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特許7640568バルーンおよび取り出し部材を備えた医療器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】バルーンおよび取り出し部材を備えた医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20250226BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20250226BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/10 510
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022552384
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021025999
(87)【国際公開番号】W WO2021207229
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】63/006,793
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クロフォード、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フォードリー、マーティン ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】マクナーン、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン、アイデン
(72)【発明者】
【氏名】モンタギュー、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】トナー、ジェラルディン アリス
(72)【発明者】
【氏名】コノートン、エンダ
(72)【発明者】
【氏名】ギルマーティン、ゲイリー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-504144(JP,A)
【文献】特開2007-325925(JP,A)
【文献】特開昭61-293474(JP,A)
【文献】特表2012-505050(JP,A)
【文献】特開2014-124265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22-17/221
A61B 17/32-17/3207
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブと、
前記チューブを中心として設けられ且つ前記チューブと同軸をなすシースと、
前記シースの遠位端に設けられる膨張可能なバルーンであって、前記シースのルーメンから流体を受入れるように構成されており、
前記バルーンの長手軸線に沿って設けられる中央開口部であって、内部に前記チューブが延びる前記中央開口部と、
近位部分と、
前記近位部分に隣接して前記近位部分の遠位側にある中央部分と、
前記中央部分に隣接して前記中央部分の遠位側にある遠位部分と、を有し、
膨張に応答して、前記中央部分の最大直径は、前記近位部分の最大直径以下であり、かつ前記遠位部分の最大直径未満をなす、前記バルーンと、
前記チューブの遠位端に設けられる取り出し部材であって、前記バルーンの遠位側に位置して、前記バルーンに対して軸線方向に移動可能な前記取り出し部材とを備え
前記バルーンの前記遠位部分の遠位方向に面する表面は、凹状である、医療器具。
【請求項2】
前記シースの前記遠位端は、前記バルーンの前記中央開口部内に配置される、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記取り出し部材は、長手軸線に沿って中央開口部を有しており、前記チューブは、前記中央開口部内に延びる、請求項1又は2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記取り出し部材は、前記チューブのルーメンから流体を受け入れるように構成されたバルーン、および網のいずれか一方である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記バルーンの前記近位部分は、近位テーパ部分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項6】
前記バルーンの前記近位部分は、球形状を有する遠位部分および近位テーパ部分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項7】
前記バルーンの前記遠位部分は、前記バルーンの長手軸線に対して円筒形を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項8】
前記バルーンの前記遠位部分は、前記バルーンの長手軸線に対して球形を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項9】
前記近位部分の前記最大直径は、前記バルーンの前記中央部分の前記最大直径に等しい、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項10】
前記近位部分の前記最大直径は、前記バルーンの前記遠位部分の前記最大直径よりも小さい、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項11】
前記バルーンの前記近位部分の長さは、前記バルーンの長手軸線に対して、前記バルーンの前記遠位部分の長さおよび前記バルーンの前記中央部分の長さのそれぞれよりも長く、前記中央部分の前記長さは、前記遠位部分の前記長さ以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項12】
前記チューブは、遠位開口部を含んでおり、前記チューブのルーメンは、前記チューブの前記遠位開口部を越えて延びることができるガイドワイヤを受け入れる、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項13】
前記バルーンの前記遠位部分の前記遠位方向に面する表面は、前記バルーンの前記中央部分に向かって径方向内方に、かつ近位方向に延びる凹部を形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項14】
前記凹部は、前記バルーンの前記遠位部分の長手方向の長さの半分以下の深さまで近位方向に延びる、請求項13に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンおよび取り出し部材を有する医療器具に関する。より詳細には、本発明は、拡張バルーンおよび取り出し部材を使用して患者から物質を除去するための医療器具および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胆道内視鏡的括約筋切開(ES)手術など、胆道結石症を治療するための内視鏡を用いた手術中、操作者は患者の胆管から結石などの物質を除去する際に、問題に遭遇する場合がある。特に物質の除去が困難であることが判明した場合には、操作者は手術中に多種類の装置を使用する必要がある。たとえば、胆管からの比較的大きな石を摘出することは、石のサイズが膨大部のサイズを超える場合に問題となる可能性があり、摘出を阻害したり、摘出中に合併症を引き起こしたりする可能性がある。胆道ES手術は、挿管の後、乳頭に挿入された特殊なナイフまたは括約筋で高周波電流を流して、胆道括約筋および患者の総胆管の十二指腸内の領域の切開を伴う場合がある。したがって、ES手術では、ES手術全体で複数の装置と複数の装置の交換が必要となる場合がある。さらに、患者の括約筋機構への損傷など、ES手術中に、またはES手術の結果として合併症が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、拡張バルーンおよび取り出し部材を使用して患者の体内から物質を除去するための医療器具、および関連する方法に関する。本明細書に開示する各態様は、他の開示する態様のいずれかに関連して記載される一つ以上の要素を含み得る。
【0004】
一例によれば、医療器具は、チューブ、チューブを中心として設けられチューブと同軸をなすシース、およびシースの遠位端に設けられる膨張可能なバルーンを含む。バルーンは、シースのルーメンから流体を受け入れるように構成されており、バルーンは、バルーンの長手方向軸に沿って設けられて内部にチューブが延びる中央開口部、近位部分、近位部分に隣接し且つ近位部分の遠位側に設けられた中央部分、および中央部分に隣接して中央部分の遠位側に設けられた遠位部分を有する。膨張に応答して、中央部分の最大直径は、近位部分の最大直径以下であり、且つ遠位部分の最大直径よりも小さくなる。医療器具はまた、チューブの遠位端、すなわちバルーンの遠位側に設けられる取り出し部材であって、バルーンに対して軸線方向に移動可能な取り出し部材を含む。
【0005】
本明細書に記載の医療機器のいずれも、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。シースの遠位端は、バルーンの中央開口部内に配置され得る。取り出し部材は、取り出し部材の長手軸線に沿った中央開口部であって内部にチューブが延び得る中央開口部を有する。取り出し部材は、チューブのルーメンから流体を受け入れるように構成されたバルーンおよび網のうちのいずれか一方である。バルーンの近位部分は、近位テーパ部分を含む。バルーンの近位部分は、球形状を有する遠位部分および近位テーパ部分を含む。バルーンの遠位部分は、バルーンの長手軸線に関して円筒形状を有する。バルーンの遠位部分は、バルーンの長手軸線に関して球形状を有する。近位部分の最大直径は、バルーンの中央部分の最大直径に等しくてもよい。近位部分の最大直径は、バルーンの遠位部分の最大直径よりも小さくてもよい。バルーンの近位部分の長さは、バルーンの長手軸線に関して、バルーンの遠位部分の長さおよびバルーンの中央部分の長さのそれぞれよりも長くてもよく、中央部分の長さは、遠位部分の長さ以下であってもよい。チューブは遠位開口部を含み、チューブのルーメンは、チューブの遠位開口部を越えて延びることができるガイドワイヤを受け入れるように構成される。バルーンの遠位部分の遠位方向に面する表面は、凹状であり得る。バルーンの遠位部分の遠位方向に面する表面は、バルーンの中央部分に向かって径方向内方であるとともに近位方向に延びる凹部を画定し得る。凹部は、バルーンの遠位部分の長手方向の長さの半分以下の深さまで近位方向に延び得る。
【0006】
別例によれば、医療器具は、チューブ、チューブの外周囲に設けられてチューブと同軸をなすシース、およびシースの遠位端に設けられるバルーンを含む。バルーンは、シースのルーメンを介して膨張するように構成されており、遠位方向に面する凹面を有する。膨張に応じて、バルーンは砂時計の形状を有する。医療器具はまた、チューブの遠位端に設けられる取り出し部材であって、バルーンの遠位側に位置する取り出し部材を含む。
【0007】
本明細書に記載の医療機器のいずれもまた、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。砂時計の形状は、近位球根状部分、中央頸部分、および遠位球根状部分によって画定される。バルーンの遠位球根状部分の遠位表面は、バルーンの近位球根状部分に向かって径方向内方であるとともに近位方向に延びる凹部を画定しており、凹部は胆石を収容するように構成されている。
【0008】
さらに別例によれば、患者から物質を除去する方法は、患者の管腔内に装置を前進させることを含み、装置は、チューブ、チューブの外周囲に設けられてチューブと同軸をなすシース、および装置の遠位端に設けられる拡張バルーンを含む。拡張バルーンは、長手軸線に沿って設けられた中央開口部であってチューブを受け入れる中央開口部、近位部分、近位部分に隣接して近位部分の遠位側をなす中央部分、および中央部分に隣接して中央部分の遠位側をなす遠位部分を有する。装置はまた、チューブの遠位端に設けられる取り出し部材であって、拡張バルーンの遠位側に取り出し部材を含む。この方法はさらに、取り出し部材を物質の遠位側に配置すること、拡張バルーンを物質の近位側に配置すること、拡張バルーンの中央部分の最大直径が拡張バルーンの近位部分の最大直径以下であるとともに拡張バルーンの遠位部分の最大直径以下になるように拡張バルーンを膨張させること、および少なくとも取り出し部材を近位方向に引いて物質を近位方向に引くことを含む。
【0009】
本明細書に記載の方法のいずれも、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。取り出し部材は、取り出しバルーンを含む。さらに、この方法は、拡張バルーンを膨張させる前または後に、取り出しバルーンを膨張させることをさらに含み得る。
【0010】
上記一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載されるように、本発明を限定するものではない。
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、開示の例を示し、説明とともに、開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】十二指腸内を通って患者の胆管内に延びる医療器具の一部を示す概略図。
図2】本発明にかかる医療装置の一部であって、十二指腸内を通って患者の胆管内に延びる医療器具の一部を示す概略図。
図3】本発明にかかる、医療器具を示す概略図。
図4】本発明にかかる、図3の医療器具のチューブおよびシースを示す断面図。
図5A】本発明の一実施形態にかかる、拡張バルーンを示す斜視図。
図5B】本発明の一実施形態にかかる、拡張バルーンを示す側面図。
図5C】本発明の一実施形態にかかる、拡張バルーンを示す断面図。
図5D】本発明の一実施形態にかかる、拡張バルーンを示す拡大断面図。
図6A】本発明の別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す側面図。
図6B】本発明の別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す断面図。
図6C】本発明の別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す拡大断面図。
図7A】本発明のさらに別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す側面図。
図7B】本発明のさらに別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す断面図。
図7C】本発明のさらに別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す拡大断面図。
図8】本発明にかかる、患者の体内から物質を除去する方法を示す図。
図9】本発明のさらに別の実施形態にかかる、拡張バルーンを示す側面図。
図10】本発明の別の実施形態にかかる、拡張バルーンおよび網を有する医療器具を示す側面図。
図11A】本発明のさらなる実施形態にかかる、凹部を備える拡張バルーンを有する医療器具を示す図。
図11B】本発明のさらなる実施形態にかかる、凹部を備える拡張バルーンを有する医療器具を示す図。
図11C】本発明のさらなる実施形態にかかる、凹部を備える拡張バルーンを有する医療器具を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではない。本明細書で使用される場合、「備える」、「含む」、「有する」という用語、またはそれらの他の任意の変形は、以下のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置などは、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、それらの要素のみを含むのではなく、明示的にリストに挙げられていない別の要素又はそのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の別の要素を含み得る。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。本明細書で使用される場合、「近位側」または「近位側に」という用語は、操作者に近い方向を意味し、「遠位側」または「遠位側に」という用語は、操作者から遠い方向を意味する。本明細書で使用される場合、「約」、「概ね」、及び「ほぼ」という用語は、記載された値の+/-10%以内の値の範囲を示す。本明細書では内視鏡および内視鏡手順を参照するが、内視鏡および内視鏡手術への言及は、開示される医療器具および他の態様の可能な用途を制限するものとして解釈されるべきではなく、開示される医療器具およびその一部は、医療装置の別の種類の一部としておよび別の種類の医療処置で使用され得る。
【0013】
上記ES手術の代わりに、内視鏡的乳頭バルーン拡張(EPBD)手術を実施することができる。内視鏡的乳頭バルーン拡張(EPBD)手術は、合併症を最小限に抑えるとともに、括約筋の機構を保存することができる。例えば、図1に示すように、石などの物質10は、患者の胆管12内から医療器具14を使用してEPBD手術において除去され得る。手術の間、医療器具14は、患者の胃腸管内に配置された十二指腸鏡16(または他のスコープ、カテーテル、シース、またはチューブ)内を通って遠位側に前進させられる。より具体的には、十二指腸鏡16は、患者の十二指腸18内に配置され、乳頭、ここではファーター膨大部22に面するように配置された遠位開口部20を有する。開口部20内には、医療器具を持ち上げて十二指腸鏡16の側面に向けるためのエレベータ(図示せず)が設けられてもよい。医療器具14は、遠位開口部20からファーター膨大部22内を通って、胆管12内に、ガイドワイヤ24の上に延びる。胆管12内に延びる医療器具14の一部は、治療部26である。治療部26は、ルーメン28および取り出し部材30を含む。取り出し部材30は、治療部26の遠位端に向かって設けられる。内視鏡手術の間、取り出し部材30は、物質10の遠位側に配置され、ルーメン28の開口部(図示せず)を通って流体を用いて拡張させたり、膨張させたりし得る。
【0014】
物質10を胆管12から除去するために、取り出し部材30は、胆管12を通って近位方向に引っ張られ、すなわち、トロールされる。この手術中、取り出し部材30がバルーンである場合、物質10を胆管12から引き抜くのに必要な力により、取り出しバルーン30が破裂する可能性がある。さらに、患者の胆管12が「S字状」胆管である場合、例えば、湾曲形状または三日月形状である場合には、医療器具14は、手術を行う操作者によるトルクを必要とする場合があり、これにより操作者にさらなる強さと忍耐が要求され、胆管12および患者の他の管腔に苛立ちがつのる。
【0015】
物質10を胆管12から引き抜くのに必要な力を低減して、取り出しバルーン30が破裂するリスクを低減するために、物質10の近位側の管腔を拡張させることができる。そのために、追加のルーメンまたはシース、およびその遠位端に拡張バルーンを含む、追加の器具が必要となる場合がある。拡張バルーンは、胆管12内の物質10の近位側に配置される。括約筋機構を保ちながら物質10を除去するために、取り出し部材30および拡張バルーンを近位方向に同時に移動させ得る。
【0016】
しかしながら、胆管12をトロールし、ファーター膨大部22の膨大部を拡張させるために複数の装置または器具が必要とされる場合、問題が生じる可能性がある。例えば、器具は、挿入または交換中に絡まる可能性がある。さらに、器具が相互に交換または移動されると、ガイドワイヤ24が移動する可能性があり、その結果、操作者は、胆管12へのアクセスを失って再度挿管が必要になる可能性がある。このプロセスは、患者のファーター膨大部のさらなる悪化を招く可能性がある。さらに、複数の器具を使用すると、内視鏡手術のコストが増加するだけでなく、内視鏡手術を完了するのに必要な時間が増加する。内視鏡手術を完了するのに必要な時間が増加すると、手術の侵襲性、患者の胃腸管に対する苛立ち、および感染または傷害について患者へのリスクを高める可能性がある。
【0017】
図2は、本発明の一例に係る医療器具32の一部を示す概略図である。医療器具32は、内視鏡手術中に、患者の十二指腸18内に配置される十二指腸鏡16(または他のスコープ、カテーテル、シース、またはチューブ)内に配置される。医療器具32は、十二指腸鏡16の中を通って、十二指腸鏡16の遠位開口部20から出て、ファーター膨大部22を通過して、患者の胆管12の中に延びる。医療器具32の治療部分38は、胆管12の中に、胆管12から取り出される物質10の周囲または近傍の位置まで延びる。治療部分38は、チューブ40(図3に示す)と、チューブ40を中心に同軸をなして延びてチューブ40に対して移動可能なシース42とを含む。治療部分38はまた、拡張バルーン44および取り出し部材46を含み、拡張バルーン44および取り出し部材46はそれぞれ、図2に拡張状態で示されている。図1、および図2に示す実施形態では、取り出し部材46はバルーンである。しかしながら、取り出し部材46は、図10に示す網など、取り出すために対象物を捕捉して移動させるための任意の適切な要素であり得る。拡張バルーン44がシースに取り付けられ、取り出し部材46がチューブ40に取り付けられるため、拡張バルーン44および取り出し部材46は、互いに独立して拡張および移動させることができる。拡張バルーン44は、シース42を遠位方向または近位方向に移動させることによって移動させることができ、一方、取り出し部材46は、チューブ40を遠位方向または近位方向に移動させることによって移動させることができる。さらに、拡張バルーン44および取り出し部材46は、同時に拡張および移動させ得る。図2に示すように、拡張バルーン44は、物質10の近位側に配置され、取り出し部材46は、物質10の遠位側に配置される。治療部分38は、ガイドワイヤ48の上を進行させられて、図2に示す位置に到達する。さらに、治療部分38の遠位先端50は、非外傷性先端を形成しており、ガイドワイヤ48が通過することができる遠位開口51を含む。
【0018】
図3は、本発明の一例にかかる、医療器具32を示す概略図である。トリルーメン押し出しチューブであるチューブ40は、医療器具32の近位端52において、ハンドル54に接続されている。ハンドル54は、ガイドワイヤポート56、造影剤ポート58、および取り出し部材拡張ポート60を含む複数のポートを含む。ガイドワイヤポート56はガイドワイヤ48を受け入れ、造影剤ポート58は造影剤物質供給源(図示せず)から染料などの造影剤物質を受け入れ、または別の所望の流体を受け入れ、取り出し部材拡張ポート60は取り出し部材46の拡張のための機構を受け入れる。例えば、取り出し部材46がバルーンである場合、取り出し部材拡張ポート60は、ポンプまたは注射器(図示せず)などの流体供給源から、空気または生理食塩水などの流体を受け入れる。ハンドル54はまた、膨張バルーン44および取り出し部材46の同軸性の相対移動を付与する。
【0019】
図3に示すように、ハンドル54の遠位側に、ハイポチューブ61およびTuohy Borstアダプタなどのアダプタ62が、チューブ40の外周囲に設けられる。シース42は、アダプタ62に接続され、アダプタ62から医療器具32の治療部分38に向かって、チューブ40と同軸をなしてチューブ40を中心として延びる。アダプタ62は、拡張バルーン膨張ポート64を含む。図3に示すように、拡張バルーン膨張ポート64は、ポンプまたは注射器66などの流体供給源から、空気または生理食塩水などの流体を受け入れる。アダプタ62は、ハンドル54およびハイポチューブ61の同軸性の移動を付与するとともに、ハンドル54内を通って戻る流体の漏れを防止する。
【0020】
図3を参照すると、チューブ40およびシース42は、医療器具32の治療部分38の近位端52から遠位先端50に向かって同軸性に延びる。シース42は、拡張バルーン44の近位端68内、拡張バルーン44の中央開口70内を通過して延びており、拡張バルーン44の遠位端72またはその近傍で終端する。シース42は、拡張バルーン44の近位端68と遠位端72との間に配置された周方向の開口部74を有する。
【0021】
医療器具32は、例えば、近位端52から遠位先端50まで、約220cmの長さを有し得る。しかしながら、医療器具32の長さは、この値に限定されず、約200cm~240cmの範囲内で変動し得る。医療器具32のチューブ40は、約220cmの長さおよび約3.0mmの直径を有し得る。しかしながら、チューブ40の長さおよび直径は、これらの値に限定されず、それぞれ、約200cm~240cmの範囲および約2.5mm~3.5mmの範囲内で変動し得る。チューブ40は、例えば、PEBAX(登録商標)などの材料で形成し得る。しかしながら、チューブ40を形成する材料は、PEBAX(登録商標)に限定されず、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、クリスタミド、グリラミド(Grilamid(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、Zytel(登録商標)、Rilsan(登録商標)、またはVestamid(登録商標)のうちの任意の1つであり得る。さらに、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルクロリド(PVC)、オレフィンコポリマーまたはホモポリマー、ポリエチレン、ポリウレタン、架橋低密度ポリエチレン(PET)、高照射直鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリロニトリルポリマーおよびコポリマー、アクリロニトリルブレンドおよびイオノマー樹脂などの準柔軟性材料が使用され得る。非柔軟性材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレンスルフィド、およびコポリエステルが含まれる。さらに、材料のその他の例には、ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)トリブロックポリマー(SIBS)、ポリウレタン、弾性ポリマー、織物、ポリマーの多層膜、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0022】
医療器具32のシース42は、約165cmの長さおよび約3.0mmの直径を有し得る。しかしながら、シース42の長さおよび直径は、これらの値に限定されず、それぞれ、約145cm~185cmおよび約2.5mm~3.5mmの範囲内で変動し得る。シース42は、PEBAX(登録商標)などの材料で形成することができる。しかしながら、シース42を形成する材料は、PEBAX(登録商標)に限定されず、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、クリスタミド、グリラミド(Grilamid(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、Zytel(登録商標)、Rilsan(登録商標)、またはVestamid(登録商標)のうちの任意の1つであり得る。さらに、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルクロリド(PVC)、オレフィンコポリマーまたはホモポリマー、ポリエチレン、ポリウレタン、架橋低密度ポリエチレン(PET)、高照射直鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリロニトリルポリマーおよびコポリマー、アクリロニトリルブレンドおよびイオノマー樹脂等の準柔軟性材料を使用され得る。非柔軟性材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレンスルフィド、およびコポリエステルが含まれる。さらに、この材料の他の例には、ポリ(スチレン-イソブチレン-スチレン)トリブロックポリマー(SIBS)、ポリウレタン、弾性ポリマー、織物、ポリマーの多層膜、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0023】
図3に示す実施形態では、拡張バルーン44は砂時計の形状を有し、これは、以下で説明するように、内視鏡を用いた手術中に、胆管12およびファーター膨大部22の制御された拡張を可能にする。特に、近位端68から遠位端72まで、拡張バルーン44は、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84を含む。拡張バルーン44は、例えば、約0.050mmの壁厚を有し、これは、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84にわたって一定であり得る。図3に示す実施形態では、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84の形状および直径は変化する。拡張バルーン44のこれらの部分の様々な形状および直径は、図5A-7Cに関して以下でより詳細に説明する。
【0024】
拡張バルーンの遠位部分82は、遠位に面する表面86を有し、医療器具32が使用されているときに、内部に物質10を移動させることができる。図3に示す実施形態では、遠位に面する表面86は、凹面として示されている。遠位に面する表面86の凹面は、以下でより詳細に説明するように、物質10がその中に捕捉され、または除去されるために固定され得る空間を形成する。しかしながら、遠位に面する表面86は、凹面であることに限定されず、図11A-11Cに関して以下で説明するように、平坦状または凸状であってもよいし、または凹部を有してもよい。拡張バルーン44の中央開口部70は、拡張バルーン44の全長にわたって延びる。さらに、1つ以上のマーカーバンドが、拡張バルーン44上に設けられてもよい。図3に示す実施形態では、2つのマーカーバンドが設けられており、一方のマーカーバンド88は、拡張バルーン44の近位部分78と中央部分80との間に配置され、他方のマーカーバンド90は、中央部分80と遠位部分82との間に配置されている。
【0025】
拡張バルーン44は、例えば、ナイロンで形成されてもよい。しかしながら、拡張バルーン44を形成する材料は、ナイロンに限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEBAX(登録商標)、または他の適切な材料などの別の材料であってもよい。上記のように、拡張バルーン44は、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84の間で様々な形状および直径を有し得、自由成形を使用して形成され得る。しかしながら、延伸ブロー成形、押し出しブロー成形などの別の技術を使用して拡張バルーン44を形成してもよい。拡張バルーン44は、柔軟性材料または非柔軟性材料で形成され得る。拡張バルーン44の様々な形状および直径の詳細は、図5A-7Cを参照して以下でより詳細に説明する。
【0026】
図3では、拡張バルーン44の遠位側において、チューブ40は、近位端92を通って、中央開口部94を通って、取り出し部材46の遠位端96内に延び、取り出し部材46は、治療部分38の遠位先端で終端して、治療部分38の尖端50を形成する。図3に示すように、取り出し部材46がバルーンである場合、取り出し部材46は、近位ネック部分98、中央部分100、および遠位ネック部分102を有する。チューブ40は、取り出し部材46の中央部分100内に配置された周方向開口104を有する。図3に示すように、膨張状態にあるとき、取り出し部材46の中央部分100は、卵形状の外形を有する。取り出し部材46の中央部分の直径D46は、例えば、約11mmであり、取り出しバルーン46の長さL46は、例えば、約11mmである。しかしながら、取り出し部材46の直径D46および長さL46は、これらの値に限定されず、それぞれ、約5mm~13mmおよび約5mm~13mmの範囲内であってもよい。
【0027】
取り出し部材46がバルーンである場合、取り出し部材46は、例えば、ナイロンで形成され得る。しかしながら、取り出し部材46を形成する材料は、ナイロンに限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEBAX(登録商標)、または他の適切な材料などの他の材料であってもよい。上記のように、バルーンとしての取り出し部材46は、卵形状を有しており、近位ネック部分98、中央部分100、および遠位ネック部分102の特定の直径を有し、自由成形を使用して形成され得る。しかしながら、延伸ブロー成形、押し出しブロー成形などの他の技術を使用して、取り出し部材46を形成してもよい。バルーンなどの取り出し部材46は、柔軟性材料または非柔軟性材料から形成され得る。
【0028】
図4は、図3の断面線4-4に沿って取得された、チューブ40およびシース42の断面図を示す。図4に示すように、チューブ40は、ガイドワイヤルーメン106、造影剤ルーメン108、および取り出し部材拡張ルーメン110を含む、少なくとも3つのルーメンを有する。ガイドワイヤルーメン106は、ハンドル54のガイドワイヤポート56から延びて、医療器具32の治療部分38の遠位先端50を貫通して延びることができるガイドワイヤ48を受け入れる。造影剤ルーメン108は、ハンドル54の造影剤ポート58を介して造影剤物質供給源から造影剤物質(または他の所望の流体)を受け入れる。さらに、取り出し部材46がバルーンである場合、取り出し部材拡張ルーメン110は、取り出し部材拡張ポート60を介して流体供給源から取り出し部材46の膨張のための流体を受け入れる。すなわち、流体が取り出し部材拡張ルーメン110およびチューブ40の周方向開口104を通って供給されるとき、取り出し部材46は膨張する。さらに、拡張バルーン膨張ルーメン112は、チューブ40の外周面とシース42の内周面との間に形成されており、拡張バルーン膨張ポート64に接続されている。拡張バルーン膨張ルーメン112は、図3に示すように、注射器66から拡張バルーン44の膨張のための流体を受け入れる。すなわち、流体が拡張バルーン膨張ルーメン112およびシース42の周方向開口部74を通って供給されるとき、拡張バルーン44は膨張する。
【0029】
図3では、取り出し部材46がバルーンである場合、取り出し部材46の近位ネック部分98および遠位ネック部分102は、チューブ40の外周囲に密着して、取り出し部材拡張ルーメン100から受け入れる流体が部材拡張ルーメン110から漏出することを防止する。同様に、拡張バルーン44の近位ネック部分76および遠位ネック部分84は、シース42が拡張バルーン44の遠位端72を超えて終端する場合、シース42の外周囲に密着して、膨張バルーン膨張ルーメン112から受け入れる流体が膨張バルーン44からの漏出することを防止する。シース42が拡張バルーン44の遠位端72の近位側で終端する場合、拡張バルーン44の遠位ネック部分84は、チューブ40の外周囲に密着して、拡張バルーン膨張ルーメン112から受け入れる流体が膨張バルーン44から漏出することを防止する。さらに、取り出し部材46の近位ネック部分98および拡張バルーン44の遠位ネック部分84は、拡張部材46の拡張バルーン44の中への過度の引き込みを防止するために、頑丈な停止スリーブを形成する。
【0030】
図5A図5Dは、本発明の一実施形態に係る、拡張バルーン44のさらなる詳細を示す。図5Aは、近位部分78、中央部分80、および遠位部分82によって画定される砂時計形状を有する拡張バルーン44の斜視図を示す。遠位部分82は、球形状または球根形状である。図5Aはまた、拡張バルーン44の遠位側に面する表面86を示す。図5Bは、拡張バルーン44の側面図であり、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84のそれぞれの長さを示す。すなわち、近位ネック部分76は長さL76を有し、近位部分78は長さL78を有し、中央部分80は長さL80を有し、遠位部分82は長さL82を有し、遠位ネック部分84は長さL84を有する。近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84の長さの間の関係は、以下の通りであり得る:L76<L84<L80=L82<L78。しかしながら、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84の長さの間の関係は、これらの関係に限定されず、異なっていてもよい。
【0031】
図5Cは、図5Bの線5C-5Cに沿って取得した拡張バルーン44の断面図である。この実施形態では、近位ネック部分76および遠位ネック部分84は、それぞれほぼ一定の直径D76およびD84を有し、一方、近位部分78、中央部分80、および遠位部分82は、それぞれの長さにわたって様々な直径を有し得る。すなわち、近位部分78は、約20mmの近位部分最大直径D78_MAX、および約10mmの近位部分最小直径D78_MINを有し、中央部分80は、約18mmの中央部分最大直径D80_MAX、および約8mmの中央部分最小直径D80_MINを有し、遠位部分82は、約20mmの遠位部分最大直径D82_MAX、および約10mmの遠位部分最小直径D82_MINを有し得る。しかしながら、拡張バルーン44の近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84のそれぞれの直径は、これらのそれぞれの値に限定されず、異なっていてもよい。
【0032】
図5Cに示すように、近位部分78は、近位部分78の近位端であって近位ネック部分76に対して最も近接する部位において、近位部分最小直径D78_MINを有し、近位部分78の遠位端の近傍であって中央部分80に最も近接する部位において、近位部分最大直径D78_MAXを有する、テーパ形状を有する。中央部分80は、その中央に中央部分最小直径D80_MINを有し、その近位端および遠位端のそれぞれに中央部分最大直径D80_MAXを有する、拡張バルーン44のネックを形成する湾曲した両凸外形を有する。さらに、遠位部分82は、球形または球根のような形状をなして、湾曲状の両凸形状を有し、遠位部分最小直径D82_MINは、遠位部分の近位端にあり、遠位部分最大直径D82_MAXは、遠位部分の中央にある。拡張バルーン44の外周面は、少なくとも近位部分78、中央部分80、および遠位部分82にわたって連続的かつ滑らかであり得る。
【0033】
図5Cに示す実施形態では、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84の直径の間の関係は、以下の通りであり得る:D76=D84=D78_MIN<D80_MIN<D78_MAX=D80_MAX=D82_MIN<D82_MAX。すなわち、拡張バルーン44が膨張したとき、遠位部分の最大直径D82_MAXは、中央部分の最大直径D80_MAXより大きく、中央部分の最大直径D80_MAXは、近位部分の最大直径D78_MAX以下である。しかしながら、近位ネック部分76、近位部分78、中央部分80、遠位部分82、および遠位ネック部分84の直径の間の関係は、これらの関係に限定されず、変動し得る。中央部分の最大直径D80_MAXが、遠位部分の最大直径D82_MAXおよび近位部分の最大直径D78_MAXよりも小さい場合、拡張バルーン44の中央部分80は、内視鏡手術中に拡張バルーン44がファーター膨大部に出入りする可能性を低減させるアンカーを形成する。
【0034】
図5Dは、拡張バルーン44の遠位方向に面する表面86を示す拡大図である。特に、図5Dは、拡張バルーン44の遠位面86と遠位ネック部分84との間の角度θを示す。角度θは鋭角であり、より具体的には、例えば、約80度~85度の間であり得る。すなわち、図5A~5Dに示す実施形態では、遠位面86は、拡張バルーン44の遠位部分82に対して凹状をなす。しかしながら、遠位面86は、凹面であることに限定されず、図11A~11Cを参照して以下に説明するように、平坦状また凸状であってもよいし、または凹部を含んでもよい。
【0035】
図6A~6Cは、本発明の代替的実施形態にかかる拡張バルーン114を示す。図6Aは、近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124を含む拡張バルーン114を示す側面図である。図6Aはまた、近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124のそれぞれの長さを示す。すなわち、近位ネック部分116は長さL116を有し、近位部分118は長さL118を有し、中央部分120は長さL120を有し、遠位部分122は長さL122を有し、遠位ネック部分124は長さL124を有する。近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124の長さの間の関係は、以下の通りであり得る:L116<L124<L118=L120=L122。しかしながら、近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124の直径および長さの間の関係は、これらの関係に限定されず、異なっていてもよい。
【0036】
図6Bは、図6Aの線6B-6Bに沿って取得した拡張バルーン114を示す断面図である。この実施形態では、近位ネック部分116および遠位ネック部分124は、それぞれ一定の直径D116およびD124を有し、一方、近位部分118、中央部分120、および遠位部分122は、それぞれの長さにわたって様々な直径を有する。すなわち、近位部分118は、約20mmの近位部分最大直径D118_MAX、および約20mmの近位部分最小直径D118_MINを有し、中央部分120は、約18mmの中央部分最大直径D120_MAX、および約8mmの中央部分最小直径D120_MINを有し、遠位部分122は、約20mmの遠位部分最大直径D122_MAX、および約10mmの遠位部分最小直径D122_MINを有し得る。しかしながら、拡張バルーン114の近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124のそれぞれの直径は、これらのそれぞれの値に限定されず、異なっていてもよい。
【0037】
図5A~5Dに示す実施形態の拡張バルーン44と同様に、図6A~6Cに示す拡張バルーン114の近位部分118は、テーパ付きの形状を有しており、近位部分118の近位端であって近位ネック部分116に最も近接する部位において、近位部分の最小直径D118_MINを有し、近位部分の遠位端の近傍であって中央部分120に最も近接する部位において、近位部分の最大直径D118_MAXを有する。中央部分120は、その中央に中央部分の最小直径D120_MINを有し、その近位端および遠位端のそれぞれに中央部分の最大直径D120_MAXを有する、拡張バルーン114のネックを形成する湾曲状の両凹外形を有する。
【0038】
図5A~5Dに示す実施形態に対比して、図6A~6Cに示す拡張バルーン114の遠位部分122は、遠位部分122の近位端に湾曲状の輪郭を有する半球状部分126、および遠位部分122の遠位端に直線状の輪郭を有する円筒状部分128を含む。遠位部分の最小直径D122_MINは、遠位部分122の半球状部分126の近位端にあり、遠位部分の最大直径D122_MAXは、遠位部分122の円筒状部分128に沿って一定である。遠位部分122はまた、遠位方向に面する表面130を有し、これは、この実施形態では、遠位部分122に対して凹面である。拡張バルーン114の外周面は、少なくとも近位部分118、中央部分120、および遠位部分122にわたって連続的かつ滑らかであり得る。
【0039】
図6A~6Cに示す実施形態では、近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124の直径の間の関係は、以下の通りである:D116=D124=D118_MIN<D120_MIN<D118_MAX=D120_MAX=D122_MIN<D122_MAX。しかしながら、近位ネック部分116、近位部分118、中央部分120、遠位部分122、および遠位ネック部分124の直径の間の関係は、これらの関係に限定されず、異なっていてもよい。
【0040】
図6Cは、拡張バルーン114の遠位方向に面する表面130を示す拡大図である。特に、図6Cは、拡張バルーン114の遠位表面130と遠位ネック部分124との間の角度Δを示す。角度Δは鋭角であり、より具体的には、例えば、約80度~85度の間の角度であり得る。すなわち、図6A~6Cに示す実施形態では、遠位表面130は、拡張バルーン114の遠位部分122に対して凹状である。しかしながら、遠位面130は、凹面であることに限定されず、図11A~11Cを参照して以下に説明するように、平坦状または凸状であってもよいし、または凹部を含んでもよい。
【0041】
図7A~7Cは、本発明のさらに別の実施形態にかかる拡張バルーン132を示す。図7Aは、近位ネック部分134、近位テーパ部136、近位両凸部138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック部分144を含む拡張バルーン132を示す側面図である。近位両凸部138は、球状または球根状であり、中央部分140は、拡張バルーン132の湾曲したネックを形成する。さらに、遠位部分142は、球状または球根状である。図7Aはまた、近位ネック部分134、近位テーパ部136、近位両凸部138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック部分144のそれぞれの長さを示す。すなわち、近位ネック部分134は長さL134を有し、近位テーパ部136は長さL136を有し、近位両凸部138は長さL138を有し、中央部分140は長さL140を有し、遠位部分142は長さL142を有する。そして、遠位ネック部分144は、長さL144を有する。近位ネック部分134、近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック部分144の長さの間の関係は、以下の通りであり得る:L134<L140<L144<L136<L142<L138。しかしながら、近位ネック部分134、近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック144の長さの間の関係は、これらの関係に限定されず、変わってもよい。
【0042】
図7Bは、図7Aの7B-7Bの線に沿って取得された、拡張バルーン132を示す断面図である。この実施形態では、近位ネック部分134および遠位ネック部分144は、それぞれ一定の直径D134およびD144を有し、一方、近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、および遠位部分142は、それぞれの長さにわたって様々な直径を有し得る。すなわち、近位テーパ部分136は、約8mmの近位テーパ部分最大直径D136_MAX、および約6mmの近位テーパ部分最小直径D136_MINを有し、近位両凸部分138は、約20mmの近位両凸部分最大直径D138_MAX、および約10mmの近位両凸部分最小直径D138_MINを有し、中央部分140は、が約18mmの中央部分最大直径D140_MAX、および約8mmの中央部分最小直径D140_MINを有し、遠位部分142は、例えば、約20mmの遠位部分最大直径D142_MAX、および、約10mmの遠位部分最小直径D142_MINを有する。しかしながら、拡張バルーン132の近位ネック部分134、近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック部分144の直径は、これらのそれぞれの値に限定されず、異なっていてもよい。
【0043】
図5A~5Dおよび図6A~6Cに示す実施形態の拡張バルーン44および拡張バルーン114と同様に、拡張バルーン132の近位テーパ部分136は、テーパの付いた外形を有し、近位テーパ部分136の近位端であって近位ネック部分134に最も近接する部位において近位テーパ部分136最小直径D136_MINを有し、および近位テーパ部分136の遠位端の近傍であって近位両凸部分138に最も近接する部位において近位テーパ部分最大直径D136_MAXを有する。しかしながら、上記実施形態の拡張バルーン44および拡張バルーン114とは対照的に、拡張バルーン132は、近位テーパ部分136と中央部分140との間に近位両凸部分138を有する。近位両凸部分138は、両凸外形を備える球形を有する。図7Bに示すように、近位両凸部分138の近位端および遠位端はそれぞれ、近位両凸部分の最小直径D138_MINを有し、近位両凸部分138の中央は、近位両凸部分の最大直径D138_MAXを有する。中央部分140は、中央部分140の近位端であって近位テーパ部分136に最も近接する部位において中央部分の最大直径D140_MAXを有し、および中央部分140の遠位端であって遠位部分142に最も近接する部位において中央部分最小直径D140_MINを有する湾曲したテーパ外形を有する。
【0044】
加えて、図5A~5Dに示す形態と同様に、拡張バルーン132の遠位部分142は、湾曲した両凸外形を有する。図7Bに示すように、遠位部分の最小直径D142_MINはその近位端と遠位端のそれぞれにあり、遠位部分の最大直径D142_MAXはその中央にある。遠位部分142はまた、この実施形態では平坦面をなす遠位方向に面する表面146を有する。拡張バルーン132の外周面は、少なくとも近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、および遠位部分142にわたって連続的かつ滑らかであり得る。
【0045】
図7Bに示す実施形態では、近位ネック部分134、近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック部分144の直径の間の関係は、以下の通りである:D134=D144=D136_MIN<D136_MAX=D138_MIN=D140_MIN=D142_MIN<D142_MAX<D138_MIN=D140_MAX<D138_MAX。つまり、図5A~5Dおよび図6A~6Cに示す実施形態とは対照的に、最大の直径を有する拡張バルーン132の部分は、遠位部分142ではなく、近位両凸部分138である。しかしながら、近位ネック部分134、近位テーパ部分136、近位両凸部分138、中央部分140、遠位部分142、および遠位ネック部分144の直径の間の関係は、これらの関係に限定されず、異なっていてもよい。
【0046】
図7Cは、拡張バルーン132の遠位側に面する表面146を示す拡大図である。特に、図7Cは、拡張バルーン132の遠位面146と遠位ネック部分144との間に形成される直角を示す。すなわち、図7A~7Cに示す実施形態では、遠位側に面する表面146は、拡張バルーン132の遠位ネック部分144の外周面に対して垂直をなす。遠位方向に面する表面146は平坦面として示されているが、遠位方向に面する表面146はそのように限定されず、湾曲状、凹状、または凸状であってもよいし、凹部を含んでもよい。
【0047】
図8は、内視鏡手術中に医療器具32を使用する方法800を示す。工程802では、医療器具32は、患者の十二指腸18などの管腔内に進められる。この工程では、医療器具32は、患者の胃腸管の十二指腸18内に配置された十二指腸鏡16内で前進させられる。十二指腸鏡16の遠位開口部20は、ファーター膨大部22の膨大部に面するように配置され得る。ガイドワイヤ48は、医療器具32、遠位開口部20、およびファーター膨大部22を通過して胆管12内に前進させられる。図2に示すように、医療器具32の治療部分38(収縮、短縮状態)はガイドワイヤ48上で前進させられて、胆管12内に配置される。
【0048】
次に、工程804では、取り出し部材46、ここではバルーンは、図2に示すように、物質10の遠位側を超えて配置される。工程806では、拡張バルーン44は、図2に示すように、物質10の近位側に配置される。工程808では、拡張バルーン44が膨張される。工程810では、胆管12から物質10を取り出すために、取り出し部材46は、近位側に(すなわち、十二指腸18に向かって戻る方向に)引っ張られる。この工程では、物質10は、取り出し部材46と拡張バルーン44の遠位側に面する表面86との間に挟まれる。すなわち、取り出し部材46が近位方向に引っ張られている間、拡張バルーン44は、その間、静止して維持され、物質10は、物質10が取り出し部材46と拡張バルーン44との間に挟まれて固定されるまで、凹状の遠位側に面する表面86によって形成された空間の中に押圧される。拡張バルーン44および取り出し部材46は、拡張バルーン44がシース42に取り付けられており、取り出し部材46がチューブ40に取り付けられており、シース42がチューブ40に対して移動可能であることにより、互いに別々に移動可能である。さらに、拡張バルーン44および取り出し部材46は、流体が内部を通過して拡張バルーン44を膨張させるシース42の周方向開口部74、および流体が内部を通過して取り出し部材46を膨張させるチューブ40の周方向開口部104によって、互いに別個に膨張可能である。
【0049】
次に、治療部分38(取り出し部材46および拡張バルーン44を含む)を胆管12から引き抜き得る。次に、一実施形態では、十二指腸鏡16および器具32をともに患者の体内から除去し得る。別の実施形態では、器具32の全部または一部は、遠位開口部20を介して十二指腸鏡16に引き戻され、次いで、除去された物質10を含む医療器具32は、患者の体内から除去され得る。
【0050】
方法800は、工程802から810を含むものとして記載されているが、方法800は、追加の工程を含み得る。例えば、方法800は、物体10の遠位側に取り出し部材46を配置する工程804を実施する前に、胆管12にカニューレを挿入することと、ガイドワイヤ48をその中に配置することと、医療器具32の遠位先端50がファーター膨大部22に対して配置されるまで、医療器具32を十二指腸18内に前進させることと、治療部分38をガイドワイヤ48の上で胆管内に前進させることとを含み得る。
【0051】
さらに、取り出し部材46がバルーンである場合、方法800はまた、取り出し部材46を膨張させる追加の工程を含み得る。取り出し部材46を膨張させる工程は、取り出し部材46が物質の遠位側を超えて配置される工程804の後、拡張バルーン44が膨張される工程808の前、同時、または後に実施されてもよい。方法800はまた、膨張した取り出し部材46と膨張した拡張バルーン44との間に挟まれた物質10を胆管12から十二指腸18の中に引き抜く工程を含み得る。方法800はまた、物質10を十二指腸18の中に引き抜く前に、取り出し部材46および拡張バルーン44を収縮させる工程を含み得る。
【0052】
さらに、物質10が上記方法800の工程を使用して移動させることが特に困難である場合、代替の実施形態では、方法800は、拡張バルーン44を収縮させる工程、胆管12内で近位方向に拡張バルーン44を移動させる工程、および次に拡張バルーン44を再膨張させる工程をさらに含み得る。次に、物質10を拡張バルーン44に向かって移動させるために、取り出し部材46を近位方向に引っ張り得る。これらの工程は、物質10が自由に移動するようになるまで、または胆管12から除去されるまで繰り返され得る。
【0053】
代替の実施形態では、拡張バルーン44および取り出し部材46は、拡張、または膨張され、同時に移動され得る。
別の代替の実施形態では、方法800は、物質10、ならびに胆管の寸法および複雑さの透視画像を形成するために、造影剤ポート58および造影剤ルーメン108を介して胆管12の中に造影剤を注入する工程を含み得る。この代替の実施形態では、造影剤は、取り出し部材46が物質10の遠位側に配置される工程804の前、または後に注入され得る。
【0054】
さらに別の代替の実施形態では、方法800は、マーカーバンド88および90を使用して、胆管12内の拡張バルーン44の位置を確認する工程を含み得る。すなわち、マーカーバンド88,90を使用して、拡張バルーン44の中央部分80が少なくともファーター膨大部22内に配置されること、および拡張バルーン44の遠位部分82が胆管12の内部に少なくとも配置されることを確認し得る。拡張バルーン44の少なくとも中央部分80および遠位部分82の位置を確認する工程は、拡張バルーン44を膨張させる工程808の前に実施され得る。
【0055】
さらに別の代替の実施形態では、方法800は、図9に示すように、工程808で拡張バルーン148を第1、すなわち初期の膨張直径D148_1に膨張させた後、拡張バルーン148を第2、すなわちその後の膨張直径D148_2に膨張させる追加の工程を含み得る。この代替の実施形態では、物質10が、例えば、胆管内に位置する大きな石である場合、胆管12から石を取り出すために、ファーター膨大部22をさらに拡張させる必要がある。したがって、拡張バルーン148は、工程808において第1の膨張直径D148_1まで膨張され、抽出バルーン46が近位方向に引っ張られる工程810の前に、拡張バルーン148は、第2の膨張直径D148_2までさらに膨張され得る。この実施形態の拡張バルーン148は、図5A~5Dに示す拡張バルーン44、図6A~6Cに示す拡張バルーン114、または図7A~7Cに示す拡張バルーン132と同一の構造を有し得る。拡張バルーン148は、遠位部分の最大直径D150_MAXを有する少なくとも遠位部分150を含む。第1の膨張直径D148_1および第2の膨張直径D148_2は、図9に示すように拡張バルーン148の遠位部分の最大直径D150_MAXに関して、すなわち、拡張バルーン148の長手方向軸線A-Aに対して、遠位部分150の中心を横断して定義され得る。
【0056】
さらに、別の代替の実施形態では、取り出し部材46は、図10に示すように、取り出し網152であり得る。医療器具32は、図3に示すものと同一、または類似し得る。この代替の実施形態によれば、方法800は、取り出し網152を物質10の遠位側に配置した後、取り出し網152を展開する工程をさらに含み得る。
【0057】
さらに別の代替の実施形態では、拡張バルーンは、スポンジ材料で形成することができ、すなわち拡張スポンジであり得る。この代替の実施形態では、拡張スポンジは、医療器具32が胆管12内に配置されるまで、シース40内に収容される。次に、拡張スポンジは、展開、すなわち、シース40の外側に延ばされ、そして胆管12を拡張させるとともに拡大させることができる。拡張スポンジは、胆管12からの物質10の取り出し中に、拡張スポンジが胆管12およびファーター膨大部22を拡張するという点で、上記拡張バルーン44と同じように機能し得る。
【0058】
さらに、別の代替の実施形態では、拡張バルーン154は、図11A~11Cに示すように、拡張バルーン154の遠位方向に面する表面158に凹部156を備えていてもよい。凹部156は、拡張バルーン154の遠位部分160内で、遠位方向に面する表面158から、遠位部分160の長さ以下である深さD156まで近位方向に延びる。より具体的には、凹部は、遠位部分160の長さの半分以下である深さD156を有し得る。この代替の実施形態では、取り出し部材46はバルーンであり、物質10の遠位側に配置されて胆管12内で膨張され、拡張バルーン154は、図11Aに示すように、物質10の近位側に配置されて膨張される。図11Bに示すように、取り出し部材46が工程810で近位方向に引っ張られると、拡張バルーン154は静止した状態で維持され、取り出し部材46は、胆管12内の物質10を膨張した拡張バルーン154の凹部156内に移動させる。次に、次の工程では、図11Cに示すように、取り出し部材46および拡張バルーン154を収縮させて、物質10を凹部156内に閉じ込め、または囲み得る。次に、治療部分38を胆管12から引き抜いて、物質10を胆管12から安全かつ確実に除去し得る。
【0059】
図11A~11Cに関して説明した実施形態の修正形態において、拡張バルーン154は、凹部156に加えて、流体注入チャネルを有する。流体注入チャネルは、チューブ50の流体注入ルーメンに連結され得る。この代替の実施形態では、方法800は、取り出し部材46を物質10の遠位側に配置した後、取り出し部材46を近位方向に引っ張る工程810の前に、物質10を破砕する工程を含み得る。物質10を破砕する工程は、例えば、流体(例えば、水)を高圧で流体注入チャンネルに供給することを含む。水が水注入チャンネルを出るとき、水は物質に向けられて物質10を比較的小さいサイズの断片に破砕する。拡張された取り出し部材46は、物質10の小さな断片が胆管内で遠位側に移動することを防止する。次に、取り出し部材46は、工程810で近位方向に引っ張られ、それによって、物質10の断片を拡張バルーン154の凹部156内に移動させることができる。次の工程では、取り出し部材46および拡張バルーン154を収縮させて、それにより、物質10を凹部156内に閉じ込めることができる。次に、物質10を胆管12から安全かつ確実に除去するために、治療部分38を胆管12から引き抜き得る。
【0060】
医療器具32は、内視鏡手術中に使用されると説明されているが、医療器具32は、例えば、腎臓結石を除去する処置などの他の医療処置に使用することができる。
本発明の医療器具32のおかげで、物質10は、胆管12の壁への外傷を防止しながら、患者の胆管12から安全かつ確実に除去することができる。取り出し部材46および拡張バルーン44は、それらの間に物質10を捕捉するように機能し、物質10による胆管12の壁の擦り傷または裂傷を防止する。
【0061】
図5A~5Cに示す実施形態の拡張バルーン44は、物質10のすぐ近位側にある胆管12を拡大させ、物質10によって引き起こされる胆管12への潜在的な外傷を低減し、医療器具32の操作性を改善する。さらに、拡張バルーン44の近位テーパ部分78は、十二指腸18への入口(すなわち、胆管12と十二指腸18との間の開口部)においてファーター膨大部22の漸進的な拡張を可能にする。さらに、上記のように、拡張バルーン44の中央部分80は、内視鏡手術中に拡張バルーンがファーター膨大部22の中に出入りする可能性を低減する「アンカー」として機能する。
【0062】
図6A~6Cに示す実施形態の拡張バルーン114も同様に、物質10に直ぐ近位側の胆管12の拡大させるために設けられており、これは、物質10によって引き起こされる胆管12への潜在的な外傷を低減し、医療器具32の操作性を改善する。その凹部を含む遠位方向に面する表面130の形状は、手術中に物質10の比較的より確実な捕捉を提供する。拡張バルーン44の近位テーパ部分78と同様に、拡張バルーン114の近位テーパ部分118は、十二指腸18への入口においてファーター膨大部22の漸進的な拡張を可能にする。さらに、拡張バルーン44の中央部分80と同様に、拡張バルーン114の中央部分120は、内視鏡手術中、拡張バルーンがファーター膨大部22の中に出入りする可能性を低減させる「アンカー」として機能する。
【0063】
さらに、図7A~7Cに示す実施形態の拡張バルーン132は、同様に、物質10の直ぐ近位側の胆管12を拡大させて、物質10によって引き起こされる胆管への潜在的な外傷を低減するとともに、医療器具32の操作性を改善する。拡張バルーン44の近位テーパ部分78と同様に、拡張バルーン132の近位テーパ部分136は、十二指腸への入口においてファーター膨大部22の漸進的な拡張を可能にする。さらに、拡張バルーン44の中央部分80と同様に、拡張バルーン132の中央部分140は、内視鏡手術中、拡張バルーンがファーター膨大部22の中に出入りする可能性を低減する「アンカー」として機能する。この実施形態の拡張バルーン132、および特に、拡張バルーン132の近位両凸部分138は、内視鏡手術中、治療部分38の近位端であって、十二指腸18に最も近接する部位において拡張バルーン132の比較的大きな部分を必要とする可能性のある生体構造のバリエーションに対応する。
【0064】
さらに、本明細書に記載のように、医療器具32の拡張バルーン44を配置および膨張させることにより、物質10の近位側の管腔を制御された方法で拡大または拡張させることができることにより、物質10を胆管12の外部に引っ張るのに必要な力を低減して、取り出し部材46がバルーンである場合に、取り出し部材46が破裂するリスクを低減する。拡張バルーン44の砂時計形状は、内視鏡手術中、特に物質10の引き抜き中に、胆管12および/またはファーター膨大部22の滑らかな伸長を可能にする。さらに、患者の胆管12が「S状」胆管である場合、例えば、湾曲状または三日月形状である場合には、拡張バルーン44は、胆管12を拡張し、手術を行う操作者によるトルクを付与する必要性を低減する。
【0065】
また、本明細書に記載の医療器具32および関連する方法800のおかげで、EPBDなどの内視鏡手術中に使用するための単一の装置が提供される。結果として、装置の挿入または交換中における装置のもつれ、ガイドワイヤの位置の喪失、手術に関連するコストの増加、手術を完了するために必要な時間の増加、患者の胃腸管の侵襲性の増加および増悪、および感染または傷害についての患者へのリスクの増加などの複数の装置を使用することに伴う問題を、排除したり、低減したりすることができる。
【0066】
本発明の原理は、特定の用途の例示的な例を参照して本明細書に記載されているが、本発明はそれに限定されないことを理解されたい。当業者および本明細書で提供される教示へのアクセスを有する者は、追加の修正、応用、および同等物の置換はすべて、本明細書に記載の実施例の範囲内にあることを認識するであろう。したがって、本発明は、上記説明によって限定されると見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C