(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】固相合成用の多孔質樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20250226BHJP
C08F 212/02 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
C08J9/28 CER
C08F212/02
(21)【出願番号】P 2023514051
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2021077663
(87)【国際公開番号】W WO2022110560
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】202011357390.X
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517446393
【氏名又は名称】西安藍暁科技新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUNRESIN NEW MATERIALS CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】No.135, Jinye Rd, Xi’an Hi-tech Industrial Development Zone, Xi’an, Shaanxi, 710075, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王朝陽
(72)【発明者】
【氏名】張チェン
(72)【発明者】
【氏名】呉丹
(72)【発明者】
【氏名】趙偉傑
(72)【発明者】
【氏名】李延軍
(72)【発明者】
【氏名】劉瓊
(72)【発明者】
【氏名】寇暁康
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511743(JP,A)
【文献】特開2010-006888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326210(US,A1)
【文献】特開2011-063728(JP,A)
【文献】特表2013-539905(JP,A)
【文献】特開平06-306037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相合成用の多孔質樹脂であって、前記多孔質樹脂は骨格に式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)で表される繰り返し構造単位を有する共重合体であり、
【化1】
(ただし、R
4=-C-又は-C-CH
2-である。)
【化2】
【化3】
(ただし、R
5は、-OH、-CH
2OH、-NH
2、-CH
2NH
2、-CH
2OOC-C
6H
4-OH、-CH
2OOCCH
2-C
6H
4-OH、-(CH
2)
4OOC-C
6H
4-OH、-(CH
2)
4OOCCH
2-C
6H
4-OH、-CONH-C
6H
4-NH
2、-CH
2CONH-C
6H
4-NH
2、-COO-C
6H
4-OH、又は-CH
2COO-C
6H
4-OHである。)
【化4】
(ただし、R
6は-H、CH
3(CH
2)
n-(nは0~4の整数である。)、(CH
3)
2CH(CH
2)
n-(nは0~2の整数である。)、(CH
3)
3C-、CH
3CH
2CH(CH
3)-、CH
3CH
2C(CH
3)
2-、CH
3CH
2CH
2CH(CH
3)-、又はCH
3(CH
2)
n-O-(nは0~4の整数である。)である。)
(ただし、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)で表される繰り返し構造単位はそれぞれ変性単量体、架橋単量体、機能性単量体、及びモノビニル化合物に由来する。)
(ただし、単量体全量に対して前記モノビニル化合物は40~95.9重量%であり、単量体全量に対して前記架橋単量体は2~20重量%であり、単量体全量に対して前記機能性単量体は2~20重量%であり、単量体全量に対して前記変性単量体は0.1~20重量%である。)
(ただし、
前記多孔質樹脂はヒドロキシ又はアミノの含有量が100~1000μmol/gであり、アミノ又はヒドロキシの前記含有量は、Fmoc-Leu-OHと反応した後、Fmoc保護基を除去することにより得られ、比色法により除去したFmocの量を決定し、前記多孔質樹脂におけるアミノ又はヒドロキシの前記含有量を算出される。)
前記多孔質樹脂は、粒子画像処理装置により検出される、すなわち、前記多孔質樹脂をスライドガラスに均一に分布させ、顕微鏡で担体粒子を拡大させながら、カメラで顕微鏡により拡大された前記多孔質樹脂の粒子画像を撮影し、コンピュータによって前記多孔質樹脂の外観特徴及び粒度を分析して計算される粒径の範囲が35~200μmであり、
前記多孔質樹脂は、水銀圧入法により測定される、すなわち、サンプル0.1500~0.3000gを正確に秤取して全自動水銀圧入装置AutoPore IV 9500(Micromeritics Instrument Co.)に入れ、汞の接触角を130°、表面張力を485dyn/cmに設定し、この条件で水銀圧入法により測定される平均孔径が10~200nmである、ことを特徴とする固相合成用の多孔質樹脂。
【請求項2】
ヒドロキシ又はアミノの含有量が400~700
μmol/gであ
り、
アミノ又はヒドロキシの前記含有量は、Fmoc-Leu-OHと反応した後、Fmoc保護基を除去することにより得られ、比色法により除去したFmocの量を決定し、前記多孔質樹脂におけるアミノ又はヒドロキシの前記含有量を算出される、ことを特徴とする請求項1に記載の固相合成用の多孔質樹脂。
【請求項3】
前記多孔質樹脂は、粒子画像処理装置により検出される、すなわち、前記多孔質樹脂をスライドガラスに均一に分布させ、顕微鏡で担体粒子を拡大させながら、カメラで顕微鏡により拡大された前記多孔質樹脂の粒子画像を撮影し、コンピュータによって前記多孔質樹脂の外観特徴及び粒度を分析して計算される粒径の範囲
が50~100μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の固相合成用の多孔質樹脂。
【請求項4】
前記多孔質樹脂は、水銀圧入法により測定される、すなわち、サンプル0.1500~0.3000gを正確に秤取して全自動水銀圧入装置AutoPore IV 9500(Micromeritics Instrument Co.)に入れ、汞の接触角を130°、表面張力を485dyn/cmに設定し、この条件で水銀圧入法により測定される平均孔径
が40~100nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の固相合成用の多孔質樹脂。
【請求項5】
固相合成用の多孔質樹脂の製造方法であって、水、分散剤、無機塩から構成される水相と、モノビニル化合物、架橋単量体、機能性単量体、変性単量体、油溶性界面活性剤、希釈剤及び開始剤から構成される油相とをそれぞれ調製するステップ
と、
前記油相を前記水相に加えて、撹拌して昇温させて、重合反応させて、前記重合反応の終了後、孔形成剤を除去し、多孔質重合体樹脂を得るステップと、を含み、
前記モノビニル化合物、
前記架橋単量体、
前記機能性単量体及び
前記変性単量体は重合反応に関与し、
前記油溶性界面活性剤及び
前記希釈剤は重合反応に関与せず、主に孔形成作用を果たし、
前記変性単量体はトランスブテンジニトリル、1,4-ジシアノ-2-ブテンを含み、
前記モノビニル化合物はスチレン及びそのベンゼン環置換誘導体を含み、置換基は1~5個の炭素原子を含有するアルキル又はアルコキシであり、
前記架橋単量体はジビニルベンゼンであり、
前記機能性単量体は、4-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシメチルスチレン、4-アセトキシスチレン、ベンゾイルオキシスチレン、4-アミノスチレン、4-アミノメチルスチレン、4-(4-ブロモブチル)スチレン、p-クロロメチルスチレン、4-ビニル安息香酸メチル、4-エテニルベンゼン酢酸エチルエステルを含み、
前記希釈剤は重合反応に関与しない有機溶媒であり、
前記分散剤は水溶性高分子であり、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンのうちの1種又は複数種を含み、
前記油相において、単量体全量に対して前記モノビニル化合物は40~95.9重量%であり、
前記油相において、単量体全量に対して前記架橋単量体は2~20重量%であり、
前記油相において、単量体全量に対して前記機能性単量体は2~20重量%であり、
前記油相において、単量体全量に対して前記変性単量体は0.1~20重量%であり、
さらに前記多孔質重合体樹脂を反応させて、機能基としてヒドロキシ又はアミノを含有する多孔質樹脂を得て、
前記多孔質樹脂はヒドロキシ又はアミノの含有量が100~1000μmol/gであり、アミノ又はヒドロキシの前記含有量は、Fmoc-Leu-OHと反応した後、Fmoc保護基を除去することにより得られ、比色法により除去したFmocの量を決定し、前記多孔質樹脂におけるアミノ又はヒドロキシの前記含有量を算出され、
前記多孔質樹脂は、粒子画像処理装置により検出される、すなわち、前記多孔質樹脂をスライドガラスに均一に分布させ、顕微鏡で担体粒子を拡大させながら、カメラで顕微鏡により拡大された前記多孔質樹脂の粒子画像を撮影し、コンピュータによって前記多孔質樹脂の外観特徴及び粒度を分析して計算される粒径の範囲が35~200μmであり、
前記多孔質樹脂は、水銀圧入法により測定される、すなわち、サンプル0.1500~0.3000gを正確に秤取して全自動水銀圧入装置AutoPore IV 9500(Micromeritics Instrument Co.)に入れ、汞の接触角を130°、表面張力を485dyn/cmに設定し、この条件で水銀圧入法により測定される平均孔径が10~200nmである、ことを特徴とす
る固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記開始剤は有機過酸化物又はアゾ化合物であ
る、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記開始剤は過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記油溶性界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール蜜ロウ誘導体、トリステアリン酸ソルビタン、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールオレイン酸エステル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシラノリン、ソルビタンモノオレイン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステルのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記希釈剤は
、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン
、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、イソオクタン、イソドデカン、シクロヘキサン
、クロロホルム、クロロベンゼン
、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル
、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、イソオクタノール、デカノール、ドデカノールを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記水相において、
前記分散剤は0.1~5重量%、
前記無機塩は20重量%以下であり、
前記油相と
前記水相との重量比は1:3~1:20であり
、
前記油相において、
前記孔形成剤の重量は単量体全重量の15~70%であり
、
前記孔形成剤中、
前記油溶性界面活性剤は孔形成剤全重量の0.1~15%を占め、
前記孔形成剤中、
前記希釈剤は孔形成剤全重量の85~99.9%を占める、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記重合温度は50~90℃
である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記製造過程は、
反応器に一定量の精製水を加え、水相重量に対して
前記分散剤
を0.1~5重量%と水相重量に対して
前記無機塩
を20重量%以下とを加え、溶解して、
前記水相を得るステップと、
前記油相と
前記水相との重量比が1:3~1:20となるように、単量体全重量に対して、
前記モノビニル化合物
を40~95.9%、
前記架橋単量体
を2~20%、
前記機能性単量体
を2~20%、
前記変性単量体
を0.1~20%
、孔形成剤重量に対して
前記油溶性界面活性剤が0.1~15重量%を占め、
前記希釈剤が85~99.9%を占める
前記孔形成剤15~70%、
前記開始剤と、を秤量し、均一に混合すると、
前記油相を得るステップと、
前記油相を
前記反応器に加えて、撹拌して50~90
℃に昇温させ、反応させて、反応終了後、
前記孔形成剤を除去し、篩分けして適切な粒径の樹脂を収集し、真空乾燥させ、多孔質重合体樹脂を得て、さらに樹脂を反応させ、アミノ又は
ヒドロキシ官能基とした多孔質樹脂を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5から11のいずれか1項に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記多孔質アミノ樹脂の製造プロセスは、
凝縮器、撹拌器及び温度計を装備した3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得て、
スチレン110g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)10g、p-クロロメチルスチレン12g、トランスブテンジニトリル8g、ソルビタンモノオレイン酸エステル5g、イソオクタノール45g及び過酸化ベンゾイル2.5gを秤量し、均一に混合すると、油相を得て、油相を反応器に加えて、撹拌し、80℃に昇温させて4h重合し、反応終了後、熱水で洗浄して、エタノール還流により孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、塩素含有量が550μmol/gの重合体多孔質樹脂を得るステップと、
凝縮器、撹拌器及び温度計を装備した1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、N,N-ジメチルホルムアミド500mlを投入し、撹拌し、その後、フタルイミドカリウム塩30gを加え、95℃に昇温させて16時間反応させ、反応終了後、室温に冷却させ、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで2回洗浄し、精製水で中性となるまで洗浄し、次に、無水エタノールで3回洗浄し、樹脂をろ別して乾燥させ、反応器に無水エタノール200gとヒドラジン水和物50gを加え、75℃に昇温させて16時間反応させ、反応終了後、体積比50:50のエタノール/精製水溶液で3回洗浄し、精製水で中性となるまで洗浄し、次に、無水エタノールで3回洗浄し、洗浄液をろ別して除去し、反応器に無水エタノール200gと濃塩酸50gを加え、60℃に昇温させて6h反応させ、反応終了後、室温に冷却させ、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、アミノ含有量が543μmol/gの、水銀圧入法により測定した平均孔径が48nmの固相合成担体を得るステップと、を含み、或いは、
前記多孔質ヒドロキシ樹脂の製造プロセスは、
凝縮器、撹拌器及び温度計を装備した3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入し、溶解して、水相を得て、
スチレン111g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)11g、4-アセトキシスチレン13g、トランスブテンジニトリル5g、ソルビタンモノオレイン酸エステル8g、イソオクタノール40g、イソドデカン20g及び過酸化ベンゾイル2.5gを秤量し、均一に混合すると、油相を得て、油相を反応器に加えて、撹拌して78℃に昇温させ、6h重合し、反応終了後、熱水で樹脂を洗浄して、エタノール還流により孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、重合体多孔質樹脂を得るステップと、
凝縮器、撹拌器及び温度計を装備した1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、アセトニトリル300mlを投入し、撹拌し、ヒドラジン水和物7.5mlをゆっくりと加え、室温で3h反応させ、反応終了後、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシの含有量が550μmol/g、水銀圧入法により測定した平均孔径が64nmの、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5から12のいずれか1項に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項14】
請求項5から13のいずれか1項に記載の方法で製造した請求項1に記載の固相合成用の多孔質樹脂、のオリゴヌクレオチドの固相合成への使用。
【請求項15】
前記油相において、単量体全量に対して前記モノビニル化合物は60~88重量%である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記油相において、単量体全量に対して前記架橋単量体は5~15重量%である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項17】
前記油相において、単量体全量に対して前記機能性単量体は5~15重量%である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項18】
前記油相において、単量体全量に対して前記変性単量体は2~10重量%である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項19】
前記油相において、前記孔形成剤の重量は単量体全重量の25~50%である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項20】
前記重合温度は60~85℃である、ことを特徴とする請求項5に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【請求項21】
前記製造過程は、
反応器に一定量の精製水を加え、前記水相重量に対して前記分散剤を0.1~5重量%と水相重量に対して前記無機塩を20重量%以下とを加え、溶解して、前記水相を得るステップと、
前記油相と前記水相との重量比が1:3~1:20となるように、単量体全重量に対して、前記モノビニル化合物が60~88重量%と、前記架橋単量体が5~15重量%と、前記機能性単量体が5~15重量%と、前記変性単量体が2~10重量%と、孔形成剤重量に対して前記油溶性界面活性剤が0.1~15重量%を占め、前記希釈剤が85~99.9%を占める前記孔形成剤が25~50重量%と、前記開始剤と、を秤量し、均一に混合すると、前記油相を得るステップと、
前記油相を前記反応器に加えて、撹拌して60~85℃に昇温させ、反応させて、前記反応の終了後、前記孔形成剤を除去し、篩分けして適切な粒径の樹脂を収集し、真空乾燥させ、多孔質重合体樹脂を得て、さらに、この樹脂を反応させ、アミノ又はヒドロキシ官能基とした多孔質樹脂を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5から11のいずれか1項に記載の固相合成用の多孔質樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質樹脂及びその製造方法に関し、該担体はオリゴヌクレオチドの固相合成に用いられ、機能性高分子材料の製造分野に属する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間、人工的に合成されたオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子治療に広く応用されてきた。オリゴヌクレオチドとは、約20個の塩基を持つ短鎖ヌクレオチドの総称で、デオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)を含む。現在、オリゴヌクレオチドは一般的に化学的方法で合成され、固相ホスホロアミダイトトリエステル法で合成されるのが最も一般的であり、具体的な方法は固相合成担体を反応カラムに充填し、反応物を溶解した溶液を一定の圧力で反応カラムに急速に流して反応を行うことである。反応効率を向上させ、不純物の発生を低減するために、溶液における反応物を固相合成担体内に速やかに拡散させて活性部位と反応させ、反応生成物を速やかに溶液中に拡散させて除去することが必要である。このため、固相合成担体には次のような要件を満たすことが求められる。1.担体は必ず、核酸分子鎖がこれらの部位に連結でき、そして合成完了後に分解できる単一の活性部位(又は反応基)を含む。2.担体は、合成中に物理的及び化学的安定性を維持しなければならない。3.担体は、増大し続ける核酸分子鎖と試薬が迅速かつ阻害されることなく接触することを容易にするのに十分な大きさの細孔径及び理想的な細孔径分布を有するべきである。4.活性部位は、核酸分子鎖間の相互干渉を減少させるために、担体に均一に分布しなければならない。5.オリゴヌクレオチド合成に使用されるホスホロアミダイト単量体が水分に敏感であり、水分の存在により反応効率が低下することから、担体骨格は一定の疎水性を示すべきである。6.担体は異なる溶媒中での膨潤度が近く、異なる溶媒の合成又は洗浄プロセスの膨潤の差によるデッドボリュームを減少させ、反応試薬の均一な拡散と反応生成物の迅速な洗浄除去に有利である。
【0003】
オリゴヌクレオチド固相合成技術の発展初期では、よく使用されている固相合成担体は細孔径制御可能なガラス微小球(CPG)、変性シリカゲルなどの無機粒子があるが、それらの欠点も明らかであり、すなわち、置換度(Loading)が低い(一般的に100μmmol/gより小さい)ため、オリゴヌクレオチドの単ロットの生産量が制限され、設備の利用率が低く、生産コストが高い。担体の置換度を高めるために、Nitto Denko社とIonis社が共同で出願した発明特許WO2006029023は、スチレン、p-アセトキシスチレン、ジビニルベンゼンを重合単量体とし、イソオクタン、2-エチルヘキサノールを孔形成剤として有機高分子重合体を調製し、オリゴヌクレオチド固相合成担体とした。この担体は置換度が100~350μmmol/gに達することができ、その欠点は担体の強い非極性によりオニウム塩類縮合系でリンカーを連結する時の反応効率が低く、また、強い非極性により合成又は洗浄過程でトルエンとアセトニトリルを使用する時に樹脂の体積が大きく変化し、反応器において大きなデッドボリュームが発生することである。その後、Nitto Denko社は米国特許US8592542において、スチレン、p-アセトキシスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリルアミド誘導体を重合単量体としている。米国特許US8653152では、スチレン、p-アセトキシスチレン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリロニトリルを重合単量体としている。重合時に極性単量体を添加することにより、より高い置換度(500μmmol/g以上)を有するオリゴヌクレオチド固相合成担体を製造する。また、極性単量体の添加は、異なる溶媒(トルエン、アセトニトリル)における担体の膨潤変動を調整するのに有利である。しかし、(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリルは親水性であるので、無水溶媒(無水アセトニトリル)で洗浄すると酸化ステップで加えた水分を除去することが困難であり、次のオリゴヌクレオチドの合成効率に影響する。また、溶媒法により孔を形成して得た細孔径分布が不均一で、物質移動効果が悪く、また、水分の除去と次のオリゴヌクレオチドの合成効率にも影響する。南開大学が出願した中国発明特許CN201210562165.9は、架橋ポリアクリロニトリル又は架橋ポリメタクリロニトリルを担体の基本骨格とする。活性部位の導入は、酢酸ビニル、アクリル酸エステル系又はメタクリル酸エステル系単量体を添加し、アルカリ分解又は2つの1級アミン基を有する化合物との反応によりヒドロキシ又はアミノを導入する。この特許は大量の極性単量体を使用しているので、樹脂の異なる溶媒における膨潤差の問題を解決するが、大量の親水性単量体の使用により、担体が極めて親水性であり、無水溶媒(アセトニトリル)を使用した洗浄により担体における水分を除去することが更に困難になり、次のオリゴヌクレオチドの合成効率に極めて大きな影響を与える。
【0004】
近年、オリゴヌクレオチド薬物の研究が巨大な進展を得たため、ますます多くのオリゴヌクレオチド薬物が臨床段階に入り始めた。オリゴヌクレオチド合成担体に対する需要量はますます多くなり、また、上記のオリゴヌクレオチド担体に存在する物質移動、膨潤、極性の問題によりオリゴヌクレオチド合成効率が低くなり、生産コストが高くなる。そのため、オリゴヌクレオチド薬物を大規模、低コスト、高効率で合成できる多孔質樹脂を開発し、ヌクレオチド薬物の市場需要を満たすことが極めて重要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オリゴヌクレオチドを大規模かつ低コストで製造することを可能とし、物質移動効率が低く、洗浄が不十分であり、異なる溶媒中での膨潤変化が大きいような従来の担体の欠点を解決するために、本発明は固相合成用の多孔質樹脂及びその製造方法を提供する。
【0006】
物質移動効率を向上させるために、本発明は、細孔径の大きさが適切で均一な細孔径分布を実現することが望ましい。本発明は、高内相エマルションをテンプレートとして孔を形成するものであり、逆相法、相分離法、溶媒孔形成法等の従来の孔形成法に比べて、この方法は、エマルション液滴の大きさによって細孔径や細孔径分布を正確に制御することができる。内相エマルション液滴の大きさは油溶性界面活性剤の分子量、HLB値、使用量などの要素により決定され得る。本発明は、孔形成方式を変えて、担体が適切な細孔径を有し、細孔径分布が狭いようにするものであり、オリゴヌクレオチド合成プロセスにおける反応試薬の拡散に有利であり、反応効率を向上させ、不純物の生成を減少させる。
【0007】
重合過程に変性単量体を添加することは以下の4つの作用がある。第一に、変性単量体の重合速度が遅く、単独重合を行うことができず、他の単量体と共重合することしかできず、活性部位の均一な分布に有利である。第二に、少量の変性単量体を添加することにより、樹脂の膨潤性を広範囲に調整することができ、異なる溶媒中での担体の膨潤体積の変化を低減させ、オリゴヌクレオチド合成における反応器内部のデッドボリュームを低減することができる。第三に、変性単量体の分子構造はオニウム塩系縮合剤をより効率的にし、リンカーの連結効率を確保することができる。第四に、変性単量体は(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリロニトリルと比べて疎水性であり、水の担体内での物質移動抵抗を下げ、オリゴヌクレオチド合成過程への水の影響を低減させ、反応効率と収率を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重合体骨格及び機能基の構造が下記の式で表される固相合成用の多孔質樹脂を提供する。
【化1】
(ただし、R
1=-C又は-C-CH
2-であり、R
2=-OH、-CH
2OH、-NH
2、-CH
2NH
2、-CH
2OOC-C
6H
4-OH、-CH
2OOCCH
2-C
6H
4-OH、-(CH
2)
4OOC-C
6H
4-OH、-(CH
2)
4OOCCH
2-C
6H
4-OH、-COONH-C
6H
4-NH
2、-CH
2COONH-C
6H
4-NH
2、-COO-C
6H
4-OH、又は-CH
2COO-C
6H
4-OHであり、R
3=-H、CH
3(CH
2)
n-(nは0~4の整数である。)、(CH
3)
2CH(CH
2)
n-(nは0~2の整数である。)、(CH
3)
3C-、又はCH
3CH
2CH(CH
3)-、CH
3CH
2C(CH
3)
2-、CH
3CH
2CH
2CH(CH
3)-、又はCH
3(CH
2)
n-O-(nは0~4の整数である。)である。)
【0009】
いくつかの実施例では、前記固相合成用の多孔質樹脂は、骨格に式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)で表される繰り返し構造単位を有する共重合体である。
【化2】
(ただし、R
4=-C-又は-C-CH
2-である。)
【化3】
【化4】
(ただし、R
5は、-OH、-CH
2OH、-NH
2、-CH
2NH
2、-CH
2OOC-C
6H
4-OH、-CH
2OOCCH
2-C
6H
4-OH、-(CH
2)
4OOC-C
6H
4-OH、-(CH
2)
4OOCCH
2-C
6H
4-OH、-COONH-C
6H
4-NH
2、-CH
2COONH-C
6H
4-NH
2、-COO-C
6H
4-OH、又は-CH
2COO-C
6H
4-OHである。)
【化5】
(ただし、R
6は-H、CH
3(CH
2)
n-(nは0~4の整数である。)、(CH
3)
2CH(CH
2)
n-(nは0~2の整数である。)、(CH
3)
3C-、CH
3CH
2CH(CH
3)-、CH
3CH
2C(CH
3)
2-、CH
3CH
2CH
2CH(CH
3)-、又はCH
3(CH
2)
n-O-(nは0~4の整数である。)である。)
【0010】
いくつかの実施例では、前記固相合成用の多孔質樹脂において、ヒドロキシ又はアミノの含有量の範囲が100~1000μmmol/g、好ましくは400~700μmmol/gである。
【0011】
いくつかの実施例では、前記固相合成用の多孔質樹脂において、粒径の範囲が35~200μm、好ましくは50~100μmである。
【0012】
いくつかの実施例では、前記固相合成用の多孔質樹脂において、平均細孔径が10~200nm、好ましくは40~100nmである。
【0013】
本発明はまた、
製造過程は、
水、分散剤、無機塩から構成される水相と、モノビニル化合物、架橋単量体、機能性単量体、変性単量体、油溶性界面活性剤、希釈剤及び開始剤から構成される油相とをそれぞれ調製するステップであって、モノビニル化合物、架橋単量体、機能性単量体及び変性単量体は重合反応に関与し、単量体と総称し、油溶性界面活性剤及び希釈剤は重合反応に関与せず、主に孔形成作用を果たし、孔形成剤と総称するステップと、油相を水相に加えて、撹拌して昇温させて、反応させて、反応終了後、孔形成剤を除去し、多孔質重合体樹脂を得るステップと、さらに多孔質重合体樹脂を反応させて、機能基としてヒドロキシ又はアミノを含有する固相合成担体ステップと、を含む上記固相合成用の多孔質樹脂の製造方法を開示する。
【0014】
いくつかの実施例では、前記モノビニル化合物は芳香族モノビニル化合物であり、前記芳香族モノビニル化合物はスチレン及びそのベンゼン環置換誘導体であり、置換基が1~5個の炭素原子を含有するアルキルスチレン、例えばメチルスチレン、エチルスチレン、ノルマルプロピルスチレン、イソプロピルスチレン、ノルマルブチルスチレン、イソブチルスチレン、s-ブチルスチレン、t-ブチルスチレン、n-ペンチルスチレン、イソペンチルスチレン、s-ペンチルスチレン又はt-ペンチルスチレン;又は置換基が1~5個の炭素原子を含有するアルコキシスチレン、例えばメトキシスチレン、エトキシスチレン、プロポキシスチレン、ブトキシスチレン又はペンチルオキシスチレンである。好ましいモノビニル化合物はスチレンである。
【0015】
いくつかの実施例では、前記架橋単量体は2つ以上の非共役ビニルを有する多官能基単量体であり、本発明では、好ましくはジビニルベンゼンである。前記ジビニルベンゼンはo-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン又はこれらの3つの混合物である。
【0016】
いくつかの実施例では、前記機能性単量体は、ラジカル重合可能な二重結合と、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン化基又は反応を通じてヒドロキシ、アミノに転化可能な基との両方を含有するものである。オリゴヌクレオチド合成過程では、反応性ヒドロキシ又はアミノはオリゴヌクレオチドを連結する活性部位となり、アミノ、アミノアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキルなどであってもよい。好ましくは、第1級アミノ、アミノメチル、ヒドロキシ、メチロールなどであってもよい。ヒドロキシスチレン及びその誘導体、例えば4-ヒドロキシスチレンなど、ヒドロキシアルキルスチレン及びその誘導体、例えば4-ヒドロキシメチルスチレンなど;アシルオキシスチレン及びその誘導体、例えば4-アセトキシスチレン、ベンゾイルオキシスチレンなど;アミノスチレン及びその誘導体、例えば4-アミノスチレンなど、アミノアルキルスチレン及びその誘導体、例えば4-アミノメチルスチレンなど;ハロアルキルスチレン単量体、例えば4-(4-ブロモブチル)スチレン、4-クロロメチルスチレンなど;4-ビニルフェニルエステル単量体、例えば4-ビニル安息香酸メチル、4-エテニルベンゼン酢酸エチルエステルなどを含むが、これらに限定されない。
【0017】
いくつかの実施例では、前記機能性単量体としては、ヒドロキシ保護基又はアミノ保護基が含有されており、保護基を直接切断することによってアミノ又はヒドロキシが形成され得る単量体があり、例えば、アシルオキシスチレンはアルカリ又は酸による加水分解によってヒドロキシに転化され、オリゴヌクレオチドを連結する活性部位となってもよく、官能化反応によって活性部位として機能し得るアミノ又はヒドロキシに転化する必要がある単量体もあり、例えば、ハロアルキルスチレンは加水分解によってヒドロキシに転化したり、Gabriel反応によって第1級アミノに転化して、オリゴヌクレオチドを連結する活性部位となってもよく、アミノ又はヒドロキシを備える連結アームを活性部位として連結する必要がある単量体もあり、例えば、ハロアルキルスチレンは4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸と反応してヒドロキシを生成し、オリゴヌクレオチドを連結する活性部位となってもよく、また、上記の複数の反応の組み合わせにより活性部位となるアミノ又はヒドロキシを取得する必要がある単量体もあり、例えば、4-ビニルフェニルエステル単量体系の単量体の場合、まず加水分解してヒドロキシを露出し、次にハイドロキノン又はp-フェニレンジアミンと反応して、活性部位となるアミノ又はヒドロキシを得る。
【0018】
いくつかの実施例では、前記変性単量体は、単量体においてラジカル重合に関与可能な二重結合と、2つのシアノとの両方を有するものである。このような変性単量体は単独重合ができず、他の単量体と共重合することしかできず、トランスブテンジニトリル、1,4-ジシアノ-2-ブテンなどを含むが、これらに限定されない。本発明では、好ましくはトランスブテンジニトリルである。
【0019】
いくつかの実施例では、前記開始剤は有機過酸化物又はアゾ化合物であり、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などを含むが、これらに限定されない。開始剤の使用量は単量体全重量の0.5~5%である。
【0020】
いくつかの実施例では、前記油溶性界面活性剤は重合反応に関与せず、水に不溶又は微溶である界面活性剤であり、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール蜜ロウ誘導体、トリステアリン酸ソルビタン、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールオレイン酸エステル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシラノリン、ソルビタンモノオレイン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルのうちの1種又は複数種の組み合わせを含むが、これらに限定されない。前記希釈剤は重合反応に関与せず、水に不溶又は微溶である有機溶媒であり、芳香族炭化水素例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなど;脂肪族炭化水素例えば炭素数6~12の直鎖、分岐鎖又は環状アルカン例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、イソオクタン、イソドデカン、シクロヘキサンなど;ハロ炭化水素例えばクロロホルム、クロロベンゼンなど;炭素数4以上のエステル例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジブチルなど;アルコール例えば炭素数4~12の直鎖、分岐鎖又は環状アルカンアルコール、例えばヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、イソオクタノール、デカノール、ドデカノールなどを含むがこれらに限定されない。油溶性界面活性剤及び希釈剤はいずれも重合反応に関与せず、主に孔形成作用を果たし、孔形成剤と総称する。
【0021】
いくつかの実施例では、前記水相は水、分散剤及び無機塩を含み、前記分散剤は水溶性高分子であり、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。分散剤の使用量は水相の重量の0.1~5%である。前記無機塩は、水相の密度を調整しながら、油相における各成分の水相での溶解度を下げ、油滴を水相により安定的に分散させる役割を果たす。前記無機塩は塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム等のうちの1種又は複数種を含むがこれらに限定されない。無機塩の使用量は水相の使用量の20%以下である。
【0022】
いくつかの実施例では、樹脂間の粘着を減少させ、重合熱の電導性を高め、また、装置の利用率を向上させ、生産効率を高めるために、油相と水相との重量比は1:3~1:20に設定されている。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、各成分は以下のような量で存在する。初期では、油相中に存在するモノビニル化合物は単量体全量に対して40~95.9重量%であり、油相中に存在する架橋単量体は単量体全量に対して2~20重量%であり、油相中に存在する機能性単量体は単量体全量に対して2~20重量%であり、油相中に存在する変性単量体は単量体全量に対して0.1~20重量%であり、油相中に存在する孔形成剤の重量は単量体全重量の15~70%であり、油溶性界面活性剤は孔形成剤全重量の0.1~15%を占め、希釈剤は孔形成剤全重量の85~99.9%を占める。
【0024】
本発明のいくつかのより好適な実施形態では、各成分は以下のような量で存在する。初期では、油相中に存在するモノビニル化合物は単量体全量に対して60~88重量%であり、油相中に存在する架橋単量体は単量体全量に対して5~15重量%であり、油相中に存在する機能性単量体は単量体全量に対して5~15重量%であり、油相中に存在する変性単量体は単量体全量に対して2~10重量%であり、油相中に存在する孔形成剤の重量は単量体全重量の25~50%である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、重合温度は50~90℃、好ましくは60~85℃である。
【0026】
本発明のいくつかの実施例では、前記固相合成用の多孔質樹脂の製造方法は、
反応器に一定量の精製水を加え、水相重量に対して分散剤0.1~5重量%と水相重量に対して無機塩20重量%以下とを加え、溶解して、水相を得るステップと、油相と水相との重量比が1:3~1:20となるように、単量体全重量に対して、モノビニル化合物40~95.9%と、架橋単量体2~20%と、機能性単量体2~20%と、変性単量体0.1~20%と、孔形成剤重量に対して油溶性界面活性剤が0.1~15%、希釈剤が85~99.9%を占める孔形成剤15~70%と、開始剤と、を秤取し、均一に混合して、油相を得るステップと、油相を反応器に加えて、撹拌し、50~90℃に昇温させて、反応させて、反応終了後、孔形成剤を除去し、篩分けして適切な粒径の樹脂を収集し、真空乾燥させ、多孔質重合体樹脂を得るステップと、を含む。さらに樹脂を反応させ、アミノ又はヒドロキシを官能基とした多孔質樹脂を得る。
【0027】
本発明のいくつかの実施例では、前記固相合成用の多孔質樹脂の製造方法は、
反応器に一定量の精製水を加え、水相重量に対して分散剤0.1~5重量%と無機塩20重量%以下とを加え、溶解して、水相を得るステップと、油相と水相との重量比が1:3~1:20となるように、単量体全重量に対して、モノビニル化合物60~88%と、架橋単量体5~15%と、機能性単量体5~15%と、変性単量体2~10%と、孔形成剤重量に対して油溶性界面活性剤が0.1~15%、希釈剤が85~99.9%を占める孔形成剤25~50%と、開始剤と、を秤取し、均一に混合して、油相を得るステップと、油相を反応器に加えて、撹拌し、60~85℃に昇温させて、反応させて、反応終了後、孔形成剤を除去し、篩分けして適切な粒径の樹脂を収集し、真空乾燥させ、多孔質重合体樹脂を得るステップと、を含む。さらに樹脂を反応させ、官能基をアミノ又はヒドロキシとする多孔質樹脂を得る。
【0028】
上記方法によれば、本発明における固相合成用の多孔質樹脂、すなわち、ヒドロキシ又はアミノを含有する多孔質樹脂が得られる。本発明では、アミノ又はヒドロキシの含有量、すなわち置換度は、Fmoc-Leu-OHと反応した後、Fmoc保護基を除去し、比色法により除去したFmocの量を決定し、多孔質樹脂におけるアミノ又はヒドロキシの含有量を算出することにより得られてもよい。
【0029】
いくつかの実施例では、具体的な操作は以下のとおりである。担体1.0gを正確に秤取し、アセトニトリル溶液7mlに懸濁させた後、Fmoc-Leu-OH 0.5g、HBTU 0.5g及びDIEA 0.5mlを加え、室温で2h撹拌反応させる。反応終了後、アセトニトリル(1回あたりの使用量10ml、3回洗浄)、メタノール(1回あたりの使用量10ml、3回洗浄)を用いて樹脂を順次洗浄し、その後、樹脂をベークする。樹脂0.1000gを正確に秤取し、20%ピペリジン/DMF(v/v)溶液に懸濁させ、室温で30min振とうし、濾過して、濾液を収集し、DMFを用いて樹脂を洗浄し、濾液を収集する。濾液を併合して定容し、適切な倍数だけ希釈して、300nmでの吸光度を測定する。濃度が既知の一連のFmoc-Leu-OHを用いて同様なFmoc除去反応を行って、吸光度を測定し、検量線を作成する。検量線から多孔質樹脂中のアミノ又はヒドロキシの含有量を算出する。
【0030】
多孔質樹脂の置換度は機能性単量体の単量体全量における割合により決定され、機能性単量体の使用量を調整することにより置換度の異なる一連の多孔質樹脂が得られ得る。多孔質樹脂の置換度はオリゴヌクレオチド合成量を決定し、置換度が低すぎると、1ロッドのオリゴヌクレオチドの産量が下がり、置換度が高すぎると、オリゴヌクレオチドの純度が影響を受ける。本発明では、多孔質樹脂の置換度の範囲は100~1000μmmol/g、好ましくは400~700μmmol/gである。
【0031】
本発明では、多孔質樹脂の粒径は粒子画像処理装置により検出される。すなわち、多孔質樹脂をスライドガラスに均一に分布させ、顕微鏡で担体粒子を拡大させながら、カメラで顕微鏡により拡大された多孔質樹脂の粒子画像を撮影し、コンピュータによって多孔質樹脂の外観特徴及び粒度を分析して計算する。
【0032】
多孔質樹脂の粒径の大きさは主に水相における分散剤の種類と使用量、孔形成剤の種類と使用量、懸濁重合過程における撹拌の回転数により左右される。これらの条件を調整することにより、多孔質樹脂の粒径を調整することができる。多孔質樹脂の粒径が大きすぎると、一方では、担体の比表面積が下がり、単位面積あたり活性部位の数が増え、オリゴヌクレオチドの純度に悪影響を与え、他方では、オリゴヌクレオチドの合成過程において物質移動速度が遅くなり、不純物が増加する。多孔質樹脂の粒径が小さすぎると、合成過程における圧力が高すぎ、装置のコストが大幅に高まる。本発明では、多孔質樹脂の粒径の範囲は35~200μm、好ましくは50~100μmである。
【0033】
多孔質樹脂の平均細孔径は水銀圧入法により測定される。すなわち、サンプル0.1500~0.3000gを正確に秤取して全自動水銀圧入装置AutoPore IV 9500(Micromeritics Instrument Co.)に入れ、汞の接触角を130°、表面張力を485dyn/cmに設定し、この条件で水銀圧入法により測定される。多孔質樹脂の平均細孔径の大きさは主に孔形成剤の種類と使用量、架橋剤の使用量、反応温度や時間などにより左右される。多孔質樹脂の平均細孔径はこれらの条件を調整することにより調整され得る。多孔質樹脂の平均細孔径が小さすぎると、物質移動が困難になり、合成効率が影響を受け、多孔質樹脂の平均細孔径が大きすぎると、多孔質樹脂の比表面積が低下し、単位面積あたりの活性部位が増加し、オリゴヌクレオチド合成過程で、ヌクレオシドの増加により相互作用が発生し、オリゴヌクレオチドの純度が影響を受ける。本発明では、多孔質樹脂の平均細孔径は10~200nm、好ましくは40~100nmである。
【発明の効果】
【0034】
従来技術に比べて、本発明は主に以下の4つの利点がある。第一に、変性単量体は重合速度を調整することができ、これは活性部位の均一な分布に有利である。第二に、樹脂の膨潤性能を調整することで、担体の異なる溶媒中での膨潤体積の変化を低減させる。第三に、単量体分子の構造における2つのシアノによりオニウム塩系縮合剤がより高性能になり、リンカーの連結効率が確保される。第四に、特許US8592542において「変性単量体」として使用される(メタ)アクリルアミド系単量体、特許US8653152において「変性単量体」として使用される(メタ)アクリロニトリルと比べて、本発明で使用される変性単量体は比較的に疎水的であり、洗浄過程において多孔質樹脂内に残留された微量の水分を素早く除去することができ、オリゴヌクレオチド合成過程への水の影響を低減させ、反応効率及び収率を高める。また、本発明は、油溶性界面活性剤を使用して、油中水型エマルション液滴をテンプレートとして孔を形成するものであり、担体の細孔径の大きさ及び分布を正確に制御することができ、反応試薬の拡散に有利であり、反応効率を高め、不純物の生成を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例1における担体の走査電子顕微鏡像である。
【
図2】実施例2における担体の走査電子顕微鏡像である。
【
図3】実施例6における担体の走査電子顕微鏡像である。
【
図4】実施例9における担体の走査電子顕微鏡像である。
【
図5】実施例1において水銀圧入法により得られる担体の細孔径分布である。
【
図6】実施例2において水銀圧入法により得られる担体の細孔径分布である。
【
図7】実施例6において水銀圧入法により得られる担体の細孔径分布である。
【
図8】実施例9において水銀圧入法により得られる担体の細孔径分布である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、特定実施例を参照して本発明の技術解決手段をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0037】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン110g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)10g、p-クロロメチルスチレン12g、トランスブテンジニトリル8g、ソルビタンモノオレイン酸エステル5g、イソオクタノール45g及び過酸化ベンゾイル2.5gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、80℃に昇温させて4h重合した。反応終了後、熱水で洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、塩素含有量が550μmmol/gの重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、N,N-ジメチルホルムアミド500mlを投入し、撹拌した。その後、フタルイミドカリウム塩30gを加え、95℃に昇温させて16時間反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで2回洗浄し、精製水で中性となるまで洗浄し、次に、無水エタノールで3回洗浄し、樹脂をろ別して乾燥させた。反応器に無水エタノール200gとヒドラジン水和物50gを加え、75℃に昇温させて16時間反応させた。反応終了後、体積比50:50のエタノール/精製水溶液で3回洗浄し、精製水で中性となるまで洗浄し、次に、無水エタノールで3回洗浄し、洗浄液をろ別した。反応器に無水エタノール200gと濃塩酸50gを加え、60℃に昇温させて6h反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、アミノを含有する固相合成担体を得た。得たアミノ固相合成担体はアミノ含有量が543μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が48nmである。
【実施例2】
【0038】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。メチルスチレン70g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)28g、p-クロロメチルスチレン14g、1,4-ジシアノ-2-ブテン28g、トリオレイン酸ソルビタン6g、イソオクタノール45g、トルエン30g及び過酸化ベンゾイル1gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、70℃に昇温させて8h重合した。反応終了後、熱水で洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、塩素含有量が660μmmol/gの重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、N,N-ジメチルホルムアミド500mlを投入し、撹拌した。その後、フタルイミドカリウム塩35gを加え、95℃に昇温させて16時間反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、その後、N,N-ジメチルホルムアミドで2回洗浄し、精製水で中性となるまで洗浄し、次に、無水エタノールで3回洗浄し、樹脂をろ別して乾燥させた。反応器に無水エタノール200gとヒドラジン水和物50gを加え、75℃に昇温させて16時間反応させた。反応終了後、体積比50:50のエタノール/精製水溶液で3回洗浄し、精製水で中性となるまで洗浄し、次に、無水エタノールで3回洗浄し、洗浄液をろ別した。反応器に無水エタノール200gと濃塩酸50gを加え、60℃に昇温させて6h反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、アミノを含有する固相合成担体を得た。得たアミノ固相合成担体はアミノ含有量が650μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が132nmである。
【実施例3】
【0039】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。エチルスチレン127g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)4g、4-(4-ブロモブチル)スチレン8.8g、トランスブテンジニトリル0.2g、ポリオキシエチレンソルビトール蜜ロウ誘導体1g、イソオクタノール12g、フタル酸ジブチル12g及び過酸化ベンゾイル2.5gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、65℃に昇温させて10h重合した。反応終了後、熱水で洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、臭素含有量265μmmol/gの重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、N,N-ジメチルホルムアミド600mlを投入し、撹拌した。その後、4-ヒドロキシ安息香酸5.4g、無水炭酸カリウム5.4g、ヨウ化カリウム0.3gを加えた。75℃に昇温させて、6h反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得た。得たヒドロキシ固相合成担体はヒドロキシ含有量が250μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が23nmである。
【実施例4】
【0040】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン110g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)11g、p-クロロメチルスチレン9g、トランスブテンジニトリル10g、トリステアリン酸ソルビタン0.5g、トルエン20g、フタル酸ジブチル40g及び過酸化ベンゾイル1gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、60℃に昇温させて7h重合した。反応終了後、熱水で洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、塩素含有量が425μmol/gの重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、無水エタノール300mlを投入し、撹拌した。ビーカーに水酸化ナトリウム30gを秤取し、脱イオン水300mlで溶解して、反応器にゆっくりと加えた。65℃に昇温させて、6h反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得た。得たヒドロキシ固相合成担体はヒドロキシ含有量が420μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が43nmである。
【実施例5】
【0041】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン83g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)25g、N-(4-ビニルフェニル)-アセトアミド18g、トランスブテンジニトリル14g、トリステアリン酸ソルビタン3g、イソオクタノール16g、イソドデカン8g及び過酸化ベンゾイル2gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、55℃に昇温させて10h重合した。反応終了後、熱水で洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、無水エタノール300mlを投入し、撹拌した。ビーカーに水酸化ナトリウム30gを秤取し、脱イオン水300mlで溶解して、反応器にゆっくりと加えた。65℃に昇温させて、6h反応させた。反応終了後、室温に冷却させ、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、アミノを含有する固相合成担体を得た。得たアミノ固相合成担体はアミノ含有量が840μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が43nmである。
【実施例6】
【0042】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン111g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)11g、4-アセトキシスチレン13g、トランスブテンジニトリル5g、ソルビタンモノオレイン酸エステル8g、イソオクタノール40g、イソドデカン20g及び過酸化ベンゾイル2.5gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、78℃に昇温させて、6h重合した。反応終了後、熱水で樹脂を洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、アセトニトリル300mlを投入し、撹拌した。ヒドラジン水和物7.5mlをゆっくりと加え、室温で3h反応させた。反応終了後、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得た。得たヒドロキシ固相合成担体はヒドロキシ含有量が550μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が64nmである。
【実施例7】
【0043】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン130g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)5g、4-アセトキシスチレン4g、トランスブテンジニトリル1g、プロピレングリコール脂肪酸エステル1g、イソオクタノール40g、トルエン10g及び過酸化ベンゾイル3.5gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、70℃に昇温させて6h重合した。反応終了後、熱水で樹脂を洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、アセトニトリル300mlを投入し、撹拌した。ヒドラジン水和物7.5mlをゆっくりと加え、室温で3h反応させた。反応終了後、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得た。得たヒドロキシ固相合成担体はヒドロキシ含有量が175μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が53nmである。
【実施例8】
【0044】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン72g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)28g、ベンゾイルオキシスチレン27g、トランスブテンジニトリル13g、ヒドロキシラノリン5g、トルエン10g、フタル酸ジブチル20g及び過酸化ベンゾイル3gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、80℃に昇温させて6h重合した。反応終了後、熱水で樹脂を洗浄して、エタノールで還流して孔形成剤を抽出して除去し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、アセトニトリル300mlを投入し、撹拌した。ヒドラジン水和物7.5mlをゆっくりと加え、室温で3h反応させた。反応終了後、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得た。得たヒドロキシ固相合成担体はヒドロキシ含有量が852μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が47nmである。
【実施例9】
【0045】
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた3L反応器に精製水2L、ポリビニルアルコール20g、塩化ナトリウム60gを投入して、溶解して、水相を得た。スチレン85g、ジビニルベンゼン(含有量80重量%)24g、4-ビニル安息香酸メチル18g、トランスブテンジニトリル13g、ポリオキシエチレンソルビトールオレイン酸エステル4g、イソドデカン40g、フタル酸ジブチル40g及び過酸化ベンゾイル2.5gを秤取し、均一に混合して、油相を得た。油相を反応器に加えて、撹拌し、70℃に昇温させて6h重合した。反応終了後、熱水で樹脂を洗浄して、エタノールで還流して抽出し、篩分けして粒径50~100μmの樹脂を収集し、真空乾燥させ、重合体多孔質樹脂を得た。
凝縮器、撹拌器及び温度計を備えた1L反応器に重合体多孔質樹脂50g、アセトニトリル300mlを投入し、撹拌した。その後、ハイドロキノン8.8g、HBTU 23g及びDIEA 13mlを加え、室温で2h反応させた。反応終了後、中性となるまで水洗し、その後、真空乾燥させ、ヒドロキシを含有する固相合成担体を得た。得たヒドロキシ固相合成担体はヒドロキシ含有量が735μmmol/gであり、水銀圧入法によって測定された平均細孔径が143nmである。
【実施例10】
【0046】
実施例1~9で製造した固相合成担体のそれぞれのアセトニトリル及びトルエンでの膨潤度をテストした。以下のようにテストした。1.5g程度のサンプルを秤取して、栓付きメスシリンダに入れ、それぞれトルエン又はアセトニトリルを所定の目刻まで加えた。その後、ガラス棒を用いて樹脂と溶媒を撹拌して、十分に膨潤させ、栓を締め付け、2~3時間後、ガラス棒を用いて樹脂を緩やかに撹拌して気泡を除去し、樹脂を均一に分散させて、ブロッキングを回避し、撹拌棒を取り出して、メスシリンダをゴムマット付きのテーブルに叩きつけて、樹脂を密にし、24h放置後、その体積を読み取り、その膨潤度を計算した。
結果を表1に示す。
【表1】
【実施例11】
【0047】
実施例で製造した固相合成担体及びNittoPhase HL固相合成担体を利用して、樹脂の性能を評価した。本発明の優位性をより直観的に表現するために、担体充填量(g)=合成カラム体積(ml)/担体のトルエンでの膨潤度(ml/g)とし、オリゴヌクレオチドの合成過程における洗浄体積は1つの合成カラム体積に限定された。
反応器に固相合成担体10g、アセトニトリル50mlを順次秤取して10min膨潤させた後、適量のDMT-dT-3’-コハク酸、HBTU、DIEAを加え、室温で12h反応させた。反応終了後、アセトニトリルで5回洗浄し、その後、Cap A(アセトニトリル20ml、ピリジン7.5ml、N-メチルイミダゾール5.0mlからなる)及びCap B(アセトニトリル10ml、無水酢酸4ml)を加え、室温で30min反応させた。反応終了後、アセトニトリルで5回洗浄し、真空乾燥させ、DMT-dTを担持した担体を得た。p-トルエンスルホン酸/アセトニトリル溶液を用いて担持したDMT基を除去し、分光光度法によって412nm波の下で担体に担持されたDMT基の担持量を測定し、結果を表2に示す。
DMT-dTを担持した担体を合成カラム(32ml)に充填し、合成カラムをAKTA OligoPilot 100に取り付け、配列d[ACGTACGTACGTACGTACGT]の20塩基長のオリゴヌクレオチドを合成した。合成過程は以下のとおりである。1.ジクロロメタンを用いて樹脂を膨潤させた。2.10%DCA/DCMでDMT基を除去した。3.無水アセトニトリルで洗浄した。4.ホスホロアミダイト単量体及び活性化試薬を加えて縮合した。5.無水アセトニトリルで洗浄した。6.酸化剤を加えて酸化した。7.無水アセトニトリルで洗浄した。8.キャッピング試薬を加えてキャッピングした。9.無水アセトニトリルで洗浄した。10.ステップ2を繰り返して、次のサイクルを開始させた。
合成完了後、担体を取り出して乾燥させた。その後、ガラス瓶に入れて、適量の濃アンモニア水を加え、55℃で16h反応させ、オリゴヌクレオチドを担体から分解し取り出し、また、塩基での保護基を除去した。担体とオリゴヌクレオチドを濾過により分離し、濾液を乾燥させ、オリゴヌクレオチド粗粉を得て、HPLCによりその純度を検出し、オリゴヌクレオチドの収率を算出した。結果を表2に示す。
【表2】
【0048】
表2から分かるように、本発明のオリゴヌクレオチド固相合成担体によれば、オリゴヌクレオチドの収率及び純度を向上させることができ、オリゴヌクレオチドの生産コストを削減させるのに有利である。
【0049】
なお、以上は本発明の好適な実施形態に過ぎず、当業者でれば、本発明の構想から逸脱せずに、いくつかの変形や改良が可能であり、これらは全て本発明の保護範囲に属する。