(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】光反応評価装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20250226BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2023518625
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009626
(87)【国際公開番号】W WO2022234715
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021078640
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉木 隆宏
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134527(JP,A)
【文献】特開2002-071449(JP,A)
【文献】特開2019-113568(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022038(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0102893(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0090622(US,A1)
【文献】国際公開第2021/166310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01J 3/00 - G01J 3/52
G02B 19/00 - G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料保持部に
保持された試料の光反応を評価する光反応評価装置であって、
前記
試料保持部の試料に励起光を照射する照射光源と、
前記照射光源に取り付けられ、前記
試料保持部の面に均一な強度の光を照射可能とする均一照射レンズと、
前記
試料保持部の試料を通過した測定光源の光を検出部で検出して光の強度分布を取得する分光光度計と、
試料が存在しない前記
試料保持部に前記
照射光源に代えて標準光源による白色光を照射し、かつ前記
試料保持部に前記測定光源によ
る光が照射されない状態で前記検出部により検出された光の強度分布を第1の検出強度分布として取得し、第1の測定動作時に、試料が存在しない前記
試料保持部に前記照射光源
による光
を照射
し、かつ前記
試料保持部に前記測定光源によ
る光が照射されない状態で前記検出部により検出された光の強度分布を第2の検出強度分布として取得する強度分布取得部と、
前記強度分布取得部により取得された第1の検出強度分布
および第2の検出強度分布
と前記標準光源の放射特性
とに基づいて、前記照射光源の照射光の各波長での放射強度を算出する放射強度算出部と、
前記放射強度算出部により算出された各波長での放射強度に基づいて前記照射光源の照射光の各波長でのフォトン数を照射フォトン数として算出する照射フォトン数算出部と、
第2の測定動作時に、前記試料保持部の試料に前記照射光源による光を照射し、かつ前記試料保持部の試料に前記測定光源による光が照射された状態で前記検出部により検出された光の強度分布を吸光度スペクトルとして取得する吸光度スペクトル取得部と、
前記第2の測定動作時に、前記照射フォトン数算出部により算出された照射フォトン数および前記吸光度スペクトル取得部により取得された吸光度スペクトルに基づいて、試料により各波長で吸収されたフォトンの数を吸収フォトン数として算出する吸収フォトン数算出部と、を備え、
前記吸収フォトン数算出部で算出した吸収フォトン数に基づいて試料の光反応を評価する、光反応評価装置。
【請求項2】
前記測定光源と前記検出部とは、前記
試料保持部を挟んで対向する位置に配置された、請求項1に記載の光反応評価装置。
【請求項3】
前記照射光源が光を照射する方向と、前記測定光源が光を照射する方向との角度差が所定の範囲内である、請求項2に記載の光反応評価装置。
【請求項4】
前記照射光源が光を照射する方向と、前記測定光源が光を照射する方向とが平行である、請求項2に記載の光反応評価装置。
【請求項5】
前記強度分布取得部により取得された第1の検出強度分布を記憶する記憶部をさらに備え、
前記強度分布取得部は、
前記記憶部に第1の検出強度分布が記憶されている場合、試料が存在しない前記試料保持部に前記標準光源による白色光を照射し、かつ前記試料保持部に前記測定光源による光が照射されない状態で前記検出部により光の強度分布を検出することなく、前記記憶部に記憶された第1の検出強度分布を取得する、請求項
1に記載の光反応評価装置。
【請求項6】
前記照射光源として、白色光、単色光または一定波長範囲の光を発生する光源が選択的に設けられる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の光反応評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光反応評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に励起光源により光が照射されると、他の物質または蛍光等が生成される。このような現象は光化学反応と呼ばれる。光化学反応の評価指標として、量子収率が用いられる。量子収率は、(光の照射により試料内で生成された物質の分子数)/(試料により吸収されたフォトン数)で表される。本明細書では、励起光源を照射光源と呼ぶ。
【0003】
量子収率を算出するためには、試料により吸収されたフォトン数を測定する必要がある。この場合、照射光源により試料に照射される光のフォトン数(以下、照射フォトン数と呼ぶ。)は、照射光源により異なるため、照射フォトン数を校正する必要がある。
【0004】
そこで、特定波長において化学反応当たり既知の吸収フォトン数を有する化学光量計を用いて照射フォトン数を校正する方法が提案されている。また、光のエネルギーを測定する光パワーメータを用いて照射フォトン数を校正する方法が提案されている。例えば、特許文献1の背景技術の欄には、化学光量計または光パワーメータを用いて照射フォトン数を校正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、照射フォトン数は、光の波長により変化する。したがって、照射光源の光の波長に応じた化学光量計を用いて照射フォトン数を校正する必要がある。この場合、化学光量計による吸収ピークはややブロードであるため、各波長での照射フォトン数を正確に測定することは困難である。光パワーメータでは、通常、光のエネルギーの波長分布を測定することはできないので、照射フォトン数の正確な波長分布を校正することは困難である。そのため、光化学反応に広い波長範囲の光を発生する照射光源を用いた場合には、広い波長範囲における照射フォトン数の分布を正確に校正することは難しい。また、試料の形状には様々な形状があり、照射光源や測定装置などの配置によっては照射フォトン数を測定することが難しい。
【0007】
本発明は、試料の形状を考慮して照射光源や測定装置などを配置し、特定波長を有する光を発生する照射光源を用いた場合だけでなく広い波長範囲を有する光を発生する照射光源を用いた場合にも波長に依存する照射フォトン数の分布を正確に算出することが可能な光反応評価装置およびフォトン数算出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面に従う光反応評価装置は、試料保持部に保持された試料の光反応を評価する光反応評価装置であって、試料保持部の試料に励起光を照射する照射光源と、照射光源に取り付けられ、試料保持部の面に均一な強度の光を照射可能とする均一照射レンズと、試料保持部の試料を通過した測定光源の光を検出部で検出して光の強度分布を取得する分光光度計と、試料が存在しない試料保持部に照射光源に代えて標準光源による白色光を照射し、かつ試料保持部に測定光源による光が照射されない状態で検出部により検出された光の強度分布を第1の検出強度分布として取得し、第1の測定動作時に、試料が存在しない試料保持部に照射光源による光を照射し、かつ試料保持部に測定光源による光が照射されない状態で検出部により検出された光の強度分布を第2の検出強度分布として取得する強度分布取得部と、強度分布取得部により取得された第1の検出強度分布および第2の検出強度分布と標準光源の放射特性とに基づいて、照射光源の照射光の各波長での放射強度を算出する放射強度算出部と、放射強度算出部により算出された各波長での放射強度に基づいて照射光源の照射光の各波長でのフォトン数を照射フォトン数として算出する照射フォトン数算出部と、第2の測定動作時に、試料保持部の試料に照射光源による光を照射し、かつ試料保持部の試料に測定光源による光が照射された状態で検出部により検出された光の強度分布を吸光度スペクトルとして取得する吸光度スペクトル取得部と、第2の測定動作時に、照射フォトン数算出部により算出された照射フォトン数および吸光度スペクトル取得部により取得された吸光度スペクトルに基づいて、試料により各波長で吸収されたフォトンの数を吸収フォトン数として算出する吸収フォトン数算出部と、を備え、吸収フォトン数算出部で算出した吸収フォトン数に基づいて試料の光反応を評価する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定波長を有する光を発生する照射光源を用いた場合だけでなく広い波長範囲を有する光を発生する照射光源を用いた場合にも波長に依存する照射フォトン数の分布を正確に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施の形態に係る光反応評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】比較対象である光反応評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1のデータ処理部の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3のデータ処理部の光反応評価動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図3のデータ処理部の光反応評価動作を示すフローチャートである。
【
図6】標準データ取得動作を説明するための図である。
【
図7】標準データ取得動作により取得された第1の検出強度分布の例を示す図である。
【
図9】第1の測定動作により取得された第2の検出強度分布の例を示す図である。
【
図10】照射光源の各波長での放射強度の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る光反応評価装置およびフォトン数算出方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(1)光反応評価装置の構成
図1は一実施の形態に係る光反応評価装置の構成を示すブロック図である。
図1の光反応評価装置100は、測定部10およびデータ処理部30を備える。測定部10は、照射光源1、分光光度計2および試料セル3を含む。試料セル3には、試料Sがセットされる。本実施の形態では、試料セル3の位置が試料位置に相当する。また、本実施の形態において、試料Sについての光反応の評価は、試料Sの光化学反応における吸収フォトン数の評価を含む。
【0013】
照射光源1は、試料セル3に励起光として光を照射する。照射光源1としては、特定の波長の光、特定の波長範囲の光、多波長の光または白色光を発生する光源を用いることができる。照射光源1は、例えば、LED(発光ダイオード)、キセノンランプ、水銀ランプ、または重水素ランプ等の種々の光源であってもよい。照射光源1から光を照射する部分に均一照射レンズ1aが取り付けられている。均一照射レンズ1aは、照射光源1から照射する光を試料セル3の位置の全面に均一な強度の光を照射するための光学素子である。均一照射レンズ1aを用いることで、試料セル3内のどの位置においてもほぼ均一な強度の光を照射することができる。特に、フィルム形状の試料Sを試料セル3にセットする場合、測定光を照射する試料Sの位置で均一な強度の光を照射する必要がある。均一照射レンズ1aは、例えば、テレセントリックレンズ、ロッドレンズ等の均一な強度の光を照射できる光学素子であればよい。
【0014】
分光光度計2は、測定光源21、分光器(図示せず)および検出部22を含む。本実施の形態では、例えば、ポリクロメータを用いたマルチチャンネル分光光度計を用いることができる。
【0015】
次に、測定部10における照射光源1、分光光度計2および試料セル3の配置について説明する。まず、比較対象として、試料セルにセットする試料の形状がキューブ形状あるいはキューブ形状の試料セルに溶液試料をセットする場合の配置について説明する。
図2は、比較対象である光反応評価装置100Aの構成を示すブロック図である。
図2に示す光反応評価装置100Aは、測定部10Aにおける照射光源1、分光光度計2および試料セル3の配置が、
図1に示す光反応評価装置100と異なる以外、同じ構成である。そのため、
図2に示す光反応評価装置100Aにおいて、
図1に示す光反応評価装置100と同じ構成には同じ番号を付してある。
【0016】
測定部10Aでは、照射光源1からの照射光に対して分光光度計2の測定光源21からの測定光が試料セル3Aにおいて直交している。分光光度計2の検出部22は、試料セル3Aを挟んで測定光源21と対向する位置に配置されている。なお、試料セル3Aにセットする試料SAは、光を照射する面において広がりを有していないので、均一照射レンズ1aを照射光源1に設ける必要がない。
【0017】
しかし、
図2に示す測定部10Aの配置では、フィルム形状の試料を測定する場合、試料の一部にしか照射光源1からの光を照射できず、また試料の側面(フィルムの厚みの部分)に測定光を照射する必要があり、フォトン数を測定することが困難であった。
【0018】
そこで、本実施の形態に係る光反応評価装置100では、
図1に示す測定部10の配置とすることで、試料セル3にセットしたフィルム形状の試料Sに対するフォトン数の測定を可能としている。具体的に、測定部10は、照射光源1から光を照射する方向と、分光光度計2の測定光源21から光を照射する方向とがほぼ平行となるように、照射光源1および測定光源21を配置している。つまり、照射光源1および測定光源21から光を照射する方向は、試料セル3の面に対してほぼ直交している(角度α≒90°,角度β≒90°)。
【0019】
さらに、照射光源1には均一照射レンズ1aを設け、照射光源1から照射する光を試料セル3の位置において全面に均一な強度の光として照射している。そのため、試料セル3の面内であれば、何れの位置でも均一な強度の光が照射光源1から照射されているので、試料セル3の面内の何れの位置においても測定光源21からの光を照射して分光光度計2の検出部22で測定することができる。なお、
図1から分かるように、照射光源1から光を照射する方向と直交する試料セル3の面の位置Pから水平方向(図中上下方向)に遠ざかるに従い、試料セル3の面と照射光との成す角が小さくなる。そのため、位置Pより遠い位置で測定光源21からの光を照射して分光光度計2の検出部22で測定した方が、試料セル3の面で反射した照射光の影響を受け難くなる。
【0020】
また、均一照射レンズ1aは、試料セル3の位置において全面に均一な強度の光を照射しなくてもよい。均一照射レンズ1aにより試料セル3の位置において均一な強度の光が照射された部分で、測定光源21からの光を照射して分光光度計2の検出部22で測定すればよい。つまり、分光光度計2の検出部22は、均一照射レンズ1aからの照射光および測定光源21からの測定光が照射されている試料Sの部分を測定すればよい。なお、フィルム形状の試料Sが測定中において形状を維持できるのであれば試料セル3は不要であり、試料セル3の位置に試料Sのみを設けてもよい。
【0021】
図1に示した測定部10の配置は一例であり、少なくとも、測定光源21が、照射光源1により光を照射する試料セル3の面の背面側に配置され、検出部22が、照射光源1により光を照射する試料セル3の面の正面側に配置されていればよい。つまり、照射光源1と検出部22とは、試料セル3を挟んで同じ側に配置され、照射光源1と測定光源21とは、試料セル3を挟んで反対側に配置されていればよい。好ましくは、測定光源21と検出部22とは、試料セル3を挟んで対向する位置に配置されている。つまり、測定光源21と検出部22とは、試料セル3を挟んで直線上に配置されていることが好ましい。
【0022】
さらに好ましくは、照射光源1が光を照射する方向と、測定光源21が光を照射する方向との角度差が所定の範囲内である。
図1では、角度α≒90°,角度β≒90°と照射光源1が光を照射する方向と、測定光源21が光を照射する方向との角度差が0(ゼロ)であると説明したが、測定に影響を与えない範囲であれば所定の範囲内の角度差があってもよい。なお、
図1のように角度α≒90°,角度β≒90°であれば、照射光源1が光を照射する方向と、測定光源21が光を照射する方向とが平行となる。このように測定部10の照射光源1、分光光度計2および試料セル3を配置することで、試料セル3にセットする試料Sがフィルム試料またはフィルム形状の試料であってもフォトン数を測定することができる。
【0023】
次に、データ処理部30は、CPU(中央演算処理装置)31、RAM(ランダムアクセスメモリ)32、ROM(リードオンリメモリ)33、入出力I/F(インタフェース)34、および記憶装置35を含む。CPU31、RAM32、ROM33、入出力I/F34および記憶装置35はバス36に接続されている。データ処理部30のバス36には、操作部40および表示部50が接続される。操作部40は、キーボードまたはマウス等を含み、データ処理部30に各種指令およびデータの入力のためにユーザにより操作される。表示部50は、液晶ディスプレイまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等を含み、各種データ等を表示する。
【0024】
記憶装置35は、半導体メモリまたはメモリカード等の記憶媒体を含み、光反応評価プログラムを記憶する。RAM32は、CPU31の作業領域として用いられる。ROM33には、システムプログラムが記憶される。CPU31は、記憶装置35に記憶された光反応評価プログラムをRAM32上で実行することにより入出力I/F34を通して照射光源1および分光光度計2を制御するとともに、分光光度計2の出力信号を入出力I/F34を通して受ける。これにより、後述する光反応評価方法が実施される。光反応評価方法は、フォトン数算出方法を含む。
【0025】
光反応評価装置100は、後述する標準光源1S(
図3)を用いた標準データ取得動作、照射光源1を用いた第1の測定動作、および試料Sの測定を行う第2の測定動作を実行する。
【0026】
(2)データ処理部30の機能的な構成
図3は
図1のデータ処理部30の機能的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、データ処理部30は、強度分布取得部310、記憶部320、放射強度算出部330、照射フォトン数算出部340、動作制御部350、吸光度スペクトル取得部360、吸収フォトン数算出部370および表示制御部380を含む。上記の構成要素(310~380)の機能は、
図1のCPU31が記憶装置35等の記憶媒体(記録媒体)に記憶されたコンピュータプログラムである光反応評価プログラムを実行することにより実現される。なお、データ処理部30の一部または全ての構成要素が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0027】
標準データ取得動作時には、測定部10(
図1)に、照射光源1に代えて
図3に一点鎖線で示される標準光源1Sが取り付けられる。標準光源1Sは、照射光源1により発生される光の波長範囲以上の波長範囲を有する光を発生する光源である。標準光源1Sとして白色光源が用いられる。白色光源は、例えば、白色光を発生するLEDであるが、他の白色光源が用いられてもよい。標準光源1Sは、広い波長範囲の光を発生する光源である。以下、標準光源1Sが発生する光の全波長における放射強度分布を標準光源1Sの放射特性と呼ぶ。放射特性は、標準光源1Sが発生する光の各波長での放射強度を含む。標準光源1Sの放射特性は、予め正確に測定されている。分光光度計2は、波長に依存する波長感度分布特性を有するので、通常、標準光源1Sが発生する光の放射強度分布と分光光度計2により検出される標準光源1Sからの光の強度分布とは異なる。
【0028】
強度分布取得部310は、標準データ取得動作時に、分光光度計2の検出部22により検出される光の強度分布を第1の検出強度分布として取得する。第1の検出強度分布は、標準光源1Sにより試料セル3に照射される白色光の全波長において検出された光の強度分布である。また、強度分布取得部310は、第1の測定動作時に、分光光度計2の検出部22により検出される光の強度分布を第2の検出強度分布として取得する。第2の検出強度分布は、照射光源1により試料セル3に照射される光の波長範囲において検出された光の強度分布である。照射光源1が白色光源である場合には、第2の検出強度分布は全波長において検出された光の強度分布である。照射光源1が特定の波長の光または特定の波長範囲の光を発生する光源である場合には、第2の検出強度分布は特定の波長または特定の波長範囲において検出された光の強度分布である。
【0029】
記憶部320は、標準データ取得時に強度分布取得部310により取得された第1の検出強度分布および第1の測定動作時に強度分布取得部310により取得された第2の検出強度分布を記憶する。また、記憶部320は、標準光源1Sの放射特性を予め記憶する。さらに、記憶部320は、後述する照射フォトン数算出部340により算出された照射フォトン数および吸収フォトン数算出部370により算出された吸収フォトン数を記憶する。
【0030】
放射強度算出部330は、第1の測定動作時に、記憶部320に記憶された第1の検出強度分布、第2の検出強度分布、および標準光源1Sの各波長での放射強度に基づいて、照射光源1の各波長での放射強度を算出する。算出方法の詳細については後述する。
【0031】
照射フォトン数算出部340は、放射強度算出部330により算出された各波長での放射強度に基づいて、照射光源1により試料セル3に照射される光のフォトン数(以下、照射フォトン数と呼ぶ。)を算出する。算出方法の詳細については後述する。
【0032】
動作制御部350は、ユーザによる操作部40の操作に基づいて標準データ取得動作、第1の測定動作および第2の測定動作を実行するために、データ処理部30の各構成要素の動作を制御するとともに、標準光源1S、照射光源1、および分光光度計2の測定光源21の動作を制御する。
【0033】
吸光度スペクトル取得部360は、第2の測定動作時に、分光光度計2の検出部22により検出される光の強度分布を吸光度スペクトルとして取得する。吸収フォトン数算出部370は、吸光度スペクトル取得部360により取得された吸光度スペクトルおよび照射フォトン数算出部340により算出された照射フォトン数に基づいて各波長での吸収フォトン数を算出する。算出方法の詳細については後述する。
【0034】
表示制御部380は、操作部40の操作に基づいて、照射フォトン数算出部340により算出された照射フォトン数、吸収フォトン数算出部370により算出された吸収フォトン数および吸光度スペクトル取得部360により取得された吸光度スペクトルを表示部50に表示させる。
【0035】
(3)光反応評価装置100の動作
図4および
図5は
図3のデータ処理部30の光反応評価動作を示すフローチャートである。
図6は標準データ取得動作を説明するための図である。
図7は標準データ取得動作により取得された第1の検出強度分布の例を示す図である。
図8は第1の測定動作を説明するための図である。
図9は第1の測定動作により取得された第2の検出強度分布の例を示す図である。
図10は照射光源1の各波長での放射強度の算出方法を説明するための図である。
図7、
図9および
図10の縦軸は、分光光度計2により検出される各波長での検出強度を表し、横軸は波長λを表す。
【0036】
光反応評価装置100の光反応評価動作は、上記のように、標準データ取得動作、第1の測定動作および第2の測定動作を含む。
図4および
図5の光反応評価動作は、
図3のCPU31が光反応評価プログラムを実行することにより行われる。
【0037】
標準データ取得動作は、例えば、光反応評価装置100の据付け時またはメンテナンス時に行われる。ここで、標準データは、第1の検出強度分布および標準光源1Sの放射特性(各波長での放射強度)を含む。第1の測定動作は、例えば、日常的に行われる。第2の測定動作は、試料Sの測定時に行われる。
【0038】
標準データ取得動作時には、作業者が操作部40に照射光源1の代わりに標準光源1Sを取り付ける。試料セル3には試料Sはセットされない。動作制御部350は、操作部40により標準データ取得動作が指示されたか否かを判定する(ステップS1)。標準データ取得動作が指示された場合には、動作制御部350は、標準光源1Sが試料セル3に光を照射するように標準光源1Sを制御する(ステップS2)。これにより、
図6に示すように、標準光源1Sにより放射された光が試料セル3に照射され、試料セル3からの光が分光光度計2に入射する。このとき、分光光度計2の測定光源21からは試料セル3に光が照射されない。なお、
図6に示す標準光源1S、分光光度計2、および試料セル3の配置は、実際の配置とは異なり説明を簡単にするため模式的に示した配置である。
【0039】
強度分布取得部310は、分光光度計2の検出部22により検出された光の強度分布を第1の検出強度分布として取得する(ステップS3)。
図7には、検出強度と波長λとの関係が第1の検出強度分布E1として示される。強度分布取得部310は、取得された第1の検出強度分布E1を記憶部320に記憶させる(ステップS4)。これにより、標準データ取得動作が完了する。
【0040】
第1の測定動作時には、ユーザが測定部10に照射光源1を取り付ける。試料セル3には試料Sはセットされない。動作制御部350は、操作部40により第1の測定動作が指示されたか否かを判定する(ステップS5)。第1の測定動作が指示された場合には、動作制御部350は、照射光源1が試料セル3に光を照射するように照射光源1を制御する(ステップS6)。これにより、
図8に示すように、照射光源1により放射された光が試料セル3に照射され、試料セル3からの光が分光光度計2に入射する。このとき、分光光度計2の測定光源21からは試料セル3に光が照射されない。なお、
図8に示す照射光源1、分光光度計2、および試料セル3の配置は、実際の配置とは異なり説明を簡単にするため模式的に示した配置である。
【0041】
強度分布取得部310は、分光光度計2の検出部22により検出された光の強度分布を第2の検出強度分布として取得する(ステップS7)。
図9には、検出強度と波長λとの関係が第2の検出強度分布E2として示される。強度分布取得部310は、取得された第2の検出強度分布E2を記憶部320に記憶させる(ステップS8)。
【0042】
放射強度算出部330は、記憶部320に記憶された第1の検出強度分布E1、第2の検出強度分布E2および標準光源1Sの放射特性から以下の方法で照射光源1の各波長での放射強度を算出する(ステップS9)。本例で、各波長とは、特定ピッチで分割された一定の波長区間を意味する。
【0043】
標準光源1Sの放射特性をFstdとし、分光光度計2の波長感度分布特性をFmonoとすると、第1の検出強度分布E1は次式で表される。
【0044】
E1=Fstd×Fmono …(1)
照射光源1の放射特性をFirrとすると、第2の検出強度分布E2は次式で表される。ここで、照射光源1の放射特性Firrは、照射光源1により発生される光の放射強度分布を表す。放射特性Firrは、照射光源1の各波長での放射強度を含む。
【0045】
E2=Firr×Fmono …(2)
上式(1)および(2)より次式が得られる。
【0046】
E1/E2=(Fstd×Fmono)/(Firr×Fmono) …(3)
上式(3)より次式が得られる。
【0047】
Firr=(E2/E1)×Fstd …(4)
第1の検出強度分布E1および標準光源1Sの放射特性Fstdは既知である。したがって、各波長での光の強度を検出することができる分光光度計2を用いて、照射光源1の第2の検出強度分布E2を得ることにより上式(4)から照射光源1の放射特性Firrを算出することができる。それにより、特定波長の光を発生する光源だけでなく、特定の波長範囲の光を発生する光源、多波長の光を発生する光源および白色光を発生する光源について各波長での放射強度を得ることができる。
【0048】
具体的には、放射強度算出部330は、次の方法により照射光源1の各波長での放射強度を算出することができる。
【0049】
図10に示すように、第1の検出強度分布E1および第2の検出強度分布E2が一定の波長ピッチで複数の波長区間に分割される。放射強度算出部330は、各波長区間における第1の検出強度分布E1および第2の検出強度分布E2下の面積を算出する。
図10において、第1の検出強度分布E1の任意の波長区間における第1の検出強度分布E1下の面積をE1iとし、第2の検出強度分布E2の任意の波長区間における第2の検出強度分布E2下の面積をE2iとする。iは自然数である。この場合、第1の検出強度分布E1の複数の波長区間の面積は、E11,E12,…E1i,…となる。第2の検出強度分布E2の複数の波長区間の面積は、E21,E22,…E2i,…となる。また、任意の波長区間での標準光源1Sの放射強度をFstdiとする。
【0050】
放射強度算出部330は、次式より任意の波長区間での照射光源1の放射強度Firriを算出する(ステップS9)。
【0051】
Firri=(E2i/E1i)×Fstdi …(5)
波長λにおける照射フォトン数Nirr(λ)は、プランク定数h、光の速度cおよび放射強度Firriを用いてアインシュタインのエネルギーの式より次式で定義される。本実施の形態では、波長λは、i番目の波長区間に相当する。
【0052】
Nirr(λ)=(λ/hc)×Firri …(6)
照射フォトン数算出部340は、上式(5)より算出される各波長区間での放射強度Firriを用いて、上式(6)より各波長λでの照射フォトン数Nirr(λ)を算出する(ステップS10)。照射フォトン数算出部340は、算出された各波長λでの照射フォトン数Nirr(λ)を記憶部320に記憶させる(ステップS11)。これにより、第1の測定動作が完了する。
【0053】
第2の測定動作時には、ユーザが測定部10(
図1)の試料セル3に試料Sをセットする。動作制御部350は、操作部40により第2の測定動作が指示されたか否かを判定する(ステップS12)。第2の測定動作が指示された場合には、動作制御部350は、分光光度計2の測定光源21が試料セル3の試料に光を測定光として照射するように測定光源21を制御する(ステップS13)。また、動作制御部350は、照射光源1が試料セル3の試料に光を励起光として照射するように照射光源1を制御する(ステップS14)。これにより、照射光源1により照射された励起光のフォトンが試料Sにより吸収され、光化学反応が起こる。この場合、吸収されるフォトン数は波長λに依存する。分光光度計2の検出部22は、試料Sからの光の強度分布を検出する。
【0054】
吸光度スペクトル取得部360は、分光光度計2の検出部22により検出される光の強度分布を吸光度スペクトルとして取得する(ステップS15)。また、吸光度スペクトル取得部360は、取得された吸光度スペクトルを記憶部320に記憶させる(ステップS16)。測定期間中、試料Sに照射光源1により照射フォトン数Nirr(λ)の励起光が照射される。この照射フォトン数Nirr(λ)に応じて光化学反応が進行する。したがって、吸光度スペクトル取得部360は、時系列データである吸光度スペクトルを取得する。ここで、時点tにおける吸光度スペクトルをAbs(t,λ)とする。また、時点tにおいて試料Sが波長λで吸収するフォトン数を吸収フォトン数Nabs(t,λ)とする。吸収フォトン数Nabs(t,λ)は、次式により表される。
【0055】
Nabs(t,λ)=α×(1-10-Abs(t,λ))×Nirr(λ) …(7)
上式(7)において、αは試料セル3による照射光反射成分を補正するための係数である。吸収フォトン数算出部370は、照射フォトン数算出部340により算出された照射フォトン数Nirr(λ)および吸光度スペクトル取得部360により取得された吸光度スペクトルAbs(t,λ)を用いて上式(7)より吸収フォトン数Nabs(t,λ)を算出する(ステップS17)。また、吸収フォトン数算出部370は、算出された吸収フォトン数Nabs(t,λ)を記憶部320に記憶させる(ステップS18)。これにより、第2の測定動作が完了する。
【0056】
次に、動作制御部350は、操作部40により動作終了が指示されたか否かを判定する(ステップS19)。動作終了が指示されない場合には、動作制御部350はステップS1に戻る。ステップS1において標準データ取得動作が指示されない場合には、動作制御部350はステップS5に進む。ステップS5において第1の測定動作が指示されない場合には、動作制御部350はステップS12に進む。ステップS12において第2の測定動作が指示されない場合には、動作制御部350はステップS19に進む。ステップS19において動作終了が指示された場合には、動作制御部350は光反応評価動作を終了する。
【0057】
試料S内で光化学反応により生成された物質(原子または分子)の分子数および上記の第2の測定動作により算出された吸収フォトン数を用いて光化学反応における量子収率を算出することができる。試料S内で光化学反応により生成された物質の分子数は、例えば、試料Sをガスクロマトグラフまたは液体クロマトグラフを用いて分析することにより得られる。
【0058】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係る光反応評価装置100においては、白色光を発生する標準光源1Sを用いて得られた第1の検出強度分布E1は広い波長範囲における各波長での検出強度を含み、標準光源1Sの放射特性Fstdは広い波長範囲における各波長での放射強度を含む。そのため、第1の測定動作時に、照射光源1の照射光の波長範囲における各波長での放射強度を正確に算出することができる。それにより、照射光源1の照射光の波長範囲における各波長での照射フォトン数を正確に算出することができる。
【0059】
その結果、特定波長を有する光を発生する照射光源1を用いた場合だけでなく広い波長範囲を有する光を発生する照射光源1を用いた場合にも波長に依存する照射フォトン数の分布を正確に算出することが可能である。
【0060】
また、第1の測定動作時に、照射光源1の照射光の波長範囲における各波長での照射フォトン数が正確に算出されているので、第2の測定動作時に、照射光源1の照射光の波長範囲における各波長での吸収フォトン数を正確に算出することができる。
【0061】
さらに、標準データ取得時に取得された第1の検出強度分布E1が記憶部320に記憶される。それにより、第1の測定動作時に、標準光源1Sを用いて第1の検出強度分布E1の検出を行う必要がない。したがって、第1の測定動作に要する時間および手間が削減される。
【0062】
また、標準光源1Sとして白色光源が用いられるので、照射光源1として種々の波長または波長範囲の光を発生する光源を用いることができる。それにより、種々の照射光源1の各波長での照射フォトン数を正確に算出することができる。したがって、所望の波長の光を用いて試料Sによる吸収フォトン数を正確に算出することができる。
【0063】
(5)他の実施の形態
上記実施の形態では、試料セル3の位置が試料位置に相当するが、試料位置は試料セル3の位置に限らず、試料Sが保持または支持される他の試料保持部または試料支持部の位置であってもよい。
【0064】
光反応評価装置100のデータ処理部30は、パーソナルコンピュータにより構成されてもよく、スマートフォン等の携帯電子端末により構成されてもよく、ネットワークに接続されたサーバ等により構成されてもよい。
【0065】
(6)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0066】
(第1項) 一態様に係る光反応評価装置は、試料位置に配置された試料の光反応を評価する光反応評価装置であって、
前記試料位置に光を照射光として照射可能に配置されるとともに、白色光を発生する標準光源に交換可能に設けられた照射光源と、
前記照射光源に取り付けられ、前記試料位置の面に均一な強度の光を照射可能とする均一照射レンズと、
前記試料位置に光を照射可能に配置された測定光源、および前記試料位置からの光の強度分布を検出するように配置された検出部を含む分光光度計と、
試料が存在しない前記試料位置に前記標準光源により光が照射されかつ前記試料位置に前記測定光源により光が照射されない状態で前記検出部により検出された光の強度分布を第1の検出強度分布として取得し、第1の測定動作時に、試料が存在しない前記試料位置に前記照射光源により光が照射光として照射されかつ前記試料位置に前記測定光源により光が照射されない状態で前記検出部により検出された光の強度分布を第2の検出強度分布として取得する強度分布取得部と、
前記強度分布取得部により取得された第1の検出強度分布、前記強度分布取得部により取得された第2の検出強度分布および前記標準光源の放射特性に基づいて、前記照射光源の照射光の各波長での放射強度を算出する放射強度算出部と、
前記放射強度算出部により算出された各波長での放射強度に基づいて前記照射光源の照射光の各波長でのフォトン数を照射フォトン数として算出する照射フォトン数算出部とを備え、
前記測定光源は、前記照射光源により光を照射する前記試料位置の面の背面側に配置され、
前記検出部は、前記照射光源により光を照射する前記試料位置の面の正面側に配置されてもよい。
【0067】
第1項に記載の光反応評価装置によれば、標準光源を用いて得られた第1の検出強度分布が取得される。標準光源の放射特性は既知である。第1の測定動作時には、試料位置に照射光源により光が照射された状態で検出部により検出された光の強度分布が第2の検出強度分布として取得される。さらに、取得された第1の検出強度分布、取得された第2の検出強度分布および標準光源の放射特性に基づいて、照射光源の照射光の各波長での放射強度が算出される。また、算出された各波長での放射強度に基づいて照射光源の照射フォトン数が算出される。
【0068】
この場合、白色光を発生する標準光源を用いて得られた第1の検出強度分布は広い波長範囲における各波長での検出強度を含み、標準光源の放射特性は広い波長範囲における各波長での放射強度を含む。そのため、第1の測定動作時に、照射光源の照射光の波長範囲における各波長での放射強度を正確に算出することができる。それにより、照射光源の照射光の波長範囲における各波長での照射フォトン数を正確に算出することができる。
【0069】
その結果、特定波長を有する光を発生する照射光源を用いた場合だけでなく広い波長範囲を有する光を発生する照射光源を用いた場合にも波長に依存する照射フォトン数の分布を正確に算出することが可能である。
【0070】
また、第1項に記載の光反応評価装置は、測定光源が、照射光源により光を照射する試料位置の面の背面側に配置され、検出部が、照射光源により光を照射する試料位置の面の正面側に配置されることで、試料セル3にセットする試料Sがフィルム試料またはフィルム形状の試料であってもフォトン数を測定することができる。
【0071】
(第2項) 第1項に記載の光反応評価装置は、
前記測定光源と前記検出部とは、前記試料位置を挟んで対向する位置に配置されてもよい。
【0072】
第2項に記載の光反応評価装置によれば、測定光源からの光が試料を通過して検出部に入るのでフォトン数を測定する精度が向上する。
【0073】
(第3項) 第2項に記載の光反応評価装置は、
前記照射光源が光を照射する方向と、前記測定光源が光を照射する方向との角度差が所定の範囲内であってもよい。
【0074】
第3項に記載の光反応評価装置によれば、測定光源からの光に対して照射光源からの光が影響を与え難くなる。
【0075】
(第4項) 第2項に記載の光反応評価装置は、
前記照射光源が光を照射する方向と、前記測定光源が光を照射する方向とが平行であってもよい。
【0076】
第4項に記載の光反応評価装置によれば、測定光源からの光に対して照射光源からの光が影響を与え難くい。
【0077】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に記載の光反応評価装置は、
第2の測定動作時に、前記試料位置の試料に前記測定光源により光が照射されかつ前記試料位置の試料に前記照射光源により光が照射された状態で前記検出部により検出された光の強度分布を吸光度スペクトルとして取得する吸光度スペクトル取得部と、
前記第2の測定動作時に、前記照射フォトン数算出部により算出された照射フォトン数および前記吸光度スペクトル取得部により取得された吸光度スペクトルに基づいて、試料により各波長で吸収されたフォトンの数を吸収フォトン数として算出する吸収フォトン数算出部とをさらに備えてもよい。
【0078】
第5項に記載の光反応評価装置によれば、第2の測定動作時に、照射光源により試料位置の試料に光が照射される状態で分光光度計により検出された光の強度分布が吸光度スペクトルとして取得される。照射フォトン数および吸光度スペクトルに基づいて、吸収フォトン数が算出される。この場合、第1の測定動作時に、照射光源の照射光の波長範囲における各波長での照射フォトン数が正確に算出されている。したがって、照射光源の照射光の波長範囲における各波長での吸収フォトン数を正確に算出することができる。
【0079】
(第6項) 第5項に記載の光反応評価装置は、
前記第1の測定動作時および前記第2の測定動作時より前に、前記強度分布取得部により取得された第1の検出強度分布を記憶する記憶部をさらに備えてもよく、前記強度分布取得部は、前記第1の測定動作時に、前記記憶部に記憶された第1の検出強度分布を取得してもよい。
【0080】
第6項に記載の光反応評価装置によれば、第1の測定動作時および第2の測定動作時より前に取得された第1の検出強度分布が記憶部に記憶される。それにより、第1の測定動作時に、標準光源を用いた第1の検出強度分布の検出を行う必要がない。したがって、第1の測定動作に要する時間および手間が削減される。
【0081】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に記載の光反応評価装置において、
前記照射光源として、白色光、単色光または一定波長範囲の光を発生する光源が選択的に設けられてもよい。
【0082】
第7項に記載の光反応評価装置によれば、照射光源として種々の波長または波長範囲の光を発生する光源を用いることができる。それにより、所望の波長の光を用いて種々の試料についての光反応を正確に評価することができる。
【0083】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1…照射光源、1S…標準光源、2…分光光度計、3,3A…試料セル、10,10A…測定部、21…測定光源、22…検出部、30…データ処理部、31…CPU、32…RAM、33…ROM、34…入出力I/F、35…記憶装置、36…バス、40…操作部、50…表示部、100,100A…光反応評価装置、310…強度分布取得部、320…記憶部、330…放射強度算出部、340…照射フォトン数算出部、350…動作制御部、360…吸光度スペクトル取得部、370…吸収フォトン数算出部、380…表示制御部、E1,E2…検出強度分布、S,SA…試料。