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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/14 20060101AFI20250226BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
B05C9/14
B05C5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022038173
(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公開番号】P2023132695
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊文
(72)【発明者】
【氏名】宮本 芳範
(72)【発明者】
【氏名】壺井 宏祐
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-263687(JP,A)
【文献】特開2004-146651(JP,A)
【文献】特開2011-103422(JP,A)
【文献】特開2010-036099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 9/14
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつ
つ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、
を備える塗布装置であって、
前記塗布器は、塗布進行側と反対側に、前記ノズルから吐出されて形成された塗布膜にエアを供給することにより前記塗布膜を乾燥させる乾燥器が設けられており、前記塗布器と前記乾燥器との間には、前記乾燥器の振動の影響を抑える防振部材が設けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記防振部材は、平板形状を有しており、少なくとも、塗布液が吐出される前記塗布器の吐出幅以上の寸法に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記乾燥器は、エアが吐出されるエア吐出部を有しており、前記防振部材は、前記エア吐出部よりも低い位置まで延びて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記防振部材は、前記ノズルの位置よりも基板側に近い位置まで延びて形成されていることを特徴とする請求項1~3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記エア吐出部は、前記防振部材に直接当たるように、吐出されるエアの向きが調節されていることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記乾燥器から供給されるエアは、ヒータにより加熱されていることを特徴とする請求項3又は5に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布装置に関するものであり、特に、塗布液を吐出した直後から乾燥させる塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な用途に基板W上に均一な薄膜が形成されたもの(塗布基板という)が使用される。例えば、基板上に一様な膜厚の塗布膜を形成する場合には、スリット状のノズルを有する塗布装置によって形成されている。この塗布装置は、図6に示すように、基板Wを載置するステージ100と、塗布液を吐出するスリット状のノズルを有する塗布器101とを有しており、ノズルのスリットから塗布液を吐出させながら、基板Wと塗布器101とを相対的に移動させることにより、所定厚さの塗布膜Cが基板W上に形成されるようになっている。
【0003】
そして、形成された塗布基板Wは、塗布装置から搬出された後、塗布装置とは別の乾燥装置102によって乾燥させられる(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-034309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記塗布装置では、形成された塗布膜Cの機能性が十分に発揮できないという問題があった。すなわち、近年では、材料の特性として、塗布膜Cとして塗布された後、すぐに乾燥させることにより安定して機能性を発揮するものがあり、例えば、ペロブスカイト太陽電池の材料には、そのような材料が使用されている。上記塗布装置では、塗布膜Cが形成された後、別の乾燥装置102に搬送される間、時間を要してしまうため、この時間が塗布膜Cの結晶状態に影響し、材料の機能性が安定して発揮されにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、塗布器により塗布された直後から塗布膜を乾燥させることができ、さらに膜厚精度の低下を抑えることができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、を備える塗布装置であって、前記塗布器は、塗布進行側と反対側に、前記ノズルから吐出されて形成された塗布膜にエアを供給することにより前記塗布膜を乾燥させる乾燥器が設けられており、前記塗布器と前記乾燥器との間には、前記乾燥器の振動の影響を抑える防振部材が設けられていることを特徴としている。
【0008】
上記塗布装置によれば、塗布進行側と反対側に乾燥器が設けられているため、ノズルから吐出されて形成された直後から、塗布膜を乾燥させることができる。すなわち、乾燥器からエアが供給されることにより、形成された塗布膜の乾燥が促進される。そして、乾燥器からエアを供給させると、その振動が塗布器に伝達し、さらにノズルと基板Wを連結する塗布液(ビード103)に伝達することにより塗布膜の厚みの精度に影響するが、塗布器と乾燥器との間に防振部材が設けられることにより、乾燥器から生じる振動が塗布器に伝達するのを抑えることができる。これにより、塗布器により塗布された直後から塗布膜を乾燥させることができ、さらに、形成された塗布膜の膜厚精度の低下を抑えることができる。
【0009】
また、前記防振部材は、平板形状を有しており、少なくとも、塗布液が吐出される前記塗布器の吐出幅以上の寸法に形成されている構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、防振部材により塗布器の吐出幅に渡って、塗布器への振動の影響を抑えることができる。
【0011】
また、前記乾燥器は、エアが吐出されるエア吐出部を有しており、前記防振部材は、前記エア吐出部よりも低い位置まで延びて形成されている構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、防振部材がエアの流れを遮る役割を果たすことにより、エア吐出部から吐出されるエアがビードに直接当たるのを抑えることができる。すなわち、防振部材が、乾燥器が起因する振動を抑えるだけでなく、整流板としても機能することにより、塗布器に乾燥器を設けたことにより塗布膜の膜厚精度が低下するのを抑えることができる。
【0013】
また、前記防振部材は、前記ノズルの位置よりも基板側に近い位置まで延びて形成されている構成にしてもよい。
【0014】
この構成によれば、乾燥器からのエアが直接ビードに当たるのをより確実に抑えることができる。
【0015】
また、前記エア吐出部は、前記防振部材に直接当たるように、吐出されるエアの向きが調節されている構成にしてもよい。
【0016】
この構成によれば、エア吐出部から吐出されるエアが防振部材に一度当たってから塗布膜に供給されるため、エアが直接塗布膜に当たる場合に比べて、エアの勢いを抑えることができ、間接的にエアを供給し塗布膜を乾燥させることができる。すなわち、エアの流れが塗布膜に影響し塗布ムラとなるのを抑えつつ、塗布膜を乾燥させることができる。
【0017】
また、前記乾燥器から供給されるエアは、ヒータにより加熱されている構成にしてもよい。
【0018】
この構成によれば、加熱されたエアが供給されることにより、塗布膜の乾燥を促進させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の塗布装置によれば、塗布器により塗布された直後から塗布膜を乾燥させることができ、さらに膜厚精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を示す斜視図である。
図2】塗布ユニットの脚部付近を示す概略図である。
図3】乾燥器が設けられた塗布器の断面図である。
図4】上記塗布器から塗布液を吐出した状態を示す図である。
図5】他の実施形態における塗布器から塗布液を吐出した状態を示す図である。
図6】従来の塗布装置と乾燥装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す斜視図であり、図2は、塗布ユニットの脚部付近を示す図であり、図3は、乾燥器が設けられた塗布器を示す図である。
【0023】
図1図3に示すように、塗布装置は、基板W上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基台2と、基板Wを載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。
【0024】
なお、以下の説明では、塗布ユニット30が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0025】
前記基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板Wを載置するものである。このステージ21には、基板Wを載置する基板載置面21aと、図示しない基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板Wが保持されるようになっている。具体的には、ステージ21の基板載置面21aに形成された複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に吸引力を発生させることにより基板Wを基板載置面21aに吸着させて保持できるようになっている。
【0026】
また、ステージ21には、基板Wを昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の表面には複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン(不図示)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピンを突出させた状態で基板Wが搬入されるとリフトピンの先端部分が基板Wに当接して基板Wを保持することができる。そして、その状態からリフトピンを下降させてピン孔に収容させることにより、基板Wを基板載置面21aに載置することができるようになっている。
【0027】
また、塗布ユニット30は、基板W上に塗布液を吐出して塗布膜Cを形成するものである。この塗布ユニット30は、図1図2に示すように、基台2と連結される脚部31とY軸方向に延びる塗布器34とを有しており、基台2上をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設置されており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータが取り付けられており、このリニアモータを駆動制御することにより、塗布ユニット30がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0028】
また、塗布ユニット30の脚部31には、図2に示すように、塗布液を塗布する塗布器34が取り付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35と塗布器34とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、塗布器34が、ステージ21に保持された基板Wに対して接離可能に支持されている。
【0029】
また、図1~3に示すように、塗布器34は、塗布液を吐出して基板W上に塗布膜Cを形成するものである。この塗布器34は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の走行方向とほぼ直交するように設けられている。この塗布器34は、鉛直方向に延びる側面部34bを有しており、この側面部34bから傾斜状に形成される斜面部34cを経て基板Wと対向する基板対向面34dを有している。そして、基板対向面34dには、スリットノズル34aが形成されており、スリットノズル34aから塗布液が吐出されるようになっている。すなわち、塗布器34の基板対向面34dには、スリットノズル34aが長手方向に延びるように形成されており、塗布器34に供給された塗布液がスリットノズル34aから長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル34aの長手方向に亘って基板W上に一定厚さの塗布膜Cが形成されるようになっている。なお、塗布液を塗布するために、スリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30を移動させる方向を本実施形態では塗布方向と呼び、塗布方向側を塗布進行側と呼ぶことにする。
【0030】
また、塗布器34には、乾燥器40が設けられている。この乾燥器40は、基板W上に形成された塗布膜Cを乾燥させるものである。ここで、乾燥とは、完全乾燥の意味だけでなく、半乾き状態の乾燥、及び、大気に放置して乾燥させる場合よりも材料の結晶化が促進される程度の乾燥も含まれるものとする。
【0031】
乾燥器40は、本実施形態では、塗布器34において、塗布進行側と反対側に隣接するように一体的に取り付けられている。すなわち、塗布器34が塗布液を吐出しつつ塗布進行方向に移動すると、乾燥器40が塗布器34と一体的に移動しつつ、基板W上に塗布膜Cが形成された直後から、乾燥器40により塗布膜Cが乾燥されるようになっている。
【0032】
乾燥器40は、塗布器34の長手方向に沿って設けられており、エアを供給する送風部41を有している。本実施形態では、塗布器34に隣接するように送風部41が配置され構成されている。
【0033】
送風部41は、基板W上に形成された塗布膜Cにエアを供給するものである。本実施形態では、送風本体部411と、エア吐出部42とを有しており、送風本体部411で貯留されたエアがエア吐出部42を通じてエアが吹き出されるようになっている。
【0034】
送風本体部411は、ボックス形状を有しており、塗布器34の側面部34bに沿って長手方向に延びる形状に形成されている。本実施形態では、スリットノズル34aの長手方向寸法よりも長い寸法を有するように形成されている。また、送風本体部411には、塗布膜Cに供給するためのエアを溜めるキャビティ41bが設けられており、図示しないエア供給源から供給されたエアがキャビティ41bで一時的に貯留できるようになっている。キャビティ41bは、長手方向に延びる形状に形成されており、キャビティ41bより狭く形成された連通流路43によりエア吐出部42と連通して接続されている。したがって、エアがキャビティ41bに供給されるとキャビティ41b全体に広がって一時的に貯留され、狭い連通流路43を通過することにより、エア吐出部42に対して長手方向に渡って一様にエアが供給されるようになっている。
【0035】
エア吐出部42は、送風本体部411に供給されたエアを塗布膜Cに導くためのものである。エア吐出部42は、エアが吐出される開口部34cを有しており、図3の例では、鉛直方向下向きに形成されている。この開口部34cは、連通流路43と連通して接続されており、エア供給源を作動させると、キャビティ41bのエアが連通流路43を通じて開口部43cから吐出されるようになっている。そして、開口部41cの高さ位置は、スリットノズル34aの高さ位置付近まで延びて形成されている。図3の例では、スリットノズル34aの高さ位置よりもわずかに高い位置、すなわち、基板Wに形成される塗布膜Cに当接しない高さ位置まで延びて形成されている。これにより、エア供給源を作動させると、キャビティ41bのエアが連通流路43を通じて開口部41cから吐出され、スリットノズル34aから塗布液が吐出されて形成された直後の塗布膜Cにエアを導くことができるようになっている。
【0036】
エア吐出部42の開口部41cは、スリット状に形成されており、塗布器34の長手方向に延びるように形成されている。そして、開口部41cの長手方向寸法は、塗布器34のスリットノズル34aの長手寸法とほぼ同じ寸法に形成されている。したがって、エア吐出部42から吐出されるエアは、形成された塗布膜Cの幅方向に亘って、ほぼ一様に供給されるようになっている。
【0037】
また、乾燥器40と塗布器34との間には、防振部材60が設けられている。この防振部材60は、塗布器34への振動の影響を抑えるためのものである。すなわち、乾燥器40からエアが吐出されると、乾燥器40自体の振動、エア供給源からエアが流入する振動、吐出されるエアの振動が発生するため、防振部材60により、これらの振動の影響を極力遮断し、振動が塗布器34に伝達するのを抑えることができる。
【0038】
この防振部材60は、例えば、ゴム部材、シリコン部材、ウレタン部材等、汎用性のある防振材料が使用することができ、塗布環境に耐える耐薬品性、耐熱性を兼ね備えたものが選択される。本実施形態では、防振部材60は、一様な厚みの平板状に形成されており、乾燥器40と塗布器34それぞれに隣接させて固定されている。また、防振部材60は、塗布器34及び乾燥器40の長手方向寸法と同じ寸法に形成されており、塗布器34及び乾燥器40の長手方向全面に亘って、塗布器34と乾燥器40との間に介在するように設けられている。すなわち、少なくとも、塗布液が吐出されるスリットノズル34aの吐出幅以上の寸法に形成されていることにより、仮に乾燥器40から振動が発生しても、防振部材60により長手方向に亘ってその振動が吸収されることにより、塗布器34に振動が伝達するのを抑えることができるようになっている。
【0039】
また、防振部材60は、送風本体部411の側面全体を覆うように設けられており、さらにエア吐出部42よりも高さ位置が低い位置まで延びて形成されている。図3の例では、スリットノズル34aの高さ位置よりも低い位置(基板W側に近い位置)まで延びて形成されている。これにより、エア吐出部42から吐出されたエアがスリットノズル34aと基板Wを連結する塗布液(ビードB)に影響するのを抑えることができる。
【0040】
具体的には、図4に示すように、エア吐出部42から吐出されたエアは、開口部41cが開口する方向、図3図4の例では、鉛直方向下向きに吐出され、基板W上に形成された塗布膜Cに向かって吹き出される。吹き出されるエアは、直接塗布膜Cに当たるが、このエアが当たることにより塗布膜Cに塗布ムラが発生しない程度に風圧が調節されている。そして、エア吐出部42から吹き出されたエアは、塗布膜Cに向かって流れると共に、ある広がりを持って流れることにより、エアの一部には、ビードB側に向かうエア、塗布膜Cに当たってビードB側に流れるエアが存在する。ところが、防振部材60がエア吐出部42よりも低い位置(図3図4の例では、スリットノズル34aの高さ位置よりも低い位置)まで延びているため、ビードB側に流れようとするエアの一部を遮ることができ、直接ビードに当たるエアを抑えることができる。このビードB側に流れるエアを抑える量は、防振部材60と形成された塗布膜Cとの隙間寸法によって調節することができ、塗布膜Cに接触することのない程度にまで防振部材60を延ばすことにより、ビードBへの影響を効果的に抑えることができる。このように、防振部材60は、エア吐出部42からのエアの整流板としても機能させることができる。
【0041】
このように、上記実施形態における塗布装置によれば、塗布進行側と反対側に乾燥器40が設けられているため、スリットノズル34aから吐出されて形成された直後から、塗布膜Cを乾燥させることができる。すなわち、乾燥器40からエアが供給されることにより、形成された塗布膜Cの乾燥が促進される。そして、乾燥器40からエアを供給させると、その振動が塗布器34に伝達し、さらにスリットノズル34aと基板Wを連結する塗布液(ビードB)に伝達することにより塗布膜Cの厚みの精度に影響するが、塗布器34と乾燥器40との間に防振部材60が設けられることにより、乾燥器40から生じる振動が塗布器34に伝達するのを抑えることができる。これにより、塗布器34により塗布された直後から塗布膜Cを乾燥させることができ、さらに、形成された塗布膜Cの膜厚精度の低下を抑えることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、乾燥器40のエア吐出部42から吐出されたエアは、鉛直方向下向きに吐出され、塗布膜Cに向かって吐出される例について説明したが、エア吐出部42から吐出されるエアが防振部材60に直接当たるように調節されるものであってもよい。具体的には、図5に示すように、乾燥器40と防振部材60との間にスペーサSが介在され、乾燥器40の開口部41cが防振部材60側に向く姿勢で取り付けられている。これにより、エア吐出部42から吐出されたエアは、防振部材60に一度当たった後、塗布膜Cに流れることにより、吐出されたエアが直接、塗布膜Cに当たるのを回避して、間接的にエアを供給することができる。すなわち、エアが直接塗布膜Cに当たる場合に比べて、エアの勢いを抑えることができるため、エア吐出部42から供給されるエアの量を増大させても塗布膜Cに塗布ムラが形成されにくい状態で塗布膜Cの乾燥を促進させることができる。なお、この実施形態であっても、乾燥器40が起因する振動はスペーサSを介して伝達されるが、防振部材60により塗布器34に伝達されるのを抑えることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、防振部材60として平板形状の例を説明したが、塗布器34と乾燥器40との間に介在すれば、どのような形状でもよく、長手方向に一様に延びる形状でなくても、長手方向に間欠的に配置されるものであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、防振部材60がエア吐出部42の高さ位置よりも低い位置に延びる例について説明したが、防振部材60がエア吐出部42の高さ位置よりも高い場合であっても、防振部材60が塗布器34と乾燥器40の間に介在されていれば、少なくとも乾燥器40が起因する振動を抑えることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、送風部41から供給されるエアは、エア供給源の温度(塗布装置が設置される空間の温度)である例について説明したが、エア供給源と送風部41との間にヒータを設け、ヒータにより加熱されたエアを供給するものであってもよい。例えば、塗布装置が設置される空間の温度よりも少し高い35℃~45℃程度に設定することにより、エア供給源のエアをそのまま使用する場合に比べて塗布膜Cの乾燥を促進させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、塗布器34がスリットノズル34aを有する例について説明したが、一方向に移動し、塗布膜Cを形成した直後から乾燥が必要な塗布器(例えば、インクジェット)であればよく、吐出方式は特に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
21 ステージ
30 塗布ユニット
34 塗布器
34a スリットノズル
40 乾燥器
41C 開口部
B ビード
P 着液点
S スペーサ
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6