(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】抗ストレス組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20250226BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20250226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250226BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250226BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20250226BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61K35/744
A61P43/00 111
A61P25/00
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2020056467
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-01
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-03141
(73)【特許権者】
【識別番号】591096303
【氏名又は名称】株式会社ブルボン
(73)【特許権者】
【識別番号】592102940
【氏名又は名称】新潟県
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】丸田 優人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 理史
(72)【発明者】
【氏名】前島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】相原 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 和也
(72)【発明者】
【氏名】奥原 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西脇 俊和
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-069940(JP,A)
【文献】特開2017-061567(JP,A)
【文献】体力科学,2019年,第68巻, 第6号,pp.407-414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
A61K 35/744
A23L 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス組成物であって、
前記ラクトコッカス属の乳酸菌が、特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-03141として寄託されている、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11(Lactococcus lactis subsp. lactis NFRCL-11)である、抗ストレス組成物。
【請求項2】
前記ラクトコッカス属の乳酸菌が死菌体である、請求項1に記載の抗ストレス組成物。
【請求項3】
前記ラクトコッカス属の乳酸菌が加熱死菌体である、請求項1に記載の抗ストレス組成物。
【請求項4】
ストレス低減のために用いられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ストレス組成物。
【請求項5】
セロトニンの分泌を促進するために用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ストレス組成物。
【請求項6】
コルチゾールまたはコルチコステロン分泌の上昇を抑制するために用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ストレス組成物。
【請求項7】
抗ストレス食品組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗ストレス組成物。
【請求項8】
ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス剤であって、
前記ラクトコッカス属の乳酸菌が、特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-03141として寄託されている、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11(Lactococcus lactis subsp. lactis NFRCL-11)である、抗ストレス剤。
【請求項9】
ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象
(但し、ヒトを除く)に摂取させることを含んでなる、ストレス軽減方法であって、
前記ラクトコッカス属の乳酸菌が、特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-03141として寄託されている、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11(Lactococcus lactis subsp. lactis NFRCL-11)である、ストレス低減方
法。
【請求項10】
特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-03141として寄託されている、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス NFRCL-11(Lactococcus lactis subsp. lactis NFRCL-11)菌株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する抗ストレス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は、代謝によって乳酸を産生する細菌類の総称であり、その形状によって乳酸桿菌と乳酸球菌に分類される。ラクトコッカス属は、生乳やチーズなどの発酵によく用いられている通性嫌気性の乳酸球菌に属する(非特許文献1参照)。ラクトコッカス属の乳酸菌摂取による健康へ与える効果として、例えば免疫賦活作用(例えば、特許文献1および2参照)、疲労回復もしくは疲労蓄積予防作用(特許文献3参照)などが報告されている。一方、現代社会において問題視されているストレスやうつ症状に対するラクトコッカス属の有効性については不明な点が多い。
【0003】
脳と腸との相互作用は脳腸相関とも呼ばれ、液性因子(ホルモンやサイトカインなど)や自律神経系の経路を介して、相互に情報伝達を行っていると考えられている。これまでの研究により、生体における腸内細菌叢の有無でストレス応答が変化することから、腸内細菌とストレスには何らかの関連性があると考えられている(非特許文献2参照)。また、乳発酵物を有効成分として含有するストレス由来の皮膚血流低下改善用組成物が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、ラクトコッカス属の乳酸菌自体が抗ストレス作用を有することは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-47462号公報
【文献】特開2003-88362号公報
【文献】特開2018-201487号公報
【文献】特許3715640号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス、日本乳酸菌学会編、京都大学学術出版、2010
【文献】臨床栄養Vol.128 No.6(臨時増刊号)、大畑秀穂、医歯薬出版株式会社、2016
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する組成物を対象に投与することにより抗ストレス効果を奏することが分かった。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する抗ストレス組成物を提供する。
【0008】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス組成物。
(2)ラクトコッカス属の乳酸菌が死菌体である、(1)に記載の抗ストレス組成物。
(3)ラクトコッカス属の乳酸菌が加熱死菌体である、(1)に記載の抗ストレス組成物。
(4)ラクトコッカス属の乳酸菌が、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11(Lactococcus lactis subsp. lactis NFRCL-11)である、(1)~(3)のいずれかに記載の抗ストレス組成物。
(5)ストレス低減のために用いられる、(1)~(4)のいずれかに記載の抗ストレス組成物。
(6)セロトニンの分泌を促進するために用いられる、(1)~(5)のいずれかに記載の抗ストレス組成物。
(7)コルチゾールまたはコルチコステロン分泌の上昇を抑制するために用いられる、(1)~(5)のいずれかに記載の抗ストレス組成物。
(8)抗ストレス食品組成物である、(1)~(7)のいずれかに記載の抗ストレス組成物。
(9)ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス剤。
(10)ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象に摂取させることを含んでなる、ストレス低減方法(但し、ヒトに対する医療行為を除く)。
【0009】
本発明の組成物を用いることにより、抗ストレス効果を奏する点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、乳酸菌11菌株における、コントロール(Control)のセロトニン濃度を1とした場合のセロトニン濃度の相対的な値(セロトニン量比)を表す。すなわち、1よりも値が大きい場合には、乳酸菌を添加しない場合に比べてセロトニン濃度が高いことを示す。
【
図2】
図2は、強制水泳試験実施後のマウスの血漿中のコルチコステロン(Corticosterone)濃度(ng/ml)を表す。「*」は、水を経口投与して水泳試験を実施していないマウス(図中、「水(-FST)」と表示した)の血漿中のコルチコステロン濃度と、水を経口投与(図中、「水」と表示した)またはフルオキセチンを経口投与(図中、「FX」と表示した)して水泳試験を実施したマウスの血漿中のコルチコステロン濃度との間に有意差(P<0.05)があることを示す。統計解析は、one way ANOVA、Tukey testにより行った。図中、「N11」は乳酸菌を経口投与して水泳試験を実施したマウスの血漿中のコルチコステロン濃度を表す。
【発明の具体的説明】
【0011】
[微生物の寄託]
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11株(Lactococcus lactis subsp.lactis NFRCL-11)は、2020年2月26日付け(寄託日)で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、受託番号NITE P-03141として寄託されている。
【0012】
本発明の抗ストレス組成物は、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有するものであり、有効成分として含んでいてもよい。本発明の組成物に含有するラクトコッカス属の乳酸菌は、生菌体でも死菌体でもいずれでもよいが、死菌体であることが好ましく、加熱死菌体であることがより好ましく、加熱死菌体粉末であることがさらに好ましい。加熱死菌体は、例えば、生菌体を95℃以上で10分間程度加熱して得ることができる。
【0013】
本発明の組成物に含有するラクトコッカス属の乳酸菌は、特に限定されるものではないが、Lactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)、Lactococcus lactis subsp. cremoris、およびLactococcus lactis subsp. hordniaeなどが挙げられ、これらの中でもLactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)が好ましい。
【0014】
本発明の組成物にLactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)が含まれる場合、Lactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)であれば特に限定されるものではないが、Lactococcus lactis subsp.lactis NBRC12007、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC3、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC4、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC7、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC9、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC10、またはLactococcus lactis subsp.lactis NFRC11が好ましく、Lactococcus lactis subsp.lactis NBRC12007、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC10、またはLactococcus lactis subsp.lactis NFRC11がより好ましく、Lactococcus lactis subsp.lactis NFRC11が特に好ましい。
【0015】
本発明において、「ストレス」とは、種々の外部刺激が負担として働くとき、心身に生じる機能変化を意味し、「抗ストレス」とはこの機能変化を起こさせないことを意味する。「抗ストレス」とは、種々の外部刺激が負担として働いて心身に機能変化が生じた後にその機能変化を元の状態に戻すもしくは近づけること、種々の外部刺激が負担として働いても心身の機能変化が生じないもしくは生じにくくすること、またはそもそも種々の外部刺激が心身の負担として働かないもしくは働きにくくすることなどを意味する。本明細書において、「ストレス低減」とは、種々の外部刺激が負担として働いても心身の機能変化が生じないもしくは生じにくくすることを意味する。本発明の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、ストレス低減のために用いられる抗ストレス組成物である。本発明のより好ましい態様によれば、急性ストレス低減のために用いられる抗ストレス組成物である。ここで、急性ストレスとは、短期的な外部刺激によって心身に生じる機能変化であり、例えば外部刺激が継続的もしくは断続的に1日以内負荷されること、好ましくは1時間以内に負荷されること、より好ましくは10分以内に負荷されることに起因するものを意味する。急性ストレスの例としては、筆記テスト、朝の満員電車、長時間残業のストレスなどの比較的短期間のストレスが挙げられる。一方、ここで、慢性ストレスとは、長期的な外部刺激によって心身に生じる機能変化であり、例えば、外部刺激が継続的もしくは断続的に1日より長期にわたり負荷されることに起因するものを意味する。慢性ストレスの例としては、学校や勤務先での比較的長期間の人間関係のあつれきなどといった長期間持続するストレスが挙げられる。また、本発明のより好ましい別の態様によれば、精神的および/または身体的な外部刺激によるストレス低減のために用いられる抗ストレス組成物である。ここで、ストレスを生じさせる要因には、精神的(人間関係のあつれき、過密環境など)、身体的(長時間残業、過度の運動など)、物理的(紫外線、騒音、温熱環境など)、化学的(ホルムアルデヒドなどの化学物質)、生物学的(ウイルス、細菌、寄生虫)な外部刺激などが挙げられるが、本発明の好ましい態様によれば、本発明の組成物は、これらの中でも特に精神的および/または身体的な外部刺激によるストレスをより低減することができる。なお、下記本願の実施例における強制水泳試験は精神的および身体的な混合刺激であると考えられる。
【0016】
本発明のより好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、セロトニンの分泌を促進するために用いられる抗ストレス組成物である。ここで、セロトニンは、生理活性アミンの一種で、生体内でトリプトファンから合成され、脳、胃腸、血液中などに多く含まれ、脳の神経伝達などに作用するとともに、精神を安定させる作用もある。すなわち、セロトニンは、種々の外部刺激が負担として働いても心身の機能変化が生じないもしくは生じにくくすることができる。
【0017】
本発明のさらに好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、コルチゾールまたはコルチコステロン分泌の上昇を抑制するために用いられる抗ストレス組成物である。ここで、コルチゾールおよびコルチコステロンは、副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種で、精神の安定に密接に関連するホルモンであり、コルチゾールはヒトなどの霊長類においてみられるホルモンであり、コルチコステロンはラットやマウスなどの齧歯類においてみられるホルモンである。
【0018】
本発明の組成物中のラクトコッカス属の乳酸菌の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明の組成物中に1×109個以上含まれ、好ましくは1×109~1×1012個含まれ、より好ましくは1×109~1×1011個含まれ、さらに好ましくは1×109~1×1010個含まれ、特に好ましくは1×109~5×109個含まれる。これらの含有量は、加熱処理した死菌体粉末を含有させたときの含有量であってもよい。
【0019】
本発明の組成物は、ラクトコッカス属の乳酸菌単独、または他の成分と混合して使用することもできる。他の成分としては、例えば、γ-アミノ酪酸(GABA)やテアニンのようなアミノ酸や、ユビキノール(還元型コエンザイムQ10)のような抗酸化物質などが挙げられる。
【0020】
本発明の別の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス食品組成物が提供される。ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する組成物を食品に含有させて、食品組成物として提供することもできる。本発明の組成物を含有させる食品としては、特に限定されるものではないが、例えば、サプリメント、飲料、発酵食品、ご飯類、パン、麺類、または菓子などが挙げられる。
【0021】
本発明の別の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス剤が提供される。本発明の抗ストレス剤には、ラクトコッカス属の乳酸菌を有効成分として含有していてもよい。
【0022】
本発明の別の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を含有する、抗ストレス医薬組成物(医薬品)が提供される。医薬品(医薬組成物)とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従って、経口製剤または非経口製剤として調製したものである。医薬品が経口製剤の場合には、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態をとることができる。なお、患者への摂取(投与)の簡易性の点からは、医薬品では、経口製剤であることが好ましい。ここで、製剤化のために許容されうる添加剤には、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0023】
本発明の別の態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象(好ましくは、抗ストレスが必要な対象)に摂取させることを含んでなる、ストレス低減方法が提供される。ラクトコッカス属の乳酸菌の対象への摂取は単回でも複数回でもよいが、単回であっても本発明の効果を奏することができる点で有利である。本発明の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象(好ましくは、抗ストレスが必要な対象)に摂取させることを含んでなる、ストレス低減方法(ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。本明細書において、「ヒトに対する医療行為」とは、医師等の処方を必要として、ヒトに対して医薬品を摂取させる(投与する)行為などを意味する。対象には、ヒト以外の動物(馬、牛などの家畜、犬、猫などの愛玩動物、動物園などで飼育されている鑑賞動物など)も包含される。
【0024】
本発明の別の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象(好ましくは、抗ストレスが必要な対象)に摂取させることを含んでなる、セロトニン分泌促進方法が提供される。本発明の別のより好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象(好ましくは、抗ストレスが必要な対象)に摂取させることを含んでなる、セロトニン分泌促進方法(ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。
【0025】
本発明の別の好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象(好ましくは、抗ストレスが必要な対象)に摂取させることを含んでなる、コルチゾールまたはコルチコステロン分泌上昇抑制方法が提供される。本発明の別のより好ましい態様によれば、ラクトコッカス属の乳酸菌を、対象(好ましくは、抗ストレスが必要な対象)に摂取させることを含んでなる、コルチゾールまたはコルチコステロン分泌上昇抑制方法(ヒトに対する医療行為を除く)が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、抗ストレスのための食品組成物または医薬組成物の製造に用いられるラクトコッカス属の乳酸菌の使用が提供される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、抗ストレスのためのラクトコッカス属の乳酸菌の使用が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、抗ストレスのためのラクトコッカス属の乳酸菌が提供される。
【0029】
本発明の抗ストレス剤や、抗ストレス医薬組成物におけるラクトコッカス属の乳酸菌等は、本発明の組成物と同じであってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0031】
試験例1:乳酸菌のセロトニン(5-HT)分泌作用の評価
培養細胞として、RIN-14B細胞(腸管分泌細胞様の培養細胞)(ATCC(
American
Type
Culture
Collection)から入手)を用いた。また、乳酸菌として、新潟県農業総合研究所食品研究センター保有菌株(NFRC株)を6株と、独立行政法人製品評価技術基盤機構保有菌株(NBRC株)を5株との合計11菌株を事前に95℃以上で10分間加熱処理した死菌体粉末を以下の試験で用いた。試験に使用した乳酸菌の11菌株は下記表1および
図1に記載の通りである。
【0032】
細胞培養プレートの各ウエルにRIN-14B細胞を2×10
5cell/wellとなるように播種し、播種後に乳酸菌の死菌体粉末を100μg/mLとなるように添加した。当該乳酸菌の死菌体粉末を添加しないものをコントロール(Control)とした。死菌体粉末の添加後に、インキュベータで37℃、5%CO
2で1時間培養した。培養後にELISAキット(Enzo社製)を用いて、ELISA法により細胞上清中に分泌されたセロトニン濃度を測定し、Controlと比較した。その結果を、下記表1および
図1に示す。
【0033】
【0034】
表1および
図1の結果から、Lactococcus lactis subsp. Lactis NBRC12007、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC3、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC4、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC7、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC9、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC10、およびLactococcus lactis subsp. Lactis NFRC11はセロトニン量比が1.2より高くセロトニンの分泌量が多いことから抗ストレス効果が高く、Lactococcus lactis subsp. Lactis NBRC12007、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC10、およびLactococcus lactis subsp. Lactis NFRC11はセロトニン量比が2.0より高くセロトニンの分泌量が多いことから抗ストレス効果がより高く、Lactococcus lactis subsp. Lactis NFRC11はセロトニン量比が3.0より高くセロトニンの分泌量が多いことから抗ストレス効果が特に高いことが分かった。
【0035】
試験例2:強制水泳試験
8週齢のBALB/cマウス(日本クレア社より入手)を4群に分け、各群n=6~7として、以下の表2の試験工程で試験を行った。
【表2】
【0036】
試験群は以下の通りである。
第1群:水を経口投与(強制水泳試験(Forced swim test: FST)未実施)(-FST)
第2群:水を経口投与(強制水泳試験実施)(+FST)
第3群:フルオキセチンを経口投与(20mg/kg-BW)(ポジティブコントロール;抗うつ剤として市販)(強制水泳試験実施)(+FST)
第4群:乳酸菌(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11)を経口投与(強制水泳試験実施)(+FST)
※第4群の乳酸菌は加熱殺菌してマウス1匹当りの投与量が1×109個となるように調製して経口投与した。
【0037】
強制水泳試験は、マウスを水槽(シリンダーサイズ:φ20×500mm、水温:23~25℃、水嵩:15cm)に入れて行った。強制水泳試験後直ぐに採血を行い、血漿中のコルチコステロン濃度(ng/ml)を、ELISAキット(Enzo社製)を用いて測定した。その結果を
図2に示す。
【0038】
強制水泳試験の結果によれば、第2群(水を経口投与(強制水泳試験実施))および第3群(フルオキセチンを経口投与(強制水泳試験実施))は、第1群(水を経口投与(強制水泳試験未実施))に比べて血漿中のコルチコステロン濃度は有意に増加した。一方、第4群(乳酸菌を経口投与(強制水泳試験実施))は、第2群および第3群に比べて血漿中のコルチコステロン濃度が低く、第1群に比べて有意な増加は見られなかった。
【0039】
従って、ラクトコッカス属の乳酸菌(特に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNFRCL-11)を有効成分として含有する組成物を用いることにより、血漿中のコルチコステロン濃度が低下して、水泳によるストレスが軽減されていることが分かり、当該組成物を抗ストレス組成物として用いることができることが分かった。