージ71は、台77上に固定されている。台77と板状部材76の位置関係も固定されており、これにより、ガイドロール73Aおよび73B、ヘッドブロック74、および可動式ストレインゲージ71の位置関係が固定されている。
【0036】
可動式ストレインゲージ71によって、クリーニングテープCTが10mm/sにて可動式ストレインゲージ71へ向かうように、クリーニングテープCTをヘッドブロック74上に60mm摺動させ(往路)および可動式ストレインゲージ71から離れるように60mm摺動させる(復路)。当該摺動時の可動式ストレインゲージ71の出力値(電圧)を、事前に取得されている出力値と荷重との直線関係(後述する)に基づき、荷重T[N]に変換する。上記60mmの摺動の摺動開始から摺動停止までの間に、13回T[N]を取得し、最初と最後の計2回を除いた11個のT[N]を単純平均することによって、Tave[N]が得られる。その後、以下の式より動摩擦係数μを求める。
【数1】
【0037】
上記直線関係は以下の通りに得られる。すなわち、可動式ストレインゲージ71に0.5Nの荷重をかけた場合と1.0Nの荷重をかけた場合のそれぞれについて、可動式ストレインゲージ71の出力値(電圧)を得る。得られた2つの出力値と上記2つの荷重とから、出力値と荷重との直線関係が得られる。当該直線関係を用いて、上記の通り、摺動時の可動式ストレインゲージ71による出力値(電圧)がT[N]に変換される。
【0038】
(不織布の負荷面積率0%、50%、100%の高さ)
不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であることが好ましい。不織布の負荷面積率0%の高さが-10μm以上であると、不織布を構成する繊維が緻密に集まっているため、捕集した付着物を再脱落しにくくすることができる。
【0039】
不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であることが好ましい。不織布の負荷面積率50%の高さが±2μm以内であると、磁気ヘッドとの接触を密にすることができる。
【0040】
不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下であることが好ましい。不織布の負荷面積率100%の高さが10μm以下であると、磁気ヘッドとの接触を維持することができる。
【0041】
不織布の負荷面積率0%、50%、100%の高さは以下のようにして求められる。非接触式光学粗度測定機VertScanを用いて対物レンズ倍率20倍で測定した形状から解析装置により負荷曲線を求め、負荷面積率0%、50%、100%の時の高さをそれぞれ求める。
【0042】
(不織布の引張強度)
不織布の引張強度の下限値は、好ましくは15N/50mm以上、より好ましくは19N/50mm以上である。不織布の強度が15N/50mmであると、磁気ヘッドのクリーニング時に加わる張力に十分耐えることができる。
【0043】
不織布の引張強度の上限値は、不織布の厚みの増加を抑制する観点からすると、30N/50mm以下であることが好ましい。
【0044】
不織布の引張強度は以下のようにして求められる。まず、カートリッジ10からクリーニングテープCTを巻き出し切断することにより、長さ70mm×クリーニングテープCTの幅(例えば1/2インチ)の測定サンプルを10個準備する。これらの測定サンプルは、長手方向に10mおきに取り出される。次に、引張強度試験機(株式会社島津製作所社製、AG-IS 100N)により、測定長(測定サンプルの未把持部分の長さ)が50mmとなるように、測定サンプルの長手方向の両端を把持したのち、測定サンプルを長手方向に速度300mm/分で引っ張ったときの、測定サンプルが破断するまでの最大荷重値(N)を測定する。この測定を10個の測定サンプルに対して行い、測定した最大荷重値(N)を単純に平均(算術平均)して平均値を算出し、この平均値を不織布の引張強度とする。
【0045】
[3 効果]
上述したように、一実施形態に係るカートリッジ10では、クリーニングテープCTを構成するテープ状の不織布の目付量が25g/m2以下であると、クリーニングによる磁気ヘッドのダメージを抑制しつつ、良好なクリーニング効果を得ることができる。
【0046】
クリーニングテープCTを構成するテープ状の不織布の平均繊維径が11μm以下であると、クリーニングによる磁気ヘッドのダメージを抑制しつつ、良好なクリーニング効果を得ることができる。
【0047】
[4 変形例]
(変形例1)
上述の一実施形態では、カートリッジ10がクリーニングテープCTを備える場合について説明したが、磁気テープカートリッジがクリーニングテープCTを備えるようにしてもよい。この場合、クリーニングテープCTは、磁気テープの巻き終わり側の一端および巻き始め側の一端のうちの少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0048】
(変形例2)
上述の一実施形態では、クリーニングカートリッジが、1リールタイプのカートリッジ10である場合について説明したが、2リールタイプのカートリッジであってもよい。
【0049】
図3は、2リールタイプのカートリッジ121の構成の一例を示す分解斜視図である。カートリッジ121は、合成樹脂製の上ハーフ102と、上ハーフ102の上面に開口された窓部102aに嵌合されて固着される透明な窓部材123と、上ハーフ102の内側に固着されリール106、107の浮き上がりを防止するリールホルダー122と、上ハーフ102に対応する下ハーフ105と、上ハーフ102と下ハーフ105を組み合わせてできる空間に収納されるリール106、107と、リール106、107に巻かれたクリーニングテープCT1と、上ハーフ102と下ハーフ105を組み合わせてできるフロント側開口部を閉蓋するフロントリッド109およびこのフロント側開口部に露出したクリーニングテープCT1を保護するバックリッド110とを備える。
【0050】
リール106は、クリーニングテープCT1が巻かれる円筒状のハブ部106aを中央部に有する下フランジ106bと、下フランジ106bとほぼ同じ大きさの上フランジ106cと、ハブ部106aと上フランジ106cの間に挟み込まれたリールプレート111とを備える。リール107はリール106と同様の構成を有している。
【0051】
窓部材123には、リール106、107に対応した位置に、これらリール106、107の浮き上がりを防止するリール保持手段であるリールホルダー122を組み付けるための取付孔123aが各々設けられている。クリーニングテープCT1は、第1の実施形態におけるクリーニングテープCTと同様である。
【0052】
上述の例では、2リールタイプのカートリッジ121がクリーニングテープCT1を備える場合について説明したが、2リールタイプの磁気テープカートリッジがクリーニングテープCT1を備えるようにしてもよい。この場合、クリーニングテープCT1は、磁気テープの巻き終わり側の一端および巻き始め側の一端のうちの少なくとも一方に設けられていてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
以下の実施例1、2、比較例1~4において、クリーニングテープの平均厚み、目付量、平均繊維径、負荷面積率0%、50%、100%の高さ、引張強度、動摩擦係数はそれぞれ、上述の一実施形態にて説明した測定方法により求められた。
【0055】
[実施例1、2、比較例1]
まず、クリーニングテープとして、表1に示す仕様を有する不織布を準備した。次に、不織布を1/2インチ幅のテープ状に裁断することにより、クリーニングテープを作製した。次に、
図1に示した構成を有する、LTO規格に準拠したカートリッジケースを準備し、このカートリッジケースのリールにクリーニングテープの一端を取り付け、クリーニングテープを30mの長さ巻き取ったのち、巻き終わり側となる他端にリーダーピンを取り付けた。これにより、目的とするカートリッジが得られた。
【0056】
[比較例2]
クリーニングテープとして、表1に示す仕様を有する、PET繊維が格子状に織られたテープ状の織布を用いたこと以外は実施例1と同様にしてカートリッジを得た。
【0057】
[比較例3]
クリーニングテープとして、表1に示す仕様を有する、PET繊維が編まれたテープ状のニット(編物)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてカートリッジを得た。
【0058】
[比較例4]
クリーニングテープとして、表1に示す仕様を有する磁気テープを用い、これをカートリッジに319m巻き取ったこと以外は実施例1と同様にしてカートリッジ(すなわち従来のUCC)を得た。
【0059】
[評価]
上述のようにして得られたカートリッジおよびそのカートリッジに用いられたクリーニングテープについて以下の評価を行った。
【0060】
(端面ダストの発生)
クリーニングテープの端面ダストの発生を以下のようにして評価した。まず、カートリッジをドライブにロードしたのち、クリーニングテープを10往復させてクリーニング処理を行った。次に、光学顕微鏡によりクリーニングテープのエッジ(裁断面)を長さ30mmの範囲観察し、端面ダストの発生の有無を確認した。
【0061】
(使用回数)
クリーニングテープの使用回数を以下のようにして評価した。まず、磁気テープカートリッジをドライブにロードし、磁気テープを走行させて、磁気テープから磁気ヘッド上に粉落ちさせ、ヘッド上に付着物を付着させたのち、磁気テープカートリッジをドライブからアンロードした。次に、クリーニングテープカートリッジをドライブにロードし、クリーニングテープを1往復させて磁気ヘッドに対してクリーニング処理を行ったのち、クリーニングテープカートリッジをドライブからアンロードした。次に、光学顕微鏡により磁気ヘッドを観察し、付着物が除去されているか否かを確認した。
【0062】
上述の手順を繰り返すことにより、付着物を除去可能な、クリーニングテープカートリッジの使用回数をカウントした。
【0063】
(クリーニング効果)
カートリッジのクリーニング効果を以下のようにして評価した。まず、LTO8規格のドライブにより、LTO8規格のカートリッジの磁気テープ全面にデータを記録した。次に、上記データ記録後の記録ヘッドを光学顕微鏡により観察し、記録ヘッドに付着物が付いていることを確認した。次に、上記ドライブにクリーニングカートリッジをロードし、クリーンングテープでヘッドユニットをクリーニングプロシジャでクリーニングを行い、記録ヘッドをクリーニングした。次に、クリーニング後の記録ヘッドを光学顕微鏡により観察した。次に、以下の基準によりクリーニング効果を評価した。
クリーニング効果が良好:付着物が全く観察されない
クリーニング効果が悪い:付着物が観察される
【0064】
(ヘッドダメージ)
カートリッジを用いたときの磁気ヘッドのダメージを以下のようにして評価した。まず、走行前の再生出力が予め確認されたLTO8規格のドライブを準備し、クリーニングテープを10回走行させ、再度再生出力を確認した。次に、以下の基準によりヘッドダメージの有無を評価した。
ヘッドダメージの無し:10回走行後の再生出力に3dB以上の劣化が認めらない。
ヘッドダメージの有り:10回走行後の再生出力に3dB以上の劣化が認められる。
【0065】
表1は、クリーニングテープの仕様および評価結果を示す。
【表1】
表1中の引張強度の欄において“測定不能”とは、引張強度試験の測定荷重の範囲では測定サンプルが破断しなかったことを意味する。また、“巻長”とは、カートリッジに巻かれたクリーニングテープの長さを意味する。
【0066】
表1では、比較例1~4のクリーニング効果の評価結果を一律に“悪い”と記載しているが、比較例1~4のうちでも、磁気テープをクリーニングテープとして用いている比較例4のクリーニング効果の評価結果が特に悪かった。
【0067】
表1から以下のことがわかる。
クリーニングテープとして目付量が25g/m2以下であるテープ状の不織布を用いることで、ヘッドダメージを抑制しつつ、良好なクリーニング効果を得ることができる。また、端面ダストを抑制することができると共に、カートリッジの使用回数を増やすことができる。
【0068】
クリーニングテープとして平均繊維径が11μm以下であるテープ状の不織布を用いることで、ヘッドダメージを抑制しつつ、良好なクリーニング効果を得ることができる。また、端面ダストを抑制することができると共に、カートリッジの使用回数を増やすことができる。
【0069】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0070】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0071】
上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0072】
上述の実施形態で段階的に記載された数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。
【0073】
上述の実施形態に例示した材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
テープ状の不織布と、
前記不織布が巻かれたリールと、
前記リールを収容するケースと
を備え、
前記不織布の目付量が、25g/m2以下であるカートリッジ。
(2)
前記不織布の平均繊維径が、11μm以下である(1)に記載のカートリッジ。
(3)
前記不織布の平均繊維径が、9μm以上11μm以下である(1)または(2)に記載のカートリッジ。
(4)
前記不織布が、バインダを含まない(1)から(3)のいずれかに記載のカートリッジ。
(5)
前記不織布の平均厚みが、100μm以下である(1)から(4)のいずれかに記載のカートリッジ。
(6)
前記不織布の動摩擦係数が、0.04以下である(1)から(5)のいずれかに記載のカートリッジ。
(7)
前記不織布の負荷面積率0%の高さが、-10μm以上であり、
前記不織布の負荷面積率50%の高さが、±2μm以内であり、
前記不織布の負荷面積率100%の高さが、10μm以下である(1)から(6)のいずれかに記載のカートリッジ。
(8)
前記不織布の引張強度が、15N/50mm以上である(1)から(7)のいずれかに記載のカートリッジ。
(9)
前記不織布が、ポリエステル繊維により構成されている(1)から(8)のいずれかに記載のカートリッジ。
(10)
前記カートリッジが、リニア記録フォーマット用の記録再生装置に用いられる(1)から(9)のいずれかに記載のカートリッジ。
(11)
前記不織布の幅が、1/2インチである(1)から(10)のいずれかに記載のカートリッジ。
(12)
前記カートリッジが、1リールタイプである(1)から(11)のいずれかに記載のカートリッジ。
(13)
前記不織布の巻き終わり側の一端に設けられたリーダーピンをさらに備える(1)から(12)のいずれかに記載のカートリッジ。
(14)
テープ状の不織布と、
前記不織布が巻かれたリールと、
前記リールを収容するケースと
を備え、
前記不織布の平均繊維径が、11μm以下であるカートリッジ。
(15)
前記不織布の平均繊維径が、9μm以上11μm以下である(14)に記載のカートリッジ。
(16)
テープ状の不織布を含み、
前記不織布の目付量が、25g/m2以下であるクリーニングテープ。
(17)
テープ状の不織布を含み、
前記不織布の平均繊維径が、11μm以下であるクリーニングテープ。
【符号の説明】
【0075】
10、121 クリーニングカートリッジ
11 カートリッジメモリ
12 カートリッジケース
13 リール
19 リーダーピン
CT、CT1 クリーニングテープ