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特許7640508水添スチレン・共役ジエン共重合体及びその発泡材料並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】水添スチレン・共役ジエン共重合体及びその発泡材料並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/02 20060101AFI20250226BHJP
   C08F 236/10 20060101ALI20250226BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20250226BHJP
   C08J 9/12 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
C08C19/02
C08F236/10
C08F212/08
C08J9/12 CEQ
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022164820
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2021523405の分割
【原出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2023002642
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】201811281317.1
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515078501
【氏名又は名称】チャイナ ペトロレウム アンド ケミカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.22 Chaoyangmen North Street, Chaoyang District, Beijing, 100728 China
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホンウェン
(72)【発明者】
【氏名】モー,シャオジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ワンミン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チャオジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジェンイン
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-139219(JP,A)
【文献】特開平06-299001(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C1/00-4/00
C08F2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表されるスチレン系構造単位と、式2で表される共役ジエン系構造単位と、式3で表される共役ジエン系構造単位とを含有する水添スチレン・共役ジエン共重合体であって、
【化1】
式1中、R、R、RがそれぞれH又はC1~C3のアルキル基であり、R10がH又はC1~C4のアルキル基であり、式2中、R、R、R、R、R、RがそれぞれH又はC1~C3のアルキル基であり、式3中、R、R、R、R、R、RがそれぞれH又はC1~C3のアルキル基であり、
共重合体の全量を基準として、スチレン系構造単位の含有量が18~50wt%であり、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位と式3で表される水素化共役ジエン系構造単位との合計量を基準として、式3で表される水素化共役ジエン系構造単位の含有量が8%以上25未満であり、前記共役ジエン系構造単位におけるスチレン系構造単位のランダム度が30~80%であり、前記共重合体における共役ジエンの水素添加度が85~100%であることを特徴とする水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項2】
共重合体の全量を基準として、スチレン系構造単位の含有量が18~45wt%である請求項1に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項3】
共重合体の全量を基準として、スチレン系構造単位の含有量が25~35wt%であり、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位と式3で表される水素化共役ジエン系構造単位との合計量を基準として、式3で表される水素化共役ジエン系構造単位の含有量が10%以上25未満であり、前記共役ジエン系構造単位におけるスチレン系構造単位のランダム度が35~70%であり、前記共重合体における共役ジエンの水素添加度が95~100%である請求項1に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項4】
DSCにより測定される当該水添スチレン・共役ジエン共重合体の結晶化温度が18℃以上であり、且つ、エンタルピーが1.7J/g以上である請求項1又は2に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項5】
DSCにより測定される当該水添スチレン・共役ジエン共重合体の結晶化温度が18~70℃であり、且つ、エンタルピーが2~25J/gである請求項4に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項6】
式1で表されるスチレン系構造単位から形成されるミクロドメインは、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位と式3で表される水素化共役ジエン系構造単位から形成されるミクロドメインと、柱状又は球状構造と層状構造との共存状態を呈する請求項1~5のいずれかに記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項7】
式1で表されるスチレン系構造単位、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位及び式3で表される水素化共役ジエン系構造単位が、それぞれ、下記式1-1で表される構造単位、式2-1で表される構造単位及び式3-1で表される構造単位である請求項1~6のいずれか一項に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【化2】
【請求項8】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される該共重合体の数平均分子量が3万~50万である請求項1~7のいずれかに記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項9】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される該共重合体の数平均分子量が4万~20万である請求項8に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項10】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される該共重合体の数平均分子量が5万~8万である請求項9に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項11】
該共重合体の300%所定伸び率における強度が8MPa以上であり、引裂強さが30MPa以上であり、引張伸び率が300~600%であり、硬度(ショアA)が80以上であり、メルトインデックス(200℃、5kg)が0~8g/10minである、請求項1~10のいずれかに記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項12】
該共重合体の300%所定伸び率における強度が10~20MPaであり、引裂強さが30~60MPaであり、引張伸び率が350~500%であり、硬度(ショアA)が80~98であり、メルトインデックス(200℃、5kg)が1~2g/10minである、請求項11に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の水添スチレン・共役ジエン共重合体の、発泡靴底の製造への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子重合体の製造分野に属し、具体的には、水添スチレン・共役ジエン共重合体、及び該共重合体から発泡される発泡材料及び該発泡材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化スチレン・ブタジエンブロックポリマー(略称SEBS)、水添スチレン・イソプレンブロックポリマー(略称SEPS)、水添スチレン・イソプレン及びブタジエンブロックポリマー(略称SEEPS)は、各種の消費者用電子機器、自動車、建材、工具、日用品等に広く用いられており、その顕著な特徴は、低モジュラス、高引張強度(15~38MPa)及び優れる弾性回復、優れる耐老化性能等である。しかし、引張弾性率と圧縮弾性率が高く、硬度が低く充填が高いことを必要とする使用状況では、従来の水添スチレン・共役ジエンブロックポリマーは、例えば、発泡靴底、人工皮革、電線の要求を満たすことが困難であり、引張弾性率の低い材料を用いてこれらの製品を生産する際に、必要な応力を発生するためには大きな歪みを発生させる必要があり、靴底反発力が不足し、人工皮革の表面層が布層から脱落したり、電線の銅線がスキン層よりも先に破断したりする等の問題があった。EVAを用いて製造される発泡靴底には圧縮歪と滑り止め性が悪いという問題があり、軟質PVCやポリウレタンを用いて人工皮革を製造することは環境汚染と使用する時に有毒なVOCを放出するという問題があった。
【0003】
従来のSEBSを用いて発泡してミッドソールを製造する靴工場は既に一部的に存在し、得られる発泡靴底の反発性能がEVAより優れる(圧縮比が30%~35%の間にあり、反発率が上限として50%に達する)ものの、存在する欠点は通常なSEBSは溶融粘度が低いために発泡製品のセルが不均一であり、さらに部分的に破裂して圧縮変形が大きくなるという欠点である。また普段化学発泡法で発泡させる必要がある。
【0004】
CN102083872Bは、モノマーが重合する間に消費される速度がモノマーの添加速度に相当する速度、又はそれ以上の速度となるように仕込み速度を制御し、最高反応温度と開始温度との差が50℃を超えないように制御することにより、スチレン単量体ミクロブロックと共役ジエン単量体ミクロブロックとを含む共重合体を調製するスチレンブタジエン共重合体の製造方法を開示している。この共重合体は、より高い反発性とより低い圧縮変形とを有する材料が得られるためにEVAと化学架橋発泡させる必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は化学発泡プロセスを採用することなく高い反発性、低い圧縮変形を得ることができる水添スチレン・共役ジエン共重合体及び該共重合体から得られる発泡材料及びそれらの使用を提供することである。
【0006】
本発明の第一態様は、式1で表されるスチレン系構造単位、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位、及び/又は式3で表される水素化共役ジエン系構造単位を含有することを特徴とする水添スチレン・共役ジエン共重合体を提供し、
【0007】
【化1】
【0008】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれH、C1~C3のアルキル基であり、R10はH又はC1~C4のアルキル基であり、共重合体の総量を基準として、スチレン系構造単位の含有量は15~50重量%であり、好ましくは18~45重量%であり、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位と式3で表される水素化共役ジエン系構造単位との合計量を基準として、式3で表される水素化共役ジエン系構造単位の含有量は8~32%であり、好ましくは10~30%であり、より好ましくは12~25%であり、前記共役ジエン系構造単位におけるスチレン系構造単位のランダム度は30~80%であり、好ましくは35~75%であり、前記共重合体の水素添加度は85~100%であり、好ましくは95~100%である。
【0009】
本発明の第二態様は上記水添スチレン・共役ジエン共重合体を発泡させて得られる水添スチレン・共役ジエン共重合体発泡材料を提供する。
【0010】
本発明の第三態様は上記水添スチレン・共役ジエン共重合体と発泡材料の、発泡靴底の製造への使用を提供する。
【0011】
本発明が提供する水添スチレン・共役ジエン共重合体は、引裂強さが30~60MPaであり、引裂伸び率が300~600%であり、硬度(ショアA)が70~98であり、高強度のエラストマーであり、10%の歪みでの引張強度が4MPaより大きく、10%の歪みでの弾性回復が98%より大きく、300%歪みでの引張強度が8MPaより大きく、物理発泡、例えば二酸化炭素超臨界発泡プロセスを用いて軽量発泡材料を作製することができるという特徴を有する。本発明が提供する水添スチレン・共役ジエン共重合体は二酸化炭素超臨界発泡プロセスを採用することにより反発が60%より大きく、圧縮変形が30%未満であるという性能に優れる発泡体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】は本発明の実施例1が提供する水素化スチレン・共役ジエン共重合体のTEM(透過走査型電子顕微鏡)図である。
図2】は従来のSEBSのTEM図である。
図3】は本発明の実施例1が提供する水素化スチレン・共役ジエン共重合体の核磁気共鳴水素スペクトルである。
図4】Aは本発明の実施例1が提供する水添スチレン・共役ジエン共重合体の応力ひずみ曲線であり、Bは市販品SEBSの応力ひずみ曲線である。
図5A】Aは本発明の実施例1が提供する水添スチレン・共役ジエン共重合体のDSC曲線である。
図5B】Bは市販品SEBSのDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本文で開示される範囲の端点及び如何なる値はいずれもこの精確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものと理解すべきである。数値範囲は、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個別の点値との間、及び個別の点値の間を組み合わせて一つ又は複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は本文で具体的に開示されているとみなすべきである。
【0014】
本発明によれば、式1で表されるスチレン系構造単位、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位及び式3で表される水素化共役ジエン系構造単位は、それぞれ以下の式で表され、
【0015】
【化2】
【0016】
ここでR、R、R、R、R、R、R、R、RはそれぞれH、C1~C3のアルキル基であり、R10はH、C1~C4のアルキル基であり、ここでC1~C4のアルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、nブチル基、イソブチル基、tertブチル基であってもよい。
【0017】
本発明において、R10はベンゼン環にある置換基であり、一つ又は複数であってもよく、それぞれビニル基のオルト位、メタ位又はパラ位にあり、パラ位にあることが好ましい。
【0018】
前記スチレン系構成単位は、スチレン単位であり、即ちR、R、Rが共にHであり、R10がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、nブチル基、イソブチル基、tertブチル基であることが好ましい。前記共役ジエン系構造単位はブタジエン構造単位及び/又はイソプレン構造単位であり、即ちR、R、R、R及びRはいずれもHであり、R9はH又はメチルである。
【0019】
本発明が提供する共重合体において、高い反発性と低い圧縮変形性を確保するために、スチレン系構造単位の含有量が50重量%を超えない必要がある。本発明の本発明者らは、共役ジエン系構造単位の含有量が50重量%以上である場合には、その水添共重合体が巨視的に高い引張弾性率と引張強さ、低い歪での高い弾性回復を発現することを見出し、その理由は、分子鎖においてポリ共役ジエン系構造単位が水素化されてなるポリエチレン鎖はポリスチレン系構造単位により複数のポリエチレン結晶相に分断され、ポリエチレンの繰り返し単位が結晶する影響を受けてポリスチレン系構造単位が材料の表面に押し出され、ポリスチレン構造単位の繰り返し単位の絡み合いにより共重合体の凝集力を向上させるためであるとの知見を得た。共重合体の全量を基準として、スチレン系構成単位の含有量が15~50重量%であり、18~45重量%であることが好ましく、共役ジエン系構成単位の含有量(即ち、式2で示される水添共役ジエン系構成単位と式3で表される水素化共役ジエン系構成単位との合計量)が50~85重量%であり、55~82重量%であることが好ましい。
【0020】
ポリマーが良好な引張弾性率と加工性を有することを確保するためには、共重合体における式3で表される水素化共役ジエン系構造(即ち、1,2重合構造)単位の含有量を厳密に制御する必要がある。式3で表される水素化共役ジエン系構造単位の含有量は、式2で表される水素化共役ジエン系構成単位(即ち、1,4重合構造)と、式3で表される水素化共役ジエン系構成単位との合計量を基準として、8~32%であり、10~30%であることが好ましく、12~25%であることがより好ましい。一方、従来のSEBSはエチレンが結晶することによる圧縮変形が大きくなり過ぎることを避けるために、その中でも1,2構造の含有量が高く、通常35%以上と高くなっている。
【0021】
水素化後の共役ジエン構造単位の繰り返し単位におけるポリエチレン結晶相が均一に分布し、ポリスチレン鎖が互いに絡み合って高い凝集力を形成することにより、高反発と低圧縮変形の性能をもたらすことを確保するために、スチレン系構造単位のランダム度と共重合体の水素添加度を厳密に制御する必要がある。ここで本発明はスチレン系構造単位の前記共役ジエン系構造単位におけるランダム度が30~80%であることを要求し、35~75%であることが好ましく、前記共重合体の水素添加度は85~100%であり、95~100%であることが好ましい。
【0022】
本発明は、特定の含有量の共役ジエン1,2構造、1,4構造を制御し、水素添加後に1,4構造をポリエチレン構造とし、一定量のエチレン結晶を確保して結晶相を形成することにより、強度向上と老化防止を図る。
【0023】
本発明において、スチレン系構造単位の含有量、1,2重合構成単位の含有量及び水素添加度は、いずれも核磁気共鳴水素スペクトル(HNMR)法により下記式で算出することができる。
【0024】
上記置換基R~R10が共にHである共重合体では、δ6.1~7.2がベンゼン環にあるプロトンに帰属され、δ4.4~4.9が1,2重合構造に帰属され、δ4.9~5.8が1,4重合構造に帰属され、δ0.4~3.0がアルカン領域に帰属され、δ4.1~5.9がオレフィン領域に帰属される。
【0025】
5M+3M=A6.8~7.2
【0026】
2M=A6.1~6.8
【0027】
2M=A4.4~4.9
【0028】
2M+M=A4.1~5.9
【0029】
式中、Axはδのx範囲に対応するスペクトルピーク面積であり、Mは非ブロックStの相対モル分率であり、MはブロックStの相対モル分率であり、MとMはそれぞれBdの1,2重合構造と1,4重合構造の相対モル分率である。
【0030】
上記帰属によれば、共重合体全体のブタジエン含有量(Bdで示す)は、以下の通りである
【0031】
Bd=[A0.4~3.0-3(M+M)-3M-4M]/8+(M+M);(I)
【0032】
一方、1,2構造含有量=M/Bd;(II)
【0033】
共重合体の総水素添加度(Hで表す)の計算方式は以下のとおりである:
【0034】
H=1-(M+M)/{[A0.4~3.0-3(M+M)-3M-4M]/8+(M+M)}。(III)
【0035】
スチレン系構造単位の含有量、1,2重合構造単位の含有量及び水素添加度の具体的な取得方法は、「合成ゴム工業」、20120915,53(5):332~335を参照することもできる。
【0036】
本発明において、前記置換基R~R10がいずれもHである共重合体のスチレン系構造単位の前記共役ジエン系構造単位におけるランダム度は、HNMR法スペクトルチャートにより、以下の式で測定・算出される:
【0037】
ランダム度=(A6.8~7.2-X)/A6.1~7.2
【0038】
6.8~7.2はブロックベンゼン環のパラ位とメタ位の三つのプロトンと非ブロックスチレンの五つのプロトンのピーク面積を表し、A6.1~6.8はブロックベンゼン環の二つのオルトプロトンのピーク面積を表し、Xはブロックベンゼン環のパラ位とメタ位の三つのプロトンに対応するピーク面積を表し、X/A6.1~6.8=3/2、A6.1~7.2は共重合体におけるベンゼン環にある全てのプロトンのピーク面積を表す。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、DSCにより測定される当該水添スチレン・共役ジエン共重合体の結晶化温度が18℃以上であり、18~70℃であることが好ましく、且つ、エンタルピーが1.7J/g以上であり、2.0~25.0J/gであることが好ましい。DSCは、TA社製のDSCQ10サーモアナライザーを使用し、GB/T19466.32004に準拠した方法で測定し、InとSnにより温度とエンタルピーの値を校正し、窒素ガスで保護し、80℃から130℃まで昇温し、速度は10℃/minであり、130℃から80℃まで降温し、速度は2℃/minである。
【0040】
より高い反発性とより低い圧縮変形性を得るためには、前記水添スチレン・共役ジエン共重合体の分子量が3万~50万、好ましくは4万~20万であることが好ましい。
【0041】
なお、本発明において、分子量は、特に断りのない限り、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)試験法により測定される数平均分子量を意味する。
【0042】
本発明の水添スチレン・共役ジエン共重合体は、好ましくは、300%所定伸び率における強度が8MPa以上であり、好ましくは10~20MPaであり、引裂強さが30MPa以上であり、好ましくは30~60MPaであり、引裂伸び率が300~600%であり、好ましくは350~500%であり、硬度(ショアA)が80以上であり、好ましくは80~98であり、メルトインデックスMFR(g/10min、200℃、5kg)が0~8であり、好ましくは1~2である。
【0043】
本発明において、300%所定伸び率における強度、引裂強さ、引裂伸び率、硬度(ショアA)は、いずれもGB/T5282009に準拠して測定する。
【0044】
本発明の本発明者らは以下のことを見出した。本発明が提供する共重合体のTEM図を図1に示す。式1で表されるスチレン系構造単位から形成されるミクロドメイン(図における白色部分)は、式2で表される水素化共役ジエン系構造単位と式3で表される水素化共役ジエン系構造単位とから形成されるミクロドメイン(図における白色ではない部分)において、柱状分布・球状分布と層状分布とが共存する態様で分散しており、当該相構造は、ポリマーに優れる力学性能を付与している。
【0045】
従来のSEBSはブロック共重合体であり、その相構造において各ポリジエンブロック(PB)の末端のいずれもポリスチレンセグメント(PS)に連結されており、系全体においてポリブタジエンセグメントが凝集してソフトセグメントを形成し、ゴムの高弾性を発現し、ポリスチレンセグメントが凝集してハードセグメントを形成し、プラスチックの高硬度を呈するブロック共重合体である。そのTEM写真を図2に示す。図2から分かるように、従来のSEBSのポリスチレンマイクロドメインは、球状の構造のみで存在している。
【0046】
本発明が提供する上記水添スチレン・共役ジエンランダム共重合体は、化学発泡方法又は物理発泡方法により発泡させ、発泡材料を得ることができる。前記物理発泡は、例えば、二酸化炭素、窒素ガス等の不活性ガスを用いる発泡方法であってよく、二酸化炭素超臨界発泡、窒素ガス超臨界発泡等が好ましい。前記二酸化炭素は、二酸化炭素ガスをそのまま使用してもよいし、炭酸塩分解等の化学的方法によって元の位置に発生させてもよい。従来のスチレン-ブタジエン共重合体は化学架橋発泡により反発弾性及び圧縮変形がいずれも使用要件を満たす発泡材料を得るしかない。
【0047】
本発明が提供する水添スチレン・共役ジエン共重合体は、スチレン、共役ジエンをアニオン重合してベースゴムを得た後、さらに、選択的に水素添加(共役ジエン単位二重結合を水素化し、ベンゼン環を水素化しないこと)及び精製することにより得ることができる。
【0048】
本発明の一つの実施形態として、前記ベースゴムの合成工程は、無酸素ガス無水の条件下で、下記式Aで表されるスチレン系モノマーと、下記式Bで表される共役ジエン系モノマーと、重合溶剤と、分子構造調整剤と、アルキルリチウム開始剤とを重合釜に加えてランダム共重合し、ベースゴムを得ることを含む。
【0049】
【化3】
【0050】
ここでR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10の意味及び選択可能な範囲は上記と同じである。
【0051】
本発明によれば、重合反応は、それぞれ本分野で慣用されている各種重合溶媒において行うことができ、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒であってもよい。通常、前記重合溶媒は、C3~C20の直鎖又は分岐鎖又は環状アルカンから選択することができ、C4~C20の直鎖又は分岐鎖アルカン又は環状アルカンから選択されることが好ましく、nブタン、イソブタン、nペンタン、シクロペンタン、nヘキサン、シクロヘキサン、nヘプタン、nオクタン、nノナン、nデカン、オクタンから選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、シクロペンタン、シクロヘキサン、nヘキサンから選択された一種又は複数種であることが更に好ましい。本発明における前記重合溶媒の使用量は、特に限定されず、本分野の通常な選択であってよい。工程(1)の重合系において、重合溶媒の使用量により、モノマーの初期合計濃度が2~20重量%であることが好ましく、5~16重量%であることがさらに好ましい。
【0052】
好ましくは、アルキルリチウム開始剤は、nブチルリチウム、secブチルリチウムの少なくとも一種である。
【0053】
アルキルリチウム開始剤の使用量は、重合性単量体(スチレン系単量体及び共役ジエン系単量体の合計量)100gに対して、0.5mmol~3mmolであることが好ましい。
【0054】
本発明においては、分子構造調整剤が二種以上のルイス塩基の複合調整剤であり、その内の少なくとも一種の分子構造調整剤がテトラヒドロフランであることが好ましく、テトラヒドロフランが分子構造調整剤の全量の80重量%以上を占めることが好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましい。その他のルイス塩基としては、例えば、三級アミン系化合物及びその他のエーテル系化合物、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルエチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ジビニルエーテル、エチレングリコールエチルtブチルエーテル、エチレングリコールプロピルtブチルエーテル、エチレングリコールメチルtブチルエーテル、ジテトラヒドロフラニルプロパン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、Nメチルモルホリン等の一種又は複数種であり、その使用量は、重合溶媒の重量に対して2~30mg/kgであり、さらに好ましくは5~28mg/kgである。溶媒系における分子構造調整剤の総濃度は350~650mg/kgであることが好ましい。
【0055】
各重合モノマーは、一括的に加えてもよいし、複数回又は連続的に比率に応じて加えてもよく、反応器内にスチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとが同時に存在することを確保し、ランダム共重合させればよい。
【0056】
ポリマーの高い引張強度を確保するためには、ベースゴムのランダム度の制御が重要である。ただし、分子構造調整剤の使用量及び反応温度は、ランダム度を制御する重要な因子であるため、ベースゴムを合成する間に分子構造調整剤の総使用量を350~650mg/kgの間に厳密に制御する必要があり、THFの使用量は分子構造調整剤の総量の80重量%以上であり、好ましくは95重量%以上であり、反応温度を55~100℃に制御される。
【0057】
重合反応時間は、45~120分間であり、好ましくは60~90分間である。
【0058】
ベースゴムは反応が終わった後に助触媒とニッケル系主触媒又はチタン系主触媒を加え、水素存在下で水素化反応を行い、水素化ゴム液を得る。
【0059】
既存の方法を用いて前記ベースゴムに選択的水素化を行い、共役ジエンの二重結合を水素化し、ベンゼン環における二重結合を水素化しないようにしてもよい。例えば、CN104945541Bに開示されている水素化方法を採用することができ、この文献の内容も併せてここに援用し参考とする。
【0060】
助触媒の使用量は、ポリマー100gあたり8mg~129mgであることが好ましい。
【0061】
主触媒の使用量は、ポリマー100gあたり17mg~200mgであることが好ましい。
【0062】
なお、ポリマーの量は、モノマー仕込み量から算出することができる。
【0063】
前記助触媒はアルコール類、エステル類から選択された一種又は複数種であり、好ましくは一価アルコール、多価アルコール、直鎖アルキルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、パラオキシ安息香酸エステル系化合物から選択された一種又は複数種であり、更に好ましくはC1~C10の一価アルコール、C2~C10の多価アルコール、C2~C10の直鎖アルキルエステル系化合物、C7~C15の安息香酸エステル系化合物、C7~C15のフタル酸エステル系化合物、C7~C15のパラオキシ安息香酸エステル系化合物から選択された一種又は複数種であり、最も好ましくはメタノール、イソオクタノール、安息香酸メチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチルから選択された一種又は複数種である。
【0064】
好ましくは、水素化ゴム液に対して軟水により反応を終えた後、水素化ゴム液を精製し、水素化ゴム液における金属イオン不純物を除去した後、水蒸気で凝集させた後、乾燥、粉砕して、上記の水添スチレン・共役ジエンランダム共重合体を得る。tデカン酸での酸化、軟水での乳化抽出、遠心分離、及び静置により水相を分離し、水素化ゴム液における金属イオン不純物を除去することができる。例えば、CN201410063616.3に記載の方法を参照してポリマーにおける金属イオンを除去し、除去後のゴム液を水蒸気で凝集させ、溶媒を回収・循環利用し、ポリマー粒子を乾燥、粉砕して完成品を得ることができる。
【0065】
好ましくは、tデカン酸の酸化条件としては、tデカン酸の使用量がポリマー100gあたり0.5ml~1mlであり、酸化時間が15~25分間である。
【0066】
軟水乳化抽出条件としては、軟水の使用量がポリマー100gあたり50~100mlであり、乳化時間が15~25分間であることが好ましい。
【0067】
水蒸気凝集の条件としては、10Lの凝集釜に110~130℃の水蒸気を通させ、凝集時間を20~40minとすることが好ましい。
【0068】
乾燥の条件としては、送風オーブンの温度を80~120℃とし、乾燥時間を1~4hとすることが好ましい。
【0069】
本発明はさらに水添スチレン・共役ジエンランダム共重合体発泡材料を提供し、前記水添スチレン・共役ジエンランダム共重合体発泡材料は前記の水添スチレン・共役ジエンランダム共重合体から二酸化炭素超臨界発泡により得られる。
【0070】
本発明の本発明者らは、本発明の上記で提供される水添スチレン・共役ジエン共重合体から、二酸化炭素超臨界発泡により密度が0.1~0.9g/cmの範囲で調整可能であり、硬度(ショアC)が5~85の範囲で調整可能な材料を得ることができることを新たに見出し、この材料は、高反発、高衝撃吸収、低圧縮歪、高い滑り止め、黄変耐性、VOCフリーの特徴も同時に有することを見出した。本発明により提供される上記水添スチレン・共役ジエンランダム共重合体から二酸化炭素超臨界発泡により得られる材料は、ASTMD2632に準拠して測定される反発は58~65%であり、GB/T66692008に準拠して測定される圧縮変形は20~28%である。
【0071】
本発明の本発明者らは、前記水添スチレン・共役ジエン共重合体とホワイトオイル、ポリオレフィン、無機フィラー、SEBS(水添スチレンブタジエンブロック共重合体)、SEPS(水添スチレンイソプレンブロック共重合体)の少なくとも一方を配合材として、共に二酸化炭素超臨界発泡を利用することは、さらに発泡材の性能向上に寄与することを見出した。
【0072】
ここで上記水添スチレン・共役ジエン共重合体と上記配合材料との重量比は5~10:1であってもよい。
【0073】
二酸化炭素超臨界発泡の条件は、発泡圧力が例えば10~30MPaであり、発泡温度が例えば110~140℃であることを含む。
【0074】
前記発泡材は、線材、形材、シート材等であってもよい。
【0075】
本発明はさらに上記水添スチレン・共役ジエン共重合体発泡材料の、発泡靴底の製造等への使用を提供する。
【0076】
本発明が提供する水添スチレン・共役ジエン共重合体を用いて発泡して得られる材料で製造される発泡靴底は反発性が高く、圧縮変形が低いという特徴を有する。従来のSEBSやEVA発泡材料で製造される発泡靴底と比べて、反発性が高く、圧縮永久変形が低いという利点がある。
【0077】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、本発明を限定するものではない。
【0078】
以下の実施例では、ポリマーの分子量及び分布をゲル浸透クロマトグラフィーで測定し、使用される機器は日本島津社LCD-10ADvpゲル透過クロマトグラフィーであり、検出器はRID-10A示差屈折検出器であり、分離カラムはGPC804、805であり、移動相THFの流速は1mL/minであり、測定温度は常温であり、単分散ポリスチレンで検量し、島津CR-7Aでデータ処理を行った。
【0079】
スチレン単位含有量、1,2構造の含有量、水素添加度及びランダム度は、いずれも核磁気共鳴水素スペクトルから計算により得られ、使用される機器はBruker AV400分光器(400MHz)であり、常温で測定され、CDClは溶媒である。
【0080】
ポリマー機械的性質(300%所定伸び率における強度、引裂強度、引裂伸び率等)GB/T528-2009方法で測定する。
【0081】
メルトインデックス(MFR)は、GB/T3682.12018方法(200℃、5kg)で測定する。
【0082】
DSCチャートは、TA社製のDSCQ10サーモアナライザーを用いて、GB/T19466.32004に準拠した方法で測定し、InとSnにより温度とエンタルピーの値を校正し、窒素ガスで保護し、80℃から130℃まで昇温し、速度は10℃/minであり、130℃から80℃まで降温し、速度は2℃/minである。
【0083】
発泡材の反発は、ASTMD2632に準拠して測定され、圧縮変形は、GB/T66692008に準拠して測定され、乾燥摩擦係数及びウェット摩擦係数は、ASTMF609法に準拠して測定され、密度はGB/T63432009方法により測定され、酸化誘導期(OIT)はGB/T2951.91997に準拠して測定される。
【0084】
実施例1
アニオン重合によりベースゴム(ベースゴムS/Bの質量比は35/65である)を合成し、チタン系触媒を用いて選択的に水素添加して得られる。具体的には以下のステップを含む:
【0085】
工程(1a):ベースゴムの合成
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、350mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、5mg/kgのエチルテトラヒドロフルフリルエーテルを加え、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム6.0mmolを加えた後、ブタジエン195gとスチレン105gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、さらに70℃で50分間反応させ、重合ゴム液を得た。
【0086】
工程(1b):ベースゴムの水素添加
重合ゴム液を5Lの水素添加釜に入れ、70℃に昇温し、助触媒としてのフタル酸ジブチル4mL(0.2mol/L)と、主触媒としてのジシクロペンタジエン二塩化チタン0.2gとを加え、水素ガスを通液し、水素添加圧力を1.5MPaに制御し、2時間水素添加反応を行わせた。
【0087】
工程(1c):ゴム液の精製
水素化反応終了後、水素化ゴム液を水洗釜に移し、60~65℃に昇温し、ゴム液における金属リチウムをtデカン酸で洗うことにより除去した後、軟水300mLで15min乳化抽出した後、遠心分離し、静置し、水相を分離し、残ったゴム液を水蒸気で凝集させ、乾燥させて水素化スチレン・ブタジエン共重合体を得た。共重合体の性質を表1に示す。
【0088】
得られた水素化スチレン・ブタジエン共重合体のTEM写真を図1に示す。図1から分かるように、この水添スチレン・ブタジエン共重合体のTEM図には、層状と柱状・球状構造が同時に存在している。
【0089】
得られた水素化スチレン・ブタジエン共重合体の核磁気共鳴水素スペクトルを図3に示す。図3から、その水素化構造、ミクロ構造を観察することができ、水素添加度及びランダム度の計算結果を表1に示す。
【0090】
得られた水添スチレン・ブタジエン共重合体の応力ひずみ曲線図は、図4のAに示される。図4から明らかなように、本発明が提供する水添共重合体の引張強さは41MPa以上であり、300%所定の伸び率における強度は11MPa以上であり、高い引張弾性率及び300%所定伸び率における強度を有している。
【0091】
得られた水素化スチレン・ブタジエン共重合体のDSCチャートを図5Aに示す。図5から明らかなように、本発明の水添共重合体結晶化温度は55℃程度であり、エンタルピー値は20J/g程度である。
【0092】
実施例2
実施例1の方法に従ってポリマーを合成した。アニオン重合によりS/Bの質量比が30/70のベースゴムを合成した点で相違する。具体的なベースゴムの合成操作は以下の通りである:
【0093】
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、450mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、10mg/kgのテトラメチルエチレンジアミンを加え、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム6.0mmolを加えた後、ブタジエン210gとスチレン90gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、さらに70℃で55分間反応させた。ゴム液を実施例1の方法で水素化及び精製し、共重合体の性質を表1に示す。TEM図は実施例1と類似している。
【0094】
実施例3
実施例1の方法に従ってポリマーを合成した。アニオン重合によりS/Bの質量比が20/80のベースゴムを合成した点で相違する。具体的なベースゴムの合成操作は以下の通りである:
【0095】
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、550mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、15mg/kgのジテトラヒドロフラニルプロパンを仕込み、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム6.0mmolを加えた後、ブタジエン240gとスチレン60gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加えて、さらに70℃で55分間反応させた。ゴム液を実施例1の方法に従って水素化及び精製を行って共重合体が得られ、当該共重合体の性質は表1に示すとおりである。TEM図は実施例1と類似している。
【0096】
実施例4
実施例1の方法に従ってポリマーを合成した。アニオン重合によりS/Bの質量比が45/55のベースゴムを合成した点で相違する。具体的なベースゴムの合成操作は以下の通りである:
【0097】
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、500mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、12mg/kgのエチルテトラヒドロフルフリルエーテルを加え、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム6.0mmolを加えた後、ブタジエン165gとスチレン135gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、さらに70℃で55分間反応させた。ゴム液を実施例1の方法に従って水素化及び精製を行って共重合体が得られ、当該共重合体の性質は表1に示すとおりである。TEM図は実施例1と類似している。
【0098】
実施例5
アニオン重合によりベースゴム(ベースゴムS/Bの質量比は38/62である)を合成し、チタン系触媒を用いて選択的に水素添加して得られる。具体的には以下のステップを含む:
【0099】
工程(1a):ベースゴムの合成
純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、550mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、25mg/kgのエチルテトラヒドロフルフリルエーテルを加え、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム10.0mmolを加えた後、ブタジエン186gとスチレン114gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、さらに70℃で55分間反応させ、重合ゴム液を得た。
【0100】
工程(1b):ベースゴムの水素添加
実施例1と同じである。
【0101】
工程(1c):ゴム液の精製
実施例1と同じである。水添スチレン・ブタジエン共重合体を得たところ、性質は表1に示す通りである。
【0102】
実施例6
実施例1の方法に従ってポリマーを合成し、アニオン重合によりS/Bの質量比が25/75のベースゴムを合成した点で相違する。具体的なベースゴムの合成操作は以下の通りである:
【0103】
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、580mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、20mg/kgのジテトラヒドロフラニルプロパンを仕込み、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム6.0mmolを加えた後、ブタジエン225gとスチレン75gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、さらに70℃で55分間反応させた。ゴム液を実施例1の方法に従って水素化及び精製を行って共重合体が得られ、当該共重合体の性質は表1に示すとおりである。TEM図は実施例1と類似している。
【0104】
実施例7
実施例1の方法に従ってポリマーを合成した。アニオン重合によりS/Bの質量比が32/68のベースゴムを合成した点で相違する。具体的なベースゴムの合成操作は以下の通りである:
【0105】
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、580mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフラン、25mg/kgのジテトラヒドロフラニルプロパンを仕込み、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム4.0mmolを加えた後、ブタジエン204gとスチレン96gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、さらに70℃で55分間反応させた。ゴム液を実施例1の方法に従って水素化及び精製を行って共重合体が得られ、当該共重合体の性質は表1に示すとおりである。TEM図は実施例1と類似している。
【0106】
比較例1
CN102083872Bの実施例2の方法に従ってスチレン・ブタジエン共重合体の製造を行う。
【0107】
比較例2
CN102083872Bの実施例2の方法でスチレン・ブタジエン共重合体の製造を行い、本発明の前記実施例1の工程(1b)及び(1c)に従って共重合体を水素化及び精製を行った。
【0108】
比較例3
実施例2の方法に従って水添スチレン・ブタジエン共重合体の製造を行い、S/Bの質量比が60/40のベースゴムを合成した点で相違する。
【0109】
比較例4
従来のSEBS製品(水添スチレンブタジエンスチレンのトリブロック共重合体、S/B重量比は33/67であり、1.2重合構造含有量は36.5~37.5%であり、数平均分子量19.8万である)。そのTEM写真を図2に示す。図2から明らかなように、球状構造のみが存在している。その応力ひずみ曲線は図4におけるBに示すとおりである。図4から明らかなように、該市販品SEBSの引張強度が20MPa程度であり、強度が本発明の共重合体の引張強度よりもはるかに小さい。そのDSC曲線は図5のBに示すとおりである。図5から明らかなように、この市販品SEBSの結晶化温度は16℃程度であり、エンタルピー値は2.6J/gであった。
【0110】
比較例5
アニオン重合によりベースゴム(ベースゴムS/Bの質量比は38/62である)を合成し、チタン系触媒を用いて選択的に水素添加して得られる。具体的には以下のステップを含む:
【0111】
工程(1a):ベースゴムの合成
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、250mg/kg溶媒に相当する使用量のジテトラヒドロフラニルプロパンを仕込み、撹拌をスタートし、60℃に昇温し、nブチルリチウム8.0mmolを加えた後、ブタジエン186g及びスチレン114gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを重合釜に一括的仕込みの方式により加え、更に80℃で60分間反応させ、重合ゴム液を得た。
【0112】
工程(1b):ベースゴムの水素添加
実施例1と同じである。
【0113】
工程(1c):ゴム液の精製
実施例1と同じである。水添スチレン・ブタジエン共重合体を得たところ、性質は表1に示す通りである。
【0114】
比較例6
アニオン重合によりベースゴム(ベースゴムS/Bの質量比は38/62である)を合成し、チタン系触媒を用いて選択的に水素添加して得られる。具体的には以下のステップを含む:
【0115】
工程(1a):ベースゴムの合成
実施例1と同じである。
【0116】
工程(1b):ベースゴムの水素添加
重合ゴム液を5Lの水素添加釜に入れ、70℃に昇温し、助触媒としてのフタル酸ジブチル4mL(0.1mol/L)と、主触媒としてのジシクロペンタジエン二塩化チタン0.1gとを加え、水素ガスを通液し、水素添加圧力を1.0MPaに制御し、1時間水素添加反応を行わせた。
【0117】
工程(1c):ゴム液の精製
実施例1と同じである。水添スチレン・ブタジエン共重合体を得たところ、性質は表1に示す通りであった。
【0118】
比較例7
アニオン重合によりベースゴム(ベースゴムS/Bの質量比は30/70である)を合成し、チタン系触媒を用いて選択的に水素添加して得られる。具体的には以下のステップを含む:
【0119】
工程(1a):ベースゴムの合成
高純度窒素ガスで置換された5L重合釜に、純粋なシクロヘキサン3000mL(水の量<20mg/kg)、200mg/kg溶媒に相当する使用量のテトラヒドロフランを加え、撹拌をスタートし、70℃に昇温し、nブチルリチウム8.0mmolを加えた後、ブタジエン210gとスチレン90gの混合モノマーを加え、反応温度を100℃以下に制御するように混合モノマーを一括的仕込みの方式により重合釜に加え、さらに80℃で60分間反応させ、重合ゴム液を得た。
【0120】
工程(1b):ベースゴムの水素添加
実施例1と同じである。
【0121】
工程(1c):ゴム液の精製
実施例1と同じである。水添スチレン・ブタジエン共重合体を得たところ、性質は表1に示す通りであった。
【0122】
実施例1~7及び比較例1~7の合成サンプルの性能測定結果は以下の表1に示すとおりである。
【0123】
【表1-1】
【0124】
【表1-2】
【0125】
注:結晶化温度及びエンタルピーにおける「無」はDSC曲線に結晶化ピークが見られないことを示し、TEM特徴における「無」はTEMに層状、柱状、球状構造のいずれも見られないことを示し、「測定不可」は重合体が柔らかすぎ、ショアA硬度計でデータを計測できないことを示す。
【0126】
上記表1の結果から、本発明が提供する共重合体は、機械的特性及び酸化防止性能が良好であることがわかる。
【0127】
性能試験
1)上記実施例1~7及び比較例1~7で得られた共重合体を押出機にて共混合造粒し、造粒の条件として造粒温度(機首温度)を200℃とした後、水素化スチレン・ブタジエン共重合体粒子(粒径0.5~1cm)を二酸化炭素超臨界流体に浸漬し、水添スチレン・ブタジエン共重合体粒子基体において超臨界流体を溶解平衡に到達させた後、水素化スチレン・ブタジエン共重合体粒子を高圧反応釜に入れて加熱発泡させ、発泡の条件は発泡圧力20MPa、発泡温度120℃を含み、水添スチレン・ブタジエン共重合体発泡粒子を得た。発泡粒子は、金型により、発泡板材(厚さ1cm程度)をプレス形成し、発泡板材の性能試験の結果を以下の表2に示す。
【0128】
2)実施例1~4及び比較例1~3で得られた共重合体を、ホワイトオイル(26#、山東利豊化工新材料有限公司)、ポリプロピレン(燕山石化k8303)、CaCO、SEBS(巴陵石化YH503)又はSEPS(巴陵石化YH4053)と共混合し、処方を表3に示す。共混合物をCO超臨界発泡し、発泡の条件は、発泡圧力20MPa、発泡温度120℃を含み、水素添加スチレン・ブタジエン共重合体発泡粒子を得た。発泡粒子は、金型により、発泡板材(厚さ1cm程度)をプレス形成し、発泡板材の性能試験の結果を以下の表4に示す。
【0129】
【表2-1】
【0130】
【表2-2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
表2の結果から明らかなように、本発明は、水添共重合体の特定のスチレン含有量、特定の1,2構造含有量、及び特定の水素添加度とランダム度を制御することにより、得られた共重合体を二酸化炭素発泡により、反発性が高く、圧縮変形が低い発泡材料を得ることができる。
【0134】
表2及び表4の結果から、本発明の水添共重合体を用いた処方ゴムは、フィラーの添加により、発泡体の密度及び硬度が向上するが、発泡体の反発及び圧縮変形性能が依然として良好であることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B