(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法およびその関連する二次電池、電池モジュール、電池パックならびに装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20250226BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/494 20210101ALI20250226BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250226BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/443 C
H01M50/443 E
H01M50/463 A
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
H01M50/494
H01M50/403 D
(21)【出願番号】P 2023503472
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132956
(87)【国際公開番号】W WO2022110228
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】洪 ▲海▼▲藝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 建瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲蘭▼ 媛媛
(72)【発明者】
【氏名】程 ▲叢▼
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲海▼族
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111954943(CN,A)
【文献】国際公開第2013/133025(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175079(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040562(WO,A1)
【文献】特開2012-014994(JP,A)
【文献】特開2015-076289(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108511(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータであって、
基材と、
前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含み、
前記コーティングは、無機粒子および有機粒子を含み、前記有機粒子は、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成し、
前記第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の数はAとし、前記第2の有機粒子は一次粒子であり、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の数はBとすると、前記セパレータは、0.05≦A/B<1を満たすセパレータ。
【請求項2】
前記セパレータは、0.2≦A/B≦0.6を満たす請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
0.25≦A/B≦0.5である請求項2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmである請求項1または3に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径は、12μm~25μmである請求項4に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmである
請求項1~5のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~7μmである請求項6に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比≧2.0である請求項1~7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比は、2.5~4.0である請求項8に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記セパレータはさらに、
(1)前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合≦75%であることと、
(2)前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧12%であることと、
(3)前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合≦10%であることと、
(4)単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量≦3.0g/m
2であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項1~9のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記セパレータはさらに、
(1)前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合が60%~75%であることと、
(2)前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合が15%~25%であることと、
(3)前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合が2%~10%であることと、
(4)単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量1.5g/m
2~3.0g/m
2であることとのうちの1つまたは複数を満たす請求項10に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~11のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項12に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~13のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~14のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項16】
前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位‐アクリレート系モノマー単位‐スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位と不飽和ニトリル系モノマー単位とのコポリマー、スチレン系モノマー単位‐アルキレン基モノマー単位‐不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記各コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項15に記載のセパレータ。
【請求項17】
前記第2の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む請求項1~16のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項18】
前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化スズ(SnO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO
2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)のうちの1種または複数種を含む請求項1~17のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項19】
前記セパレータは、
(1)前記セパレータの透気度が100s/100mL-300s/100mLであることと、
(2)前記セパレータの横方向引張強度(MD)が1500kgf/cm
2~3000kgf/cm
2であることと、
(3)前記セパレータの縦方向引張強度(TD)が1000kgf/cm
2~2500kgf/cm
2であることと、
(4)前記セパレータの横方向破断伸びが50%~200%であることと、
(5)前記セパレータの縦方向破断伸びが50%~200%であることとのうちの1つまたは複数を満たす、請求項1~18のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項20】
前記セパレータは、
(1)前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mLであること、
(2)前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm
2~2500kgf/cm
2であること、
(3)前記セパレータの縦方向引張強度は1400kgf/cm
2~2000kgf/cm
2であること、
(4)前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%であること、
(5)前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%であること、のうちの1つまたは複数を満たす、請求項19に記載のセパレータ。
【請求項21】
前記無機粒子および前記有機粒子は、前記コーティングにおいて不均一なトンネル構造を形成
し、
前記不均一なトンネル構造はL1<L2を満たし、前記L1は任意の隣接する2つの
前記無機粒子の間の間隔
であり、前記L2は任意の隣接する
前記無機粒子と
前記有機粒子の間の間
隔である、請求項1~20のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法であって、
基材を提供するステップ(1)と、
無機粒子と、第1の有機粒子と第2の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも一側に塗布し、コーティングを形成し、乾燥させ、前記セパレータを得るステップ(3)とを含み、
乾燥後のコーティングは前記無機粒子、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記乾燥後のコーティングの表面に突起を形成し、前記第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ前記乾燥後のコーティングにおける前記第1の有機粒子の数はAとし、前記第2の有機粒子は一次粒子であり、前記乾燥後のコーティングにおける前記第2の有機粒子の数はBとすると、前記セパレータは、0.05≦A/B<1を満たす方法。
【請求項23】
前記方法は、
(1)ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であることと、
(2)ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量が前記成分材料の乾物重量の合計の10%以下であることと、
(3)前記ステップ(2)において、重量を基準として、前記コーティングスラリーの固形分含有量が28%~45%であることと、
(4)前記ステップ(3)において、前記塗布は、線数が100LPI~300LPIであるグラビアロールを含む塗布機を使用することと、
(5)前記ステップ(3)において、前記塗布の速度が30m/min~90m/minであることと、
(6)前記ステップ(3)において、前記塗布の線速度比が0.8~2.5であることと、
(7)前記ステップ(3)において、前記乾燥の温度が40℃~70℃であることと、
(8)前記ステップ(3)において、前記乾燥の時間が10s~120sであることと
のうちの1つまたは複数を満たす請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、
(1)ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の12%~30%であること、
(2)ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の2%~10%であること、
(3)ステップ(2)において、前記コーティングスラリーの固形分含有量は30%~38%であること、
(4)ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を利用し、前記塗布機はグラビアロールを備え、前記グラビアロールの線数は125LPI~190LPIであること、
(5)ステップ(3)において、前記塗布の速度は50m/min~70m/minであること、
(6)ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~1.5であること、
(7)ステップ(3)において、前記乾燥の温度は50℃~60℃であること、
(8)ステップ(3)において、前記乾燥の時間は20s~80sであること、のうちの1つまたは複数を満たす請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~21のいずれか一項に記載のセパレー
タを含む二次電池。
【請求項26】
請求項25に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項27】
請求項26に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項28】
請求項25に記載の二次電池、請求項26に記載の電池モジュール、または請求項27に記載の電池パックの少なくとも1つを備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池技術分野に属し、具体的にはセパレータ、その製造方法およびそれに関連する二次電池、電池モジュール、電池パックならびに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は軽量で、汚染がなく、記憶効果がないなどの突出した特徴を有するため、各種の消費類電子製品や電動車両に広く適用されている。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、ユーザは二次電池に対してより高い使用要求を提出している。例えば、二次電池のエネルギー密度設計はますます高くなってきているが、電池のエネルギー密度の向上は、動力学性能、電気化学的性能または安全性能のバランスに不利である傾向がある。
【0004】
したがって、どのようにして電池に良好な倍率性能、貯蔵性能と安全性能とを両立させることができるかは、電池設計分野の重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に存在する技術的課題に鑑み、本願の第1の態様はセパレータを提供し、それを含む二次電池に良好な倍率性能、貯蔵性能と安全性能とを同時に備えさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様に係るセパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含むセパレータを提供する。前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含む。前記有機粒子は、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含み、前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティングの表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の数はAとし、前記第2の有機粒子は一次粒子であり、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の数はBとすると、前記セパレータは、0.05≦A/B<1を満たす。
【0007】
従来技術に対して、本願は少なくとも以下のような有益な効果を備える。
【0008】
本願のセパレータは同じコーティングにおいて無機粒子と有機粒子を含み、セパレータの厚さを大幅に減少させ、それによって電池のエネルギー密度を向上させる。かつ前記有機粒子は特定分布状態および数量比範囲の第1の有機粒子と第2の有機粒子を含み、セパレータと電極板との間の接着性を効果的に向上させることができ、またセパレータが電池サイクル過程で皺を形成する状況を低下させることができ、それによって電池に安全性能と倍率性能を同時に両立させる。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータは、0.2≦A/B≦0.6を満たし、任意選択的には、0.25≦A/B≦0.5である。A/Bが所定範囲内にあると、電池の倍率性能、貯蔵性能、安全性能をさらに向上させることができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmである。任意選択的には、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は、12μm~25μmである。第1の有機粒子の数平均粒子径が所定の範囲内にあると、電池の倍率性能をさらに向上させることができる。
【0011】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmである。任意選択的には、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~7μmである。前記第2の有機粒子の数平均粒子径が所定範囲内にある場合、電池の倍率性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0012】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比≧2.0である。任意選択的には、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比は、2.5~4.0である。第1の有機粒子の数平均粒子径と第2の有機粒子の数平均粒子径との比が所定の範囲内にあると、電池の倍率性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0013】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合≦75%であり、任意選択的には、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は60%~75%である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合≧12%であり、任意選択的に、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は15%~25%である。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合≦10%であり、任意選択的に、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は2%~10%である。
【0016】
無機粒子、第1の有機粒子、または第2の有機粒子が上記の所定の範囲内にある場合には、三者がより良好な相乗作用を発揮することができ、これにより、電池のサイクル性能およびエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0017】
本願の任意の実施形態において、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、≦3.0g/m2であり、任意選択的には、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、1.5g/m2~3.0g/m2である。単位面積当たりのセパレータにおける片面コーティングの重量が所定範囲内にあると、電池の倍率性能および安全性能を確保する前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0018】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含み、
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、および前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0019】
本願の任意の実施形態において、前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-トリフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-アクリレートコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0020】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマーまたはコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物、および以上に記載の各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0021】
本願の任意の実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位‐アクリレート系モノマー単位‐スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位と不飽和ニトリル系モノマー単位とのコポリマー、スチレン系モノマー単位‐アルキレン基モノマー単位‐不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、および前記各コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、メタクリレート-メタクリル酸-スチレンコポリマー、アクリル酸メチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルメタクリレート-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-酢酸ビニル-ピロリドンコポリマー、および前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0023】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含む。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの透気度は、100s/100mL-300s/100mLである。任意選択的には、前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mLである。
【0025】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は、1500kgf/cm2-3000kgf/cm2であり、任意選択的には、前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm2~2500kgf/cm2である。
【0026】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は、1000kgf/cm2~2500kgf/cm2であり、任意選択的には、前記セパレータの縦方向引張強度は1400kgf/cm2~2000kgf/cm2である。
【0027】
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であり、任意選択的には、前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%である;
本願の任意の実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であり、任意選択的には、前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%である。
【0028】
本願の任意の実施形態において、前記無機粒子および前記有機粒子は、前記コーティングにおいて不均一なトンネル構造を形成する。
【0029】
本願の任意の実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0030】
本願の第2態様は、基材を提供するステップ(1)と、無機粒子と、第1の有機粒子と第2の有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも片面に塗布してコーティングを形成し、乾燥させて前記セパレータを得るステップ(3)と、を含み、ここで、乾燥後のコーティングは、前記無機粒子、前記第1の有機粒子、および前記第2の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記乾燥後のコーティング表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ前記第1の有機粒子の前記乾燥後のコーティングにおける数をAとし、前記第2の有機粒子は一次粒子であり、かつ前記第2の有機粒子の前記乾燥後のコーティングにおける数をBとすると、前記セパレータは、0.05≦A/B<1を満たす。
【0031】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であり、任意選択的には、12%~30%である。
【0032】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の10%以下であり、任意選択的には2%~10%である。
【0033】
本願の任意の実施形態において、ステップ(2)において、前記コーティングスラリーの固形分含有量は、28%~45%であり、任意選択的には30%~38%である。
【0034】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を利用し、前記塗布機はグラビアロールを備え、前記グラビアロールの線数は100LPI~300LPIであり、任意選択的には125LPI~190LPIである。
【0035】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minであり、任意選択的には50m/min~70m/minである。
【0036】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5であり、任意選択的には0.8~1.5である。
【0037】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の温度は40℃~70℃であり、任意選択的には50℃~60℃である。
【0038】
本願の任意の実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は10s~120sであり、任意選択的には20s~80sである。
本願の第3態様は、本願の第1態様に基づくセパレータを含みか、または本願の第2態様の方法に基づいて製造されるセパレータを含む二次電池を提供する。
【0039】
本願の第4態様は、本願の第3態様に基づく二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0040】
本願の第5態様は、本願の第4態様に基づく電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0041】
本願の第6態様は、本願の第3態様に基づく二次電池、本願の第4態様に基づく電池モジュール、または本願の第5態様の電池パックのうちの少なくとも1つを含む装置を提供する。
【0042】
本明細書の装置は、本願で提供される二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも1つを含むので、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【0043】
本願の技術案をより明確に説明するために、以下、本願に用いられる図面を簡単に説明する。明らかに、以下に記載の図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を費やさない前提で、図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本願のセパレータの一実施形態の構造概略図である。
【
図2-1】本願のセパレータの一実施形態の、500倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図2-2】本願のセパレータの一実施形態の、3000倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図3】本願のセパレータの一実施形態の3000倍の拡大倍率でのイオン研磨断面形状(CP)の写真である。
【
図4-1】本願のセパレータの一実施形態の構成概略図である。
【
図4-2】本願のセパレータの別の実施形態を示す構成概略図である。
【
図7】電池モジュールの一実施形態を示す概略図である。
【
図8】電池パックの一実施形態を示す概略図である。
【
図10】二次電池を電源として用いる装置の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では具体的な実施形態を参照しながら、本願をさらに説明する。これらの具体的な実施形態は本願を説明するためのものにすぎず、本願の範囲を限定するものではないと理解されよう。
【0046】
簡単のために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示する。但し、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は、他の上限と組み合わせて、明記しない範囲を形成することができる。また、個別に開示された各点または単一の数値自体は、下限または上限として、任意の他の点または単一の数値と組み合わせて或いは他の下限または上限と組み合わせて明記しない範囲を形成することができる。
【0047】
なお、本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種または複数種」のうちの「複数種」は2種および2種以上を意味する。
【0048】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、用語「または(or)」は包括的なものである。すなわち、[Aまたは(or)B]というフレーズは、「A、BまたはAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(または存在する)でありかつBが偽(または存在しない)である条件と、Aが偽(または存在しない)であり、Bが真(または存在する)である条件と、また、AとBが共に真(または存在する)である条件のいずれかも「AまたはB」を満たしている。
【0049】
特に説明しない限り、本願で使用される用語は、当業者に通常理解される公知の意味を有する。特に説明しない限り、本願で言及された各パラメータの数値は、当分野でよく使われる各種の測定方法(例えば、本願の実施例に記載の方法)で測定することができる。
【0050】
二次電池
二次電池とは、電池の放電後に充電により活物質を活性化させて使用し続けることができる電池をいう。
【0051】
二次電池は、通常、正極板、負極板、セパレータおよび電解質を備えている。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復して挿入や脱離をする。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離の効果を果たす。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0052】
[セパレータ]
本願に係るセパレータは、基材と、前記基材の少なくとも1つの表面に設置されるコーティングとを含むセパレータを提供する。前記コーティングは無機粒子と有機粒子とを含む。前記有機粒子は、第1の有機粒子および第2の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記コーティング表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の数はAとし、前記第2の有機粒子は一次粒子であり、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の数はBとすると、前記セパレータは、0.05≦A/B<1を満たす。
【0053】
本願のセパレータは、同じコーティングに無機粒子、特定の第1の有機粒子および第2の有機粒子を同時に含み、電池が高いエネルギー密度を有することを保証する前提で、電池の倍率性能、高温貯蔵性能および針刺し安全性能をさらに改善することができる。
【0054】
なお、一次粒子および二次粒子は、当該技術分野において周知の意味を有する。一次粒子とは、凝集状態になっていない粒子をいう。二次粒子とは、2つまたは2つ以上の一次粒子により聚集された凝集状態の粒子をいう。
【0055】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、発明者らは、本願のセパレータが同じコーティングにおいて無機粒子と有機粒子を含み、無機粒子層と有機粒子層の2つのコーティングを有するセパレータと比較して、セパレータの厚さを大幅に減少させ、それによって電池のエネルギー密度を向上させることを多くの研究により発見した。同時に、前記有機粒子は第1の有機粒子と第2の有機粒子を含み、且つ第1の有機粒子と第2の有機粒子の形態および数量を特別に設計し、第1の有機粒子は二次粒子であり、均一なコーティング界面の形成に寄与し、電池製造過程におけるタブの位置ずれの問題を効果的に改善することができ、それにより電池の安全性を改善し、第2の有機粒子は一次粒子であり、粒子と粒子との間に大きなゲル膜構造を形成しにくく、これにより、電池の倍率性能と安全性能をさらに改善する。一方、両者を組み合わせて使用することにより、電解液の濡れ性および分布均一性を効果的に向上させ、さらに電池の高温貯蔵性能を改善することができる。特に、電池の使用中に異物が突き刺さった場合、第2の有機粒子は瞬時に異物と露出した銅箔またはアルミ箔を包むことができ、第1の高分子絶縁層を形成し、正負極が短絡する確率を効果的に低下させ、電池の安全性能を向上させ、異物の周囲温度が上昇するにつれて、第1の有機粒子は第1の高分子絶縁層の周囲により堅固な第2の高分子絶縁層を形成し、それによって電池の安全性能をさらに改善する。
【0056】
A/Bが小さすぎる場合(例えば0.05未満)、第1の有機粒子が少なすぎる場合、または第2の有機粒子が多すぎる場合があり、第1の有機粒子が少なすぎる場合、電池が過酷な使用環境にある場合、セパレータは強固な第2の高分子絶縁層を形成しにくく、それによって電池の安全性能に影響を与える。第2の有機粒子が多すぎると、セパレータと電極板との接着が過度になり、電解液の消費が過剰になり、電解液の濡れ性や均一性が低下し、電池の貯蔵性能に影響を与えるおそれがある。
【0057】
A/Bが大きすぎる場合(例えば1より大きい場合)、第1の有機粒子が多すぎる場合、または第2の有機粒子が少なすぎる場合があり、第1の有機粒子が多すぎる場合、イオン輸送経路が長すぎて、電池の倍率性能に影響する場合がある。第2の有機粒子が少なすぎると、電池が過酷な使用環境にあるとき、セパレータが瞬間的に第1高分子絶縁層を形成しにくくなり、電池短絡の危険性が大きく増加し、電池の安全性能に影響を与える。
【0058】
本発明者らは、鋭意研究した結果、本願に係るセパレータが上記設計条件を満たしていることに加えて、選択可能には、以下の条件のうちの1つまたは複数を満たすことにより、二次電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記セパレータは、0.05≦A/B≦0.95、0.1≦A/B<1、0.15≦A/B<1、0.15≦A/B≦0.8、0.2≦A/B≦0.85、0.2≦A/B≦0.6、0.25≦A/B≦0.5、0.3≦A/B≦0.75、0.3≦A/B≦0.6、0.3≦A/B≦0.5、0.3≦A/B≦0.45を満たすことができる。A/Bが所定の範囲内にある場合、電池の倍率性能、貯蔵性能、および安全性能をさらに改善することができる。
【0060】
図1に示すように、前記セパレータは、基材(A)と、第1の有機粒子(B1)と第2の有機粒子(B2)と無機粒子(B3)とを含むコーティング(B)とを含み、第1の有機粒子(B1)は二次粒子であり、第2の有機粒子(B2)は一次粒子であり、第1の有機粒子と第2の有機粒子とはいずれも前記無機粒子(B3)に嵌めこまれ、かつ前記コーティング(B)の表面に突起が形成される。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径≧8μmである。例えば、前記第1の有機粒子の数平均粒子径は10μm~20μm、10.5μm~18μm、12μm~25μm、12μm~18μm、13μm~20μm、15μm~22μmであってもよい。第1の有機粒子の数平均粒子径が所定の範囲内にあると、有機粒子間に十分な空隙を存在させることができ、電解液中で有機粒子が膨潤しても十分なイオン輸送通路を形成することができ、電池の倍率性能をさらに向上させることができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子の数平均粒子径≧2μmである。例えば、前記第2の有機粒子の数平均粒子径は、3μm~8μm、2.5μm~7μm、3μm~7μm、3μm~6μm、3.5μm~6μmであってもよい。前記第2の有機粒子の数平均粒子径が所定範囲内にある場合、電池の倍率性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比≧2.0である。例えば、前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比は、2.0~5.0,2.0~4.5,2.0~4.0,2.5~4.0,3.0~4.0である。前記第1の有機粒子の数平均粒子径と前記第2の有機粒子の数平均粒子径との比が所定の範囲内にあると、電池の倍率性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0064】
なお、前記有機粒子の数平均粒子径とは、セパレータコーティングにおいて、有機粒子数で統計する有機粒子の粒子径の算術平均値を意味する。前記有機粒子の粒子径とは、有機粒子において最も離れた2点間の距離である。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、含フッ素アルキル基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレン基モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、不飽和ニトリル系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アルキレンオキサイド系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、及び前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記含フッ素アルキル基モノマー単位は、ジフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのうちの1種または複数種から選択されることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記アルキレン基モノマー単位は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記アルキレンオキサイド系モノマー単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、異なる含フッ素アルキル基モノマー単位のコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアルキレン基モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリル酸系モノマー単位とのコポリマー、含フッ素アルキル基モノマー単位とアクリレート系モノマー単位とのコポリマー、及び前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記第1の有機粒子は、ビニリデンフルオライド‐トリフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐トリフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン‐アクリル酸コポリマー、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレン‐アクリレートコポリマー、及び前記コポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、アクリル酸系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、スチレン系モノマー単位のホモポリマー又はコポリマー、ポリウレタン系化合物、ゴム系化合物及び前記各ホモポリマー又はコポリマーの変性化合物のうちの1種または複数種を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリレート系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位とスチレン系モノマー単位とのコポリマー、アクリル酸系モノマー単位‐アクリレート系モノマー単位‐スチレン系モノマー単位のコポリマー、スチレン系モノマー単位と不飽和ニトリル系モノマー単位とのコポリマー、スチレン系モノマー単位‐アルキレン基モノマー単位‐不飽和ニトリル系モノマー単位のコポリマー、及び前記各材料の変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、アクリレートモノマー単位は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、アクリル酸ブチル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレートのうちの1つまたは複数から選択することができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記アクリル酸系モノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記スチレン系モノマー単位は、スチレン、メチルスチレンのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記不飽和ニトリル系モノマー単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1種または複数種から選択することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記第2の有機粒子は、アクリル酸ブチル-スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート‐イソオクチルメタクリレートコポリマー、イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、メタクリレート‐メタクリル酸‐スチレンコポリマー、アクリル酸メチル‐イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル‐イソオクチルアクリレート‐スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル‐イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート‐イソオクチルメタクリレート‐スチレンコポリマー、ブチルメタクリレート‐イソオクチルアクリレート‐スチレンコポリマー、スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、スチレン‐ブタジエン‐アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸メチル‐スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、イソオクチルメタクリレート‐スチレン‐アクリロニトリルコポリマー、スチレン‐酢酸ビニルコポリマー、スチレン‐酢酸ビニル‐ピロリドンコポリマー、及び前記各材料の変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0079】
前記各ホモポリマーまたはコポリマーの変性化合物とは、各ホモポリマーまたはコポリマー中のモノマー単位と特定の官能基を含むモノマー単位とを共重合して得られる変性化合物を指す。例えば、含フッ素アルキル基モノマー単位とカルボキシル基含有官能基の化合物とを共重合して変性化合物などを得ることができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、第1の有機粒子の数平均分子量は30万~80万、例えば40万~65万である。
【0081】
いくつかの実施形態において、第2の有機粒子の数平均分子量は1万~10万、例えば2万~8万である。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト(γ-AlOOH)、アルミナ(Al2O3)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化スズ(SnO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、フッ化マグネシウム(MgF2)のうちの1種または複数種を含むことができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記無機粒子の体積平均粒子径Dv50≦2.5μmであり、例えば、前記無機粒子の体積平均粒子径Dv50は、0.5μm~2.5μm、0.5μm~1μmであってもよい。無機粒子の体積平均粒子径が所定範囲内に制御されると、電池が良好なサイクル性能および安全性能の前提で、電池の体積エネルギー密度を向上させることを確保することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は、前記コーティングの全質量を基準として≦75%である。例えば、前記コーティングにおける前記無機粒子の質量割合は、60%~75%、60%~70%、65%~75%であってもよい。無機粒子の質量割合が所定の範囲内に制御される場合、良好な安全性能を有するという前提で、電池の質量エネルギー密度を向上させることを確保することができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は、前記コーティングの全質量を基準として≧12%である。例えば、前記コーティングにおける前記第1の有機粒子の質量割合は、12%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%であってもよい。第1の有機粒子の質量割合を所定の範囲内に制御すると、本願の上記A/Bの範囲をより容易に達成することができ、同時に、適切な質量割合の範囲は、セパレータの電解液への消費量を低減することができ、それによって、電池の貯蔵性能および安全性能をさらに改善することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は、前記コーティングの全質量を基準として≦10%であり、例えば、前記コーティングにおける前記第2の有機粒子の質量割合は、2%~10%、3%~7%、3%~5%であってもよい。第2の有機粒子の質量割合を所定の範囲内に制御すると、本願の上記A/Bの範囲をより容易に実現することができるとともに、セパレータに接着性を確保しつつ、適切なトンネル構造を持たせることができ、これにより、電池の倍率性能および安全性能をさらに向上させることができる。
【0087】
適当な無機粒子、第1の有機粒子と第2の有機粒子の含有量を選択することによって、三者により良好な協同作用を発揮させ、セパレータが安全性能を保証する前提で、さらに適当な不均一トンネル構造を有すると同時に、セパレータの軽量化を実現することを確保し、それによって電池のエネルギー密度をさらに改善する。
【0088】
いくつかの実施形態において、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、≦3.0g/m2であり、例えば、単位面積当たりのセパレータにおける片面のコーティング重量は、1.5g/m2~3.0g/m2、1.5g/m2~2.5g/m2、1.8g/m2~2.3g/m2であってもよい。単位面積当たりのセパレータにおける片面のコート重量を所定の範囲内に制御することにより、電池エネルギー密度を高める前提で、電池倍率性能と安全性能とを両立させることができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記コーティングに他の有機化合物を含めることもでき、例えば、耐熱性を改善するポリマー(単に「耐熱性接着剤」と称する)、分散剤、湿潤剤、他の種類の結合剤などを含めることができる。上記の他の有機化合物は、コーティングにおいていずれも非粒子状物質である。本願は、上記の他の有機化合物の種類について、特に限定せず、良好な改善性能を有する任意の公知材料を選んで用いることができる。
【0090】
本願の実施例において、前記基材の材質について、特に限定されず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知基材を選んで用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプローレンおよびポリビニリデンフルーランドのうちの1種または複数種である。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記基材の厚さは、≦10μmである。例えば、前記基材の厚さは、5μm~10μm、5μm~9μm、7μm~9μmであってもよい。前記基材の厚さが所定範囲内に制御されるとき、電池の倍率性能および安全性能を確保する前提で、電池のエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの透気度は、100s/100mL-300s/100mLであってもよい。例えば、前記セパレータの透気度は、150s/100mL~250s/100mL、170s/100mL-220s/100mLであってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向引張強度(TD)は1000kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい。例えば、前記セパレータの縦方向引張強度は1400kgf/cm2~2000kgf/cm2であってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの縦方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの縦方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向引張強度(MD)は、1500kgf/cm2-3000kgf/cm2であってもよい。例えば、前記セパレータの横方向引張強度は1800kgf/cm2~2500kgf/cm2であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記セパレータの横方向破断伸びは50%~200%であってもよく、例えば、前記セパレータの横方向破断伸びは100%~150%であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔をL1とし、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔をL2とすると、L1<L2である。
【0098】
いくつかの実施例によれば、第1の有機粒子と第2の有機粒子との数の比は、当該技術分野において既知の方法を用いて試験することができ、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。一例として、第1の有機粒子と第2の有機粒子との数比を試験する方法は、セパレータを長さ×幅=50mm×100mmの試験サンプルにし、コーティングにおける有機粒子を、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて試験する。JY/T010-1996を参照して測定することができる。試験サンプルにおいて複数(例えば5つ)の異なる領域をランダムに選択して走査試験を行い、一定の拡大倍率(例えば500倍または1000倍)で試験領域における第1の有機粒子または第2の有機粒子の数を統計し、各試験領域における第1の有機粒子の数の平均値をAとし、各試験領域における第2の有機粒子の数の平均値をBと記し、A/Bの数値を算出する。試験結果の正確さを確実にするために、複数の試験試料(例えば、10個)を繰り返して試験を行い、各試験試料の計算したA/Bの平均値を最終試験結果とすることができる。
【0099】
図2-1は、本願の実施例のセパレータの500倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
図2-1において、上述した方法によって、第1の有機粒子のコーティングにおける数量Aおよび第2の有機粒子のコーティングにおける数量Bを統計することができる。
【0100】
いくつかの実施例によって、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔とは、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する2つの無機粒子(無機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して、外接円処理を行うことができる)を任意に取り、両無機粒子の中心間距離を、両無機粒子間の間隔として測定し、L1とする。
【0101】
いくつかの実施例によって、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔とは、セパレータのSEM図像において、コーティングから、隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子が不規則な形状である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に取り、この無機粒子とこの有機粒子との中心間距離を無機粒子と有機粒子との間隔として測定し、L2とする。上記有機粒子は、第1の有機粒子を取ってもよいし、第2の有機粒子を取ってもよい。
【0102】
上記間隔は当分野で知られている器具で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡で測定することができる。例として、任意の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔L2は以下の方法によって測定することができる。セパレータを縦×横=50mm×100mmの試料に製造し、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて、セパレータを測定する。JY/T010-1996を参照して測定することができる。試料から領域をランダムに選択し、走査測定を行い、一定の拡大倍率(例えば、3000倍)で、セパレータのSEM図像を取得し、SEM図像において、隣接する1つの無機粒子と1つの有機粒子(無機粒子または有機粒子は不規則体である場合、この粒子に対して外接円処理を行うことができる)を任意に選択し、無機粒子(またはその外接円)の中心と有機粒子(またはその外接円)の中心との距離を計測し、本願に記載の隣接する無機粒子と有機粒子との間隔であり、L2とする。測定結果の正確性を確保するために、試料において複数組の隣接する粒子(例えば10組)を取って上記測定を繰り返し、各組の測定結果の平均値を最終的な結果とする。
【0103】
同様に、任意の隣接する2つの無機粒子間の間隔L1についても、上記方法で、測定することができる。
【0104】
図2-2は、本願の実施例のセパレータの3000倍の拡大倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。
図2-2から分かるように、セパレータのコーティングには、無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子が含まれ、第1の有機粒子は二次粒子であり、第2の有機粒子は一次粒子であり、かつ第1の有機粒子および第2の有機粒子は無機粒子に嵌めこまれ、コーティング表面に突起を形成する。上記に記載の方法で計測したところ、L1<L2を得た。
【0105】
いくつかの実施例によって、有機粒子の形状(例えば、一次粒子形状または二次粒子形状)は、当分野で知られている機器および方法を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を使用して試験を行うことができる。例として、以下のようなステップによって、操作することができる。まず、セパレータを一定サイズの試験サンプル(例えば6mm×6mm)に裁断し、2枚の導電性熱伝導性シート(例えば銅箔)で試験サンプルを挟み、試験サンプルとシートとを接着剤(例えば両面接着剤)で接着固定させ、一定質量(例えば400g)の平な鉄ブロックで一定時間(例えば1時間)プレスし、試験サンプルと銅箔との隙間が可能な限り小さくなるようにし、続いてはさみで縁を揃えて切断し、導電性接着剤を有するサンプル台に粘着し、サンプルをサンプル台の周縁より少し突出させればよい。次に、サンプル台をサイクルホルダに固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えば、IB-19500CP)の電源をオンにし、真空(例えば、10Pa-4Pa)を引き、アルゴン流量(例えば、0.15MPa)と電圧(例えば、8KV)および研磨時間(例えば、2時間)を設定し、サンプル台を揺動モードに調整して研磨を開始し、研磨終了後、走査電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて、測定待ちサンプルのイオン研磨断面形状(CP)画像を得る。
【0106】
図3は本願の実施例のセパレータの3000倍の拡大倍率でのイオン研磨断面形状(CP)写真である。
図3から分かるように、セパレータのコーティングは、第1の有機粒子と第2の有機粒子の両方を含む;第1の有機粒子は、複数の一次粒子からなる二次粒子であり、不規則な非中実球断面であり、第2の有機粒子の非凝集体の一次粒子は、中実球の断面である。
【0107】
いくつかの実施例によって、有機粒子の粒子径と数平均粒子径は当分野で知られている機器および方法で測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma 300)を使用し、JY/T010-1996を参照してセパレータの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を取得する。例として、以下のような方法によって測定することができる。セパレータ上で任意に1つの長さ×幅=50mm×100mmの試験サンプルを採取し、試験サンプル中で複数の試験領域(例えば5つ)をランダムに採取し、一定の拡大倍率(例えば、第1の有機粒子を測定した場合は500倍、第2の有機粒子を測定した場合は1000倍)で、各試験領域における各有機粒子の粒子径を読み取り(すなわち、有機粒子上の最も離れる2点間の距離を当該有機粒子の粒子径として取る)、各試験領域における有機粒子の数と粒子径の値を統計し、各試験領域における有機粒子の粒子径の算術平均値を取り、すなわち当該試験サンプルにおける有機粒子の数平均粒子径とする。試験結果の正確さを確実にするために、複数の試験試料(例えば、10個)を繰り返して試験を行い、各試験試料の平均値を最終試験結果とすることができる。
【0108】
いくつかの実施形態によって、有機粒子の物質の種類は、当分野で知られている機器および方法を使用して測定することができる。例えば、材料の赤外線スペクトルを測定して、それに含まれる特徴的なピークを決定することによって、物質の種類を特定することができる。具体的には、当分野で公知されている器具および方法で有機粒子に対して、赤外分光分析を行い、例えば、GB/T6040-2002赤外線分光分析方法通則によって、米国ニコレット(nicolet)社のIS10フーリエ変換赤外線分光器などの赤外線分光器を用いて、測定することができる。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、無機粒子の体積平均粒子径Dv50は、当該技術分野において周知の意味であり、当該技術分野において既知の装置および方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T 19077-2016レーザー回折式粒度分布法を参照し、レーザー粒度分析計(たとえば、Master Size 3000)を使用して測定できる。
【0110】
いくつかの実施例によって、セパレータの透気度、横方向引張強度(MD)、縦方向引張強度(TD)、横方向破断伸び、縦方向破断伸びは、いずれも当分野で公知されている意味を有し、当分野で知られている方法で計測することができる。例えば、いずれもGB/T 36363-2018規格に基づき測定することができる。
【0111】
本願はさらに、
基材を提供するステップ(1)と、
コーティングスラリーを提供する:無機粒子と、第1の有機粒子との有機粒子を含む有機粒子とを含む成分材料および溶媒を含むコーティングスラリーを提供するステップ(2)と、
ステップ(2)に記載のコーティングスラリーをステップ(1)に記載の基材の少なくとも片面に塗布してコーティングを形成し、乾燥させて前記セパレータを得るステップ(3)とを含むセパレータの製造方法を提供し、
ここで、乾燥後のコーティングは、前記無機粒子、前記第1の有機粒子、および前記第2の有機粒子を含む。前記第1の有機粒子および前記第2の有機粒子は、前記無機粒子に嵌めこまれ、かつ前記乾燥後のコーティング表面に突起を形成する。前記第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ前記乾燥後のコーティングにおける前記第1の有機粒子の数はAとし、前記第2の有機粒子は一次粒子であり、前記乾燥後のコーティングにおける前記第2の有機粒子の数はBとすると、前記セパレータは、0.05≦A/B<1を満たす。
【0112】
図4-1に示すように、セパレータは基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は前記基材(A)の片面のみに設けられている。
【0113】
図4-2に示すように、セパレータは基材(A)とコーティング(B)とを含み、前記コーティング(B)は前記基材(A)の両面ともに設けられている。
【0114】
本願の実施例において、前記基材の材質について、特に限定されず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知基材を選んで用いることができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプローレンおよびポリビニリデンフルーランドのうちの1種または複数種である。前記基材は、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。前記基材が多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記溶媒は水であってもよく、例えば、脱イオン水である。
【0116】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記成分材料は、他の有機化合物、例えば、耐熱性を改善するポリマー、分散剤、湿潤剤、他の種類の結合剤などを含んでもよい。これらのうち、他の有機化合物は、乾燥後のコーティング中にすべて非粒子状である。
【0117】
いくつかの実施形態においては、ステップ(2)において、溶媒に組成材料を加えて均一に攪拌してコーティングスラリーを得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の12%以上であり、例えば、12%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、16%~22%である。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(2)において、前記第2の有機粒子の添加質量は、前記成分材料の乾物重量の合計の10%以下であり、例えば、2%~10%、3%~7%、3%~5%である。
【0120】
第1の有機粒子または第2の有機粒子の添加質量が上記範囲内にある場合、第1の有機粒子および第2の有機粒子の量の比を所定の範囲内に制御することに寄与する。同時に、含有量の適当な有機粒子はセパレータが電池製造過程中に電池巻取工具(例えばコイル針)または積層ツールとの間に発生する静電気を減少することができ、正負極が短絡する確率を効果的に低下させ、それによって電池の製造良品率を向上させる。
【0121】
なお、組成材料が固形である場合、組成材料の乾物重量は、この組成材料の添加質量である。組成材料が懸濁液、エマルジョンまたは溶液である場合、組成材料の乾物重量は、この組成材料の添加質量とこの組成材料の固形分含有率との積である。前記組成材料の乾物重量の合計は、各組成材料の乾物重量の合計である。
【0122】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、コーティングスラリーの固形分含有量は、28%~45%、例えば30%~38%に制御することができる。コーティングスラリーの固形分含有率が上記範囲にある場合、コーティングの膜面問題および塗布ムラの発生確率を効果的に低減することができ、電池のサイクル性能および安全性能のさらなる改善が図れる。
【0123】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は塗布機を用いて行われる。
【0124】
本願の実施例において、塗布機の型式は特に限定されず、市販の塗布機を用いることができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布は転写塗布、回転スプレー、浸漬塗布などのプロセスを用いることができ、例えば、前記塗布には、転写塗布が用いられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記塗布機はグラビアロールを含み、前記グラビアロールは、コーティングスラリーを基材に転移するために使用される。
【0127】
いくつかの実施形態において、前記グラビアロールの線数は、100LPI~300LPIであってもよく、例えば、125LPI~190LPI(LPIは線/インチである)であってもよい。グラビアロールの線数が上記範囲内にあると、第1の有機粒子と第2の有機粒子の数の比が所定の範囲内になるように制御することができ、これにより、セパレータのサイクル性および安全性をさらに向上させることができる。
【0128】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の速度は30m/min~90m/minに、例えば、50m/min~70m/minに制御することができる。コーティングの速度が前記範囲内にある場合、第1の有機粒子と第2の有機粒子の数の比を所定の範囲に制御することに寄与する。また、コーティングの膜面問題を効果的に減少させ、コーティング不均一の確率を低下させ、それによって電池のサイクル性能と安全性能をさらに改善することができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記塗布の線速度比は0.8~2.5に制御することができ、例えば、0.8~1.5、1.0~1.5であってもよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥温度は40℃-70℃、例えば50℃-60℃であってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、ステップ(3)において、前記乾燥の時間は、10s~120sであってもよく、例えば、20s~80s、20s~40sであってもよい。
【0132】
上記の各プロセスパラメータを所定の範囲に制御することにより、本願に係るセパレータの使用性能をさらに改善することができる。当業者は実際の生産状況に基づき、上記1つまたは複数のプロセスパラメータを選択的には、調節制御することができる。
【0133】
前記無機粒子および前記有機粒子は、二次電池の性能をさらに改善するために、選択可能には、さらに上記した各パラメータ条件のうちの1つまたは複数を満たす。ここでは説明を省略する。
【0134】
上記基材、第1の有機粒子および第2の有機粒子は、いずれも市販されるものである。
【0135】
本願に係るセパレスタットの製造方法は、一回の塗布によってコーティングを製造し、セパレータの生産プロセスフローを大幅に簡単化し、同時に、前記方法で製造されたセパレータを電池に使用し、電池の倍率性能、貯蔵性能と安全性能を効果的に改善することができる。
【0136】
[正極板]
二次電池において、前記正極板は、正極集電体と、正極集電体上に設けられた正極膜層とを含み、前記正極膜層は、正極活物質を含む。
【0137】
前記正極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0138】
前記正極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の正極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。
【0139】
例として、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン型リチウム含有リン酸塩、およびこれらのそれぞれの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。リチウム遷移金属酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、マンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン型リチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料、およびこれらの変性化合物のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0140】
いくつかの実施形態において、前記各材料の変性化合物は、材料に対してドーピング変性および/または表面被覆変性を行ったものであってもよい。
【0141】
正極膜層は、一般には、選択可能には、接着剤、導電剤およびその他の選択可能な助剤を含む。
【0142】
例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、Super P(SP)、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの1種または複数種であってもよい。
【0143】
例として、接着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0144】
[負極板]
二次電池において、前記負極板は、負極集電体と、負極集電体上に設けられた負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0145】
前記負極集電体としては、通常の金属箔片や複合集電体を用いることができる(例えば、金属材料を高分子基材に設けて複合集電体とすることができる)。例として、負極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
【0146】
前記負極活物質の具体的な種類は限定されず、二次電池の負極に適用可能で当分野で知られている活物質を採用することができ、当業者は実際の要求に応じて選択することができる。例として、前記負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料および錫系材料のうちの1種または複数種を含むことができるが、これらに限定されない。前記ケイ素系材料は、単体ケイ素、ケイ素酸化物(例えば、一酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、ケイ素合金のうちの1種または複数種から選択することができる。前記錫系材料は、単体錫、錫酸化物、錫合金のうちの1種または複数種から選択することができる。これらの材料は商業的ルートから入手可能である。
【0147】
いくつかの実施形態において、電池のエネルギー密度を増加させるために、前記負極活物質は、シリコン系材料を含むことができる。
【0148】
負極膜層は、一般には、選択可能には、接着剤、導電剤およびその他の選択可能な助剤を含む。
【0149】
一例として、導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの1つまたは複数であってもよい。
【0150】
例として、接着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種または複数種であってもよい。
【0151】
例として、他の任意選択的な補助剤は、増粘剤および分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料であってもよい。
【0152】
[電解液]
この二次電池は、正極と負極との間でイオンを伝導する役割を果たす電解液を含んでもよい。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含んでいてもよい。
【0153】
例として、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(リチウムヘキサフルオロアルセネート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラトホウ酸リチウム)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)およびLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1種または複数種から選択することができる。
【0154】
一例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ぎ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及ジエチルスルホン(ESE)からなる群から選択される1種または複数種であってもよい。
【0155】
いくつかの実施形態において、電解液には添加剤がさらに含まれる。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、正極被膜形成添加剤を含んでいてもよいし、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでいてもよい。
【0156】
いくつかの実施形態において、二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。
【0157】
本願の実施例は、二次電池の形状について、特に限定せず、円筒形、角形、その他の任意の形状であってよい。
図5は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0158】
いくつかの実施例において、二次電池は、外装を含むことができる。前記外装は正極板、負極板と電解質を包装するために用いられる。
【0159】
いくつかの実施例において、
図6を参照し、外装はハウジング51および蓋板53を含むことができる。ここでは、ハウジング51は底板および底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を閉塞するように前記開口に覆設可能である。
【0160】
正極板、負極板およびセパレータは、巻取工程または積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入されている。電解質は、電極アセンブリ52内に浸漬される電解液を使用することができる。二次電池5に含まれる電極ユニット52の数は、1つまたは複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0161】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。ソフトパックの材質はプラスチックでよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)の1種または複数種を含むことができる。
【0162】
いくつかの実施例において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの適用および容量に基づいて調節することができる。
【0163】
図7は、一例としての電池モジュール4である。
図7を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0164】
いくつかの実施例では、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するハウジングをさらに含むことができる。
【0165】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの適用および容量に基づいて調節することができる。
【0166】
図8および
図9は、一例としての電池パック1である。
図8および
図9を参照すると、電池パック1には、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3に覆設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池ケースに配列することができる。
【0167】
装置
本願は、前記装置は前記二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少ないとも1つを備える装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー蓄積手段として用いられてもよい。前記装置は、モバイル機器(例、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限定されない。
【0168】
前記装置は、その使用要求に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0169】
図10は一例としての装置である。この装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、またはプラグインハイブリッド電気自動車などである。この装置は二次電池に対する高出力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを用いることができる。
【0170】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0171】
以下には、実施例を参照して本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0172】
実施例
本願が解決しようとする技術的課題、技術案および有益な効果をより明確にするために、以下には、実施例および図面を参照してさらに詳細に説明する。明らかに、説明された実施例は本願のいくつかの実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例についての記載は、本質的に説明するためのものに過ぎず、決して本願およびその適用に対する如何なる限定でもない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものである。
【0173】
一、セパレータの製造
セパレータ1:
(1)PE基材を提供し、例えば、基材の厚さは7μmであり、空隙率は40%であり、
(2)コーティングスラリーを調製し、無機粒子のアルミナ(Al2O3)、第1の有機粒子であるビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロペンコポリマー(数平均分子量55万)、第2の有機粒子のブチルメタクリレート-イソオクチルアクリレート-スチレンコポリマー(数平均分子量8万)、分散剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、湿潤剤の有機ケイ素変性ポリエーテルと耐熱接着剤のアクリル酸-アクリロニトリルコポリマーを乾物重量比71:12:10:1.5:0.5:5で適量の溶媒脱イオン水に均一に混合して、重量基準で38%の固形分含量のコーティングスラリーを得る。ここでは、無機粒子のアルミナ(Al2O3)の体積平均粒子径Dv50は1μmであり、第1の有機粒子は二次粒子であり、かつ数平均粒子径は15.0μmであり、第2の有機粒子は一次粒子であり、かつ数平均粒子径は4.8μmである。
(3)ステップ(2)で調製したコーティングスラリーをPE基材の2つの表面に塗布機で塗布し、乾燥、ストライプ化などのステップによりセパレータ1を得る。ここで、第1の有機粒子と第2の有機粒子の数比A/Bが0.05となるように、前述のコーティング配合プロセスまたは塗布プロセスを補助的に調整することができる例えば、塗布機のグラビアロールの線数は125LPIであり、塗布速度は50m/minであり、塗布の線速度比は1.15であり、乾燥温度は50℃であり、乾燥時間は25sであり、前記セパレータにおいて、第1の有機粒子と第2の有機粒子はいずれも無機粒子に嵌めこまれ、コーティングの表面に突起が形成される。
【0174】
実施例で使用した材料は全て市販されている。例えば、
基材は上海恩捷新材料有限公司から購入することができる。
【0175】
無機粒子は、壹石通材料科技股フン有限公司から購入することができる。
【0176】
第1の有機粒子は、阿科瑪(常熟)化学有限公司から購入することができる。
【0177】
第2の有機粒子は、四川茵地楽科技有限公司から購入することができる。
【0178】
耐熱接着剤は四川茵地楽科技有限会社から購入することができる。
【0179】
湿潤剤は陶氏化学公司から購入することができる。
【0180】
分散剤は、常熟威怡科技有限公司から購入することができる。
【0181】
セパレータ2-40は、セパレータ1の製造方法と類似しているが、異なる点は以下の通りである。第1の有機粒子と第2の有機粒子の数平均粒子径、質量割合、物質種類などを調整し、具体的に表1を参照する。
【0182】
二、電池の製造
実施例1
1.正極板の製造
正極活物質であるLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)と、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるポリビニリデンフルオライド(PVDF)とを、質量比96.2:2.7:1.1で、適量の溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)で均一に混合して正極スラリーを得、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗布し、加熱乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断工程を経て正極板を得る。正極面密度は0.207mg/mm2であり、圧密密度は3.5g/cm3である。
【0183】
2.負極板の製造
負極活物質である人造黒鉛と、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)とを、質量比96.4:0.7:1.8:1.1で、適量の溶媒である脱イオン水で均一に混合して負極スラリーを得て、負極スラリーを負極集電体である銅箔に塗布し、加熱乾燥、冷間プレス、ストライプ化、裁断などの工程を経て負極板を得る。負極面密度は0.126mg/mm2であり、圧密密度は1.7g/cm3である。
【0184】
3.セパレータ
セパレータは上記に製造されたセパレータ1を使用する。
【0185】
4.電解液の製造
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)を質量比30:70で混合して有機溶媒を得て、十分に乾燥した電解質塩LiPF6を上記混合溶媒に溶解し、電解質塩の濃度を1.0mol/Lとし、均一に混合して電解液を得る。
【0186】
5.二次電池の製造
正極板、セパレータ、負極板を順に積み重ね、セパレータを正、負極板の間に介在させて隔離の役割を果たし、続いて巻き取って電極アセンブリを得て、電極モジュールを外装に入れ、以上に製造した電解液を乾燥後の二次電池に注入し、真空パッケージ、静置、化成、整形等のプロセスによって二次電池を得る。
【0187】
実施例2-36および比較例1-4の二次電池は、実施例1の二次電池の製造方法と類似しているが、異なるセパレータを用いた点で異なり、具体的には表2を参照されたい。
【0188】
三、電池性能測定
1.2C倍率性能テスト
25℃で、各実施例と比較例の二次電池を0.33C倍率で4.20Vまで定電流充電し、さらに定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min静置し、その時の充電容量を記録して、最初の充電容量とする。5min静置し、さらに0.33Cの倍率で2.8Vまで定電流放電し、30min静置する。続いて、二次電池を2C倍率で4.20Vまで定電流充電し、さらに電流0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、そのときの充電容量を記録する。
2C充電倍率での電池の容量維持率(%)=2C充電容量/0.33C充電容量×100%
【0189】
2.60℃高温貯蔵性能テスト
25℃で、実施例および比較例で製造した二次電池を1C倍率で充電カットオフ電圧4.2Vまで充電した後、定電圧で電流0.05Cまで充電し、5min静置し、さらに0.33C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、電池の初期容量を得る。そして25℃で充電カットオフ電圧4.2Vまで電池を1C倍率で充電した後、定電圧で電流0.05Cまで充電し、このとき電池は満充電状態とし、満充電後の電池を60℃の恒温ボックスに入れて保存する。7日おきに電池を取り出し、25℃で放電カットオフ電圧2.8Vまで0.33C倍率で放電し、5min静置した後、充電カットオフ電圧4.2Vまで1Cで充電し、その後定電圧で電流0.05Cまで充電し、5min静置し、さらに0.33C倍率で定電流放電し、このとき電池の容量を試験する。容量が初期容量の80%まで減衰するまで、貯蔵日数を記録する。(なお、電池を取り出して容量のテストを完成した後は、電池を充電カットオフ電圧4.2Vまで1C倍率で充電し、その後定電圧で電流0.05Cまで充電し、電池を満充電状態に保存した後、さらに60℃恒温ボックスで保存する必要がある。)
【0190】
3.針刺しテスト
25℃で、実施例と比較例で製造した二次電池(各実施例と比較例はいずれも複数を取る)を1C倍率で充電カットオフ電圧4.2Vまで定電流充電し、その後定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、10min静置する。電池の表面を剥き出しにし、クランプでクランプした後、1mmの鋼針で、0.1mm/sの速度で電池が熱暴走するまで針で刺し、その時の針刺し深さをL0と記す。
【0191】
また、別の電池を採取し、前記操作ステップを繰り返すが、異なるのは針刺し深さをL0~0.1mmに制御し、1h静止観察する。
【0192】
前記観察期間中に、当該電池が熱暴走した場合、新しい電池を取り、前記操作ステップを繰り返し、相違点は針刺し深さをL0-0.2mmに制御するということである。
【0193】
このように、電池が観察中に熱暴走しないまでは、このときの針刺し深さをLと記し、Lは電池が安全に使用される針刺し深さである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【0194】
表1から明らかなように、第1の有機粒子および第2の有機粒子の数の比を本願の範囲内にすることにより、電池の倍率性能、貯蔵性能および安全性能を著しく向上させることができる。特に、第1の有機粒子と第2の有機粒子との数平均粒子径、数平均粒子径の比、または物質種類をさらに最適化することにより、電池の倍率性能、貯蔵性能および安全性能を一層向上させることができる。対照的には、比較例1-4はいずれも本願の要求を満たしていないため、電池は良好な倍率性能と貯蔵性能と安全性能とを両立することができない。
【0195】
本発明者らはまた、本願の範囲内の無機粒子、第1の有機粒子および第2の有機粒子の他の使用量および材質、他の基材、他の塗布プロセスパラメータおよび他のプロセス条件を用いて実験を行い、実施例1-36と同様の電池の倍率性能および安全性能を向上させる効果を得る。
【0196】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な変更や置き換えを容易に想到でき、これらの変更や置き換えは、いずれも本願の保護範囲に属するものである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。