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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】耐切断性の多層撚糸及び布地
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/28 20060101AFI20250226BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20250226BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20250226BHJP
   D02G 3/32 20060101ALI20250226BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20250226BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20250226BHJP
   D03D 15/25 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/573 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/41 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/513 20210101ALI20250226BHJP
   D03D 15/44 20210101ALI20250226BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20250226BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
D02G3/28
D02G3/04
D02G3/12
D02G3/32
D02G3/36
D04B1/14
D03D15/25
D03D15/47
D03D15/56
D03D15/573
D03D15/41
D03D15/283
D03D15/513
D03D15/44
A41D13/08
A41D13/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022514673
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020048894
(87)【国際公開番号】W WO2021046025
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】201910841636.1
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】フー インシャン
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-510072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0055676(US,A1)
【文献】特開2018-178274(JP,A)
【文献】特開2017-218683(JP,A)
【文献】特開2004-011060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00-3/48
D02J 1/00-13/00
D03D 15/00-15/68
A41D 13/00-13/12
D04B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐切断性布地用の多層撚糸であって、前記撚糸は、
(i)スキンコア構造を有する少なくとも第1の単糸であって、前記スキンは芳香族ポリアミド短繊維を含み、前記コアはタングステンフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第1の単糸と、
(ii)スキンコア構造を有する少なくとも第2の単糸であって、前記スキンは耐切断性短繊維を含み、前記コアは少なくともエラストマーフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第2の単糸と、
を含み、
前記第2の単糸の前記耐切断性短繊維は、芳香族ポリアミド短繊維、脂肪族ポリアミド短繊維、及びポリエチレン短繊維の1つ以上から選択され
前記タングステンフィラメントの直径は、22μm~38μmであることを特徴とする、耐切断性布地用の多層撚糸。
【請求項2】
前記多層撚糸の撚り係数は、200撚り/メートル(TPM)~400TPMであり、線密度は、240dtex~850dtexであることを特徴とする、請求項1に記載の多層撚糸。
【請求項3】
請求項1に記載の多層撚糸を含む耐切断性布地。
【請求項4】
前記耐切断性布地は、編まれた布地であることを特徴とする、請求項に記載の耐切断性布地。
【請求項5】
前記耐切断性布地は、200g/m2~400g/m2の基本重量を有することを特徴とする、請求項に記載の耐切断性布地。
【請求項6】
請求項のいずれか一項に記載の耐切断性布地を含む保護製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐切断性布地用の多層撚糸(multi-ply twisted yarn)、及びこれから作製された耐切断性布地に関するものであり、耐切断性布地は、快適で柔らかく、柔軟性があるだけでなく、並外れて耐切断性もある。
【背景技術】
【0002】
産業従事者、警官、及び兵士は、作業時に様々な種類の鋼板、鉄、ナイフ、鋭利な器具、破片、カレット、及びワイヤーネットに直接接触する可能性があるため、保護手袋などの耐切断性保護製品を着用する必要がある。特に、例えば、極端な機械的操作又は鋼板の仕上げと切断に従事する専門家などの重工業の従事者にとって、着用する必要のある保護手袋には、ANSI/ISEA105のレベルA6以上、又はEN388 2016のレベルF以上の高い耐切断性が必要である。しかしながら、このレベルの現在の保護手袋は、耐切断性は要件を満たすことができるが、硬くて厚い。この硬さと剛性は、着用者の動きの柔軟性と快適性を大きく制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、快適で柔らかく、柔軟性があるだけでなく、耐切断性もある布地を開発し、保護手袋及びその他の保護製品の製造に使用することが理想的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、耐切断性布地用の多層撚糸を提供し、多層撚糸は、
(i)スキンは芳香族ポリアミド短繊維を含み、コアはタングステンフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第1の単糸と、
(ii)スキンは耐切断性短繊維を含み、コアは少なくともエラストマーフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第2の単糸と、
を含み、第2の単糸の耐切断性短繊維は、芳香族ポリアミド短繊維、脂肪族ポリアミド短繊維、及びポリエチレン短繊維の1つ以上から選択される。
【0005】
更に、本発明は、多層撚糸を含む耐切断性布地と、耐切断性布地を含む保護製品を提供する。保護製品は、保護手袋、保護服、保護ベスト、保護キャップ、腕用保護具(armguard)、保護毛布、保護カーテン、保護靴、作業服、又はスポーツウェアであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の多層撚糸の一実施形態を示している。
図2】本発明の多層撚糸の一実施形態の切断図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
個別に指定されていない場合、説明に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参照文書は、本明細書で完全に公開されているように、全ての目的で参照により説明全体に明示的に組み込まれる。
【0008】
別段の定義がない限り、説明で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、それらの意味は説明の定義に従う。
【0009】
特に特定されていない限り、本明細書に記載されている全てのパーセント、部分、比などは重量で測定される。
【0010】
本説明で使用される場合、「…で作製される(made of…)」という用語は、「含む(comprising)」という用語と同義である。本説明で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「提供される(provided with)」、「含む(containing)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図している。例えば、一連の要素を含む化合物、プロセス、方法、製品、又は機器は、必ずしもそれらの要素に限定されず、代わりに、明示的に列挙されていない他の要素、又はこのような化合物、プロセス、方法、製品、又は機器に固有の他の要素を含み得る。
【0011】
「…から構成される(composed of…)」という接続語には、任意の不特定の要素、工程、又は構成要素は、含まれない。特許請求の範囲では、このような接続語は、それに付随する一般的な不純な物(common impurity)を除いて、列挙された材料に特許請求の範囲を限定する。特許請求の範囲の特性部分の従属節に「から構成される」という句が現れる場合、それは、先行順部分の直後ではなく、従属節に列挙された要素を制限するに過ぎず、他の要素は、特許請求の範囲全体から除外されない。
【0012】
「基本的に…から構成される(basically composed of …)」という接続語は、これらの追加の材料、工程、特性、構成要素、又は要素は、特許請求された発明の基本的及び新規の特性に実質的に影響を与えないという条件で、文字通り説明されているもの以外の材料、工程、特性、構成要素、又は要素を除いて、化合物、方法、又は機器を制限するために使用される。「基本的に…から構成される」という用語は、「含む(comprising)」と「…から構成される」の中間の範囲を定義する。
【0013】
「含む(containing)」という用語は、「基本的に…から構成される」及び「…から構成される」という用語によって網羅される実施形態を含む。同様に、「基本的に…から構成される」という用語は、「…から構成される」という用語によって網羅される実施形態を含む。
【0014】
量、濃度、或いは他の値又はパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限及び好ましい下限のリストとして提供される場合、範囲が個別に開示されているかどうかに関係なく、範囲の上限又は好ましい値、及び範囲の下限又は好ましい値の任意のペアによって形成される全ての範囲を理解する必要がある。
【0015】
例えば、「1から5」の範囲が列挙されている場合、開示される範囲は、「1から4」、「1から3」、「1から2」、「1から2及び4から5」、及び「1から3及び5」を含むことを理解する必要がある。この説明では、数値範囲が列挙されている場合、特に特定されていない限り、範囲には、範囲の端点と、範囲内の全ての整数及び小数が含まれることを意図している。
【0016】
「約」という用語が、範囲の値又は端点を説明するために使用される場合、本開示は、示された特定の値又は端点を含むと解釈される必要がある。
【0017】
更に、特に明記されていない限り、「又は(or)」は、排他的「又は」ではなく、包括的「又は」を指す。例えば、次のいずれかがA「又は」Bの条件を満たしている:Aは真であり(又は存在し)、且つBは偽である(又は存在しない)、Aは偽であり(又は存在せず)、且つBは真である(又は存在する)、並びにA及びBは真である(存在する)。
【0018】
モル%は、モルパーセントを指す。
【0019】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、「ホモポリマー」という用語は、繰り返し単位の重合によって得られるポリマーを指す。例えば、「ポリ-p-フェニレンテレフタミドホモポリマー」という用語は、基本的に「p-フェニレンテレフタミド」の繰り返し単位から構成されるポリマーを指す。この説明で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2つ以上の種類のコモノマーのコポリマー化によって得られるコポリマー化単位のコポリマーを指す。
【0020】
この説明で使用される場合、「繊維」という用語は、長さに垂直な断面の幅に対する長さの比が高い、比較的柔軟で伸長された物体として定義される。繊維の断面は、任意の形状、例えば、円形、平坦、又は楕円形であり得るが、一般的には円形であり得る。繊維の断面は、中実又は中空、好ましくは中実であり得る。繊維は、フィラメント又は短繊維であり得る。
【0021】
「フィラメント」という用語は、化学薬品の紡糸溶液を紡糸ノズルに通すことによって得られる、最大数百メートルの長さの人工連続繊維を指す。
【0022】
「短繊維」という用語は、繊維が切断され得る短い繊維のセグメントの1つを指し、それは、天然繊維、例えば、綿、麻、又は毛であり得る、或いは指定された長さは約10mmから300mmである、フィラメントが切断される短い繊維の1つであり得る。
【0023】
この説明で使用される場合、「糸」という用語は、複数の繊維から構成され、短繊維及び/又はフィラメントを撚ることによって形成される単層撚り(single ply)として定義される。
【0024】
この説明で使用される場合、「多層撚糸」という用語は、少なくとも2つの種類の別個の単糸を一緒に撚ることによって調製されるものとして定義され、「少なくとも2種類の別個の単糸を一緒に撚る」という用語は、2種類の単糸を一緒に撚ることを指すが、別の種類の糸を完全に被覆する種類の糸はないため、「多層撚糸」という用語を、「ラップ糸(wrap yarn)」又は「カバード糸(covered yarn)」から区別することができる。ラップ糸又はカバード糸では、第1の単糸が第2の単糸の周囲を完全に被覆し、その結果、第1の単糸のみが、得られた多層撚糸の表面から出ている。
【0025】
この説明で使用される場合、「撚る」という用語は、スライバー(sliver)の2つの断面を互いに対して回転させ、その結果、元々糸の軸に平行であったスライバーの繊維が傾斜してらせんを形成することを指す。撚りの程度は、「撚り係数」によって特徴付けられ、これは、短繊維及び/又はフィラメントを凝集させるために各単位長に必要な撚りの数を指し、糸を1周回撚り回転させることは、1回の撚り、即ち撚りの周回(twist round)である。撚り係数は、複数の寸法のいずれか1つによって定義されることができ、この説明で使用される場合、「撚り係数」は、メートルあたりの撚り数(TPM)で測定される、長さ100cm内の糸の撚りの周回の数によって定義される。
【0026】
プライ(ply)における単糸の繊維を撚った後、下から上、及び右から左への撚りの周回を有する撚りは、S撚りと知られており、下から上、及び左から右への撚りの周回を有する撚りは、Z撚りと知られている。
【0027】
この説明で使用される場合、繊維又は糸の細かさは、一般に直径又は線密度(dtex)で表され、dtexは、周知の(public)水分が回復したときの長さが10,000メートルの繊維又は糸の重量をグラム単位で示す。
【0028】
本発明の「発明の概要」のセクションに記載されている本発明の実施形態は、本説明に記載されている任意の他の実施形態を含み、任意の方法で組み合わせることができ、更に、実施形態における主題の説明は、本発明の多層撚糸及び耐切断性布地だけでなく、他の調製された保護製品も含む。
【0029】
本発明について以下に詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の多層撚糸の一実施形態を示しており、これは、スキンコア構造を有する第1の単糸1とスキンコア構造を有する第2の単糸2とを含む。
【0031】
図2は、本発明の多層撚糸の一実施形態の切断図であり、スキンコア構造を有する第1の単糸1のスキンは、芳香族ポリアミド短繊維11であり、コアは、タングステンフィラメント12であり、スキンコア構造を有する第2の単糸2のスキンは、耐切断性短繊維21であり、コアは、エラストマーフィラメント22である。
【0032】
第1の単糸
本発明において、第1の単糸は、スキンコア構造を有する単糸であり、この場合、スキンは、芳香族ポリアミド短繊維を含み、コアは、金属タングステン製のフィラメント、即ちタングステンフィラメントを含み、第1の単糸の総重量に基づいて、芳香族ポリアミド短繊維の含有量は、約45重量%~75重量%であり、タングステンフィラメントの含有量は、約25重量%~55重量%である。
【0033】
この説明で使用される場合、「スキンコア構造」という用語は、スキン(即ち、芳香族ポリアミド短繊維)が、紡績されて単糸を形成するためにコア(即ち、タングステンフィラメント)を完全に又は部分的に被覆することを意味する。スキンコア構造の使用の目的は、タングステンフィラメントを芳香族ポリアミド短繊維で被覆し保護することであり、こうして、タングステンフィラメントと別の材料との間の直接的な摩擦又は接触を防ぎ、又このような糸を含む布地の快適性を向上させることができる。
【0034】
スキンコア構造では、タングステンフィラメントの周囲に芳香族ポリアミド短繊維を被覆又は紡績することは、既知の方法、例えば、リング紡績、コア紡績、ジェット紡績、又は自由端紡績(free end spinning)によって達成可能である。好ましくは、芳香族ポリアミド短繊維は、コアを被覆するのに十分な密度でタングステンフィラメントの周囲にて凝結している。被覆の度合いは、使用する紡績方法に依存する。従来のリング紡績では、中央のコアのほとんどが被覆されるのみであったが、しかしながら、部分的に被覆されていても、それは本発明の目的に適用可能なスキンコア構造であると見なされる。
スキンは、別の材料によって引き起こされる耐切断性の減少に耐えることができる程度まで、特定の他の材料で作製された繊維を更に含むことができる。
【0035】
本発明において、芳香族ポリアミド短繊維は、約20mm~200mm又は約35mm~60mmの長さ、約5μm~25μmの直径、及び約0.5dtex~7dtex又は約1.5dtex~3dtexの線密度を有する。
【0036】
本発明において、芳香族ポリアミド短繊維は、パラ芳香族ポリアミド短繊維、メタ芳香族ポリアミド短繊維、グループブチルコポリマー(p-フェニレン/3,4ジフェニルエーテルベンゼンジカルボキサミド)短繊維、ポリ(イミド-ベンゾオキサゾール)短繊維、又はこれらの混合物、好ましくは、パラ芳香族ポリアミド短繊維であり得る。パラ芳香族ポリアミド短繊維は、パラ芳香族ポリアミドで作製された短繊維を指し、「パラ芳香族ポリアミド」という用語は、ポリ(p-フェニレンテレフタミド)ホモポリマー及びポリ(p-フェニレンテレフタミド)コポリマーを指す。ポリ(p-フェニレンテレフタミド)ホモポリマーは、パラフェニレンジアミン(PPD)とテレフタリルクロリド(TCl)の等モル重合によって得られる。ポリ(p-フェニレンテレフタミド)コポリマーは、他のジアミンとジアシルクロリドに、重反応(polyreaction)を妨害する反応基がないことを条件として、最大10モル%の他のジアミンをジアミノベンゼンに組み込み、最大約10モル%の他のジアシルクロリドをTClに組み込むことによって得られる。ジアミノベンゼン以外のジアミンの例には、メタジアミノベンゼン又は3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)が含まれるが、これらに限定されない。TCl以外のジアシルクロリドの例には、イソフタロイルジクロリド、2,6-ナフトイルクロリド、クロロテレフタロイルクロリド、又はジクロロテレフタロイルクロリドが含まれるが、これらに限定されない。上記のパラ芳香族ポリアミドは、溶液紡糸によって繊維に紡糸することができる。繊維の紡糸は、空気紡糸、湿式紡糸、又は多孔質紡糸ノズルを用いた乾式ブラスト湿式紡糸(エアギャップ紡糸としても知られる)によって達成可能である。次いで、必要に応じて、紡糸された繊維を通常の技術で処理して、繊維を中和、洗浄、乾燥、又は熱処理し、これによって安定で有用な繊維及び/又は短繊維を調製することができる。
【0037】
芳香族ポリアミド短繊維は市販されており、例えば、DuPont Specialty Products US、LLC(以下「DuPont」という)が提供するKevlar(登録商標)、Teijinが提供するTwaron(登録商標)又はTechnor(登録商標)、又はToyoboが提供するZylon(登録商標)が市販されている。
【0038】
本発明において、タングステンフィラメントは、特定の状況における必要性又は要件に応じて、モノフィラメント又はマルチフィラメント、好ましくは単一フィラメント又は複数フィラメントであり得る。タングステンフィラメントは、約1μm~150μm、又は約10μm~75μm、又は約22μm~38μm、又は約25μm~35μm、又は約28μm~32μmの直径を有する。
【0039】
第2の単糸
本発明において、第2の単糸は、スキンコア構造を有する単糸であり、この場合、スキンは、耐切断性短繊維を含み、コアは、少なくともエラストマーフィラメントを含み、エラストマーフィラメントは、スキンに含まれる耐切断性短繊維によって完全に又は部分的に被覆可能であり、第2の単糸の総重量に基づいて、耐切断性短繊維の含有量は、約75重量%~98重量%であり、エラストマーフィラメントの含有量は、約2重量%~25重量%である。
【0040】
本発明のスキンコア構造を有する第2の単糸において、エラストマーフィラメントの周囲における耐切断性短繊維の被覆又は紡績は、既知の方法、例えば、リング紡績、コア紡績、ジェット紡績、又は自由端紡績によって達成可能である。好ましくは、耐切断性短繊維は、コアを被覆するのに十分な密度でエラストマーフィラメントの周囲にて凝結している。
【0041】
本発明において、エラストマーフィラメントは、好ましくは、「スパンデックスフィラメント」としても知られるポリウレタンエラストマーフィラメントであり、これは、繊維形成物質が少なくとも85重量%のブロックポリウレタンを含む長鎖合成エラストマーである、製造された繊維を指す。このようなポリウレタンは、ポリエーテルジオールとジイソシアネートの混合物、及び鎖延長剤によって調製され、次いで、溶融紡糸、乾式紡糸、又は湿式紡糸によってエラストマーフィラメントに紡糸される。ポリウレタンエラストマーフィラメントを製造するための特定の方法の1つによって、ポリウレタンエラストマーフィラメントは、押し出されると、凝集ジェットを用いて凝結する。乾式紡糸ポリウレタンエラストマーフィラメントは、押し出されたばかりのときに粘着性がある。凝集マルチフィラメント糸は、このような粘着性のフィラメントの群を形成することと凝集ジェットを使用することとの組み合わせによって作製され、次いで、コイルに接着するのを防ぐために、コイル状に巻く前に一般にシリコーン樹脂又は任意の他の仕上げ剤でコーティングされる。その長さに沿って互いに接着された多くの微細な別個のフィラメントを実際に含むこのような凝集フィラメント群は、多くの面で、同じ線密度を有するポリウレタンエラストマーフィラメントよりも優れている。本発明において、ポリウレタンエラストマーフィラメントは、1つ以上の別個のフィラメント又は凝集フィラメントの1つ以上の群の形態で、好ましくは凝集フィラメントの1つの群のみと共に、ポリウレタンエラストマー単糸に存在し得る。1つ以上の別個のフィラメントの形態で、又は凝集フィラメントの1つ以上の群の形態で存在する、弛緩状態のポリウレタンエラストマーフィラメントは、一般に、約22dtex~220dtex、又は約33dtex~110dtex、又は約44dtex~77dtexの総線密度を有する。好ましくは、短繊維と組み合わせる前に、最終的なポリウレタンエラストマー単糸よりも遅いポリウレタンエラストマー繊維の移動速度で、繊維を延伸する又は伸長することによって、エラストマー繊維が引張り力によって混合されてポリウレタンエラストマー単糸を形成する。このような延伸は、ポリウレタンエラストマー繊維の伸びの比として説明することができ、これは、最終的なポリウレタンエラストマー単糸の速度をポリウレタンエラストマー繊維の移動速度で割ったものである。伸びの典型的な比は、1.5~5.0、好ましくは1.5~3.5である。伸びの比が低い場合、比較的低い弾性歪みエネルギーが生じ、伸びの比が非常に高い場合、単糸を加工することが難しく、製造された布地がきつすぎて不快になる。
【0042】
伸びの最も適切な比は、ポリウレタンエラストマーコアの重量パーセントに更に依存する。更に、引張り装置を使用してポリウレタンエラストマー繊維を引き締めて伸ばすことができるが、引張り力及び伸びを再現及び制御することが困難であるため、あまり好ましくない。ある種類の布地における最適な伸びの比は、布地の理想的な適合性及び布地によって提供される感触に基づいて最終的に決定され得る。
【0043】
本発明において、耐切断性短繊維は、芳香族ポリアミド短繊維、脂肪族ポリアミド短繊維、ポリエステル短繊維、及びポリエチレン短繊維の1つ以上から選択される。本発明において、芳香族ポリアミド短繊維は、パラ芳香族ポリアミド短繊維又はメタ芳香族ポリアミド短繊維、好ましくはパラ芳香族ポリアミド短繊維であり得、脂肪族ポリアミド短繊維は、ポリアミド-6(PA-6)短繊維又はポリアミド-66(PA-66)短繊維であり得、ポリエステル短繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維であり得、ポリエチレン短繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)短繊維であり得る。
【0044】
多層撚糸
本発明において、多層撚糸は、少なくとも1つの種類の第1の単糸と少なくとも1つの種類の第2の単糸を一緒に撚ることによって形成される。一般に、本発明の多層撚糸は、2工程方法又は組み合わせ方法により製造される。例えば、2工程方法の工程1では、2つ以上の単糸を(多層撚りなしで)互いに平行に組み合わせ、コイルに巻き付ける。次の工程では、2つ以上の組み合わされた糸が、S撚りによって一緒にリング紡績されて多層撚糸を形成する。多層撚糸は、一般に「Z」撚りを有する(単糸は、一般に「S」撚りを有する)。或いは、単糸は、これらの2つの工程が単一の操作で組み合わされる組み合わせ方法によって多層撚りされることができる。本発明において、単糸は、約400TPM~850TPMの撚り係数を有し、多層撚糸は、200TPM~400TPMの撚り係数を有する。
【0045】
次いで、多層撚糸を、それらと同じ又は異なる他の多層撚糸と組み合わせ、これにより布地を作製するための糸束を形成することができる、又は別個の多層撚糸を使用して耐切断性布地を形成することができ、この場合、「糸束」は、1つ以上の多層撚糸、又は複数の単糸、又は多層撚糸と単糸の組み合わせである。好ましくは、糸束は、1から3の多層撚糸を有し、糸束又は布地における多層撚糸又は単糸は、必ずしも正確に同じであるとは限らない。更に、糸束は、多層撚りされる代わりに、編まれた布地を製造するためのロボットに供給される糸束として単純に組み合わされる単糸を含むことのみできる。
【0046】
本発明において、多層撚糸は、少なくとも1つの種類の第1の単糸と少なくとも1つの種類の第2の単糸を多層撚りすることによって調製され、多層撚糸は、約150dtex~1000dtex、又は約240dtex~850dtexの総線密度を有する。又、多層撚糸、及び多層撚糸を調製するための単糸は、必要な用途において、糸、又は糸によって作製された布地によって提供される機能及び性能が影響を受けていないままである限り、他の材料を含み得る。
【0047】
多層撚糸を含む耐切断性布地及び保護製品
本発明において、多層撚糸を含む耐切断性布地は、編み又は織りを使用して作製することができ、耐切断性、耐破裂性(puncture resistance)及び快適性は、編みの引き締め具合を調節することによって実現される。
【0048】
本発明において、多層撚糸又は耐切断性布地を含む保護製品は、編み又は織りを使用して直接作製することができ、或いは、編み又は織りを使用して多層撚糸を耐切断性布地に最初に形成し、次いで布地を縫い合わせ、結合し、切断することによって作製することができる。保護製品は、保護手袋、保護服、保護ベスト、保護キャップ、腕用保護具、保護毛布、保護カーテン、保護靴、作業服、又はスポーツウェアであり得る。例えば、編みを使用することにより、多層撚糸を直接保護手袋に形成することができる。編みを使用して作製された耐切断性布地には、任意の適切な編みパターンが受け入れられることができる。
【0049】
本発明では、適切な数の針を備えた手袋編み機又は円形編み機(例えば、13針、15針、18針又は21針を備えた手袋編み機、又は20針又は24針を備えた円形編み機)は、編みを使用して多層撚糸を耐切断性布地又は保護手袋に編むために使用することができる。線密度が300dtex未満の多層撚糸には20以上の針を備えた編み機を選択でき、線密度が約300dtex~500dtexの多層撚糸には18の針を備えた編み機を選択でき、線密度が約500dtex~600dtexの多層撚糸には15の針を備えた編み機を選択でき、線密度が約600dtex~850dtexの多層撚糸には13の針を備えた編み機を選択できる。選択した編み機の針の数が少ない場合、製造された耐切断性布地又は保護手袋は、より薄く、より柔軟で、より快適である。
【0050】
一実施形態では、本発明の多層撚糸を含む耐切断性布地は、約100g/m2~500g/m2、又は200g/m2~400g/m2の基本重量、及び約0.8mm~2.0mmの厚さを有する。
【0051】
本発明の耐切断性布地及び保護製品の耐切断性は、ISO13997の標準的な方法に従って決定される。耐切断性試験機TDM-100を使用して、試験対象の100%多層撚糸を使用して編まれた布地試料のN単位での切断力を試験する。切断力が大きい場合は、布地の耐切断性が高いことを示している。切断力を布地の基本重量で割り、次いで100を掛けてN/g/m2での切断力指数を得る。
【0052】
ANSI/ISEA105又はEN388 2016における耐切断性布地又は保護製品の切断レベルは、本発明の耐切断性布地又は保護製品の切断力に従って得ることができる。ANSI/ISEA105に従い、鋭く刃が真っ直ぐの刃に、グラム(g)単位の最大荷重で荷重がかけられ、これは、刃の20mmの切断距離の後に試料が切断されないことを確証するために刃にかけられることができ、布地の耐切断性は、表1に列挙されるように、レベルA1からレベルA9の9つのレベルに分類できる。
【0053】
従って、表1に列挙されるように、最大荷重に9.8N/Kgを乗じることにより、切断力、即ち最大力を得ることができる。
【0054】
【表1】
【0055】
EN388 2016に従い、鋭く刃が真っ直ぐの刃に、最大荷重で荷重がかけられ、これは、刃の20mmの切断距離の後に試料が切断されないことを確証するために刃にかけられることができ、布地の耐切断性は、表2に列挙されるように、レベルAからレベルFの6つのレベルに分類できる。
【0056】
【表2】
【0057】
快適性と柔軟性に加えて、本発明の多層撚糸で作製された布地は、並外れた耐切断性を有し、耐切断性、快適性、及び可撓性の保護製品に使用することができる。第1の単糸のコアがタングステンフィラメントを含む多層撚糸で作製された布地は、第1の単糸のコアが鋼フィラメントを含む多層撚糸で作製された布地よりも柔らかく、より柔軟性があり、より快適で、耐切断性がより高い。本発明の布地の切断力は、ANSI/ISEA105の切断レベルA6以上に対応する少なくとも29.4Nより大きく、好ましくはANSI/ISEA105の切断レベルA7以上に対応する少なくとも39.2Nより大きく、又はN388 2016の切断レベルF以上に対応する少なくとも30Nより大きい。
【0058】
当業者は、いかなる更なる詳細をも必要とせずに、前述の説明に従って本発明を最大限に活用することができると考えられる。従って、以下の実施形態は、例示の目的でのみ使用され、いかなる方法でも本開示を制限するために使用されない。
【0059】
実施形態
略語「E」は、一実施形態を表し、略語「CE」は、比較例を表し、略語に続く数字は、多層撚糸及び対応する耐切断性布地が作製される実施形態又は比較例を示す。実施形態及び比較例の両方が、同様の方法で調製及び試験される。
【0060】
材料
芳香族ポリアミド短繊維(S):DuPont Specialty Products US,LLCのKelvar(登録商標)970ポリ-p-フェニレンテレフタミド短繊維、長さは約3.8cm、細さは約1.6dtexである。
タングステンフィラメント(C1):Xiamen Honglu Tungsten Molybdenum Industry Co.,Ltd.のタングステンフィラメント、直径はそれぞれ約20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、及び43μmである。
ポリウレタンエラストマーフィラメント(C2):Lycra(登録商標)146スパンデックスフィラメント、細さは約44dtexである。
鋼フィラメント(M):Bekaertの304Lステンレス鋼フィラメント、直径は約50μmである。
【0061】
第1の単糸(Y1)の調製
芳香族ポリアミド短繊維(S)を標準的なカード機に送り、短繊維リング紡績糸を加工してカードされたスライバーを作製する。二重延伸(第1の延伸/最終の延伸)を使用して、カードされたスライバーを延伸されたスライバーに加工し、ロービング機にて延伸されたスライバーを加工してロービング糸を作製する。ロービング糸の両端においてリング紡績を行い、撚る前にタングステンフィラメント(C1)を埋め込み、最後の伸長ローラーの前に延伸されたロービング糸の両端の間にタングステンフィラメント(C1)を入れて、第1の単糸(Y1)を作製する。
【0062】
第2の単糸(Y2)の調製
芳香族ポリアミド短繊維(S)を標準のカード機に送り、短繊維リング紡績糸を加工してカードされたスライバーを作製する。二重延伸(第1の延伸/最終の延伸)を使用して、カードされたスライバーを延伸されたスライバーに加工し、ロービング機にて延伸されたスライバーを加工してロービング糸を作製する。ロービング糸の両端においてリング紡績を行い、撚る直前にポリウレタンエラストマーフィラメント(C2)を埋め込み、最終の伸長ローラーの前に延伸された糸の両端の間にポリウレタンエラストマーフィラメント(C2)を入れ、最終の糸の速度よりも遅い速度で材料を下から供給し、ポリウレタンエラストマーフィラメント(C2)を延伸して、第2の単糸(Y2)を作製する。
【0063】
鋼フィラメントを含む比較の単糸(Y3)の調製
芳香族ポリアミド短繊維(S)を標準のカード機に送り、短繊維リング紡績糸を加工してカードされたスライバーを作製する。二重延伸(第1の延伸/最終の延伸)を使用して、カードされたスライバーを延伸されたスライバーに加工し、ロービング機にて延伸されたスライバーを加工してロービング糸を作製する。ロービング糸の両端においてリング紡績を行い、撚る直前にスチールフィラメント(M)を埋め込み、最後の伸長ローラーの前に延伸されたロービング糸の両端の間にスチールフィラメント(M)を入れ、比較の単糸(Y3)を作製する。
【0064】
多層撚糸及び耐切断性布地の調製
第1の単糸(Y1)又は比較の単糸(Y3)を第2の単糸(Y2)と撚り、次いで編む方法を使用して、様々な実施形態及び比較例を作製する。様々な実施形態における、多層撚糸の構成要素、及び耐切断性布地の基本重量、切断力、及び切断力指数に関連するデータを表3に報告する。
【0065】
試験方法
基本重量:布地の基本重量(g/m2)は、布地の重量を布地の表面積で割ることによって決定される。
切断力:切断力は、ISO13997の標準的な方法に従って決定される。
切断力指数:切断力指数は、切断力を切断された布地の基本重量で割り、次いで100を掛けることによって得られる。
【0066】
切断力の変化率(ΔP)は、以下の式に従って得られることができる:
ΔP%=[(Pn-P0)/P0]×100
式中、P0は、参考例の切断力であり、Pnは、一実施形態での比較に使用される切断力である。
【0067】
切断力指数の変化率(ΔA)は、以下の式に従って得られることができる:
ΔA%=[(An-A0)/A0]×100
式中、A0は、参考例の切断力指数であり、Anは、一実施形態の比較に使用される切断力指数である。
【0068】
切断レベル:ANSI/ISEA105(表1)及びEN388 2016(表2)の布地の切断レベルは、決定された布地の切断力に従って得られる。
【0069】
快適性:本発明の耐切断性布地の快適性を試験するために、様々な実施形態及び比較例における多層撚糸を編んで手袋の試料を形成する。試験者は、各手袋の試料の構成要素を知らずに、各手袋を試す。次いで、手袋の快適性が、その引き締め具合と硬さによって「良好」、「中程度」、又は「不良」と評価される。
【0070】
表3の結果から、以下の記載は明らかである。
【0071】
タングステンフィラメント(直径20μm)を第1の単糸のコアとして使用した多層撚糸で作製された布地(CE2:Y1/Y2)を、鋼フィラメントを第1の単糸のコアとして使用した多層撚糸で作製された布地(CE1:Y3/Y2)と比較した場合、快適性は、「中程度」から「良好」に増加し、切断力は、約11%向上するが、切断レベルは、依然ANSI/ISEA105のレベルA5又はEN388 2016のレベルEである。
【0072】
タングステンフィラメント(直径40μm及び43μm)を第1の単糸のコアとして使用した多層撚糸で作製された布地(CE3及びCE4:Y1/Y2)を、鋼フィラメントを第1の単糸のコアとして使用した多層撚糸で作製された布地(CE1:Y3/Y2)と比較した場合、切断力は、約60%から104%に向上し、切断力指数は、約42%から52%に向上し、切断レベルは、ANSI/ISEA105のレベルA5からレベルA7~A8に、又はEN388 2016のレベルEからレベルFに増加するが、快適性は「中程度」から「不良」に低下する。
【0073】
タングステンフィラメント(直径25μm~35μm)を第1の単糸のコアとして使用した多層撚糸で作製された布地(E1~E3:Y1/Y2)を、鋼フィラメントを第1の単糸のコアとして使用した多層撚糸で作製された布地(CE1:Y3/Y2)と比較した場合、予想外に、切断力は約43%から114%に向上し、切断力指数は約76%から84%に向上し、切断レベルはANSI/ISEA105のレベルA5からレベルA6~A8に、EN388 2016のレベルEからレベルFに増加し、一方、快適性は「中程度」から「良好」に増加する。本発明の布地は、非常に高い耐切断性を有する。更に、保護製品として着用した場合、本発明の布地は、より柔らかく、より快適で、より柔軟である。
【0074】
【表3】
【0075】
本発明の一実施形態では、耐切断性布地用の多層撚糸は、
(i)スキンは芳香族ポリアミド短繊維を含み、コアは直径25μm~35μmのタングステンフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第1の単糸と、
(ii)スキンは芳香族ポリアミド短繊維を含み、コアは少なくともポリウレタンエラストマーフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第2の単糸と、を含む。
【0076】
本発明は、典型的な実施形態で説明及び記載されてきたが、本発明は、示された詳細に限定されない。これは、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変更及び置換を行うことができるためである。従って、本明細書にて開示される本発明の変更及び同等物は、従来の実験を使用することによってのみ当業者によって得ることができ、これらの全ての変更及び同等物は、本発明の特許請求の範囲によって定義される趣旨及び範囲内にある。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕耐切断性布地用の多層撚糸であって、前記撚糸は、
(i)スキンコア構造を有する少なくとも第1の単糸であって、前記スキンは芳香族ポリアミド短繊維を含み、前記コアはタングステンフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第1の単糸と、
(ii)スキンコア構造を有する少なくとも第2の単糸であって、前記スキンは耐切断性短繊維を含み、前記コアは少なくともエラストマーフィラメントを含む、スキンコア構造を有する少なくとも第2の単糸と、
を含み、
前記第2の単糸の前記耐切断性短繊維は、芳香族ポリアミド短繊維、脂肪族ポリアミド短繊維、及びポリエチレン短繊維の1つ以上から選択されることを特徴とする、耐切断性布地用の多層撚糸。
〔2〕前記タングステンフィラメントの直径は、22μm~38μmであることを特徴とする、前記〔1〕に記載の多層撚糸。
〔3〕前記エラストマーフィラメントは、ポリウレタンエラストマーフィラメントであり、線密度は、22dtex~220dtexであることを特徴とする、前記〔1〕に記載の多層撚糸。
〔4〕前記多層撚糸の撚り係数は、200撚り/メートル(TPM)~400TPMであり、線密度は、240dtex~850dtexであることを特徴とする、前記〔1〕に記載の多層撚糸。
〔5〕前記〔1〕に記載の多層撚糸を含む耐切断性布地。
〔6〕前記耐切断性布地は、編まれた布地であることを特徴とする、前記〔6〕に記載の耐切断性布地。
〔7〕前記耐切断性布地は、200g/m 2 ~400g/m 2 の基本重量を有することを特徴とする、前記〔6〕に記載の耐切断性布地。
〔8〕前記耐切断性布地の切断レベルは、ANSI/ISEA105のレベルA6以上であることを特徴とする、前記〔6〕に記載の耐切断性布地。
〔9〕前記〔5〕~〔8〕のいずれか一項に記載の耐切断性布地を含む保護製品。
〔10〕前記保護製品は、保護手袋、保護服、保護ベスト、保護キャップ、腕用保護具、保護毛布、保護カーテン、保護靴、作業服、又はスポーツウェアであることを特徴とする、前記〔9〕に記載の保護製品。
図1
図2