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特許7640591異常検出装置、異常検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】異常検出装置、異常検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
G01S7/497
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022579597
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2022004201
(87)【国際公開番号】W WO2022168903
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2021015536
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】細井 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩井 智昭
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-343457(JP,A)
【文献】特開2013-160545(JP,A)
【文献】特開2020-016481(JP,A)
【文献】特開2019-144186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0141716(US,A1)
【文献】特開2020-056662(JP,A)
【文献】特開2009-086182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する異常検出部と、
を備え、
前記異常検出部は、一走査内における前記光の強度および前記距離の少なくとも一方のばらつきが基準範囲内であるときに、前記制御部は異常であると判断し、前記距離が基準値以下の場合は、前記制御部が異常であるとは判断しない、異常検出装置。
【請求項2】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する異常検出部と、
前記距離の分布を用いて、反射点を有する対象物の種類を推定する種類推定部と、
を備え、
前記異常検出部は、前記種類の推定結果と、前記距離の分布に基づいて推定される前記対象物の形状と、を用いて、前記制御部の異常の有無を判断する、異常検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の異常検出装置において、
前記異常検出部は、前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方において、一走査内におけるすべての値が前記基準範囲内のときに、前記制御部は異常であると判断する、異常検出装置。
【請求項4】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された前記反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する異常検出部と、
を備え、
前記異常検出部は、
複数の前記走査それぞれにおいて、前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方の分布を特定し、
前記複数の走査それぞれにおける前記分布の比較結果を用いて前記制御部の異常の有無を判断し、前記距離が基準値以下の場合は、前記制御部が異常であるとは判断しない、異常検出装置。
【請求項5】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出方法であって、
コンピュータが、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する処理を実行し、
前記処理において、一走査内における前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方のばらつきが基準範囲内であるときに、前記制御部は異常であると判断し、前記距離が基準値以下の場合は、前記制御部が異常であるとは判断しない、異常検出方法。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された前記反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出方法であって、
コンピュータが、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する異常検出処理と、
前記距離の分布を用いて、反射点を有する対象物の種類を推定する種類推定処理と、
を実行し、
前記異常検出処理において、前記コンピュータが、前記種類の推定結果と、前記距離の分布に基づいて推定される前記対象物の形状と、を用いて、前記制御部の異常の有無を判断する、異常検出方法。
【請求項7】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する機能であって、一走査内における前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方のばらつきが基準範囲内であるときに、前記制御部は異常であると判断し、前記距離が基準値以下の場合は、前記制御部が異常であるとは判断しない異常検出機能を持たせるプログラム。
【請求項8】
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
対象物における前記光の反射光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された前記反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記受光部により検出された反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記光の照射方向が固定される異常又は前記光の走査範囲が狭くなる異常の有無を判断する異常検出機能と、
前記距離の分布を用いて、反射点を有する対象物の種類を推定する種類推定機能と、
を持たせ、
前記異常検出機能は、前記種類の推定結果と、前記距離の分布に基づいて推定される前記対象物の形状と、を用いて、前記制御部の異常の有無を判断する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置の異常を検知する異常検出装置、異常検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、光学的手法で対象物までの距離を測定する測定装置の用途が広がっている。このような測定装置の検査を行う方法としては、例えば特許文献1に記載の方法がある。特許文献1に記載の方法は、測定装置の光軸のずれを測定するための方法であり、前方板及び後方板を有する光軸調整装置を用いることが記載されている。前方板は後方板より前に位置しており、測定装置から照射された光を透過させるための孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-56662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学的な測定装置は、光の照射方向を制御する制御部を有している。この制御部に異常が生じた場合、測定装置は光の照射方向を制御できなくなる。本発明が解決しようとする課題の一例は、光学的な手法を用いる測定装置において、光の照射方向を制御する制御部の異常を検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
前記光の反射光を検出する受光部と、
前記反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置であって、
前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記制御部の異常の有無を判断する異常検出部と、
を備える異常検出装置である。
【0006】
請求項10に記載の発明は、
光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
前記光の反射光を検出する受光部と、
前記反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出方法であって、
コンピュータが、一走査内における前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記制御部の異常の有無を判断する、異常検出方法である。
【0007】
請求項11に記載の発明は、光源と、
前記光源からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する制御部と、
前記光の反射光を検出する受光部と、
前記反射光を用いて当該反射光の反射点までの距離を算出するデータ生成部と、
を備える測定装置の異常を検出する異常検出装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、一走査内における前記反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方を用いて、前記制御部の異常の有無を判断する異常検出機能を持たせるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る異常検出装置の構成を、測定装置の構成と共に示す図である。
図2】測定装置の制御部が正常に動いているときの、光の照射範囲の一例を示す図である。
図3】測定装置の制御部が正常に動いているときの、測定データの一例を示す図である。
図4】測定装置の制御部が異常になったときの、光の照射範囲の第1例を示す図である。
図5】測定装置が図4に示した状態になったときの測定データの一例を示す図である。
図6】測定装置の制御部が異常になったときの、光の照射範囲の第2例を示す図である。
図7】測定装置の制御部が異常になったときの、光の照射範囲の第2例を示す図である。
図8】測定装置が図6又は図7に示した状態になったときの測定データの一例を示す図である。
図9】測定装置の制御部が異常であると判断するための他の条件を説明するための図である。
図10】異常検出装置のハードウェア構成例を示す図である。
図11】異常検出部が行う処理の一例を示すフローチャートである。
図12図1の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る異常検出装置20の構成を、測定装置10の構成と共に示す図である。異常検出装置20は、測定装置10が有する制御部120の異常を検知する装置である。
【0011】
まず、測定装置10の構成について説明する。測定装置10は、光源110、発光制御部112、制御部120、受光部130、及びデータ生成部140を有している。
【0012】
光源110は例えばレーザダイオードなどの発光素子を有している。発光制御部112は、光源110の発光タイミングを制御する。
【0013】
制御部120は、光源110からの光の照射方向を制御する。具体的には、制御部120は、可動反射部122及び駆動制御部124を有している。可動反射部122は、光源110からの光を反射する。可動反射部122の向きは可変である。例えば可動反射部122は、2次元で光の照射方向を制御できる。駆動制御部124は、可動反射部122の向きを制御する。可動反射部122は、例えばMEMSを有している。この場合、可動反射部122は、互いに交わる2つの方向に可動であってもよい。そして制御部120は、光源110からの光を所定の範囲内で繰り返し走査する。
【0014】
受光部130は、制御部120によって照射された光が反射点によって反射された光(以下、反射光と記載)を電気信号に変換する。この電気信号は、例えば電圧値(又は電流値)の大きさによって反射光の強度を示している。
【0015】
データ生成部140は、光源110による光の発光タイミング、及び受光部130による反射光の受光タイミングを用いて、測定装置10から反射点までの距離を算出する。そしてデータ生成部140は、測定データを生成する。この測定データは、制御部120による光の照射方向を示す情報、並びにその方向における反射点までの距離及び反射光の強度を含んでいる。
【0016】
次に、異常検出装置20について説明する。異常検出装置20は、異常検出部210を有している。異常検出部210は、データ生成部140が生成した測定データを取得する。そして異常検出部210は、複数の測定データそれぞれが有している反射点までの距離及び反射光の強度の少なくとも一方を用いて、制御部120の異常の有無を判断する。
【0017】
図2は、測定装置10の制御部120が正常に動いているときの、光の照射範囲の一例を示す図である。上記したように、制御部120は、2次元(水平方向及び垂直方向)で光の照射方向を制御できる。このため、測定装置10による光の照射範囲は2次元(以下、所定の範囲と記載)になる。そして測定装置10は、この所定の範囲内において、光を繰り返し走査する。この際、測定装置10は、離散的に光を照射する。そして測定データは複数のピクセルのデータによって構成される。ここで、複数の光の照射方向のそれぞれがピクセルに相当している。
【0018】
図3は、測定装置10の制御部120が正常に動いているときの、測定データの一例を示す図である。測定データは、複数のピクセル別に、光の照射方向を示すデータ(以下、ピクセル方位情報と記載)、そのピクセルにおける測定装置10から反射点までの距離、及び受光部130が受光した反射光の強度を含んでいる。ピクセル方位情報は、水平方向の照射角度を示す情報(以下、水平方位角情報と記載)及び垂直方向の照射角度を示す情報(以下、垂直方位角情報と記載)を含んでいる。
【0019】
そして、測定装置10による光の走査範囲(上記した所定の範囲)には、互いに異なる物(人の場合もある)が含まれている場合が多い。また、ほとんどの物は、表面に凹凸を有している。このため、ほとんどの場合、一走査内において、少なくとも一つのピクセルにおける反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方は、残りのピクセルにおける当該少なくとも一方とは異なる値をとる。
【0020】
また、測定装置10が移動している場合、及び測定装置10の測定範囲に人や車両などの移動体が出入りする場合において、第1のタイミングで行われた走査における測定データと、第2のタイミングで行われた走査における測定データとを比較した場合、少なくとも一つのピクセルにおける反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方は、残りのピクセルにおける当該少なくとも一方とは異なる値をとる。
【0021】
そして異常検出装置20の異常検出部210は、一走査内における反射光の強度及び距離の少なくとも一方を用いて、制御部120の異常の有無を判断する。また異常検出部210は、複数の走査のそれぞれで得られた測定データを比較することにより、制御部120の異常の有無を判断する。以下、これらの具体例について説明する。
【0022】
図4は、測定装置10の制御部120が異常になったときの、光の照射範囲の第1例を示す図である。図5は、測定装置10が図4に示した状態になったときの測定データの一例を示す図である。
【0023】
測定装置10の制御部120が光の照射方向を全く変更できなくなった場合(例えば可動反射部122が水平方向及び垂直方向のいずれにおいても動かなくなった場合)、駆動制御部124は光の照射方向を2次元に走査しようとしているにもかかわらず、測定装置10からの光の照射方向はある方向に固定される。この場合、図4に示すように、一走査内における反射光の強度及び前記距離の少なくとも一方(図4に示す例では双方)は、すべてのピクセルにおいてほぼ同一の値になる。そこで異常検出装置20の異常検出部210は、一走査内における距離及び反射光の強度の少なくとも一方のばらつきが第1の基準範囲内であるときに、制御部120は異常であると判断する。ここで、「ばらつき」は、例えば最大値と最小値の差であるが、他の統計的指標によって示されてもよい。
【0024】
なお、異常検出部210は、距離及び反射光の強度の少なくとも一方(双方の場合を含む)において、一走査内におけるすべての値が第2の基準範囲内であるときに、制御部120は異常であると判断する場合もある。このような場合は、例えば測定装置10が固定されており、測定装置10の照射方向がある方向に固定された場合における距離及び反射光の強度が既知の場合である。そしてこの既知の値を含むように、第2の基準範囲が設定される。
【0025】
図6及び図7は、測定装置10の制御部120が異常になったときの、光の照射範囲の第2例を示す図である。図8は、測定装置10が図6又は図7に示した状態になったときの測定データの一例を示す図である。
【0026】
測定装置10の制御部120は、水平方向(図6(A)に相当)又は垂直方向(図6(B)に相当)にのみ光の照射方向を制御できなくなる場合もある。また、制御部120は、垂直方向(図7(A)に相当)又は水平方向(図7(B)に相当)において、光の走査範囲が狭くなることがある。このような場合、図8に示すように、複数の走査それぞれの測定データを比較した時、これら測定データは互いに類似(又はほとんど同じ)になる。言い換えると、同じような測定データが繰り返し得られることになる。そこで異常検出装置20の異常検出部210は、複数の走査それぞれの測定データの差が第3の基準範囲以内になったときに、制御部120は異常であると判断する。
【0027】
より具体的には、図6に示した例において、各走査で得られた測定データ内において、水平方向(図6(A)に相当)又は垂直方向(図6(B)に相当)にのみ距離及び強度は変化するが、垂直方向(図6(A)に相当)又は水平方向(図6(B)に相当)においては距離及び強度はほぼ同じ値になる(言い換えると、ばらつきが第1の基準範囲内になる)。このようになることも、制御部120は異常であると判断するための条件に含まれてもよい。
【0028】
また、図7に示した例において、各走査で得られた測定データ内において、水平方向(図7(A)に相当)又は垂直方向(図7(B)に相当)においては距離及び強度は大きく変化するが、垂直方向(図(A)に相当)又は水平方向(図(B)に相当)においては距離及び強度はあまり変化しない(言い換えると、ばらつきが第1の基準範囲よりも大きい第4の基準範囲内になる)。このようになることも、制御部120は異常であると判断するための条件に含まれてもよい。
【0029】
なお、一走査で得られた測定データは、反射光の強度及び距離の分布を示している。このため、異常検出部210は、複数の走査それぞれにおけるこの分布の比較結果が基準を満たしたときに、制御部が異常であると判断している、ともいえる。
【0030】
なお、図4図8に示した例において、測定データ示す距離が基準値以下(例えば1m以下、好ましくは50cm以下、さらに好ましくは20cm以下)の場合、異常検出部210は、上記した条件を満たしていたとしても、制御部120は異常であるとは判断しない。その理由は、反射点を構成する対象物が測定装置10に近接していた場合、測定装置10による光の照射範囲の全体が同一の対象物で占められることがあり得るためである。この場合、制御部120が正常であったとしても、測定データは上記した条件を満たし得る。
【0031】
図9は、測定装置10の制御部120が異常であると判断するための他の条件を説明するための図である。測定データを処理すると、距離の分布を用いて、反射点を有する対象物の外形及びその種類を推定することができる。制御部120は、この種類の推定結果と、距離の分布に基づいて推定される対象物の形状と、を用いて、制御部の異常の有無を判断する。
【0032】
例えば図9(A)は、制御部120が正常な状態における対象物(この例では人)の外形を示している。一方、制御部120が図7(B)の状態になった場合、対象物の外形は、水平方向に引き伸ばされた形に歪む。そこで、制御部120は、対象物の種類別に、基準となる外形を示す外形情報を保持しておく。そして制御部120は、測定データが示す対象物の外形と、種類別の外形情報とを比較し、最も近い形状を有する種類を特定する。そして制御部120は、測定データが示す対象物の外形の、特定した種類の外形情報に対する歪みを特定し、この歪みの有無及び歪みの方向を用いて、制御部120の異常の有無及びその異常の種類を判断する。具体的には、制御部120は、対象物の外形が水平方向に引き伸ばされた形に歪んだ場合、水平方向(図7(B)に相当)において、光の走査範囲が狭くなっていると判断する。また制御部120は、対象物の外形が垂直方向に引き伸ばされた形に歪んだ場合、垂直方向(図7)に相当)において、光の走査範囲が狭くなっていると判断する。
【0033】
図10は、異常検出装置20のハードウェア構成例を示す図である。異常検出装置20は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0034】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0035】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0036】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0037】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040は異常検出部210を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。
【0038】
入出力インタフェース1050は、異常検出装置20と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。例えば異常検出装置20は、入出力インタフェース1050を介して測定装置10と通信する。
【0039】
ネットワークインタフェース1060は、異常検出装置20をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。異常検出装置20は、ネットワークインタフェース1060を介して測定装置10と通信してもよい。
【0040】
図11は、異常検出部210が行う処理の一例を示すフローチャートである。測定装置10は、例えば一走査が終了するたびに測定データを生成し、異常検出装置20に出力する。そして異常検出装置20の異常検出部210は、測定装置10から測定データを取得する(ステップS10)と、この測定データを処理することにより、測定装置10の制御部120に異常が生じているか否かを判断する(ステップS20)。そして異常検出装置20は、異常が生じていると判断した時(ステップS20:Yes)、測定装置10に停止指令を出力する(ステップS30)。すると測定装置10は、測定を停止する。なお、ステップS30において、停止指令を出力する代わりに警告情報を出力してもよい。
【0041】
図12は、図1の変形例を示す図である。本図に示す例において、異常検出装置20は設けられておらず、その代わりに測定装置10は異常検出部150を有している。異常検出部150の機能は、異常検出部210の機能と同様である。言い換えると、光源110、制御部120、受光部130、データ生成部140、及び異常検出部150は、一つの装置の中に含まれている。
【0042】
以上、本実施形態によれば、異常検出装置20の異常検出部210(又は測定装置10の異常検出部150)は、測定装置10の測定データに含まれる反射光の強度及び反射点までの距離の少なくとも一方を用いて、制御部120に異常が生じているか否かを判断できる。
【0043】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0044】
この出願は、2021年2月3日に出願された日本出願特願2021-015536号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0045】
10 測定装置
20 異常検出装置
110 光源
120 制御部
122 可動反射部
124 駆動制御部
130 受光部
140 データ生成部
210 異常検出部
図1
図2
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図5
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図7
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図9
図10
図11
図12