(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】RF検出器およびそれを備える高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20250226BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20250226BHJP
H01P 1/203 20060101ALI20250226BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20250226BHJP
【FI】
G01R29/08 F
H01P5/02 603E
H01P5/02 603D
H01P1/203
H01P5/02 603C
H04B1/38
(21)【出願番号】P 2022509388
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005233
(87)【国際公開番号】W WO2021192707
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2020056667
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】三木 健一
(72)【発明者】
【氏名】市原 丈嗣
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537878(JP,A)
【文献】特開2003-188614(JP,A)
【文献】特開平10-079624(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073677(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0094091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
H01P 5/02
H01P 1/203
H04B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF信号の信号強度を検出する検出素子と、
前記検出素子の入力端と導通する第1導電パターンおよび前記検出素子の出力端と導通する第2導電パターンが形成されたプリント基板と、を備え、
前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとが前記検出素子を挟んで対向し、これにより各導電パターン間で容量結合
し、
前記第1導電パターンは、前記検出素子の入力端に近づくにつれてライン幅が拡大して拡大開放端をなす入力信号線路を含む、
RF検出器。
【請求項2】
前記検出素子は、入力されたRF信号をダイレクト変換する整流ダイオードである、
請求項1に記載のRF検出器。
【請求項3】
前記拡大開放端の端部間の外縁が非直線状に形成されている、
請求項1に記載のRF検出器。
【請求項4】
前記拡大開放端の端部間の外縁に、その先端が対向する前記第2導電パターンを指向する突起が形成されている、
請求項3に記載のRF検出器。
【請求項5】
前記拡大開放端、前記検出素子の入力端、前記検出素子の出力端、および前記第2導電パターンの各々の形状が前記入力信号線路の線路軸に対して対称である、
請求項
1に記載のRF検出器。
【請求項6】
前記入力信号線路の所定部位に接地用のショートスタブが形成され、前記ショートスタブの所定部位にはオープンスタブが前記入力信号線路と平行に延び、前記ショートスタブおよび前記オープンスタブのサイズが前記検出素子に入力されるRF信号のうち低域側の遮断周波数が使用周波数帯よりも低域になるフィルタを形成する、
請求項
1に記載のRF検出器。
【請求項7】
前記入力信号線路のうち前記ショートスタブの形成部位と前記入力信号線路の線路軸を挟んで反対側の所定部位に、低域側の遮断周波数の波長の略1/4の長さとなるオープンスタブが形成されている、
請求項6に記載のRF検出器。
【請求項8】
前記第2導電パターンは、前記検出素子の出力端から延びる出力信号線を含み、前記出力信号線路上の所定部位に、高域側の遮断周波数の波長の略1/4の長さとなる反射スタブが形成されている、
請求項
1に記載のRF検出器。
【請求項9】
裏面がグランド導体となるプリント基板の表面に存在し、入力されたRF信号の信号レベルを検出するRF検出器を含む高周波モジュールであって、
前記RF検出器が、請求項1から8のいずれか一項のRF検出器である、高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF検出器およびそれを備える高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
RF検出器(Radio Frequency Detector)を有する高周波モジュールの一般的な構成例を
図12に示す。
図12の高周波モジュール100は、アンテナANTが受信した信号のうち帯域外成分をRFフィルタ101で減衰させたRF信号をRF検出器102に入力する。RF検出器102は、入力されたRF信号をその信号強度(power)に対応する直流電圧に変換する。変換されたRF信号(直流電圧)は、増幅器103で増幅された後、A/D変換器104でアナログ/デジタル変換される。DSP (Digital Signal Processor)105は、デジタル変換されたRF信号をその信号強度を表すデジタルデータとして後段の電子回路へ出力する。
【0003】
RF検出器102は、整流ダイオードなどの検出素子を主要部品として含む高周波部品であり、従来、たとえば特許文献1,2に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示されたRF検出器は、マイクロ波帯で使用されるもので、整流ダイオードの特性ばらつきをインピーダンス調整用素子の付加により解消する。整流ダイオードには、主としてシリコン・ショットキーバリアダイオードが用いられる。
【0004】
特許文献2に開示されたRF検出器は、24GHz帯のRF信号を整流する整流回路を備えるので、使用周波数帯が高くなる場合の変換特性の低下を抑制することが可能である。この整流回路は、2つの整流ダイオードを出力部と接地(グランド面)との間に並列接続する。そして、出力部に複数の扇型の開放スタブ(共振器)を備えることで、広帯域にわたる高効率の電力変換が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-86666号公報
【文献】特開2014-209816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、次世代通信規格のひとつとして5G(第五世代移動通信システム)が提案されている。5Gでは、準ミリ波帯である26GHz帯,28GHz帯,あるいはそれ以上の周波数帯における装置、システムの使用が予定されている。そのため、今後、5G用の電波環境の調査、製品検査、製品や部品の動作確認などで準ミリ波帯以上の高周波数帯での使用を可能にするRF検出器は必要不可欠となる。
5Gで使用する準ミリ波帯は、26GHz帯では24.25~27.5GHzである。また、28GHz帯では26.5~29.5GHzである。
【0007】
特許文献1,2には高周波部品を実装するプリント基板の材質の記載がないが、1~10GHzまでの高周波部品では、ガラス繊維を基調とする安価なFR(Flame Retardant)-4グレードのプリント基板(「FR-4基板」)の使用が一般的である。プリント基板は、誘電率εが低いほど信号の伝送速度が高速になり、使用周波数帯が高くなるほど伝送損失が大きくなる。そのため、従来、準ミリ波帯で使用するプリント基板には、高損失で誘電率εの高いガラス繊維を基調とするFR-4基板ではなく、たとえば低損失のフッ素樹脂を絶縁体とした高周波基板が用いられている。
【0008】
しかし、高周波基板は、FR-4基板よりも遙かに高価であるばかりでなく、加工生産性の点でFR-4基板に劣る。基板(プリント基板)の厚みは、機械的特性(強度・耐性)を考えると厚い方が望ましいが、基板が厚くなると、後段の電子回路と導通する信号線路の線路幅が太くなる。太くなると整合がさらに取りにくくなり、良好な変換特性が得られない。多層構造で一枚あたりの基板を薄くすれば、損失が低減し、変換特性を良好にすることはできるが、多層構造にすると製造コストが高くなる。
【0009】
さらに、従来、整流ダイオードとして用いられている、シリコン・ショットキーバリアダイオードは、順方向の電位差が低いので、10GHz帯までは比較的高い変換特性が得られるものの、それ以上の高周波数帯になると変換特性が急激に低下してしまう。仮に、シリコン・ショットキーバリアダイオードを用いて、広帯域に無理に整合をとろうとすると変換特性が犠牲となる。整流ダイオードの特性ばらつきを個別に改善する個別対応では、量産化が難しい。
【0010】
また、例えば、特許文献2に開示されたRF検出器のように、整流ダイオードが並列に接続される構成では、充分な電流容量を確保することはできるものの、出力部-グランド間の容量の影響で整合がとりにくく、不整合の場合は十分な変換特性が得られない。24GHz帯で使用される整流ダイオードには、シリコン・ショットキーバリアダイオードよりも数十倍も高価で、電子移動度が早く、高い周波数に対応できるGaAs(ガリウムヒ素)ダイオードやプレーナ・ドープ・バリアダイオードなどが用いられることになる。
【0011】
そのため、準ミリ波帯以上で使用可能なRF検出器、あるいは、このようなRF検出器を備える高周波モジュールのコスト低減ならびに量産化が困難であった。
【0012】
本発明の目的の一つは、RF検出器、あるいはそれを備える高周波モジュールを、準ミリ波帯以上の周波数においても良好な変換特性を維持しつつ充分な機械的特性を有する構造とすることである。本発明の他の目的は、この明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、RF信号の信号強度を検出する検出素子と、前記検出素子の入力端と導通する第1導電パターンおよび前記検出素子の出力端と導通する第2導電パターンが形成されたプリント基板とを有し、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとが前記検出素子を挟んで対向し、各導電パターン間で容量結合するRF検出器である。
【0014】
本発明の他の態様は、裏面がグランド導体となるプリント基板の表面に存在し、入力されたRF信号の信号レベルを検出するRF検出器を含む高周波モジュールであって、前記RF検出器が上記態様のRF検出器となる高周波モジュールである。
【発明の効果】
【0015】
上記各態様によれば、検出素子と第1導電パターンおよび第2導電パターンとの間の整合を生じさせずに使用周波数帯の幅を拡大することができる。そのため、マイクロ波帯で使用される検出素子やプリント基板を準ミリ波帯以上で使用した場合であっても、良好な変換特性を維持できるようになる。これにより、機械的特性が充分で、コスト低減を図ることもできるRF検出器および高周波モジュールを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】第1実施形態に係るRF検出器の寸法および配置間隔の説明図。
【
図6】第2実施形態に係るRF検出器と比較例に係るRF検出器による出力電圧(mV)-周波数(GHz)特性比較図。
【
図7】第3実施形態に係るRF検出器による出力電圧(mV)-周波数(GHz)特性図。
【
図8】第4実施形態に係るRF検出器による出力電圧(mV)-周波数(GHz)特性図。
【
図12】高周波モジュールの一般的な構成例を示す図。
【発明の実施の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明を、28GHz帯(26.5GHz~29.5GHz)のRF信号の信号強度を検出するRF検出器に適用した実施の形態例を説明する。
図1は、第1実施形態に係るRF検出器の構成図、
図2はその寸法および配置間隔の説明図である。
【0018】
第1実施形態のRF検出器1は、プリント基板10と、RF信号を検出する検出素子20とを有する。プリント基板10は、横サイズWが13mm、縦サイズDが8mm、厚みTが0.6mmのFR-4基板(両面基板)を用いる。プリント基板10の表面には、厚さ約18μmの導体膜でパターニングされた複数の導電パターンが形成されている。導体膜は、銅箔、銀箔、金箔のいずれかであり、マイクロストリップラインを構成する。検出素子20は整流ダイオードである。本実施形態では、検出素子20として、シリコン・ショットキーバリアダイオードを用いる。
上記厚みTのFR-4基板とシリコン・ショットキーバリアダイオードは、前述の通り、準ミリ波帯以上の高周波数では一般的に使用されない部品である。しかし、本実施形態では、複数形成される導電パターンの形状や配置の工夫によって、それが容易になる。このことを以下に説明する。
【0019】
本明細書では、説明の便宜上、
図1および
図2に、直交三軸であるX軸、Y軸、Z軸を定義する。この直交三軸において、+Z方向をプリント基板10の鉛直上方、-Z方向をプリント基板10の鉛直下方、+X方向をRF信号が入力される方向、-X方向をRF信号が出力される方向、+Y方向を+X方向から見た左方向、-Y方向を+X方向から見た右方向という場合がある。また、X軸とY軸とを含む面をプリント基板10の表面、裏面あるいは水平面と呼ぶ場合がある。
【0020】
プリント基板10表面の略中央部には、検出素子20の入力端(たとえばアノード)が接続される入力端子部と、検出素子20の出力端(たとえばカソード)が接続される出力端子部が形成されている。入力端子部に検出素子20のアノードが接続され、出力端子部に検出素子20のカソードが接続される場合、変換特性は正出力となる。逆に、入力端子部に検出素子20のカソードが接続され、出力端子部に検出素子20のアノードが接続される場合、変換特性は負出力となる。
【0021】
本実施形態では、RF検出器1の小型化・簡略構造化のため、RF信号を直接電圧に変換するダイレクト変換を可能にする。そして、本実施形態では、複数の導電パターンにより、整合機能、フィルタ機能および変換特性調整機能を実現する。これらの複数の導電パターンのうち入力端子部を含む部分を「第1導電パターン」と呼ぶ。また、複数の導電パターンのうち出力端子部を含む部分を「第2導電パターン」と呼ぶ。本実施形態のRF検出器1は、第1導電パターンにより、低域側の設定周波数を遮断する機能をも果たす。また、第2導電パターンにより、高域側の設定周波数を遮断する機能をも果たす。これらの機能については後で詳しく説明する。
【0022】
第1導電パターンは、RF信号が入力される入力信号線路30、接地用のショートスタブ32およびオープンスタブ34を含む。入力信号線路30は、特性インピーダンスが50Ωに設定されたストリップラインである。このストリップラインのうち、RF信号が入力される部分のライン幅W1は1.1mmである。このライン幅W1は、後述する他の信号線路のライン幅に比べて7倍以上太い。この太い入力信号線路30のうち、上記の入力端子部が形成される部分は、当該入力端子部に近づくにつれてライン幅が更に拡大して拡大開放端となる整合スタブ31として作用する。入力されたRF信号は、整合スタブ31の拡大開放端および後述の整合スタブ41との協働による整合作用によって、検出素子20近傍での反射が抑制される。これにより、設計通りの使用周波数のRF信号が検出素子20に入力される。
【0023】
整合スタブ31は、検出素子20の入力端が接続される入力端子部を含む入力信号線路30のライン軸(線路幅と直交する方向の中心軸、以下同じ)を中心として、対称の形状となる。拡大開放端の端部間の外縁は、非直線状に形成されている。
図1および
図2の例では、拡大開放端の端部間の外縁(「結合領域」)が入力信号線路30のライン軸を中心として対称に、凹凸に形成されている。突起部分の少なくとも一つは鋭角をなす。鋭角にするのは、整合のための調整作業をしやすくするためであり、また、後述する整合スタブ41との間での容量結合をしやすくするためでもある。
【0024】
ショートスタブ32は、入力信号線路30を伝搬するRF信号を、低域の設定周波数で減衰させる幅0.15mmの導電パターンである。ショートスタブ32は、接地しても使用周波数帯における整合に影響がない箇所に配置される。図中、ショートスタブ32の先端部で円環状に示されているのが接地(グランド)端子である。ショートスタブ32の長さL1は、本例では、使用周波数帯の中心周波数の波長の1/4又は略1/4となる1.52mmとした。オープンスタブ34は、ショートスタブ32の中央付近から長さL2(1.49mm)で延びる幅0.15mmの導電パターンである。オープンスタブ34は、入力信号線路30に接近して沿うように配置される。(L1/2)<L2を満たす条件下で、(L1/2)+L2の長さが遮断周波数24.0GHzの波長の1/4又は略1/4となる。このように構成されるオープンスタブ34は、ノッチフィルタとして動作する。これにより、28GHz帯の低域側で急峻な減衰特性を得ることができる。
【0025】
入力信号線路30上にオープンスタブ型のノッチフィルタを設けることは、しばしば採用される構成である。しかし、入力信号線路30の形状やサイズを調整したりする際に配置箇所の制限を受けて位置やサイズが変わり、あるいは、その近傍に他のスタブなどの追加などがあると、整合の乱れや損失が生じて、大きな減衰を得ることができない。この点を考慮して、本実施形態ではショートスタブ32を設けている。このショートスタブ32を設けたことにより、上記の整合の乱れや損失が生じる要因が解消され、大きな減衰を得ることができ、かつ、RF信号の損失を最低限に抑えることができる。
【0026】
第2導電パターンは、第1導電パターンの整合スタブ31と検出素子20を挟んで対向する整合スタブ41を含む。整合スタブ41は、0.65mm(短辺)×1.8mm(長辺)の導電パターンである。整合スタブ41は、整合スタブ31を指向する外縁(「結合領域」)の先端結合により生じる容量性リアクタンスにより、広帯域の整合を図るために設けられる。整合スタブ41は、長辺の長さが高域側の遮断周波数の設定波長の1/4又は略1/4の長さであり、高域側の遮断周波数における反射用スタブとしても作用する。
【0027】
第2導電パターンは、また、整合スタブ41のうち、整合スタブ31との結合領域の反対側の外縁(「高インピーダンス線路領域」)の中央部から延びる第1出力信号線路40、第1反射スタブ42、第2出力信号線路43、第2反射スタブ44、第3出力信号線路45、オープンスタブ46を含む。
第1,第2出力信号線路40,43は、それぞれ幅W2が0.15mmの導電パターンである。これらの線路は、使用周波数帯に対しては、高インピーダンス信号線路として作用する。第1反射スタブ42は、0.65mm(短辺)×1.8mm(長辺)の導電パターンである。第1反射スタブ42の長辺の長さは、高域側の遮断周波数の設定波長の1/4又は略1/4の長さである。なお、第1反射スタブ42は、高域の遮断周波数で反射できる形状であれば、図示のような形状でなくとも良い。第2反射スタブ44は、たとえば扇状のものよりも成形、加工が容易な三角形状の導電パターンである。第2反射スタブ44の最小幅は0.15mmで、最大幅は1.8mmを超えないサイズである。
【0028】
第2反射スタブ44の基端(幅が最小の部位)からは、第3出力信号線路45が延び、さらにオープンスタブ46、負荷となるコンデンサ成分(C)47と抵抗成分(R)48、第4出力信号線路49が延びる。第3出力信号線路45および第4出力信号線路49は、使用周波数帯に対しては高インピーダンス信号線路として作用する。第3出力信号線路45および第4出力信号線路49は、幅W3が0.15mmの導電パターンである。負荷は、動作を安定させるための受動素子であり、抵抗成分(R)48とコンデンサ成分(C)とが円環状に示された接地(グランド)端子に対して並列に接続される。本例では抵抗成分(R)48が510kΩ,コンデンサ成分(C)47が100pFである。なお、オープンスタブ46は、整合用の導電パターンであるが、省略することもできる。
【0029】
整合スタブ41の結合領域の反対側の外縁から第2反射スタブ44の基端(幅が最小の部位)までの長さL3は、28GHzの中心周波数の波長の3/4又は略3/4である。本例では、4.3mmとした。整合スタブ41の結合領域の反対側の外縁から第1反射スタブ42の対向外縁までの長さL4は、本例では2.5mmとした。
【0030】
整合スタブ41を通過したRF信号は、第1出力信号線路40および第1反射スタブ42により高域側の設定周波数で反射され、更に、第2出力信号線路43および第2反射スタブ44により使用周波数帯で反射される。反射のポイント(反射が生じる位置)が検出素子20の出力端から離れるので、位相調整が容易にでき、検出素子20の入力端の入力信号と出力端の反射信号との打消し等も生じない。また、検出素子20で再度変換され、本来の変換特性を悪化させる原因となる高調波成分が生じた場合であっても、この高調波成分が、従来の一般的なものよりも太い入力信号線路幅30で、大きく減衰される。そのため、高い変換特性を得ることができる。
【0031】
図3は、第1実施形態のRF検出器1の変換特性図である。横軸は入力されたRF信号の強度(RF_Level:dBm)、縦軸は電圧出力(mV)である。図示される通り、本実施形態のRF検出器1によれば、従来、マイクロ波帯である1~10GHz前後でしか使用されることのない検出素子20やプリント基板10を用いた場合であっても、28GHz帯において十分な変換特性が得られている。
28GHz帯においても十分な変換特性が得られるのは、整合が検出素子20の入力端の第1導電パターンおよび検出素子20の出力端の第2導電パターンの双方でとられていることによる。そのため、従来のように、入力信号線路30上に整合用のスタブを別途設ける必要がなくなり、導電パターンが簡略化され、コスト低減および量産化が容易になる。
【0032】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るRF検出器2の構成図である。第1実施形態において説明したものと同じ部品等については、同一符号を付してその説明を省略する。第2実施形態に係るRF検出器2は、RF検出器1のオープンスタブ46を無くすとともに、入力信号線路30のうちショートスタブ32の対面側に、ノッチ設定遮断周波数の波長の1/4又は略1/4の長さL
5(1.9mm)のオープンスタブ36を付加したものである。
オープンスタブ36は、入力信号線路30から下方に延びた後、角度を変え、入力信号線路30と平行に延びる。このような構成のオープンスタブ36は、狭帯域ノッチフィルタとして作用し、第1実施形態で説明したRF検出器1よりも低域側の減衰量を更に急峻にすることができる。狭帯域なので、不整合があってもその影響を受けにくくなる。
【0033】
[比較例]
本発明者は、第1実施形態および第2実施形態のRF検出器1、2の比較例となるRF検出器5を作成した。このRF検出器5は、本願出願の時点において準ミリ波帯で多用されている高周波部品および設計技術を用いて構成したものであり、28GHz帯で動作する。RF検出器5の構成図を
図5に示す。
RF検出器5は、プリント基板50としてFR-4基板を用いる点、および、プリント基板50上にマイクロストリップで複数の導電パターンを形成する点は、RF検出器1,5と同じである。ただし、検出素子60はGaAsダイオードである。
【0034】
検出素子60の入力端には、入力信号線路70が接続される。入力信号線路70は、第1実施形態および第2実施形態の入力信号線路30よりも信号線路幅が細く、検出素子60の入力端子に近い部分はテーパ状に細くなっている。このように細い信号線幅のうち入力端子に近い部分をテーパ状に細くするのが、これまでの一般的な整合の手法である。
入力信号線路70は、使用周波数帯の影響を受けない位置に設けられたショートスタブ71で接地されている。図示の例では円環状に示されている接地端からの反射を抑えるため、反射スタブ72が設けられる。反射スタブ72は、基端から外縁までの距離が等しくなるように扇形になっている。検出素子60には入力端子からの反射がある。そのため、入力端子と導通する入力信号線路70のうちRF信号が入力される部位付近に、整合のためのスタブ74が必要とされる。
【0035】
検出素子60の出力端には、直近に使用周波数帯の中心周波数の波長の1/4又は略1/4の長さに設定された反射スタブ80が配置される。反射スタブ80は扇状に成形され、抵抗成分(R)87およびコンデンサ成分(C)88を負荷にして高インピーダンスとなる出力信号線路81が基端付近に接続され、出力信号線路89から変換信号となる電圧を出力している。
【0036】
第2実施形態に係るRF検出器2と比較例に係るRF検出器5による出力電圧(mV)-周波数(GHz)特性比較図を
図6に示す。
図6において、直線状の破線600は、実用仕様参考値、すなわち実用レベルとなる出力電圧の値である。また、実線601は第2実施形態のRF検出器2による出力電圧、破線602は比較例のRF検出器5の出力電圧である。
【0037】
図6に示すように、第2実施形態のRF検出器2は、検出素子20としてシリコン・ショットキーダイオードを用い、プリント基板10に厚いFR-4基板を用いても、FR-4基板で従来の設計技術で高価な検出素子60を用いたRF検出器5よりも、高い出力電圧が得られることがわかる。また、約3GHzの広い帯域にわたって充分な出力電圧が得られることがわかる。
さらに、RF検出器2では、低域および高域で、急峻な帯域特性となる。低域部は、オープンスタブ36とショートスタブ32とオープンスタブ34から成るノッチフィルタで急峻に減衰される。高域部は、第1反射スタブ42により反射され、急激に減衰される。そのため、RF検出器2によれば、必要な帯域での変換特性を、比較例に係るRF検出器5よりも、格段に高めることができる。
【0038】
なお、第1反射スタブ42は検出素子20の出力端から離れた位置に配置されるので、整合の乱れが生じにくい。出力電圧は、実用仕様参考値600と比較しても上回っており、FR-4基板でも実用上まったく問題ないレベルとなっている。
【0039】
[上記実施形態の効果]
第1実施形態および第2実施形態によれば、シリコン・ショットキーバリアダイオードとFR-4基板を用いても、広帯域に高い変換特性とフィルタ性能を発揮し、低コストで5Gにも対応する準ミリ波帯RF検出器を実現することができる。また、入力信号線路30を太くできるので、厚いプリント基板に対応することができる。入力信号線路30が太くすることで、発熱も抑制される。また、プリント基板10を厚くすることができるので、多層構造にしなくとも、機械的特性(強度・耐性)が増す。
【0040】
これまでの一般的なRF検出器では、どの周波数帯においても検出素子の入力端から入力信号線路への反射信号が生じる。そのため、入力されたRF信号が反射信号と打ち消されることを防止するため、スタブ(たとえば
図5のスタブ74)などを別途設ける場合があるが、そうすると、不要なリアクタンス損失のため、変換特性が犠牲になることが多い。
これに対して、第1実施形態および第2実施形態のRF検出器1,2では、検出素子20の入力端の第1導電パターンと検出素子20の出力端の第2導電パターンとが検出素子20を挟んで対向し、これにより各導電パターンの誘導リアクタンスと、各導電パターン間が容量結合することで生じる容量リアクタンスで上記検出素子20の入力端からの反射信号を吸収するので、変換特性を犠牲にすることがなくなる。
【0041】
特に、第1導電パターンは、検出素子20の入力端に近づくにつれてライン幅が拡大して拡大開放端をなす整合スタブ31を含み、拡大開放端の端部間の外縁が非直線状に形成されているので、太い信号線路30で無用な反射などを抑えて、広い帯域で整合をとることができる。また、拡大開放端の端部間の外縁に、対向する第2導体パターンとの距離を短くする突起が形成されているので、容量結合しやすい構造となる。
【0042】
また、整合スタブ31の拡大開放端、検出素子20の入力端、検出素子20の出力端、第2導電パターンの各々の形状が、入力信号線路30の中心軸に対して対称なので、プリント基板10上の高周波電流の不平衡が無くなり、バランスよく整合をとることができる。
【0043】
特許文献1および特許文献2に開示されたいずれのRF検出器では、いずれも帯域外の減衰が必要であり、それ故にRFフィルタを追加することが必然となる。RFフィルタは、広域に渡り減衰が必要で、ノッチフィルタのような狭帯域では使用が難しい。また、RFフィルタでは、サイズ拡大や部品追加などでコストが上がると共に、挿入損失が増えて変換特性が犠牲となる。これに対して、第1実施形態および第2実施形態のRF検出器1,2では、入力信号線路30の所定部位にショートスタブ32が形成され、ショートスタブ32の所定部位にはオープンスタブ34が延び、ショートスタブ32およびオープンスタブ34のサイズが検出素子20に入力される高周波信号のうち低域側の遮断周波数が使用周波数帯よりも低域になるフィルタを形成する。そのため、別途RFフィルタを設ける必要がなくなる。
【0044】
また、入力信号線路30のうちショートスタブ32の形成部位と反対方向の所定部位に、低域側の遮断周波数の波長の略1/4の長さとなるオープンスタブ36が形成されている場合も、狭帯域のノッチフィルタを形成することができる。そのため、低域部を更に急峻にすることができる。
【0045】
また、第1反射スタブ42、第2反射スタブ44は、比較例に係るRF検出器5のように、外縁を扇型にして基端からの距離を均等にしなくとも良いので、作成、加工、微調整が容易になる。そのため、設計もしやすくなる。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。第3実施形態のRF検出器は、第2実施形態のRF検出器2において、オープンスタブ34、第1反射スタブ42、オープンスタブ36は、削除したものである。そのため、図示を省略する。このような構成によるRF検出器の出力電圧(mV)-周波数(GHz)特性を
図7に示す。
図7を参照すると、第3実施形態のRF検出器は、第2実施形態のRF検出器2に比べて、広域整合の効果はほぼ同じで、低域側で出力電圧が上がり、変換特性が良くなるが、高域の変換特性は、少し犠牲になる。
【0047】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。第4実施形態のRF検出器は、第2実施形態のRF検出器2において、オープンスタブ34,36を削除したものである。そのため、図示を省略する。このような構成によるRF検出器の出力電圧(mV)-周波数(GHz)特性を
図8に示す。
図8を参照すると、第4実施形態のRF検出器は、第2実施形態のRF検出器2に比べて、広域整合の効果はほぼ同じで、高域側で出力電圧が上がり、変換特性が良くなるが、低域の急峻特性は、少し犠牲になる。
【0048】
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。
図9は、第5実施形態に係るRF検出器3の構成図である。第1実施形態および第2実施形態において説明したものと同じ部品等については、同一符号を付してその説明を省略する。第5実施形態に係るRF検出器3が第1実施形態のRF検出器1および第2実施形態のRF検出器2と異なるのは、以下の点である。
【0049】
・接地(グランド)端子G1,G2を四辺形状とした。白丸部分は基板10の反対面の接地端子と導通させるためのビアホールである。
・オープンスタブ34をX方向、すなわち入力側を向くようにした。
・整合スタブ41の形状を変更した。すなわち、整合スタブ41のうち結合領域41aの形状を凹凸状に形成されている整合スタブ31側の結合領域に対応する形状に変更するとともに、高インピーダンス線路領域41bをC面取りした形状に変更した。
・
図1に示したオープンスタブ46を、第2反射スタブ44と略同じ形状および略同じ面積の三角形状とし、第2反射スタブ44と平行に配置した。オープンスタブ46の形状は、三角形状の代わりに扇形状であっても良い。すなわち、オープンスタブ46のうち第3出力信号線路45と接続する部分の幅が、第3出力信号線路45の幅W
3に近づくように徐々に小さくなるようにした。
【0050】
オープンスタブ34が入力側を向くことにより、整合スタブ31との結合が回避されるため、整合スタブ31と整合スタブ41とのインピーダンス調整が容易になる。また、使用周波数帯域におけるリップルが改善する。
【0051】
また、整合スタブ41の結合領域41aを図示のように変更することにより、整合スタブ31の結合領域との間隔が端部間にわたってほぼ均等となる。つまり、検出素子20が接続される整合スタブ31側の入力端付近と整合スタブ41側の出力端付近との局所的な結合(たとえば集中定数的な結合)だけでなく、整合スタブ31の結合領域と整合スタブ41の結合領域41aのほぼ全域にわたる面的な結合(たとえば分布定数的な結合)となる。そのため、整合スタブ31,41間の結合度が高くなり、広帯域化が可能となる。これにより、使用可能な検出素子20の選択肢を拡げることができる。また、整合スタブ31,41間の間隔を微細にする必要がなくなり、製造上あるいは加工上も有利となる。
【0052】
さらに、オープンスタブ46のうち第3出力信号線路45と接続する部分の幅が、第3出力信号線路45の幅W3に近づくように徐々に小さくなるようにすることで、第3出力信号線路45との間の面的な結合(たとえば分布定数的な結合)が局所的な結合(たとえば集中定数的な結合)となり、インピーダンス調整がより容易になる。
【0053】
[他の実施形態]
第1から第5実施形態では、プリント基板10にFR-4基板を用いた場合の例を説明した。プリント基板10は誘電体なので、誘電正接(tanσ)というファクタがある。誘電正接は、プリント基板に交流電場が加わった時に、プリント基板の誘電体部分の中で電気エネルギーの一部が熱になって損失する程度を表す。つまり、使用周波数が高くなると、それがプリント基板の回路中で熱に変わる作用が大きくなるので、信号の伝送損失が大きくなる。FR-4基板の誘電正接は、1GHzあたり0.02程度であるが、FR-4基板の中でも誘電正接が小さいものがあるので、それを使用するのが望ましいが、伝送損失を重視する用途では、FR-4基板に代えて、ガラスフッ素樹脂基板などを用いても良い。
【0054】
また、上述したRF検出器1,2,3は、他の高周波部品、たとえば
図12に示した増幅器103、A/D変換器104、DSP105、あるいはアンテナANTと共に、準ミリ波帯で使用可能な一つの高周波モジュールとして実施することができる。
【0055】
[変形例]
検出素子20を囲む整合スタブ31、整合スタブ41の形状の組み合わせを、
図10および
図11に示すように変えることもできる。
図10の「変形例1-1」は、整合スタブ31の開放端部の結合領域311を糸面(微細な面取)又は大面(大きい面取)でR面取(角を丸める面取)したものである。「変形例1-2」は、整合スタブ31の開放端部の結合領域312を糸面又は大面でC面取(斜めの面取)したものである。「変形例1-3」は、整合スタブ31の開放端部の結合領域313の幅を拡げたものである。「変形例1-4」は、整合スタブ31の開放端部の結合領域314の外端部を第2導体パターンの方向に延ばしたものである。「変形例1-5」は、整合スタブ31の開放端部の結合領域315の外端部を斜め方向に延ばしたものである。
【0056】
また、
図11の「変形例2-1」は、整合スタブ41の結合領域411を整合スタブ31の開放端部の凹領域の凹形状に沿って当該凹領域の方向に突起させたものである。「変形例2-2」は、整合スタブ41の結合領域412を整合スタブ31の開放端部の結合領域の方向に鋭角で突起させたものである。「変形例2-3」は、整合スタブ41の高インピーダンス線路領域413をC面取したものである。「変形例2-4」は、整合スタブ41の高インピーダンス線路領域414を蒲鉾(D字形状)に面取したものである。「変形例2-5」は、整合スタブ41の高インピーダンス線路領域415を台形状に面取したものである。なお、
図10および
図11の形状は例示であって、他の面取形状であっても良い。また、
図10および
図11の形状の組み合わせであっても良い。
【0057】
上述の各実施形態では、28GHz帯で使用されるRF検出器1,2および高周波モジュールの例を説明したが、各構成部品の寸法が変わるだけで、26GHz帯以下、あるいは、28GHz帯以上の周波数で使用されるRF検出器および高周波モジュールについても同様に適用が可能である。
【0058】
[利用分野]
上述したRF検出器1,2,3は、監視見守り(セキュリティや介護)、IoT(コンテンツ配信など)、AI(自動運転など)、医療・ヘルスケアなど、さまざま分野におけるRF信号の検出用としての適用が可能となる。
【0059】
本明細書によれば、以下の態様が提供される。
(態様1)
態様1は、RF信号の信号強度を検出する検出素子と、前記検出素子の入力端と導通する第1導電パターンおよび前記検出素子の出力端と導通する第2導電パターンが形成されたプリント基板と、を備え、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとが前記検出素子を挟んで対向し、これにより各導電パターン間で容量結合する、RF検出器である。
態様1によれば、第1導電パターンと第2導電パターンとが検出素子を挟んで対向しているため、各導電パターンの誘導リアクタンスと、各導電パターン間が容量結合することで生じる容量リアクタンスで検出素子の入力端からの反射を吸収するので、変換特性を犠牲にすることがなくなる。検出素子と第1導電パターンおよび第2導電パターンとの間の整合を生じさせずに使用周波数帯の幅を拡大することができるので、マイクロ波帯で使用される検出素子やプリント基板を、準ミリ波帯以上でも使用できるようになる。そのため、機械的特性が充分で、コスト低減を図ることもできるRF検出器を容易に実現することができる。
【0060】
(態様2)
態様2は、前記検出素子は、入力されたRF信号をダイレクト変換する整流ダイオードである、態様1に記載のRF検出器である。
態様2によれば、低コストで、たとえば5Gに対応した準ミリ波帯RF検出器を提供することができる。
【0061】
(態様3)
態様3は、前記第1導電パターンは、前記検出素子の入力端に近づくにつれてライン幅が拡大して拡大開放端をなす入力信号線路を含み、前記拡大開放端の端部間の外縁が非直線状に形成されている、態様1又は2に記載のRF検出器である。
態様3によれば、第1導電パターンの拡大開放端と第2導電パターンの一部との間での容量結合がしやすくなる。また、第1導電パターンの拡大開放端と第2導電パターンの一部との協働による整合作用により、検出素子近傍での反射が抑制され、広い帯域で整合をとることができ、設計通りの使用周波数のものが検出素子に入力されることになる。したがって、従来のように、入力信号線路上に整合用のスタブを別途設ける必要がなくなり、パターンが簡略化され、コスト低減および量産化が容易になる。
【0062】
(態様4)
態様4は、前記拡大開放端の端部間の外縁に、その先端が対向する前記第2導電パターンを指向する突起が形成されている、態様3に記載のRF検出器である。
態様4によれば、整合のための調整作業がしやすくなり、また、拡大開放端と第2導電パターンの一部との間での容量結合がしやすくなる。
【0063】
(態様5)
態様5は、前記拡大開放端、前記検出素子の入力端、前記検出素子の出力端、および前記第2導電パターンの各々の形状が前記入力信号線路の線路軸に対して対称である、態様3又は4に記載のRF検出器である。
態様5によれば、プリント基板上の高周波電流の不平衡がなくなり、バランスよく整合をとることができる。
【0064】
(態様6)
態様6は、前記入力信号線路の所定部位に接地用のショートスタブが形成され、前記ショートスタブの所定部位にはオープンスタブが前記入力信号線路と平行に延び、前記ショートスタブおよび前記オープンスタブのサイズが前記検出素子に入力されるRF信号のうち低域側の遮断周波数が使用周波数帯よりも低域になるフィルタを形成する、態様3,4又は5に記載のRF検出器である。
態様6によれば、オープンスタブをノッチフィルタとして動作させることができるため、低域側で急峻な減衰特性を得ることができる。また、ショートスタブを設けることにより、整合の乱れが生じることがなくなり、大きな減衰を得ることができ、さらに、最低限の損失に抑えることができる。さらに、サイズ拡大や部品追加などでコストが上がると共に、挿入損失が増えて変換特性が犠牲となるRFフィルタを別途設ける必要がなくなる。
【0065】
(態様7)
態様7は、前記入力信号線路のうち前記ショートスタブの形成部位と前記入力信号線路の線路軸を挟んで反対側の所定部位に、低域側の遮断周波数の波長の略1/4の長さとなるオープンスタブが形成されている、態様6に記載のRF検出器である。
態様7によれば、狭帯域のノッチフィルタを形成することができ、変換特性における低域側を急峻にすることができる。また、狭帯域のため、たとえ不整合があったとしてもその影響を受けにくくすることができる。
【0066】
(態様8)
態様8は、前記第2導電パターンは、前記検出素子の出力端から延びる出力信号線を含み、前記出力信号線路上の所定部位に、高域側の遮断周波数の波長の略1/4の長さとなる反射スタブが形成されている、態様1から6のいずれか一つに記載のRF検出器である。
態様8によれば、反射スタブにより、高域側の設定周波数が反射されるため、変換特性における広域部は、急激に減衰される。また、反射のポイントが検出素子の出力端から離れるため、位相調整が容易にでき、検出素子の入力端の入力信号と出力端の反射信号との打消し等も生じず、整合の乱れが生じにくくなる。
【0067】
(態様9)
態様9は、裏面がグランド導体となるプリント基板の表面に存在し、入力されたRF信号の信号レベルを検出するRF検出器を含む高周波モジュールであって、前記RF検出器が、請求項1から8のいずれか一項のRF検出器である、高周波モジュールである。
態様9によれば、検出素子と第1導電パターンおよび第2導電パターンとの間の整合を生じさせずに使用周波数帯の幅を拡大することができるので、マイクロ波帯で使用される検出素子やプリント基板を、準ミリ波帯以上でも使用できるようになる。そのため、機械的特性が充分で、コスト低減を図ることもできる高周波モジュールを容易に実現することができる。