(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】検査支援装置、検査支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
G01N33/48 M
(21)【出願番号】P 2023508303
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012496
(87)【国際公開番号】W WO2022201416
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月15日にウェブサイト SPIE Digtal Library(https://www.spiedigitallibrary.org/conference-proceedings-of-spie/11603/1160308/A-multi-scale-conditional-deep-model-for-tumor-cell-ratio/10.1117/12.2581108.short?SS0=1)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】天川 彩香
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真貴
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ ヤティン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069446(WO,A1)
【文献】特表2018-511036(JP,A)
【文献】特表平10-500205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0211189(US,A1)
【文献】特表2015-533086(JP,A)
【文献】特表2020-504349(JP,A)
【文献】国際公開第2019/199392(WO,A1)
【文献】FU, Yu et al.,Pan-cancer computational histopathology reveals mutations, tumor composition and prognosis,Nature Cancer,2020年08月,Vol.1,pp.800-810
【文献】COUDRAY, Nicolas et al.,Classification and mutation prediction from non-small cell lung cancer histopathology images using deep learning,Nature Medicine,2018年,Vol.24,pp.1559-1567
【文献】BASHA S H Shabbeer et al.,RCCNet: An Efficient Covolutional Neural Network for Histological Routine Colon Cancer Nuclei Classification,2018 15th International Conference on Contorl, Automation, Robotics and Vision (ICARCV),2018年11月,pp.1222-1227
【文献】NAYLOR Peter et al.,Segmentation of Nuclei in Histopathology Images by Deep Regression of the Distance Map,IEEE Transactions on Medical Imaging,2019年02月,Vol.38, No.2,pp.448-459
【文献】Eric Cosatto et al.,A Multi-Scale Conditional Deep Model for Tumor Cell Ratio Counting,arXiv,2021年01月27日,2101.11731v1,<URL:https://arxiv.org/pdf/2101.11731>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48,
G01N 1/28,
G02B 21/36,
G06T 7/00,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理標本の画像データを取得する取得手段と、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における腫瘍細胞含有割合を推定する推定手段と、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する決定手段と、
前記検査領域を示す情報を出力する出力手段と
を備え
、
前記決定手段は、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に基づいて、前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づく指標の平均が、前記第1の条件にしたがう第1の閾値を超えるように、前記検査領域を決定する
検査支援装置。
【請求項2】
病理標本の画像データを取得する取得手段と、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における腫瘍細胞含有割合を推定する推定手段と、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する決定手段と、
前記検査領域を示す情報を出力する出力手段と
を備え
、
前記決定手段は、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に加えて、前記検査領域の面積の大きさに関する第2の条件、および、前記検査領域の輪郭の形状に関する第3の条件のうちの少なくとも一方に基づいて、前記検査領域を決定する
検査支援装置。
【請求項3】
前記決定手段は、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づく指標の平均が、前記第1の条件にしたがう第1の閾値を超えるように、前記検査領域を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の検査支援装置。
【請求項4】
前記決定手段は、
前記第1の条件に加えて、前記検査領域の面積の大きさに関する第2の条件、および、前記検査領域の輪郭の形状に関する第3の条件のうちの少なくとも一方に基づいて、前記検査領域を決定する
ことを特徴とする請求項
1に記載の検査支援装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの前記腫瘍細胞含有割合を推定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項6】
前記出力手段は、
画像上に、前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合を表示する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記注目領域を示す情報を付与された前記病理標本の画像データを取得し、
前記出力手段は、前記検査領域を示す情報とともに、前記注目領域を示す情報も出力する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項8】
前記推定手段は、腫瘍のモデルを学習したニューラルネットワークを用いて、前記注目領域における前記腫瘍細胞含有割合を推定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【請求項9】
病理標本の画像データを取得し、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における腫瘍細胞含有割合を推定し、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定し、
前記検査領域を示す情報を出力
する検査支援方法であって、
前記検査領域を決定するとき、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に基づいて、前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づく指標の平均が、前記第1の条件にしたがう第1の閾値を超えるように、前記検査領域を決定する
検査支援方法。
【請求項10】
病理標本の画像データを取得し、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における腫瘍細胞含有割合を推定し、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定し、
前記検査領域を示す情報を出力する検査支援方法であって、
前記検査領域を決定するとき、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に加えて、前記検査領域の面積の大きさに関する第2の条件、および、前記検査領域の輪郭の形状に関する第3の条件のうちの少なくとも一方に基づいて、前記検査領域を決定する
検査支援方法。
【請求項11】
病理標本の画像データを取得する処理と、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における腫瘍細胞含有割合を推定する処理と、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する処理と、
前記検査領域を示す情報を出力する処理と
をコンピュータに実行させるための
プログラムであって、
前記検査領域を決定する前記処理において、前記コンピュータに、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に基づいて、前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づく指標の平均が、前記第1の条件にしたがう第1の閾値を超えるように、前記検査領域を決定させる
プログラム。
【請求項12】
病理標本の画像データを取得する処理と、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における腫瘍細胞含有割合を推定する処理と、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する処理と、
前記検査領域を示す情報を出力する処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記検査領域内における前記腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に加えて、前記検査領域の面積の大きさに関する第2の条件、および、前記検査領域の輪郭の形状に関する第3の条件のうちの少なくとも一方に基づいて、前記検査領域を決定させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査支援装置、検査支援方法、および記録媒体に関し、特に、病理標本を用いた腫瘍の検査を補助する検査支援装置、検査支援方法、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
体細胞の遺伝子検査の対象とする細胞集団を取得するために、顕微鏡にレーザー照射装置が接続された機器が使用される。一つの手法では、薄切りにした組織を専用のスライドに貼り付けて染色した後、顕微鏡で組織の切片を観察しながら、検査領域の輪郭に沿ってレーザーを照射する。これにより、検査領域内の細胞集団を組織から切り離して回収することができる。これはダイセクション(解離)と呼ばれる技術の一例である。
【0003】
関連する技術では、デジタル化した病理画像を用いて、診断や診断の支援を行う。例えば、特許文献1に記載の関連する技術では、高倍率の病理画像及び低倍率の病理画像を用いて、病理組織を自動識別する。この技術は、デジタルパソロジーの一例である。
【0004】
特許文献2には、多数の病理画像のサンプルを機械学習した学習モデルを用いて、病理画像における細胞または組織の状態を識別し、その識別結果を可視化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-203949号公報
【文献】特開2018-044806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
精確な遺伝子検査のため、腫瘍細胞の含有割合が高い検査領域を組織から選択することが要求される。しかしながら、病理医にとって、腫瘍細胞の含有割合が高い検査領域を適切に判断することは困難である。また、不慣れな病理医には、検査領域内の細胞集団を手動で正確にダイセクション(解離)することができない場合がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、体細胞の遺伝子検査において、ダイセクションに適した検査領域を提案する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係わる検査支援装置は、病理標本の画像データを取得する取得手段と、前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する推定手段と、前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する決定手段と、前記検査領域を示す情報を出力する出力手段とを備えている。
【0009】
本発明の一態様に係わる検査支援方法では、病理標本の画像データを取得し、前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定し、前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定し、前記検査領域を示す情報を出力する。
【0010】
本発明の一態様に係わる一時的でない記憶媒体は、病理標本の画像データを取得する処理と、前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する処理と、前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する処理と、前記検査領域を示す情報を出力する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、体細胞の遺伝子検査において、ダイセクションに適した検査領域を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】病理医の端末およびサーバを備えたシステム内におけるデータの送受信の一例を示す図である。
【
図2】病理標本の画像データの一例を模式的に示す図である。
【
図3】病理医の端末の一画面を示す例であり、病理標本の一画像データ上に、単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を示す情報が付加されている。
【
図4】
図3に示す病理標本の画像データ上に、注目領域内における検査領域が、線で図示されている。
【
図5】正常な細胞及び腫瘍細胞を含む単位領域を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態1に係わる検査支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】実施形態1に係わる検査支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係わる検査支援装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
(システム1)
図1を参照して、後述する実施形態1に係わる検査支援装置10が適用されるシステム1の構成の一例を説明する。
図1は、システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【0015】
図1に示すように、システム1は、検査技師のスキャナ100、病理医の端末200、および、サーバ300を備えている。
【0016】
検査技師は、遺伝子検査の対象となる細胞組織の病理標本を作成する。検査技師は、スキャナ100を用いて、病理標本のスキャンデータを作成する。検査技師は、作成した病理標本のスキャンデータを、病理医の端末200へ送信する。
【0017】
病理医は、端末200が受信した病理標本のスキャンデータを加工することによって、サーバ300へ送信する病理標本の画像データを作成する。例えば、病理医は、腫瘍細胞含有割合が高いと考えられる注目領域を判断する。
【0018】
病理医は、注目領域のアノテーションを行う。例えば、病理医は、一般的な画像編集ソフトウェアを用いて、腫瘍細胞含有割合が高いと考えられる注目領域にマーキングを付加してもよい。例えば、病理医は、端末200上で動作する一般的な画像編集ソフトウェアを用いて、病理標本の画像データ上の注目領域を囲むように、ドット又は線を入力する。あるいは、病理医は、検査技師が作成した病理標本そのものを取得して、病理標本上にマジック等でドット又は線を描いたのち、スキャナ100を用いて、病理標本をスキャンしてもよい。病理医の端末200は、このようにして作成された病理標本の画像データを、サーバ300へ送信する。
【0019】
図2は、病理標本の画像データの一例を模式的に示す。
図2に示す病理標本の画像データ上において、色が濃い部分には、注目領域を示すドットが付加されている。ここでは、検査技師が注目領域を指定する場合について説明した。しかしながら、注目領域は必ずしも指定される必要がない。注目領域が指定されない場合、以下の説明において、「注目領域」は、病理標本の画像データの全体と読み替えられる。
【0020】
サーバ300は、後述する実施形態1に係わる検査支援装置10(
図6)を備えている。実施形態1において詳述するように、検査支援装置10は、病理標本の画像データを分析することによって、注目領域内における検査領域を決定する。
【0021】
サーバ300は、決定した検査領域を示す情報を、病理医の端末200へ送信する。例えば、サーバ300は、病理標本の画像データ上に、病理医に提案する検査領域を示す線を付加してもよい(
図4)。
【0022】
病理医の端末200は、サーバ300から受信した、検査領域を示す情報を表示する。なお、サーバ300が備えた検査支援装置10の詳細な構成及び動作については、実施形態1において説明する。
【0023】
図3は、病理医の端末200の一画面を示す例である。
図3は、病理標本における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を示している。より詳細には、
図3では、病理標本の一画像データ上に、注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合の大きさが、パターンで表現されている。
図3では、単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合が10%ごとに分類されている。単位領域は、病理標本の一画像データを、一定の大きさを有する矩形に分割したときの、1つの矩形内の領域である。単位領域は、1つの細胞の大きさと比して十分に大きい。そのため、単位領域内には、多数の細胞及び/または腫瘍細胞が存在している。以下では、着目する1つの単位領域における腫瘍細胞の比率を腫瘍細胞含有割合と呼ぶ。すなわち、腫瘍細胞含有割合は、着目する1つの単位領域に含まれる細胞及び腫瘍細胞の合計数に対する腫瘍細胞の数の比率である。
【0024】
図4では、
図3に示す病理標本の画像データ上に、注目領域内における検査領域が線で図示されている。
図4に示す病理画像の画像データにおける検査領域の線は、上述した検査領域を示す情報の一例である。
【0025】
(腫瘍細胞含有割合の計算方法の説明)
図5を参照して、腫瘍細胞含有割合の計算方法を説明する。腫瘍細胞含有割合は、単位領域に占める腫瘍細胞の比率である。
図5は、単位領域内にある正常な細胞及び腫瘍細胞を模式的に示す。
図5に示す例では、単位領域に含まれる7つの細胞のうち、5つが腫瘍細胞であるから、腫瘍細胞含有割合は、約71%(=5/7×100)である。
【0026】
〔実施形態1〕
図6から
図7を参照して、実施形態1について説明する。本実施形態1において、「腫瘍細胞含有割合」は、着目する領域(単位領域)に含まれる細胞の全体に占める腫瘍細胞の比率を意味する。
【0027】
(検査支援装置10)
図6を参して、本実施形態1に係わる検査支援装置10が備えた構成要素について説明する。
図6は、検査支援装置10の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、検査支援装置10は、取得部11、推定部12、決定部13、および出力部14を備えている。
【0028】
取得部11は、病理標本の画像データを取得する。取得部11は、取得手段の一例である。一例では、取得部11は、病理医の端末200(
図1)からサーバ300(
図1)へ送信された病理標本の画像データを取得する。取得部11は、取得した病理標本の画像データを、推定部12へ出力する。
【0029】
推定部12は、病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する。注目領域とは、病理標本の画像データ上において、正常な細胞と比して、腫瘍細胞の含有割合が高いと病理医が判断した領域である。一例では、推定部12は、病理医の端末200上で動作する画像編集ソフトによって付加された画像データ上のドット(
図2)に基づいて、注目領域を特定する。この場合、推定部12は、隣接する(つまり最も近傍にある)ドット同士を線でつないでゆくことによってできる線で囲まれた領域を、注目領域としてもよい。
【0030】
さらに、推定部12は、細胞の特徴を機械学習した識別器を用いて、画像データ中の注目領域における単位領域ごとに、腫瘍細胞含有割合を推定する。例えば、推定部12は、腫瘍細胞等のモデルを学習したニューラルネットワークを用いて、各単位領域における腫瘍細胞含有割合を推定する。ここでは、推定部12は、特許文献2に記載された関連する技術を用いて、腫瘍細胞含有割合を推定してもよい。
【0031】
推定部12は、画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を示す情報を、決定部13へ出力する。
【0032】
決定部13は、注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合に基づいて、注目領域内における検査領域を決定する。決定部13は、決定手段の一例である。
【0033】
一例では、決定部13は、検査領域に含まれる全ての単位領域の腫瘍細胞含有割合の総和平均が第1の閾値以上になるように、注目領域内における検査領域を決定する。一つの具体例では、決定部13は、検査領域に含まれる全ての単位領域の腫瘍細胞含有割合の総和平均が30%以上になるように、注目領域内における検査領域を決定する。ただし、第1の閾値は任意に定められてよい。
【0034】
別の一例では、決定部13は、検査領域に含まれる全ての単位領域の指標の総和平均が、第2の閾値以上になるように、注目領域内における検査領域を決定する。ここでの「指標」は、単位領域の腫瘍細胞含有割合の大きさを表す。
【0035】
図3を参照して、指標の一例を説明する。
図3に示す例では、単位領域は、腫瘍細胞含有割合の大きさに応じたランクにより、区別されている。具体的には、単位領域は、「0~10%」「10~20%」「20~30%」「30~40%」「40~50%」「50~100%」の6つのランクに分かれている。「~%」は、腫瘍細胞含有割合を表す。この例では、単位領域の腫瘍細胞含有割合に応じたランクが、単位領域の指標に相当する。
【0036】
一つの具体例では、決定部13は、検査領域に含まれる全ての単位領域の指標の総和平均が、6段階の4以上になるように、注目領域内における検査領域を決定してよい。ただし、第2の閾値は、第1の閾値とは独立に、任意に定められてよい。
【0037】
一変形例では、決定部13は、注目領域内における腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に加えて、検査領域の面積の大きさに関する第2の条件、および、検査領域の輪郭の形状に関する第3の条件のうちの少なくとも一方に基づいて、検査領域を決定する。
【0038】
例えば、第2の条件は、検査領域の面積が第1の下限値を上回ることである。また、第3の条件は、検査領域の輪郭が滑かな曲線であることである。ただし、第2の条件および第3の条件はこれらに限られない。
【0039】
決定部13は、注目領域内における検査領域を示す情報を、出力部14へ出力する。
【0040】
出力部14は、検査領域を示す情報を出力する。出力部14は、出力手段の一例である。
【0041】
一例では、出力部14は、決定部13から、注目領域内における検査領域を示す情報を受信する。そして、出力部14は、ローカルネットワークまたはインターネットを介して、病理医の端末200(
図1)へ、検査領域を示す情報を出力する。一例では、出力部14は、注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を示した病理標本の画像データを、病理医の端末200へ出力する。出力部14は、この出力する画像データ上に、検査領域を示す線を付加する(
図4)。この例では、病理標本の画像データ上に付加された検査領域を示す線が、検査領域を示す情報に相当する。あるいは、出力部14は、無線または有線ネットワークを介して、病理医の端末200に、検査領域を示す情報を送信し、端末200に
図4に例示する検査領域の画像を表示させるようにしてもよい。
【0042】
(検査支援装置10の動作)
図7を参照して、本実施形態1に係わる検査支援装置10の動作を説明する。
図7は、検査支援装置10の各部が実行数処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
図7に示すように、取得部11は、病理標本の画像データ(
図2)を取得する(S1)。取得部11は、病理標本の画像データを、推定部12へ出力する。
【0044】
推定部12は、病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する(S2)。推定部12は、注目領域における腫瘍細胞含有割合を示す情報を、決定部13へ出力する。
【0045】
決定部13は、注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合(
図3)に基づいて、注目領域内における検査領域を決定する(S3)。決定部13は、検査領域を示す情報を出力部14へ出力する。
【0046】
出力部14は、検査領域を示す情報を出力する(S4)。出力部14は、検査領域を示す情報を、病理医の端末の画面に表示させる。一例では、出力部14は、
図4に示すように、病理標本の画像データにおいて、検査領域を線で図示した画面を、病理医の端末に表示させる。
【0047】
以上で、検査支援装置10の動作は終了する。
【0048】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、取得部11は、病理標本の画像データを取得する。推定部12は、病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する。決定部13は、注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合に基づいて、注目領域内における検査領域を決定する。出力部14は、検査領域を示す情報を出力する。出力される検査領域は、注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合に基づいて決定されている。検査領域内における腫瘍細胞含有割合が高いほど、一般的に、検査領域はダイセクションに適しているといえる。したがって、体細胞の遺伝子検査において、ダイセクションに適した検査領域を提案することができる。
【0049】
(ハードウェア構成について)
前記実施形態1で説明した検査支援装置10の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。これらの構成要素の一部又は全部は、例えば
図8に示すような情報処理装置900により実現される。
図8は、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0050】
図8に示すように、情報処理装置900は、一例として、以下のような構成を含む。
【0051】
・CPU(Central Processing Unit)901
・ROM(Read Only Memory)902
・RAM(Random Access Memory)903
・RAM903にロードされるプログラム904
・プログラム904を格納する記憶装置905
・記録媒体906の読み書きを行うドライブ装置907
・通信ネットワーク909と接続する通信インタフェース908
・データの入出力を行う入出力インタフェース910
・各構成要素を接続するバス911
前記実施形態1で説明した検査支援装置10の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム904をCPU901が読み込んで実行することで実現される。各構成要素の機能を実現するプログラム904は、例えば、予め記憶装置905やROM902に格納されており、必要に応じてCPU901がRAM903にロードして実行される。なお、プログラム904は、通信ネットワーク909を介してCPU901に供給されてもよいし、予め記録媒体906に格納されており、ドライブ装置907が当該プログラムを読み出してCPU901に供給してもよい。
【0052】
上記の構成によれば、前記実施形態1において説明した検査支援装置10が、ハードウェアとして実現される。したがって、前記実施形態において説明した効果と同様の効果を奏することができる。
【0053】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。上記実施形態(及び実施例)の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0054】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0055】
〔付記〕
(付記1)
病理標本の画像データを取得する取得手段と、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する推定手段と、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する決定手段と、
前記検査領域を示す情報を出力する出力手段と
を備えた検査支援装置。
【0056】
(付記2)
前記決定手段は、
前記検査領域内における腫瘍細胞含有割合に関する第1の条件に基づいて、前記検査領域を決定する
ことを特徴とする付記1に記載の検査支援装置。
【0057】
(付記3)
前記決定手段は、
前記検査領域内における腫瘍細胞含有割合に基づく指標の平均が、前記第1の条件にしたがう第1の閾値を超えるように、前記検査領域を決定する
ことを特徴とする付記2に記載の検査支援装置。
【0058】
(付記4)
前記決定手段は、
前記第1の条件に加えて、前記検査領域の面積の大きさに関する第2の条件、および、前記検査領域の輪郭の形状に関する第3の条件のうちの少なくとも一方に基づいて、前記検査領域を決定する
ことを特徴とする付記2または3に記載の検査支援装置。
【0059】
(付記5)
前記推定手段は、
前記注目領域内における腫瘍細胞含有割合に基づく指標を算出する
ことを特徴とする付記1から4のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【0060】
(付記6)
前記出力手段は、
前記画像上に、前記注目領域内における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を表示する
ことを特徴とする付記1から5のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【0061】
(付記7)
前記取得手段は、前記注目領域を示す情報を付与された前記病理標本の画像データを取得し、
前記出力手段は、前記検査領域を示す情報とともに、前記注目領域を示す情報も出力する
ことを特徴とする付記1から6のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【0062】
(付記8)
前記推定手段は、腫瘍のモデルを学習したニューラルネットワークを用いて、前記注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する
ことを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の検査支援装置。
【0063】
(付記9)
前記注目領域を示す情報は、アノテーションによって付与される
ことを特徴とする付記7に記載の検査支援装置。
【0064】
(付記10)
前記第2の条件は、前記検査領域の面積が第2の閾値を上回ることである
ことを特徴とする付記4に記載の検査支援装置。
【0065】
(付記11)
前記第3の条件は、前記検査領域の輪郭が滑かな曲線であることである
ことを特徴とする付記4に記載の検査支援装置。
【0066】
(付記12)
病理標本の画像データを取得し、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定し、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定し、
前記検査領域を示す情報を出力する
検査支援方法。
【0067】
(付記13)
病理標本の画像データを取得する処理と、
前記病理標本の画像データ中の注目領域における単位領域ごとの腫瘍細胞含有割合を推定する処理と、
前記注目領域内における前記腫瘍細胞含有割合に基づいて、前記注目領域内における検査領域を決定する処理と、
前記検査領域を示す情報を出力する処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した、一時的でない記録媒体。
【符号の説明】
【0068】
10 検査支援装置
11 取得部
12 推定部
13 決定部
14 出力部