(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】粒度推定方法及び粒度推定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20240101AFI20250226BHJP
【FI】
G01N15/02 D
(21)【出願番号】P 2023538862
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2023001226
(87)【国際公開番号】W WO2023140260
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2022007397
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓陽
(72)【発明者】
【氏名】山平 尚史
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-013108(JP,A)
【文献】特開昭50-075070(JP,A)
【文献】特開平03-186362(JP,A)
【文献】特開平05-018884(JP,A)
【文献】特開昭62-280634(JP,A)
【文献】特開2019-135320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103411858(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111474091(CN,A)
【文献】小田晃 他,礫の接触時間を利用した粒度分布の推定法,平成18年度 砂防学会研究発表会概要集,日本,2006年05月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前サンプルモードにおいて、
音響センサが集音する音響を、複数の周波数帯に分離し、
前記複数の周波数帯を環境音の周波数帯として記憶部に格納し、
粒度推定モードにおいて、
複数の粒子を所定の設備に衝突させ、
前記粒子の前記所定の設備への衝突音を
前記音響センサに集音させ、
前記音響センサが集音した音響に基づいて、前記粒子の粒度に関する推定を行い、
前記粒子の粒度に関する推定は、前記音響センサが集音した音響から、前記粒子の衝突音を抽出することを含み、
前記粒子の衝突音は、前記音響センサが集音した音響
を分離した複数の周波数帯の中から、
前記環境
音の周波数帯の音響
でキャンセルすることにより、抽出され
、
前記粒子の粒度に関する推定は、
分離した前記複数の周波数帯の中の第2の帯域の衝突音の音圧の最大値に対する、該第2の帯域より大きな第3の帯域の衝突音の音圧の最大値の比が第2の閾値を超える場合、前記複数の粒子には該第2の帯域及び該第3の帯域に対応する第2の粒径以下の粒子のみが含まれていることの推定を含む
粒度推定方法。
【請求項2】
前記粒子の粒度に関する推定は、
前記音響センサが集音した音響を、複数の周波数帯に分離することと、
分離した前記複数の周波数帯のそれぞれで、前記複数の周波数帯に分離した環境音をキャンセルした衝突音に基づいて、前記粒子の粒度に関する推定を行うことと、を含む
請求項1に記載の粒度推定方法。
【請求項3】
前記粒子の粒度に関する推定は、
分離した前記複数の周波数帯の中の第1の帯域の音圧が第1の閾値を超える場合、前記複数の粒子には該第1の帯域に対応する第1の粒径以上の粒子が含まれていることの推定を含む
請求項2に記載の粒度推定方法。
【請求項4】
前記音響センサが集音した音響は、20kHz以下の可聴領域帯である
請求項1から3のいずれか1項に記載の粒度推定方法。
【請求項5】
前記複数の粒子は5mm以上の石炭を含む
請求項1から3のいずれか1項に記載の粒度推定方法。
【請求項6】
測定対象の粒子を扱う所定の設備近傍に位置し、該所定の設備に複数の前記粒子を衝突させる時の衝突音を集音する音響センサと、情報処理部と、を備え
、
前記情報処理部は、
事前サンプルモードにおいて、
音響センサが集音する音響を複数の周波数帯に分離し、記複数の周波数帯を環境音の周波数帯として記憶部に格納し、
粒度推定モードにおいて、前記音響センサが集音した音響から、環境音に相当する音響を複数の周波数帯の音響に分離し、キャンセルすることにより前記粒子の衝突音を抽出し、該衝突音に基づいて、前記粒子の粒度に関する推定を行い、分離した前記複数の周波数帯の中の第2の帯域の衝突音の音圧の最大値に対する、該第2の帯域より大きな第3の帯域の衝突音の音圧の最大値の比が第2の閾値を超える場合、前記複数の粒子には該第2の帯域及び該第3の帯域に対応尾する第2の粒径以下の粒子のみが含まれていると推定する
粒度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2022年1月10日に日本国に特許出願された特願2022-007397の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体をここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、粒度推定方法及び粒度推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
製鉄工程において、高炉内のコークスは、炉内の通気性を確保するために高強度且つ均一であることが要求される。均一な高強度のコークスの製造には、石炭をコークス炉で加熱し乾留させる際に粒子に強固な接触が生じるように、コークス炉に装入する石炭の嵩密度を上げるように、理想的な粒度の割合に石炭粒度が調整される。
【0004】
粒径の大きい粗粒は、加熱処理時に隣接する石炭との収縮率の差により接触界面にひび割れが生じ易く、コークス強度が低下する。一方、粒径が小さい細粒は、コークス炉に装入時大気中に舞い易く、嵩密度を低下させる。従って、コークス製造用の粉砕後の石炭の粒度は、高強度で均一であるコークスを製造するために、目標とする粒度範囲に入るように、粉砕条件を調節する必要がある。更に、粉砕条件は粉砕前の粒度、粉砕後の粒度等の石炭性状をもとに変えられるが、粉砕の前後における石炭の粒度を測定することは重要である。
【0005】
従来、石炭の粒度の測定では、カメラを用いて石炭を撮像した2次元画像において石炭の像を識別し、識別した各石炭の粒径を算出することにより粒度分布を算出することが提案されている(特許文献1参照)。又、石炭にレーザを照射し、散乱したレーザ光の角度から粒径を演算する粒度測定方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-016983号公報
【文献】特開2012-173241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で提案された粒度分布算出方法では、画像の奥行き方向、言換えると高さ方向の情報を含まないため、2つ以上の粒子が積層していた場合、下層の粒子を識別できない。そのため、正確な粒度の測定が困難である。また、特許文献2で提案された粒度測定方法では、石炭に照射したレーザの回折角度から粒度を算出するので、粒径が大きくなるほど回折角度が大きくなる。そのため、粉砕前石炭のような粒径の大きい粒子の測定が困難である。
【0008】
従って、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、粒度の推定を正確に行う粒度推定方法及び粒度推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による粒度推定方法では、
複数の粒子を所定の設備に衝突させ、
前記粒子の前記所定の設備への衝突音を音響センサに集音させ、
前記音響センサが集音した音響に基づいて、前記粒子の粒度に関する推定を行う。
【0010】
また、第2の観点による粒度推定装置は、
測定対象の粒子を扱う所定の設備近傍に位置し、該所定の設備に複数の前記粒子を含む粒子を衝突させる時の衝突音を集音する音響センサと、
前記音響センサが集音した音響に基づいて、前記粒子の粒度に関する推定を行う情報処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された本開示に係る粒度推定方法及び粒度推定装置によれば、粒子の粒度に関する正確な推定が行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る粒度推定装置の所定の設備に対する配置図である。
【
図2】
図1の情報処理部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2の制御部が実行する事前サンプリング処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図2の制御部が実行する粒度推定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】粒径が31.5~45mmの石炭、16~31.5mmの石炭、及び16~45mmの石炭をホッパーに衝突させた際のそれぞれの音響における0.5kHz帯の音圧の時間変化を示す第1のグラフ、第2のグラフ、及び第3のグラフである。
【
図6】粒径が9~16mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における0.5kHz帯及び14kHz帯それぞれの音圧の時間変化を示す第4のグラフ及び第5のグラフである。
【
図7】粒径が31.5~45mmの石炭及び16~31.5mmの石炭をホッパーに衝突させた際のそれぞれの音響における14kHz帯の音圧の時間変化を示す第6のグラフ及び第7のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係る粒度推定装置10の概略図である。粒度推定装置10は、測定対象の複数の粒子13の集合体を扱う所定の設備11に設けられる。複数の粒子は、例えば、5mm以上の石炭を含む。所定の設備11は、粒子13と衝突を生じさせる設備である。所定の設備11は、例えば、貯留用のホッパーである。所定の設備11には、コンベア12により搬送される複数の粒子13が鉛直上方から投入され、所定の設備11の側面に衝突する。粒度推定装置10は、所定の設備11と複数の粒子13との衝突音に基づいて、複数の粒子13の粒度に関する推定を行う。
【0015】
粒度推定装置10は、音響センサ14及び情報処理部15を含んで構成される。
【0016】
音響センサ14は、所定の設備近傍に位置する。音響センサ14は、例えば、マイクロホンである。音響センサ14は、所定の設備11に複数の粒子13を衝突させる時の衝突音を集音する。より具体的には、音響センサ14は、衝突音を含む音響を集音する。音響センサ14は、20kHz以下の可聴領域帯の音響を集音することが想定され、当該音響を検出可能なセンサが選択されてよい。
【0017】
情報処理部15は、サーバ装置又はパーソナルコンピュータであってよい。情報処理部15は、音響センサ14が集音した音響に基づいて、粒子の粒度に関する推定を行う。
図2に示すように、情報処理部15は、例えば、インタフェース16、入力部17、出力部18、記憶部19、及び制御部20を含む。
【0018】
インタフェース16は、外部機器と情報を通信する。インタフェース16は、例えば、音響センサ14が集音する音響を、信号として取得する。インタフェース16は、音響センサ14以外の外部機器と情報を送受信してよい。
【0019】
入力部17は、ユーザ入力を検出する1つ以上のインタフェースを含む。例えば、入力部17は、物理キー、静電容量キー、出力部18のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、音声入力を受け付けるマイク、または被写体を撮像するカメラなどであるが、これらに限られない。
【0020】
出力部18は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上のインタフェースを含む。例えば、出力部18は、情報を映像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限られない。
【0021】
記憶部19は、半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られない。記憶部19は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、またはキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部19は、情報処理部15の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部19は、例えば、システムプログラム、アプリケーションプログラムなどを記憶してもよい。記憶部19は、後述するように、所定の設備11の環境音に相当する音響を記憶してよい。所定の設備11の環境音は、複数の粒子13の所定の設備11への衝突に際した衝突音を除いた、所定の設備11への複数の粒子13の投入時に生じる周囲の音である。
【0022】
制御部20は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。制御部20は、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御部20は、情報処理部15の各部位の制御を行う。
【0023】
制御部20は、事前サンプルモード及び粒度推定モードを運転モードとして有してよい。事前サンプルモードにおいて、制御部20は、所定の設備11の環境音を採取してよい。粒度推定モードにおいて、制御部20は、粒度に関する推定を行ってよい。事前サンプルモード及び粒度推定モードの切替えは、入力部17への操作入力に基づいてよい。
【0024】
事前サンプルモードにおいて、粒度推定装置10のユーザには、粒度の推定の実行前に、粒子13を衝突させない状態で、所定の設備11の環境音の採取を行うことが指示されている。例えば、ユーザは、何も載置させない状態でコンベア12を稼働させた状態で、音響センサ14に音響を集音させる操作入力を入力部17に入力するように指示されている。
【0025】
事前サンプルモードにおいて、制御部20は、音響センサ14が集音する音響を環境音として認定して、記憶部19に格納してよい。更には、制御部20は、当該音響を、FFT解析により複数の周波数帯に分離してよい。制御部20は、分離した周波数帯それぞれにおいて閾値以上の音圧のある周波数帯を環境音の周波数帯として記憶部19に格納してよい。
【0026】
粒度推定モードにおいて、粒度推定装置10のユーザには、粒子13が所定の設備11に衝突中に、音響センサ14に集音させることが指示されている。粒度推定モードにおいて、制御部20は、以下に説明するように、音響センサ14が集音する音響に基づいて、粒子の粒度に関する推定を行う。
【0027】
制御部20は、推定のために、音響センサ14が集音した音響から、粒子の衝突音を抽出してよい。制御部20は、粒度推定モードにおいて集音した音響から、記憶部19に記憶された所定の設備11の環境音に相当する音響をキャンセルすることにより抽出してよい。
【0028】
より具体的には、制御部20は、粒度推定モードにおいて、集音した音響を、例えばFFT解析することにより、複数の周波数帯に分離してよい。制御部20は、分離した複数の周波数帯の中で、例えば事前サンプリングモードに集音した環境音を複数の周波数帯に分離した音響でキャンセルして抽出しても良いし、音の周波数帯を除く他の周波数帯を粒子の衝突音として抽出してもよい。
【0029】
制御部20は、集音した音響を複数の周波数帯に分離して、当該複数の周波数帯の衝突音に基づいて、粒子の粒度に関する推定を行ってよい。制御部20は、上述のように、抽出した粒子の衝突音、言換えると、環境音を除く、複数の周波数帯のそれぞれの衝突音に基づいて、粒子の粒度に関する推定を行ってよい。
【0030】
制御部20は、例えば、分離した複数の周波数帯の中の第1の帯域の音圧が第1の閾値を超えるか否かを判別してよい。制御部20は、第1の帯域の音圧が第1の閾値を超える場合、第1の帯域に対応する第1の粒径以上の粒子13が複数の粒子に含まれていると推定してよい。
【0031】
第1の粒径は、任意に定められてよい。第1の粒径は、例えば、所定の設備11において所望の粒度範囲の上限値であってよい。第1の粒径は、例えば、31.5mmである。定められた第1の粒径を測定対象の粒子13が超えるか否かによって音圧の変化が明確となる周波数帯域が第1の帯域に定められてよい。第1の粒径が31.5mmである構成においては、第1の帯域は0.5kHz帯である。又、第1の閾値は、0.05m/s2である。0.5kHz帯とは、例えば、0.5kHzを中心とする所定の幅の帯域である。所定の幅は、ゼロ、言換えると0.5kHzそのものであってよく、幅を有してよい。
【0032】
又、制御部20は、例えば、分離した複数の周波数帯の中の第2の帯域の衝突音の音圧の最大値に対する第3の帯域の衝突音の音圧の最大値の比を算出してよい。第3の帯域は第2の帯域より大きな周波数範囲である。制御部20は、当該比が第2の閾値を超えるか否かを判別してよい。制御部20は、当該比が第2の閾値を超える場合、複数の粒子には第2の帯域及び第3の帯域に対応する第2の粒径以下の粒子13のみが含まれていると推定してよい。
【0033】
第2の粒径は任意に定められてよい。第2の粒径は、例えば、所定の設備11において所望の粒度範囲の下限値であってよい。第2の粒径は、例えば、16mmである。定められた第2の粒径を測定対象の粒子13が超えるか否かによって音圧の比の変化が明確となる周波数帯域が第2の帯域及び第3の帯域に定められてよい。第2の帯域は第1の帯域と同じであってよく、異なっていてよい。第2の粒径が16mmである構成においては、第2の帯域及び第3の帯域はそれぞれ0.5kHz帯及び14kHz帯である。又、第2の閾値は3である。14kHz帯とは、例えば、14kHzを中心とする所定の幅の帯域である。所定の幅は、ゼロ、言換えると0.5kHzそのものであってよく、幅を有してよい。
【0034】
制御部20は、粒子の粒度に関する推定後に、推定結果を出力部18に出力させてよい。又は、制御部20は、推定される粒度に基づいて粒子13に対して所定の処理を行う外部機器に推定結果を付与してよい。
【0035】
次に、本実施形態において制御部20が実行する事前サンプリング処理について、
図3のフローチャートを用いて説明する。事前サンプリング処理は、制御部20の動作モードが事前サンプリングモードに切り替えられる場合、開始する。
【0036】
ステップS100において、制御部20は、音響センサ14の集音を開始させる操作入力を入力部17が検出するか否かを判別する。検出しない場合、プロセスはステップS100に戻る。検出する場合、プロセスはステップS101に進む。
【0037】
ステップS101では、制御部20は、音響の取得を開始する。制御部20は、取得する音響を、例えば、記憶部19に格納開始する。取得開始後、プロセスはステップS102に進む。
【0038】
ステップS102では、制御部20は、音響センサ14の集音を終了する操作入力を入力部17が検出するか否かを判別する。検出しない場合、プロセスはステップS102を繰返す。検出する場合、プロセスはステップS103に進む。
【0039】
ステップS103では、制御部20は、音響の取得を停止する。停止後、プロセスはステップS104に進む。
【0040】
ステップS104では、制御部20は、ステップS101からステップS103までの間に取得した音響をFFT解析により、複数の周波数帯に分離する。分離後、プロセスはステップS105に進む。
【0041】
ステップS105では、制御部20は、ステップS104において分離した複数の周波数帯の中で、閾値以上の音圧を振幅として含む周波数帯を環境音の周波数帯として認定する。認定後、プロセスはステップS106に進む。
【0042】
ステップS106では、制御部20は、ステップS105において環境音の周波数帯域と認定した周波数帯域を記憶部19に格納する。格納後、事前サンプリング処理は終了する。
【0043】
次に、本実施形態において制御部20が実行する粒度推定処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。粒度推定処理は、制御部20の動作モードが粒度推定モードに切り替えられる場合、開始する。
【0044】
ステップS200において、制御部20は、音響センサ14の集音を開始させる操作入力を入力部17が検出するか否かを判別する。検出しない場合、プロセスはステップS200に戻る。検出する場合、プロセスはステップS201に進む。
【0045】
ステップS201では、制御部20は、音響の取得を開始する。制御部20は、取得する音響を、例えば、記憶部19に格納開始する。取得開始後、プロセスはステップS202に進む。
【0046】
ステップS202では、制御部20は、ステップS201において取得を開始した音響をFFT解析により、複数の周波数帯に分離する。分離後、プロセスはステップS203に進む。
【0047】
ステップS203では、制御部20は、ステップS202において分離した周波数帯域の中で、記憶部19に記憶した環境音の周波数帯域をキャンセルする。キャンセル後、プロセスはステップS204に進む。
【0048】
ステップS204では、制御部20は、ステップS203において環境音をキャンセルした複数の周波数帯域の音響に基づいて、粒子の粒度に関する推定を行う。更に、制御部20は、推定結果を出力部18に出力させる。又は、制御部20は、推定結果を外部機器に付与する。粒度に関する推定後、粒度推定処理は終了する。
【0049】
以上のような構成の本実施形態の粒度推定装置10は、所定の設備11近傍に位置し且つ所定の設備11に複数の粒子13を衝突させる時の衝突音を集音する音響センサ14と、音響センサ14が集音した音響に基づいて、粒子の粒度に関する推定を行う。粒子の衝突音に関して、粒子の粒度が小さくなるにつれて周波数帯が高くなり、音圧は小さくなることが知られている。それゆえ、上述のような構成により、粒度推定装置10は、粒子の粒度を正確に推定し得る。
【0050】
また、本実施形態の粒度推定装置10では、音響センサ14が集音した音響から粒子の衝突音を抽出する。このような構成により、粒度推定装置10は、粒度の推定に寄与しない音を含む音響から粒子の衝突音を抽出するので、粒度の推定精度を向上させ得る。
【0051】
また、本実施形態の粒度推定装置10では、音響センサ14が集音した音響を複数の周波数帯に分離し、分離した複数の周波数帯のそれぞれ衝突音に基づいて粒子の粒度に関する推定を行う。粒子の粒度により周波数帯別の音圧に相違があるので、上述のような構成により、粒度推定装置10は、多様な粒度に対応する推定を行い得る。
【0052】
また、本実施形態の粒度推定装置10は、分離した複数の周波数帯の中の第1の帯域の音圧が第1の閾値を超える場合、複数の粒子には当該第1の帯域に対応する第1の粒径以上の粒子13が含まれていることの推定を行う。具体的に、粒径が31.5mmの前後における0.5kHz帯の音圧の実測値を用いて、上記の構成による効果を説明する。
図5に示すように、粒径が31.5~45mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における0.5kHz帯の音圧の時間変化の第1のグラフ21において、音圧のピーク値は0.05を超えていた。又、粒径が16~31.5mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における0.5kHz帯の音圧の時間変化の第2のグラフ22において、音圧のピーク値は0.05を超えることが無かった。又、粒径が16~45mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における0.5kHz帯の音圧の時間変化の第3のグラフ23において、音圧のピーク値は0.05を超えていた。このような実測値に基づけば、0.5kHzの帯域の音圧が0.05を超える場合、測定対象の石炭の粒径が31.5mmを超えていると推定可能である。したがって、上述のような構成を有する粒度推定装置10は、第1の帯域及び第1の閾値を所定の設備11に対する実測値に応じて設定することにより、複数の粒子に第1の粒径以上の粒子13が含まれていることを高い精度で推定し得る。
【0053】
また、本実施形態の粒度推定装置10は、分離した複数の周波数帯の中の第2の帯域の衝突音の音圧の最大値に対する、当該第2の帯域より大きな第3の帯域の衝突音の音圧の最大値の比が第2の閾値を超える場合、複数の粒子には当該第2の帯域及び当該第3の帯域に対応する第2の粒径以下の粒子13のみが含まれていることを推定する。具体的に、粒径が16mmの前後における0.5kHz帯及び14kHz帯の音圧の実測値を用いて、上記の構成による効果を説明する。
図6に示すように、粒径が9~16mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における0.5kHz帯の音圧の時間変化の第4のグラフ24において、音圧のピーク値は0.02程度であった。又、粒径が9~16mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における14kHz帯の音圧の時間変化の第5のグラフ25において、音圧のピーク値は0.1近くであった。
図7に示すように、粒径が31.5~45mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における14kHz帯の音圧の時間変化の第6のグラフ26において、音圧のピーク値は0.05程度であった。又、粒径が16~31.5mmの石炭をホッパーに衝突させた際の音響における14kHz帯の音圧の時間変化の第7のグラフ27において、音圧のピーク値は0.05程度であった。第1のグラフ21から第7のグラフ27から認識されるように、低周波数帯域に対する高周波数帯域の音圧のピークの比は、粒度が小さくなるほど大きくなることが分かる。したがって、上述のような構成を有する粒度推定装置10は、第2の帯域、第3の帯域、及び第2の閾値を所定の設備11に対する実測値に応じて設定することにより、複数の粒子に第2の粒径以下の粒子13のみが含まれていることを高い精度で推定し得る。
【0054】
以上、粒度推定装置10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0055】
また、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0056】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0057】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0058】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。また、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0059】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0060】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の帯域は、第2の帯域と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0061】
10 粒度推定装置
11 ホッパー
12 コンベア
13 複数の粒子
14 音響センサ
15 情報処理部
16 インタフェース
17 入力部
18 出力部
19 記憶部
20 制御部
21 第1のグラフ
22 第2のグラフ
23 第3のグラフ
24 第4のグラフ
25 第5のグラフ
26 第6のグラフ
27 第7のグラフ