IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リモフィの特許一覧

<>
  • 特許-遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法 図1
  • 特許-遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法 図2
  • 特許-遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法 図3
  • 特許-遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法 図4
  • 特許-遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法 図5
  • 特許-遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/24 20110101AFI20250226BHJP
   H04N 21/6377 20110101ALI20250226BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20250226BHJP
   H04N 23/661 20230101ALI20250226BHJP
【FI】
H04N21/24
H04N21/6377
H04N23/60 100
H04N23/60 300
H04N23/661
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024187199
(22)【出願日】2024-10-24
【審査請求日】2024-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522494994
【氏名又は名称】株式会社CAP
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 絵里
(74)【代理人】
【識別番号】100230765
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 洋哉
(72)【発明者】
【氏名】壹岐 隼人
(72)【発明者】
【氏名】安井 鯨太
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特許第7288641(JP,B1)
【文献】特開2003-209741(JP,A)
【文献】国際公開第2004/077830(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/014170(WO,A1)
【文献】特開2014-049922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04N 23/60
H04N 23/661
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段により取得した撮影動画像を基に作成した視聴用動画を、通信ネットワークを介して複数のユーザの画像表示端末に配信して撮影疑似体験を提供する遠隔撮影システムであって、
(a)前記撮影動画像に任意のエフェクト処理が施されている場合、当該エフェクト処理を外した動画像を生成し、
(b)前記動画像を所定のフレームレートに基づく複数の静止画に分解して出力し、
(c)前記複数の静止画の中から一部の静止画を除去した静止画を基に再構成静止画を生成する、
ことによりシャッター出力用静止画を生成しておき、
前記視聴用動画の視聴中に、前記複数のユーザが前記画像表示端末上でシャッター操作に相当するフィンガーアクションをしたと判断した場合、シャッター操作のタイミングに対応する静止画を前記シャッター出力用静止画の中から特定し、
前記特定された静止画を前記ユーザの画像表示端末に表示する、
ことを特徴とする遠隔撮影システム。
【請求項2】
前記(c)を通じて、前記再構成静止画は、目つぶりと判断した静止画又は前記ユーザへの提供が認められない静止画が除去されている、請求項1に記載の遠隔撮影システム。
【請求項3】
前記撮影動画像にエフェクト処理が施されていても当該エフェクト処理を外さずに前記撮影動画像をそのまま前記動画像として生成する、又は前記再構成静止画にレタッチ処理を施す、の少なくとも何れかを含む、請求項1に記載の遠隔撮影システム。
【請求項4】
複数の前記撮影手段を備え、
各撮影手段に対応する視聴用動画が前記複数のユーザの各々の画像表示端末上で同時に表示された中から、所望の撮影手段からの視聴用動画を選択できると共に、前記視聴用動画の配信中における前記複数のユーザの各々の指定により前記視聴用動画の表示可能領域がユーザ毎に動的に切り替わる、請求項1に記載の遠隔撮影システム。
【請求項5】
前記視聴用動画に対して他のユーザがシャッター操作している状況をリアルタイムに認識できるインジケータが、前記画像表示端末に表示される、請求項4に記載の遠隔撮影システム。
【請求項6】
前記シャッター操作に相当するフィンガーアクションの回数を基に、前記複数のユーザの嗜好を分析することを含む、請求項1に記載の遠隔撮影システム。
【請求項7】
任意の背景を表示するデジタル仮想空間内に前記撮影手段により取得した撮影動画像を合成させて前記画像表示端末に配信する、請求項1に記載の遠隔撮影システム。
【請求項8】
前記ユーザの画像表示端末に表示される静止画は、当該ユーザを特定する情報を含む、請求項1に記載の遠隔撮影システム。
【請求項9】
撮影手段により取得された撮影動画像を基に作成した視聴用動画を、通信ネットワークを介して複数のユーザの画像表示端末に配信する情報処理装置が実行する遠隔撮影方法であって、
(a)前記撮影動画像に任意のエフェクト処理が施されている場合、当該エフェクト処理を外した動画像を生成する処理と、
(b)前記動画像を所定のフレームレートに基づく複数の静止画に分解して出力する処理と、
(c)前記複数の静止画の中から一部の静止画を除去した静止画を基に再構成静止画を生成する処理と、
によりシャッター出力用静止画が生成され、
前記視聴用動画の視聴中に、前記複数のユーザが前記画像表示端末上でシャッター操作に相当するフィンガーアクションをしたと判断した場合、シャッター操作のタイミングに対応する静止画を前記シャッター出力用静止画の中から特定する処理と、
前記特定された静止画を前記ユーザの画像表示端末に表示する処理と、
が実行される遠隔撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔撮影システム及び遠隔撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラで撮影された動画像をネットワーク経由で受信して視聴しながら、所望のタイミングでシャッター押下に相当する指示を送ることで、あたかも被写体を目の前にして撮影しているような体験を得られるアプリケーションが出現してきた。
視聴者が撮影場所に実際に行かなくても撮影行為を疑似体験でき、視聴者は自分で被写体を撮影しているかのような臨場感を得ることができる。しかも、遠隔操作なので物理的にどんなに遠方の場所であっても撮影可能であり、撮影現場での人数制限により撮影不可となってしまうこともない。したがって、遠隔撮影のニーズは今後ますます大きくなることが予想される。
【0003】
類似の構想に基づく先行文献として、例えば下記の特許文献がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の撮影会システムは、撮影現場において被写体を実際に撮影する撮影代行者(人間或いは装置)に対してズームアップ等の撮影条件を送ると、代理撮影者は当該撮影指示に基づき撮影条件を調整するように構成されている。
また、ライブ会場等で撮影した動画像をサーバ経由で視聴者端末に向けて一斉に動画配信し、お気に入りのシーンに対して視聴者端末上でシャッター操作に相当するフィンガーアクションを実行する遠隔撮影システムが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-209741号公報
【文献】特許7288641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、基本的に視聴者が極少数の撮影会を対象としている。それゆえ、代理撮影者は視聴者からの要求を受け入れて撮影条件をその都度変更することが可能である。
しかしながら、本願発明が対象とする遠隔撮影会システムは、多数の視聴者が参加することを前提としているので、それぞれの視聴者からの多種多様な要望にあわせた撮影条件を受け付けることは現実的には不可能である。特許文献1とは異なり、撮影会システムに参加する視聴者の数が多くなるにつれ、視聴者全員の希望どおりに撮影対象の指定や撮影アングルや倍率などに応えていては撮影会を進行することができなくなってしまう。
【0006】
特許文献2に記載の発明は、多数の視聴者が参加することを前提とし、各視聴者が所望の撮影シーンを自由に決めながら、撮影アングルや倍率などを変更できる。ただし、撮影した動画データを通信ネットワークにリアルタイムでアップロードしてこれをサーバが受信し、さらに視聴者端末に向けて当該動画データを瞬時にダウンロードする構成である。このアップロード及びダウンロードは、所定の時間間隔(例えば、5秒、30秒など)で順次行われ、併せて各視聴者によるシャッタータイミング時刻の情報はシャッター操作の都度サーバにリアルタイムでアップロードされることから、ネットワーク負荷が大きくなってしまう。そのため、ネットワークの通信環境が悪い場合には、視聴動画が一時停止したり、不連続な動画配信になってしまうなど、視聴者への動画配信を高品質で安定的に行うことが困難という課題が発生する。
【0007】
また、人物の動画配信において視聴者がシャッターしたタイミングがいわゆる目つぶりの時であったり、動いた被写体の軌跡が写り込んでしまいブレて撮影されることも少なからずある。本来、これらはミスショットとして取り除かれる対象であって、視聴者が入手したい静止画ではない。また、アーティストの写真・画像や実演等には著作権や著作隣接権が発生しており、特にメージャーアーティスト等の場合はNGカットの画像が市場で晒されることを極力回避する要望の高いことが知られている。
【0008】
そこで、本発明は、視聴者の視聴通信環境に影響されない動画配信の撮影サービスであって、どのようなシャッタータイミングであってもミスショット又はNGカットを含むことが無く且つ高品質な静止画(写真)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る遠隔撮影システム及びその方法は、撮影手段により取得した撮影動画像を基に作成した視聴用動画を、通信ネットワークを介して複数のユーザの画像表示端末に配信するものであって、
(a)前記撮影動画像に任意のエフェクト処理が施されている場合、当該エフェクト処理を外した動画像を生成し、
(b)前記動画像を所定のフレームレートに基づく複数の静止画に分解して出力し、
(c)前記複数の静止画の中から一部の静止画を除去した静止画を基に再構成静止画を生成する、
ことによりシャッター出力用静止画を生成しておき、
前記視聴用動画の視聴中に、前記複数のユーザが前記画像表示端末上でシャッター操作に相当するフィンガーアクションをしたと判断した場合、シャッター操作のタイミングに対応する静止画を前記シャッター出力用静止画の中から特定し、
前記特定された静止画を前記ユーザの画像表示端末に表示することを特徴とする。
【0010】
また、前記再構成静止画は、目つぶりと判断した静止画又は前記ユーザへの提供が認められない静止画が除去されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る遠隔撮影システム及びその方法は、撮影及び編集した高品質な動画像データを基に静止画を出力するため、いわゆるスクリーンショットのような粗い画像がシャッター出力とならない。また、所定のフレームレートに基づき構成される複数の静止画の中からミスショットとして扱われるもの及びNGカット画像になるものを除去して構築したシャッター用静止画をあらかじめ準備しておき、この中からしか視聴者に提供される静止画は書き出されない。したがって、いかなるシャッター操作時点であっても書き出される静止画にはミスショット画像やNGカット画像が含まれることはない。高度の撮影技術を有していない素人の視聴者であっても、プロカメラマンと同等の撮影ができると共に、被写体画像の著作権等を管理する側が許容する静止画のみを視聴者に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】遠隔撮影システムの一実施形態における全体構成を示した図である。
図2】シャッター出力用静止画の生成過程を示したフローチャートである。
図3図3(A)は、視聴用動画と、除去すべきカットが指定されたコマ画像との関係を示し、図3(B)は、シャッタータイミングと、取得する静止画との関係を示した図である。
図4】視聴端末に表示されるマルチアングル画面の一例を示した図である。
図5】同一の動画像を基に異なる表示領域を切替えることを説明するための図である。
図6】シャッターインジケータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら、本発明に係る遠隔撮影システムの一実施形態について説明する。図1は、遠隔撮影システム100の全体構成を示す。
遠隔撮影システム100は、撮影イベント運営会社1とプラットフォーム運営会社2と複数のユーザ3との相互関係で構成され、インターネットなどの通信ネットワーク4を介して各種のデータを送受信するよう構成されている。なお、本実施形態においては、撮影会場での撮影を例にして説明するが、撮影会場(スタジオやライブ会場などを含む)という室内空間でなければならないというものではなく、室外の任意の場所(例えば、ロケ地など)での撮影であってもよい。
【0014】
撮影イベント運営会社1は、撮影会の開催日時、撮影場所、撮影会場で被写体になるモデルやアーティストなどを企画し、ホームページやSNSなどを通じて遠隔撮影会が開催されることを告知する。撮影イベント運営会社1と事前に契約したプラットフォーム運営会社2は、遠隔撮影システム100のプラットフォームを提供する事業体であり、企画された撮影会を実現する上で必要な技術的サポートの全般を担う。プラットフォーム運営会社2は、撮影イベント運営会社1にプラットフォームをOEMで提供するため、撮影会が撮影イベント運営会社1により実施されるものとしてユーザ3に認識される。
なお、図1に示す遠隔撮影システム100は、撮影イベント運営会社1とプラットフォーム運営会社2を別主体として扱うが、撮影イベント運営会社1及びプラットフォーム運営会社2が同一主体として遠隔撮影システム100を構成することでも本発明の作用効果において何ら変わりはない。また、ユーザへのイベント開催案内は、撮影イベント運営会社1に代わってプラットフォーム運営会社2が行うことでもよい。
【0015】
撮影イベント運営会社1は、通信ネットワーク4を介してユーザから遠隔撮影会の参加申し込みを受け付ける。撮影イベント運営会社1は、撮影した動画像及び付随する音声(以下、「撮影動画像」という。)を編集して作成した視聴用動画を情報処理装置(例えば、サーバやテレビの編集機などを含む。以下では「サーバ」として記載する。)に格納する。サーバからアップロードされた視聴用動画が、通信ネットワーク4を介してユーザ3へ提供される。本実施形態では、プラットフォーム運営会社2がサーバを保有・管理しているが、撮影イベント運営会社1内のサーバであってもよいし、さらにクラウド上にある仮想サーバであってもよい。以下、サーバは「クラウドサーバ」とも言う。
【0016】
撮影会場では被写体を撮影するための1以上の撮影装置6(以下、「カメラ6」という。)の設置や動画像の撮影及び録音の準備が行われる。撮影会場では、人間がカメラ6を保持して撮影してもよいし、サーバからの指令信号で人手を介さずにカメラ6を自動制御するよう司ってもよい。また、本実施形態では、複数のカメラ6(例えば、180度や360度など被写体の周囲にわたり複数のカメラを設置することを含む。)で被写体を撮影する場合の例を示すが、1台のカメラ6による撮影であってもよい。
【0017】
プロモーションビデオやミュージックビデオは動画編集されるが、本願発明におけるサーバに保管された撮影動画像も動画/静止画エディターを用いて動画及び静止画の編集処理を行う。撮影動画像を適宜編集したものが視聴用動画としてユーザ3へ提供される。編集方法は種々あるが、代表的なものとしては複数のカメラ6で様々なアングルから撮った映像を同時に再生しながらシーンを切り替えることで次々に場面転換するマルチカム編集や、ノイズ除去や、任意の映像を重ね合わせるオーバーレイや、テキスト挿入などがある。その他にも手ぶれ補正や特殊な視覚・音響効果の付加など任意の編集処理を含む。
なお、本実施形態では撮影動画像に対して編集を施して生成したものを視聴用画像とするが、撮影動画像をそのまま視聴用画像として視聴者に配信する場合もあり得る。
【0018】
撮影会に参加するユーザである参加者3は、視聴端末3-1~3-N(以下、「視聴端末3N」とあらわす。)を有し、通信ネットワーク4経由で視聴用画像を視聴するものとする。視聴用画像の配信を受ける際には、視聴端末3Nを通信ネットワーク4に接続しておく。視聴用画像の配信が開始すると、参加登録した参加者3は各自の視聴端末3Nで視聴しながら、視聴端末3Nのアプリ画面上にはシャッター操作に相当するアイコン7が表示されているので任意のタイミングでアイコン7を押下していわゆるシャッター操作を行う。
【0019】
シャッター操作により参加者3はお気に入りのシーンの静止画(「コマ画像」と称されることもある。)を獲得することになるが、本願発明はこの静止画の書き出し方法に特徴があるので説明する。
まず、視聴用動画とは異なる、シャッター出力用静止画を視聴前にあらかじめ準備しておく必要がある。図2は、シャッター出力用静止画の生成過程を示したフローチャートである。
【0020】
図2に示すとおり、サーバに格納されている視聴用動画を読みだす(ステップS20)。上述したように視聴用動画は様々な動画編集がされているので、画像や音声に施されているエフェクトを外した動画像を生成する(ステップS21)。エフェクトとは、映像合成、色表現、及びエコー処理を含むものだが、具体的には例えば、雷や雨といった環境的な効果を追加したり、完成した画像にボカシやデコボコした効果を与えたり、スクラッチやホーンなど特殊な音が使われていたり等、何らかの効果を追加することである。ステップS21では、これらのうち、視覚的な効果に関連するエフェクトを外す処理を行う(ただし、音に関連するエフェクトを外す処理を排除するわけではない)。なお、従来の一般的な遠隔撮影システムの場合、視聴端末3Nの液晶画面がFHD(1920×1080ピクセル)対応であれば、あえて高画質の静止画像(コマ画像)を切り出して提供するということは行なっていない。これに対し、本実施形態の遠隔撮影システム100は、8Kの(7680×4320ピクセル)或いは4K(3840×2160ピクセル)等の超高解像度・高精細映像の画質をベースに撮影をしており、視聴端末3Nの液晶画面がFHD画質であっても、8Kや4K等といった高精細な静止画像を参加者3に提供するために、高画質の視聴用動画からエフェクトを外した高画質動画を生成しておく。
【0021】
次に、ステップS21で生成した動画像から、所定のフレームレートに基づく複数の静止画を出力する(ステップS22)。つまり、動画像を複数のコマ画像に分解する。配信動画が4K画像で、30fps(1秒間が30枚の画像で構成されるフレームレート)である4K30fpsの場合、視聴用動画配信の開始時刻から1/30=0.0333秒を加算した経過時間により各コマ画像を識別することができる。なお、他の実施形態ではエフェクトを外さず(即ち、ステップ21を行うことなく)、ステップ20からステップ22にダイレクトに進むようにしてもよい。
【0022】
次に、ステップS22で作成した複数のコマ画像の中から一部の静止画を除去する(ステップS23)。除去する一部の静止画とは、目つぶりやふさわしくないポージング等が含まれたものである。また、アーティスト等の著作権等を管理する側が許容しないNGカット画像も除去しておく。以下では、これらをまとめてNGカットと言う。
図3(A)は、編集済みの視聴用動画と、除去すべきと判断されたNGカットが指定された複数のコマ画像の関係を示している。図3(A)は、エフェクトが外された1秒間30枚の視聴用動画から書き出される静止画を例にしており、4,5,11,12,13,21,22,27の各コマが目つぶり等を理由にNGカットとして指定されている。サーバには、このようなNGカットが省かれた複数のコマ画像から構成された再構成静止画を格納しておく(ステップS24)。なお、NGカットに相当する一部の静止画を実際に除去せず、どのコマがNGカットであるかを識別できるようフラグやテーブル等を用いたソフトウェア処理によってNGカットを疑似的に省くというやり方で再構成静止画に相当させるようにしてもよい。
【0023】
本実施形態の場合、どのコマ画像をNGカットに指定するかを人手で決定しているが、顔認識ソフトや視線追跡ソフトなどの画像認識アプリケーションやAIアプリケーションを用いて、NGカットの選別を自動で行うようにしてもよい。
【0024】
次に、ステップS24で作成した再構成静止画にレタッチ処理を施して(ステップS25)、シャッター出力用静止画を構築しサーバに格納しておく(ステップS26)。レタッチ処理とは、例えば、被写体の肌を色調整したり、肌の状態をきめ細かくしたり、目を大きくするなどの顔又は体の部位の修正、さらには背景色又は衣装の色を変化させる画像処理を含む。また、特定の部分だけ明るくする、不要なものを消す、集合写真に欠席者を合成するなどの再構成静止画に含まれていない対象物の追加及び削除のための処理を含んでもよく、レタッチの種類や内容に特段の制約はない。なお、必ずレタッチ処理をしなければならないというものではなく、必要に応じて行えばよい。
【0025】
このようにしてシャッター出力用静止画を準備しておいた後、視聴用動画を参加者3へ配信する。視聴用動画の配信開始時刻は通信ネットワーク4に繋がるサーバで一元管理され、各参加者3のシャッター操作時刻は配信動画の開始時刻との関係で管理される。つまり、配信動画の開始時刻からの経過時間がシャッター操作時刻をあらわす。視聴用動画を複数の参加者に同時に配信する場合、サーバは各参加者に共通の1つの開始時刻を管理することになるが、参加者ごとに開始時刻をずらして配信する場合にはサーバは各参加者に対応する開始時刻を管理するものとする。
【0026】
撮影会に参加する参加者3が各自の視聴端末3Nで受信する動画に対してシャッター操作をした時刻は、リアルタイムでサーバへ送信されてサーバ側で記録される。当該時刻はUNIX(登録商標)タイムスタンプとして秒又はミリ秒単位のフォーマットとして扱い、上記配信動画の開始時刻(同様に、UNIX(登録商標)タイムスタンプとして記録しておく。)を起点とする経過時間を基に、参加者3がシャッター操作した時刻に対応するコマ画像を特定することが可能である。
【0027】
また、視聴端末3Nの通信環境によってレイテンシ遅延が発生した場合であっても、本実施形態の遠隔撮影システム100においてはシャッター操作時刻の記録のための通信はミリ秒内に抑えられるように低レイテンシを維持している。もし参加者側が視聴用動画の配信中にシャッター操作した際に、例えば移動中であったり、通信環境が悪い建物等の空間に入ってインターネットとの接続が切断するというトラブルが発生した場合でも、動画配信のために視聴端末3Nにインストールしたプラットフォームに、視聴端末側でシャッター操作時刻を一時キャッシュして、接続が回復したら自動的に再度同期を取る仕組みになっている。したがって、参加者がシャッター操作したにもかかわらず、サーバがその操作時刻を記録漏れしてしまうことが無いよう対策している。
【0028】
参加者3は、視聴用動画が視聴端末3Nに表示されるので、これを見ながら自分の所望のタイミングで視聴端末3N上のアイコン7を押下すると、お気に入りのシーンの静止画を取得できる。ただし、取得する静止画が、シャッタータイミングと常に厳密に一致するわけではないことが本願発明の特徴である。図3(B)は、参加者3によるシャッタータイミングと、取得する静止画との関係を示した図である。
【0029】
図3(B)の30コマは図3(A)と関連しており、4,5,11,12,13,21,22,27の各コマはNGカットである。仮に、参加者3のシャッタータイミングT1が4コマ目に合致する(又は所定の時間幅でほぼ合致するとみなせる、以下同様)場合、4コマ目はNGカットであることからT1に最も近い非NGカットである3コマ目の静止画が切り出される。同様に、参加者3のシャッタータイミングT2が11コマ目に合致する場合はT2に最も近い非NGカットである10コマ目の静止画が切り出される。シャッタータイミングT4も同様である。もちろん、参加者3のシャッタータイミングが非NGカットの静止画に対応する場合はそのコマ目の静止画が切り出される(例えば、T3の17コマ目やT6の29コマ目)。さらに、参加者3のシャッタータイミングT5が27コマ目の場合は、27コマ目がNGカットであるので、非NGカットである26コマ目か28コマ目のどちらがコンマ何秒の差で当該シャッタータイミングに近いかを判別して決定する。
【0030】
4K30fpsを例にすれば、コマ間のタイムラグは上述したようにわずか0.0333秒であるため、参加者3はシャッタータイミングの静止画が切り出されていると知覚するのであって、厳密には一致していないシャッタータイミング周辺のコマが切り出されていると認識することはない。したがって、参加者3は、視聴用動画を見ながらアイコン7を押下してシャッターすると、まさにシャッタータイミングに相当する高画質静止画を撮影したかのように体験することができ、しかも取得する静止画は目つぶり等のNGカットを含まないシャッター出力用静止画から抽出されるので、ミスショットを含むことがないことが保証されている。また、アーティスト管理側にとっても市場にNGカットの画像が出回ることを未然に防止することができることになる。
【0031】
シャッター操作して切り出された静止画像(コマ画像)は、視聴端末3N上にリアルタイムで表示され、最新の静止画像を表示する。視聴用動画の配信終了後ではなく、撮影中にシャッター操作した時刻に対応する画像の表示をしているのは、参加者3が切り出したコマ画像を視聴端末3Nで即時確認し、想定する画像が撮れていなかった場合に直ちに撮り直しができることを可能にするためである。デジタルカメラで普通に撮影した場合にカメラの液晶モニタで撮影直後の画像を確認できることと同じ感覚を、本実施形態の遠隔撮影システム100における撮影操作においても体験でき、撮影の臨場感を得ることが可能である。
【0032】
ただし、最新の静止画像のみを表示するだけでなく、撮影した静止画を順次加算する形態で表示してもよいし、視聴端末3Nの画面サイズが小さくて視聴用動画の表示エリアが小さい場合には、視聴終了後に撮影した静止画像をまとめて表示されるスクロール表示にしてもよい。なお、シャッター操作して静止画像が1つ切り出されると説明しているが、アイコン7を押下し続ければ、対応する静止画像が連続して切り出されて、実質的に動画が再生される仕組みにしてもよいことは言うまでもない。
【0033】
なお、視聴者3が所望のタイミングでシャッター7を押下すると、シャッター回数に応じた課金がされたり、1の視聴用動画の配信において例えば100回、200回などのシャッター回数制限を設けるようにしてもよい。また、シャッター料金は無料の場合や、例えば100回ごとのバルク料金設定であってもよい。
【0034】
視聴用動画を視聴中の参加者3のシャッター操作回数は、参加者3の現実のアクションに基づく統計データとなるので、シャッター操作を通した感情を数値化することに繋がる。例えば、撮影会がファションショーの場合、スタイリングデータの集計が可能になるため、多くの参加者が嗜好する洋服の傾向を把握することが可能になる。また、撮影会が公開モデルオーディションの場合、人気データの集計ができるし、インフルエンサーが出場する撮影会の場合はシャッターが多い表情やポージングを見て、人気ポイント分析をすることで、他のモデルに適用することが可能になる。したがって、撮影イベント運営会社1はサーバに送信されたシャッター回数を販売することが可能である。
【0035】
また、シャッター操作により取得した静止画を参加者3毎に把握することができる。さらに、本実施形態の遠隔撮影システム100は、各静止画にシャッター操作した参加者3を識別する情報を組み入れてから各参加者3にその静止画を提供する。例えば、各静止画の最下部に小さなフォントで、「Captured by ABC」(ABCは各参加者固有のIDや氏名等)を重畳表示しておく。各参加者3にしてみれば自分固有の静止画という感情が湧く。
【0036】
また、この識別情報を参加者3側で消去不可能に処理しておけば、その静止画が著作権者等に無断で流通されたとしても、当該識別情報から無断流出をさせた参加者3を特定できるというメリットがある。なお、重畳表示は、透かし表示又は非表示の形態にして、識別情報が静止画に組み入れられていることが直ちに判別できないようにしてもよい。
【0037】
図4は、撮影会に参加して視聴用動画を視聴する参加者の視聴端末3Nに表示される画面の一例を示している。本実施形態の遠隔撮影システム100は、複数のカメラ6で被写体を撮影する。したがって、カメラの数に相当する数のアングルで被写体を撮影した複数本の視聴用動画が視聴端末3Nに表示されるようにする。具体的には図4に示すように、画面上には複数の区画41-45に分けられた異なる視聴用動画が映し出される。
つまり、視聴端末3Nに複数のカメラからの視聴用動画が同時に画面分割して表示されているマルチアングル画面例である。これは、撮影会で使用するカメラの数に整合し、それぞれのカメラの被写体に対する位置・向きや角度が異なるので、異なる視聴用動画となる。
【0038】
参加者3は、視聴端末3Nに表示される複数のカメラ6の視聴用動画の中から所望のカメラによる画像の表示領域をタップするなどして選び、そのカメラの画像のみが画面全部又は一部に拡大表示45され、参加者3は好きなタイミングでシャッターボタン7を押下することができる。別のカメラ6からの画像を選択したければ、再度図4に示す複数の視聴用動画からクリック操作をして繰り返すことができる。
【0039】
図4のようなマルチアングルによる画面表示は、多数の参加者3を前提とする撮影会において非常に都合がよい。各視聴者が、自分の好きなアングル(撮影角度や位置)のカメラからの動画を選択すれば、ほぼ参加者全員の好みに適応させることができるからである。さらに本願発明は、多数の参加者のニーズに的確に応えるという観点から、表示可能領域の切替えによるアングル調整を行う。つまり、参加者の視聴端末上の画面解像度は一般的にFHD(1920×1080ピクセル)設定であるが、実際の動画撮影では、例えば、8Kの(7680×4320ピクセル)或いは4K(3840×2160ピクセル)の超高解像度・高精細映像の画質をベースに撮影をしておくことで、表示可能領域の変更ができるようにしている。
【0040】
図5は、FHD、4K、8Kそれぞれによる画像範囲を示した例である。各参加者3は視聴端末上で領域変更のためのタップやピンチなどの指操作やマウス操作をすることによって、第1領域であるFHD範囲51外である第2領域(4K)52や第3領域(8K)53まで表示可能領域を行き来することができるため、各視聴者が所望する画角(広角、標準、望遠)に柔軟に対応できる。その結果、視聴者自身が撮影現場でカメラ6を使って画角調整をしているかのような体験を提供できる。
【0041】
なお、撮影する動画の解像度は8Kもしくは4Kに固定又は限定するものではなく、通信技術や液晶表示技術などの発展にあわせてより増大されることは言うまでもない。さらに、視聴者が視聴端末上で表示可能領域を変更する際の撮影サイズやフレーミングの比率の設定は、視聴端末の液晶モニタのフレーミングに合わせて、各視聴者が所望する任意の値に変更することができるものである。
【0042】
上述した画質切替えによる表示可能領域の変更は、特に、複数の視聴者がカメラ1台で撮影した画像を基にシャッターする場合に顕著な利便性を生じさせる。カメラ1台対視聴者多の撮影会である。1台のカメラの固定的なアングルでは多数の視聴者の希望に応じることが難しいが、本願発明によれば1台のカメラによる動画像を基に各視聴者が視聴端末上で自由に領域サイズを選べることになるからである。
ただし、これは本実施形態のような複数の撮影カメラを使用するケースであっても有効である。複数台のカメラが更にN倍化されて撮影することに相当するため、視聴者数がどんなに多くなっても、各視聴者が望む拡大/縮小などの撮影操作の指示にきめ細かく対応できることになる。
【0043】
本願発明は、視聴用動画の配信から視聴者が好きなタイミングでシャッターするものであるが、多数の視聴者が“同時に”視聴していることを前提とする。このような視聴状況にあっては、多数の参加者3がシャッターしているタイミングの画像は、多くの場合はシャッターすべき、すなわち切り出し画像として最適なシーンであると考えられる。
【0044】
しかしながら、遠隔撮影による視聴用動画の各参加者は、他の参加者がどのタイミングでシャッターしているかを把握しているわけではない。実際の撮影会場に行って撮影する場合であれば、自分以外の多くの者がシャッターするのが分かるので自分も今が良いシャッターチャンスであると認識してシャッターすることができる。しかし本願発明のような遠隔撮影システムの場合、他人のシャッターチャンスを知り得ないので、あとでシャッターしておくべきだったと後悔する可能性がある。
【0045】
そこで、第2の実施形態の遠隔撮影システムは、各参加者のシャッター操作の時刻がリアルタイムでサーバに送信されることを利用し、他の参加者のシャッター状況がリアルタイムで視認可能な表示で把握できるようにする構成を含む。例えば、図6に示すように、マルチアングル画面41-45のそれぞれにシャッターインジケータ61-65が設けられ、現在のシャッター数の総数をあらわすインジケータ値が表示されるようにする。これは、例えば現時点から5秒前までの間における総シャッター数を示し、5秒毎に更新される。ここで、5秒は一例であって任意の秒数に設定可能であってよい。
参加者Aは例えば区画41に対応するカメラアングルによる視聴用動画からシャッターをすると計画していたが、マルチアングル画面でシャッターインジケータ62を見て、区画42に対応するカメラアングルよる視聴用動画に多くの参加者がシャッターしていることが分かったとする。視聴者Aは、区画41のカメラアングルから区画42のカメラアングルに切り替え、他の視聴者が着目しているシーンに対して同じ様にシャッターすることができるようになる。
【0046】
図6に示す以外のインジケータの表示方法としては、例えば、参加者数の所定の割合(例えば半数以上)がシャッターしているカメラがあると、そのカメラに対応するマルチアングル画面上の画面枠41-45をハイライト表示したり、画面枠41-45のサイズを相対的に大きくして目立つように表示するなどがある。また、シャッター数を曲線グラフにしたインジケータであってもよい。
【0047】
第3の実施形態の遠隔撮影システムは、ボリュメトリック技術により、被写体の周囲360度を複数のカメラ6で撮影した撮影動画像のデータから、サーバが3Dデータを生成して視聴端末3Nに配信することを特徴とする。
ボリュメトリック技術は、撮影背景を360度グリーンバックで設営して被写体を撮影し、撮影後に3Dデータを生成する。グリーンバックによる撮影にすることで、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といったバーチャルな背景が描画された中に被写体の動画データを合成し、画像の加工やエフェクト追加も自在に行うことができる。
【0048】
これにより、参加者はあらゆる角度と視点から前後左右上下を自在に動き回れる自由度を体感しながらシャッター操作が可能になる。ボリュメトリック撮影データを使えば、まるでゲームの中のようにカメラが被写体と被写体の間をすり抜け、中空からそれらを俯瞰するといった、自由視点映像や複数の自由視点映像の切り替えが可能である。
【0049】
上述した複数の実施形態による遠隔撮影システムによって、多数の視聴者に向けて配信される1つの動画ストリームが、視聴者すべての要求、例えば、撮影角度、位置、拡大/縮小などの撮影操作の指示に応えることができるようになる。また、視聴者が自由視点で最適なショットの画像切り出しができるよう支援することができる。さらに、仮想現実世界(メタバースなど))よるバーチャル撮影会、及びその写真館の経営をすることを可能にする。
【0050】
上記のサーバによる処理は、携帯電話やパソコン、或いはデータ中継器が実行するものであってもよい。また、本発明は、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードしたプログラム、及びこれら記憶媒体を発明の範疇として含む。
【0051】
さらに、通信ネットワークを介して遠隔撮影システムと通信する視聴端末は、インターネットや専用線等のネットワークに接続されたコンピュータである。具体的には、例えばPC(Personal Computer)、携帯電話やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、タブレット、ウェアラブル(Wearable)端末等が挙げられる。通信ネットワークに有線又は無線で接続されたPC端末及び携帯端末が互いに通信可能に設定されることにより、遠隔撮影システムを含むビジネススキームを構成する。
【符号の説明】
【0052】
1 撮影イベント運営会社
2 プラットフォーム運営会社
3 参加者
3N 視聴端末
4 通信ネットワーク
6 カメラ
7 シャッターアイコン
100 遠隔撮影システム
【要約】
【課題】視聴者の視聴通信環境に影響されない動画配信の撮影サービスであって、どのようなシャッタータイミングであってもミスショットを含むことが無く且つ高品質な静止画(写真)を提供することを目的とする。
【解決手段】撮影及び編集した高品質な動画像データを基に静止画を出力するため、いわゆるスクリーンショットのような粗い画像がシャッター出力とならない。また、所定のフレームレートに基づき構成される複数の静止画の中からミスショットとして扱われるものを除去して構築したシャッター用静止画があらかじめ準備しておく、シャッター操作時点に対応して書き出される静止画には目つぶり等の画像が含まれることはない。したがって、プロカメラマンのような撮影技術を有していない素人の視聴者であっても、ミスショットのない静止画(写真)を得ることができると共に、被写体画像の著作権等を管理する側が許容する静止画のみを視聴者に提供できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6