(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】金属材料および該金属材料と基材とを備えた接合体
(51)【国際特許分類】
C23C 24/08 20060101AFI20250226BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20250226BHJP
B32B 15/02 20060101ALI20250226BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
C23C24/08 B
B22F7/04 D
B32B15/02
B32B15/04 Z
(21)【出願番号】P 2020206723
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】前野 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智広
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慶樹
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-238809(JP,A)
【文献】特開昭64-083686(JP,A)
【文献】特開2006-321948(JP,A)
【文献】特開2006-210197(JP,A)
【文献】特表2017-510701(JP,A)
【文献】特開昭59-171195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C24/00-30/00
B32B15/00-15/20
B22F7/02-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンを99重量%以上含む基材と、
該基材上に形成され
た金属材料と、
を備えた
接合体であって、
ここで、前記金属材料は、
ニッケルを含む金属層と、
該金属層上に形成された、NiOを主体とする酸化物層と、
該酸化物層上に形成された、貴金属微粒子からなる貴金属微粒子焼結体層と、
を備えた積層構造を有する、接合体。
【請求項2】
前記金属層は、ニッケル-タングステン合金を含む、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記ニッケル-タングステン合金は、Ni
4
Wを含む、請求項2に記載の接合体。
【請求項4】
前記貴金属微粒子焼結体層を構成する貴金属微粒子の主構成金属元素は金(Au)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項5】
前記基材および前記金属材料の間に、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した拡散層が存在し、
前記拡散層において、該拡散層に含まれるニッケル量が、当該拡散層中のタングステンおよびニッケルの原子数の合計100原子%としたときに、少なくとも2原子%である部分が存在することを特徴とする、請求項
1~4のいずれか一項に記載の接合体。
【請求項6】
前記拡散層において、該拡散層に含まれるニッケル量が、当該拡散層中のタングステンおよびニッケルの原子数の合計を100原子%としたときに、少なくとも2原子%である部分の厚みが、5nmまたはそれ以上である部分が存在する、請求項
5に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料ならびに該金属材料と基材とを備えた接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属を主体とする層(以下、単に「金属層」ともいう)どうしが中間層を介して積層された材料が、半導体分野において広く用いられている。例えば、下記特許文献1には、半導体装置の製造工程でウェーハ等を載置して固定する静電チャックが開示されており、かかる静電チャックは、タングステン層および銀ろうがニッケルめっき層を介して積層された材料を備える旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らの検討によると、金属層どうしがニッケルめっき層を介して積層された場合、ニッケルめっき層の硬くて脆いという性質により、該金属層どうしの密着性が低いことが分かった。
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、金属層どうしが中間層を介して密着性高く積層された金属材料を提供することである。また、かかる金属材料と基材とを備える接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を実現するべく、本発明は、ニッケルを含む金属層と、該金属層上に形成された、NiOを主体とする酸化物層と、該酸化物層上に形成された、貴金属微粒子からなる貴金属微粒子焼結体層とを備えた積層構造を有する金属材料を提供する。
【0006】
本発明者は、タングステンを主体として構成される基材上に、ニッケル微粒子を含むペースト状(スラリー状、インク状を包含する。以下同様。)の組成物を塗布し、乾燥させた後、還元雰囲気下、1000℃で焼成することによりニッケルを含む金属層を得た後、該金属層上に貴金属微粒子を含むペーストを塗布し、乾燥させた後、焼成することにより、当該金属層および貴金属微粒子焼結体層が、NiOを主体とする酸化物層を介して密着性高く積層された金属材料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
ここで開示される金属材料の好ましい一態様において、上記金属層はニッケル-タングステン合金を含む。
従来、ニッケル-タングステン合金(即ち、ニッケルおよびタングステンから構成された金属間化合物)が生じると、その部分が脆くなるため好ましくないとされてきたが、ここで開示される技術によると、ニッケル-タングステン合金を含む金属層が、NiOを主体とする酸化物層を介して貴金属微粒子焼結体層と密着性高く積層された金属材料を提供することができる。
【0008】
ここで開示される金属材料の好ましい一態様において、上記ニッケル-タングステン合金はNi4Wを含む。
上述したような理由により、Ni4Wを含むニッケル-タングステン合金は、ここで開示される技術を適応する対象として好適である。
【0009】
ここで開示される金属材料の好ましい一態様において、上記貴金属微粒子焼結体層を構成する貴金属微粒子の主構成金属元素は金(Au)である。
金(Au)は、熱伝導性、電気伝導性等に優れているため、金微粒子焼結体層を備えた金属材料は、種々の工業製品に用いることができるため有用である。
【0010】
また、上記目的を実現する一つの側面において、ここで開示される金属材料と基材とを備えた接合体が提供される。
かかる接合体は、種々の工業製品に用いることができるため有用である。
【0011】
ここで開示される接合体の好ましい一態様においては、上記基材がタングステンを主体として構成される。
かかる構成の接合体は、半導体製品等に好適に用いることができる。
【0012】
かかる態様の接合体において、好ましくは基材および上記金属材料の間に、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した拡散層が存在し、ここで、該拡散層において、該拡散層に含まれるニッケル量が、当該拡散層中のタングステンおよびニッケルの原子数の合計100原子%としたときに、少なくとも2原子%である部分が存在する。
【0013】
本発明者は、タングステンを主体として構成される基材上に、ニッケル微粒子を含むペーストを塗布し、乾燥させた後、還元雰囲気下、1000℃で焼成することでニッケルを含む金属層を得た際に、該基材および該金属層の間に、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した拡散層が存在し、該拡散層中にはニッケルが少なくとも2原子%含有される部分が存在することを見出した。なお、タングステンマトリックス中にニッケルが2原子%以上拡散している態様は、これまでに報告されておらず、今回初めて実現されたものである。
【0014】
また、かかる態様の接合体において、好ましくは上記拡散層に含まれるニッケル量が、該拡散層中のタングステンおよびニッケルの原子数の合計を100原子%としたときに、少なくとも2原子%である部分の厚みが、5nmまたはそれ以上である部分が存在する。
かかる構成によると、基材上に金属層がより密着性高く形成された接合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る金属材料の構成を示す模式図である。
【
図2】一実施形態に係る接合体の構成を示す模式図である。
【
図3】実施例1に係る金属材料におけるFIB処理の態様を示すHAADF-STEM観察画像(1万倍)である。
【
図4】実施例1に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片におけるTEM-EDX元素マッピングの結果を示すHAADF-STEM観察画像(3万倍)である。
【
図5】実施例1に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(50万倍)と、該観察画像中のライン部分PにおけるTEM-EDXライン分析の結果を示すグラフである。
【
図6】
図5のグラフのS部分を構成する生データを掲載した表である。
【
図7】実施例1に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(3万倍)と、該観察画像中のA領域およびB領域における電子回折図形である。
【
図8】実施例1に係る接合体が備える金属材料のFE-SEM観察画像(2万倍)である。
【
図9】実施例1に係る接合体が備える金属材料のFE-SEM観察画像(10万倍)である。
【
図10】比較例1に係る金属材料におけるFIB処理の態様を示すHAADF-STEM観察画像(1万倍)である。
【
図11】比較例1に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片におけるTEM-EDX元素マッピングの結果を示すHAADF-STEM観察画像(3万倍)である。
【
図12】比較例1に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(50万倍)と、該観察画像中のライン部分QにおけるTEM-EDXライン分析の結果を示すグラフである。
【
図13】
図12のグラフのT部分を構成する生データを掲載した表である。
【
図14】比較例1に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(3万倍)と、該観察画像中のA領域およびB領域における電子回折図形である。
【
図15】比較例2に係る金属材料におけるFIB処理の態様を示すHAADF-STEM観察画像(1万倍)である。
【
図16】比較例2に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片におけるTEM-EDX元素マッピングの結果を示すHAADF-STEM観察画像(3万倍)である。
【
図17】比較例2に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(50万倍)と、該観察画像中のライン部分RにおけるTEM-EDXライン分析の結果を示すグラフである。
【
図18】
図17のグラフのU部分を構成する生データを掲載した表である。
【
図19】比較例2に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(3万倍)と、該観察画像中のA領域およびB領域における電子回折図形である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の実施形態は、ここで開示される技術をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。また、本明細書にて示す図面では、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。そして、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
【0017】
<金属材料の構成>
図1は、一実施形態に係る金属材料1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、金属材料1は、大まかにいって、金属層4と、該金属層上に形成された酸化物層3と、該酸化物層上に形成された貴金属微粒子焼結体層2とを備える。以下、各構成要素について説明する。
【0018】
<金属層>
金属層4は、ニッケルを含む層である。また、金属層4は、ニッケル-タングステン合金を含んでいてもよい。かかるニッケル-タングステン合金としては、例えばNiW、Ni2W、Ni4W等が挙げられる。
ここで、金属層4の一態様として、上述したようなニッケル-タングステン合金の層に加えて、さらにニッケル層を含んでいてもよい。金属層4の構成は、例えば<金属材料および接合体の作製方法>に記載されるニッケル微粒子ペースト中のニッケル微粒子の含有量により変化し得る。ニッケル微粒子ペースト中のニッケル微粒子の含有量が、ニッケル微粒子ペーストを100重量%としたときに、例えば70重量%~90重量%である場合に、上述したような構成になり得る。
【0019】
<酸化物層>
酸化物層3は、NiO(酸化ニッケル(II))を主体とする層である。ここで、「NiOを主体とする層」とは、層を構成する成分のうち、重量基準で最も多く含まれる成分がNiOであることを意味する。酸化物層3は、好ましくはNiOを90重量%以上、95重量%以上、あるいは99重量%以上含む層であり得る。NiO以外の成分としては、種々の金属元素や非金属元素等が挙げられる。また、酸化物層3の厚みとしては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に限定されないが、金属材料1の積層方向において、好ましくは10nm以上、20nm以上であってもよく、より好ましくは30nm以上の部分が存在し得る。かかる構成によると、金属層4および貴金属微粒子焼結体層2がより密着性高く形成された金属材料1を得ることができる。また、典型的には、酸化物層3の厚みは、100nm以下(例えば、50nm程度)の部分が存在する態様であり得る。なお、「酸化物層の厚み」(NiO層の厚みともいう)とは、SEM顕微鏡観察において金属層4表面から酸化物層3の表面までの最短距離を測定したときの値のことをいう。
【0020】
<貴金属微粒子焼結体層>
貴金属微粒子焼結体層2は、貴金属微粒子からなる焼結体層である。なお、本明細書および特許請求の範囲において「貴金属微粒子」とは、主構成金属元素が貴金属元素である貴金属微粒子であり、貴金属の種類は限定されない。典型的には、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)等、またはそれらの合金が挙げられる。また、金(Au)は、熱伝導性、電気伝導性等に優れているため、金微粒子焼結体層を備えた金属材料は、種々の工業製品に用いることができるため有用である。
ここで、主構成金属元素とは、貴金属微粒子を構成する主体となる金属元素のことを意味する。なお、貴金属微粒子は、理想的には貴金属元素のみから構成されるものであるが、不純物として種々の金属元素や非金属元素を含むものであってもよい。例えば、全体の90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上が主構成金属元素で構成されていてもよい。なお、TG-DTAに基づいて測定される貴金属微粒子(焼成前の集合体をいう。)全体の重量(100重量%)に占める有機物含有量が、概ね2重量%以下、さらには1.5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
<接合体の構成>
図2は、一実施形態に係る接合体10の構成を示す模式図である。なお、
図2は、基材がタングステンを主体として構成される場合を表しているが、本発明をかかる構成に限定することを意図したものではない。
図2に示すように、接合体10は、大まかにいって、金属層14と、該金属層上に形成された酸化物層13と、該酸化物層上に形成された貴金属微粒子焼結体層12とを備えた金属材料と、タングステン基材16とを備える。そして、本実施形態においては、かかる金属材料およびタングステン基材16の間に、拡散層15が存在する。
以下、各構成要素について説明する。なお、金属層14、酸化物層13、および貴金属微粒子焼結体層12に関しては、それぞれ金属層4、酸化物層3、および貴金属微粒子焼結体層2と同様な構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
<基材>
タングステン基材16は、タングステンを主体として構成される基材である。かかる構成の基材を備える接合体10は、半導体製品等に好適に用いることができる。なお、「タングステンを主体として構成される基材」とは、基材を構成する成分のうち、重量基準で最も多く含まれる成分がタングステンであることを意味する。タングステン基材16は、好ましくはタングステンを90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上含む基材であり得る。また、タングステン以外の成分としては、不可避的な不純物としての種々の金属元素や非金属元素等が挙げられる。
なお、ここで開示される接合体が備える基材の種類は、タングステンに限定されず、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に限定されない。例えば、タングステン以外では、タングステンカーバイド、セラミックス、各種金属材料等を主体として構成されるものが好ましく用いられ得る。また、上述したような基材を用いて、ここで開示される接合体を作製する方法としては、例えば、ニッケル微粒子ペーストの組成物中に、タングステンナノ粒子をNi:W=4:1~5:1(モル比)程度の割合で混合し、かかるペーストを基材上に塗布し、還元雰囲気下等において焼成する方法が挙げられる。
【0023】
<拡散層>
本実施形態に係る接合体10においては、タングステン基材16および金属層14の間に、拡散層15が存在する。拡散層15は、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した層である。また、拡散層15は、タングステンにニッケルが固溶した層と言及することもできる。
拡散層15において、該拡散層に含まれるニッケル量が、当該拡散層中のタングステンおよびニッケルの原子数の合計100原子%としたときに、少なくとも2原子%である部分が存在する。拡散層15においては、該拡散層に含まれるニッケル量が、3原子%以上、4原子%以上、5原子%以上である部分が存在し得る。また、典型的には、拡散層15に含まれるニッケル量は10原子%以下等であり得る。
また、拡散層15の厚みとしては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に限定されない。拡散層15において、該拡散層に含まれるニッケル量が、当該拡散層中のタングステンおよびニッケルの原子数の合計を100原子%としたときに、少なくとも2原子%である部分の厚みが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である部分が存在する場合が好ましい。例えば、60nm以上、80nm以上、100nm以上の部分が存在してもよい。かかる構成によると、タングステン基材16上に金属層14がより密着性高く形成された接合体10を得ることができる。また、典型的には、拡散層15の厚みは、200nm以下等であり得る。
【0024】
<金属材料および接合体の作製方法>
続いて、金属材料1および接合体10の作製方法の一例について説明する。
まず、ニッケル微粒子を含むニッケル微粒子ペーストを、タングステンを主体として構成される基材上に塗布し、乾燥させた後、還元雰囲気下において1000℃で焼成することによりニッケルを含む金属層14を得る。続いて、金属層14上に貴金属微粒子を含む貴金属微粒子ペーストを塗布し、乾燥させた後、焼成する。これにより、金属層14および貴金属微粒子焼結体層12が、NiOを主体とする酸化物層13を介して密着性高く積層された金属材料1(および、該金属材料およびタングステン基材16が、拡散層15を介して積層された接合体10)を得ることができる。
【0025】
ここで、上記ニッケル微粒子ペーストに含まれるニッケル微粒子および上記貴金属微粒子ペーストに含まれる貴金属微粒子の大きさは、例えば平均粒子径が300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、例えば30nm~200nmとすることができる。なお、本明細書ならびに特許請求の範囲において「平均粒子径」とは、電子顕微鏡観察に基づき測定された個数基準の粒度分布における、累積50%粒子径を意味する。粒度分布は、具体的には、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)等を用い、適切な倍率(例えば5万倍)で粒子(ここでは、ニッケル微粒子,貴金属微粒子)を観察し、100個以上(例えば100~1000個)の粒子について求めた円相当径を基に作成することができる。なお、ペースト中の微粒子(ここでは、ニッケル微粒子,貴金属微粒子)の含有量は特に制限されないが、ペースト全体を100重量%としたとき、概ね30重量%以上、典型的には40~95重量%、例えば50~70重量%の範囲内であり得る。
そして、上述したようなニッケル微粒子または貴金属微粒子と、溶剤と、必要に応じてバインダ等の成分を混錬することにより、ペースト状の組成物(即ち、ニッケル微粒子ペースト,貴金属微粒子ペースト)を調整することができる。ここで、上記バインダとしては、例えばアクリル樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂を、一種類または二種類以上組み合わせて用いることができる。なお、ペースト中に含まれるバインダの含有量は特に制限されないが、ペースト全体を100重量%としたとき、概ね30重量%以下、典型的には0.1~25重量%、例えば10~20重量%の範囲内であり得る。また、上記溶剤としては、例えばミネラルスピリット等の石油系炭化水素(特に脂肪族炭化水素)、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール、メンタノール、メントール、イソボルニルアセテート、フェニルプロピレングリコール等の溶剤を、一種類または二種類以上組み合わせて用いることができる。なお、ペースト中の溶剤の含有量は特に制限されないが、ペースト全体を100重量%としたとき、概ね70重量%以下、典型的には5~60重量%、例えば10~40重量%の範囲内であり得る。
【0026】
<金属材料および接合体の用途>
金属材料1および接合体10は、種々の工業製品等に好適に用いることができる。また、金属材料1に関しては、例えば、貴金属焼結体層2および/または金属層4に他の層(例えば、金属層)が接合された態様で用いることもできる。そして、接合体10に関しては、例えば、貴金属微粒子焼結体層12および/または基材16に他の層(例えば、金属層)が接合された態様で用いることもできる。
【0027】
以下、ここで開示される金属材料(および、接合体)を使用した実施例を説明するが、かかる実施例は本発明を限定することを意図したものではない。
【0028】
1.金微粒子ペーストの作製
塩化金酸四水和物(乾庄貴金属化工株式会社製品)20.6gにオクタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製品)を50mL加え、得られた溶液を氷浴で冷却撹拌した。
次に、金の含有量に対して10モル当量となるn-オクチルアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製品)を、発熱を抑えつつ少しずつ上記溶液に加えていき、塩化金酸-オクチルアミンの錯形成溶液を調製した。
この錯形成溶液を大気雰囲気において140℃のオイルバス中で撹拌しながら3時間加熱する還元処理を行い、金イオンを還元し、金微粒子を合成した。
その後、反応液を自然冷却し、工業アルコール(甘糟化学産業製品)を加え、金微粒子を沈降させ、デカンテーションで上澄み液を除いた。この操作を3回繰り返した後、工業アルコールを加えて3000rpm、3分の遠心分離を3回以上行い、上澄みを除いた。ここで、得られた金微粒子を室温で乾燥させ、その平均粒子径を測定したところ、40nmであった。その後、分散媒としてメンタノールを加え、3時間以上静置した後、遠心分離することにより溶媒置換を行った。得られた湿潤粉末を70~80重量%になるように濃度調整し、自転好転ミキサーで混合分散させた。これにより、金微粒子ペーストを得た。
【0029】
2.接合体の作製
実施例1:
ニッケル微粒子(平均粒子径:180nm)と、アクリル樹脂と、イソボルニルアセテートとを混錬し、ニッケル微粒子ペーストを作製した。ここで、各成分の含有量は、上記ニッケル微粒子ペーストを100重量%としたとき、ニッケル微粒子が50重量%、アクリル樹脂が10重量%、残部が溶剤となるようにした。
次に、上記のとおり作製したニッケル微粒子ペーストを、焼成後のニッケル膜厚が1~2μm程度になるように、タングステン基板(縦×横×厚み:15mm×15mm×0.3mm,以下に使用されているタングステン基板は、同様のサイズのものを使用した)上に塗布した。そして、これを120℃で10分間乾燥させた後、3%水素-窒素ガスの雰囲気下(すなわち、還元雰囲気下)において、1000℃で30分間焼成することにより、ニッケル焼成膜(ニッケルを含む金属層に相当する、以下同様)を形成した。
続いて、得られたニッケル焼成膜上に、上記のとおり作製した金微粒子ペーストを、焼成後の膜厚が2μm程度になるように塗布した。そして、これを60℃で1時間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、300℃で30分間焼成することにより、金微粒子焼成膜(金微粒子焼結体層に相当する、以下同様)を形成した。これにより、実施例1に係る接合体を得た。
【0030】
実施例2:
イソデカノールとn-ブタノールを混合したものに、シュウ酸銀を投入し、100℃のオイルバスで攪拌しながら加熱した。1時間加熱後、室温へ自然冷却した。その後、6000rpm、5分の遠心分離を行うことにより銀微粒子を沈降させ、上澄みを除去した。ここで、得られた銀微粒子を室温で乾燥させ、その平均粒子径を測定したところ、80nmであった。その後、フェニルプロピレングリコールを加えてスパチュラで攪拌し、再び6000rpm、5分の遠心分離を行うことにより銀微粒子を沈降させ、上澄みを除去した。これを3回繰り返し、銀微粒子ペーストを得た。各成分の含有量は、上記銀微粒子ペーストを100重量%としたとき、銀微粒子が80~90重量%、残部が溶剤となるようにした。
金微粒子ペーストの代わりに、上記のとおり作製した銀微粒子ペーストを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る接合体を作製した。
【0031】
比較例1:
ニッケル微粒子ペーストを塗布する代わりに、焼成後の膜厚が1μm程度になるように、タングステン基板上に電気ニッケルめっき膜を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた金微粒子焼成膜は、電気ニッケルめっき焼成膜上に接着せず、単独膜となった。
【0032】
比較例2:
ニッケル微粒子ペーストを塗布する代わりに、焼成後の膜厚が1μm程度になるように、タングステン基板上に無電解ニッケルめっき膜を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた金微粒子焼成膜は、無電解ニッケルめっき焼成膜上に接着せず、単独膜となった。
【0033】
比較例3:
焼成後の膜厚が200~300nm程度となるように、タングステン基板上に水金液(株式会社ノリタケカンパニーリミテド社製)を塗布した。そして、これを60℃で1時間乾燥させた後、500℃で30分間焼成することにより、水金焼成膜を形成した。かかる水金焼成膜上に、10mm×10mm×20μmのメタルマスクを用いて上記金微粒子ペーストを塗布した。そして、これを60℃で1時間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、250℃で30分間焼成することにより、金微粒子焼成膜を形成した。その結果、得られた金微粒子焼成膜は、水金焼成膜上に接着せず、単独膜となった。
【0034】
比較例4:
金粒子と、ポリイミド樹脂と、γ-ブチロラクトンとを用いて混錬し、金粒子含有ポリイミド樹脂ペーストを作製した。
続いて、タングステン基板上に上記のとおり作製した金粒子含有ポリイミド樹脂ペーストを塗布した。そして、これを130℃で15分間、180℃で30分間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、280℃で50分間熱処理することにより、金粒子含有ポリイミド樹脂層を形成した。このとき、溶媒はほぼ完全に除去された状態であった。上記金粒子含有ポリイミド樹脂層上に、上記金微粒子ペーストを塗布し、60℃で1時間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、250℃で30分間焼成することにより、金微粒子焼成膜を形成した。その結果、得られた金微粒子焼成膜は、金粒子含有ポリイミド樹脂層上に接着せず、単独膜となった。
【0035】
比較例5:
金粒子と、熱硬化性エポキシ樹脂と、硬化剤と、ターピネオールCとを混錬し、金粒子含有エポキシ樹脂ペーストを作製した。
続いて、タングステン基板上に上記のとおり作製した金粒子含有エポキシ樹脂ペーストを塗布した。そして、これを60℃で1時間乾燥させたところ、金粒子含有エポキシ樹脂ペーストは流動性を失い、タングステン基板上に接着された状態となった。得られた金粒子含有エポキシ樹脂層上に、上記金属微粒子ペーストを塗布し、60℃で1時間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、250℃で30分間熱処理することにより、エポキシ樹脂の硬化および金微粒子焼成膜の形成を行った。その結果、得られた金微粒子焼成膜は、金粒子含有エポキシ樹脂層上に接着せず、単独膜となった。
【0036】
比較例6:
ニッケル微粒子ペーストを塗布しない以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた金微粒子焼成膜はタングステン基板上に接着せず、単独膜となった。
【0037】
比較例7:
上記金微粒子ペーストを、ガラス基板上に1cm×1cm×100μmのメタルマスクを用いて、ゴムスキージでスクイーズすることにより塗膜した。そして、60℃で1時間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、300℃で30分間焼成を行った。その結果、得られた金微粒子焼成膜は、ガラス基板上に接着せず、単独膜となった。
【0038】
比較例8:
上記金微粒子ペーストを、ニッケル基板上に1cm×1cm×100μmのメタルマスクを用いて、ゴムスキージでスクイーズすることにより塗膜した。そして、60℃で1時間乾燥させた後、10℃/分で昇温し、300℃で30分間焼成を行った。その結果、得られた金微粒子焼成膜はニッケル基板上に接着せず、単独膜となった。
【0039】
3.接合体の密着性評価
接合体が得られた実施例1および2について、密着性評価を行った。具体的には、各例に係る接合体において、タングステン基板および貴金属微粒子焼成膜にセロハンテープを貼り付け、90°で引き上げた際に、該貴金属微粒子焼成膜が剥離するか否かを確認した。その結果、実施例1,2ともに剥離は確認されなかった。
【0040】
4.実施例1,比較例1および2に係る金属材料の断面観察
実施例1,比較例1および2に係る金属材料に対して、断面観察を行った。ここで、実施例1に係る金属材料とは、タングステン基板上にニッケル焼成膜を形成した時点のものを表している。また、比較例1に係る金属材料とは、タングステン基板上に電気ニッケルめっき焼成膜を形成した時点のものを表している。そして、比較例2に係る金属材料とは、タングステン基板上に無電解ニッケルめっき焼成膜を形成した時点のものを表している。
以下、試験内容について詳細に説明する。なお、以下の説明では、実施例1,2のうち実施例1に係る金属材料のみを挙げて説明しているが、実施例2に係る金属材料(即ち、タングステン基板上にニッケル焼成膜を形成した時点のもの)についても、実施例1と同様な構成(組成)であることが確認された。
まず、
図3,10,15に示すように、各例に係る金属材料を樹脂詰めした後、枠線で囲んだ部分においてFIB(Focused Ion Beam;収束イオンビーム)処理を行い、金属材料の薄片化を行った。そして、かかる薄片の断面に対して、EDX(Energy Dispersive X-ray;エネルギー分散型X線)元素マッピングおよびライン分析を行った。ここで、
図4,11,16は、それぞれ実施例1,比較例1,比較例2に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片におけるTEM-EDX元素マッピングの結果を示すHAADF-STEM観察画像(3万倍)である。また、
図5,12,17は、それぞれ実施例1,比較例1,比較例2に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(50万倍)と、該観察画像中のTEM-EDXライン部分(それぞれ、P,Q,R)におけるライン分析の結果を示すグラフである。そして、
図6,13、18は、それぞれ
図5,12,17のグラフのS,T,U部分を構成する生データを掲載した表である。なお、上記S,T,U部分は、それぞれ
図5,12,17グラフにおいて、タングステンの原子%の増加が緩やかになった部分からタングステンが100原子%に到達する部分までを示すものとする。
さらに、各例に係る薄片の断面に対して、SAD(Selective Area Diffraction;制限視野回折)パターンを取得した。ここで、
図7,14,19は、それぞれ実施例1,比較例1,比較例2に係る金属材料のFIB処理後に得られた薄片のHAADF-STEM観察画像(3万倍)と、該観察画像中のA領域およびB領域における電子回折図形である。
これらのデータに基づいて、各例に係る金属材料の構成(組成)を確認した。なお、EDX元素マッピング、ライン分析、SADパターンの取得は、株式会社トプコン社製のEM-002BFを用いて実施した。
【0041】
実施例1に係る金属材料の薄片に関しては、
図4に示すようなニッケルとタングステンのマッピングが確認された。また、
図5のTEM-EDXライン分析のグラフに示すように、ニッケル焼成膜およびタングステン基板の間に、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した拡散層が確認された。ここで、かかる拡散層は、
図5のグラフにおいて、ニッケルの原子%とタングステンの原子%の値の大小が逆転する点から、タングステンの原子%が100原子%に到達するまでの部分を示すものとする(
図5のグラフにおける実線矢印部分を参照。
図12、
図17のグラフにおける拡散層も、同様に定義される)。
また、かかる拡散層は、タングステン基板とニッケル焼成膜とが積層された方向において、厚み40nmで存在することが確認された。そして、
図6より、S部分に相当する、厚み44.0nmから74.2nmの部分において、ニッケルの原子%の平均値は4.4原子%(=61.7/14)である(即ち、2原子%またはそれ以上である)ことが確認された。このことから、拡散層に相当する領域において、ニッケルの拡散量が少なくとも2原子%である部分が存在し、かかる部分の厚みは5nmまたはそれ以上であることが分かった。
また、TEM-EDXのライン分析結果では、HAADF-STEM観察画像から判断されるタングステンとニッケルとの界面付近約40nmの領域に、オーバーラップ部分が存在することが確認された。ここで、かかるオーバーラップ部分は、
図5のグラフにおけるニッケルとタングステンの原子%の値がほぼ一定の割合で変化する部分を示すものとする(
図5のグラフにおける破線矢印部分を参照。
図12、
図17のグラフにおけるオーバーラップ部分も、同様に定義される)。
さらに、
図7に示すように、上記薄片におけるA領域には、Ni、NiO、Ni
4W、Wが含まれており、B領域にはWが含まれていることが確認された。このことから、ニッケル焼成膜はNi
4Wを含み、さらに、該ニッケル焼成膜上に、NiO層が形成されていることが確認された。
ここで、
図8および
図9は、実施例1に係る接合体が備える金属材料の断面を、イオンミリングにより研磨し、FE-SEM(使用装置:株式会社日立テクノロジー社製,S-8230)を用いて界面観察を行った際に得られた画像である。
図8および
図9より、Ni
4W層23と、該Ni
4W層層上に形成された、NiO層25と、該NiO層上に形成された、金微粒子からなる金微粒子焼結体層22とを備えた積層構造を有する金属材料が、タングステン基板24上に形成されていることが確認された。また、上記NiO層の厚みは、50nm程度であることも確認された。
【0042】
次に、比較例1に係る金属材料の薄片に関しては、
図11に示すようなニッケルとタングステンのマッピングが確認された。また、
図12のTEM-EDXライン分析のグラフに示すように、電気ニッケルめっき焼成膜およびタングステン基板の間に、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した拡散層が確認された。そして、かかる拡散層は、タングステン基板と電気ニッケルめっき焼成膜とが積層された方向において、50nm存在することが確認された(
図12のグラフにおける実線矢印部分を参照)。また、
図13より、T部分に相当する、厚み48.7nmから96.0nmの部分において、ニッケルの原子%の平均値は4.6原子%(=68.3/15)であることが確認された。
また、TEM-EDXのライン分析結果では、HAADF-STEM観察画像から判断されるタングステンとニッケルとの界面付近約25nmの領域に、オーバーラップ部分が存在することが確認された(
図12のグラフにおける破線矢印部分を参照)。
さらに、
図14に示すように、上記薄片におけるA領域には、Ni
4W、Wが含まれており、B領域にはWが含まれていることが確認された。即ち、電気ニッケルめっき焼成膜上に、NiO層が形成されていないことが確認された。
【0043】
続いて、比較例2に係る金属材料の薄片に関しては、
図16に示すようなニッケルとタングステンのマッピングが確認された。また、
図17のTEM-EDXライン分析のグラフに示すように、無電解ニッケルめっき焼成膜およびタングステン基板の間に、タングステンマトリックス中にニッケルが拡散した拡散層が確認された。そして、かかる拡散層は、タングステン基板と無電解ニッケルめっき焼成膜とが積層された方向において、100nm存在することが確認された(
図17のグラフにおける実線矢印部分を参照)。また、
図18より、U部分に相当する、厚み76.0nmから146.0nmの部分において、ニッケルの原子%の平均値は5.2原子%(=98.9/19)であることが確認された。
また、TEM-EDXのライン分析結果では、HAADF-STEM観察画像から判断されるタングステンとニッケルとの界面付近約100nmの領域に渡ってオーバーラップ部分が存在することが確認された(
図17のグラフにおける破線矢印部分を参照)。
さらに、
図19に示すように、上記薄片におけるA領域には、Ni
4W、Wが含まれており、B領域にはWが含まれていることが確認された。即ち、無電解ニッケルめっき焼成膜上に、NiO層が形成されていないことが確認された。
【0044】
上記3および4の結果から明らかなように、ニッケル焼成膜(ニッケルを含む金属層に相当)および貴金属微粒子焼成膜(貴金属微粒子焼結体層に相当)が、NiOを主体とする酸化物層を介して積層された金属材料においては、該ニッケル焼成膜と該貴金属微粒子焼成膜の密着性が高いことが確認された。
以下、特に限定解釈されるものではないが、ニッケル焼成膜および貴金属微粒子焼成膜の間にNiO層が形成されることにより、密着性の高い金属材料(および、該金属材料と基材とを備えた接合体)が得られるものと考えられ得る。具体的には、ニッケル焼成膜上にNiO層が存在することにより、貴金属微粒子ペーストとの親和性が向上し、該ニッケル焼成膜と貴金属微粒子焼成膜が接着したものと考えられ得る。そして、比較例3のように焼成後の残留物が金のみの水金膜上や、比較例6~8のような基板上では、金微粒子ペーストとの親和性が高くないため、ペースト中の金微粒子同士の焼結のみが進行し、基板や膜に接着することが困難であるため、剥離したものと考えられ得る。
なお、かかるNiO層は、1000℃での焼成時に、ニッケル微粒子に付着している酸素がニッケル微粒子と反応することにより生成したものであると考えられ得る。そして、電気ニッケルめっき膜および無電解ニッケルめっき膜には、NiOが生成するために十分な酸素が付着していないため、焼成後にかかるNiO層が生成しなかったものと考えられ得る。
このように、ここで開示される技術によると、金属層どうしが中間層を介して密着性高く積層された金属材料および該金属材料と基材とを備える接合体を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 金属材料
2,12 貴金属微粒子焼結体層
3,13 酸化物層
4,14 金属層
10 接合体
15 拡散層
16,24 タングステン基材
22 金微粒子焼結体層
23 Ni4W層
25 NiO層
P,Q,R ライン部分
S,T,U 拡散層に含まれるニッケル量を示す部分