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特許7640003量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/34 20060101AFI20250226BHJP
   H01S 5/12 20210101ALI20250226BHJP
   H01S 5/227 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01S5/34
H01S5/12
H01S5/227
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2024558251
(86)(22)【出願日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2024025976
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 君男
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-107253(JP,A)
【文献】米国特許第09742151(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に積層したカスケードレーザ領域および第1差周波導波路と、
第1グレーティング結合領域と、
を備え、
前記カスケードレーザ領域は、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に設けられた複数のステージと、前記複数のステージの上に設けられた第2クラッド層と、を有し、
前記複数のステージの各々は、活性領域と、前記活性領域にキャリアを注入するように構成されたインジェクタ領域と、を有し、
前記活性領域と前記インジェクタ領域の各々は、交互に設けられたバリア層とウエル層を有し、
前記第1差周波導波路は、第3クラッド層と、前記第3クラッド層の上に設けられた第1コア層と、前記第1コア層の上に設けられた第4クラッド層と、を有し、
前記第1グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記第1差周波導波路の導波モードに結合させるように構成されていることを特徴とする量子カスケードレーザ装置。
【請求項2】
前記第1差周波導波路の出射端面は、前記半導体基板の上面に対して垂直であることを特徴とする請求項1に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項3】
前記カスケードレーザ領域は、第1周波数の第1基本波と第2周波数の第2基本波で発振が生じるように構成され、
前記第1差周波導波路は、前記第1周波数と前記第2周波数の差周波数に対応する前記導波モードを有し、
前記第1グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記第1差周波導波路の前記導波モードに結合させるように構成された回折格子を有することを特徴とする請求項1または2に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項4】
前記半導体基板の上に前記カスケードレーザ領域が設けられ、
前記カスケードレーザ領域の上に前記第1差周波導波路が設けられることを特徴とする請求項3に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項5】
前記カスケードレーザ領域から、共振方向と角度θcpおよび角度-θcmをなす方向に前記光が放射され、
角度θcpおよび角度-θcmはそれぞれ
【数1】

および
【数2】

を満たし、
前記第1グレーティング結合領域の回折格子の周期Λは、
【数3】

を満たし、
β は、前記第1基本波に対する前記カスケードレーザ領域の伝搬定数であり、
β は、前記第2基本波に対する前記カスケードレーザ領域の伝搬定数であり、
βは、前記第1基本波と前記第2基本波の差周波に対する前記第1差周波導波路の伝搬定数であり、
λは、前記差周波の波長であり、
c1Q は、前記第1クラッド層の波長λにおける屈折率であり、
c2Q は、前記第2クラッド層の波長λにおける屈折率であり、
c1T は、前記第3クラッド層の波長λにおける屈折率であり、
mはゼロを除く整数であることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項6】
前記第1グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域と前記第1差周波導波路の間に設けられることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項7】
前記第1グレーティング結合領域は、前記第3クラッド層の内部に設けられ、前記カスケードレーザ領域と離れていることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項8】
前記第1グレーティング結合領域は、前記第3クラッド層と前記第1コア層の界面に設けられることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項9】
前記第1コア層の両側を覆う電流ブロック層を備えることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項10】
前記カスケードレーザ領域の両側を覆う電流ブロック層を備え、
前記第1コア層は前記電流ブロック層から露出していることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項11】
前記半導体基板の上に前記第1差周波導波路が設けられ、
前記第1差周波導波路の上に前記カスケードレーザ領域が設けられることを特徴とする請求項3に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項12】
前記カスケードレーザ領域から、共振方向と角度θcpおよび角度-θcmをなす方向に光が放射され、
角度θcpおよび角度-θcmはそれぞれ
【数4】

および
【数5】

を満たし、
前記第1グレーティング結合領域の回折格子の周期Λは、
【数6】
を満たし、
β は、前記第1基本波に対する前記カスケードレーザ領域の伝搬定数であり、
β は、前記第2基本波に対する前記カスケードレーザ領域の伝搬定数であり、
βは、前記第1基本波と前記第2基本波の差周波に対する前記第1差周波導波路の伝搬定数であり、
λは、前記第1基本波と前記第2基本波の差周波の波長であり、
c1Q は、前記第1クラッド層の波長λにおける屈折率であり、
c2Q は、前記第2クラッド層の波長λにおける屈折率であり、
c2T は、前記第4クラッド層の波長λにおける屈折率であり、
mはゼロを除く整数であることを特徴とする請求項11に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項13】
前記第1グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域と前記第1差周波導波路の間に設けられることを特徴とする請求項11に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項14】
前記第1グレーティング結合領域は、前記第4クラッド層の内部に設けられ、前記カスケードレーザ領域と離れていることを特徴とする請求項11に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項15】
前記第1グレーティング結合領域は、前記第4クラッド層と前記第1コア層の界面に設けられることを特徴とする請求項11に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項16】
前記第1コア層の両側を覆う電流ブロック層を備えることを特徴とする請求項11に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項17】
前記カスケードレーザ領域の両側を覆う電流ブロック層を備え、
前記第1コア層は前記電流ブロック層から露出していることを特徴とする請求項11に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項18】
前記量子カスケードレーザ装置の出射端面と反対側の後端面を覆う第1高反射膜を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項19】
前記量子カスケードレーザ装置の出射端面のうち前記第1差周波導波路に対応する部分を露出させ、前記カスケードレーザ領域に対応する部分を覆う第2高反射膜を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項20】
前記カスケードレーザ領域は、前記第1基本波に対応する回折格子と前記第2基本波に対応する回折格子を有し、
前記第1基本波に対応する回折格子と前記第2基本波に対応する回折格子は、前記半導体基板の上面に垂直な方向にずれた位置に設けられることを特徴とする請求項3に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項21】
前記カスケードレーザ領域は、前記第1基本波に対応する回折格子と前記第2基本波に対応する回折格子を有し、
前記第1基本波に対応する回折格子と前記第2基本波に対応する回折格子は、前記カスケードレーザ領域のうち前記複数のステージの上に設けられることを特徴とする請求項3に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項22】
前記カスケードレーザ領域は、前記第1基本波に対応する回折格子と前記第2基本波に対応する回折格子を有し、
前記第1基本波に対応する回折格子と前記第2基本波に対応する回折格子は、前記カスケードレーザ領域のうち前記複数のステージの下に設けられることを特徴とする請求項3に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項23】
前記半導体基板と前記カスケードレーザ領域の間に設けられた第2差周波導波路と、
第2グレーティング結合領域と、
を備え、
前記第2差周波導波路は、第5クラッド層と、前記第5クラッド層の上に設けられた第2コア層と、前記第2コア層の上に設けられた第6クラッド層と、を有し、
前記第2グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記第2差周波導波路の導波モードに結合させるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項24】
前記カスケードレーザ領域は、前記第2クラッド層の上に設けられたコンタクト層を有し、
前記第1差周波導波路は、前記コンタクト層の上に設けられ、
前記量子カスケードレーザ装置の上面電極は前記第1差周波導波路を避けて前記コンタクト層の上に設けられることを特徴とする請求項4に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項25】
前記第3クラッド層、前記第1コア層、前記第4クラッド層および前記第1グレーティング結合領域はアンドープであることを特徴とする請求項24に記載の量子カスケードレーザ装置。
【請求項26】
半導体基板の上に、カスケードレーザ領域および差周波導波路を積層し、
前記カスケードレーザ領域と前記差周波導波路の間、または前記差周波導波路の内部にグレーティング結合領域を形成し、
前記カスケードレーザ領域は、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に設けられた複数のステージと、前記複数のステージの上に設けられた第2クラッド層と、を有し、
前記複数のステージの各々は、活性領域と、前記活性領域にキャリアを注入するように構成されたインジェクタ領域と、を有し、
前記活性領域と前記インジェクタ領域の各々は、交互に設けられたバリア層とウエル層を有し、
前記差周波導波路は、第3クラッド層と、前記第3クラッド層の上に設けられた第1コア層と、前記第1コア層の上に設けられた第4クラッド層と、を有し、
前記グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記差周波導波路の導波モードに結合させることを特徴とする量子カスケードレーザ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テラヘルツ非線形量子カスケードレーザ(Terahertz nonliner Quantum Cascade Laser: THz-nonlinear-QCL)装置が開示されている。この量子カスケードレーザは、半導体基板と、半導体基板の第1表面上に形成された光導波路体を備える。光導波路体は、第1領域と、第1領域に対して光導波方向における一方側に位置する第2領域と、を有する。第1領域は第1波長の第1光を生成し、第2領域は第2波長の第2光を生成する。光導波路体は、差周波発生によって第1波長と第2波長との間の差に応じた周波数を有する出力光を生成する。量子カスケードレーザでは、傾斜面から出力光が出射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-153286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような量子カスケードレーザ装置では、InPおよびGaAsといった結晶の非線形光学効果を利用することで、周波数fと周波数fの差の絶対値の差周波fを発生させる。差周波fはテラヘルツ(THz)波であり、チェレンコフ(Cherenkov)放射される。ここで、特許文献1の量子カスケードレーザ装置ではウエハプロセス完了後に基板の斜め加工が必要となる。このため、製造が困難であった。また、THz波の出射方向は基板の斜め研削角度に依存する。このため、精密な加工精度が必要となる。
【0005】
本開示は、容易に製造できる量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る量子カスケードレーザ装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上に積層したカスケードレーザ領域および第1差周波導波路と、第1グレーティング結合領域と、を備え、前記カスケードレーザ領域は、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に設けられた複数のステージと、前記複数のステージの上に設けられた第2クラッド層と、を有し、前記複数のステージの各々は、活性領域と、前記活性領域にキャリアを注入するように構成されたインジェクタ領域と、を有し、前記活性領域と前記インジェクタ領域の各々は、交互に設けられたバリア層とウェル層を有し、前記第1差周波導波路は、第3クラッド層と、前記第3クラッド層の上に設けられた第1コア層と、前記第1コア層の上に設けられた第4クラッド層と、を有し、前記第1グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記第1差周波導波路の導波モードに結合させるように構成されている。
【0007】
本開示に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法は、半導体基板の上に、カスケードレーザ領域および差周波導波路を積層し、前記カスケードレーザ領域と前記差周波導波路の間、または前記差周波導波路の内部にグレーティング結合領域を形成し、前記カスケードレーザ領域は、第1クラッド層と、前記第1クラッド層の上に設けられた複数のステージと、前記複数のステージの上に設けられた第2クラッド層と、を有し、前記複数のステージの各々は、活性領域と、前記活性領域にキャリアを注入するように構成されたインジェクタ領域と、を有し、前記活性領域と前記インジェクタ領域の各々は、交互に設けられたバリア層とウェル層を有し、前記差周波導波路は、第3クラッド層と、前記第3クラッド層の上に設けられた第1コア層と、前記第1コア層の上に設けられた第4クラッド層と、を有し、前記グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記差周波導波路の導波モードに結合させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法では、グレーティング結合領域により、カスケードレーザ領域から半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光が差周波導波路の導波モードに結合する。これにより、差周波導波路から光を出射させることができるため、基板の斜め研削が不要となる。従って、量子カスケードレーザ装置を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図3】実施の形態1に係る1つのステージの伝導帯のバンド構造を示す図である。
図4】実施の形態1に係る1つのステージの量子井戸構造および各エネルギー準位での波動関数の2乗を示す図である。
図5】実施の形態1に係る利得の波長依存性の例を示す図である。
図6】実施の形態1の変形例に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図7A】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7B】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7C】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7D】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7E】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7F】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7G】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図7H】実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図8】実施の形態2に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図9】実施の形態2に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図10】実施の形態3に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図11】実施の形態3に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図12】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図13】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図14A】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14B】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14C】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14D】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14E】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14F】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14G】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図14H】実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図15】実施の形態5に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図16】実施の形態5に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図17】実施の形態6に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図18】実施の形態6に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図19】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図20】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図21A】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21B】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21C】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21D】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21E】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21F】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21G】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図21H】実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図22】実施の形態8に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図23】実施の形態8に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図24】実施の形態9に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図25】実施の形態9に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図26】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図27】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図28A】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28B】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28C】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28D】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28E】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28F】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28G】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図28H】実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図29】実施の形態11に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図30】実施の形態11に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図31】実施の形態12に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図32】実施の形態12に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図33】実施の形態13に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図34】実施の形態13の変形例に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図35】実施の形態14に係る回折格子の配置を説明する図である。
図36】実施の形態15に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図37】実施の形態15に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図38】実施の形態16に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図39】実施の形態16に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図40】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。
図41】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の斜視図である。
図42A】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42B】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42C】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42D】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42E】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42F】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42G】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42H】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42I】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
図42J】実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施の形態に係る量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置100の斜視図である。量子カスケードレーザ装置100は、共振器長がLでリッジ幅がWの埋込リッジ型THz非線形QCL装置である。以降では、後述する第1基本波と第2基本波の差周波をTHz波またはTHz光と呼ぶことがある。また、差周波の波長λをTHz波波長または差周波波長と呼ぶことがある。量子カスケードレーザ装置100は、例えばn型のInPで形成された半導体基板である基板2を備える。基板2の裏面にはn型の電極1が設けられ、基板2の上面にはn型の電極14が設けられる。
【0012】
基板2の上には、層厚が3.5μm、差周波波長λにおける屈折率がnc1Q であり、n型のInPで形成されたクラッド層3が設けられる。クラッド層3の上には層厚が225nmであり、n型のGa0.47In0.53Asで形成されたガイド層5が設けられる。以下では、GaIn1-xAsをGaInAsと略すことがある。さらにクラッド層3の上のガイド層5の両側には、FeがドープされたInPで形成された電流ブロック層4が設けられる。
【0013】
ガイド層5の上には、複数のステージである35ステージ6が設けられる。35ステージ6については後述する。35ステージの上には、層厚が230nmであり、n型GaInAsで形成されたガイド層7が設けられる。ガイド層7の上には、層厚が3.5μm、差周波波長λにおける屈折率がnc2Q であり、n型のInPで形成されたクラッド層8が設けられる。クラッド層8の上には、層厚が1.0μmであり、n型のGaInAsで形成されたグレーティング結合領域9が設けられる。
【0014】
グレーティング結合領域9の上には、層厚がdc1 、差周波波長λにおける屈折率がnc1T であり、n型のInPで形成されたクラッド層10が設けられる。クラッド層10の上には、層厚がd 、差周波波長λにおける屈折率がnaT であり、n型のGaInAsで形成されたコア層11が設けられる。コア層11の上には、層厚がdc2 、差周波波長λにおける屈折率がnc2T であり、n型のInPで形成されたクラッド層12が設けられる。クラッド層12の上には、層厚が300nmであり、n型のGaInAsで形成されたコンタクト層13が設けられる。
【0015】
クラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層7およびクラッド層8を併せてQCL導波路またはカスケードレーザ領域と呼ぶ。また、クラッド層10、コア層11およびクラッド層12を併せてTHz導波路または差周波導波路と呼ぶ。つまり、基板2の上には、カスケードレーザ領域と差周波導波路が積層している。本実施の形態では、基板2の上にカスケードレーザ領域が設けられ、カスケードレーザ領域の上に差周波導波路が設けられる。カスケードレーザ領域は、クラッド層3と、クラッド層3の上に設けられた複数のステージ6と、複数のステージ6の上に設けられたクラッド層8と、を有している。差周波導波路は、クラッド層10と、クラッド層10の上に設けられたコア層11と、コア層11の上に設けられたクラッド層12と、を有している。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置100の断面図である。図2図1をz-z直線で切断して得られる断面を示している。ガイド層7には、長さがL であり、周期がΛ の回折格子15が設けられる。ガイド層7にはさらに、長さがL であり、周期がΛ の回折格子16が設けられる。
【0017】
図2において、波長λ 、周波数f 、伝搬定数β でカスケードレーザ領域を伝搬するQCL導波モード17、および、波長λ 、周波数f 、伝搬定数β でカスケードレーザ領域を伝搬するQCL導波モード18が模式的に示されている。以降では、波長λ のQCL導波モード17を第1基本波、波長λ のQCL導波モード18を第2基本波と呼ぶことがある。つまり、カスケードレーザ領域は、回折格子15、16により、周波数f の第1基本波と周波数f の第2基本波で発振が生じるように構成されている。なお、光速cを用いると波長λ=c/fと表せる。
【0018】
また図2には、カスケードレーザ領域から基板2の上面に対して傾いた方向に放射されたTHz光19、20が示されている。THz光19は、x-z平面からy方向に角度-θcm傾いた方向にチェレンコフ放射され、f -f の絶対値である周波数fを有する。THz光20は、x-z平面からy方向に角度θcp傾いた方向にチェレンコフ放射され、周波数fを有する。以降では、-θcmの絶対値とθcpが同じ場合はそれぞれ-θおよびθと記述することもある。さらに図2には、波長λ、周波数f、伝搬定数βで差周波導波路を伝搬するTHz導波モード21が模式的に示されている。つまり差周波導波路は、周波数f と周波数f の差周波数に対応する導波モードを有している。
【0019】
グレーティング結合領域9は、カスケードレーザ領域と差周波導波路の間に設けられる。グレーティング結合領域9には、長さがLで周期がΛの回折格子22が設けられる。差周波導波路からのTHz導波モード21は、量子カスケードレーザ装置100の前端面である出射端面23からTHz光24として出射される。差周波導波路の出射端面23は、基板2の上面に対して垂直である。基板2のうち出射端面23の反対側には、後端面25が設けられる。
【0020】
図3は、実施の形態1に係る1つのステージ50の伝導帯のバンド構造を示す図である。図3は、一例として電極14から電極1に向けて5.0x10V/mの電界を印加した場合の、35ステージ6のうち1つのステージ50の伝導帯のバンド構造を示している。この構造は、非特許文献1「J. Kim et. al., “Theoretical and experimental study of optical gain and linewidth enhancement factor of type-I quantum-cascade lasers,” IEEE J. Quantum. Electron. , vol. 40, no. 12, pp. 1663-1674, Dec. 2004」に開示されている。
【0021】
複数のステージ6の各々は、活性領域48と、活性領域48にキャリアを注入するように構成されたインジェクタ領域49とを有している。活性領域48とインジェクタ領域49の各々は、交互に設けられたバリア層とウエル層を有する。
【0022】
活性領域48において、バリア層31、ウエル層32、バリア層33、ウエル層34、バリア層35、ウエル層36、バリア層37がこの順で積層している。インジェクタ領域49において、バリア層37、ウエル層38、バリア層39、ウエル層40、バリア層41、ウエル層42、バリア層43、ウエル層44、バリア層45、ウエル層46、バリア層47がこの順で積層している。
【0023】
バリア層31は層厚が2.4nmであり、アンドープのAl0.48In0.52Asで形成される。以降ではAlIn1-xAsをAlInAsと略すことがある。ウエル層32は層厚が6.5nmであり、アンドープのGaInAsで形成される。バリア層33は層厚が0.9nmであり、アンドープのAlInAsで形成される。ウエル層34は層厚が6.6nmであり、アンドープのGaInAsで形成される。バリア層35は層厚が1.5nmであり、アンドープAlInAsで形成される。ウエル層36は層厚が3.2nmであり、アンドープのGaInAsで形成される。
【0024】
バリア層37は層厚が4.0nmであり、アンドープのAlInAsで形成される。ウエル層38は、層厚が4.1nmであり、アンドープのGaInAsで形成される。バリア層39は、層厚が1.7nmであり、アンドープAlInAsで形成される。ウエル層40は、層厚が3.7nmであり、アンドープのGaInAsで形成される。バリア層41は、層厚が1.2nmであり、アンドープのAlInAsで形成される。
【0025】
ウエル層42は、n型にドーピングされ層厚が3.4nmのGaInAsで形成される。バリア層43は、n型にドーピングされ層厚が1.1nmのAlInAsで形成される。ウエル層44は、n型にドーピングされ層厚が3.4nmのGaInAsで形成される。バリア層45は、層厚が1.1nmであり、アンドープのAlInAsで形成される。ウエル層46は、層厚が2.9nmであり、アンドープのGaInAsで形成される。バリア層47は、層厚が2.4nmであり、アンドープのAlInAsで形成される。
【0026】
活性領域48は、電子が活性領域48内に形成されるサブバンド間で遷移することで、発光する領域である。インジェクタ領域49は、活性領域48に電子を注入する領域である。本実施の形態では、活性領域48を構成するウエル数が3の場合を例示している。また本実施の形態のウエル層42、バリア層43およびウエル層44のドーピング量は、一例として2.5x1017cm-3である。本実施の形態では、一例としてステージ50を35個縦に接続して35ステージ6を構成している。
【0027】
図4は、実施の形態1に係る1つのステージ50の量子井戸構造および各エネルギー準位での波動関数の2乗を示す図である。波動関数の2乗は電子の存在確率の多寡を表している。1つのステージ50で許容されるエネルギー準位は10個ある。図4において、主に活性領域48に電子が存在する準位を実線で示し、主にインジェクタ領域49に電子が存在する準位を破線で示している。主に活性領域48に電子が存在する準位は♯1、2、4、7および9の5つであり、主にインジェクタ領域49に電子が存在する準位は♯3、5、6、8および10の5つである。
【0028】
電子密度を計算したところ、主に活性領域48に電子が存在する準位のうち、エネルギー準位♯4の電子密度はエネルギー準位♯2の電子密度よりも高い。つまり、レーザ発振に必要な反転分布ができていることが分かった。
【0029】
図5は、実施の形態1に係る利得の波長依存性の例を示す図である。図5では、共振器長L=2.0mm、リッジ幅W=10μmの量子カスケードレーザ装置100において、電極14から電極1に向けて電界を印加し、かつ電流を360mA注入した場合の利得の波長依存性が示されている。波長λ=9.47μmで最大利得g=21.86cm-1となり、8.0μmから12.0μmにわたり利得が存在する。
【0030】
仮に、第1基本波の波長λ および第2基本波の波長λ をそれぞれ8.80μmおよび10.46μmとする。このとき対応する周波数f およびf は、それぞれ3.407x1013Hzおよび2.866x1013Hzとなる。従って差周波の波長λおよび周波数f=(f -f )は、それぞれ55.45μmおよび5.406x1012Hz=5.406THzとなる。
【0031】
第1基本波および第2基本波におけるInP、AlAs、GaAs、InAsの屈折率は、非特許文献2「S. H. Wemple et. al., “Behavior of the Electronic Dielectric Constant in Covalent and Ionic Materials,”Phys. Rev. B, vol. 3, no. 4, pp. 1338-1351, Feb. 1971」、非特許文献3「伊賀編著,“半導体レーザ,”pp.36,オーム社(平成6年10月25日)」および非特許文献4「M. A. Afromowitz, “Refractive Index of Ga1-xAlxAs,” Solid State Comm., vol.15, pp. 59-63, 1974」から求めた。また3元混晶であるGaInAsおよびAlInAsの屈折率は、非特許文献5「S. Adachi, “Material parameter of In1-xGaxAsyP1-y,” J. Appl. Phys., vol.53, No.12, pp. 8775-8792, 1982」を用いて算出した。また、波長λ=55.45μmのTHz波におけるInP、GaAsおよびInAsの屈折率は、非特許文献6「E. D. Palik, “Handbook of Optical Constants of Solids III,” 1998」を参照し、GaInAsの屈折率は非特許文献5を用いて算出した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示す屈折率を用いると、カスケードレーザ領域の第1基本波に対する伝搬定数β および実効屈折率nef1 =β /[2π/λ ]は、それぞれ2.27131x10-1および3.18111と求まる。同様に第2基本波に対する伝搬定数β および実効屈折率nef2 =β /[2π/λ ]は、それぞれ1.89965x10-1および3.16246となる。
【0034】
ガイド層7に設ける回折格子15、16は高い次数の回折格子でも構わないが、高い帰還をかける観点では1次が好ましい。第1基本波に対する1次の回折格子15の周期Λ は、導波路内の波長λ /nef1 の1/2である1.305μmとなる。同様に第2基本波に対する1次の回折格子16の周期Λ は、導波路内の波長λ /nef2 の1/2である1.657μmとなる。本実施の形態では一例として、ガイド層7内に周期Λ =1.305μmで長さL =800μmの回折格子15と、周期Λ =1.657μmで長さL =800μmの回折格子16を設ける。これにより、波長λ =8.80μmおよび波長λ =10.46μmの2つの波長を得ることができる。なお、各回折格子の凸部と凹部の比は1:1が望ましいが、任意に選択することができる。
【0035】
THz波の波長λ=55.45μmにおけるクラッド層3の屈折率nc1Q およびクラッド層8の屈折率nc2Q は3.6300であり、第1基本波の実効屈折率nef1 =3.18111および第2基本波の実効屈折率nef2 =3.16246よりも高い。このため、クラッド層3およびクラッド層8内でチェレンコフ放射が生じる。つまり、カスケードレーザ領域から、共振方向と角度θcpおよび角度-θcmをなす方向に光が放射される。
【0036】
クラッド層3からのチェレンコフ放射角-θcmおよびクラッド層8からのチェレンコフ放射角θcpは、非特許文献7「Z.-S. Suh, “Simple analytical solution of Cerenkov-type Terahertz wave generation via difference frequency generation in dielectric waveguides,” J. Lightw. Technol., vol.37, No.17, pp. 4236-4243, 2019」より、式(1)および(2)で表すことができる。また、k は式(3)で表される。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
ここでクラッド層3とクラッド層8は共にInPなので、屈折率nc1Q =nc2Q =3.6300である。従って、チェレンコフ放射角は、θcm=θcp=θ=25.37°となる。
【0041】
また、表1から分かるように、差周波波長λ=55.45μmにおけるGaInAsの屈折率は、InPの屈折率よりも高い。従って、GaInAsをコアとしInPをクラッドとすれば、差周波における導波路であるTHz導波路を形成できる。導波路はマルチモードでも構わないが、出射光を使用する観点ではシンプルモードであることが望ましい。
【0042】
そこで本実施の形態では、クラッド層10の層厚dc1 およびクラッド層12の層厚dc2 を20μm、コア層11の層厚d を12μmとする。この場合、波長λ=55.45μmのTHz波に対する差周波導波路の伝搬定数βおよび実効屈折率nef は、それぞれ4.58629x10-1および4.04751と求まる。非特許文献8「A. Yariv et. al., “Periodic structures for integrated optics,” IEEE J. Quantum. Electron. , vol. QE-13, no. 4, pp. 233-253, Apr. 1977」より、角度θで入射する光と、導波路を伝搬定数βで伝搬する光が結合するには、グレーティング結合領域9内の回折格子22の周期Λは、式(4)を満たす必要がある。
【0043】
【数4】
【0044】
mはゼロを除く整数である。m=1として式(4)を本実施の形態に適用すると、回折格子22の周期Λは72.25μmとなる。なお、周期Λの回折格子22の凸部と凹部の比は1:1が望ましいが、これに限るものではなく任意に選択し得る。
【0045】
以上から本実施の形態では、一例として、グレーティング結合領域9内に周期Λ=72.25μmで長さL=1000μmの回折格子22を設ける。これにより、角度θc=θcpでチェレンコフ放射するTHz光20を、伝搬定数βで差周波導波路内を伝搬するTHz導波モード21に結合させることができる。その結果、量子カスケードレーザ装置100の出射端面23に対して垂直にTHz光24が出射されることになる。
【0046】
また、-θcmでチェレンコフ放射するTHz光19のうち、一部は量子カスケードレーザ装置100の内部で吸収される。THz光19のうち他の部分は、電極1、電極14、出射端面23および後端面25で全反射されて、最終的にはグレーティング結合領域9内の回折格子22で差周波導波路のTHz導波モード21に結合し、THz光24として取り出される。以降の実施の形態では説明を省略する場合があるが、-θcmでチェレンコフ放射するTHz光19も装置外へ取り出しが可能である。
【0047】
以上から、グレーティング結合領域9は、THz光19、20を差周波導波路のTHz導波モード21に結合させるように構成されている。具体的には、グレーティング結合領域9は、THz光19、20を差周波導波路のTHz導波モード21に結合させるように構成された回折格子22を有する。これにより、差周波導波路からTHz光24を出射させることができるため、例えばウエハプロセス完了後の基板2の斜め研削が不要となる。従って、量子カスケードレーザ装置100を容易に製造できる。
【0048】
また本実施の形態の差周波導波路は、コア層11をクラッド層10、12で挟んだ3層スラブ導波路と考えることができる。このため、差周波導波路の光強度分布は通常の光導波路と同じローレンツ型となる。従って、THz光24を外部光学系と高効率で結合させることができる。
【0049】
図6は、実施の形態1の変形例に係る量子カスケードレーザ装置200の斜視図である。量子カスケードレーザ装置200は、電流ブロック層4と電極14の間に、例えばSiON等の絶縁膜26が設けられる点が量子カスケードレーザ装置100と異なる。他の構造は量子カスケードレーザ装置100の構造と同様である。絶縁膜26を挿入することにより、幅Wのリッジの外側を流れる電流を更に抑制することができる。以降の実施の形態においても絶縁膜26を設けても良い。
【0050】
次に、量子カスケードレーザ装置100の製造方法を説明する。図7A図7Hは、実施の形態1に係る量子カスケードレーザ装置100の製造方法を説明する図である。まず図7Aに示されるように、基板2上にクラッド層3、ガイド層5、35ステージ6およびガイド層7をこの順で結晶成長する。結晶成長には、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法等を用いることができる。
【0051】
次に、図7Bに示されるように、写真製版とエッチングによりガイド層7内に周期Λ の回折格子15および周期Λ の回折格子16を形成する。回折格子15の長さはL 、幅はW>W、深さd は0<d ≦230nmである。回折格子16の長さはL 、幅はW>W、深さd は0<d ≦230nmである。
【0052】
次に、図7Cに示されるように、ガイド層7上に、MBE法、MOCVD法等で、クラッド層8およびグレーティング結合領域9をこの順で成長する。次に、図7Dに示されるように、写真製版とエッチングによりグレーティング結合領域9内に周期Λの回折格子22を形成する。回折格子22の長さはL、幅はW >W、深さd は0<d ≦1.0μmである。
【0053】
次に、図7Eに示されるように、グレーティング結合領域9上に、MBE法、MOCVD法等でクラッド層10、コア層11、クラッド層12およびコンタクト層13をこの順で結晶成長する。以上から、基板2の上に、カスケードレーザ領域および差周波導波路が積層され、カスケードレーザ領域と差周波導波路の間にグレーティング結合領域9が形成される。次に、図7Fに示されるように、写真製版とエッチングにより、幅Wのリッジの両側をクラッド層3の途中までエッチング除去する。
【0054】
次に、図7Gに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、リッジの両側にコア層11の両側を覆う電流ブロック層4を埋込成長する。次に、図7Hに示されるように、基板2の裏面に電極1を形成し、コンタクト層13および電流ブロック層4上に電極14を形成する。
【0055】
上述した各層の寸法、材質、濃度等は一例であり、変更することができる。また、本実施の形態ではステージ数が35の場合を例に示した。これに限らず、ステージ数は必要に応じて任意に選択することができる。また、1つのステージ50を構成する活性領域48およびインジェクタ領域49の構造、本実施の形態で例示した構造に限らない。また、本実施の形態では、InP基板を用いたGaInAs/AlInAs系QCL装置を例示した。これに限らず、GaAs基板を用いたGaAs/AlGaAs系QCL装置、およびGaN基板を用いたInGaN/AlGaN系QCL装置にも、本実施の形態を適用できる。さらに、本実施の形態のQCL装置は基板と格子整合する。これに限らず、基板よりも格子定数が大きいか又は小さい格子不整合系、つまり歪導入系にも、本実施の形態を適用できる。
【0056】
上述した変形は、以下の実施の形態に係る量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る量子カスケードレーザ装置および量子カスケードレーザ装置の製造方法については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0057】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る量子カスケードレーザ装置300の斜視図である。図9は、実施の形態2に係る量子カスケードレーザ装置300の断面図である。図9は、図8をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、グレーティング結合領域9は差周波導波路のうちコア層11の下部のクラッド層の内部に設けられる。グレーティング結合領域9はカスケードレーザ領域と離れている。他の構成は実施の形態1の構成と同様である。
【0058】
具体的には、量子カスケードレーザ装置300においてクラッド層8の上には、層厚がdc1A であり、n型のInPで形成されたクラッド層51が設けられる。クラッド層51の上にグレーティング結合領域9が設けられる。グレーティング結合領域9の上には、層厚がdc1B であり、n型のInPで形成されたクラッド層52が設けられる。dc1A +dc1B =dc1 である。
【0059】
グレーティング結合領域9を差周波導波路のクラッド層内に設けることで、THz光20が差周波導波路に結合し易くなり、THz光24の出力を大きくすることができる。
【0060】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る量子カスケードレーザ装置400の斜視図である。図11は、実施の形態3に係る量子カスケードレーザ装置400の断面図である。図11は、図10をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、グレーティング結合領域が、差周波導波路のうちコア層11の下部のクラッド層10と、コア層11の界面に設けられる。具体的には、グレーティング結合領域は、クラッド層10の上面に回折格子22を設け、回折格子22をコア層11で埋め込むことで形成される。他の構成は実施の形態1の構成と同様である。
【0061】
このような構成によれば、THz光20を差周波導波路にさらに結合し易くすることができ、THz光24を大きくすることができる。また、グレーティング結合領域として層を追加する必要がないため、量子カスケードレーザ装置400の作製工程を簡略化できる。
【0062】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置500の斜視図である。図13は、実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置500の断面図である。図13には図12をz-z直線で切断することで得られる断面が示されている。本実施の形態では、基板2の上に差周波導波路が設けられ、差周波導波路の上にカスケードレーザ領域が設けられる点が実施の形態1と異なっている。他の構想は実施の形態1の構造と同様である。
【0063】
具体的には、基板2の上にクラッド層10、コア層11およびクラッド層12がこの順で積層する。クラッド層12の上に、グレーティング結合領域9、クラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層7、クラッド層8がこの順で積層する。グレーティング結合領域9は、カスケードレーザ領域と差周波導波路の間に設けられる。
【0064】
本実施の形態においても実施の形態1と同様に、カスケードレーザ領域から共振方向と角度θcpおよび角度-θcmをなす方向にTHz光19、20が放射される。角度θcpおよび角度-θcmはそれぞれ式(5)および式(6)を満たす。
【0065】
【数5】
【0066】
【数6】
【0067】
グレーティング結合領域9の回折格子22の周期Λは、式(7)を満たす。mはゼロを除く整数である
【0068】
【数7】
【0069】
本実施の形態においてもグレーティング結合領域9により、THz光19、20を差周波導波路のTHz導波モード21に結合させることができる。また、差周波導波路は、層厚の制御が比較的粗くても構わない。このため、成長速度の速い液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxial:LPE)装置を使用することも可能である。つまり、基板2上にまず差周波導波路を形成する本実施の形態では、量子カスケードレーザ装置500を容易かつ安価で製造できる。
【0070】
次に、量子カスケードレーザ装置500の製造方法について説明する。図14Aから図14Hは、実施の形態4に係る量子カスケードレーザ装置500の製造方法を説明する図である。まず図14Aに示されるように、基板2上に、クラッド層10、コア層11、クラッド層12、グレーティング結合領域9をこの順で結晶成長させる。結晶成長には、LPE法、MBE法、MOCVD法などを用いることができる。次に図14Bに示されるように、写真製版とエッチングにより、グレーティング結合領域9に、周期Λの回折格子22を形成する。回折格子22の長さはL、幅はW >W、深さd は0<d ≦1.0μmである。
【0071】
次に、図14Cに示されるように、グレーティング結合領域9上に、MBE法、MOCVD法などで、クラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層7をこの順で結晶成長させる。次に図14Dに示されるように、写真製版とエッチングにより、ガイド層7内に、周期Λ の回折格子15および周期Λ の回折格子16を形成する。回折格子15の長さはL 、幅はW>W、深さd は0<d ≦230nmである。回折格子16の長さはL 、幅はW>W、深さd は0<d ≦230nmである。
【0072】
次に、図14Eに示されるように、ガイド層7上にMBE法、MOCVD法等で、クラッド層8およびコンタクト層13をこの順で結晶成長する。次に、図14Fに示されるように、写真製版とエッチングにより、幅Wのリッジの両側をクラッド層10の途中までエッチングして除去する。
【0073】
次に、図14Gに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、リッジの両側に電流ブロック層4を埋込成長する。次に、図14Hに示されるように、基板2の裏面に電極1を形成し、コンタクト層13および電流ブロック層4の上に電極14を形成する。
【0074】
実施の形態5.
図15は、実施の形態5に係る量子カスケードレーザ装置600の斜視図である。図16は、実施の形態5に係る量子カスケードレーザ装置600の断面図である。図16には図15をz-z直線で切断することで得られる断面が示されている。本実施の形態では、グレーティング結合領域9は、差周波導波路のうちコア層11の上部のクラッド層の内部に設けられる。グレーティング結合領域9はカスケードレーザ領域と離れている。他の構造は実施の形態4の構造と同様である。
【0075】
具体的には、コア層11の上に層厚がdc2A であり、n型のInPで形成されたクラッド層61が設けられる。クラッド層61の上にグレーティング結合領域9が設けられる。グレーティング結合領域9の上に、層厚がdc2B であり、n型のInPで形成されたクラッド層62が設けられる。dc2A +dc2B =dc2 である。クラッド層62の上にクラッド層3が設けられる。
【0076】
本実施の形態では、グレーティング結合領域9を差周波導波路のクラッド層内に設けることで、THz光19を差周波導波路に結合し易くすることができ、THz光24の出力を大きくすることができる。
【0077】
実施の形態6.
図17は、実施の形態6に係る量子カスケードレーザ装置700の斜視図である。図18は、実施の形態6に係る量子カスケードレーザ装置700の断面図である。図18には図17をz-z直線で切断することで得られる断面が示されている。本実施の形態では、グレーティング結合領域は、差周波導波路のうちコア層11の上部のクラッド層12と、コア層11の界面に設けられる。具体的には、コア層11の上面に回折格子22を設け、クラッド層12で埋め込むことで、グレーティング結合領域を形成できる。他の構造は、実施の形態4の構造と同様である。
【0078】
本実施の形態では、グレーティング結合領域をコア層11とクラッド層12との界面に設けることで、THz光19を差周波導波路にさらに結合し易くすることができ、THz光24の出力を大きくすることができる。また、グレーティング結合領域として層を追加する必要がないため、量子カスケードレーザ装置700の作製工程を簡略化できる。
【0079】
実施の形態7.
図19は、実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置800の斜視図である。図20は、実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置800の断面図である。図20には図19をz-z直線で切断することで得られる断面が示されている。本実施の形態では、第1基本波の波長λ および第2基本波の波長λ がそれぞれ8.30μmおよび10.48μmの場合を示す。対応する周波数f およびf はそれぞれ3.612x1013Hzおよび2.861x1013Hzとなる。差周波波長λおよび差周波数f=f -f は、それぞれ39.90μmおよび7.513x1012Hz=7.513THzである。
【0080】
量子カスケードレーザ装置800において、35ステージ6の上には、層厚が230nmであり、n型のGaInAsで形成されたガイド層71が設けられる。ガイド層71の上にはクラッド層8が設けられる。クラッド層8の上には、層厚がdc1 、差周波波長λにおける屈折率がnc1T であり、n型のGaInAsで形成されたクラッド層72が設けられる。クラッド層72の上には、層厚がd 、差周波波長λにおける屈折率がnaT であり、n型のInPで形成されたコア層73が設けられる。コア層73の上には、層厚がdc2 、差周波波長λにおける屈折率がnc2T であり、n型のGaInAsで形成されたクラッド層74が設けられる。
【0081】
電流ブロック層4はクラッド層3からクラッド層8までのカスケードレーザ領域の両側を覆う。クラッド層72、コア層73およびクラッド層74を含む差周波導波路は、電流ブロック層4から露出している。
【0082】
ガイド層71には、長さがL 、周期がΛ の回折格子75、および長さがL 、周期がΛ の回折格子76が設けられる。また図20には、波長λ 、周波数f 、伝搬定数β でカスケードレーザ領域を伝搬するQCL導波モード77と、波長λ 、周波数f 、伝搬定数β でカスケードレーザ領域を伝搬するQCL導波モード78が模式的に示されている。本実施の形態では、QCL導波モード77が第1基本波、QCL導波モード78が第2基本波である。
【0083】
また図20には、カスケードレーザ領域から基板2の上面に対して傾いた方向に放射されたTHz光79、80が示されている。THz光79は、x-z平面からy方向に角度-θcm傾いた方向にチェレンコフ放射され、周波数f=f -f を有する。THz光80は、x-z平面からy方向に角度θcp傾いた方向にチェレンコフ放射され、周波数fを有する。
【0084】
さらに図20には、波長λ、周波数f、伝搬定数βで差周波導波路を伝搬するTHz導波モード81が模式的に示されている。クラッド層8の上面には、長さがL、周期がΛの回折格子82が形成されている。回折格子82は、クラッド層8を上面から深さ約1μmだけエッチング除去し、クラッド層72で埋め込むことで形成される。このように本実施の形態のグレーティング結合領域は、カスケードレーザ領域と差周波導波路の間に設けられる。なお、回折格子82の周期は後述する。出射端面23からはTHz光83が出射される。
【0085】
実施の形態1と同様に、第1基本波および第2基本波におけるInP、AlAs、GaAs、InAsの屈折率を、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4から求めた。また、3元混晶であるGaInAsおよびAlInAsの屈折率を、非特許文献5を用いて算出した。また、波長λ=39.90μmのTHz波におけるInP、GaAs、およびInAsの屈折率は非特許文献6を参照し、GaInAsの屈折率は非特許文献5を用いて算出した。この結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示す屈折率より、カスケードレーザ領域の第1基本波に対する伝搬定数β および実効屈折率nef1 =β /[2π/λ ]は、それぞれ2.41324x10-1および3.18785と求まる。同様に、第2基本波に対する伝搬定数β および実効屈折率nef2 =β /[2π/λ ]は、それぞれ1.89592x10-1および3.16228となる。
【0088】
回折格子75、76は高い次数の回折格子でも構わないが、高い帰還をかける観点では1次が好ましい。第1基本波に対する1次回折格子の周期Λ は、導波路内波長λ /nef1 の1/2である1.302μmとなる。同様に、第2基本波に対する1次回折格子の周期Λ は、導波路内波長λ /nef2 の1/2である1.657μmとなる。このため、一例としてガイド層71内に周期Λ =1.302μmで長さL =800μmの回折格子75と、周期Λ =1.657μmで長さL =800μmの回折格子76を設ければ、波長λ =8.30μmおよび波長λ =10.48μmの2つの波長を得ることができる。
【0089】
また、差周波波長λ=39.90μmにおけるクラッド層3の屈折率nc1Q およびクラッド層8の屈折率nc2Q は4.2000であり、第1基本波の実効屈折率nef1 =3.18785および第2基本波の実効屈折率nef2 =3.16228よりも高い。このため、クラッド層3およびクラッド層8内でチェレンコフ放射が生じる。実施の形態1と同様に、式(1)~(3)よりクラッド層3でのチェレンコフ放射角-θcmおよびクラッド層8でのチェレンコフ放射角θcpが求まる。本実施の形態ではθcm=θcp=θ=38.54°である。
【0090】
また、表2から分かるように、差周波波長λ=39.90μmにおけるInPの屈折率は、GaInAsの屈折率よりも高い。従って、InPをコアとしGaInAsをクラッドとすれば、差周波における導波路、つまり差周波導波路を形成できる。導波路はマルチモードでも構わないが、出射光を使用する観点では、シンプルモードであることが好ましい。そこで、本実施の形態では、クラッド層72の層厚dc1 およびクラッド層74の層厚dc2 を16μm、コア層73の層厚d を8μmとする。この場合、波長λ=39.90μmのTHz波に対する差周波導波路の伝搬定数βおよび実効屈折率nef は、それぞれ6.13845x10-1および3.89818と求まる。
【0091】
実施の形態1と同様に式(4)を用いると、角度θで入射する光と、導波路を伝搬定数βで伝搬する光を結合させるには、回折格子82の周期Λを65.09μmとすれば良い。つまり、一例としてクラッド層8、72の界面に、周期Λ=65.09μmで長さL=1000μmの回折格子を設けると、角度θ=θcpでチェレンコフ放射するTHz光を、伝搬定数βでTHz導波路内を伝搬するTHz光に結合させることができる。その結果、出射端面23に対して垂直にTHz光83が出射されることになる。
【0092】
本実施の形態の電流ブロック層4は、リッジの両側においてクラッド層3からクラッド層8までを埋め込み、差周波導波路を埋め込んでいない。これは、屈折率の高いFeドープInPで差周波導波路のリッジ部を埋め込むと、リッジ部にTHz波が閉じこめられなくなり、アンチ導波路となる可能性があるからである。また、図示していないが、差周波導波路のリッジの両側および電流ブロック層4の上部をSiON等の絶縁膜でカバーしても良い。
【0093】
次に、量子カスケードレーザ装置800の製造方法を説明する。図21A図21Hは、実施の形態7に係る量子カスケードレーザ装置800の製造方法を説明する図である。まず図21Aに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、基板2上にクラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層71をこの順で結晶成長する。次に、図21Bに示されるように、写真製版とエッチングにより、ガイド層71内に周期がΛ 、長さがL 、幅がW>W、深さd が0<d ≦230nmの回折格子75を形成する。同様に、ガイド層71内に周期がΛ 、長さがL 、幅がW>W、深さd が0<d ≦230nmの回折格子76を形成する。
【0094】
次に、図21Cに示されるように、ガイド層71上に、MBE法、MOCVD法等で、クラッド層8を成長する。次に図21Dに示されるように、写真製版とエッチングにより、クラッド層8内に周期がΛ、長さがL、幅がW >W、深さd が0<d ≦1.0μmの回折格子82を形成する。次に、図21Eに示されるように、クラッド層8の上に、MBE法、MOCVD法等で、クラッド層72、コア層73、クラッド層74、コンタクト層13をこの順で結晶成長する。
【0095】
次に、図21Fに示されるように、写真製版とエッチングにより、リッジの両側をクラッド層3の途中までエッチング除去する。次に、図21Gに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、リッジの両側にクラッド層8を埋め込む高さまで、電流ブロック層4を埋込成長する。次に、図21Hに示されるように、基板2の裏面に電極1を形成し、コンタクト層13の上に電極14を形成する。
【0096】
実施の形態8.
図22は、実施の形態8に係る量子カスケードレーザ装置900の斜視図である。図23は、実施の形態8に係る量子カスケードレーザ装置900の断面図である。図23は、図22をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態ではグレーティング結合領域が、差周波導波路のうちコア層73の下部のクラッド層の内部に設けられる点が実施の形態7と異なる。他の構成は実施の形態7の構成と同様である。
【0097】
量子カスケードレーザ装置900において、クラッド層8の上には、層厚がdc1A であり、n型のGaInAsで形成されるクラッド層91が設けられる。クラッド層91の上には、層厚が1.0μmであり、n型のInPで形成されたグレーティング結合領域92が設けられる。グレーティング結合領域92の上には、層厚がdc1B でありn型のGaInAsで形成されたクラッド層93が設けられる。dc1A +dc1B =dc1 である。
【0098】
グレーティング結合領域92を差周波導波路のクラッド層内に設けると、THz光80を差周波導波路に結合し易くすることができ、THz光83の出力を大きくすることができる。
【0099】
実施の形態9.
図24は、実施の形態9に係る量子カスケードレーザ装置1000の斜視図である。図25は、実施の形態9に係る量子カスケードレーザ装置1000の断面図である。図25は、図24をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、グレーティング結合領域は、差周波導波路のうちクラッド層72とコア層73の界面に設けられる。グレーティング結合領域は、クラッド層72の上面に、長さがLで周期がΛの回折格子94を設け、コア層73で埋め込むことで形成される。他の構成は実施の形態7の構成と同様である。
【0100】
グレーティング結合領域をクラッド層72とコア層73の界面に設けることで、THz光80を差周波導波路に結合し易くすることができ、THz光83の出力を大きくすることができる。また、グレーティング結合領域として層を追加する必要がないため、作製工程を簡略化できる。
【0101】
実施の形態10.
図26は、実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置1100の斜視図である。図27は、実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置1100の断面図である。図27は、図26をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、基板2の上に差周波導波路が設けられ、差周波導波路の上にカスケードレーザ領域が設けられる点が実施の形態7と異なる。
【0102】
つまり、基板2の上にクラッド層72、コア層73およびクラッド層74がこの順で積層する。クラッド層74の上にクラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層71およびクラッド層8がこの順で積層する。また、グレーティング結合領域を構成する回折格子94は、クラッド層74を上面から深さ約1μmだけエッチング除去し、クラッド層3で埋め込むことで形成される。
【0103】
また、量子カスケードレーザ装置1100はカスケードレーザ領域の両側を覆う電流ブロック層4を備える。電流ブロック層4はクラッド層74の上面に設けられている。差周波導波路のコア層73の側面は、電流ブロック層4から露出している。
【0104】
差周波導波路は、層厚の制御が比較的粗くても構わない。このため、成長速度の速いLPE装置を使用して差周波導波路を形成することも可能である。よって、基板2上に、先ず差周波導波路を形成する本実施の形態によれば、量子カスケードレーザ装置1100を容易かつ低コストで製造できる。
【0105】
次に、量子カスケードレーザ装置1100の製造方法について説明する。図28A図28Hは、実施の形態10に係る量子カスケードレーザ装置1100の製造方法を説明する図である。まず、図28Aに示されるように、LPE法、MBE法、MOCVD法などで、基板2上に、クラッド層72、コア層73、クラッド層74をこの順で結晶成長する。次に、図28Bに示されるように、写真製版とエッチングにより、クラッド層74内に、周期がΛ、長さがL、幅がW >W、深さd が0<d ≦1.0μmの回折格子94を形成する。
【0106】
次に、図28Cに示されるように、クラッド層74上に、MBE法、MOCVD法などで、クラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層71をこの順で結晶成長する。次に、図28Dに示されるように、写真製版とエッチングにより、ガイド層71内に、周期がΛ 、長さがL 、幅がW>W、深さd が0<d ≦230nmの回折格子75を形成する。同様にガイド層71内に周期がΛ 、長さがL 、幅がW>W、深さd が0<d ≦230nmの回折格子76を形成する。
【0107】
次に、図28Eに示されるように、ガイド層71上に、MBE法、MOCVD法等で、クラッド層8およびコンタクト層13をこの順で結晶成長する。次に、図28Fに示されるように、写真製版とエッチングにより、リッジの両側をクラッド層74までエッチング除去する。次に、図28Gに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、リッジの両側に電流ブロック層4を埋込成長する。次に、図28Hに示されるように、基板2の裏面に電極1を形成し、コンタクト層13および電流ブロック層4の上に電極14を形成する。
【0108】
実施の形態11.
図29は、実施の形態11に係る量子カスケードレーザ装置1200の斜視図である図30は、実施の形態11に係る量子カスケードレーザ装置1200の断面図である。図30は、図29をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、グレーティング結合領域92が、差周波導波路のうちコア層73の上部のクラッド層の内部に設けられる点が実施の形態10と異なっている。グレーティング結合領域92には、長さがLで周期がΛの回折格子101が形成される。他の構成は実施の形態10と同様である。
【0109】
本実施の形態では、グレーティング結合領域92を差周波導波路のクラッド層内に設けることで、THz光79を差周波導波路に結合し易くすることができ、THz光83の出力を大きくすることができる。
【0110】
実施の形態12.
図31は、実施の形態12に係る量子カスケードレーザ装置1300の斜視図である。図32は、実施の形態12に係る量子カスケードレーザ装置1300の断面図である。図32は、図31をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、グレーティング結合領域を構成する回折格子94が、クラッド層74とコア層73の界面に設けられる点が実施の形態10と異なっている。長さがL、周期がΛの回折格子94は、コア層73の上面から深さ約1μmをエッチングで除去し、クラッド層74で埋め込むことで形成される。他の構成は実施の形態10と同様である。
【0111】
本実施の形態によれば、グレーティング結合領域として層を追加する必要がないため、作製工程を簡略化できる。
【0112】
実施の形態13.
図33は、実施の形態13に係る量子カスケードレーザ装置1400の斜視図である。量子カスケードレーザ装置1400は、出射端面23と反対側の後端面25を覆う高反射膜102を備える点が実施の形態1と異なっている。他の構成は実施の形態1の構成と同様である。
【0113】
高反射膜102として、例えば後端面25にアルミナ(Al)を450nm、Tiを15nm、Auを100nm形成する。高反射膜102により、後端面から出射する第1基本波および第2基本波を無くすこと、または低減することができる。従って、THz波の出力を増加させることができる。
【0114】
図34は、実施の形態13の変形例に係る量子カスケードレーザ装置1500の斜視図である。量子カスケードレーザ装置1500では、出射端面23のうち差周波導波路に対応する部分を露出させ、カスケードレーザ領域に対応する部分を覆う高反射膜102をさらに備える点が、量子カスケードレーザ装置1400と異なる。これにより、第1基本波および第2基本波は共振器内の留まり、装置外に出射されない。このため、さらにTHz波の出力を増加させることができる。
【0115】
高反射膜102は、第1基本波および第2基本波に対して高反射率であるばかりでなく、THz光24に対しても高反射率であることが期待される。なお、高反射膜102は実施の形態1の量子カスケードレーザ装置に限らず、他の実施の形態の装置に適用されても良い。
【0116】
実施の形態14.
図35は、実施の形態14に係る回折格子15、16の配置を説明する図である。これまでは、第1基本波および第2基本波に対応する回折格子を、共振器方向に縦続して配置していた。つまり、第1基本波および第2基本波に対応する回折格子を同じ高さに設けていた。本実施の形態では、第1基本波に対応する回折格子15と第2基本波に対応する回折格子16は、基板2の上面に垂直な方向にずれた位置に設けられる。図35の例では、回折格子15と回折格子16は、それぞれガイド層7の上面と下面に設けられる。他の構成は、実施の形態1~13の何れかの構成と同様である。
【0117】
本実施の形態によれば、回折格子15、16の長さL1、L2を共振器長Lの範囲で自由に設定できる。つまり長さL1、L2は、回折格子15、16の一部が平面視で重なるような長さにも設定できる。ここで、回折格子の長さが長くなると、スペクトル線幅を狭くすることができる。従って本実施の形態によれば、第1基本波および第2基本波の波長の線幅を狭くすることが可能となる。
【0118】
実施の形態15.
図36は、実施の形態15に係る量子カスケードレーザ装置1600の斜視図である。図37は、実施の形態15に係る量子カスケードレーザ装置の断面図である。図37は、図36をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。これまでの実施の形態では、第1基本波に対応する回折格子と第2基本波に対応する回折格子は、カスケードレーザ領域のうち35ステージ6の上、つまりガイド層7に設けられていた。これに対し、本実施の形態では、第1基本波に対応する回折格子15と第2基本波に対応する回折格子16は、カスケードレーザ領域のうち35ステージ6の下、つまりガイド層5に設けられる。
【0119】
この場合も、これまでの実施の形態と同様にTHz光19、20を得ることができる。なお、本実施の形態の回折格子15、16の配置は何れの実施の形態に適用しても良い。
【0120】
実施の形態16.
図38は、実施の形態16に係る量子カスケードレーザ装置1700の斜視図である。図39は、実施の形態16に係る量子カスケードレーザ装置1700の断面図である。図39は、図38をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態は、差周波導波路を、電極1とカスケードレーザ領域の間、およびカスケードレーザ領域と電極14の間の2か所に設けた点が実施の形態1と異なる。つまり、実施の形態1の量子カスケードレーザ装置100に対して、さらに基板2とカスケードレーザ領域の間に設けられた差周波導波路と、グレーティング結合領域を備えているとも言える。
【0121】
量子カスケードレーザ装置1700において、基板2の上には、層厚がdc1 、差周波波長λにおける屈折率がnc1T であり、n型のInPで形成されたクラッド層201が設けられる。クラッド層201の上には、層厚がda1 、差周波波長λにおける屈折率がna1T であり、n型のGaInAsで形成されたコア層202が設けられる。コア層202の上には、層厚がdc2 、差周波波長λにおける屈折率がnc2T であり、n型のInPで形成されたクラッド層203が設けられる。クラッド層201、コア層202およびクラッド層203は第1の差周波導波路を構成する。
【0122】
クラッド層203の上には、層厚が1.0μmであり、n型のGaInAsで形成されたグレーティング結合領域204が設けられる。グレーティング結合領域204の上には、カスケードレーザ領域が設けられる。カスケードレーザ領域の構造は実施の形態1の構造と同様である。カスケードレーザ領域の上には、層厚が1.0μmであり、n型のGaInAsで形成されたグレーティング結合領域205が設けられる。
【0123】
グレーティング結合領域205の上には、層厚がdc3 、差周波波長λにおける屈折率がnc3T であり、n型のInPで形成されたクラッド層206が設けられる。クラッド層206の上には、層厚がda2 、差周波波長λにおける屈折率がna2T であり、n型のGaInAsで形成されたコア層207が設けられる。コア層207の上には、層厚がdc4 、差周波波長λにおける屈折率がnc4T であり、n型のInPで形成されたクラッド層208が設けられる。クラッド層206、コア層207およびクラッド層208は第2の差周波導波路を構成する。
【0124】
図39には、波長λ、周波数f、伝搬定数βで第1の差周波導波路を伝搬するTHz導波モード209が模式的に示されている。また、図39には、波長λ、周波数f、伝搬定数βで第2の差周波導波路を伝搬するTHz導波モード210が模式的に示されている。グレーティング結合領域204には、長さがL 、周期がΛ の回折格子211が形成される。また、グレーティング結合領域205には、長さがL 、周期がΛ の回折格子212が形成される。第1の差周波導波路からはTHz光213が出射される。第2の差周波導波路からはTHz光214が出射される。
【0125】
クラッド層3でのチェレンコフ放射角-θcmおよびクラッド層8でのチェレンコフ放射角θcpは、実施の形態1と同様に式(1)~(3)を用いて算出できる。一方、グレーティング結合領域204内の回折格子211の周期Λ は、ゼロを除く整数mを用いて、式(8)から求められる。
【0126】
【数8】
【0127】
また、グレーティング結合領域205内の回折格子212の周期Λ は、ゼロを除く整数jを用いて、式(9)から求められる。
【0128】
【数9】
【0129】
本実施の形態では、クラッド層3とクラッド層8は共にInPなので、チェレンコフ放射角はθcm=θcp=θ=25.37°である。また、グレーティング結合領域204およびグレーティング結合領域205も共にGaInAsなので、回折格子211、212の周期はΛ =Λ =Λ=72.25mmである。
【0130】
以上から、グレーティング結合領域204により、カスケードレーザ領域から基板2の上面に対して傾いた方向に放射されたTHz光19を第1の差周波導波路のTHz導波モード209に結合させることができる。また、グレーティング結合領域205により、カスケードレーザ領域から基板2の上面に対して傾いた方向に放射されたTHz光20を第2の差周波導波路のTHz導波モード210に結合させることができる。
【0131】
本実施の形態では、差周波導波路をカスケードレーザ領域の上下2か所に設けたので、出射端面23から出射するTHz光213、214を実施の形態1の約2倍とすることができる。なお、本実施の形態の差周波導波路を2か所に設ける構造は、何れの実施の形態に適用されても良い。
【0132】
実施の形態17.
図40は、実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置1800の断面図である。図41は、実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置1800の斜視図である。図41は、図40をz-z直線で切断することで得られる断面を示している。本実施の形態では、グレーティング結合領域221および差周波導波路のクラッド層222、224およびコア層223を、意図的にドーピングを行わないアンドープとする。また、カスケードレーザ領域のみに電圧を印加する。これにより、動作電圧を低減し、THz出力を増加させることができる。
【0133】
量子カスケードレーザ装置1800において、クラッド層8の上にはコンタクト層13が設けられる。グレーティング結合領域221および差周波導波路は、コンタクト層13の上に設けられる。具体的には、コンタクト層13の上には、層厚が1.0μmであり、アンドープGaInAsで形成されたグレーティング結合領域221が設けられる。グレーティング結合領域221の上には、層厚がdc1 、差周波波長λにおける屈折率がnc1T であり、アンドープのInPで形成されたクラッド層222が設けられる。クラッド層222の上には、層厚がd 、差周波波長λにおける屈折率がnaT であり、アンドープGaInAsで形成されたコア層223が設けられる。コア層223の上には、層厚がdc2 、差周波波長λにおける屈折率がnc2T であり、アンドープのInPで形成されたクラッド層224が設けられる。
【0134】
本実施の形態では、カスケードレーザ領域のリッジ幅Wと差周波導波路のリッジ幅Wが異なる。これに限らず、他の実施の形態と同様に、両者を同じ幅としても良い。
【0135】
電極14は差周波導波路を避けてコンタクト層13の上に設けられる。電圧は、電極1、基板2、クラッド層3、ガイド層5、35ステージ6、ガイド層7、クラッド層8、コンタクト層13および電極14にのみ印加される。つまり、グレーティング結合領域221、クラッド層222、コア層223およびクラッド層224に電圧は印加されない。従って、動作電圧の低減が図れる。
【0136】
また、グレーティング結合領域221、クラッド層222、コア層223およびクラッド層224は、意図的にドーピングを行わないアンドープ層である。このため、THz光に対する光吸収を減らすことができる。従って、THz光24の出力を増加させることができる。
【0137】
次に、量子カスケードレーザ装置1800の製造方法を説明する。図42A図42Jは、実施の形態17に係る量子カスケードレーザ装置1800の製造方法を説明する図である。まず図42Aに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、基板2上に、クラッド層3、ガイド層5、35ステージ6およびガイド層7をこの順で結晶成長する。次に、図42Bに示されるように、写真製版とエッチングにより、ガイド層7内に、周期がΛ 、長さがL 、幅がW>W、深さd が0<d ≦230nmの回折格子15を形成する。同様にガイド層7内に周期がΛ 、長さがL 、幅がW>W、深さd が0<d ≦230nmの回折格子16を形成する。
【0138】
次に、図42Cに示されるように、ガイド層7上に、MBE法、MOCVD法等で、クラッド層8を成長する。次に、図42Dに示されるように、写真製版とエッチングにより、クラッド層3の途中までをエッチングで除去して、幅Wのリッジを形成する。次に、図42Eに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、リッジの両側に電流ブロック層4を埋込成長する。
【0139】
次に、図42Fに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、クラッド層8および電流ブロック層4上に、コンタクト層13およびグレーティング結合領域221を結晶成長する。次に、図42Gに示されるように、写真製版とエッチングにより、グレーティング結合領域221内に、周期がΛ、長さがL、幅がW >W、深さd が0<d ≦1.0μmの回折格子22を形成する。
【0140】
次に、図42Hに示されるように、MBE法、MOCVD法等で、グレーティング結合領域221上に、クラッド層222、コア層223、クラッド層224をこの順で結晶成長する。次に、図42Iに示されるように、写真製版とエッチングにより、グレーティング結合領域221までをエッチング除去して、幅Wのリッジを形成し、コンタクト層13を露出させる。次に、図42Jに示されるように、基板2の裏面に電極1を形成し、コンタクト層13の上に電極14を形成する。
【0141】
なお、上述した差周波5.406THz(波長55.45μm)および7.513THz(波長39.90μm)の値は例示に過ぎず、各実施の形態は任意のTHz波に適用できる。
【0142】
各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0143】
1 電極、2 基板、3 クラッド層、4 電流ブロック層、5 ガイド層、6 35ステージ、7 ガイド層、8 クラッド層、9 グレーティング結合領域、10 クラッド層、11 コア層、12 クラッド層、13 コンタクト層、14 電極、15 回折格子、16 回折格子、17 QCL導波モード、18 QCL導波モード、19 THz光、20 THz光、21 THz導波モード、22 回折格子、23 出射端面、24 THz光、25 後端面、26 絶縁膜、31 バリア層、32 ウエル層、33 バリア層、34 ウエル層、35 バリア層、36 ウエル層、37 バリア層、38 ウエル層、39 バリア層、40 ウエル層、41 バリア層、42 ウエル層、43 バリア層、44 ウエル層、45 バリア層、46 ウエル層、47 バリア層、48 活性領域、49 インジェクタ領域、50 ステージ、51 クラッド層、52 クラッド層、61 クラッド層、62 クラッド層、71 ガイド層、72 クラッド層、73 コア層、74 クラッド層、75 回折格子、76 回折格子、77 QCL導波モード、78 QCL導波モード、79 THz光、80 THz光、81 THz導波モード、82 回折格子、83 THz光、91 クラッド層、92 グレーティング結合領域、93 クラッド層、94 回折格子、100 量子カスケードレーザ装置、101 回折格子、102 高反射膜、200 量子カスケードレーザ装置、201 クラッド層、202 コア層、203 クラッド層、204 グレーティング結合領域、205 グレーティング結合領域、206 クラッド層、207 コア層、208 クラッド層、209 THz導波モード、210 THz導波モード、211 回折格子、212 回折格子、213 THz光、214 THz光、221 グレーティング結合領域、222 クラッド層、223 コア層、224 クラッド層、300 量子カスケードレーザ装置、400 量子カスケードレーザ装置、500 量子カスケードレーザ装置、600 量子カスケードレーザ装置、700 量子カスケードレーザ装置、800 量子カスケードレーザ装置、900 量子カスケードレーザ装置、1000 量子カスケードレーザ装置、1100 量子カスケードレーザ装置、1200 量子カスケードレーザ装置、1300 量子カスケードレーザ装置、1400 量子カスケードレーザ装置、1500 量子カスケードレーザ装置、1600 量子カスケードレーザ装置、1700 量子カスケードレーザ装置、1800 量子カスケードレーザ装置
【要約】
本開示に係る量子カスケードレーザ装置は、半導体基板と、半導体基板の上に積層したカスケードレーザ領域および差周波導波路と、グレーティング結合領域と、を備え、前記グレーティング結合領域は、前記カスケードレーザ領域から前記半導体基板の上面に対して傾いた方向に放射された光を前記差周波導波路の導波モードに結合させるように構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8
図9
図10
図11
図12
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図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図15
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図17
図18
図19
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図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
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図21G
図21H
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図24
図25
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図28A
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図28D
図28E
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図28G
図28H
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図34
図35
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図39
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図41
図42A
図42B
図42C
図42D
図42E
図42F
図42G
図42H
図42I
図42J