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特許7640527RNA誘導ヌクレアーゼ及びその活性断片及び変異体ならびに使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】RNA誘導ヌクレアーゼ及びその活性断片及び変異体ならびに使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20250226BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250226BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20250226BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 110
C12N9/22
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2022509175
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 US2020045759
(87)【国際公開番号】W WO2021030344
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】62/885,483
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/901,875
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/030,088
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521282169
【氏名又は名称】ライフエディット セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】タイソン ディー.ボーエン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ ブライナー クローリー
(72)【発明者】
【氏名】テッド ディー.エリック
(72)【発明者】
【氏名】マイケル コイル
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/172556(WO,A1)
【文献】特表2019-520079(JP,A)
【文献】国際公開第2017/155717(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/186946(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/155714(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/036185(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/033298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12N 5/10
C12N 1/00-38
C12N 9/00-99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記ポリヌクレオチドが配列番号117に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRGNポリペプチドコードするヌクレオチド配列を含む、上記核酸分子。
【請求項2】
前記RGNポリペプチドが、標的DNA配列にハイブリダイズすることができるガイドRNA(gRNA)に結合した場合に、RNAガイド配列特異的な様式でDNA分子の前記標的DNA配列に結合することができる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、前記ポリヌクレオチドに異種性のプロモーターに機能的に連結されている、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記RGNポリペプチドが、配列番号117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記RGNポリペプチドが、配列番号117のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性であるか、又はニッカーゼとして機能することができる、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記RGNポリペプチドが、塩基編集ポリペプチドに機能的に融合されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に定義される核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
標的DNA配列にハイブリダイズすることができgRNAをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含み、ガイドRNAが、配列番号118対して少なくとも95%の配列同一性を有するCRISPR反復配列を含むCRISPR RNAを含む、請求項に記載のベクター。
【請求項10】
gRNAが、配列番号119対して少なくとも95%の配列同一性を有するtracrRNAを含む、請求項に記載のベクター。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に定義される核酸分子、又は請求項10のいずれか一項に定義されるベクターを含む細胞。
【請求項12】
DNA分子の標的DNA配列を結合するためのシステムであって、前記システムは、
a)1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチド又は前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができる1つ以上のガイドRNA;及び
b)配列番号117対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチド;又はRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
を含み
1つ以上のガイドRNAが、該RGNポリペプチドをDNA分子の該標的DNA配列に結合させるために、該RGNポリペプチドと複合体を形成することができる上記システム。
【請求項13】
1つ以上のガイドRNAをコードし、RGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の少なくとも1つが、ヌクレオチド配列に異種性のプロモーターに機能的に連連結されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
標的DNA配列が細胞内にある、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記RGNポリペプチドが、配列番号117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記RGNポリペプチドが、配列番号117のアミノ酸配列を含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性であるか、又はニッカーゼとして機能し得る、請求項12~15のいずれか一項に記載のシステム
【請求項18】
前記RGNポリペプチドが、塩基編集ポリペプチドに機能的に連結されている、請求項12~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムが、1つ以上のドナーポリヌクレオチド、又は1つ以上のドナーポリヌクレオチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列をさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
DNA分子の標的DNA配列の結合に使用するための、請求項12~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
DNA分子の標的DNA配列の切断又は修飾に使用するための、請求項12~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
DNA分子の標的DNA配列切断及び/又は修飾に使用するための組成物であって
a)RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)が、配列番号117対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列含むRGNポリペプチド;及び
b)(a)のRGNを標的DNA配列に標的化することができる1つ以上のガイドRNA
含み、
1つ以上のガイドRNAが標的DNA配列にハイブリダイズし、それによって、該RGNポリペプチドを該標的DNA配列に結合させ、該標的DNA配列の切断及び/又は修飾が起こる上記組成物
【請求項23】
前記RGNポリペプチドが、配列番号117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記RGNポリペプチドが、配列番号117のアミノ酸配列を含む、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性であるか、又はニッカーゼとして機能する、請求項22~23のいずれか一項に記載の使用するための組成物
【請求項26】
前記RGNポリペプチドが塩基編集ポリペプチドに機能的に連結されている、請求項22~25のいずれか一項に記載の使用するための組成物。
【請求項27】
標的DNA配列が細胞内にある、請求項22~26のいずれか一項に記載の使用するための組成物
【請求項28】
前記RGNポリペプチドが発現され、前記標的DNA配列を切断して修飾されたDNA配列を含むDNA分子を生成する条件下で前記細胞を培養する工程;及び前記修飾された標的DNA配列を含む細胞を選択する工程をさらに含む、請求項27に記載の使用するための組成物
【請求項29】
配列番号117に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチド。
【請求項30】
前記RGNポリペプチドが配列番号117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項29に記載のRGNポリペプチド。
【請求項31】
前記RGNポリペプチドが配列番号117のアミノ酸配列を含む、請求項29又は30に記載のRGNポリペプチド。
【請求項32】
前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性であるか、又はニッカーゼとして機能する、請求項29又は30に記載のRGNポリペプチド。
【請求項33】
前記RGNポリペプチドが、塩基編集ポリペプチドに機能的に連結されている、請求項29~32のいずれか一項に記載のRGNポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学及び遺伝子編集の分野に関する。
【0002】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列リストの参照
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列リストを含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年8月11日に作成されたこのASCIIコピーは、L103438 1170WO 0049 Seq List.txtという名前であり、サイズは489,326バイトである。
【背景技術】
【0003】
標的ゲノムの編集又は修飾は、基礎研究及び応用研究のための重要なツールとなりつつある。最初の方法は、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー融合タンパク質又はTALENのようなヌクレアーゼを操作することであり、それぞれの特定の標的配列に特異的な、プログラム可能な配列特異的DNA結合ドメインを有するキメラヌクレアーゼの生成を必要とした。CRISPR-Cas細菌系のClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)関連(Cas)タンパク質のようなRNA誘導ヌクレアーゼは、特定の標的配列と特異的にハイブリダイズするガイドRNAとヌクレアーゼを複合体化することによって、特異的配列の標的化を可能にする。標的特異的ガイドRNAを作製することは、各標的配列についてキメラヌクレアーゼを作製することよりもコストがかからず、効率が良い。このようなRNA誘導ヌクレアーゼは、エラーを起こしやすい非相同末端結合(NHEJ)を介して修復され、特定のゲノム位置に突然変異を導入する配列特異的二本鎖切断の導入を介して、任意選択的にゲノムを編集するために使用することができる。あるいは、相同性指向性修復を介して、異種DNAをゲノム部位に導入してもよい。
【発明の概要】
【0004】
目的の標的配列を結合するための組成物及び方法を提供する。組成物は、目的の標的配列を切断又は修飾し、目的の標的配列を検出し、目的の配列の発現を修飾するのに使用することを見出す。組成物は、RNA誘導ヌクレアーゼ(RNAGN)ポリペプチド、CRISPRRNA(crRNA)、トランス活性化CRISPRRNA(tracrRNA)、ガイドRNA(gRNA)、それをコードする核酸分子、及び核酸分子を含むベクター及び宿主細胞を含む。関心対象の標的配列を結合するためのCRISPRシステムも提供され、ここで、CRISPRシステムは、RNA誘導ヌクレアーゼポリペプチド及び1つ以上のガイドRNAを含む。従って、本明細書に開示される方法は、関心対象の標的配列を結合するため、及びいくつかの実施形態において、関心対象の標的配列を切断又は修飾するために描かれる。目的の標的配列は、例えば、導入されたドナー配列との非相同末端結合又は相同方向修復の結果として修飾することができる。さらに、検出一本鎖DNAを用いてDNA分子の標的DNA配列を検出するための方法及びキットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に記載される本発明の多くの修正及び他の実施形態は、これらの発明が関連する当業者が、前述の説明及び関連図面に提示される教示の利益を有することを想起するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び他の実施形態は、添付の実施形態の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。本明細書では特定の用語を使用するが、それらは、限定の目的のためではなく、一般的及び記述的意味においてのみ使用される。
【0006】
I.概要
RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)は、ゲノム内の単一部位の標的操作を可能にし、治療及び研究応用のための遺伝子ターゲティングの文脈において有用である。哺乳動物を含む種々の生物において、例えば、非相同末端結合及び相同組換えを刺激することによって、RNA誘導ヌクレアーゼがゲノム工学のために使用されてきた。本明細書に記載される組成物及び方法は、ポリヌクレオチド中に一本鎖又は二本鎖切断を作製するため、ポリヌクレオチドを修飾するため、ポリヌクレオチド内の特定の部位を検出するため、又は特定の遺伝子の発現を修飾するために有用である。
【0007】
本明細書に開示されるRNA誘導ヌクレアーゼは、標的配列を修飾することによって遺伝子発現を変化させることができる。特定の実施形態では、RNA誘導ヌクレアーゼは、クラスター化規則的間隔短パリンドローム反復(CRISPR)RNA誘導ヌクレアーゼシステムの一部としてガイドRNA(gRNA)により標的配列に向けられる。ガイドRNAは、RNAガイドヌクレアーゼと複合体を形成し、RNAガイドヌクレアーゼを標的配列に結合させ、いくつかの実施形態では、標的配列に一本鎖又は二本鎖切断を導入するので、RGNは「RNAガイド下」とみなされる。標的配列が切断された後、切断は修復され、修復過程中に標的配列のDNA配列が修飾される。従って、本明細書では、宿主細胞のDNA中の標的配列を修飾するためにRNA誘導ヌクレアーゼを使用する方法を提供する。例えば、RNA誘導ヌクレアーゼを用いて、真核細胞又は原核細胞のゲノム座位における標的配列を修飾することができる。
【0008】
II.RNA誘導ヌクレアーゼ
本明細書に提供されるのは、RNA誘導ヌクレアーゼである。用語「RNAガイドヌクレアーゼ」は、配列特異的な様式で特定の標的ヌクレオチド配列に結合し、ポリペプチドと複合体化され、標的配列とハイブリダイズするガイドRNA分子によって標的ヌクレオチド配列に向けられるポリペプチドを指す。RNA誘導ヌクレアーゼは、結合時に標的配列を切断することができるが、用語「RNA誘導ヌクレアーゼ」は、標的配列に結合するが切断しないヌクレアーゼ死RNA誘導ヌクレアーゼも含む。RNA誘導ヌクレアーゼによる標的配列の切断は、一本鎖又は二本鎖切断をもたらすことができる。二本鎖核酸分子の一本鎖を切断することができるだけのRNA誘導ヌクレアーゼは、本明細書ではニッカーゼと称される。
【0009】
本明細書に開示されるRNA誘導ヌクレアーゼには、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、及びAPG07433.1 RNA誘導ヌクレアーゼが含まれ、これらのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137又は235として記載され、それらの活性断片又は変異体は、RNA誘導された配列特異的な方法で標的ヌクレオチド配列に結合する能力を保持する。これらの実施形態の一部では、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、又はAPG07433.1 RGNの活性断片又は変異体は、一本鎖又は二本鎖の標的配列を切断することができる。いくつかの実施形態において、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、又はAPG07433.1 RGNの活性な変異体は、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137又は235として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超える配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態においてAPG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、又はAPG07433.1 RGNの活性断片は、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235に示されるアミノ酸配列と少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050又はそれ以上の連続したアミノ酸残基を含む。本明細書中で提供されるRNA誘導ヌクレアーゼは、ガイドRNAと相互作用するために、少なくとも1つのヌクレアーゼドメイン(例えば、DNase、RNaseドメイン)及び少なくとも1つのRNA認識及び/又はRNA結合ドメインを含むことができる。本明細書に提供されるRNA誘導ヌクレアーゼに見出され得るさらなるドメインは、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、及び二量体化ドメインを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書で提供されるRNA誘導ヌクレアーゼは、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%から1つ又は複数のDNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質間相互作用ドメイン、及び二量体化ドメインを含み得る。
【0010】
標的ヌクレオチド配列は、本明細書に提供されるRNAガイドヌクレアーゼによって結合され、RNAガイドヌクレアーゼに関連するガイドRNAとハイブリダイズする。次に、ポリペプチドがヌクレアーゼ活性を有する場合には、RNA誘導ヌクレアーゼによって標的配列を切断することができる。用語「切断」又は「切断」は、標的配列内で一本鎖又は二本鎖切断のいずれかを生じ得る標的ヌクレオチド配列の骨格内の少なくとも1つのホスホジエステル結合の加水分解を指す。現在開示されているRGNは、エンドヌクレアーゼとして機能するポリヌクレオチド内のヌクレオチドを切断することができ、又はエキソヌクレアーゼであってもよく、ポリヌクレオチドの末端(5’及び/又は3’末端)から連続するヌクレオチドを除去する。他の実施形態において、開示されたRGNは、ポリヌクレオチドの任意の位置内の標的配列のヌクレオチドを切断することができ、従って、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼの両方として機能する。現在開示されているRGNによる標的ポリヌクレオチドの切断は、ねじれた切断又は平滑末端を生じ得る。
【0011】
現在開示されているRNA誘導ヌクレアーゼは、細菌又は古細菌種に由来する野生型配列であり得る。あるいは、RNA誘導ヌクレアーゼは、野生型ポリペプチドの変異体又は断片であってもよい。野生型RGNは、例えば、ヌクレアーゼ活性を変化させるか、又はPAM特異性を変化させるように修飾することができる。いくつかの実施形態において、RNA誘導ヌクレアーゼは、天然に存在しない。
【0012】
ある態様において、RNA誘導ヌクレアーゼは、ニッカーゼとして機能し、標的ヌクレオチド配列の一本鎖を切断するのみである。このようなRNA誘導ヌクレアーゼは、単一の機能性ヌクレアーゼドメインを有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、ヌクレアーゼ活性が減少又は除去されるように、さらなるヌクレアーゼドメインが突然変異されている。
【0013】
他の実施形態では、RNA誘導ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性を完全に欠損しているか、又は低下したヌクレアーゼ活性を示し、本明細書では、ヌクレアーゼ死又はヌクレアーゼ不活性と称する。PCR媒介突然変異誘発及び部位特異的突然変異誘発のような、アミノ酸配列に突然変異を導入するための当技術分野で公知の任意の方法を、ニッカーゼ又はヌクレアーゼ死RGNを生成するために使用することができる。例えば、各々が参照によりその全体が援用される、米国特許出願公開第2014/0068797号、及び米国特許第9,790,490号を参照されたい。
【0014】
ヌクレアーゼ活性を欠くRNA誘導ヌクレアーゼを用いて、融合ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又は低分子ペイロードを特定のゲノム位置に送達することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、RGNポリペプチド又はガイドRNAは、特定の配列の検出を可能にするために、検出可能な標識に融合され得る。非限定的な例として、ヌクレアーゼ死RGNは、検出可能な標識(例えば、蛍光タンパク質)に融合され得、疾患関連配列の検出を可能にするために、疾患に関連する特定の配列に標的化され得る。
【0015】
あるいは、ヌクレアーゼ死滅RGNは、所望の配列の発現を変化させるために、特定のゲノム位置を標的とすることができる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼ死RNA誘導ヌクレアーゼの標的配列への結合は、標的ゲノム領域内のRNAポリメラーゼ又は転写因子の結合を妨害することによって、標的配列又は標的配列による転写制御下にある遺伝子の発現の抑制をもたらす。他の実施形態では、RGN(例えば、ヌクレアーゼ死滅RGN)又はその複合体化ガイドRNAは、標的配列に結合すると、標的配列又は標的配列による転写制御下にある遺伝子の発現を抑制又は活性化するいずれかに作用する発現モジュレーターをさらに含む。これらの態様のいくつかにおいて、発現モジュレーターは、エピジェネティックなメカニズムを介して、標的配列又は調節された遺伝子の発現をモジュレートする。
【0016】
他の実施形態において、ヌクレアーゼ死滅RGN又はニッカーゼ活性のみを有するRGNは、塩基編集ポリペプチド、例えば、デアミナーゼポリペプチド又はヌクレオチド塩基を脱アミノ化し、1つのヌクレオチド塩基から別のヌクレオチド塩基への転換をもたらす活性変異体又はその断片への融合を介して標的ポリヌクレオチドの配列を修飾するために、特定のゲノム位置を標的とすることができる。塩基編集ポリペプチドは、そのN末端又はC末端でRGNに融合することができる。さらに、塩基編集ポリペプチドは、ペプチドリンカーを介してRGNに融合され得る。このような組成物及び方法に有用なデアミナーゼポリペプチドの非限定的な例としては、シチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼ(例えば、全体が参照により本明細書に援用される、Gaudelli et al. (2017) Nature 551:464-471、米国特許出願公開第2017/0121693号及び第2018/0073012号、ならびにWO2018/027078に記載されるアデノシンデアミナーゼ塩基編集、又はPCT/US2019/068079に開示されるデアミナーゼのいずれか)が挙げられる。さらに、RGNと塩基編集酵素との間の特定の融合タンパク質は、デアミナーゼにより核酸分子中のチミジン、デオキシチミジン、又はチミンへのシチジン、デオキシシチジン、又はシトシンの突然変異率を増加させる少なくとも1つのウラシル安定化ポリペプチドを含んでもよいことが当技術分野で公知である。ウラシル安定化ポリペプチドの非限定的な例としては、2020年7月15日に出願された米国仮出願第63/052,175号に記載されたもの、及び塩基編集効率を高めることができるウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)ドメイン(配列番号261)が挙げられる(参照により本明細書に援用される、米国特許第10,167,547号)。従って、融合タンパク質は、本明細書に記載されるRGN、又はその変種、デアミナーゼ、及び場合によりUGIなどの少なくとも1つのウラシル安定化ポリペプチドを含んでもよい。
【0017】
ポリペプチド又はドメインに融合されたRNA誘導ヌクレアーゼは、リンカーによって分離又は連結され得る。本明細書中で使用される用語「リンカー」は、2つの分子又は部分を連結する化学基又は分子、例えば、結合ドメイン及びヌクレアーゼの切断ドメインを指す。ある態様において、リンカーは、RNA誘導ヌクレアーゼのgRNA結合ドメインと、デアミナーゼのような塩基編集ポリペプチドとを結合する。いくつかの態様において、リンカーは、ヌクレアーゼ死滅RGN及びデアミナーゼを結合する。典型的には、リンカーは、2つの基、分子、又は他の部分の間に配置され、又はそれらに隣接して配置され、共有結合を介して各々に連結され、かくして、2つを連結する。ある態様において、リンカーは、アミノ酸又は複数のアミノ酸(例えば、ペプチド又はタンパク質)である。ある態様において、リンカーは、有機分子、基、ポリマー、又は化学部分である。いくつかの実施形態において、リンカーは、長さが1-5のアミノ酸であり、例えば、長さは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、30-35、35-40、40-45、45-50、50-60、60-70、70-80、80-90、90-100、100-150、又は150-200アミノ酸である。より長い又はより短いリンカーもまた意図される。
【0018】
現在開示されているRNA誘導ヌクレアーゼは、細胞の核へのRGNの輸送を増強するために、少なくとも1つの核局在化シグナル(NLS)を含むことができる。核局在化シグナルは当該分野で公知であり、一般に一連の塩基性アミノ酸を含む(例えば、Lange et al., J. Biol. Chem. (2007) 282:5101-5105).特定の実施形態では、RGNは、2、3、4、5、6又はそれ以上の核局在化シグナルを含む。核局在化シグナルは、異種NLSであり得る。現在開示されているRGNに有用な核局在化シグナルの非限定的な例は、SV40ラージT抗原、ヌクレオパスミン、及びc-Mycの核局在化シグナルである(例えば、Ray et al. (2015) Bioconjug Chem 26(6):1004-7を参照されたい)。特定の実施態様において、RGNは、配列番号125又は127で示されるNLS配列を含む。RGNは、そのN末端、C末端、又はN末端とC末端の両方に1つ以上のNLS配列を含むことができる。例えば、RGNは、N末端領域に2つのNLS配列、C末端領域に4つのNLS配列を含むことができる。
【0019】
特定の細胞内位置にポリペプチドを局在化させる当技術分野で公知の他の局在化シグナル配列をRGNを標的化するために使用することもでき、これには、限定されないが、色素体局在配列、ミトコンドリア局在配列、及び色素体及びミトコンドリアの両方を標的化する二重標的化シグナル配列が含まれる(例えば、Nassoury and Morse (2005) Biochim Biophys Acta 1743:5-19; Kunze and Berger (2015) Front Physiol dx.doi.org/10.3389/fphys.2015.00259; Herrmann and Neupert (2003) IUBMB Life 55:219-225; Soll (2002) Curr Opin Plant Biol 5:529-535; Carrie and Small (2013) Biochim Biophys Acta 1833:253-259; Carrie et al. (2009) FEBS J 276:1187-1195; Silva-Filho (2003) Curr Opin Plant Biol 6:589-595; Peeters and Small (2001) Biochim Biophys Acta 1541:54-63; Murcha et al. (2014) J Exp Bot 65:6301-6335; Mackenzie (2005) Trends Cell Biol 15:548-554; Glaser et al. (1998) Plant Mol Biol 38:311-338を参照されたい)。
【0020】
特定の実施形態では、現在開示されているRNA誘導ヌクレアーゼは、RGNの細胞取り込みを促進する少なくとも1つの細胞浸透ドメインを含む。細胞浸透ドメインは、当技術分野で公知であり、一般に、正に荷電したアミノ酸残基(すなわち、ポリカチオン性細胞浸透ドメイン)、交互極性アミノ酸残基及び非極性アミノ酸残基(すなわち、両親媒性細胞浸透ドメイン)、又は疎水性アミノ酸残基(すなわち、疎水性細胞浸透ドメイン)(例えば、Milletti F. (2012) Drug Discov Today 17:850-860を参照されたい)のストレッチを含む。細胞浸透ドメインの非限定的な例は、ヒト免疫不全ウイルス1からのトランス活性化転写アクチベーター(TAT)である。
【0021】
核局在化シグナル、色素体局在化シグナル、ミトコンドリア局在化シグナル、二重標的局在化シグナル、及び/又は細胞浸透ドメインは、アミノ末端(N末端)、カルボキシル末端(C末端)、又はRNA誘導ヌクレアーゼの内部位置に位置することができる。
【0022】
現在開示されているRGNは、リンカーペプチドを介して直接的又は間接的に、切断ドメイン、デアミナーゼドメイン、又は発現モジュレータードメインなどのエフェクタードメインに融合することができる。このようなドメインは、N末端、C末端、又はRNA誘導ヌクレアーゼの内部位置に位置することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、融合タンパク質のRGN成分は、ヌクレアーゼで死んだRGNである。
【0023】
いくつかの実施形態において、RGN融合タンパク質は、ポリヌクレオチド(すなわち、RNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド)を切断することができる任意のドメインであり、制限エンドヌクレアーゼ及びホーミングヌクレアーゼ、例えば、タイプIISエンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)を含むがこれらに限定されない切断ドメインを含む(Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388; Linn et al. (eds.) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993)。
【0024】
他の実施形態では、RGN融合タンパク質は、ヌクレオチド塩基を脱アミノ化し、1つのヌクレオチド塩基から別のヌクレオチド塩基への変換をもたらすデアミナーゼドメインを含み、シチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼ塩基編集(例えば、Gaudelli et al. (2017) Nature 551:464-471;米国特許出願公開第2017/0121693号及び第2018/0073012号、米国特許第9,840,699号、及び国際公開第WO2018/027078号)を含むが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態において、RGN融合タンパク質のエフェクタードメインは、転写をアップレギュレート又はダウンレギュレートするのに役立つドメインである発現モジュレータードメインであり得る。発現モジュレータードメインは、エピジェネティック修飾ドメイン、転写リプレッサードメイン、又は転写活性化ドメインであり得る。
【0026】
これらの実施形態のいくつかにおいて、RGN融合タンパク質の発現モジュレーターは、DNA又はヒストンタンパク質を共有結合的に修飾して、DNA配列を変化させることなく、ヒストン構造及び/又は染色体構造を変化させ、遺伝子発現の変化(すなわち、アップレギュレーション又はダウンレギュレーション)をもたらすエピジェネティック修飾ドメインを含む。エピジェネティック修飾の非限定的な例としては、リジン残基のアセチル化又はメチル化、アルギニンメチル化、セリン及びトレオニンリン酸化、ならびにヒストンタンパク質のリシンユビキチン化及びスモイル化、ならびにDNA中のシトシン残基のメチル化及びヒドロキシメチル化が挙げられる。エピジェネティック修飾ドメインの非限定的な例としては、ヒストンアセチルトランスフェラーゼドメイン、ヒストンデアセチラーゼドメイン、ヒストンメチルトランスフェラーゼドメイン、ヒストンデメチラーゼドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼドメイン、及びDNAデメチラーゼドメインが挙げられる。
【0027】
他の実施形態では、融合タンパク質の発現モジュレーターは、転写制御エレメント及び/又は転写調節タンパク質、例えばRNAポリメラーゼ及び転写因子と相互作用して、少なくとも1つの遺伝子の転写を減少又は終結させる転写リプレッサードメインを含む。転写リプレッサードメインは、当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、Sp1様リプレッサー、IκB、及びKrUppel会合ボックス(KRAB)ドメインを含む。
【0028】
さらに他の実施形態では、融合タンパク質の発現モジュレーターは、少なくとも1つの遺伝子の転写を増加又は活性化するために、転写制御エレメント及び/又はRNAポリメラーゼ及び転写因子などの転写調節タンパク質と相互作用する転写活性化ドメインを含む。転写活性化ドメインは、当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメイン及びNFAT活性化ドメインを含む。
【0029】
現在開示されているRGNポリペプチドは、検出可能な標識又は精製タグを含むことができる。検出可能な標識又は精製タグは、リンカーペプチドを介して直接的又は間接的に、N末端、C末端、又はRNAガイドヌクレアーゼの内部位置に位置することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、融合タンパク質のRGN成分は、ヌクレアーゼで死んだRGNである。他の実施形態では、融合タンパク質のRGN成分は、ニッカーゼ活性を有するRGNである。
【0030】
検出可能な標識は、可視化され得るか、又は他の方法で観察され得る分子である。検出可能な標識は、融合タンパク質(例えば、蛍光タンパク質)としてRGNに融合され得るか、又は視覚的に又は他の手段によって検出され得るRGNポリペプチドに複合された小分子であり得る。融合タンパク質として現在開示されているRGNに融合することができる検出可能な標識は、限定されるものではないが、蛍光タンパク質又は特異的抗体で検出することができるタンパク質ドメインを含む任意の検出可能なタンパク質ドメインを含む。蛍光タンパク質の非限定的な例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、EGFP、ZsGreen1)及び黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、ZsYellow1)が挙げられる。低分子検出可能な標識の非限定的な例としては、H及び35Sのような放射性標識が挙げられる。
【0031】
RGNポリペプチドはまた、精製タグを含むことができ、これは、タンパク質又は融合タンパク質を混合物(例えば、生物学的試料、培養培地)から単離するために利用することができる任意の分子である。精製タグの非限定的な例としては、ビオチン、マイク、マルトース結合タンパク質、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼが挙げられる。
【0032】
II.ガイドRNA
本開示は、同じものをコードするガイドRNA及びポリヌクレオチドを提供する。用語「ガイドRNA」は、標的配列とハイブリダイズし、関連するRNAガイドヌクレアーゼの標的ヌクレオチド配列への直接的な配列特異的結合に十分な標的ヌクレオチド配列と相補性を有するヌクレオチド配列を指す。従って、RGNのそれぞれのガイドRNAは、RGNに結合して特定の標的ヌクレオチド配列に結合するようにRGNを誘導することができる1つ以上のRNA分子(一般に、1つ又は2つ)であり、RGNがニッカーゼ又はヌクレアーゼ活性を有する場合には、標的ヌクレオチド配列も切断することができる。一般に、ガイドRNAは、CRISPRRNA(crRNA)を含み、いくつかの実施形態では、トランス活性化CRISPRRNA(tracrRNA)を含む。crRNA及びtracrRNAの両方を含む天然ガイドRNAは、一般に、crRNAの反復配列及びtracrRNAの抗反復配列を介して互いにハイブリダイズする2つの別々のRNA分子を含む。
【0033】
CRISPRアレイ内の天然の同方向反復配列は、一般に、28~37塩基対の長さの範囲であるが、その長さは、約23bp~約55bpの間で変化し得る。CRISPRアレイ内のスペーサー配列は、一般に、約32~約38bpの長さの範囲であるが、その長さは、約21bp~約72bpの間であり得る。各CRISPRアレイは、一般に、CRISPR反復スペーサー配列の50ユニット未満を含む。CRISPRは、CRISPRアレイの大部分を構成する一次CRISPR転写物とよばれる長い転写物の一部として転写される。一次CRISPR転写産物はCasタンパク質によって切断され、crRNAを生成するか、場合によってはプレcrRNAを生成する。プレcrRNAはさらに別のCasタンパク質によって成熟crRNAにプロセシングされる。成熟crRNAはスペーサー配列及びCRISPR反復配列を含む。プレcrRNAが成熟(又はプロセシングされた)crRNAにプロセシングされるいくつかの態様において、成熟は、約1~約6個以上の5’、3’、又は5’及び3’ヌクレオチドの除去を含む。目的の特定の標的ヌクレオチド配列をゲノムエディティング又は標的化する目的のために、プレcrRNA分子の成熟中に除去されるこれらのヌクレオチドは、ガイドRNAを生成又は設計するために必要ではない。
【0034】
CRISPR RNA(crRNA)は、スペーサー配列及びCRISPR反復配列を含む。「スペーサー配列」は、目的の標的ヌクレオチド配列と直接ハイブリダイズするヌクレオチド配列である。スペーサー配列は、目的の標的配列と完全に又は部分的に相補的であるように操作される。種々の実施形態において、スペーサー配列は、約8ヌクレオチド~約30ヌクレオチド、又はそれ以上を含むことができる。例えば、スペーサー配列は、長さが約約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30又はそれ以上のヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態においてスペーサー配列とその対応する標的配列の間の相補性の程度は、場合により適切なアラインメントアルゴリズムを用いて整列させた場合、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上である。特定の実施態様において、スペーサー配列は、二次構造を含まず、これは、当該技術分野において公知である任意の適切なポリヌクレオチドフォールディングアルゴリズムを用いて予測することができ、例えば、限定されないが、mFold(例えば、Zuker and Stiegler (1981) Nucleic Acids Res. 9:133-148を参照されたい)及びRNAfold(例えば、Gruber et al. (2008) Cell 106(1):23-24を参照されたい)が挙げられる。
【0035】
CRISPR RNA反復配列は、tracrRNAにハイブリダイズするのに十分な相補性を有する領域を含むヌクレオチド配列を含む。様々な実施形態において、CRISPR RNA反復配列は、約8ヌクレオチド~約30ヌクレオチド、又はそれ以上を含むことができる。例えば、CRISPR反復配列は、長さが約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30又はそれ以上であり得る。ある態様において、CRISPR反復配列は、長さが約21ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、CRISPR反復配列とその対応するtracrRNA配列の間の相補性の程度は、場合により適切なアラインメントアルゴリズムを用いて整列させた場合、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上である。特定の実施形態では、CRISPR反復配列は、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287のヌクレオチド配列、又はガイドRNA内に含まれる場合に、本明細書で提供される関連するRNA誘導ヌクレアーゼの配列特異的結合を目的の標的配列に向けることができる活性変異体又はその断片が含む。特定の実施形態において、野生型配列の活性CRISPR反復配列変異体は、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273又は287として示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、野生型配列の活性CRISPR反復配列断片は、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287として示されるヌクレオチド配列の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又はそれ以上の連続したヌクレオチドを含む。
【0036】
ある態様において、crRNAは、天然に存在しない。これらの実施形態のいくつかにおいて、特異的CRISPR反復配列は、本質的には操作されたスペーサー配列に連結されておらず、CRISPR反復配列は、スペーサー配列に対して異種性であると考えられる。ある態様において、スペーサー配列は、天然に存在しない操作された配列である。
【0037】
トランス活性化CRISPR RNA又はtracrRNA分子は、crRNAのCRISPR反復配列とハイブリダイズするのに十分な相補性を有する領域を含むヌクレオチド配列を含み、これを本明細書では抗反復領域と称する。ある態様において、tracrRNA分子は、二次構造(例えば、ステム-ループ)を有する領域、又は対応するcrRNAとハイブリダイズすることによって二次構造を形成する領域をさらに含む。特定の実施形態では、CRISPR反復配列に対して完全又は部分的に相補的であるtracrRNAの領域は、分子の5’末端であり、tracrRNAの3’末端は二次構造を含む。この二次構造領域は、一般に、アンチ反復配列に隣接して見出されるネクサスヘアピンを含むいくつかのヘアピン構造を含む。ネクサスヘアピンは、しばしば、tracrRNAの多くのネクサスヘアピンに見られる、モチーフUNANNA、CNANNG、CNANNU、UNANNG、UNANNC、又はCNANNU(それぞれ配列番号8、37、45、53、68、及び102)を有する、ヘアピンステムの基部に保存されたヌクレオチド配列を有する。tracrRNAの3’末端には、構造や数が異なる末端ヘアピン構造が存在することが多いが、しばしばGCに富むRho非依存性転写ターミネーターヘアピンと、それに続く3’末端U’のストリングを含む。例えば、各々全体が参照により本明細書に援用される、Briner et al. (2014) Molecular Cell 56:333-339, Briner and Barrangou (2016) Cold Spring Harb Protoc; doi: 10.1101/pdb.top090902, and U.S. Publication No. 2017/0275648を参照されたい。
【0038】
様々な実施形態において、CRISPR反復配列に対して完全又は部分的に相補的であるtracrRNAの抗反復領域は、約8ヌクレオチド~約30ヌクレオチド、又はそれ以上を含む
例えば、tracrRNAアンチ反復配列とCRISPR反復配列との間の塩基対形成の領域は、長さが約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、又はそれ以上のヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、CRISPR反復配列に対して完全又は部分的に相補的であるtracrRNAの抗反復領域は、長さが約20ヌクレオチドである。いくつかの実施形態においてCRISPR反復配列とその対応するtracrRNA配列の間の相補性の程度は、場合により適切なアラインメントアルゴリズムを用いて整列させた場合、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上である。
【0039】
種々の実施形態において、tracrRNA全体は、約60ヌクレオチド~約140ヌクレオチドを含むことができる。例えば、tracrRNAは、長さが約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、又はそれ以上のヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、tracrRNAは約80~約90ヌクレオチドの長さであり、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、及び約90ヌクレオチドの長さである。ある態様において、tracrRNAは、長さが約85ヌクレオチドである。
【0040】
特定の実施形態では、tracrRNAは、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119のヌクレオチド配列、又は、ガイドRNA内に含まれる場合に、本明細書で提供される関連するRNA誘導ヌクレアーゼの配列特異的結合を目的の標的配列に向けることができる活性変異体又はその断片を含む。特定の実施形態において、野生型配列の活性なtracrRNA配列変異体は、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286として示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、野生型配列の活性なtracrRNA配列断片は、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286として示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、又はそれ以上の連続したヌクレオチドを含む。
【0041】
2つのポリヌクレオチド配列は、2つの配列が厳密な条件下で互いにハイブリダイズする場合、実質的に相補的であるとみなすことができる。同様に、RGNに結合したガイドRNAが厳密な条件下で標的配列に結合する場合、RGNは、配列特異的な様式で特定の標的配列に結合すると考えられる。「ストリンジェントな条件」又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、2つのポリヌクレオチド配列が、他の配列(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍)よりも検出可能に高い程度で互いにハイブリダイズする条件を意味する。厳密な条件は、配列依存性であり、異なる状況で異なるであろう。典型的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0~8.3において、塩濃度が約1.5MのNaイオン、典型的には約0.01~1.0MのNaイオン濃度(又は他の塩)未満であり、温度は、短い配列(例えば、10~50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、長い配列(例えば、50ヌクレオチドを超える)ホルムアミドのような不安定化剤を加えることによって、厳しい条件を達成することもできる。例示的な低ストリンジェンシー条件には、37℃での30~35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液とのハイブリダイゼーション、及び1×~2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)(50~55℃)での洗浄が含まれる。中程度のストリンジェンシー条件の例には、40~45%ホルムアミド、1.0M NaCl、1%SDS(37℃)でのハイブリダイゼーション、及び0.5×~1×SSC(55~60℃)での洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件には、50%ホルムアミド、1M NaCl、37℃での1%SDSでのハイブリダイゼーション、及び60~65℃での0.1×SSCでの洗浄が含まれる。オプションで、洗浄バッファーは約0.1%~約1%SDSを含む場合がある。ハイブリダイゼーションの持続時間は一般に約24時間未満であり、通常約4~約12時間である。洗浄時間の持続時間は、少なくとも平衡に達するのに十分な時間の長さである。
【0042】
Tmは、相補的標的配列の50%が完全に一致した配列にハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度及びpH下で)である。DNA-DNAハイブリッドの場合、Tmは、Meinkoth and Wahl (1984) Anal. Biochem. 138:267-284の式:Tm=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)-0.61(%形態)-0.61(%形態)-500/Lから近似することができる。ここで、Mは一価陽イオンのモル濃度、%GCはDNA中のグアMは一価カチオンのモル濃度、%GCはDNA中のグアノシン及びシトシンヌクレオチドのパーセンテージ、%形態はハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージ、Lは塩基対のハイブリッドの長さである。一般に、厳しい条件は、特定の配列及び規定されたイオン強度及びpHにおけるその相補性について、熱融点(Tm)よりも約5℃低いように選択される。しかしながら、厳しいストリンジェントな条件では、熱融点(Tm)よりも1、2、3、又は4℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができる。適度に厳しい条件では、熱融点(Tm)よりも6、7、8、9、又は10℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができる。低ストリンジェンシー条件では、熱融点(Tm)よりも11、12、13、14、15、又は20℃低いハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができる。この式、ハイブリダイゼーション及び洗浄組成物、及び所望のTmを用いて、当業者は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄溶液のストリンジェンシーの変動が本質的に記載されていることを理解するであろう。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範なガイドは、Tijssen (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part I, Chapter 2 (Elsevier, New York); and Ausubel et al., eds. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 2 (Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York)に見出すことができる。Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, New York)を参照されたい。
【0043】
ガイドRNAは、単一ガイドRNA又は二重ガイドRNAシステムであってもよい。単一のガイドRNAは、単一のRNA分子上にcrRNA及びtracrRNAを含むが、二重ガイドRNAシステムは、crRNA及び2つの異なるRNA分子上に存在し、crRNAのCRISPR反復配列の少なくとも一部及びcrRNAのCRISPR反復配列と完全に又は部分的に相補的であり得るtracrRNAの少なくとも一部を介して互いにハイブリダイズしたtracrRNAを含む。ガイドRNAが単一ガイドRNAであるいくつかの態様において、crRNA及びtracrRNAは、リンカーヌクレオチド配列によって分離される。一般に、リンカーヌクレオチド配列は、リンカーヌクレオチド配列のヌクレオチド内又はそれを含む二次構造の形成を回避するために、相補的塩基を含まないものである。いくつかの実施形態において、crRNAとtracrRNAの間のリンカーヌクレオチド配列は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12ヌクレオチド、又はそれ以上の長さである。特定の実施形態では、単一ガイドRNAのリンカーヌクレオチド配列は、長さが少なくとも4ヌクレオチドである。ある態様において、リンカーヌクレオチド配列は、配列番号123として示されるヌクレオチド配列である。
【0044】
単一ガイドRNA又は二重ガイドRNAは、化学的に、又はインビトロ転写を介して合成することができる。RGNとガイドRNAとの間の配列特異的結合を決定するためのアッセイは当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、検出可能な標識(例えば、ビオチン)でタグ付けすることができ、検出可能な標識(例えば、ストレプトアビジンビーズ)を介してガイドRNA:RGN複合体を捕捉するプルダウン検出アッセイで使用することができる、発現されたRGNとガイドRNAとの間のインビトロ結合アッセイを含む。ガイドRNAに無関係な配列又は構造を有する制御ガイドRNAを、RNAへのRGNの非特異的結合のための陰性対照として用いることができる。特定の実施形態において、ガイドRNAは、配列番号4、12、19、26、33、41、49、57、64、72、78、85、92、98、106、113、又は120であり、スペーサーは、配列は任意の配列であり、ポリN配列として示される。
【0045】
ある態様において、ガイドRNAは、RNA分子として標的細胞、細胞小器官、又は胚に導入され得る。ガイドRNAは、インビトロで転写することも、化学的に合成することもできる。他の実施形態では、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列が、細胞、細胞小器官、又は胚に導入される。これらの態様のいくつかにおいて、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター(例えば、RNAポリメラーゼIIIプロモーター)に作動可能に連結される。プロモーターは、天然プロモーターであってもよく、又はガイドRNAをコードするヌクレオチド配列に対して異種であってもよい。
【0046】
種々の実施形態において、ガイドRNAは、本明細書に記載されるように、リボ核タンパク質複合体として標的細胞、細胞小器官、又は胚に導入することができ、ここで、ガイドRNAは、RNAガイドヌクレアーゼポリペプチドに結合される。
【0047】
ガイドRNAは、ガイドRNAの標的ヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションを介して、関連するRNA誘導ヌクレアーゼを対象の特定の標的ヌクレオチド配列に向ける。標的ヌクレオチド配列は、DNA、RNA、又は両方の組み合わせを含み得、一本鎖又は二本鎖であり得る。標的ヌクレオチド配列は、ゲノムDNA(すなわち、染色体DNA)、プラスミドDNA、又はRNA分子(例えば、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、トランスファーRNA、マイクロRNA、低分子干渉RNA)であり得る。標的ヌクレオチド配列は、インビトロ又は細胞においてRNA誘導ヌクレアーゼによって結合(及びいくつかの実施形態においては切断)され得る。RGNが標的とする染色体配列は、核、色素体、又はミトコンドリアの染色体配列であり得る。いくつかの態様において、標的ヌクレオチド配列は、標的ゲノムにおいて独特である。
【0048】
標的ヌクレオチド配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接している。プロトスペーサー隣接モチーフは、一般に、標的ヌクレオチド配列から約1から約10ヌクレオチド以内であり、これには、標的ヌクレオチド配列から約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10ヌクレオチドが含まれる。PAMは、標的配列の5’又は3’であり得る。いくつかの実施形態において、PAMは、現在開示されているRGNの標的配列の3’である。一般に、PAMは、約3~4ヌクレオチドのコンセンサス配列であるが、特定の実施形態では、長さが2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上のヌクレオチドであり得る。様々な実施形態において、現在開示されているRGNによって認識されるPAM配列は、配列番号7、15、22、29、36、44、52、60、67、81、88、101、109、又は116として示されるコンセンサス配列を含む。
【0049】
特定の実施形態において、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117を有するRNA誘導ヌクレアーゼ、又は活性変異体若しくはその断片は、それぞれ、配列番号7、15、22、29、36、44、52、60、67、81、88、101、109、又は116に示されるPAM配列に隣接する標的ヌクレオチドに結合する。いくつかの実施形態において、配列番号54若しくは137を有するRNA誘導ヌクレアーゼ、又はその活性変異体若しくは断片は、配列番号147として示されるPAM配列に隣接する標的ヌクレオチド配列に結合する。これらの実施形態のいくつかにおいて、RGNは、それぞれ配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に示されるCRISPR反復配列を含むガイド配列、又はそれらの活性変異体若しくは断片、及び配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に示されるtracrRNA配列、又はそれらの活性変異体又は断片に結合する。RGNシステムは、本明細書の実施例1、ならびに表1及び2にさらに記載される。
【0050】
所与のヌクレアーゼ酵素に対するPAM配列特異性が酵素濃度によって影響されることは、当技術分野において周知である(例えば、Karvelis et al. (2015) Genome Biol 16:253を参照されたい)。これは、RGN、又は細胞、細胞小器官、又は胚に送達されるリボ核タンパク質複合体の量を発現するために使用されるプロモーターを改変することによって改変され得る。
【0051】
RGNは、その対応するPAM配列を認識すると、特異的切断部位で標的ヌクレオチド配列を切断することができる。本明細書中で用いる場合、切断部位は、ヌクレオチド配列がRGNによって切断される標的ヌクレオチド配列内の2つの特定のヌクレオチドから構成される。切断部位は、5’又は3’方向のいずれかのPAMからの1番目及び2番目、2番目及び3番目、3番目及び4番目、4番目及び5番目、5番目及び6番目、7番目及び8番目、又は8番目及び9番目のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態において、切断部位は、5’又は3’方向のいずれかで、PAMから10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチドを超え得る。いくつかの態様において、切断部位は、PAMから4ヌクレオチド離れている。他の態様において、切断部位は、PAMから少なくとも15ヌクレオチド離れている。RGNは標的ヌクレオチド配列を切断することができ、ねじれ末端を生じるため、いくつかの実施形態において、切断部位は、ポリヌクレオチドの正(+)鎖上のPAMからの2つのヌクレオチドの距離、及びポリヌクレオチドの負(-)鎖上のPAMからの2つのヌクレオチドの距離に基づいて定義される。
【0052】
PAMは、II型CRISPRシステムのRNA誘導ヌクレアーゼの特徴とみなされる(Szczelkun et al., PNAS, 111: 9798-9803, 2014; Sternberg et al., Nature 507: 62-67, 2014)。興味深いことに、APG06646.1及びAPG04293.1はRNA誘導ヌクレアーゼとして機能し、II型CRISPR Cas9ヌクレアーゼと同じドメインの多くを有するが、それらはそれぞれ典型的なPAM相互作用ドメイン(PID;Interpro:IPR032237;Pfam:PF16595)を欠いている。従って、APG06646.1及びAPG04293.1はまた、上記のように2~5ヌクレオチドのモチーフである典型的なPAM要求性を有しない。その代わり、これらのタンパク質は、そのC末端にユニークなDNA認識ドメイン(APG06646.1の残基821~1092(全長配列は配列番号117);APG04293.1の残基1064~1401(全長配列は配列番号103)を有する。これらのユニークなDNA認識ドメインは、ゲノム標的配列(配列番号109;表2を参照)の近傍の単一ヌクレオチドモチーフに基づいて、ヌクレアーゼがゲノム標的部位で切断することを可能にする。
【0053】
APG04293.1はまた、そのN末端(残基144~276)の近位に133アミノ酸残基のユニークな特徴ドメインを有する。このドメインの機能は、II型CRISPR Cas9ヌクレアーゼにおいても、一般的に当技術分野においても知られていない。
【0054】
III.RNA誘導ヌクレアーゼ、CRISPR RNA及び/又はtracrRNAをコードするヌクレオチド
本開示は、現在開示されているCRISPR RNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAを含むポリヌクレオチド、ならびに現在開示されているRNA誘導ヌクレアーゼ、CRISPR RNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。現在開示されているポリヌクレオチドには、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287のヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列、又はガイドRNA内に含まれる場合に関連するRNAガイドヌクレアーゼの配列特異的結合を目的の標的配列に向けることができる活性変異体又はその断片を含むか又はコードするものが含まれる。配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286のヌクレオチド配列を含むtracrRNA、又はガイドRNA内に含まれる場合に、関連するRNAガイドヌクレアーゼの配列特異的結合を目的の標的配列に向けることができる活性変異体又はその断片を含む又はコードするポリヌクレオチドも開示される。配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235として示されるアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、及びRNA誘導配列特異的様式で標的ヌクレオチド配列に結合する能力を保持するそれらの活性断片又は変異体も提供される。
【0055】
用語「ポリヌクレオチド」の使用は、本開示をDNAを含むポリヌクレオチドに限定することを意図しない。当業者は、ポリヌクレオチドがリボヌクレオチド、及びリボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含むことができることを認識するであろう。このようなデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドには、天然に存在する分子及び合成類似体の両方が含まれる。これらには、ペプチド核酸(PNA)、PNA-DNAキマー、ロックされた核酸(LNA)、及びホスホチオレート結合配列が含まれる。本明細書に開示されるポリヌクレオチドはまた、一本鎖形態、二本鎖形態、DNA-RNAハイブリッド、三本鎖構造、ステム-及びループ構造などを含むが、これらに限定されない全ての形態の配列を包含する。
【0056】
RGNをコードする核酸分子は、目的の生物における発現のためにコドンを最適化することができる。「コドンを最適化された」コード配列は、特定の宿主細胞の好ましいコドン使用又は転写条件の頻度を模倣するように設計されたそのコドン使用頻度を有するポリヌクレオチドコード配列である。特定の宿主細胞又は生物における発現は、翻訳されたアミノ酸配列が変化しないように、核酸レベルでの1つ又は複数のコドンの変化の結果として増強される。核酸分子は、完全に又は部分的に、コドンを最適化することができる。広範囲の生物に対する好みの情報を提供するコドン表及び他の参考文献は、当該技術分野で入手可能である(例えば、Campbell及びGowri(1990)Plant Physiolを参照されたい)。植物に好まれるコドンの使い方については92:1-11。植物好ましい遺伝子を合成するための方法が当技術分野で利用可能である。例えば、本明細書に参考として援用される、米国特許第5,380,831号、第5,436,391号、及びMurray et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17:477-498を参照されたい。
【0057】
本明細書中で提供されるRNA、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードするポリヌクレオチドは、インビトロでの発現又は目的の細胞、オルガネラ、胚、又は生物における発現のための発現カセットで提供され得る。カセットは、ポリヌクレオチドの発現を可能にする、本明細書に提供されるRGN、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードするポリヌクレオチドに機能し得るように連結された5’及び3’調節配列を含むであろう。カセットは、さらに、生物に共形質転換される少なくとも1つの追加の遺伝子又は遺伝的要素を含んでもよい。追加の遺伝子又はエレメントが含まれる場合、そのコンポーネントは機能的に連結される。「機能的に連結された」という用語は、2つ以上の要素間の機能的な連結を意味することを意図している。例えば、プロモーターと目的のコード領域(例えば、RGN、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードする領域)との間の機能可能な連結は、目的のコード領域の発現を可能にする機能的連結である。操作可能に連結されたエレメントは、隣接するものであっても、非隣接するものであってもよい。2つのタンパク質コード領域の連結を指すために使用される場合、機能的に連結されることにより、コード領域が同じリーディングフレーム内にあることが意図される。あるいは、追加の遺伝子又はエレメントを、複数の発現カセット上に提供することができる。例えば、現在開示されているRGNをコードするヌクレオチド配列は、1つの発現カセット上に存在することができ、一方、crRNA、tracrRNA、又は完全ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列は、別個の発現カセット上に存在することができる。このような発現カセットには、調節領域の転写調節下にあるポリヌクレオチドの挿入のための複数の制限部位及び/又は組換え部位が提供される。発現カセットは、選択マーカー遺伝子をさらに含むことができる。
【0058】
発現カセットは、転写の5’-3’方向に、本発明の転写(及び、いくつかの実施形態では、翻訳)開始領域(すなわち、プロモーター)、RGN-、crRNA-、tracrRNA-及び/又はsgRNA-をコードするポリヌクレオチド、ならびに目的の生物において機能性である転写(及び、いくつかの実施形態では、翻訳)終結領域を含む。本発明のプロモーターは、宿主細胞においてコード配列の発現を指向又は駆動することができる。調節領域(例えば、プロモーター、転写調節領域、及び翻訳終結領域)は、宿主細胞に対して、又は互いに、内因性であっても、又は異種性であってもよい。本明細書中で使用される場合、配列に関して「異種性」とは、外来種に由来する配列、又は、同じ種に由来する場合、意図的なヒトの介入によって、組成及び/又はゲノム座におけるその天然型から実質的に改変された配列である。本明細書中で用いるように、キメラ遺伝子は、コード配列に対して異種性である転写開始領域に機能し得るように連結されたコード配列を含む。
【0059】
便利な終結領域は、A.tumefaciensのTiプラスミド、例えば、オクトピンシンターゼ及びノパリンシンターゼ終結領域から入手可能である。Guerineau et al. (1991) Mol. Gen. Genet. 262:141-144; Proudfoot (1991) Cell 64:671-674; Sanfacon et al. (1991) Genes Dev. 5:141-149; Mogen et al. (1990) Plant Cell 2:1261-1272; Munroe et al. (1990) Gene 91:151-158; Ballas et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17:7891-7903; 及びJoshi et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15:9627-9639も参照されたい。
【0060】
追加の調節シグナルには、転写開始開始部位、オペレーター、アクチベーター、エンハンサー、他の調節エレメント、リボソーム結合部位、開始コドン、終結シグナルなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第5,039,523号及び第4,853,331号;欧州特許第0480762A2号; Sambrook et al. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, ed. Maniatis et al. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)(以下、「Sambrook 11」); Davis et al., eds. (1980) Advanced Bacterial Genetics (Cold Spring Harbor Laboratory Press), Cold Spring Harbor, N.Y.、及びそこに引用される参考文献を参照されたい。
【0061】
発現カセットを調製する際に、種々のDNA断片を操作して、DNA配列を適切な方向に、そして適宜、適切な読み枠内に提供することができる。この目的のために、アダプター又はリンカーを用いて、DNA断片又は他の操作を結合させて、便利な制限部位、不要なDNAの除去、制限部位の除去などを提供することができる。この目的のために、インビトロ突然変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば、遷移及びトランスバージョンが関与し得る。
【0062】
本発明の実施において、多数のプロモーターを使用することができる。プロモーターは、所望の結果に基づいて選択することができる。核酸は、構成的、誘導可能、成長段階特異的、細胞型特異的、組織好適、組織特異的、又は対象生物における発現のための他のプロモーターと組み合わせることができる。例えば、参照により本明細書に援用される、WO99/43838、ならびに米国特許第8,575,425号;第7,790,846号;第8,147,856号;第8,586、832号;第7,772,369号;第7,534,939号;第6,072,050号;第5,659,026号;第5,608,149号;第5,608,144号;第5,604,121号;第5,569,597号;第5,466,785号;第5,399,680号;第5,268,463号;第5,608,142号;及び第6,177,611号に記載のプロモーターを参照されたい。
【0063】
植物における発現のために、構成的プロモーターには、CaMV 35Sプロモーターも含まれる(Odell et al. (1985) Nature 313:810-812); rice actin (McElroy et al. (1990) Plant Cell 2:163-171); ubiquitin (Christensen et al. (1989) Plant Mol. Biol. 12:619-632 and Christensen et al. (1992) Plant Mol. Biol. 18:675-689); pEMU (Last et al. (1991) Theor. Appl. Genet. 81:581-588); 及びMAS (Velten et al. (1984) EMBO J. 3:2723-2730)。
【0064】
誘導性プロモーターの例は、低酸素又は寒冷ストレスによって誘導されるAdh1プロモーター、熱ストレスによって誘導されるHsp70プロモーター、PPDKプロモーター、及び光によって誘導されるペプカルボキシラーゼプロモーターである。また、セーフナー誘導性のIn2-2プロモーターのような、化学的に誘導性であるプロモーター(米国特許第5,364,780号)、Axig1プロモーター(オーキシン誘導性でタペタム特異的であるがカルスでも活性を有する)(PCT/US01/22169)、ステロイド応答性プロモーター(例えば、Schena et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10421-10425 and McNellis et al. (1998) Plant J. 14(2):247-257におけるエストロゲン誘導性のEREプロモーター、及びテトラサイクリン誘導性及びテトラサイクリン抑制性プロモーター(例えば、Gatz et al. (1991) Mol. Gen. Genet. 227:229-237、米国特許第5,814,618号及び第5,789,156号参照)有用である。これらの文献は参照により本明細書に援用される。
【0065】
組織特異的又は組織好ましいプロモーターを用いて、特定の組織内で発現構築物の発現を標的化することができる。ある態様において、組織特異的又は組織好ましいプロモーターは、植物組織において活性である。植物の発生制御下にあるプロモーターの例には、葉、根、果実、種子、花などの特定の組織において優先的に転写を開始するプロモーターが含まれる。「組織特異的」プロモーターは、特定の組織においてのみ転写を開始するプロモーターである。遺伝子の恒常的な発現とは異なり、組織特異的な発現は、いくつかのレベルの遺伝子調節の相互作用の結果である。従って、相同又は近縁の植物種由来のプロモーターは、特定の組織における導入遺伝子の効率的で信頼できる発現を達成するために使用することが好ましい。いくつかの態様において、発現は、組織好ましいプロモーターを含む。「好ましい組織」プロモーターは、特定の組織において、必ずしも完全に、又は単独でではなく、選択的に転写を開始するプロモーターである。
【0066】
ある態様において、RGN、crRNA、及び/又はtracrRNAをコードする核酸分子は、細胞型特異的プロモーターを含む。「細胞型特異的」プロモーターは、1つ以上の器官における特定の細胞型における発現を主に駆動するプロモーターである。植物において機能する細胞型特異的プロモーターが主として活性であり得る植物細胞のいくつかの例としては、例えば、BETL細胞、根の維管束細胞、葉、茎細胞、及び幹細胞が挙げられる。核酸分子はまた、細胞型好ましいプロモーターを含むことができる。「細胞型好ましい」プロモーターは、主に、1つ又は複数の器官における特定の細胞型において、ほとんど(必ずしも完全に、又は単独ではないが)発現を駆動するプロモーターである。植物における細胞型好ましいプロモーターが選択的に活性であり得る植物細胞のいくつかの例は、例えば、BETL細胞、根の維管束細胞、葉、茎細胞、及び幹細胞を含む。
【0067】
RNA、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードする核酸配列は、例えばインビトロmRNA合成などのファージRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーター配列に機能し得るように連結され得る。そのような態様において、インビトロ転写RNAは、本明細書に記載される方法で使用するために精製することができる。例えば、プロモーター配列は、T7、T3、又はSP6プロモーター配列、又はT7、T3、又はSP6プロモーター配列の変異体であり得る。そのような実施形態において、発現されたタンパク質及び/又はRNAは、本明細書に記載されるゲノム修飾の方法での使用のために精製することができる。
【0068】
ある態様において、RGN、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードするポリヌクレオチドはまた、ポリアデニル化シグナル(例えば、植物におけるSV40ポリAシグナル及び他の機能的シグナル)及び/又は少なくとも1つの転写終結配列に連結され得る。 さらに、RGNをコードする配列は、本明細書の他の箇所に記載されているように、少なくとも1つの核局在化シグナル、少なくとも1つの細胞浸透ドメイン、及び/又は特定の細胞内位置へタンパク質を輸送することができる少なくとも1つのシグナルペプチドをコードする配列に連結することもできる。
【0069】
RGN、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードするポリヌクレオチドは、ベクター又は複数のベクター中に存在することができる。「ベクター」とは、宿主細胞に核酸を移入、送達、又は導入するためのポリヌクレオチド組成物をいう。適切なベクターには、プラスミドベクター、ファージミド、コスミド、人工/ミニ染色体、トランスポゾン、及びウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター)が含まれる。ベクターは、さらなる発現制御配列(例えば、エンハンサー配列、Kozak配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列)、選択可能なマーカー配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、複製起点などを含むことができる。追加情報は、「Current Protocols in Molecular Biology」、Ausubel et al., John Wiley & Sons, New York, 2003又は「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、Sambrook & Russell, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 3rd edition, 2001に見出すことができる。
【0070】
ベクターはまた、形質転換細胞の選択のための選択マーカー遺伝子を含むことができる。選択可能なマーカー遺伝子は、形質転換された細胞又は組織の選択に利用される。マーカー遺伝子には、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)及びヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)などの抗生物質耐性をコードする遺伝子、ならびにグルホシナートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン、及び2,4-ジクロロフェノキシアセテート(2,4-D)などの除草剤化合物に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。
【0071】
いくつかの実施形態において、RGNポリペプチドをコードする配列を含む発現カセット又はベクターは、crRNA及び/又はtracrRNAをコードする配列、又はガイドRNAを作製するために組み合わされたcrRNA及びtracrRNAをさらに含むことができる。crRNA及び/又はtracrRNAをコードする配列は、目的の生物又は宿主細胞におけるcrRNA及び/又はtracrRNAの発現のために、少なくとも1つの転写制御配列に操作可能に連結することができる。例えば、crRNA及び/又はtracrRNAをコードするポリヌクレオチドは、RNAポリメラーゼIII(PolIII)によって認識されるプロモーター配列に作動可能に連結され得る。適切なPolIIIプロモーターの例としては、哺乳動物U6、U3、H1、及び7SL RNAプロモーター、ならびにイネU6及びU3プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
示されるように、RGN、crRNA、tracrRNA、及び/又はsgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物を用いて、目的の生物を形質転換することができる。形質転換のための方法は、対象とする生物にヌクレオチド構築物を導入することを含む。「導入する」ことにより、構築物が宿主細胞の内部にアクセスするように、ヌクレオチド構築物を宿主細胞に導入することが意図される。本発明の方法は、ヌクレオチド構築物が宿主生物の少なくとも1つの細胞の内部へのアクセスを得ることのみを目的として、宿主生物にヌクレオチド構築物を導入するための特定の方法を必要としない。宿主細胞は、真核細胞又は原核細胞であり得る。特定の実施形態では、真核生物宿主細胞は、植物細胞、哺乳動物細胞、又は昆虫細胞である。植物及び他の宿主細胞にヌクレオチド構築物を導入する方法は、限定されるものではないが、安定形質転換方法、一過性形質転換方法、及びウイルス媒介方法を含む当該分野で公知である。
【0073】
この方法は、植物全体を含む植物、ならびに植物器官(例えば、葉、茎、根など)、種子、植物細胞、増殖物、胚及びその子孫などの形質転換された生物をもたらす。植物細胞は、分化又は未分化であり得る(例えば、仮骨、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉細胞、根細胞、師部細胞、花粉)。
【0074】
「トランスジェニック生物」又は「形質転換された生物」又は「安定して形質転換された」生物又は細胞若しくは組織とは、本発明のRGN、crRNA、及び/又はtracrRNAをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ、又は組み込んだ生物を指す。他の外因性又は内因性の核酸配列又はDNA断片を宿主細胞に取り込むこともできることが認識されている。アグロバクテリウム及びバイオリスティックを介した形質転換は、植物細胞の形質転換に主に用いられる2つのアプローチである。しかしながら、宿主細胞の形質転換は、感染、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、マイクロプロジェクション、微粒子銃又はパーティクルガン法、エレクトロポレーション、シリカ/カーボンファイバー、超音波媒介、PEG媒介、リン酸カルシウム共沈殿、ポリカチオンDMSO技術、DEAE、デキストラン手順、及びウイルス媒介、リポソーム媒介などによって行うことができる。RGN、crRNA、及び/又はトラクターRNAをコードするポリヌクレオチドのウイルス媒介導入には、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス媒介性の導入及び発現、ならびにカウリモウイルス、ジェミニウイルス、及びRNA植物ウイルスの使用が含まれる。
【0075】
形質転換プロトコールならびにポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を植物に導入するためのプロトコールは、形質転換を標的とする宿主細胞(例えば、モノコット又は双子葉植物細胞)のタイプに依存して変化し得る。形質転換の方法は当技術分野で公知であり、米国特許第8,575,425号、第7,692,068号、第8,802,934号、第7,541,517号に記載されているものを含む。Rakoczy-Trojanowska, M. (2002) Cell Mol Biol Lett. 7:849-858; Jones et al. (2005) Plant Methods 1:5; Rivera et al. (2012) Physics of Life Reviews 9:308-345; Bartlett et al. (2008) Plant Methods 4:1-12; Bates, G.W. (1999) Methods in Molecular Biology 111:359-366; Binns and Thomashow (1988) Annual Reviews in Microbiology 42:575-606; Christou, P. (1992) The Plant Journal 2:275-281; Christou, P. (1995) Euphytica 85:13-27; Tzfira et al. (2004) TRENDS in Genetics 20:375-383; Yao et al. (2006) Journal of Experimental Botany 57:3737-3746; Zupan and Zambryski (1995) Plant Physiology 107:1041-1047; Jones et al. (2005) Plant Methods 1:5も参照されたい。
【0076】
形質転換は、細胞への核酸の安定な又は一過性の取込みをもたらすことができる。「安定した形質転換」とは、宿主細胞に導入されたヌクレオチド構築物が宿主細胞のゲノムに組み込まれ、その子孫に遺伝することができることを意味する。「一過性の形質転換」とは、ポリヌクレオチドが宿主細胞に導入され、宿主細胞のゲノムに組み込まれないことを意味する。
【0077】
葉緑体の形質転換方法は、当技術分野において公知である。例えば、Svab et al. (1990) Proc. Nail. Acad. Sci. USA 87:8526-8530; Svab and Maliga (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:913-917; Svab and Maliga (1993) EMBO J. 12:601-606を参照されたい。この方法は、選択マーカーを含むDNAの粒子銃による送達、及び相同組換えを介した色素体ゲノムへのDNAの標的化に依存する。さらに、色素体形質転換は、サイレント色素体媒介導入遺伝子のトランス活性化によって、組織に好まれる核コード化及び色素体指向性RNAポリメラーゼの発現によって達成することができる。このようなシステムは、McBride et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7301-7305において報告されている。
【0078】
形質転換された細胞は、慣用的な方法に従って、植物のようなトランスジェニック生物に成長させることができる。例えば、McCormick et al. (1986) Plant Cell Reports 5:81-84を参照されたい。次に、これらの植物を成長させ、同じ形質転換株又は異なる株で受粉させ、得られた雑種が所望の表現型特性の構成的発現を同定した。所望の表現型特性の発現が安定に維持され、遺伝されることを確実にするために、2世代以上の世代を成長させ、次に、所望の表現型特性の発現が確実に達成されるように、収穫した種子を得ることができる。このようにして、本発明は、本発明のヌクレオチド構築物、例えば、本発明の発現カセットを有する形質転換種子(「トランスジェニック種子」とも呼ばれる)を、それらのゲノムに安定に組み込んで提供する。
【0079】
あるいは、形質転換された細胞を生物に導入してもよい。これらの細胞は、生体由来であり得、ここで、細胞は、エクスビボのアプローチで形質転換される。
【0080】
本明細書に提供される配列は、限定されるものではないが、単子葉植物及び双子葉植物を含む任意の植物種の形質転換に使用することができる。目的の植物の例には、限定されないが、トウモロコシ(トウモロコシ)、ソルガム、小麦、ヒマワリ、トマト、アブラナ科植物、コショウ、ジャガイモ、綿、米、大豆、サトウキビ、サツマイモ、タバコ、大麦、及び油糧種子菜種、アブラナ属、アルファルファ、ライ麦、キビ、サフラワー、ピーナッツ、サツマイモ、カッサバ、コーヒー、ココナッツ、パイナップル、柑橘類、ココア、お茶、バナナ、アボカド、イチジク、グアバ、マンゴー、オリーブ、パパイヤ、カシュー、マカダミア、アーモンド、オート麦、野菜、装飾品、及び針葉樹が挙げられる。
【0081】
野菜には、トマト、レタス、緑豆、リマ豆、エンドウ豆、及びキュウリ、カンタループ、及びムスクメロンのようなクルクミン属のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。観賞用植物には、ツツジ、アジサイ、ハイビスカス、バラ、チューリップ、水仙、ペチュニア、カーネーション、ポインセチア、キクなどがあるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の植物は、作物植物(例えば、トウモロコシ、ソルガム、コムギ、ヒマワリ、トマト、クルーシファー、コショウ、ジャガイモ、ワタ、米、ダイズ、サトウキビ、サトウキビ、タバコ、オオムギ、油糧種子菜種など)である。
【0082】
本明細書で使用される場合、植物という用語は、植物細胞、植物プロトプラスト、植物を再生することができる植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊、及び植物又は植物の一部(胚、花粉、卵子、種子、葉、花、枝、果実、穀粒、耳、穂軸、殻、茎、根、根端、葯など)において無傷である植物細胞を含む。穀物とは、種の成長又は繁殖以外の目的で、商業的生産者によって生産される成熟種子を意味する。再生植物の子孫、変異体、及び突然変異体も、これらの部分が導入されたポリヌクレオチドを含むことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、例えば大豆を含め、本明細書に開示された配列を保持する処理された植物製品又は副産物が提供される。
【0083】
RNA、crRNA、及び/又はtracrRNAをコードするポリヌクレオチドは、古細菌及び細菌(例えば、Bacillus sp.、Klebsiella sp.、Streptomyces sp.、Rhizobium sp.、Escherichia sp.、Pseudomonas sp.、Salmonella sp.、Shigella sp.、Vibrio sp.、Yersinia sp.、Mycoplasma sp.、Agrobacterium、Lactobacillus sp.)を含むが、これらに限定されない任意の原核生物種を形質転換するために使用することもできる。
【0084】
RGN、crRNA、及び/又はtracrRNAをコードするポリヌクレオチドは、動物(例えば、哺乳動物、昆虫、魚、鳥、及び爬虫類)、真菌、アメーバ、藻類、及び酵母を含むがこれらに限定されない任意の真核生物種を形質転換するために使用することができる。
【0085】
従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて、哺乳動物細胞又は標的組織に核酸を導入することができる。そのような方法は、CRISPRシステムの成分をコードする核酸を、培養中、又は宿主生物中の細胞に投与するために用いることができる。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載されるベクターの転写物)、裸の核酸、及び送達ビヒクルと複合体化された核酸(例えば、リポソーム)が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、細胞への送達後にエピソームゲノム又は組込まれたゲノムのいずれかを有するDNA及びRNAウイルスが含まれる。遺伝子療法手順の概説については、Anderson, Science 256: 808-813 (1992); Nabel & Feigner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993); Miller, Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10): 1149-1154 (1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology, Doerfler and Bohm (eds) (1995); 及びYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照されたい。
【0086】
核酸の非ウイルス送達の方法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、及び薬剤増強DNAの取り込みが含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号;及び第4,897,355号に記載され、リポフェクション試薬が市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び中性脂質には、Feigner、WO91/17424;WO91/16024のものが含まれる。送達は、細胞(例えば、インビトロ又はエクスビボ投与)又は標的組織(例えば、インビボ投与)であり得る。免疫脂質複合体のような標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291- 297 (1995); Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992); 米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、及び第4,946,787号を参照されたい)。
【0087】
核酸の送達のためのRNA又はDNAウイルスベースのシステムの使用は、体内の特定の細胞にウイルスを標的化し、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与することができ(インビボ)、又は細胞をインビトロで処理するために使用することができ、修飾された細胞は、必要に応じて患者に投与することができる(エクスビボ)。従来のウイルスベースのシステムには、遺伝子導入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴及び単純ヘルペスウイルスベクターが含まれ得る。宿主ゲノムへの組込みはレトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルス遺伝子導入法で可能であり、しばしば挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、多くの異なる細胞型及び標的組織において、高い形質導入効率が観察されている。
【0088】
レトロウイルスの親和性は、外来のエンベロープタンパク質を取り込み、標的細胞の潜在的標的集団を拡大することによって変化させることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入又は感染することができ、典型的には高いウイルス力価を産生するレトロウイルスベクターである。したがって、レトロウイルス遺伝子導入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、外来配列の最大6~10kbのパッケージング能力を有するシス作用性の長鎖末端反復配列からなる。最小のシス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、次に、治療遺伝子を標的細胞に組み込んで、永久的な導入遺伝子発現を提供するために使用される。広く使用されるレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、ギボンアパ白血病ウイルス(GaLV)、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組み合わせに基づくものが含まれる(例えば、Buchscher et al., J. Viral. 66:2731-2739 (1992); Johann et al., J. Viral. 66:1635-1640 (1992); Sommnerfelt et al., Viral. 176:58-59 (1990); Wilson et al., J. Viral. 63:2374-2378 (1989); Miller et al., 1. Viral. 65:2220-2224 (1991); PCT/US94/05700)を参照されたい)。
【0089】
一過性発現が好ましい用途では、アデノウイルスベースのシステムを使用することができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。このようなベクターを用いて、高い力価及び発現レベルが得られている。このベクターは、比較的単純なシステムで大量に生産することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターを用いて、例えば、核酸及びペプチドのインビトロ生産、ならびにインビボ及びエクスビボ遺伝子治療手順で、標的核酸で細胞を形質導入することもできる(例えば、West et al., Virology 160:38-47 (1987); 米国特許第4,797,368号;WO93/24641; Katin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994); Muzyczka, 1. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照されたい)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許を含む多くの刊行物に記載され、例えば、米国特許第5,173,414号; Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985); Tratschin, et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1984); Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984); and Samulski et al., 1. Viral. 63:03822-3828 (1989)が挙げられる。パッケージング細胞は、典型的には、宿主細胞に感染可能なウイルス粒子を形成するために使用される。このような細胞には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージングするΨJ2細胞又はPA317細胞が含まれる。
【0090】
遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージする細胞系を作製することによって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージング及びその後の宿主への組込みに必要な最小のウイルス配列を含み、他のウイルス配列は、発現されるポリヌクレオチドの発現カセットで置き換えられる。欠損したウイルス機能は、典型的にはパッケージング細胞系によってトランスに供給される。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノムへのパッケージング及び組込みに必要なAAVゲノムからのITR配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrep及びcapをコードするがITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む細胞系にパッケージされる。
【0091】
細胞系はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染させることもできる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列が欠損しているため、かなりの量はパッケージングされていない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性が高い熱処理によって低減することができる。細胞への核酸の送達のためのさらなる方法は、当業者に公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS20003/0087817を参照されたい。
【0092】
ある態様において、宿主細胞は、本明細書に記載される1以上のベクターで一過性又は非一過性にトランスフェクションされる。いくつかの態様において、細胞は、それが被験体中で自然に生じるので、トランスフェクションされる。ある態様において、トランスフェクトされる細胞は、被験体から採取される。いくつかの態様において、細胞は、被験体、例えば、細胞株から採取された細胞に由来する。組織培養のための多種多様な細胞株が当技術分野で公知である。細胞株の例には、限定されないが、C8161、CCRF-CEM、MOLT、mIMCD-3、NHDF、HeLaS3、Huhl、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPa細胞、Panel、PC-3、TFl、CTLL-2、CIR、Rat6、CVI、RPTE、A1O、T24、182、A375、ARH-77、Calul、SW480、SW620、SKOV3、SK-UT、CaCo2、P388Dl、SEM-K2、WEHI-231、HB56、TIB55、lurkat、145.01、LRMB、Bcl-1、BC-3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK-52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS-1、COS-6、COS-M6A、BS-C-1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3Swiss、3T3-Ll、132-d5ヒト胎児線維芽細;10.1マウス線維芽細胞、293-T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A-549、ALC、B16、B35、BCP-I細胞、BEAS-2B、bEnd.3、BHK-21、BR 293、BxPC3、C3H-10Tl/2、C6/36、Cal-27、CHO、CHO-7、CHO-IR、CHO-Kl、CHO-K2、CHO-T、CHO Dhfr-/-、COR-L23、COR-L23/CPR、COR-L235010、CORL23/R23、COS-7、COV-434、CML Tl、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK-293、HeLa、Hepalclc7、HL-60、HMEC、HT-29、lurkat、lY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KGl、KYOl、LNCap、Ma-Mel 1-48、MC-38、MCF-7、MCF-l0A、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、MDCKII、MDCKII、MOR/0.2R、MONO-MAC 6、MTD-lA、MyEnd、NCI-H69/CPR、NCI-H69/LX10、NCI-H69/LX20、NCI-H69/LX4、NIH-3T3、NALM-1、NW-145、OPCN/OPCT細胞株、Peer、PNT-lA/PNT2、RenCa、RIN-5F、RMA/RMAS、Saos-2細胞、Sf-9、SkBr3、T2、T-47D、T84、THPl細胞株、U373、U87、U937、VCaP、Vero細胞WM39、WT-49、X63、YAC-1、YAR、及びそれらのトランスジェニック変形体が含まれる。細胞株は、当業者に公知の種々の供給源から入手可能である(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)(Manasas,Va.)を参照されたい)。
【0093】
いくつかの態様において、本明細書に記載される1以上のベクターでトランスフェクトされた細胞は、1以上のベクター由来配列を含む新しい細胞系を確立するために使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPRシステムの成分で一時的にトランスフェクションされ(例えば、1以上のベクターの一過性のトランスフェクション、又はRNAによるトランスフェクション)、かつCRISPR複合体の活性を介して修飾された細胞を用いて、修飾を含むが他のいずれかの外因性配列を欠く細胞を含む新規細胞系を確立する。ある態様において、本明細書に記載される1以上のベクターで一過性又は非一過性にトランスフェクトされた細胞、又はそのような細胞に由来する細胞株は、1以上の試験化合物の評価に使用される。
【0094】
ある態様において、本明細書に記載される1以上のベクターは、非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物を産生するために使用される。ある態様において、トランスジェニック動物は、マウス、ラット、又はウサギのような哺乳動物である。
【0095】
IV.ポリペプチド及びポリヌクレオチドの変種及び断片
本開示は、天然に存在する(すなわち、野生型)RNA誘導ヌクレアーゼの活性変異体及び断片を提供し、そのアミノ酸配列は、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235として、ならびに配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287として示される配列、及び天然に存在するtracrRNAの活性変異体及び断片、例えば、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286、及びそれをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
【0096】
変異体又は断片の活性は、対象のポリヌクレオチド又はポリペプチドと比較して変化させることができるが、変異体及び断片は、対象のポリヌクレオチド又はポリペプチドの機能性を保持すべきである。例えば、変異体又は断片は、目的のポリヌクレオチド又はポリペプチドと比較した場合に、活性の増加、活性の減少、活性の異なるスペクトル、又は活性の任意の他の変化を有し得る。
【0097】
本明細書に開示されているような天然RGNポリペプチドの断片及び変異体は、配列特異的なRNA誘導DNA結合活性を保持するであろう。特定の実施形態では、本明細書に開示されているような天然RGNポリペプチドの断片及び変異体は、ヌクレアーゼ活性(一本鎖又は二本鎖)を保持するであろう。
【0098】
本明細書に開示されたもののような天然に存在するCRISPR反復の断片及び変異体は、ガイドRNA(tracrRNAを含む)の一部が、配列特異的な様式で、RNAガイドヌクレアーゼ(ガイドRNAと複合体化された)に結合し、標的ヌクレオチド配列にガイドする能力を保持するであろう。
【0099】
本明細書に開示されているような天然に存在するtracrRNAの断片及び変異体は、ガイドRNA(CRISPRRNAを含む)の一部が、RNAガイドヌクレアーゼ(ガイドRNAと複合体化された)を配列特異的な様式で標的ヌクレオチド配列にガイドする能力を保持するであろう。
【0100】
用語「断片」とは、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の一部を指す。「断片」又は「生物学的に活性な部分」には、生物学的活性を保持するのに十分な数の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが含まれる(すなわち、ガイドRNA内に含まれる場合、配列特異的な方法でRGNに結合し、標的ヌクレオチド配列に向ける)。「断片」又は「生物学的に活性な部分」には、生物学的活性を保持するのに十分な数の連続したアミノ酸残基を含むポリペプチドが含まれる(すなわち、ガイドRNAと複合体化された場合、配列特異的な様式で標的ヌクレオチド配列に結合する)。RGNタンパク質の断片は、代替の下流開始部位の使用により、全長配列よりも短いものを含む。RGNタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235の10、25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050又はそれ以上の連続したアミノ酸残基を含むペプチドであり得る。このような生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製され得、配列特異的RNA誘導DNA結合活性について評価され得る。CRISPR反復配列の生物学的に活性な断片は、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287の少なくとも8個の連続アミノ酸を含むことができる。CRISPR反復配列の生物学的に活性な部分は、例えば、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287の8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。tracrRNAの生物学的に活性な部分は、例えば、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286の8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80又はそれ以上の連続したヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。
【0101】
一般に、「変異体」は、実質的に類似した配列を意味することを意図している。ポリヌクレオチドについては、改変体は、天然ポリヌクレオチド内の1つ以上の内部部位における1つ以上のヌクレオチドの欠失及び/又は付加、及び/又は天然ポリヌクレオチド内の1つ以上の部位における1つ以上のヌクレオチドの置換を含む。本明細書中で使用される場合、「天然」又は「野生型」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、それぞれ、天然に存在するヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を含む。ポリヌクレオチドについては、保存的変異体は、遺伝暗号の縮重のために、目的の遺伝子の天然アミノ酸配列をコードする配列を含む。これらのような天然に存在する対立遺伝子変異体は、周知の分子生物学的技術、例えば、以下に概説するようなポリメラーゼ連鎖反応及びハイブリダイゼーション技術を用いて同定することができる。変種ポリヌクレオチドはまた、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いることによって生成されるが、依然として目的のポリペプチド又はポリヌクレオチドをコードするもののような、合成誘導ポリヌクレオチドを含む。一般に、本明細書に開示される特定のポリヌクレオチドの変異体は、本明細書の他の場所に記載されている配列アラインメントプログラム及びパラメーターによって決定される、その特定のポリヌクレオチドに対して少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を有する。
【0102】
本明細書に開示される特定のポリヌクレオチド(すなわち、参照ポリヌクレオチド)の変種は、変種ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと参照ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドとの間の%配列同一性の比較によって評価することもできる。任意の2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、本明細書の他の箇所に記載された配列アラインメントプログラム及びパラメーターを用いて計算することができる。本明細書に開示されるポリヌクレオチドの任意の所与の対が、それらがコードする2つのポリペプチドによって共有されるパーセント配列同一性の比較によって評価される場合、2つのコードされるポリペプチド間のパーセント配列同一性は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性である。
【0103】
特定の実施形態では、現在開示されているポリヌクレオチドは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235のアミノ酸配列に対して、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼポリヌクレオチドをコードする。
【0104】
本発明のRGNポリペプチドの生物学的に活性な変異体は、約1~15個のアミノ酸残基、約1~10個のアミノ酸残基、約6~10個のアミノ酸、わずか5個のアミノ酸、わずか4個のアミノ酸、わずか3個のアミノ酸、わずか2個のアミノ酸、又はわずか1個のアミノ酸残基によって異なる。特定の実施形態では、ポリペプチドは、N末端又はC末端の切断を含むことができ、これは、ポリペプチドのN又はC末端のいずれかから、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050アミノ酸又はそれ以上の欠失を含むことができる。
【0105】
特定の実施形態において、現在開示されているポリヌクレオチドは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287として示されるヌクレオチド配列にして、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRリピートを含むか又はコードする。
【0106】
現在開示されているポリヌクレオチドは、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286として示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより大きな同一性を有するヌクレオチド配列を含むtracrRNAを含むか又はコードすることができる。
【0107】
本発明のCRISPR反復又はtracrRNAの生物学的に活性な変異体は、約1~15ヌクレオチド、約1~10、約6~10、わずか5、わずか4、わずか3、わずか2、又はわずか1ヌクレオチドだけ異なることがある。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’又は3’切断を含むことができ、これは、ポリヌクレオチドの5’又は3’末端から少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80ヌクレオチド又はそれ以上の欠失を含むことができる。
【0108】
改変は、RGNポリペプチド、CRISPR反復、及び本明細書中に提供されるtracrRNAに対してなされ得、改変タンパク質及びポリヌクレオチドを作製し得ることが認識される。ヒトによって設計された変化は、部位特異的突然変異誘発技術を適用することによって導入することができる。あるいは、本明細書に開示された配列に構造的及び/又は機能的に関連する天然、未知又は未同定のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドもまた、本発明の範囲内で同定することができる。保存的アミノ酸置換は、RGNタンパク質の機能を変化させない非保存領域で行われ得る。あるいは、RGNの活性を改善する改変を行ってもよい。
【0109】
変異型ポリヌクレオチド及びタンパク質はまた、DNAシャフリングのような変異原性及び組換え技術に由来する配列及びタンパク質を含む。そのような手順では、本明細書に開示される1つ又は複数の異なるRGNタンパク質(例えば、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235)を操作して、所望の特性を持つ新しいRGNタンパク質を作成する。このようにして、組換えポリヌクレオチドのライブラリーは、実質的な配列同一性を有し、インビトロ又はインビボで相同的に組換えされ得る配列領域を含む関連配列ポリヌクレオチドの集団から生成される。例えば、この方法を用いて、目的のドメインをコードする配列モチーフを、本明細書中に提供されるRGN配列と他の既知のRGN遺伝子との間でシャッフルして、酵素の場合に増大したKのような改善された目的の特性を有するタンパク質をコードする新規遺伝子を得ることができる。このようなDNAシャフリングのための戦略は、当該技術分野で公知である。Crameri et al. (1998) Nature 391:288-291; 米国特許第5,605,793号及び第5,837,458号を参照されたい。「シャフリングされた」核酸は、本明細書に記載される任意のシャフリング手順などのシャフリング手順によって生成される核酸である。シャッフルされた核酸は、2つ以上の核酸(又は特徴ストリング)を、例えば、人工的で、任意に再帰的な様式で、組換え(物理的又は事実上)することによって生成される。一般に、1以上のスクリーニング工程は、対象核酸を同定するためのシャッフリング工程に使用され;このスクリーニング工程は、任意の組換え工程の前後に行うことができる。いくつかの(全てではないが)シャフリング実施形態において、スクリーニングされるべきプールの多様性を増加させるために、選択の前に複数回の組換えを実施することが望ましい。組換えと選択の全体的な過程は、オプションとして再帰的に繰り返される。状況に応じて、シャフリングは、組換え及び選択の全体的なプロセスを指すことができ、あるいは、単に、全体的なプロセスの組換え部分を指すことができる。
【0110】
本明細書中で使用される場合、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」又は「同一性」は、指定された比較ウィンドウにわたって最大一致のために整列されたときに同じである2つの配列中の残基を参照する。配列同一性のパーセンテージがタンパク質に関して使用される場合、同一でない残基位置は、しばしば保存的アミノ酸置換によって異なることが認識され、ここで、アミノ酸残基は、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換され、従って、分子の機能的特性を変化させない。保存的置換において配列が異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質を補正するために上方に調節され得る。このような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有するといわれる。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。典型的には、これは、完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとして保存的置換をスコア化することを含み、それによって、パーセンテージ配列同一性を増加させる。従って、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換がゼロのスコアを与えられる場合、保存的置換はゼロと1の間のスコアを与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)で実施されたように計算される。
【0111】
本明細書で用いる場合、「配列同一性のパーセンテージ」とは、比較ウィンドウ上で2つの最適に整列された配列を比較することによって決定される値を意味し、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適な整列のための参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列において同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を生じさせ、一致した位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数で割り、結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを生じることによって計算される。
【0112】
特に明記しない限り、本明細書で提供される配列同一性/類似性値は、以下のパラメーターを用いてGAPバージョン10を用いて得られる値を指す:GAP重量50及び長さ重量3、及びnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを用いたヌクレオチド配列についての%同一性及び%類似性;GAP重量8及び長さ重量2を用いたアミノ酸配列についての%同一性及び%類似性;及びBLOSUM62スコアリングマトリックス;又はそれらと同等のプログラム。「等価なプログラム」により、問題の2つの配列に対して、GAPバージョン10によって生成された対応するアラインメントと比較した場合に、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基マッチ及び同一のパーセントの配列同一性を有するアラインメントを生成する、任意の配列比較プログラムが意図される。
【0113】
2つの配列は、それらが、定義されたアミノ酸置換マトリックス(例えば、BLOSUM62)、ギャップ存在ペナルティ及びギャップ延長ペナルティを用いて類似性スコアリングのために整列され、その配列のペアに対して可能な最高スコアに到達する場合、「最適に整列」される。アミノ酸置換マトリックス及び2つの配列間の類似性の定量におけるそれらの使用は、当技術分野で周知であり、例えば、Dayhoff et al. (1978) 「A model of evolutionary change in proteins」、In 「Atlas of Protein Sequence and Structure」、Vol. 5, Suppl. 3 (ed. M. O. Dayhoff), pp. 345-352. Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C. and Henikoff et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-1091に記載されている。BLOSUM62マトリックスは、シークエンスアラインメントプロトコルにおけるデフォルトのスコアリング置換マトリックスとしてしばしば使用される。ギャップ存在ペナルティは、整列した配列の1つに単一のアミノ酸ギャップを導入するために課され、ギャップ延長ペナルティは、すでに開いているギャップに挿入された追加の空のアミノ酸位置に対して課される。アラインメントは、アラインメントが開始され、終了する各配列のアミノ酸位置によって定義され、任意選択的に、片方又は両方の配列にギャップ又は複数のギャップを挿入することによって定義され、可能な限り最高のスコアに到達する。最適なアライメント及びスコアリングは手動で行うことができるが、このプロセスは、例えば、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に開示され、National Center for Biotechnology Information Website (www.ncbi.nlm.nih.gov)にて公衆に利用可能なギャップ付きBLAST 2.0のようなコンピュータに実装されたアライメントアルゴリズムの使用によって容易になる。マルチプルアラインメントを含む最適なアラインメントは、例えば、www.ncbi.nlm.nih.govを介して入手可能であり、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402によって記載されたPSI-BLASTを用いて調製することができる。
【0114】
基準配列と最適に整列されたアミノ酸配列に関して、アミノ酸残基は、整列において残基が対合される基準配列中の位置に「対応する」。「位置」は、N末端に対するその位置に基づいて、参照配列中の各アミノ酸を連続的に同定する番号で示される。最適なアラインメントを決定する際に考慮しなければならない欠失、挿入、切断、融合などのために、一般に、N末端から単に数えることによって決定される試験シークエンス中のアミノ酸残基数は、必ずしも参照シークエンス中のその対応する位置の数と同じではないであろう。例えば、整列した試験配列中に欠失がある場合、欠失部位における基準配列中の位置に対応するアミノ酸は存在しないであろう。整列した参照配列中に挿入がある場合、その挿入は、参照配列中の任意のアミノ酸位置に対応しない。切断又は融合の場合、対応する配列中のいずれのアミノ酸にも対応しない、参照配列又は整列配列中のアミノ酸のストレッチが存在し得る。
【0115】
V.抗体
本発明のRGNポリペプチドを含むRGNポリペプチド又はリボヌクレオプロテインに対する抗体(配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117、あるいはそれらの活性変異体又は断片)も含まれる。抗体を産生する方法は、当該分野で周知である(例えば、Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.; 及び米国特許第4,196,265号を参照されたい)。これらの抗体は、RGNポリペプチド又はリボ核タンパク質の検出及び単離のためのキットに使用することができる。したがって、本開示は、例えば、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117の配列を有するポリペプチドを含む、本明細書に記載のポリペプチド又はリボヌクレオタンパク質に特異的に結合する抗体を含むキットを提供する。
【0116】
VI.目的の配列に結合する系及びリボ核タンパク質複合体並びにそれらを合成する方法
本開示は、対象の標的配列を結合するためのシステムを提供し、ここで、該システムは、同じものをコードする少なくとも1つのガイドRNA又はヌクレオチド配列、及び同じものをコードする少なくとも1つのRNAガイドヌクレアーゼ又はヌクレオチド配列を含む。ガイドRNAは、目的の標的配列にハイブリダイズし、RGNポリペプチドと複合体を形成し、それによってRGNポリペプチドを標的配列に結合させる。これらの実施形態のいくつかにおいて、RGNは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、もしく235、又はそれらの活性変異体又は断片を含む。様々な実施形態において、ガイドRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、若しくは287を含むCRISPR反復配列、又はその活性変異体若しくは断片のヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286のヌクレオチド配列を含むtracrRNA、又はその活性変異体若しくは断片を含む。システムのガイドRNAは、単一ガイドRNA又は二重ガイドRNAであってもよい。特定の実施形態では、システムは、ガイドRNAに対して異種性であるRNAガイドヌクレアーゼを含み、ここで、RGN及びガイドRNAは天然に複合体化されていない。
【0117】
本明細書に提供される目的の標的配列を結合するためのシステムは、少なくとも1つのタンパク質に結合したRNAの少なくとも1つの分子であるリボ核タンパク質複合体であり得る。本明細書に提供されるリボ核タンパク質複合体は、RNA成分としての少なくとも1つのガイドRNA、及びタンパク質成分としてのRNAガイドヌクレアーゼを含む。このようなリボ核タンパク質複合体は、RGNポリペプチドを天然に発現し、目的の標的配列に特異的な特定のガイドRNAを発現するように操作された細胞又は生物から精製することができる。あるいは、リボ核タンパク質複合体は、RGNポリペプチド及びガイドRNAをコードするポリヌクレオチドで形質転換され、RGNポリペプチドの発現及びガイドRNAを可能にする条件下で培養された細胞又は生物から精製することができる。したがって、RGNポリペプチド又はRGNリボ核タンパク質複合体を作製するための方法が提供される。そのような方法は、RGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む細胞、及びいくつかの実施形態では、RGNポリペプチド(及びいくつかの実施形態では、ガイドRNA)が発現される条件下で、ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む細胞を培養することを含む。次に、RGNポリペプチド又はRGNリボ核タンパク質を、培養細胞の溶解物から精製することができる。
【0118】
生物学的試料の溶解物からRGNポリペプチド又はRGNリボ核タンパク質複合体を精製する方法は、当該分野で公知である(例えば、サイズ排除及び/又はアフィニティークロマトグラフィー、2D-PAGE、HPLC、逆相クロマトグラフィー、免疫沈降)。特定の方法では、RGNポリペプチドは組換え的に産生され、その精製を助けるための精製タグを含み、これには、限定されないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、HA、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、6xHis、10xHis、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)、及びカルモジュリンが含まれる。一般に、標識RGNポリペプチド又はRGNリボ核タンパク質複合体は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製される。他の形態のクロマトグラフィー又は例えば免疫沈降を含めて、当技術分野で公知の他の同様の方法を単独で又は組み合わせて使用することができることが理解されるであろう。
【0119】
「単離された」又は「精製された」ポリペプチド、又はその生物学的に活性な部分は、その天然環境において見出されるように、ポリペプチドに通常付随する、又はポリペプチドと相互作用する成分を実質的に又は本質的に含まない。かくして、単離された又は精製されたポリペプチドは、組換え技術により生産される場合には、他の細胞材料、又は培養培地を実質的に含まず、又は化学的に合成される場合には、化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない。細胞物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%、5%、又は1%(乾燥重量)未満の汚染タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。本発明のタンパク質又はその生物学的に活性な部分が組換え的に産生される場合、最適な培養培地は、化学的前駆体又は目的の非タンパク質化学物質の約30%、20%、10%、5%又は1%(乾燥重量)未満を表す。
【0120】
目的の標的配列を結合及び/又は切断するための本明細書に提供される特定の方法は、インビトロで組み立てられたRGNリボ核タンパク質複合体の使用を含む。RGNリボ核タンパク質複合体のインビトロアセンブリは、RGNポリペプチドがガイドRNAに結合することを可能にする条件下で、RGNポリペプチドをガイドRNAと接触させる当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。本明細書で使用する場合、「接触」、「接触」、「接触」とは、所望の反応を実施するのに適した条件下で所望の反応の成分を一緒に置くことを指す。RGNポリペプチドは、生体試料、細胞溶解物、又は培養培地から精製することができ、インビトロ翻訳によって産生され、又は化学的に合成することができる。ガイドRNAは、生体試料、細胞溶解物、又は培養培地から精製され、インビトロで転写され、又は化学的に合成され得る。RGNポリペプチド及びガイドRNAは、RGNリボ核タンパク質複合体のインビトロアセンブリを可能にするために、溶液(例えば、緩衝生理食塩水溶液)中で接触させることができる。
【0121】
VII.標的配列の結合、除去又は変更の方法
本開示は、目的の標的ヌクレオチド配列を結合、切断、及び/又は修飾するための方法を提供する。この方法は、同じものをコードする少なくとも1つのガイドRNA又はポリヌクレオチド、及び同じものをコードする少なくとも1つのRGNポリペプチド又はポリヌクレオチドを含むシステムを、標的配列、又は標的配列を含む細胞、細胞小器官、又は胚に送達することを含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、RGNは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235のアミノ酸配列、又はその活性変異体若しくは断片を含む。様々な実施形態において、ガイドRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287のヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列、又はその活性変異体若しくは断片を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286のヌクレオチド配列を含むtracrRNA、又はその活性変異体若しくは断片を含む。システムのガイドRNAは、単一ガイドRNA又は二重ガイドRNAであってもよい。システムのRGNは、ヌクレアーゼ死RGNであってもよく、ニッカーゼ活性を有していてもよく、又は融合ポリペプチドであってもよい。いくつかの態様において、融合ポリペプチドは、塩基編集ポリペプチド、例えば、シチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼを含む。他の実施形態では、RGN融合タンパク質は逆転写酵素を含む。他の実施形態では、RGN融合タンパク質は、全体が参照により本明細書に援用される、2020年1月27日に出願された米国仮出願62/966,203に記載されているように、ヌクレオチド除去修復(NER)又は転写共役ヌクレオチド除去修復(TC-NER)経路(Wei et al., 2015, PNAS USA 112(27):E3495-504 ; Troelstra et al., 1992, Cell 71:939-953; Marnef et al., 2017, J Mol Biol 429(9):1277-1288)のメンバーなどの機能性核酸修復複合体のメンバーを救出するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、RGN融合タンパク質は、CSB(van den Boom et al., 2004, J Cell Biol 166(1):27-36; van Gool et al., 1997, EMBO J 16(19):5955-65;その例は配列番号268として示される)(これはTC-NER(ヌクレオチド除去修復)経路であり、他のメンバーの救出として機能する)を含む。さらなる実施形態において、RNAGNABP融合タンパク質は、配列番号268のアミノ酸残基356~394含むCSBの酸性ドメインなどのCSBの活性ドメインを含む(Teng et al., 2018, Nat Commun 9(1):4115)。
【0122】
特定の実施形態では、RGN及び/又はガイドRNAは、RGN及び/又はガイドRNA(又はRGN及びガイドRNAの少なくとも1つをコードするポリヌクレオチド)が導入される細胞、細胞小器官、又は胚に対して異種性である。
【0123】
本方法がガイドRNA及び/又はRGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを送達することを含む実施形態では、次に、細胞又は胚を、ガイドRNA及び/又はRGNポリペプチドが発現される条件下で培養することができる。様々な態様において、本方法は、標的配列をRGNリボ核タンパク質複合体と接触させることを含む。RGNリボ核タンパク質複合体は、ヌクレアーゼが死んでいるか、又はニッカーゼ活性を有するRGNを含み得る。いくつかの実施形態において、リボ核タンパク質複合体のRGNは、塩基編集ポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。ある態様において、本方法は、標的配列を含む細胞、細胞小器官、又は胚にRGNリボ核タンパク質複合体を導入することを含む。RGNリボ核タンパク質複合体は、生物学的試料から精製されたもの、組換え的に製造され、その後精製されたもの、又は本明細書に記載されるようにインビトロで組み立てられたものであり得る。標的配列、細胞小器官、又は胚と接触するRGNリボ核タンパク質複合体がインビトロで組み立てられている実施形態では、この方法は、標的配列、細胞、細胞小器官、又は胚と接触する前に、複合体のインビトロアセンブリをさらに含むことができる。
【0124】
精製された又はインビトロで組み立てられたRGNリボ核タンパク質複合体は、限定されるものではないが、エレクトロポレーションを含む、当技術分野で公知の任意の方法を用いて、細胞、細胞小器官、又は胚に導入することができる。あるいは、ガイドRNAをコードする、又はそれを含むRGNポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを、当該技術分野で公知の任意の方法(例えば、エレクトロポレーション)を用いて、細胞、細胞小器官、又は胚に導入することができる。
【0125】
標的配列、細胞、細胞小器官、又は標的配列を含む胚への送達又は接触に際して、ガイドRNAは、配列特異的な様式で標的配列に結合するようにRGNに指示する。RGNがヌクレアーゼ活性を有する態様において、RGNポリペプチドは、結合時に目的の標的配列を切断する。その後、標的配列は、非相同末端結合、又は提供されたドナーポリヌクレオチドによる相同修復などの内因性修復機構を介して修飾され得る。
【0126】
RGNポリペプチドの標的配列への結合を測定する方法は当技術分野で公知であり、クロマチン免疫沈降アッセイ、ゲル移動度シフトアッセイ、DNAプルダウンアッセイ、レポーターアッセイ、マイクロプレート捕獲及び検出アッセイを含む。同様に、標的配列の切断又は修飾を測定する方法は当該分野で公知であり、分解産物の検出を容易にするために、適切な標識(例えば、放射性同位体、蛍光物質)の標的配列への付着の有無にかかわらず、PCR、配列決定、又はゲル電気泳動を用いて切断が確認されるインビトロ又はインビボ切断アッセイを含む。あるいは、ニッキング誘発指数増幅反応(NTEXPAR)アッセイを用いることができる(例えば、Zhang et al. (2016) Chem. Sci. 7:4951-4957を参照されたい)。インビボ切断は、Surveyorアッセイ(Guschin et al. (2010) Methods Mol Biol 649:247-256)を用いて評価することができる。
【0127】
いくつかの態様において、本方法は、2つ以上のガイドRNAと複合体化された単一タイプのRGNの使用を含む。複数のガイドRNAは、1つの遺伝子の異なる領域を標的とすることも、複数の遺伝子を標的とすることもできる。
【0128】
ドナーポリヌクレオチドが提供されない実施形態では、RGNポリペプチドによって導入された二本鎖切断は、非相同末端連結(NHEJ)修復プロセスによって修復され得る。NHEJの誤りを起こしやすい性質のために、二本鎖切断の修復は標的配列の修飾をもたらすことができる。本明細書中で使用される「修飾」とは、核酸分子に関する「修飾」とは、1以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換、又はそれらの組み合わせであり得る、核酸分子のヌクレオチド配列の変化を指す。標的配列の修飾は、改変されたタンパク質産物の発現又はコード配列の不活性化をもたらすことができる。
【0129】
ドナーポリヌクレオチドが存在する実施形態では、導入された二本鎖切断の修復の過程において、ドナーポリヌクレオチド中のドナー配列を標的ヌクレオチド配列に組み込むか、又は交換することができ、その結果、外因性ドナー配列が導入される。従って、ドナーポリヌクレオチドは、目的の標的配列に導入されることが望ましいドナー配列を含む。いくつかの実施形態において、ドナー配列は、新たに組み込まれたドナー配列がRGNによって認識され、切断されないように、元の標的ヌクレオチド配列を改変する。ドナー配列の統合は、標的ヌクレオチド配列に隣接する配列と実質的な配列同一性を有するフランキング配列のドナーポリヌクレオチド内に包含することによって増強され得、相同性指向修復プロセスを可能にする。RGNポリペプチドが二本鎖ねじれ切断を導入する実施形態において、ドナーポリヌクレオチドは、適合性オーバーハングに隣接するドナー配列を含み、二本鎖切断の修復中に、非相同修復プロセスによるオーバーハングを含む切断された標的ヌクレオチド配列へのドナー配列の直接連結を可能にする。
【0130】
本方法がニッカーゼである(すなわち、二本鎖ポリヌクレオチドの一本鎖を切断することができるのみである)RGNの使用を含む実施形態において、本方法は、同一の又は重複する標的配列を標的とし、ポリヌクレオチドの異なる鎖を切断する2つのRGNニッカーゼを導入することを含むことができる。例えば、二本鎖ポリヌクレオチドの正(+)鎖のみを切断するRGNニッカーゼを、二本鎖ポリヌクレオチドの負(-)鎖のみを切断する第二のRGNニッカーゼと共に導入することができる。
【0131】
様々な実施形態では、標的ヌクレオチド配列を結合させ、標的配列を検出するための方法が提供され、この方法は、同じものをコードする少なくとも1つのガイドRNA又はポリヌクレオチド、及び(コード配列が導入される場合)ガイドRNA及び/又はRGNポリペプチドを発現する少なくとも1つのRGNポリペプチドを、細胞、細胞小器官、又は胚に導入することを含み、ここで、RGNポリペプチドはヌクレアーゼ不活性RGNであり、検出可能な標識をさらに含む。検出可能な標識は、融合タンパク質(例えば、蛍光タンパク質)としてRGNに融合され得るか、又は視覚的に又は他の手段によって検出され得るRGNポリペプチドにコンジュゲートされ得るか、又はRGNポリペプチド内に組み込まれた小分子であり得る。
【0132】
また、標的配列の調節下で標的配列又は対象遺伝子の発現を調節するための方法も本明細書中に提供される。方法は、細胞、細胞小器官、又は胚に、同じものをコードする少なくとも1つのガイドRNA又はポリヌクレオチド、及び(コード配列が導入された場合)ガイドRNA及び/又はRGNポリペプチドを発現する、同じものをコードする少なくとも1つのRGNポリペプチド又はポリヌクレオチドを導入することを含み、ここで、RGNポリペプチドはヌクレアーゼ死RGNである。これらの実施形態のいくつかにおいて、ヌクレアーゼ死RGNは、本明細書に記載される発現モジュレータードメイン(すなわち、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン又は転写リプレッサードメイン)を含む融合タンパク質である。
【0133】
本開示はまた、目的の標的ヌクレオチド配列を結合及び/又は修飾する方法を提供する。本方法は、少なくとも1つのガイドRNA又はそれをコードするポリヌクレオチドを含み、少なくとも1つの融合ポリペプチドは、本発明のRGN及び塩基編集ポリペプチド、例えば、シチジンデアミナーゼ若しくはアデノシンデアミナーゼ、又は融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むシステムを、標的配列、又は標的配列を含む細胞、細胞小器官、若しくは胚に送達することを含む。
【0134】
当業者であれば、現在開示されている方法のいずれかを使用して、単一の標的配列又は複数の標的配列を標的とすることができることを理解するであろう。したがって、方法は、単一の遺伝子及び/又は複数の遺伝子内の複数の異なる配列を標的とすることができる、複数の別個のガイドRNAと組み合わせた単一のRGNポリペプチドの使用を含む。また、本明細書には、複数の異なるガイドRNAが、複数の異なるRGNポリペプチドと組み合わせて導入される方法も包含される。これらのガイドRNA及びガイドRNA/RGNポリペプチド系は、単一の遺伝子及び/又は複数の遺伝子内の複数の異なる配列を標的とすることができる。
【0135】
1つの態様において、本発明は、上記の方法及び組成物において開示された要素のいずれか1つ以上を含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、ベクターシステム及びキットを使用するための命令を含む。いくつかの実施形態において、ベクターシステムは、(a)crRNA配列をコードするDNA配列に機能し得るように連結された第1の調節エレメント、及びコードされたcrRNA配列の上流にガイド配列を挿入するための1つ以上の挿入部位を含み、発現された場合、前記ガイド配列は、真核細胞において、CRISPR複合体の配列特異的結合を標的配列に向け、前記CRISPR複合体は、前記ガイドRNAポリヌクレオチドと複合体化されたCRISPR酵素を含む;及び/又は(b)核局在化配列を含む前記CRISPR酵素をコードする酵素をコードする酵素に要素は、個別に、又は組み合わせて提供することができ、バイアル、ボトル、又はチューブなどの任意の適切な容器に提供することができる。
【0136】
いくつかの実施態様において、キットは、1以上の言語での指示を含む。いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載される1以上の要素を利用するプロセスにおいて使用するための1以上の試薬を含む。試薬は、任意の適切な容器に入れて提供することができる。例えば、キットは、1つ以上の反応又は貯蔵バッファーを提供することができる。試薬は、特定のアッセイにおいて使用可能な形態で、又は使用前に1つ以上の他の成分の追加を必要とする形態(例えば、濃縮又は凍結乾燥形態)で提供することができる。緩衝液は、限定されるものではないが、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、及びそれらの組み合わせを含む任意の緩衝液とすることができる。いくつかの態様において、緩衝液はアルカリ性である。いくつかの態様において、緩衝液は、約7~約10のpHを有する。
【0137】
いくつかの態様において、キットは、ガイド配列及び調節エレメントを操作可能に連結するように、ベクターへの挿入のためのガイド配列に対応する1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、キットは、相同組換え鋳型ポリヌクレオチドを含む。一態様では、本発明は、CRISPRシステムの1つ以上の要素を使用する方法を提供する。本発明のCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチドを修飾するための有効な手段を提供する。本発明のCRISPR複合体は、多数の細胞型における標的ポリヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、移動、不活性化、活性化、塩基編集)を含む広範な有用性を有する。従って、本発明のCRISPR複合体は、例えば、遺伝子治療、薬物スクリーニング、疾患診断、及び予後における広範な用途を有する。例示的なCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズしたガイド配列と複合体化されたCRISPR酵素を含む。
【0138】
VIII.標的ポリヌクレオチド
1つの態様において、本発明は、真核細胞における標的ポリヌクレオチドを修飾する方法を提供し、それはインビボ、エクスビボ又はインビトロであり得る。ある態様において、本方法は、ヒト又は非ヒト動物又は植物(微細藻類を含む)由来の細胞又は細胞集団をサンプリングし、細胞又は細胞を改変することを含む。培養は、エクスビボのいずれの段階でも起こりうる。細胞又は細胞は、非ヒト動物又は植物(微細藻類を含む)に再導入され得る。
【0139】
植物育種家は、自然の多様性を利用して、収量、品質、均一性、耐性、有害生物に対する耐性などの望ましい性質のために最も有用な遺伝子を組み合わせている。これらの望ましい品質には、成長、日長の好み、温度要件、花又は生殖の発達の開始日、脂肪酸含有量、昆虫抵抗性、耐病性、線虫抵抗性、真菌抵抗性、除草剤抵抗性、干ばつ、熱、湿気、寒さ、風、及び高塩分を含む不利な土壌条件を含むさまざまな環境要因に対する耐性も含まれる。これらの有用な遺伝子の供給源には、在来又は外来の品種、家宝の品種、野生植物の近縁種、及び誘発された突然変異、例えば、植物材料を突然変異誘発剤で処理することが含まれる。本発明を用いて、植物育種家には、突然変異を誘発するための新しいツールが提供される。従って、当業者は、有用な遺伝子の供給源についてゲノムを分析することができ、また所望の特性又は形質を有する品種において、有用な遺伝子の増加を誘導するために本発明を使用し、これまでの変異原性物質よりも精度が高く、従って、植物育種プログラムを加速し、改善することができる。
【0140】
RGN系の標的ポリヌクレオチドは、真核細胞に対して内因性又は外因性の任意のポリヌクレオチドであり得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、真核細胞の核内に存在するポリヌクレオチドであり得る。標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列、又は非コード配列(例えば、調節ポリヌクレオチド又はジャンクDNA)であり得る。理論に拘束されることを望まないが、標的配列は、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)、すなわち、CRISPR複合体によって認識される短い配列と結合すべきであると考えられる。PAMの正確な配列及び長さの必要条件は、使用されるCRISPR酵素によって異なるが、PAMは、典型的には、プロトスペーサー(すなわち、標的配列)に隣接する2~5塩基対配列である。
【0141】
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、多数の疾患関連遺伝子及びポリヌクレオチド、ならびにシグナル伝達生化学経路関連遺伝子及びポリヌクレオチドを含み得る。標的ポリヌクレオチドの例には、シグナル伝達生化学経路に関連する配列、例えば、シグナル伝達生化学経路関連遺伝子又はポリヌクレオチドが含まれる。標的ポリヌクレオチドの例には、疾患関連遺伝子又はポリヌクレオチドが含まれる。「疾患関連」遺伝子又はポリヌクレオチドは、非疾患対照の組織又は細胞と比較して、疾患に罹患した組織に由来する細胞において異常なレベル又は異常な形態で転写又は翻訳産物を産生している任意の遺伝子又はポリヌクレオチドを指す。これは、異常に高いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく、異常に低いレベルで発現するようになる遺伝子であってもよく、その発現の変化は、疾患の発生及び/又は進行と相関する。疾患関連遺伝子とはまた、疾患の病因(例えば、因果突然変異)に関与する遺伝子と直接的に関与する、又は連鎖不均衡にある突然変異又は遺伝的変異を有する遺伝子を指す。転写又は翻訳された産物は、既知又は未知であってもよく、さらに、正常レベル又は異常レベルであってもよい。疾患関連遺伝子及びポリヌクレオチドの例は、McKusick-Nathans Institute of Genetic Medicine, Johns Hopkins University (Baltimore, Md.) 及びNational Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine (Bethesda, Md.)(the World Wide Webで利用可能)から利用可能である。
【0142】
CRISPRシステムは、関心のあるゲノム配列を標的とする際の比較的容易さのために特に有用であるが、原因となる突然変異に対処するためにRGNが何をすることができるかという問題は依然として残っている。1つのアプローチは、RGN(好ましくは、RGNの不活性又はニッカーゼ変異体)と、塩基編集酵素又はシチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼ塩基編集のような塩基編集酵素の活性ドメインとの間の融合タンパク質を生成することである(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,840,699号)。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)本発明のRGN及びデアミナーゼのような塩基編集ポリペプチドを含む融合タンパク質と、(b)(a)の融合タンパク質を標的とするgRNAと、DNA鎖の標的ヌクレオチド配列とを接触させることを含み、ここで、DNA分子は、ヌクレオチド塩基の脱アミノに適した量及び条件下で、融合タンパク質及びgRNAと接触される。ある態様において、標的DNA配列は、疾患又は障害に関連する配列を含み、ヌクレオチド塩基の脱アミノ化は、疾患又は障害に関連しない配列をもたらす。いくつかの実施態様において、標的DNA配列は、作物植物の対立遺伝子に存在し、ここで、対象となる形質の特定の対立遺伝子は、農業学的価値の低い植物をもたらす。ヌクレオチド塩基の脱アミノ化は、形質を改善し、植物の農業的価値を増大させる対立遺伝子をもたらす。
【0143】
ある態様において、DNA配列は、疾患又は障害に関連するT→C又はA→G点突然変異を含み、突然変異体C又はG塩基の脱アミノ化は、疾患又は障害に関連しない配列をもたらす。いくつかの実施形態において、脱アミノ化は、疾患又は障害に関連する配列における点突然変異を修正する。
【0144】
ある態様において、疾患又は障害に関連する配列は、タンパク質をコードし、ここで、脱アミノ化は、疾患又は障害に関連する配列に終止コドンを導入し、コードされたタンパク質の切断をもたらす。いくつかの態様において、接触は、疾患又は障害を有する、有する、又はそれと診断されやすい対象において、インビボで実施される。ある態様において、疾患又は障害は、ゲノムにおける点突然変異又は単一塩基突然変異に関連する疾患である。ある態様において、疾患は、遺伝性疾患、がん、代謝性疾患、又はリソソーム蓄積疾患である。
【0145】
塩基編集を用いた原因突然変異の修飾
本発明のRGN-塩基編集融合タンパク質に依存するアプローチを用いて是正することができる遺伝的に遺伝した疾患の例は、Hurler症候群である。MPS-1としても知られるハンラー症候群は、α-L-イズロニダーゼ(IDUA)の欠損の結果、リソソームにデルマタン硫酸とヘパラン硫酸が蓄積することによって分子レベルで特徴づけられるリソソーム蓄積症を引き起こす。この疾患は一般に、α-L-イズロニダーゼをコードするIDUA遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患である。一般的なIDUA突然変異はW402X及びQ70Xであり、いずれもナンセンス突然変異であり、翻訳の早期終結をもたらす。このような突然変異は、正確なゲノム編集(PGE)アプローチによって十分に対処される。なぜなら、一塩基の復帰、例えば、塩基編集アプローチによって、野生型コード配列が復元され、その結果、遺伝子座の内因性調節メカニズムによって制御されるタンパク質発現がもたらされるからである。さらに、ヘテロ接合体は無症候性であることが知られているため、これらの突然変異の1つを標的とするPGE療法は、突然変異した対立遺伝子の1つのみを是正する必要があるため、この疾患患者の大部分に有用であろう(参照により本明細書に援用される、Bunge et al. (1994) Hum. Mol. Genet. 3(6): 861-866)。
【0146】
Hurler症候群の現在の治療法には、酵素補充療法及び骨髄移植がある(参照により本明細書に援用される、Vellodi et al. (1997) Arch. Dis. Child. 76(2): 92-99; Peters et al. (1998) Blood 91(7): 2601-2608)。酵素補充療法は、Hurler症候群患者の生存及び生活の質に劇的な影響を及ぼしてきたが、このアプローチには、高価で時間のかかる週1回の注入が必要である。さらなるアプローチには、発現ベクター上のIDUA遺伝子の送達、又は血清アルブミン(米国特許第9,956,247号(参照により本明細書に組み込まれる))のような高度に発現された遺伝子座への遺伝子の挿入が含まれる。しかし、これらのアプローチでは、元のIDUA遺伝子座を正しいコード配列に復元することはできない。ゲノム編集戦略には、多くの利点があるだろう。特に、遺伝子発現の調節は健康な個体に存在する自然のメカニズムによって制御されるだろう。さらに、塩基編集を用いると、二本鎖DNA切断を引き起こす必要はなく、腫瘍抑制メカニズムの破壊により、大きな染色体再編成、細胞死、又は発がん性を引き起こす可能性がある。一般的な戦略は、本発明のRGN-塩基編集融合タンパク質を用いて、ヒトゲノム中の特定の疾患を引き起こす突然変異を標的とし、修正することに向けられ得る。塩基編集によって是正され得る標的疾患に対する同様のアプローチもまた追求され得ることが理解されるであろう。他の種、特に一般的な家庭ペット又は家畜における疾患を引き起こす突然変異を標的とする同様のアプローチもまた、本発明のRGNを用いて配備することができることがさらに認識されるであろう。一般的な家庭のペット及び家畜には、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、トリ、ロバ、ヘビ、フェレット、サーモンなどの魚、及びエビが含まれる。
【0147】
標的欠失による原因突然変異の修飾
本発明のRGNはまた、原因突然変異がより複雑であるヒトの治療アプローチにおいても有用であり得る。例えば、Friedreich運動失調症やHuntington病のようないくつかの疾患は、遺伝子の特定の領域における3ヌクレオチドモチーフの反復が有意に増加し、発現されたタンパク質の機能又は発現能力に影響を与える結果である。Friedreich運動失調(FRDA)は、脊髄の神経組織の進行性変性をもたらす常染色体劣性疾患である。ミトコンドリアのフラタキシン(FXN)タンパク質レベルの低下は、細胞レベルで酸化的損傷と鉄欠乏を引き起こす。FXN発現の減少は、体細胞及び生殖細胞系FXN遺伝子のイントロン1内のGAAトリプレットの拡大と関連付けられている。FRDA患者では、GAA反復は70を超えることが多く、ときには1000を超える(最も一般的には600~900)トリプレットからなるが、非罹患者では約40反復以下である(すべてが参照により本明細書に援用される、Pandolfo et al. (2012) Handbook of Clinical Neurology 103: 275-294; Campuzano et al. (1996) Science 271: 1423-1427; Pandolfo (2002) Adv. Exp. Med. Biol. 516: 99-118)。
【0148】
Friedreich運動失調(FRDA)を引き起こす3塩基反復配列の拡大は、FRDA不安定領域と呼ばれるFXN遺伝子内の特定の遺伝子座で起こる。RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)は、FRDA患者細胞における不安定領域を切除するために使用され得る。このアプローチは、1)ヒトゲノム中の対立遺伝子を標的とするようにプログラムされ得るRGN及びガイドRNA配列;及び2)RGN及びガイド配列の送達アプローチを必要とする。ゲノム編集に使用される多くのヌクレアーゼ、例えばS.pyogenes由来の一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼ(SpCas9)は、大きすぎて、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにパッケージすることができない。これは、SpCas9を使用するアプローチをより困難にする。
【0149】
本発明のある種のRNA誘導ヌクレアーゼは、ガイドRNAと共にAAVベクターにパッケージングするのに適している。2つのガイドRNAを詰め込むには第2のベクターが必要であろうが、このアプローチは、SpCas9のようなより大きなヌクレアーゼで必要とされるものと比較して有利である。SpCas9は、2つのベクターの間でタンパク質配列を分割することを必要とする可能性がある。本発明は、ゲノム不安定性の領域が除去される本発明のRGNを使用する戦略を包含する。このような戦略は、ハンチントン病のような類似の遺伝的基礎を有する他の疾患及び疾患にも適用可能である。本発明のRGNを使用する同様の戦略は、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、トリ、ロバ、ヘビ、フェレット、サーモンなどの魚、及びエビを含む、農業上又は経済的に重要な非ヒト動物における同様の疾患及び障害にも適用可能である。
【0150】
標的突然変異誘発による原因突然変異の修飾
本発明のRGNは、有益な効果をもたらす破壊的突然変異を導入することもできる。ヘモグロビンをコードする遺伝子、特にβグロビン鎖(HBB遺伝子)の遺伝的欠損は、鎌状赤血球貧血やサラセミアなど、異常ヘモグロビン症として知られる多くの疾患の原因となりうる。
【0151】
成人のヒトでは、ヘモグロビンは2つのアルファ(α)様グロビン鎖と2つのベータ(β)様グロビン鎖と4つのヘム基からなるヘテロ四量体である。成人では、α2β2四量体はヘモグロビンA(HbA)又は成人ヘモグロビンと呼ばれる。典型的には、α及びβグロビン鎖は、約1:1の比率で合成され、この比率は、ヘモグロビン及び赤血球(RBC)の安定化に関して重要であると思われる。発育中の胎児では、ヘモグロビンの別の形である胎児ヘモグロビン(HbF)が産生され、ヘモグロビンAよりも酸素に対する結合親和性が高く、母親の血流を介して酸素を胎児の体系に送達することができる。胎児のヘモグロビンは2本のαグロビン鎖も含むが、成人のβグロビン鎖の代わりに2本の胎児のγグロビン鎖(すなわち、胎児のヘモグロビンはα2γ2)をもつ。γβグロビンの産生からのスイッチの調節は非常に複雑であり、主にβグロビンの転写の同時アップレギュレーションを伴うγグロビンの転写のダウンレギュレーションを伴う。妊娠約30週では、胎児におけるガンマグロビンの合成は低下し始めるが、βグロビンの産生は増加する。生後約10カ月までに、新生児のヘモグロビンはほぼすべてのα2β2であるが、一部のHbFは成人期まで持続する(総ヘモグロビンの約1~3%)。異常ヘモグロビン症患者の大多数では、ガンマグロビンをコードする遺伝子は存在するが、前述のように分娩前後に生じる正常な遺伝子抑制のために、発現は比較的低い。
【0152】
鎌状赤血球症は、βグロビン遺伝子(HBB)のV6E変異(DNAレベルでGAGからGTGへ)によって引き起こされ、その結果生じるヘモグロビンは、「ヘモグロビンS」又は「HbS」と呼ばれ、低酸素条件下ではHbS分子が凝集し、線維性沈降物を形成する。これらの凝集体は赤血球の異常又は「鎌状化」を引き起こし、その結果、細胞の柔軟性が失われる。鎌状赤血球はもはや毛細血管床に押し込むことができず、鎌状赤血球患者では血管閉塞性クリーゼを引き起こすことがある。さらに、鎌状赤血球は正常赤血球よりも脆弱であり、溶血に向かう傾向があり、最終的には患者に貧血を引き起こす。
【0153】
鎌状赤血球症患者の治療と管理は、抗生物質治療、疼痛管理、及び急性エピソード中の輸血を含む生涯にわたる提案である。1つのアプローチはヒドロキシウレアの使用であり、これはガンマグロビンの産生を増加させることによってその効果を部分的に発揮する。しかし、慢性ヒドロキシウレア療法の長期的な副作用はまだ不明であり、治療は望ましくない副作用をもたらし、患者ごとに様々な有効性を有する可能性がある。鎌状赤血球症治療の有効性が増大しているにもかかわらず、患者の平均余命は50代半ばから後半にすぎず、この疾患に関連する罹病は患者の生活の質に重大な影響を及ぼす。
【0154】
サラセミア(αサラセミア及びβサラセミア)もヘモグロビンに関連する疾患であり、典型的にはグロビン鎖の発現低下を伴う。これは、遺伝子の調節領域における突然変異、又は発現の低下若しくは低下したレベル又は機能的グロビンタンパク質をもたらすグロビンコード配列における突然変異によって起こり得る。サラセミアの治療には通常、輸血と鉄キレート療法がある。骨髄移植は、重症サラセミア患者の治療にも使用されているが、適切なドナーが同定できる場合には、重大なリスクを伴う。
【0155】
SCD及びβサラセミアの治療に提案されているアプローチの1つは、異常な成人ヘモグロビンをHbFが機能的に置き換えるように、γグロビンの発現を増加させることである。上述のように、ヒドロキシウレアを有するSCD患者の治療は、一部には、ガンマグロビン発現の増加に対するその効果に起因して成功したと考えられる(すべてが参照により本明細書に援用される、DeSimone (1982) Proc Nat’l Acad Sci USA 79(14):4428-31; Ley, et al., (1982) N. Engl. J. Medicine, 307: 1469-1475; Ley, et al., (1983) Blood 62: 370-380; Constantoulakis et al., (1988) Blood 72(6):1961-1967)。HbFの発現を増加させるには、γグロビン発現の調節に関与する産物をもつ遺伝子の同定が必要である。そのような遺伝子の1つはBCL11Aである。BCL11Aは、成体赤血球前駆細胞において発現されるジンクフィンガータンパク質をコードし、その発現のダウンレギュレーションは、ガンマグロビン発現の増加を導く(参照により本明細書に組み込まれるSankaran et at (2008) Science 322: 1839)。BCL11A遺伝子を標的とする阻害性RNAの使用が提案されているが(例えば、本明細書に参考として援用される米国特許公開第2011/0182867号)、この技術には、完全なノックダウンが達成されない可能性、そのようなRNAの送達に問題がある可能性、及びRNAが連続的に存在しなければならず、生涯にわたって複数の治療を必要とすることを含む、いくつかの潜在的な欠点がある。
【0156】
本発明のRGNは、BCL11Aエンハンサー領域を標的にしてBCL11Aの発現を破壊し、それによってガンマグロビンの発現を増加させるために使用され得る。この標的破壊は、非相同末端結合(NHEJ)によって達成することができ、それにより、本発明のRGNは、BCL11Aエンハンサー領域内の特定の配列を標的とし、二本鎖切断を生じ、細胞の装置が切断を修復し、典型的には、同時に有害な突然変異を導入する。他の疾患標的について記載されているものと同様に、本発明のRGNは、比較的小さいサイズのために、他の既知のRGNよりも利点を有し得、これは、RGN及びそのガイドRNAのための発現カセットをインビボ送達のための単一のAAVベクターにパッケージングすることを可能にする。本発明のRGNを使用する同様の戦略は、ヒト及び農業的又は経済的に重要な非ヒト動物の両方における類似の疾患及び障害にも適用可能である。
【0157】
IX.ポリヌクレオチドの遺伝的修飾を含む細胞
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるように、RGN、crRNA、及び/又はtracrRNAによって媒介されるプロセスを用いて修飾された目的の標的配列を含む細胞及び生物である。これらの実施形態のいくつかにおいて、RGNは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、137、又は235のアミノ酸配列、又はそれらの活性変異体若しくは断片を含む。様々な実施形態において、ガイドRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、240、273、又は287のヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を、又はその活性変異体若しくは断片を含む。特定の実施形態では、ガイドRNAは、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、241、274、又は286のヌクレオチド配列を含むtracrRNA、又はその活性変異体若しくは断片を含む。システムのガイドRNAは、単一ガイドRNA又は二重ガイドRNAであってもよい。
【0158】
修飾された細胞は、真核細胞(例えば、哺乳動物、植物、昆虫細胞)又は原核細胞であり得る。また、本明細書に記載されるように、RGN、crRNA、及び/又はtracrRNAを利用する方法によって修飾された少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む細胞小器官及び胚も提供される。遺伝子操作された細胞、生物、細胞小器官、胚は、修飾されたヌクレオチド配列に対してヘテロ接合体であってもホモ接合体であってもよい。
【0159】
細胞、生物、細胞小器官、又は胚の染色体修飾は、発現の変化(アップレギュレーション又はダウンレギュレーション)、不活性化、又は改変されたタンパク質産物の発現、又は組込まれた配列をもたらすことができる。染色体修飾が、遺伝子の不活性化又は非機能性タンパク質産物の発現のいずれかをもたらす場合、遺伝的に修飾された細胞、生物、細胞小器官、又は胚は、「ノックアウト」と呼ばれる。ノックアウト表現型は、欠失突然変異(すなわち、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失)、挿入突然変異(すなわち、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入)、又はナンセンス突然変異(すなわち、停止コドンが導入されるような少なくとも1つのヌクレオチドの置換)の結果であり得る。
【0160】
あるいは、細胞、生物、細胞小器官、又は胚の染色体修飾は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の染色体組込みから生じる「ノックイン」を生成することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、コード配列は、野生型タンパク質をコードする染色体配列が不活性化されるが、外因性に導入されたタンパク質が発現されるように染色体に組み込まれる。
【0161】
他の実施形態において、染色体修飾は、変異タンパク質産物の産生をもたらす。発現された変異型タンパク質産物は、少なくとも1つのアミノ酸置換及び/又は少なくとも1つのアミノ酸の付加又は欠失を有することができる。改変された染色体配列によりコードされる改変されたタンパク質産物は、野生型タンパク質と比較した場合、改変された特徴又は活性を示すことができ、これには、改変された酵素活性又は基質特異性が含まれるが、これらに限定されない。
【0162】
さらに他の実施形態において、染色体修飾は、タンパク質の変化した発現パターンをもたらすことができる。非限定的な例として、タンパク質産物の発現を制御する調節領域における染色体変化は、タンパク質産物の過剰発現又はダウンレギュレーション、又は変化した組織又は時間的発現パターンをもたらすことができる。
【0163】
X.標的DNA又は一本鎖DNAを検出するためのキット及び方法
いくつかのRGN(例えば、配列番号54及び137として示されるAPG09106.1及びAPG09748)は、標的DNAの検出によって一旦活性化されると、非標的一本鎖DNA(ssDNA)を無差別に切断することができる。従って、本明細書には、試料中の標的DNA(二本鎖又は一本鎖)を検出するための組成物及び方法が提供される。いくつかの実施形態において、所望の標的は、RNA、例えばゲノム、又はRNAウイルスのゲノムの一部、例えばコロナウイルスとして存在し得る。ある態様において、コロナウイルスは、SARS様コロナウイルスであり得る。さらなる態様において、コロナウイルスは、SARS-CoV-2、SARS-CoV、又はコウモリSARS様コロナウイルス、例えば、コウモリ-SL-CoVZC45(アクセッションMG772933)であり得る。標的がRNAとして存在する態様において、標的は、RGNによって効果的に標的化され得るDNA分子に逆転写され得る。逆転写に続いて、熱サイクルを含む当技術分野で公知のRT-PCR法のような増幅工程、又はRT-LAMP(逆転写ループ媒介等温増幅)のような等温法を用いてもよい(Notomi et al., Nucleic Acids Res 28: E63, (2000))。
【0164】
これらの組成物及び方法は、ガイドRNAとハイブリダイズせず、非標的ssDNAである検出ssDNAの使用を含む。いくつかの実施形態において、検出ssDNAは、検出ssDNAの切断後に検出可能なシグナルを提供する検出可能な標識を含む。非限定的な例は、蛍光体/クエンチャー対を含む検出ssDNAであって、検出ssDNAが、そのシグナルが、非常に近接したクエンチャーの存在によって抑制されるとき、全体(すなわち、残されていない)であるとき、蛍光を発しない検出ssDNAである。検出ssDNAの切断は、クエンチャーの除去をもたらし、次に、蛍光標識を検出することができる。蛍光標識又は色素の非限定的な例としては、Cy5、フルオレセイン(例えば、FAM、6 FAM、5(6)FAM、FITC)、Cy3、Alexa Fluor(登録商標)色素、及びテキサスレッドが挙げられる。クエンチャーの非限定的な例としては、Iowa Black(登録商標) FQ、Iowa Black(登録商標) RQ、Qx1クエンチャー、ATT0クエンチャー、及びQSY染料が挙げられる。 いくつかの実施形態において、検出ssDNAは、ZEN(商標)、TAO(商標)、及びBlack Hole Quencher(登録商標)のような内部クエンチャーなどの第2クエンチャーを含み、バックグラウンドを低下させ、シグナル検出を増加させることができる。
【0165】
他の実施形態において、検出ssDNAは、検出ssDNAの切断及びssDNAの切断がシグナルの検出を阻害又は妨げる前に検出可能なシグナルを提供する検出可能な標識を含む。そのようなシナリオの非限定的な例は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対を含む検出ssDNAである。FRETは、第一(ドナー)フルオロフォアの励起状態から第二(アクセプター)フルオロフォアへのエネルギーの無放射移動が、非常に近接して起こるプロセスである。ドナー蛍光体の発光スペクトルは、アクセプター蛍光体の励起スペクトルとオーバーラップする。従って、アクセプター蛍光体は、検出ssDNAが全(すなわち、非切断)であり、アクセプター蛍光体は、検出ssDNAが切断されるとき、もはや蛍光を発しないであろう。なぜなら、ドナー及びアクセプター蛍光体は、もはや互いに近接していないからである。FRET供与体及び受容体フルオロフォアは、当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、シアン蛍光タンパク質/緑色蛍光タンパク質(GFP)、Cy3/Cy5、及びGFP/黄色蛍光タンパク質(YFP)を含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、検出器ssDNAは、約2ヌクレオチドから約30ヌクレオチドの長さを有し、限定されないが、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25ヌクレオチド、約26ヌクレオチド、約27ヌクレオチド、約28ヌクレオチド、約29ヌクレオチド、及び約30ヌクレオチドが含まれる。
【0167】
DNA分子の標的DNAを検出する方法は、試料をRGNと接触させ、試料をRGN及びDNA分子中の標的DNA配列とハイブリダイズさせることができるガイドRNAと、ガイドRNAとハイブリダイズしない検出一本鎖DNAとを接触させ、続いて、RGNによるssDNAの切断によって生成された検出可能なシグナルを測定し、それによってDNA分子の標的DNA配列を検出することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、RGN及びガイドRNAとの接触の前又は同時に、試料内の核酸分子の増幅工程を含むことができる。これらの実施形態のいくつかでは、ガイドRNAがハイブリダイズする特異的配列を増幅して、検出方法の感度を高めることができる。
【0168】
標的DNAがこれらの組成物を用いて検出され得る試料、及び検出ssDNAを含む方法は、核酸(例えば、DNA又はRNA分子)を含む、又は含むと考えられるいずれかの試料を含む。試料は、精製された核酸の合成の組み合わせ、又は呼吸スワブ(例えば、鼻咽頭スワブ)抽出物、細胞溶解物、患者サンプル、細胞、組織、唾液、血液、血清、血漿、尿、吸引物、生検サンプル、脳脊髄液、又は生物(細菌、ウイルスなど)などの生物学的試料を含む任意の供給源に由来することができる。
【0169】
試料とRGN、ガイドRNA、及び検出ssDNAとの接触は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボでの接触を含むことができる。いくつかの実施形態において、検出ssDNA及び/又はRGN及び/又はガイドRNAは、例えば、横方向流装置上に固定化され、ここで、試料は、固定化検出ssDNA及び/又はRGN及び/又はガイドRNAと接触する。ある態様において、検出ssDNA上の抗原部分に対する抗体は、切断された検出ssDNAと無傷の検出ssDNAとの区別を可能にする様式で、例えば、横方向フローデバイス上に固定化される。
【0170】
いくつかの態様において、方法は、試料中に存在する標的DNAの量を決定することをさらに含むことができる。試験試料中の検出可能なシグナルの測定は、参照測定(例えば、既知量の標的DNAを含む参照試料又はその系列の測定)と比較することができる。
【0171】
組成物及び方法の適用の非限定的な例には、一塩基多型(SNP)検出、癌スクリーニング、細菌感染の検出、抗生物質耐性の検出、及びウイルス感染の検出が含まれる。
【0172】
RGNによるssDNAの切断によって生成された検出可能なシグナルは、蛍光シグナルの測定、ゲル上のバンドの視覚分析、比色変化、及び電気シグナルの有無を含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して測定することができる。
【0173】
本発明は、試料中のDNA分子の標的DNAを検出するためのキットであって、該キットは、RGNポリペプチド、該RGNとハイブリダイズすることができるガイドRNA、及びDNA分子中の標的DNA配列、ならびに該ガイドRNAとハイブリダイズしない検出ssDNAを含む、キットを提供する。
【0174】
また、本明細書では、核酸の集団を接触させることによって一本鎖DNAを切断する方法が提供され、ここで、該集団は、DNA分子の標的DNA配列及び複数の非標的ssDNAを、RGN及びRGN及び標的DNA配列とハイブリダイズすることができるガイドRNAと含む。
【0175】
物品「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書では、物品の文法的対象物の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「ポリペプチド」は、1つ以上のポリペプチドを意味する。
【0176】
明細書に記載されているすべての刊行物及び特許出願は、本開示が関係する当業者のレベルを示すものである。全ての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物又は特許出願が、参照により援用されるように具体的かつ個別に指示されたものと同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0177】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示及び例示として、ある程度詳細に説明されてきたが、特定の変更及び修正が、添付の実施形態の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【0178】
非限定的な実施形態は、以下を含む:
1.RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、ここで、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、
前記RGNポリペプチドが、前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができるガイドRNA(gRNA)に結合した場合に、RNAガイド配列特異的な様式でDNA分子の標的DNA配列に結合することができ、
RGNポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドに異種性のプロモーターに機能的に連結されている前記核酸分子。
2.前記RGNポリペプチドが、結合時に前記標的DNA配列を切断することができる、実施形態1に記載の核酸分子。
3.前記RGNポリペプチドが二本鎖切断を生成することができる、実施形態2に記載の核酸分子。
4.前記RGNポリペプチドが一本鎖切断を生成することができる、実施形態2に記載の核酸分子。
5.前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性である、実施形態2に記載の核酸分子。
【0179】
6.RGNポリペプチドが塩基編集ポリペプチドに機能的に融合されている、実施形態1~5のいずれか1つに記載の核酸分子。
7.塩基編集ポリペプチドがデアミナーゼである、実施形態6に記載の核酸分子。
8.デアミナーゼがシチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼである、実施形態7に記載の核酸分子。
9.RGNポリペプチドが1つ以上の核局在化シグナルを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の核酸分子。
10.RGNポリペプチドが、真核細胞における発現のために最適化されたコドンである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0180】
11.標的DNA配列がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の核酸分子。
12.実施形態1~11のいずれか1つに記載の核酸分子を含むベクター。
13.前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができる前記gRNAをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態12に記載のベクター。
14.ガイドRNAが、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCRISPR反復配列を含むCRISPR RNAを含む、実施形態13に記載のベクター。
15.gRNAがtracrRNAを含む、実施形態13又は14に記載のベクター。
【0181】
16.tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態15に記載のベクター。
17.前記gRNAが単一のガイドRNAである、実施形態15又は16に記載のベクター。
18.gRNAが二重ガイドRNAである、実施形態15又は16に記載のベクター。
19.実施形態1~11のいずれか1つに記載の核酸分子、又は実施形態12~18のいずれか1つに記載のベクターを含む細胞。
20.RGNポリペプチドが発現される条件下で実施形態18に記載の細胞を培養することを含む、RGNポリペプチドを作製する方法。
【0182】
21.配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸分子を細胞に導入し、
ここで、前記RGNポリペプチドが、前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができるガイドRNA(gRNA)に結合した場合に、RNAガイド配列特異的な方法でDNA分子の標的DNA配列に結合することができ、
RGNポリペプチドが発現される条件下で前記細胞を培養する
ことを含む、RGNポリペプチドを作製する方法。
22.前記RGNポリペプチドを精製することをさらに含む、実施形態20又は21に記載の方法。
23.前記細胞が、前記RGNポリペプチドに結合してRGNリボ核タンパク質複合体を形成する1以上のガイドRNAをさらに発現する、実施形態20又は21に記載の方法。
24.前記RGNリボ核タンパク質複合体を精製する工程をさらに含む、実施形態23に記載の方法。
25.CRISPR RNA(crRNA)をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記crRNAは、スペーサー配列及びCRISPR反復配列を含み、前記CRISPR反復配列は、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
a)前記crRNA;及び、任意選択的に、
b)crRNAの前記CRISPR反復配列とハイブリダイズすることができるトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)
を含むガイドRNAは、RNAガイドヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドに結合した場合に、前記crRNAのスペーサー配列を介して配列特異的にDNA分子の標的DNA配列にハイブリダイズすることができ、
crRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドに異種性のプロモーターに機能的に連結されている上記核酸分子。
【0183】
26.実施形態25に記載の核酸分子を含むベクター。
27.前記ベクターが、前記tracrRNAをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態26に記載のベクター。
28.前記tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態27に記載のベクター。
29.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに操作可能に連結され、単一のガイドRNAとしてコードされる、実施形態27又は28に記載のベクター。
30.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、別々のプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態27又は28に記載のベクター。
【0184】
31.前記ベクターが前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記RGNポリペプチドが配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態26~30のいずれか1つに記載のベクター。
32.配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、
a)前記tracrRNA;及び
b)スペーサー配列及びCRISPR反復配列を含むcrRNAであって、前記crRNAの前記CRISPR反復配列とハイブリダイズすることができるcrRNA
を含むガイドRNAは、RNAガイドヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドに結合した場合に、前記crRNAのスペーサー配列を介して配列特異的にDNA分子の標的DNA配列にハイブリダイズすることができ、
tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドに異種性のプロモーターに機能的に連結されている上記核酸分子。
を含む上記核酸分子。
33.実施形態32に記載の核酸分子を含むベクター。
34.前記ベクターが、前記crRNAをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態33に記載のベクター。
35.前記crRNAのCRISPR反復配列が、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態34に記載のベクター。
【0185】
36.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに操作可能に連結され、単一のガイドRNAとしてコードされる、実施形態34又は35に記載のベクター。
37.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、別々のプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態34又は35に記載のベクター。
38.前記ベクターが前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記RGNポリペプチドが配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態33~37のいずれか1つに記載のベクター。
39.DNA分子の標的DNA配列を結合するためのシステムであって、前記システムは、
a)1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチド又は前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができる1つ以上のガイドRNA;及び
b)配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチド;又はRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
を含み、
1つ以上のガイドRNAをコードし、RNAGNポリペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、各々、前記ヌクレオチド配列に異種性のプロモーターに機能し得るように連結され;
1つ以上のガイドRNAが、該RGNポリペプチドをDNA分子の該標的DNA配列に結合させるために、該RGNポリペプチドと複合体を形成することができる上記システム。
40.前記gRNAが、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含む、実施形態39に記載のシステム。
【0186】
41.gRNAがtracrRNAを含む、実施形態39又は40に記載のシステム。
42.前記tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態41に記載のシステム。
43.前記gRNAが単一のガイドRNA(sgRNA)である、実施形態41又は42に記載のシステム。
44.前記gRNAが二重ガイドRNAである、実施形態41又は42に記載のシステム。
45.標的DNA配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、実施形態39~44のいずれか1つに記載のシステム。
【0187】
46.標的DNA配列が細胞内にある、実施形態39~45のいずれか1つに記載のシステム。
47.細胞が真核細胞である、実施形態46に記載のシステム。
48.真核細胞が植物細胞である、実施形態47に記載のシステム。
49.真核細胞が哺乳動物細胞である、実施形態47に記載のシステム。
50.真核細胞が昆虫細胞である、実施形態47に記載のシステム。
【0188】
51.細胞が原核細胞である、実施形態46に記載のシステム。
52.1つ以上のガイドRNAを転写した場合、標的DNA配列にハイブリダイズすることができ、ガイドRNAが、標的DNA配列を直接切断するために、RGNポリペプチドと複合体を形成することができる、実施形態39~51のいずれか1つに記載のシステム。
53.前記RGNポリペプチドが二本鎖切断を生成することができる、実施形態52に記載のシステム。
54.前記RGNポリペプチドが一本鎖切断を生成することができる、実施形態52に記載のシステム。
55.前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性である、実施形態52に記載のシステム。
【0189】
56.RGNポリペプチドが、塩基編集ポリペプチドに機能し得るように連結されている、実施形態39~55のいずれか1つに記載のシステム。
57.塩基編集ポリペプチドがデアミナーゼである、実施形態56に記載のシステム。
58.デアミナーゼがシチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼである、実施形態57に記載のシステム。
59.RGNポリペプチドが1つ以上の核局在化シグナルを含む、実施形態39~58のいずれか1つに記載のシステム。
60.RGNポリペプチドが、真核細胞における発現のために最適化されたコドンである、実施形態39~59のいずれか1つに記載のシステム。
【0190】
61.1つ以上のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及びRGNポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが、1つのベクター上に位置する、実施形態39~60のいずれか1つに記載のシステム。
62.前記システムが、1つ以上のドナーポリヌクレオチド、又は1つ以上のドナーポリヌクレオチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列をさらに含む、実施形態39~61のいずれか1つに記載のシステム。
63.標的DNA配列又は標的DNA配列を含む細胞に、実施形態39~62のいずれか1つに記載のシステムを送達することを含む、DNA分子の標的DNA配列を結合する方法。
64.前記RGNポリペプチド又は前記ガイドRNAがさらに検出可能な標識を含み、それによって前記標的DNA配列の検出を可能にする、実施形態63に記載の方法。
65.前記ガイドRNA又は前記RGNポリペプチドが、発現モジュレーターをさらに含み、それによって、前記標的DNA配列又は前記標的DNA配列による転写制御下にある遺伝子の発現を調節する、実施形態63に記載の方法。
【0191】
66.実施形態39~62のいずれか1つに記載のシステムを、DNA分子を含む標的DNA配列又は細胞に送達し、前記標的DNA配列の切断又は修飾が起こることを含む、DNA分子の標的DNA配列を切断又は修飾する方法。
67.前記修飾された標的DNA配列が、標的DNA配列への異種DNAの挿入を含む、実施形態66に記載の方法。
68.前記修飾された標的DNA配列が、標的DNA配列からの少なくとも1つのヌクレオチドの欠失を含む、実施形態66に記載の方法。
69.前記修飾された標的DNA配列が、標的DNA配列中の少なくとも1つのヌクレオチドの突然変異を含む、実施形態66記載の方法。
70.DNA分子の標的DNA配列を結合するための方法であって、前記方法は、
a)RGNリボヌクレオチド複合体の形成に適した条件下で、
i)標的DNA配列にハイブリダイズすることができる1つ以上のガイドRNA;及び
ii)配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸を含むRGNポリペプチド
を合わせることによって、インビトロでRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)リボヌクレオチド複合体をアセンブリし;及び
b)標的DNA配列又は標的DNA配列を含む細胞を、インビトロでアセンブルしたRGNリボヌクレオチド複合体と接触させる
ことを含み、
1つ以上のガイドRNAが標的DNA配列にハイブリダイズし、それによって、該RGNポリペプチドを該標的DNA配列に結合させる上記方法。
【0192】
71.前記RGNポリペプチド又は前記ガイドRNAがさらに検出可能な標識を含み、それによって前記標的DNA配列の検出を可能にする、実施形態70に記載の方法。
72.前記ガイドRNA又は前記RGNポリペプチドが、発現モジュレーターをさらに含み、それによって前記標的DNA配列の発現の調節を可能にする、実施形態70に記載の方法。
73.DNA分子の標的DNA配列を切断及び/又は修飾するための方法であって、該DNA分子を、
a)RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、前記RGNは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸を含むRGNポリペプチド;及び
b)(a)のRGNを標的DNA配列に標的化することができる1つ以上のガイドRNA;
以下と接触させることを含み、
1つ以上のガイドRNAが標的DNA配列にハイブリダイズし、それによって、該RGNポリペプチドを該標的DNA配列に結合させ、該標的DNA配列の切断及び/又は修飾が起こる上記方法。
74.前記RGNポリペプチドによる切断が二本鎖切断を生成する、実施形態73に記載の方法。
75.前記RGNポリペプチドによる切断が一本鎖切断を生成する、実施形態73に記載の方法。
【0193】
76.前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性である、実施形態73に記載の方法。
77.RGNポリペプチドが塩基編集ポリペプチドに機能的に連結されている、実施形態73~76のいずれか1つに記載の方法。
78.前記塩基編集ポリペプチドがデアミナーゼを含む、実施形態77に記載の方法。
79.前記デアミナーゼがシチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼである、実施形態78に記載の方法。
80.修飾標的DNA配列が、異種DNAの標的DNA配列への挿入を含む、実施形態73~79のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
81.修飾された標的DNA配列が標的DNA配列からの少なくとも1つのヌクレオチドの欠失を含む、実施形態73~79のいずれか1つに記載の方法。
82.修飾された標的DNA配列が標的DNA配列中の少なくとも1つのヌクレオチドの突然変異を含む、実施形態73~79のいずれか1つに記載の方法。
83.前記gRNAが、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含む、実施形態70~82のいずれか1つに記載の方法。
84.gRNAがtracrRNAを含む、実施形態70~83のいずれか1つに記載の方法。
85.前記tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態84に記載の方法。
【0195】
86.gRNAが単一のガイドRNA(sgRNA)である、実施形態84又は85に記載の方法。
87.gRNAが二重ガイドRNAである、実施形態84又は85に記載の方法。
88.前記標的DNA配列がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接して位置する、態様63~87のいずれか1つに記載の方法。
89.標的DNA配列が細胞内にある、実施形態63~88のいずれか1つに記載の方法。
90.細胞が真核細胞である、実施形態89に記載の方法。
【0196】
91.真核細胞が植物細胞である、実施形態90に記載の方法。
92.真核細胞が哺乳動物細胞である、実施形態90に記載の方法。
93.真核細胞が昆虫細胞である、実施形態90に記載の方法。
94.細胞が原核細胞である、実施形態89に記載の方法。
95.RGNポリペプチドが発現され、標的DNA配列を切断して修飾されたDNA配列を含むDNA分子を生成する条件下で細胞を培養し;前記修飾された標的DNA配列を含む細胞を選択することをさらに含む、実施形態89~94のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
96.実施形態95に記載の方法に従って修飾された標的DNA配列を含む細胞。
97.細胞が真核細胞である、実施形態96に記載の細胞。
98.真核細胞が植物細胞である、実施形態97に記載の細胞。
99.実施形態98に記載の細胞を含む植物。
100.実施形態98に記載の細胞を含む種子。
【0198】
101.真核細胞が哺乳動物細胞である、実施形態97に記載の細胞。
102.真核細胞が昆虫細胞である、実施形態98に記載の細胞。
103.細胞が原核細胞である、実施形態96に記載の細胞。
104.遺伝性疾患の原因となる突然変異を修正した遺伝子修飾細胞を作製する方法であって、該方法は、細胞に
a)RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、RGNポリペプチドは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRGNポリペプチド;又は前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、RGNポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドは、細胞内でのRGNポリペプチドの発現を可能にするためにプロモーターに作動可能に連結されるポリヌクレオチド;及び
b)ガイドRNA(gRNA)であって、gRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含むgRNA;又は前記gRNAをコードするポリヌクレオチドであって、gRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、細胞内でのgRNAの発現を可能にするためにプロモーターに作動可能に連結されるポリヌクレオチド
を導入することを含み、
これにより、RGN及びgRNAは原因となる突然変異のゲノム位置を標的とし、ゲノム配列を修飾して原因となる突然変異を除去する上記方法。
105.RGNが塩基編集ポリペプチドに作動可能に連結されている、実施形態104に記載の方法。
【0199】
106.塩基編集ポリペプチドがデアミナーゼである、実施形態105に記載の方法。
107.デアミナーゼがシチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼである、実施形態106に記載の方法。
108.細胞が動物細胞である、実施形態104~107のいずれか1つに記載の方法。
109.細胞が哺乳動物細胞である、実施形態104~107のいずれか1つに記載の方法。
110.細胞が、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、又はヒト由来である、実施形態108に記載の方法。
【0200】
111.遺伝性疾患が単一ヌクレオシド多型によって引き起こされる、実施形態108に記載の方法。
112.遺伝性疾患がハラー症候群である、実施形態111に記載の方法。
113.gRNAが、原因となる単一ヌクレオシド多型に近接する領域を標的とするスペーサー配列をさらに含む、実施形態112に記載の方法。
114.疾患を引き起こす不安定なゲノム領域に欠失を有する遺伝子組換え細胞を作製するための方法であって、該方法が、細胞に
a)RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、RGNポリペプチドは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;又は、前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、RGNポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドは、細胞内でのRGNポリペプチドの発現を可能にするためにプロモーターに作動可能に連結されているRGNポリペプチド;及び
b)ガイドRNA(gRNA)であって、gRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含むか;又は、前記gRNAをコードするポリヌクレオチドであって、gRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、細胞内でのgRNAの発現を可能にするためにプロモーターに作動可能に連結され、さらに、gRNAは、不安定性のゲノム領域の5’フランクを標的とするスペーサー配列を含むgRNA;及び
c)第2のガイドRNA(gRNA)であって、gRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含むか;又は前記gRNAをコードするポリヌクレオチドであって、gRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されて、細胞における第2のgRNAの発現を可能にし、さらに、前記第2のgRNAは、不安定性のゲノム領域の3’フランクを標的とするスペーサー配列を含む第2のgRNA
を導入することを含み、これにより、RGNと2つのgRNAは不安定なゲノム領域と不安定なゲノム領域の少なくとも一部を標的とする上記方法。
115.細胞が動物細胞である、実施形態114に記載の方法。
【0201】
116.細胞が哺乳動物細胞である、実施形態114に記載の方法。
117.細胞が、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、又はヒト由来である、実施形態115に記載の方法。
118.遺伝的に遺伝する疾患が、フリードリッヒ運動失調又はハンチントン病である、実施形態115に記載の方法。
119.第1のgRNAが、不安定性のゲノム領域内又はその近傍の領域を標的とするスペーサー配列をさらに含む、実施形態118に記載の方法。
120.第2のgRNAが、不安定性のゲノム領域内又はその近位領域を標的とするスペーサー配列をさらに含む、実施形態118に記載の方法。
【0202】
121.BCL11A mRNA及びタンパク質発現が減少した遺伝子組換え哺乳動物造血前駆細胞を産生するための方法であって、該方法が、単離されたヒト造血前駆細胞に、
a)RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、RGNポリペプチドは、配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか;又は、前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、RGNポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドは、細胞内でのRGNポリペプチドの発現を可能にするためにプロモーターに作動可能に連結されているRGNポリペプチド;及び
b)ガイドRNA(gRNA)であって、gRNAは、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、又は118に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含むか;又は前記gRNAをコードするポリヌクレオチドであって、gRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されて、細胞におけるgRNAの発現を可能にするgRNA
を導入することを含み、これにより、RGN及びgRNAは細胞内で発現され、BCL11Aエンハンサー領域で切断され、その結果、ヒト造血前駆細胞の遺伝子改変が生じ、BCL11AのmRNA及び/又はタンパク質発現が低下する上記方法。
122.gRNAが、BCL11Aエンハンサー領域内又はそれに近接する領域を標的とするスペーサー配列をさらに含む、実施形態121に記載の方法。
123.ガイドRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、又は119に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むtracrRNAを含む、実施形態104~122のいずれか1つに記載の方法。
124.DNA分子の標的DNA配列を結合するためのシステムであって、前記システムは、
a)1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチド又は前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができる1つ以上のガイドRNA;及び
b)配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチド
を含み、
ここで、1つ以上のガイドRNAは標的DNA配列にハイブリダイズすることができ、
1つ以上のガイドRNAが、該RGNポリペプチドをDNA分子の該標的DNA配列に結合させるために、該RGNポリペプチドと複合体を形成することができる上記システム。
125.前記RGNポリペプチドがヌクレアーゼ不活性であるか、又はニッカーゼとして機能することができる、実施形態124に記載のシステム。
【0203】
126.前記RGNポリペプチドが、塩基編集ポリペプチドに機能的に融合される、実施形態124又は125に記載のシステム。
127.塩基編集ポリペプチドがデアミナーゼである、実施形態126に記載のシステム。
128.デアミナーゼがシチジンデアミナーゼ又はアデノシンデアミナーゼである、実施形態127に記載のシステム。
129.試料中のDNA分子の標的DNA配列を検出する方法であって、以下を含む方法:
a)試料を
i)配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、又は137と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、前記RGNポリペプチドは、前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができるガイドRNAに結合した場合に、RNA誘導配列特異的な方法でDNA分子の前記標的DNA配列に結合することができるRGNポリペプチド;
ii)前記ガイドRNA
iii)ガイドRNAとハイブリダイズしない検出一本鎖DNA(ssDNA)
と接触させ;及び
b)RGNによる検出ssDNAの切断によって生成された検出可能なシグナルを測定し、それによって標的DNAを検出する上記方法。
130.前記試料が細胞溶解物由来のDNA分子を含む、実施形態129に記載の方法。
【0204】
131.前記試料が細胞を含む、実施形態129に記載の方法。
132.細胞が真核細胞である、実施形態131に記載の方法。
133.標的DNA配列を含むDNA分子が、RNAを含む試料中に存在するRNA鋳型分子の逆転写によって生成される、実施形態129に記載の方法。
134.RNA鋳型分子がRNAウイルスである、実施形態133に記載の方法。
135.RNAウイルスがコロナウイルスである、実施形態134に記載の方法。
【0205】
136.コロナウイルスがコウモリSARS様コロナウイルス、SARS-CoV、又はSARS-CoV-2である、実施形態135に記載の方法。
137.RNAを含む試料が細胞を含む試料に由来する、実施形態133~136のいずれか1つに記載の方法。
138.検出ssDNAがフルオロフォア/クエンチャー対を含む、実施形態129~137のいずれか1つに記載の方法。
139.検出ssDNAが蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対を含む、実施形態129~137のいずれか1つに記載の方法。
140.前記ガイドRNAが、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、又は273と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含む、実施形態129~139のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
141.前記ガイドRNAがtracrRNAを含む、実施形態129~140のいずれか1つに記載の方法。
142.前記tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、又は274に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態141に記載の方法。
143.前記ガイドRNAが単一のガイドRNAである、実施形態141又は142に記載の方法。
144.前記ガイドRNAが二重ガイドRNAである、実施形態141又は142記載の方法。
145.前記方法が、工程aの接触の前又はそれと共に、試料中の核酸を増幅することをさらに含む、実施形態129~144のいずれか1つの記載の方法。
【0207】
146.増幅が、RNA分子の逆転写によって生成されるDNA分子である、実施形態145に記載の方法。
147.試料中のDNA分子の標的DNA配列を検出するためのキットであって、該キットは、
a)配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、又は137と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、前記RGNポリペプチドは、前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができるガイドRNAに結合した場合、RNA誘導配列特異的な方法でDNA分子の前記標的DNA配列に結合することができるRGNポリペプチド;
b)前記ガイドRNA;及び
c)ガイドRNAとハイブリダイズしない検出一本鎖DNA(ssDNA)
を含む上記キット。
148.前記検出ssDNAがフルオロフォア/クエンチャー対を含む、実施形態147に記載のキット。
149.前記検出ssDNAが蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対を含む、実施形態147に記載のキット。
150.前記ガイドRNAが、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、又は273に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含む、実施形態147~149のいずれか1つに記載のキット。
【0208】
151.前記ガイドRNAがtracrRNAを含む、実施形態147~150のいずれか1つに記載のキット。
152.前記tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、又は274に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態151のキット。
153.前記ガイドRNAが単一のガイドRNAである、実施形態151又は152に記載のキット。
154.前記ガイドRNAが二重ガイドRNAである、実施形態151又は152に記載のキット。
155.一本鎖DNAを切断する方法であって、前記方法は、標的DNA配列を含むDNA分子と複数の非標的ssDNAを含む核酸集団を
a)配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、117、又は137と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むRNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドであって、前記RGNポリペプチドは、前記標的DNA配列にハイブリダイズすることができるガイドRNAに結合した場合、RNA誘導配列特異的な方法で前記標的DNA配列に結合することができるRGNポリペプチド;及び
b)前記ガイドRNA
と接触させることを含み、RGNポリペプチドは、該複数の非標的ssDNAを切断する上記方法。
【0209】
156.核酸の前記集団が細胞溶解物内にある、実施形態155に記載の方法。
157.前記ガイドRNAが、配列番号2、10、17、24、31、39、47、55、62、70、76、83、90、96、104、111、118、又は273に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPR反復配列を含む、実施形態155又は156に記載の方法。
158.前記ガイドRNAがtracrRNAを含む、実施形態155~157のいずれか1つに記載の方法。
159.前記tracrRNAが、配列番号3、11、18、25、32、40、48、56、63、71、77、84、91、97、105、112、119、又は274に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態158に記載の方法。
160.前記ガイドRNAが単一のガイドRNAである、実施形態158又は159に記載の方法。
【0210】
161.前記ガイドRNAが二重ガイドRNAである、実施形態158又は159に記載の方法。
162.CRISPR RNA(crRNA)をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、前記crRNAがスペーサー配列及びCRISPR反復配列を含み、前記CRISPR反復配列が配列番号240と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
a)前記crRNA;及び任意選択的に
b)crRNAの前記CRISPR反復配列とハイブリダイズすることができるトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)
を含むガイドRNAは、RNAガイドヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドに結合した場合に、前記crRNAのスペーサー配列を介して配列特異的にDNA分子の標的DNA配列にハイブリダイズすることができ、
crRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドに異種性のプロモーターに機能的に連結されている核酸分子。
163.実施形態162に記載の核酸分子を含むベクター。
164.前記ベクターが、前記tracrRNAをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態163に記載のベクター。
165.前記tracrRNAが配列番号241と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態164に記載のベクター。
【0211】
166.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに作動可能に連結され、単一のガイドRNAとしてコードされる、実施形態164又は165に記載のベクター。
167.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、別々のプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態164又は165に記載のベクター。
168.前記ベクターが、前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記RGNポリペプチドが、配列番号235と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態163~167のいずれか1つに記載のベクター。
169.配列番号241と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、トランス活性化CRISPRRNA(tracrRNA)をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、
a)前記tracrRNA;及び
b)スペーサー配列及びCRISPR反復配列を含むcrRNAであって、前記tracrRNAが、前記crRNAの前記CRISPR反復配列とハイブリダイズすることができるcrRNA
を含むガイドRNAは、RNAガイドヌクレアーゼ(RGN)ポリペプチドに結合した場合に、前記crRNAのスペーサー配列を介して配列特異的にDNA分子の標的DNA配列にハイブリダイズすることができ、tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドに異種性のプロモーターに機能的に連結されている上記核酸分子。
170.実施形態169に記載の核酸分子を含むベクター。
【0212】
171.前記ベクターが、前記crRNAをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態170に記載のベクター。
172.前記crRNAのCRISPR反復配列が、配列番号240と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、実施形態171に記載のベクター。
173.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに操作可能に連結され、単一のガイドRNAとしてコードされる、実施形態171又は172に記載のベクター。
174.前記crRNAをコードする前記ポリヌクレオチド及び前記tracrRNAをコードする前記ポリヌクレオチドが、別々のプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態171又は172に記載のベクター。
175.前記ベクターが、前記RGNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記RGNポリペプチドが、配列番号235と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態170~174のいずれか1つに記載のベクター。
【0213】
以下の実施例は、限定としてではなく、例示として提供される。
【実施例
【0214】
実施例1.RNA誘導ヌクレアーゼの同定
17種類のCRISPR関連RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)が同定され、下記の表1に記載されている。表1には、各RGNの名称、そのアミノ酸配列、由来、プロセシングされたcrRNA及びtracrRNA配列が示されている(同定方法については実施例2を参照されたい)。表1は、さらに、一般的な単一ガイドRNA(sgRNA)配列を提供し、ここで、ポリ-Nは、sgRNAの核酸標的配列を決定するスペーサー配列の位置を示す。RGNシステムAPG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG04293.1、及びAPG01308.1は、UNAのtracrRNAのヘアピンステムの基部に保存配列を有していた(配列番号8)。APG05712.1では、同じ位置にある配列はCNANNG(配列番号37)である。APG01658.1では、同じ位置にある配列はCNANU(配列番号45)である。RGNシステムAPG06498.1及びAPG06877.1については、tracrRNAのヘアピンステムの基部における保存配列はUNANGである(配列番号53)。APG09882.1及びAPG06646.1では、同じ位置にある配列はUNANC(配列番号68)である。APG09053.1では、同じ位置にある配列はCNANU(配列番号102)である。
【0215】
【表1】
【0216】
実施例2:ガイドRNAの同定とsgRNAの構築
研究中のRNA誘導ヌクレアーゼ系を自然に発現する細菌の培養物を、log中期(OD600~0.600)まで増殖させ、ペレット化し、フラッシュ凍結した。mirVANA miRNA単離キット(Life Technologies,Carlsbad, CA)を用いてペレットからRNAを単離し、NEBNext Small RNA Library Prepキット(NEB,Beverly,MA)をライブラリー準備液を6%ポリアクリルアミドゲル上で分画し、200nt未満のRNA種を捕獲し、それぞれcrRNA及びtracrRNAを検出した。サービスプロバイダー(MoGene,St.Louis,MO)により、Next Seq 500(High Output kit)上で深部配列決定(75bp対末端)を行った読み取りは、Cutadaptを用いて品質をトリミングし、Bowtie2を用いて参照ゲノムにマッピングした。crRNA及びtracrRNA転写産物を検出するために、カスタムRNAseqパイプラインをpythonで作成した。プロセシングされたcrRNA境界は、天然反復スペーサーアレイの配列被覆率によって決定した。tracrRNAの抗反復部分は、許容BLASTnパラメーターを用いて同定した。RNA塩基配列の深さから、アンチ反復を含む転写産物を同定することにより、プロセシングされたtracrRNAの境界が確認された。RNAフォールディングソフトウェアNUPACKによる二次構造予測を用いてRNAの手動硬化を行った。sgRNAカセットは、DNA合成により調製され、一般に以下のように設計された:(5’->3’):3’末端でcrRNAのプロセシングされた反復部分に作動可能に連結され、4bpの非相補的リンカー(AAAG;配列番号123)に作動可能に連結され、その3’末端でプロセシングされたtracrRNAに作動可能に連結された、20-30bpスペー他の4bpの非相補的リンカーも使用することができる。
【0217】
インビトロアッセイのために、sgRNAは、GeneArt(商標)精密gRNA合成キット(ThermoFisher)を用いて、sgRNAカセットのインビトロ転写により合成された。それぞれのRGNポリペプチドのプロセシングされたcrRNA及びtracrRNA配列を同定し、表1に示す。PAMライブラリー1及び2のために構築されたsgRNAについては、下記を参照されたい。
【0218】
実施例3:各RGNのPAM要件の決定
各RGNに対するPAM必要条件は、本質的にKleinstiver et al. (2015) Nature 523:481-485 and Zetsche et al. (2015) Cell 163:759-771に適合させたPAM除去アッセイを用いて決定した。簡単に述べると、2つのプラスミドライブラリー(L1及びL2)をpUC18バックボーン(ampR)中で作製し、各々が8つのランダムヌクレオチド(すなわち、PAM領域)に隣接する異なる30bpプロトスペーサー(標的)配列を含有した。各RGNについてのライブラリー1及びライブラリー2の標的配列及びフランキングPAM領域を表2に示す。
【0219】
ライブラリーを、L1又はL2のプロトスペーサーに対応するスペーサー配列を含有する同族sgRNAと共に、本発明のRGN(大腸菌に最適化されたコドン)を含有するpRSF-1b発現ベクターを保持するE.coli BL21(DE3)細胞に別々にエレクトロポレーションした。形質転換反応には>10CFUを得るのに十分なライブラリープラスミドを用いた。pRSF-1b骨格中のRGN及びsgRNAの両方は、T7プロモーターの制御下にあった。形質転換反応を1時間回収した後、カルベニシリン及びカナマイシンを含有するLB培地に希釈し、一晩増殖させた。翌日、混合物を自己誘導性Overnight Express(商標)Instant TB Medium(Millipore Sigma)に希釈し、RGN及びsgRNAの発現を可能にし、さらに4時間又は20時間増殖させた後、細胞を遠心分離し、プラスミドDNAをMini-prepキット(Qiagen, German town,¥32適切なsgRNAの存在下では、RGNによって認識されるPAMを含むプラスミドが切断され、その結果、それらが集団から除去される。RGNでは認識できない、あるいは適切なsgRNAを含まない細菌に形質転換されたPAMを含むプラスミドは、生存して複製する。未切断プラスミドのPAM及びプロトスペーサー領域をPCR増幅し、公開プロトコール(16s-メタゲノムライブラリープレップガイド15044223B、Illumina、San Diego、CA)に従って配列決定のために調製した。サービスプロバイダー(MoGene,St.Louis,MO)により、MiSeq(Illumina)上でディープシークエンシング(75bpシングルエンドリード)を行った。典型的には、1アンプリコン当たり1~4Mの読み取り値が得られた。PAM領域を抽出し、計数し、各試料の全読み取り値に正規化した。プラスミド切断に至るPAMは、対照(すなわち、ライブラリーがRGNを含むが適切なsgRNAを欠く大腸菌に形質転換された場合)と比較して、過小表示されることによって同定された。新規なRGNに対するPAM要求を表すために、問題の領域の全てのシークエンスに対する空乏比(対照における試料/周波数における周波数)を-logベース2変換による富化値に変換した。充分なPAMは、濃縮値>2.3(これは、空乏比<~0.2に相当する)を有するものと定義した。両方のライブラリーでこのしきい値を超えるPAMが収集され、ウェブロゴを生成するために使用され、例えば、「ウェブロゴ」として知られるインターネット上のウェブベースのサービスを使用して生成され得る。PAM配列は、最高濃縮PAMに一貫したパターンがある場合に同定され、報告された。各RGNに対するコンセンサスPAM(濃縮係数(EF)>2.3)を表2に示す。PAM方向も表2に示す。本出願の他の箇所に記載されているように、APG06646.1及びAPG04293.1ヌクレアーゼは、PAM相互作用ドメインを有さない。表2の結果は、それらが2~5ヌクレオチドである典型的なPAM要求性をもたないことを示している。APG06646.1及びAPG04293.1は、切断に必要な一塩基を有することが示された。
【0220】
【表2】
【0221】
実施例4:ヌクレアーゼ活性を高めるためにガイドRNAを操作する
4.1 RGN APG09748及びAPG09106.1
RGNの場合、APG09748(配列番号137、及びAPG09748のcrRNA反復配列、tracrRNA配列、及び一般的なsgRNA配列は、それぞれ、配列番号273、274、及び275として記載され;全ての配列は、国際出願第PCT/US2019/068079(参照により本明細書に組み込まれる)に記載され、及びAPG09106.1は、非常に高い配列同一性を有し、同じPAMを有するが、RNAフォールディング予測を用いて、ヌクレアーゼ活性を最適化するように改変することができるガイドRNA中の領域を決定した。反復:アンチ反復領域におけるcrRNA:tracrRNA塩基対の安定性は、反復:アンチ領域の短縮、G-C塩基対の付加、及びG-Uゆらぎ対の除去によって増加した。「最適化された」ガイド変異体を試験し、RGN APG09748を用いてインビトロ切断アッセイで野生型gRNAと比較した。
【0222】
RNP形成のためのRGNを作製するために、C末端His6(配列番号276)又はHis10(配列番号277)タグに融合したRGNを含む発現プラスミドを構築し、大腸菌のBL21(DE3)株に形質転換した。発現は、50μg/mLカナマイシンを補充したMagic Media(Thermo Fisher)を用いて行った。溶解及び清澄化後、タンパク質を固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、Qubitタンパク質定量キット(Thermo Fisher)を用いて、又は計算した減光係数を用いてUV-visにより定量した。
【0223】
精製したRGNをsgRNAと約2:1の比で室温で20分間インキュベートすることにより、リボ核タンパク質(RNP)を調製した。インビトロ切断反応のために、RNPを、好ましいPAM配列に隣接する標的プロトスペーサーを含有するプラスミド又は直鎖状dsDNAと共に室温で>30分間インキュベートした。TRAC座内の2つの標的核酸配列、TRAC11(配列番号278)及びTRAC14(配列番号279)を試験した。gRNAは、正しい標的核酸配列(例えば、gRNAはTRAC11スペーサー配列を有し、アッセイされた標的はTRAC11である)と、正しい標的核酸配列(例えば、gRNAはTRAC11スペーサー配列を有し、アッセイされた標的はTRAC14である)との両方の標的活性についてアッセイされた。プラスミド切断によって決定される活性は、アガロースゲル電気泳動によって評価される。結果を表3に示す。ガイド変種は、配列番号280~283として列挙され、スペーサー配列を備える。これらのガイド配列は、AAAA(配列番号284)の非相補的ヌクレオチドリンカーを使用する。反復:アンチ反復結合が増加した最適化gRNA(配列番号285;ポリ-Nはスペーサー配列の位置を示す)は、最適化されたtracrRNA(配列番号286)及び最適化されたcrRNA(配列番号287)成分を有する。最適化されたガイド変異体は、野生型ガイドRNAを用いて以前に切断が検出されなかった2つの遺伝子座を切断することができた。反復:アンチ反復領域におけるハイブリダイゼーションの最適化により、APG09748のインビトロ切断は、TRAC遺伝子座における複数の標的について、0%切断から100%切断に増加した。
【0224】
【表3】
【0225】
さらに最適化されたgRNA変異体を設計し、アッセイした。さらに、スペーサー配列の異なる長さも試験し、スペーサー長がどのようにして切断効率に影響するかを決定した。スペーサー配列の外側のsgRNAは、このアッセイにおいて「バックボーン」と呼ばれる。表4において、これらは「WT」(配列番号288、野生型配列)、及び3つの最適化されたsgRNA:V1(配列番号289)、V2(配列番号290)及びV3(配列番号291)として示される。これらの配列はすべて、スペーサー配列の位置を示すためにポリ-Nを有する。ガイドはインビトロ転写(IVT)によりsgRNAとして発現した。野生型sgRNA骨格と比較して、V1は87.8%同一であり、V2は92.4%同一であり、V3は85.5%同一である。二重ガイドRNAを表すが、他の点では野生型及び上述した最適化されたsgRNAに類似した合成気管rRNA:crRNA二本鎖(「合成」)も作製し、試験した。
【0226】
このセットのアッセイには、RGN APG09106.1を使用した;さもなければ、インビトロ切断反応の方法は、上述したものと同様であった。標的核酸配列は、標的1(配列番号292)及び標的2(配列番号293)であった。結果を表4に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
4.2 RGN APG07433.1
RNAフォールディング予測を用いて、APG07433.1(配列番号235として記載され、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願2019/0367949及びWO2019/236566に記載されている)のためのガイドRNA中の領域を決定した。それは、ヌクレアーゼ活性を最適化し、ウイルスベクターへのパッケージングのためのガイドRNAを短くするように改変することができる。変化を起こす可能性のある部位として、crRNAとtracrRNA領域とtracrRNAの末端ヘアピンとの間の反復:アンチ反復対の対合が同定された。反復:アンチ反復領域は、7(APG07433.1-7bp、配列番号238及び239)、13(APG07433.1-13bp、配列番号250及び251)、及び15塩基対の長さ(APG07433.1-15bp、配列番号242及び243)に切断された。さらに、反復:アンチ反復領域の配列を変化させ、対合を11塩基対に長さ(APG07433.1-11bp-syn、配列番号240及び241)に減少させ、野生型ガイドと比較してより小さなRNAバルジを導入する第4の変異体を試験した。天然配列の40ヌクレオチド(APG07433.1-40nt THP、配列番号254及び255)及び42ヌクレオチド(APG07433.1-42nt THP、配列番号244及び245)への長さへの還元を含む、tracrRNA中の末端ヘアピンに対しても切断を行った。これらを35ヌクレオチド(APG07433.1-35ntTHP-syn、配列番号:248及び249)及び39ヌクレオチド(APG07433.1-39ntTHP-syn、配列番号:246及び247)にも短縮するように改変ステム-ループを設計した。1つのガイドは、13塩基対の短縮反復:アンチ反復領域と42ヌクレオチドの短縮末端ヘアピンを組み合わせた(APG07433.1-13bp42ntTH、配列番号252及び253)。スペーサー長が卵割に及ぼす影響も試験した。野生型ガイドRNA主鎖上のスペーサー長25(APG07433.1-天然[25]、配列番号236及び237;スペーサー配列は配列番号271として示される)及び18(APG07433.1-天然[18]、配列番号256及び257;スペーサー配列は配列番号272として示される)のヌクレオチドも試験した。
【0229】
アニーリングバッファー(Synthego)中に20μMのcrRNA及び10μMのtracrRNAを含む溶液を調製し、次に78℃に10分間加熱し、次に37℃で30分間加熱することにより、crRNA及びtracrRNAをアニーリングすることにより、以下の二重ガイドRNAを調製した。RNPは、精製APG07433.1タンパク質と共に0.5μMでインキュベートし、二重ガイドRNAをリン酸緩衝生理食塩水中1μMで20分間インキュベートすることにより形成した。この実験で用いたガイドRNAを表5に示す。
【0230】
【表5】
【0231】
これらのRNPを、FAM及びCy3標識プライマーを用いた増幅によって生成された適切な標的配列(配列番号260)を含むPCR生成物とインキュベートして、切断生成物の正確かつ高感度の定量を容易にした。反応物は、上記のようにして製造された250nMのRNP、及び1×Cutsmart buffer(New England Biolabs)中の150nMのFAM及びCy3標識PCR産物を含有した。反応を37℃で15分間進行させ、RNase Aを0.1mg/mLに、EDTAを45mMに添加することにより停止させた。急冷した反応物を50℃で30分間及び95℃で5分間加熱した。 次に、試料を、5%TBEゲル(Bio-rad)上での天然アクリルアミドゲル電気泳動を用いて分析した。 これらは、ChemiDoc MPイメージャー上で撮像された。 2つの色素の各々を定量に使用することができ、各試料を2回実施した。この実験の結果を表6に示す。
【0232】
【表6】
【0233】
この分析は、天然バックボーンがほとんどの短縮された変異体、及び短縮された標的配列(APG07433.1-天然[18]、配列番号256及び257)を含む変異体を上回ることを実証する。短縮された骨格配列のうち、最も高いレベルの切断を有するものは、25ntのターゲティング配列(スペーサー;配列番号271)、crRNAについての配列番号240及びtracrRNAとしての配列番号241を含むAPG07433.1-11bp-synと呼ばれる配列である。このガイドバリエーションには、ステムに操作された膨隆部を有する改変反復:アンチ反復ステムループが含まれていた。
【0234】
実施例5:哺乳動物細胞における遺伝子編集活性の実証
RGN発現カセットを作製し、哺乳動物発現のためのベクターに導入した。RGN APG09748、APG09106.1、APG05712.1、APG01658.1、APG05733.1、APG06498.1、APG06646.1、APG09882.1、APG01405.1、及びAPG01308.1は、それぞれ哺乳動物の発現に対してコドン最適化され(配列番号304、305、及び411-418)、ならびに発現されたタンパク質は、N末端でSV40核局在化配列(NLS;配列番号125)及び3×FLAGタグ(配列番号126)、及びC末端でヌクレオプラズミンNLS配列(配列番号127)に作動可能に融合した。NLS配列の2コピーを用い、タンデムで操作可能に融合させた。各発現カセットをサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(配列番号306)の制御下に置いた。CMV転写エンハンサー(配列番号307)もまた、CMVプロモーターを含む構築物に含まれ得ることが当技術分野で公知である。ヒトRNAポリメラーゼIII U6プロモーター(配列番号308)の制御下で各々単一のgRNAをコードするガイドRNA発現構築物を作製し、発現ベクターに導入した。表7に示すように、RelA、AurkB、GAPDH、LINC01509、HBB、CFTR、HPRT1、TRA、EMX1、及びVEGFAを含む選択された遺伝子の標的領域を誘導する。RNA誘導ヌクレアーゼAPG09106.1については、特異的残基を突然変異させてタンパク質のヌクレアーゼ活性を増加させ、具体的にはAPG09106のT849残基をアルギニンに突然変異させた(配列番号309)。この点突然変異は哺乳動物細胞の編集率を増加させた。
【0235】
上記の構築物を哺乳動物細胞に導入した。トランスフェクションの1日前に、1x10のHEK293T細胞(Sigma)を、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+10%(vol/vol)ウシ胎児血清(Gibco)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)中の24ウェル皿に平板培養した。細胞が50~60%コンフルエントであった翌日、製造業者の指示に従って、ウェル当たり1.5μLのリポフェクタミン3000(Thermo Scientific)を用いて、500ngのRGN発現プラスミド+500ngの単一gRNA発現プラスミドを同時トランスフェクトした。48時間の増殖後、全ゲノムDNAを、製造業者の指示に従ってゲノムDNA単離キット(Machery-Nagel)を用いて回収した。
【0236】
次に、全ゲノムDNAを分析して、標的遺伝子における編集の速度を決定した。PCR増幅及びその後の増幅されたゲノム標的部位の分析に使用するためにオリゴヌクレオチドを作製した(配列番号310及び311)。すべてのPCR反応は、0.5μMの各プライマーを含む20μLの反応において、10μLの2X Master Mix Phusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermo Scientific)を用いて実施した。各標的遺伝子を含む大きなゲノム領域を、まず、PCR#1プライマー(配列番号310及び311)を用いて、以下のプログラムを用いて増幅した:98℃、1分;[98℃、10秒;62℃、15秒;72℃、5分];72℃、5分;12℃、永続。
【0237】
次に、このPCR反応の1マイクロリットルを、各ガイドに特異的なプライマー(PCR#2プライマー;配列番号:365~370)を用いて、98℃、1分;[98℃、10秒;67℃、15秒;72℃、30秒]の35サイクル;72℃、5分;12℃のプログラムを用いてさらに増幅した。PCR#2のためのプライマーは、Illumina配列決定のためのNextera Read 1及びRead 2トランスポザーゼアダプターオーバーハング配列を含む。
【0238】
2回目のPCR増幅後、製造業者の指示に従ってPCRクリーンアップキット(Zymo)を用いてDNAを洗浄し、水中で溶出させた。200~500ngの精製PCR#2生成物を20μLの反応中で2μLの10X NEB緩衝液2及び水と組み合わせ、次のプログラムを用いてアニールしてヘテロ二本鎖DNAを形成した:95℃、5分;95~85℃、2℃/秒の速度で冷却し;85~25℃、0.1℃/秒の速度で冷却し;12℃、永久に。アニーリング後、5μLのDNAを無酵素対照として除去し、1μLのT7エンドヌクレアーゼI(NEB)を添加し、反応物を37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、5×FlashGelローディング色素(Lonza)を添加し、5μLの各反応及び対照をゲル電気泳動を用いて2.2%アガロースFlashGel(Lonza)で分析した。ゲルの可視化後、非相同末端結合(NHEJ)のパーセンテージを、以下の式を用いて決定した:NHEJ事象%=100x[1-(1-画分切断)(1/2)]、ここで(切断された画分)は、(消化生成物の密度)/(消化生成物の密度+未消化の親バンド)として定義される。
【0239】
いくつかの試料については、SURVEYOR(登録商標)を用いて、哺乳動物細胞における発現後の結果を分析した。ゲノムDNA抽出の前に、トランスフェクション後72時間、細胞を37℃でインキュベートした。ゲノムDNAは、製造業者のプロトコールに従って、QuickExtract DNA Extraction Solution(Epicentre)を用いて抽出した。RGN標的部位に隣接するゲノム領域をPCR増幅し、製造業者のプロトコールに従ってQiaQuick Spin Column(Qiagen)を用いて生成物を精製した。精製されたPCR産物の総量200~500ngを、1μlの10×Taq DNAポリメラーゼPCR緩衝液(酵素)及び超純水と混合し、最終容量10μlにし、ヘテロ二本鎖形成を可能にするための再アニーリング工程に供した:95℃、10分間、95℃~85℃、-2℃/s、85℃~25℃、-0.25℃/s、及び25℃で1分間の保持。
【0240】
再アニーリング後、製品はメーカーの推奨プロトコールに従ってSURVEYOR(登録商標)ヌクレアーゼ及びSURVEYOR(登録商標)エンハンサーS(Integrated DNA Technologies)で処理し、4~20%ノベックスTBEポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)で分析した。ゲルをSYBR Gold DNA染色(Life Technologies)で10分間染色し、ゲルDocゲルイメージングシステム(Bio-rad)でイメージングした。定量は、相対バンド強度に基づいて行った。インデルパーセンテージは、式、100×(1-(b+c)/(a+b+c)))1/2によって決定された。ここで、aは未消化PCR産物の積分強度であり、b及びcは各切断生成物の積分強度である。
【0241】
さらに、Illuminaオーバーハング配列を含むPCR#2からの産物は、Illumina 16S Metagenomic Sequencing Libraryプロトコールに従ってライブラリー調製を行った。サービスプロバイダ(MOGene)によりIllumina Mi-Seqプラットフォーム上でディープシークエンシングを行った。典型的には、250bpのペア末端読み取り(2×100,000読み取り)の200,000が、アンプリコン当たりに生成される。読み取り値は、編集率を計算するためにCRISPResso(Pinello, et al. 2016 Nature Biotech, 34:695-697)を用いて分析した。アウトプットアラインメントは、組換え部位におけるミクロ相同部位を同定するだけでなく、挿入部位及び欠失部位を確認するために手で硬化させた。各試料の総合的な編集率、削除率、挿入率を表7に示す。実験はすべてヒト細胞で行った。「標的」は、遺伝子標的内の標的配列である。各標的配列について、ガイドRNAは、使用されるRGNに応じて、相補的RNAスペーサー配列及び適切なsgRNAを含んでいた。ガイドRNAによる実験の選択された分解を表8.1及び8.2に示す。
【0242】
【表7-1】
【0243】
【表7-2】
【0244】
表8.1及び表8.2に、それぞれのガイドの具体的な挿入及び削除を示す。これらの表では、標的配列は太字の大文字で識別される。8merのPAM領域には二重の下線が付いており、主な認識ヌクレオチドは太字で示してある。挿入は小文字で識別される。削除はダッシュ(---)で表示される。INDEL位置は、標的配列のPAM近位端から計算され、端は位置0である。位置がエッジのターゲット側にある場合は正(+)、エッジのPAM側にある場合は負(-)である。
【0245】
【表8】
【0246】
【表9】
【0247】
実施例6:植物細胞における遺伝子編集活性の実証
本発明のRGNのRNA誘導ヌクレアーゼ活性は、Li, et al., 2013 (Nat. Biotech. 31:688-691)から改変されたプロトコールを用いて植物細胞において実証される。簡単に言えば、本発明のRGNの植物コドン最適化バージョン(配列番号1、9、16、23、30、38、46、54、61、69、75、82、89、95、103、110、又は117)は、N末端SV40核局在化シグナルをコードする核酸配列に作動可能に連結されて、一過性形質転換ベクターの強力な構成的35Sプロモーターの後ろにクローニングされる。適切なPAM配列に隣接する植物PDS遺伝子の1つ以上の部位を標的とするsgRNAを、第2の一過性発現ベクター中の植物U6プロモーターの後ろにクローニングする。発現ベクターをPEG媒介形質転換を用いて、Nicotiana benthamiana葉肉プロトプラストに導入した。形質転換されたプロトプラストを暗所で36時間までインキュベートする。ゲノムDNAはDNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いてプロトプラストから単離した。RGN標的部位に隣接するゲノム領域をPCR増幅し、製造業者のプロトコールに従ってQiaQuick Spin Column(Qiagen)を用いて生成物を精製する。精製されたPCR産物の総量200~500ngを、1μlの10×Taq DNAポリメラーゼPCR緩衝液(酵素)及び超純水と混合し、最終容量10μlにし、ヘテロ二本鎖形成を可能にするための再アニーリング工程に供し:95℃、10分間、95℃~85℃、-2℃/sでの傾斜、85℃~25℃、-0.25℃/sでの傾斜、及び25℃で1分間保持。
【0248】
再アニーリング後、製品は、製造業者の推奨プロトコールに従って、SURVEYORヌクレアーゼ及びSURVEYORエンハンサーS(Integrated DNA Technologies)で処理され、4~20%のNovex TBEポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)ゲルをSYBR Gold DNA染色(Life Technologies)で10分間染色し、ゲルドックゲルイメージングシステム(Bio-rad)でイメージングする。定量は、相対的なバンド強度に基づく。インデルパーセンテージは、式:100×(1-(1-(b+c)/(a+b+c))1/2)によって決定される。ここで、aは未消化PCR産物の積分強度であり、b及びcは各切断生成物の積分強度である。
【0249】
実施例7:疾患標的の同定
臨床変異体のデータベースは、NCBI ClinVarデータベースから入手した。データベースは、NCBI ClinVarウェブサイトで世界中のウェブサイトから入手可能である。このリストから病原性一塩基多型(SNP)を同定した。ゲノム遺伝子座情報を用いて、各SNPが重なり合った領域及び周囲の領域におけるCRISPR標的を同定した。原因突然変異(「Casl Mut.」)を標的とするためにAPG09748又はAPG09106.1を含むRGNシステムと組み合わせて塩基編集を用いて補正することができるSNPの選択を表9.1に示す。原因突然変異(「Casl Mut.」)を標的とするためにAPG06646.1又はAPG01658.1を含むRGNシステムと組み合わせて塩基編集を用いて補正することができるSNPの選択を表9.2に示す。表9.1と表9.2の両方で、各疾患のエイリアスは1つだけリストされている。「RS#」は、NCBIウェブサイトのSNPデータベースを介してRS受付番号に対応する。染色体受入番号は、NCBIのウェブサイトから見つかった受入参考情報を提供する。表9.1及び9.2はまた、各疾患について、RGNシステムAPG09748又はAPG09106.1(表9.1)、又はAPG06646.1又はAPG01658.1(表9.2)に適したゲノム標的配列情報を提供する。標的配列情報はまた、本発明の対応するRGNのために必要なsgRNAの産生のためのプロトスペーサー配列を提供する。
【0250】
【表10-1】
【0251】
【表10-2】
【0252】
【表10-3】
【0253】
【表11-1】
【0254】
【表11-2】
【0255】
【表11-3】
【0256】
【表11-4】
【0257】
【表11-5】
【0258】
【表11-6】
【0259】
【表11-7】
【0260】
実施例8:Friedreich運動失調の原因となる標的突然変異
Friedreich運動失調(FRDA)を引き起こす3塩基反復配列の拡大は、FRDA不安定領域と呼ばれるFXN遺伝子内の特定の遺伝子座で起こる。RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)は、FRDA患者細胞における不安定領域を切除するために使用され得る。このアプローチは、1)ヒトゲノム中の対立遺伝子を標的とするようにプログラムされ得るRGN及びガイドRNA配列;及び2)RGN及びガイド配列の送達アプローチを必要とする。ゲノム編集に使用される多くのヌクレアーゼ、例えばS.pyogenes由来の一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼ(SpCas9)は、大きすぎて、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにパッケージすることができない。このため、SpCas9を使用した実行可能なアプローチは考えにくい。
【0261】
APG09748、APG09106.1、及びAPG06646.1のような本発明のコンパクトRNA誘導ヌクレアーゼは、FRDA不安定領域の切除に特異的に適している。各RGNは、FRDA不安定領域の近傍にあるPAM要件を有する。さらに、これらのRGNの各々は、ガイドRNAと共にAAVベクターにパッケージングされ得る。2つのガイドRNAを詰め込むには第2のベクターが必要であろうが、このアプローチは、SpCas9のようなより大きなヌクレアーゼで必要とされるものと比較して有利である。SpCas9は、2つのベクター間でタンパク質配列を分割する必要がある。
【0262】
表10は、APG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1をFRDA不安定領域の5’及び3’フランクに標的化するのに適したゲノム標的配列の位置、ならびにゲノム標的に対するsgRNAの配列を示す。いったん遺伝子座に入ると、RGNはFA不安定領域を切り出す。領域の切除は、遺伝子座のIlluminaシークエンシングによって確認することができる。
【0263】
【表12】
【0264】
実施例9:鎌状赤血球症の原因となる突然変異を標的とする
BCL11Aエンハンサー領域(配列番号220)内の標的配列は、鎌状赤血球症の症状を治癒又は軽減するために胎児ヘモグロビン(HbF)を増加させるメカニズムを提供し得る。例えば、ゲノムワイド関連研究では、HbFレベルの上昇と関連するBCL11Aにおける一連の遺伝的変異が同定されている。これらの変異は、段階特異的な系統制限エンハンサー領域として機能するBCL11Aの非コード領域に見出されるSNPの集合である。さらなる研究により、このBCL11AエンハンサーがBCL11A発現のために赤血球細胞において必要であることが明らかになった(参照により本明細書に援用されるBauer et al, (2013) Science 343:253-257)。エンハンサー領域はBCL11A遺伝子のイントロン2内に見出され、イントロン2におけるDNaseI過敏症の3領域(しばしば調節可能性と関連するクロマチン状態を示す)が同定された。これら3つの領域は、BCL11Aの転写開始部位からのキロベースでの距離に従って、「+62」、「+58」及び「+55」と同定された。これらのエンハンサー領域は、約350(+55);550(+58);及び350(+62)ヌクレオチド長である(Bauerら、2013)。
【0265】
実施例9.1:優先RGNシステムの特定
ここでは、成人ヘモグロビンのβ-グロビン産生に関与する遺伝子であるHBB遺伝子座内の結合部位へのBCL11Aの結合を破壊するRGN系を用いたβ-ヘモグロビン異常症の潜在的治療について述べる。このアプローチは、哺乳動物細胞においてより効率的であるNHEJを使用する。さらに、このアプローチは、インビボ送達のために単一のAAVベクターにパッケージングされ得る十分に小さいサイズのヌクレアーゼを使用する。
【0266】
ヒトBCL11Aエンハンサー領域(配列番号220)におけるGATA1エンハンサーモチーフは、成人ヒト赤血球におけるHbFの同時再発現を伴うBCL11A発現を減少させるために、RNA誘導ヌクレアーゼ(RGN)を用いる破壊の理想的な標的である(Wu et al. (2019) Nat Med 387:2554)。APG09748又はAPG09106.1と適合するいくつかのPAM配列は、このGATA1部位を取り囲む遺伝子座において容易に明らかである。これらのヌクレアーゼは、5’-DTTN-3’(配列番号60)のPAM配列を有し、サイズがコンパクトであり、単一のAAV又はアデノウイルスベクター中の適切なガイドRNAと共にそれらの送達を可能にする。APG06646.1は、そのサイズに加えて、最小限のPAM要件(配列番号109)を有し、このアプローチに適している。この送達アプローチは、造血幹細胞へのアクセス、及び十分に確立された安全性プロファイル及び製造技術など、他のものと比較して複数の利点をもたらす。
【0267】
S.pyogenes(SpyCas9)由来の一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、5’-NGG-3’(配列番号101)のPAM配列を必要とし、それらのいくつかはGATA1モチーフ近傍に存在する。しかしながら、SpyCas9のサイズは、単一のAAV又はアデノウイルスベクターへのパッケージングを妨げ、従って、このアプローチの上述の利点を忘れる。デュアルデリバリー戦略が採用され得るが、それは、著しい製造の複雑さ及びコストを追加する。さらに、二重ウイルスベクター送達は、所与の細胞での編集が成功するために、両方のベクターによる感染を必要とするので、遺伝子補正の効率を有意に低下させる。
【0268】
ヒトコドン最適化APG09748(配列番号409)、APG09106.1(配列番号410)、又はAPG06646.1(配列番号415)をコードする発現カセットが、実施例5に記載されたものと同様に産生される。また、RNAGNAPG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1のためのガイドRNAを発現する発現カセットも産生される。これらのガイドRNAは、1)BCL11Aエンハンサー座(標的配列)内の非コード又はコードDNA鎖のいずれかに相補的なプロトスペーサー配列、及び2)ガイドRNAとRGNとの会合に必要なRNA配列を含む。各RGNによる標的化のためのいくつかの潜在的PAM配列は、BCL11A GATA1エンハンサーモチーフを取り囲むので、強力な切断及びNHEJを介したBCL11A GATA1エンハンサー配列の破壊を生じる最良のプロトスペーサー配列を決定するために、いくつかの潜在的ガイドRNA構築物が生成される。表11の標的ゲノム配列は、表11に示すsgRNAを用いて評価される。
【0269】
【表13】
【0270】
APG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1がBCL11Aエンハンサー領域を破壊する挿入又は欠失を生成する効率を評価するために、ヒト胚性腎細胞(HEK細胞)などのヒト細胞株を用いる。RGN発現カセット(例えば、実施例5に記載されるような)を含むDNAベクターを作製する。表11のガイドRNA配列のコード配列を含む発現カセットを含む別個のベクターもまた生成される。そのような発現カセットは、実施例5に記載されているように、ヒトRNAポリメラーゼIII U6プロモーター(配列番号308)をさらに含むことができる。あるいは、RGN及びガイドRNAの両方の発現カセットを含む単一ベクターを使用することができる。ベクターを実施例5に記載したもののような標準的な技術を用いてHEK細胞に導入し、細胞を1~3日間培養する。この培養期間の後、ゲノムDNAを単離し、挿入又は欠失の頻度を、実施例5に記載されているように、T7エンドヌクレアーゼI消化及び/又は直接DNA配列決定を用いて決定する。
【0271】
標的BCL11A領域を含むDNA領域を、Illumina Nextera XTオーバーハング配列を含むプライマーを用いてPCRにより増幅する。これらのPCRアンプリコンは、T7エンドヌクレアーゼI消化を用いてNHEJ形成について調べるか、又はIllumina 16S Metagenomic Sequencing Libraryプロトコール又は類似の次世代シークエンシング(NGS)ライブラリー調製後にライブラリー調製を受けるかのいずれかである。深いシークエンシングに続いて、生成されたリードをCRISPRESSOによって分析して、編集の速度を計算する。出力アラインメントは、挿入部位と欠失部位を確認するために手動でキュレートされる。この分析は、好ましいRGN及び対応する好ましいガイドRNA(sgRNA)を同定する。この分析の結果、APG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1のいずれかが同等に好ましいか、又は1つのRGNが最も好ましいと考えられる。さらに、分析により、複数の好ましいガイドRNAが存在するか、又は表17のすべての標的ゲノム配列が等しく好ましいことが決定され得る。
【0272】
実施例9.2:胎児ヘモグロビン発現試験
この例では、BCL11Aエンハンサー領域を破壊する挿入又は欠失を生じたAPG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1を、胎児ヘモグロビンの発現についてアッセイする。健康なヒトドナーCD34造血幹細胞(HSC)を用いる。これらのHSCを培養し、好ましいRGNのコード領域を含む発現カセットを含むベクター及び好ましいsgRNAを、実施例5に記載したものと同様の方法を用いて導入する。あるいは、エレクトロポレーションを使用してもよい。エレクトロポレーション後、これらの細胞は、確立されたプロトコール(例えば、参照により本明細書に援用されるGiarratana et al. (2004) Nat Biotechnology 23:69-74)を用いて、インビトロで赤血球に分化される。次に、HbFの発現を、抗ヒトHbF抗体によるウエスタンブロット法を用いて測定するか、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を介して定量する。BCL11Aエンハンサー遺伝子座の破壊が成功すれば、RGNのみでエレクトロポレーションされたHSCと比較してHbF産生が増加するが、ガイドはないと予想される。
【0273】
実施例9.3:鎌状赤血球形成減少試験
この実施では、BCL11Aエンハンサー領域を破壊する挿入又は欠失を生じたAPG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1を鎌状赤血球形成の減少についてアッセイする。鎌状赤血球症患者由来のドナーCD34造血幹細胞(HSC)を用いる。これらのHSCを培養し、好ましいRGNのコード領域を含む発現カセットを含むベクターを導入し、好ましいsgRNAを実施例5に記載したものと同様の方法を用いて導入する。あるいは、エレクトロポレーションを使用してもよい。エレクトロポレーション後、これらの細胞は、確立されたプロトコールを用いて、インビトロで赤血球に分化される(Giarratana et al. (2004) Nat Biotechnology 23:69-74)。次に、HbFの発現を、抗ヒトHbF抗体によるウエスタンブロット法を用いて測定するか、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を介して定量する。BCL11Aエンハンサー遺伝子座の破壊が成功すれば、RGNのみでエレクトロポレーションされたHSCと比較してHbF産生が増加するが、ガイドはないと予想される。
【0274】
鎌状赤血球形成は、これらの分化した赤血球にメタ重亜硫酸を加えることによって誘導される。鎌状赤血球と正常赤血球の数を顕微鏡で数える。鎌状赤血球の数は、APG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1+sgRNAで処理された細胞において、未処理又はRGN単独で処理された細胞よりも少ないことが予想される。
【0275】
実施例9.4:マウスモデルにおける疾患治療の妥当性確認
APG09748、APG09106.1、又はAPG06646.1によるBCL11A遺伝子座の破壊の有効性を評価するために、鎌状赤血球貧血の適切なヒト化マウスモデルを用いる。好ましいRGN及び好ましいsgRNAをコードする発現カセットは、AAVベクター又はアデノウイルスベクターにパッケージングされる。特に、アデノウイルス型Ad5/35は、HSCを標的とするのに効果的である。鎌状赤血球対立遺伝子を有するヒト化HBB遺伝子座を含む適切なマウスモデルを、B6;FVB-Tg(LCR-HBA2,LCR-HBB*E26K)53Hhb/J又はB6.Cg-Hbatm1Paz btm1Tow Tg(HBA-HBBs)41Paz/HhbJのように選択する。これらのマウスは、顆粒球コロニー刺激因子単独で、又は血中へのHSCの動員のためにプレリキサーと組み合わせて処理される。次に、RGN及びガイドプラスミドを担持するAAV又はアデノウイルスを静脈内注射し、マウスを1週間回復させる。これらのマウスから得られた血液を、メタ重亜硫酸塩を用いたインビトロ鎌状化アッセイで試験し、マウスを縦断的に追跡して、死亡率及び造血機能をモニターする。RGN及びガイドRNAを有するAAV又はアデノウイルスによる処置は、両方の発現カセットを欠くウイルス、又はRGN発現カセットを単独で有するウイルスで処置されたマウスと比較して、鎌状化、死亡、及び造血機能を改善することが期待される。
【0276】
実施例10:哺乳動物細胞における塩基編集活性
シチジンデアミナーゼ-RGN融合タンパク質を産生する発現カセットを、以下のように構築した。RGNのコード配列(本明細書に記載されるAPG06646.1、及び
各々全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2019/0367949号及び国際公開第WO2019/236566号に記載されたAPG08290.1)は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれているが、哺乳動物発現のためにコドンを最適化し、ニッカーゼとして機能するように突然変異させた(それぞれ、配列番号128及び262)。 このコード配列は、そのN末端(配列番号125)にNLSを含み、そのC末端で3xFLAGタグ(配列番号126)に作動可能に連結され、そのC末端でシチジンデアミナーゼに作動可能に連結された融合タンパク質(配列番号129~132)を生成する発現カセットに導入された。PCT/US2019/068079は、そのC末端上で、そのC末端で作動可能にRGNニッカーゼに連結され、そのC末端で作動可能に第2のNLS(配列番号127)に連結されたアミノ酸リンカー(配列番号133)に、そのC末端上で作動可能に連結され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの発現カセットを、哺乳動物細胞において融合タンパク質の発現を駆動することができるpTwist CMVベクター(Twist Bioscience)に各々導入した。哺乳動物細胞において、ヒトU6プロモーターの制御下でガイドRNAを発現する別々のベクターも作製した。これらのガイドRNA(nAPG06646.1については配列番号134~136、nAPG08290.1については配列番号263~265)は、それぞれ、脱アミナーゼ-nRGN融合タンパク質、又はRGN自体を、塩基編集又は遺伝子編集のための標的ゲノム配列に導くことができる。
【0277】
500ngのシチジンデアミナーゼ-RGN発現プラスミド又は標準RGN発現プラスミド、及び500ngのガイドRNA発現プラスミドを、Lipofectamine 2000試薬(Life Technologies)を用いて、24ウェルプレート中で75~90%コンフルエントでHEK293FT細胞に共トランスフェクトした。 次に、細胞を37℃で72時間インキュベートした。 次に、ゲノムDNAを、製造業者のプロトコールに従って、NucleoSpin 96組織(Macherey-Nagel)を用いて抽出した。 ガイドRNA標的部位に隣接するゲノム領域をPCR増幅し、製造者のプロトコールに従ってZR-96 DNAクリーン&コンセントレーター(Zymo Research)を用いて生成物を精製した。次に、精製されたPCR産物を、Illumina Miq(2×250)上の次世代シークエンシングのために送った。結果は、インデル形成又は特異的シトシン突然変異について分析した。
【0278】
下記の表12は、シチジン塩基の編集及び各構築物及びガイドの組み合わせの実際の形成を示す。興味深いことに、同じガイドRNAを用いてRGN APG06646.1の活性をシチジンデアミナーゼ-nAPG06646.1の活性と比較すると、遺伝子編集よりも最大20倍高いシチジン塩基編集が観察された。これらの結果は、特定の標的部位で低いヌクレアーゼ活性を有するRGNが、その部位での効率的な塩基編集であり得ることを実証する。さらに、塩基編集アプリケーションにおけるインデル形成は、しばしば望ましくない結果であるため、ある部位で低いヌクレアーゼ活性を有するRGNは、塩基編集アプリケーションに好ましい。
【0279】
【表14】
【0280】
実施例11:トランスssDNA切断
11.1 トランスDNA切断のアッセイ条件の決定
精製APG09748(配列番号137として記載され、全体が参照により本明細書に援用される国際出願第PCT/US2019/068079号に記載される)を、Cutsmart緩衝液(New England Biolabs B7204S)中の単一ガイドRNA(sgRNA)と共に、50nMヌクレアーゼ及び100nM sgRNA又は200nMヌクレアーゼのいずれかの最終濃度で10分間インキュベートした。 これらのRNP溶液を、1.5×Cutsmart緩衝液(New England Biolabs B7204S)中の最終濃度250nMで、最終濃度10nMのssDNA(標的又はミスマッチ陰性対照ssDNA)及びレポータープローブの溶液に添加した。レポータープローブ(それぞれ、配列番号138及び139として示されるTB0125及びTB0089)は、5’末端に蛍光色素(TB0125については56-FAM、TB0089についてはCy5)、3’末端にクエンチャー(TB0125については3IABkFQ、TB0089については3IAbRQSp)、及び場合により内部クエンチャー(内部クエンチャーZENはTB0125上にのみ存在する)を含む。レポータープローブの切断は、蛍光色素の脱クエンチングをもたらし、従って、蛍光シグナルの増加をもたらす。蛍光強度をモニターするために、各反応の10μlを、マイクロプレートリーダー(CLARIOSTAR Plus)中で30℃でCorning低容量384ウェルマイクロプレート中でインキュベートした。
【0281】
このアッセイに適したパラメーターを決定するために、多数の条件を探索した。クエンチされたプローブ設計又はフルオロフォア特性の効果があるかどうかを決定するために、2つのそのようなレポーターを各反応における混合物として含めた。それらは、任意の所与の反応において、互いに同じ濃度であった。全ての場合において、対照又は標的ssDNA濃度(配列番号140及び141としてそれぞれ示されるLE201又はLE205)は、10nMであった。RNP名は、下記の表13に示すように、ヌクレアーゼと標的を意味する。
【0282】
【表15】
【0283】
その結果を以下の表14に示す。
【0284】
【表16-1】
【0285】
【表16-2】
【0286】
この実験から、100nM濃度のRNPは、一般に、25nMのRNP濃度よりも高いレポータープローブの切断速度をもたらすと結論付けられた。一般に、レポーター切断速度は、250~500nMのレポーター濃度までの高濃度のレポーターオリゴヌクレオチドでより高く、レポーター濃度のさらなる増加からの利益はほとんど観察されない。注目すべきことに、TB0089レポーター(Cy5チャネルで検出される)については、特に250nMを超えるレポーター濃度において、標的の分化を妨げる実質的に高いレベルのバックグラウンド活性が存在する。したがって、250nMを超えるレポーター濃度は有益ではないと結論づけられた。両プローブはRNPによる標的認識の観察に適していると思われる。
【0287】
11.2 G09748トランスDNA切断及び精製が非特異的活性に及ぼす影響
精製APG09748を、1×CutSmart buffer(New England Biolabs B7204S)中の単一ガイドRNA(sgRNA)と共に、最終濃度200nMのヌクレアーゼ及び400nMのsgRNAと共に37℃で10分間インキュベートし、これらのRNP溶液を、1.5×Cutsmart buffer(New England Biolabs B7204S)中の最終濃度250nMで、ssDNA(標的又はミスマッチ陰性対照ssレポータープローブは、5’末端に蛍光色素、及び3’末端にクエンチャーを含む。レポータープローブの切断は、蛍光色素の脱クエンチングをもたらし、従って、蛍光シグナルの増加をもたらす。蛍光強度をモニターするために、各反応の10μlを、マイクロプレートリーダー(CLARIOSTAR Plus)中、37℃でCorning低容量384ウェルマイクロプレート中でインキュベートした。
【0288】
標的配列とのインキュベーションは、陰性対照と比較して時間の関数として蛍光強度の実質的な増加をもたらした。切断速度は、表15に示されるように、蛍光対時間関数の直線部分の勾配として要約される。
【0289】
【表17】
【0290】
これらのデータは、切断されたレポータープローブを用いて明確に検出可能なRNPによる負の制御から標的配列の区別を示す。
【0291】
11.3 パラレルプラスミドDNAライブラリーを用いたPAM測定
5nt縮重PAM配列(NNNN)に先行する標的配列を含むオリゴヌクレオチド(配列番号266及び267としてそれぞれ示されるLE00680及びLE00688)をアニールし、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England Biolabs)を用いて二重消化pUC19プラスミドにクローン化した。 この反応の形質転換によって生じる各コロニーは、クローン性プラスミドDNA配列に対応するので、単一コロニー由来の培養物からのプラスミドDNAの調製物は、元のライブラリーからサンプリングされたユニークなプラスミド調製物である。96のコロニーのサンプリングからプラスミド調製物を得た。これらの調製物を個別にサンガー配列決定にかけて、それらのPAM配列を検証した。
【0292】
精製APG09748を、室温で20分間、最終濃度200nMヌクレアーゼ及び400nMsgRNAで、1×CutSmart緩衝液(New England Biolabs B7204S)中のsgRNA(27sg.2)とインキュベートした。
【0293】
これらのRNP溶液を最終濃度100nMで、最終濃度8.3nM及びTB0125及びTB0089レポーター(それぞれ配列番号138及び139として記載)のプラスミドDNA標的の溶液に、1.5×Cutsmart buffer(New England Biolabs B7204S)中で、それぞれ250nM及び50nMで添加した。 蛍光強度をモニターするために、各反応の10μlを、マイクロプレートリーダー(CLARIOSTAR Plus)中、37℃でCorning低容量384ウェルマイクロプレート中でインキュベートした。
【0294】
少数の試料中のプラスミド濃度は、濃度正常化のための目標値を下回ったか、又は溶液の体積が、反応ウェルに意図された標的量を送達するには不十分であった。これらの試料は分析から除外されず、従って、重複の間の不整合を通して誤差の一因となることが期待される。サンガー配列決定法による評価の結果、交差汚染(PAM領域に見られる複数の痕跡)を有すると判定されたプラスミド、又は標的配列の変化を分析から除去したプラスミドを使用した試料であって、それらの結果は下記に示されていない。分析結果は、下記の表16に、FAMチャネルにおける勾配別の降順で示されている。
【0295】
【表18-1】
【0296】
【表18-2】
【0297】
【表18-3】
【0298】
【表18-4】
【0299】
最も高い勾配を有する配列は、インターナショナル・アップルで既に記載されているプラスミド除去アッセイによって測定された予測PAM(配列番号60で記載のDTTN)に適合するようである。PCT/US2019/068079は、その全体が参照により援用される。特に、標的の5’側にある2つのヌクレオチドの位置には「T」が強い選択性をもっていることがわかる。驚くべきことに、このアッセイで観察された最も活性なPAM部位(ATATG、配列番号147)は、DTTN(配列番号60)のコンセンサスと正確に一致せず、この認識部位におけるあるレベルの柔軟性を示唆した。
【0300】
11.4.PCR増幅DNAの存在下でのssDNA切断活性
PCR増幅された標的は、適切なプライマーを用いてゲノムDNA(それぞれ、配列番号225及び226として示されるTRAC及びVEGFアンプリコン)から作製された。VEGF標的(配列番号227として記載)を、配列LE573及びLE578(それぞれ配列番号228及び229として記載)を有するプライマーにより、HEK293T細胞ゲノムDNAからPCR増幅した。TRAC標的(配列番号230として示される)を、LE257及びLE258(それぞれ、配列番号231及び232として示される)によってPCR増幅した。
【0301】
RNPは、本明細書に記載のAPG09106.1ヌクレアーゼ及びsgRNAを、1×NEBuffer 2(New England Biolabs)中でそれぞれ0.5μM及び1μMでインキュベートすることにより形成し、室温で20分間インキュベートした。
【0302】
【表19】
【0303】
切断反応は、1.5×NEBuffer 2において、5’TEX615標識及び3’Iowa Black FQクエンチャー及びそれぞれのPCR産物100nMを有する1.5μM ssDNAオリゴヌクレオチドレポーターを用いて行った。レポータープローブの切断は、蛍光色素の脱クエンチングをもたらし、従って、蛍光シグナルの増加をもたらす。蛍光強度をモニターするために、各反応の10μlを、マイクロプレートリーダー(CLARIOSTAR Plus)中、37℃でCorning低容量384ウェルマイクロプレート中でインキュベートした。動態解析の結果を表18に示す。
【0304】
【表20】
【0305】
これらの結果は、種々の供給源からのPCR増幅DNAの存在下でのトランスssDNA切断活性の特異的活性化を示す。活性はPCR増幅された基質の濃度に依存する。
【0306】
11.5 診断のためのssDNA切断の利用
これらのヌクレアーゼは、標的DNA配列の存在下で光学的に検出可能なシグナルを生成する能力があるため、細菌、ウイルス、又は真菌のような感染症の病原体の検出のための診断装置への実装のための有用性を約束する。
【0307】
診断手順は、試験される試料からの核酸の単離又は増幅を含み得る。また、核酸の単離又は精製を実施することなく、いくつかの試料を使用することも適切であり得る。なぜなら、それらは、増幅なしに(PCRなどの)検出可能であるか、又は検出又はシグナル生成を妨げる物質を含まないのに十分な量で試料中に存在し得るからである。
【0308】
次に、他の実施例に記載されるように形成されたRNPを、前の実施例で使用されたフルオロフォア及びクエンチャー修飾された一本鎖DNAオリゴヌクレオチドなどのレポーター、又は切断時に可視又は他の点で容易に検出可能なシグナルを生成する他の種類の一本鎖DNA基質と共に、試料(又は前項に記載されるように処理された試料)に曝露することができる。フルオロフォア-クエンチャー共役DNAオリゴヌクレオチドを使用する場合(前述の実施例におけるように)、これらは、前述の実施例に記載されているように、蛍光計を使用して検出することができる。検出を簡単にするために、上記の速度論的アッセイの代わりにエンドポイントアッセイを実施することができ、これは、アッセイが、陽性及び陰性対照に対して、固定された時間で実施され、この経過時間の終わりに読み出され得ることを意味する。
【0309】
これらの試薬は、ごくわずかな器具を用いて、所与の病原体又は特異的核酸配列(個体における病的対立遺伝子など)の検出を可能にする側方流動試験装置に統合することもできる。このアッセイにおいて、ssDNAレポーターは、フルオレセイン、ビオチン、及び/又はジゴキシゲニンのような抗体又はアフィニティー試薬捕獲に適した複数の分子にコンジュゲートされ得る。
【配列表】
0007640527000001.app