IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社グツドマンの特許一覧

<>
  • 特許-カテーテル用バルーン 図1
  • 特許-カテーテル用バルーン 図2
  • 特許-カテーテル用バルーン 図3
  • 特許-カテーテル用バルーン 図4
  • 特許-カテーテル用バルーン 図5
  • 特許-カテーテル用バルーン 図6
  • 特許-カテーテル用バルーン 図7
  • 特許-カテーテル用バルーン 図8
  • 特許-カテーテル用バルーン 図9
  • 特許-カテーテル用バルーン 図10
  • 特許-カテーテル用バルーン 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】カテーテル用バルーン
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20250226BHJP
   A61B 17/22 20060101ALN20250226BHJP
【FI】
A61M25/10 550
A61M25/10 510
A61B17/22
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023529709
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021097
(87)【国際公開番号】W WO2022270192
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021103068
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光正
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐太
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 彰真
(72)【発明者】
【氏名】吉永 静也
(72)【発明者】
【氏名】國定 嵩
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506454(JP,A)
【文献】特表平10-506296(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195697(WO,A1)
【文献】特表2006-512952(JP,A)
【文献】特開平05-293176(JP,A)
【文献】特開2018-171318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧の変化に応じて、膨張状態と収縮状態とに可能なカテーテル用バルーンであって、
前記収縮状態から前記膨張状態に変形する過程で、所定の延伸方向に延びる中心軸を中心とした半径方向の外側に移動して膨張し、前記膨張状態において前記延伸方向に延びる筒状となる膨張部と、
前記膨張部の前記延伸方向における一方側の端部である先端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい先端連結部と、
前記膨張部の前記延伸方向における他方側の端部である基端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい基端連結部と、
を備え、
少なくとも前記膨張部は、
前記収縮状態において、羽根部を形成する複数の第1部分と、
前記膨張状態において、前記中心軸を中心とした周方向において前記複数の第1部分に対して隣接する複数の第2部分とを有し、
前記膨張状態において、
前記中心軸から前記複数の第1部分の各々までの間の前記半径方向の距離よりも、前記中心軸から前記複数の第2部分の各々までの間の前記半径方向の距離の方が短く、
前記複数の第2部分の各々は、前記複数の第1部分よりも剛性が高い剛性部を含み、
前記剛性部の一部は、前記第1部分の外面よりも外方に突出することを特徴とするカテーテル用バルーン。
【請求項2】
内圧の変化に応じて、膨張状態と収縮状態とに可能なカテーテル用バルーンであって、
前記収縮状態から前記膨張状態に変形する過程で、所定の延伸方向に延びる中心軸を中心とした半径方向の外側に移動して膨張し、前記膨張状態において前記延伸方向に延びる筒状となる膨張部と、
前記膨張部の前記延伸方向における一方側の端部である先端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい先端連結部と、
前記膨張部の前記延伸方向における他方側の端部である基端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい基端連結部と、
を備え、
少なくとも前記膨張部は、
前記収縮状態において、羽根部を形成する複数の第1部分と、
前記膨張状態において、前記中心軸を中心とした周方向において前記複数の第1部分に対して隣接する複数の第2部分とを有し、
前記膨張状態において、
前記中心軸から前記複数の第1部分の各々までの間の前記半径方向の距離よりも、前記中心軸から前記複数の第2部分の各々までの間の前記半径方向の距離の方が短く、
前記膨張状態において、
少なくとも前記膨張部の外面には、前記複数の第2部分が前記中心軸に向けて凹んだ窪みが形成されることを特徴とするカテーテル用バルーン。
【請求項3】
前記複数の第2部分は、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で、前記複数の第1部分よりも先に前記中心軸に向けて移動することで、前記中心軸に向けて凹んだ窪みを形成させることを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル用バルーン。
【請求項4】
前記先端連結部及び前記基端連結部は、各々、前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分を有し、
前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分の各々は、
前記先端連結部の前記他端部から、前記基端連結部の前記他端部との間を、前記延伸方向に沿って延びることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項5】
前記先端連結部及び前記基端連結部は、各々、前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分を有し、
前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分の各々は、
前記先端連結部の前記他端部から、前記基端連結部の前記他端部との間を、前記延伸方向に沿って延び、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で形成される前記窪みの量は、前記先端連結部及び前記基端連結部よりも前記膨張部の方が大きいことを特徴とする請求項に記載のカテーテル用バルーン。
【請求項6】
前記複数の第2部分の各々は、前記複数の第1部分よりも剛性が高い剛性部を含むことを特徴とする請求項に記載のカテーテル用バルーン。
【請求項7】
前記複数の第2部分の各々の前記半径方向の厚さは、前記複数の第1部分の各々の前記半径方向の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項8】
前記膨張状態において、前記複数の第2部分の内面と前記中心軸との間の距離は、前記複数の第1部分の内面と前記中心軸との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項に記載のカテーテル用バルーン。
【請求項9】
前記膨張状態において、前記複数の第2部分の外面と前記中心軸との間の距離は、前記複数の第1部分の外面と前記中心軸との間の距離よりも長いことを特徴とする請求項又はに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項10】
前記複数の第2部分の外面が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項11】
前記複数の第2部分は、前記周方向に均等な間隔で配置されることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項12】
前記複数の第2部分が前記中心軸に向けて凹んだ窪みが形成された状態で形状が記憶されていることを特徴とする、請求項1から11の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項13】
前記複数の第1部分と前記複数の第2部分とが同一材料で構成されたことを特徴とする請求項1から12の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項14】
前記複数の第2部分のうち、前記先端連結部に配置された部分に、1つ以上のスリットが設けられたことを特徴とする請求項又はに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項15】
前記複数の第2部分のうち、前記基端連結部に配置された部分に、1つ以上のスリットが設けられたことを特徴とする請求項4又は5に記載のカテーテル用バルーン。
【請求項16】
前記複数の第2部分のうち、前記膨張部に配置された部分に、1つ以上のスリットが設けられたことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項17】
前記複数の第1部分の各々は、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で曲率が最大となる頂点と、
前記周方向の一方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第1延伸部と、
前記周方向の他方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第2延伸部と、
を有し、
前記第1延伸部の長さよりも、前記第2延伸部の長さの方が長いことを特徴とする請求項1から16の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項18】
前記複数の第1部分の各々は、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で曲率が最大となる頂点を備え、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で、前記頂点と、前記頂点を有する前記第1部分に対して前記周方向の一方側に隣接する前記第2部分との間の距離よりも、前記頂点と、前記頂点を有する前記第1部分に対して前記周方向の他方側に隣接する前記第2部分との間の距離の方が長いことを特徴とする請求項1から16の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【請求項19】
前記複数の第1部分の各々は、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で曲率が最大となる頂点と、
前記周方向の一方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第1延伸部と、
前記周方向の他方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第2延伸部と、
を有し、
前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で、前記中心軸と前記頂点を通過して前記半径方向に延びる仮想平面に対し、前記頂点を有する前記第1部分の前記第1延伸部の少なくとも一部が、前記周方向の他方側に位置することを特徴とする請求項1から16の何れかに記載のカテーテル用バルーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル用バルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルにおける血管内での通過性を良好とするために、収縮状態のバルーンの径は小さい程好ましい。特許文献1に記載のバルーンカテーテルは、折り畳まれたバルーン薄膜を支持部材の周りに巻き付けて径を最小化した状態で、保持器により保持される。バルーンカテーテルは、使用時において保持器から取り出して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-114565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーンは、血管内での使用時に膨張され、その後収縮された後も、その径は小さいことが好ましい。しかし、特許文献1では、バルーン薄膜が支持部に巻き付いた状態が保持器により保持され、径が小さくされる。このため、保持器からバルーン薄膜が取り出された状態では、径を小さくできない可能性がある。このため例えば、バルーン薄膜が保持器から取り出され、使用時に膨張され、使用後にバルーン薄膜を収縮させて体外に引き抜く時、収縮したバルーン薄膜の径が増大し、引き抜きが困難になる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、拡張後に収縮させた場合でも、径を最小化できるカテーテル用バルーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るカテーテル用バルーンは、内圧の変化に応じて、膨張状態と収縮状態とに可能なカテーテル用バルーンであって、前記収縮状態から前記膨張状態に変形する過程で、所定の延伸方向に延びる中心軸を中心とした半径方向の外側に移動して膨張し、前記膨張状態において前記延伸方向に延びる筒状となる膨張部と、前記膨張部の前記延伸方向における一方側の端部である先端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい先端連結部と、前記膨張部の前記延伸方向における他方側の端部である基端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい基端連結部と、を備え、少なくとも前記膨張部は、前記収縮状態において、羽根部を形成する複数の第1部分と、前記膨張状態において、前記中心軸を中心とした周方向において前記複数の第1部分に対して隣接する複数の第2部分とを有し、前記複数の第2部分は、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で、前記複数の第1部分よりも先に前記中心軸に向けて移動することで、前記中心軸に向けて凹んだ窪みを形成させることを特徴とする。
【0007】
第1態様に係るカテーテル用バルーンでは、膨張状態から収縮状態に変形する場合、複数の第2部分が複数の第1部分よりも先に中心軸に向けて移動し、複数の第1部分の各々により羽根部が形成される。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、カテーテル用バルーンは常に安定した形状に折り畳まれる。従って、収縮状態におけるカテーテル用バルーンの径を小さくできる。
【0008】
本発明の第2態様に係るカテーテル用バルーンは、内圧の変化に応じて、膨張状態と収縮状態とに可能なカテーテル用バルーンであって、前記収縮状態から前記膨張状態に変形する過程で、所定の延伸方向に延びる中心軸を中心とした半径方向の外側に移動して膨張し、前記膨張状態において前記延伸方向に延びる筒状となる膨張部と、前記膨張部の前記延伸方向における一方側の端部である先端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい先端連結部と、前記膨張部の前記延伸方向における他方側の端部である基端部から延びる部分であって、前記膨張状態において、前記膨張部に接続する端部である一端部の径が、前記一端部と反対側の端部である他端部の径よりも大きい基端連結部と、を備え、少なくとも前記膨張部は、前記収縮状態において、羽根部を形成する複数の第1部分と、前記膨張状態において、前記中心軸を中心とした周方向において前記複数の第1部分に対して隣接する複数の第2部分とを有し、前記膨張状態において、前記中心軸から前記複数の第1部分の各々までの間の前記半径方向の距離よりも、前記中心軸から前記複数の第2部分の各々までの間の前記半径方向の距離の方が短いことを特徴とする。
【0009】
第2態様に係るカテーテル用バルーンでは、膨張状態から収縮状態に変形する場合、膨張状態において中心軸との間の距離が短い複数の第2部分が、先に中心軸に向けて移動し、複数の第1部分の各々により羽根部が形成される。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、カテーテル用バルーンは常に安定した形状に折り畳まれる。従って、収縮状態におけるカテーテル用バルーンの径を小さくできる。
【0010】
第1態様及び第2態様において、前記先端連結部及び前記基端連結部は、各々、前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分を有し、前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分の各々は、前記先端連結部の前記他端部から、前記基端連結部の前記他端部との間を、前記延伸方向に沿って延びてもよい。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形するときに、膨張部に加えて先端連結部及び基端連結部の各々についても、複数の第2部分を先に中心軸に向けて移動させることができる。従って、カテーテル用バルーンは、膨張部だけでなく先端連結部及び基端連結部の各々も安定した形状に折り畳むことができる。このため、収縮状態におけるカテーテル用バルーンの径を小さくできる。又、収縮状態のカテーテル用バルーンを血管内に挿入する際、複数の第2部分は突っ張り棒の役目を果たす。この場合、カテーテル用バルーンが延伸方向に収縮して先端連結部及び基端連結部が半径方向に広がることを抑制できる。更に、先端連結部及び基端連結部の折り畳み時における径が大きくなる可能性を軽減できるので、カテーテル用バルーンの血管内における通過性を良好にできる。
【0011】
第1態様において、前記先端連結部及び前記基端連結部は、各々、前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分を有し、前記複数の第1部分及び前記複数の第2部分の各々は、前記先端連結部の前記他端部から、前記基端連結部の前記他端部との間を、前記延伸方向に沿って延び、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で形成される前記窪みの量は、前記先端連結部及び前記基端連結部よりも前記膨張部の方が大きくてもよい。この場合、カテーテル用バルーンの収縮時、径の大きい膨張部の折り畳み時間を短くできるとともに、折り畳み形状を安定化できる。
【0012】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分の各々は、前記複数の第1部分よりも剛性が高い剛性部を含んでもよい。カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形する場合、先に中心軸に向けて移動しようとする力が剛性部に作用する。このため、カテーテル用バルーンは、複数の第2部分が先に中心軸に向けて移動する構成を、剛性部により実現できる。
【0013】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分の各々の前記半径方向の厚さは、前記複数の第1部分の各々の前記半径方向の厚さよりも大きくてもよい。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形するときに複数の第2部分が中心軸に向けて移動する速度は、移動開始直後は遅く、その後速くなる。この場合、複数の第2部分は、カテーテル用バルーンを安定的に折り畳むことができる。
【0014】
第1態様及び第2態様において、前記膨張状態において、前記複数の第2部分の内面と前記中心軸との間の距離は、前記複数の第1部分の内面と前記中心軸との間の距離よりも短くてもよい。つまり、複数の第2部分の各々の内面は、複数の第1部分の各々の内面よりも、より中心軸に近い位置に配置される。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形するときに、複数の第2部分は複数の第1部分よりも先に中心軸に向けて移動し易くなる。従って、カテーテル用バルーンが膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、カテーテル用バルーンを常に安定した形状に折り畳むことができる。
【0015】
第1態様及び第2態様において、前記膨張状態において、前記複数の第2部分の外面と前記中心軸との間の距離は、前記複数の第1部分の外面と前記中心軸との間の距離よりも長くてもよい。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形するときに、複数の第2部分は複数の第1部分よりも先に中心軸に向けて移動し易くなる。従って、カテーテル用バルーンが膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、カテーテル用バルーンを常に安定した形状に折り畳むことができる。
【0016】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分の外面が丸みを帯びていてもよい。この場合、カテーテル用バルーンが血管内を通過するときに複数の第2部分が血管の内壁に引っかかることを抑制できるので、カテーテル用バルーンの血管内における通過性を良好にできる。
【0017】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分は、前記周方向に均等な間隔で配置されてもよい。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形するときに、複数の第1部分により形成される羽根部の大きさを均一にできる。従って、カテーテル用バルーンを周方向に均一に収縮させることができる。
【0018】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分が前記中心軸に向けて凹んだ窪みが形成された状態で形状が記憶されてもよい。この場合、カテーテル用バルーンが膨張状態から収縮状態に変形するときに、複数の第2部分を先に中心軸に向けて移動させる構成を、容易に実現できる。
【0019】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第1部分と前記複数の第2部分とが同一材料で構成されてもよい。この場合、カテーテル用バルーンを容易に製造できる。
【0020】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分のうち、前記先端連結部に配置された部分に、1つ以上のスリットが設けられてもよい。この場合、折り畳まれたカテーテル用バルーンを血管に挿入するときに、先端連結部が広がらず、且つ先端連結部の柔軟性が確保される。このため、カテーテル用バルーンの通過性を向上させることができる。
【0021】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分のうち、前記基端連結部に配置された部分に、1つ以上のスリットが設けられてもよい。この場合、折り畳まれたカテーテルバルーンを血管から引き抜くときに、基端連結部が広がらず、且つ基端連結部の柔軟性が確保される。このため、カテーテル用バルーンの通過性を更に向上させることができる。
【0022】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第2部分のうち、前記膨張部に配置された部分に、1つ以上のスリットが設けられてもよい。この場合、折り畳まれたカテーテル用バルーンを血管内で移動させるときに、膨張部が広がらない。このため、カテーテル用バルーンの通過性を更に向上させることができる。
【0023】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第1部分の各々は、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で曲率が最大となる頂点と、前記周方向の一方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第1延伸部と、前記周方向の他方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第2延伸部と、を有し、前記第1延伸部の長さよりも、前記第2延伸部の長さの方が長くてもよい。この場合、カテーテル用バルーンは、膨張状態から収縮状態に変形する場合において、第1部分により第2部分を覆うことが容易に可能となる。
【0024】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第1部分の各々は、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で曲率が最大となる頂点を備え、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で、前記頂点と、前記頂点を有する前記第1部分に対して前記周方向の一方側に隣接する前記第2部分との間の距離が、前記頂点と、前記頂点を有する前記第1部分に対して前記周方向の他方側に隣接する前記第2部分との間の距離よりも短くてもよい。この場合、カテーテル用バルーンは、膨張状態から収縮状態に変形する場合において、第1部分により第2部分を覆うことが容易に可能となる。
【0025】
第1態様及び第2態様において、前記複数の第1部分の各々は、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で曲率が最大となる頂点と、前記周方向の一方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第1延伸部と、前記周方向の他方側に隣接する前記第2部分との接続部分から前記頂点まで延びる第2延伸部と、を有し、前記膨張状態から前記収縮状態に変形する過程で、前記中心軸と前記頂点を通過して前記半径方向に延びる仮想平面に対し、前記頂点を有する前記第1部分の前記第1延伸部の少なくとも一部が、前記周方向の他方側に位置してもよい。この場合、第1部分の夫々は、周方向の一方側に隣接する第2部分を更に覆い易くなる。従って、カテーテル用バルーンは、膨張状態から収縮状態に変形する場合において、第1部分により第2部分を覆うことが更に容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】バルーン3が膨張状態である場合のバルーンカテーテル1Aを示す図である。
図2】収縮状態から膨張状態に変形するバルーン3を示す図である。
図3】膨張状態から収縮状態に変形するバルーン3を示す図である。
図4】バルーンカテーテル1Bにおけるバルーン3を示す図である。
図5】バルーンカテーテル1Cにおけるバルーン3を示す図である。
図6】バルーンカテーテル1Dにおけるバルーン3を示す図である。
図7】バルーンカテーテル1Eを示す図である。
図8】膨張状態から収縮状態に変形するバルーンカテーテル1Fのバルーン3を示す図である。
図9】収縮状態におけるバルーンカテーテル1Fのバルーン3を示す図である。
図10】膨張状態から収縮状態に変形するバルーンカテーテル1Gのバルーン3を示す図である。
図11】収縮状態におけるバルーンカテーテル1Gのバルーン3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るバルーンカテーテル1の実施形態(1A~1E)について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。バルーンカテーテル1は、血管に形成された狭窄性の病変を拡張できる。更にバルーンカテーテル1は、後述する第2部分5Aを病変に作用させて粉砕したり切開したりできる。
【0028】
<バルーンカテーテル1A>
図1を参照し、バルーンカテーテル1Aについて説明する。バルーンカテーテル1Aは、カテーテルシャフト2及びバルーン3を有する。
【0029】
<カテーテルシャフト2>
バルーン3は、管状のカテーテルシャフト2の一方側の端部に接続される。バルーンカテーテル1Aは、カテーテルシャフト2の他方側の端部に非図示のハブが接続された状態で使用される。ハブは、カテーテルシャフト2を介してバルーン3に圧縮流体を供給可能である。
【0030】
カテーテルシャフト2の両端のうち一方側を、「先端側」という。カテーテルシャフト2の両端のうち他方側を、「基端側」という。カテーテルシャフト2に沿って延びる方向を、「延伸方向」という。カテーテルシャフト2の中心を通って延伸方向に延びる軸を、中心軸C1という。中心軸C1と直交する平面において切断した場合の断面(以下、単に「断面」という。)において、中心軸C1を中心とする半径方向のうち、中心軸C1に近接する側を「内側」といい、中心軸C1から離隔する側を「外側」という。
【0031】
カテーテルシャフト2は、外側チューブ21及び内側チューブ22を有する。外側チューブ21及び内側チューブ22は、それぞれ可撓性を有する。外側チューブ21の内径は、内側チューブ22の外径よりも大きい。内側チューブ22は、先端側の所定部分を除き、外側チューブ21の内腔に配置される。内側チューブ22の先端側の所定部分は、外側チューブ21の先端側の端(以下、「先端211」という。)から先端側に向けて突出する。内側チューブ22の先端側の端(以下、「先端221」という。)は、外側チューブ21の先端211よりも先端側に配置される。内側チューブ22の先端側の所定部分を、「突出部分225」という。外側チューブ21及び内側チューブ22の材料は特に限定されない。外側チューブ21及び内側チューブ22の材料の一例として、ポリアミド系樹脂が用いられる。
【0032】
外側チューブ21の内腔のうち、内側チューブ22の内腔以外の空間には、ハブから供給される圧縮流体が通流する。内側チューブ22の内腔には、非図示のガイドワイヤが挿通される。
【0033】
<バルーン3>
バルーン3は、非図示のハブによる圧縮流体の供給の有無に応じて内圧が変化することにより、収縮状態と膨張状態との間で変形可能である。図1は、膨張状態のバルーン3を示す。バルーン3は、先端側の端部(以下、「先端部3D」という。)が、内側チューブ22の突出部分225のうち先端221の近傍に熱溶着によって接続される。バルーン3は、基端側の端部(以下、「基端部3P」という。)が、外側チューブ21の先端211の近傍に熱溶着によって接続される。バルーン3は、内側チューブ22の突出部分225を外側から覆う。バルーン3の材料は特に限定されない。バルーン3の材料の一例として、ポリアミド系樹脂が用いられる。
【0034】
バルーン3において、先端連結部3A、膨張部3B、及び基端連結部3Cが定義される。先端連結部3Aは、膨張状態のバルーン3において先端部3Dから基端部3Pに向けて拡径しながら延びる領域である。基端連結部3Cは、拡張状態のバルーン3において基端部3Pから先端部3Dに向けて拡径しながら延びる領域である。膨張部3Bは、拡張状態のバルーン3において先端連結部3Aと基端連結部3Cとの間に挟まれた領域であり、延伸方向に亘って径が略同一となる。膨張状態において、膨張部3Bは延伸方向に延びる筒状となる。バルーン3は、内面301及び外面302を有する。
【0035】
膨張部3Bの先端側の端部を「先端部30D」といい、基端側の端部を「基端部30P」という。先端連結部3Aは、膨張部3Bの先端部30Dと連結する端部から先端部3Dに向けて、先端側に延びる。先端連結部3Aの断面の直径は、膨張部3Bの先端部30Dと連結する端部において最も大きく、先端部3Dにおいて最も小さい。基端連結部3Cは、膨張部3Bの先端部30Dと連結する端部から基端部3Pに向けて、基端側に延びる。基端連結部3Cの断面の直径は、膨張部3Bの基端部30Pと連結する端部において最も大きく、基端部3Pにおいて最も小さい。
【0036】
バルーン3の先端連結部3A、膨張部3B、及び基端連結部3Cは、各々、第1部分41A、42A、43A(以下、総称して「第1部分4A」という。)、及び、第2部分51A、52A、53A(以下、総称して「第2部分5A」という。)を有する。第1部分4A及び第2部分5Aは、各々、先端連結部3Aの先端部3Dと、基端連結部3Cの基端部3Pとの間を、延伸方向に延びる。第1部分4A及び第2部分5Aは同一材料により形成される。
【0037】
バルーン3の膨張部3Bに沿って延びる方向のうち中心軸C1と直交する方向を、「周方向E1」という。第1部分4A及び第2部分5Aは、各々、第2部分51A、第1部分41A、第2部分52A、第1部分42A、第2部分53A、第1部分43Aの順で周方向E1に順番に配列される。第1部分4A及び第2部分5Aは、周方向E1に隣接し、交互に並ぶ。第2部分51A、52A、53Aは、周方向E1において等間隔に配置される。バルーン3の内面301のうち第1部分4Aに対応する部分を、内面401といい、第2部分5Aに対応する部分を、内面501という。バルーン3の外面302のうち第1部分4Aに対応する部分を、外面402といい、第2部分5Aに対応する部分を、外面502という。
【0038】
第1部分4Aと第2部分5Aとでは、剛性が相違する。第2部分5Aは第1部分4Aよりも剛性が高い。なお、第1部分4Aと第2部分5Aとの剛性の相違は、周知の様々な剛性試験のうち少なくとも何れかの結果により生じていればよい。上記のように、第1部分4Aと第2部分5Aとは同一材料により形成されるが、夫々の厚さを異ならせることにより、剛性の差異が生じている。
【0039】
バルーン3が膨張状態の場合において、第1部分4Aの内面401及び外面402は、中心軸C1を中心とする円弧に沿って湾曲する。中心軸C1と、第1部分4Aの内面401との間の半径方向の距離をD11と表記する。中心軸C1と、第1部分4Aの外面402との間の半径方向の距離をD12と表記する。第1部分4Aの半径方向の厚さは、第1部分4Aの内面401と外面402との間の半径方向の距離に対応し、T11と表記する。なお詳細には、内面401及び外面402のうち周方向E1の両端部の曲率は、両端部を除く部分の曲率よりも僅かに大きい(図2(C)、図3(A)参照)。
【0040】
第2部分5Aの外面502は、半径方向の外側に最も突出する頂点500を有する。外面502は、断面において三角形の2つの側面に対応する外面502A、502Bを有する。外面502A、502Bのうち頂点500と反対側の端部は、周方向E1に隣接する第1部分4Aの端部と連結する。外面502A、502Bのうち頂点500と反対側の端部を結ぶ平面を、「底面503」という。底面503と直交して延び且つ底面503から頂点500を通って延びる方向を、「突出方向Y1」という。膨張状態において、突出方向Y1は、半径方向の外側を向く。第2部分5Aの内面501は、底面503に対して半径方向の内側に位置する。中心軸C1と、第2部分5Aの内面501との間の距離を、D21と表記する。中心軸C1と頂点500との間の距離を、D22と表記する。第2部分5Aの半径方向の厚さは、第2部分5Aの内面501と頂点500との間の半径方向の距離に対応し、T21と表記する。
【0041】
膨張部3Bにおける第2部分5Aの半径方向の厚さT21は、延伸方向において同一である。先端連結部3Aにおける第2部分5Aの半径方向の厚さT21は、膨張部3Bの先端部30Dと連結する部分において最も大きく、先端部3Dに近接する程小さくなる。基端連結部3Cにおける第2部分5Aの半径方向の厚さT21は、膨張部3Bの基端部30Pと連結する部分において最も大きく、基端部3Pに近接する程小さくなる。
【0042】
延伸方向の任意の断面において、第2部分5Aの厚さT21の方が、第1部分4Aの厚さT11よりも大きい。膨張状態において、第2部分5Aの内面501と中心軸C1との間の距離D21の方が、第1部分4Aの内面401と中心軸C1との間の距離D11よりも短い。即ち、中心軸C1から第2部分5Aまでの間の半径方向の距離の方が、中心軸C1から第1部分4Aまでの間の半径方向の距離よりも短い。膨張状態において、第2部分5Aの外面502と中心軸C1との間の距離D22の方が、第1部分4Aの外面402と中心軸C1との間の距離D12よりも長い。
【0043】
図2(C)に示すように、膨張状態のバルーン3の断面において、第1部分41A~43Aに外側から接する仮想的な仮想円Sを定義する。この場合、第1部分41A~43Aの各々の周方向E1における両端部と、第2部分51A~53Aの夫々のうち底面503(図1参照)よりも中心軸C1に近接する部分とは、何れも、仮想円Sよりも内側に位置する。このためバルーン3には、第2部分51A、52A、53Aが中心軸C1に向けて凹んだ窪み51B、52B、53B(以下、「窪み5B」と総称する。)が形成される。なお、バルーン3には、第2部分51A、52A、53Aにおいて窪み51B、52B、53Bが形成された状態で形状が安定化するように、形状が記憶されている。
【0044】
なお、第1部分4Aの形状を記憶させるための方法は特に限定されない。例えば、第2部分5Aにおいて窪み5Bが形成された状態のバルーン3の形状と同じ形状を有する金型を用いたブロー成型により、バルーン3が作成されてもよい。この場合、第2部分5Aにおいて窪み5Bが形成された状態で形状が記憶されたバルーン3を製造することが可能である。
【0045】
図2(A)に示すように、収縮状態のバルーン3は、羽根部41B、42B、43B(以下、総称して「羽根部4B」という。)を有する。羽根部41B、42B、43Bは、各々、バルーン3の第1部分41A、42A、43Aが折り畳まれ、且つ、各々が第2部分52A、53A、51Aに外側から巻き付くことにより形成される。第2部分5Aは、羽根部4Bによって外側から覆われる。羽根部4Bは、「フラップ」「ウイング」とも呼ばれる。
【0046】
<バルーン3の収縮/膨張>
図2は、バルーン3が収縮状態から膨張状態に変形する過程を示す。図2(A)に示す収縮状態のバルーン3に対し、非図示のハブから圧縮流体が供給されたとする。この場合、図2(B)に示すように、バルーン3の第1部分41A~43Aは伸長し、羽根部41B~43B(図2(A)参照)は解消される。更に、圧縮流体がバルーン3に供給された場合、第2部分51A~53Aは、各々、半径方向の外側に移動し、中心軸C1から離隔する。結果、図2(C)に示すように、バルーン3は膨張状態となる。なお、図2(C)では、窪み51B、52B、53Bの理解を容易とする為に、窪み51B、52B、53Bの凹み量が実際の凹み量(図1に示す窪み51B、52B、53Bの凹み量)と比べて大きく示されている。後述の図3(A)についても同様である。
【0047】
図3は、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程を示す。図3(A)に示す膨張状態のバルーン3から、圧縮流体が除去されたとする。ここで上記のように、バルーン3には、第2部分51A~53Aにて窪み51B~53Bが形成された状態で形状が記憶されている。このため、図3(B)に示すように、圧縮流体の除去に応じ、バルーン3全体が中心軸C1に向けて所定量移動し、その後、第2部分51A~53Aは第1部分41A~43Aよりも先に中心軸C1に向けて移動する。このため、仮想円Sに対する窪み51B~53Bの凹み量は、膨張状態のときよりも大きくなる。
【0048】
なお、断面において、第2部分5Aの半径方向の厚さT21は、第1部分4Aの半径方向の厚さT11よりも大きいため、第2部分51A~53Aが中心軸C1に向けて移動する速度は、移動開始直後は遅く、その後速くなる。なお、窪み51B~53Bの凹み量は、先端連結部3A及び基端連結部3Cよりも、膨張部3Bの方が大きい。このためバルーン3の最大径、即ち膨張部3Bの径は急速に小さくなる。
【0049】
第2部分51A~53Aの中心軸C1に向かう方向の移動量が増加することに応じ、図3(C)に示すように、第1部分41A~43Aは、周方向E1の両端部を除く部分が外側に押し出され、仮想円Sよりも外側に突出する。図3(D)に示すように、第2部分51A~53Aが内側チューブ22に近接する位置まで移動した状態で、第1部分41A~43Aは折り畳まれる。
【0050】
図3(E)に示すように、第1部分41A~43Aは、折り畳まれた状態で第2部分51A~53Aを外側から覆い、羽根部41B~43Bを形成させる。これにより、バルーン3は収縮状態となる。
【0051】
<作用、効果>
バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する場合、膨張状態において中心軸C1との間の半径方向の距離が短い第2部分5Aは、第1部分4Aよりも先に中心軸C1に向けて移動する。第2部分5Aが移動する過程で、第1部分4Aにより羽根部4Bが形成され、バルーン3は最終的に収縮状態となる。この場合、バルーンカテーテル1Aは、収縮状態におけるバルーン3の形状を安定化させることができるので、収縮状態におけるバルーン3の径を小さくすることで血管内の通過性を良好に維持できる。又、バルーン3が膨張状態と収縮状態との間で繰り返し変形した場合でも、バルーン3は常に安定した形状に折り畳まれる。従って、バルーンカテーテル1Aは、収縮状態におけるバルーン3の径を小さくできる。
【0052】
なお、バルーン3がブロー成型により製造される場合、膨張部3Bに対応する部位に局所的な圧力が加わることを、第2部分5Aにより抑制できる。このため、製造工程においてバルーン3が破裂することを防止できる。
【0053】
バルーン3の第1部分4A及び第2部分5Aは、先端連結部3A、膨張部3B、及び基端連結部3Cに設けられる。この場合、バルーンカテーテル1Aは、膨張状態から収縮状態に変形する場合、バルーン3の先端連結部3A、膨張部3B、及び基端連結部3Cの各々の部分において、第2部分5Aを中心軸C1に向けて先に移動させることができる。この場合、バルーン3は、先端連結部3A、膨張部3B、及び基端連結部3Cの各々において、安定した形状に折り畳むことができる。従って、収縮状態におけるバルーン3の径を、延伸方向の全域に亘って小さくできる。又、先端連結部3A及び基端連結部3Cの折り畳み時における径が大きくなる可能性を軽減できるので、バルーン3の血管内における通過性を良好にできる。
【0054】
バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程で形成される窪み51B~53Bの凹み量は、先端連結部3A及び基端連結部3Cよりも、膨張部3Bの方が大きい。このため、バルーン3は、収縮時、径の大きい膨張部3Bの折り畳み時間を短くできる。又、羽根部41B~43Bがスムーズに形成されることになるので、バルーン3の折り畳み形状を安定化できる。
【0055】
第2部分5Aは、第1部分4Aよりも剛性が高い。この場合、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形するとき、第2部分5Aが第1部分4Aよりも先に中心軸C1に向けて移動しようとする力が作用し易くなる。このためバルーン3は、第2部分5Aが先に中心軸C1に向けて移動する構成を、第1部分4Aとの剛性の大小関係を調整することにより実現できる。
【0056】
又、収縮状態のバルーン3が半径方向の外側に広がろうとする挙動を、より剛性が高い第2部分5Aにより抑制できる。このため、バルーン3が膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、第1部分4Aにより羽根部4Bを安定的に形成させることができる。このため、収縮状態のバルーン3の径を小さい状態で安定的に維持し、羽根部4Bが扁平の折り畳み形状になることを抑制できる。
【0057】
バルーン3では、第1部分4Aよりも第2部分5Aの剛性が高く、且つ、バルーン3の先端部3Dから基端部3Pに亘る全域に第2部分5Aが設けられる。この場合、収縮状態のバルーン3を血管内に挿入する際、第2部分5Aは突っ張り棒の役目を果たす。従って、バルーンカテーテル1Aは、バルーン3が延伸方向に収縮して先端連結部3A及び基端連結部3Cが半径方向に広がることを抑制できる。
【0058】
第2部分5Aの厚さT21は、第1部分4Aの厚さT11よりも大きい。この場合、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形するときに第2部分5Aが中心軸C1に向けて移動する速度は、移動開始直後は遅く、その後速くなる。このためバルーンカテーテル1Aは、第2部分5Aによりバルーン3を安定的に折り畳むことができる。
【0059】
膨張状態において、第2部分5Aの内面501と中心軸C1との間の距離D21は、第1部分4Aのうち周方向E1の両端部を除く部分の内面401と中心軸C1との間の距離D11よりも短い。つまり、第2部分5Aの内面501は、第1部分4Aの内面401よりも、より中心軸C1に近い位置に配置される。又、膨張状態において、第2部分5Aの外面502と中心軸C1との間の距離D22は、第1部分4Aの外面402と中心軸C1との間の距離D12よりも長い。これらの場合、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形するときに、第2部分5Aは第1部分4Aよりも先に中心軸C1に向けて移動し易くなる。従って、バルーン3が膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、バルーン3を常に安定した形状に折り畳むことができる。
【0060】
膨張状態において、距離D22は距離D12よりも長いため、第2部分5Aの外面502は第1部分4Aの外面402よりも外側に突出する。この場合、バルーン3を血管内で膨張状態としたときに、第2部分5Aは、血管の内壁に接触し易くなる。従って、バルーンカテーテル1Aは、バルーン3の第2部分5Aを血管に良好に作用させることができる。
【0061】
第2部分51A~53Aは、周方向E1に均等な間隔で配置される。この場合、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形するときに、第1部分41A~43Aにより形成される羽根部41B~43Bの大きさを均一にできる。従って、バルーンカテーテル1Aは、バルーン3を周方向E1に均一に収縮させることができる。
【0062】
バルーン3の形状は、第2部分51A~53Aで中心軸C1に向けて凹んだ窪み51B~53Bが形成された状態で記憶される。この場合、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形するときに、第2部分5Aを中心軸C1に向けて先に移動させる構成を、容易に実現できる。
【0063】
バルーン3の第1部分4Aと第2部分5Aとは、同一材料で構成される。この場合、バルーンカテーテル1Aを容易に製造できる。
【0064】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。バルーン3の第1部分4A及び第2部分5Aの数は、上記実施形態のように3つずつに限定されず、他の任意の数でもよい。バルーン3の第1部分4Aと第2部分5Aとは、別部材により形成されてもよい。例えばバルーン3は、膨張状態で筒状となる筒状部の外面に、第2部分5Aが設けられてもよい。この場合、筒状部のうち隣接する2つの第2部分5Aの間の部分が、第1部分4Aに対応する。
【0065】
上記において、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する場合、第2部分5Aが第1部分4Aよりも先に中心軸C1に向けて移動した。これに対し、例えばバルーン3が膨張状態から収縮状態に向けて変形を開始した直後の時点で、第2部分5Aが先に移動を開始し、その後、第1部分4Aの中心軸C1に向けた移動が開始されてもよい。又は、第1部分4Aが先に移動を開始し、その後、第2部分5Aの中心軸C1に向けた移動が開始されてもよい。
【0066】
第1部分4A及び第2部分5Aは、バルーン3の膨張部3Bにのみ設けられ、先端連結部3A及び基端連結部3Cには設けられなくてもよい。この場合、第2部分5Aは、膨張部3Bの先端部30Dから基端部30Pに亘って延びていなくてもよく、延伸方向に分断されていてもよい。又は、第1部分4A及び第2部分5Aは、バルーン3の膨張部3Bと、先端連結部3A及び基端連結部3Cの一方に設けられてもよい。
【0067】
第2部分5Aは、半径方向において距離D12よりも内側の部分と外側の部分とで別の部材により構成されていてもよい。この場合、半径方向において距離D12よりも内側の部分は、第1部分4Aと同じ部材により構成され、半径方向において距離D12よりも外側の部分は、第1部分4Aと異なる部材により構成されてもよい。第2部分5Aのうち半径方向において距離D12よりも外側の部分は、半径方向において距離D12よりも内側の部分よりも、剛性が高くてもよい。つまり、第2部分5Aのうち半径方向において距離D12よりも外側の部分は、剛性部を形成してもよい。
【0068】
第1部分4Aの厚さT11と、第2部分5Aの厚さT21とは同一でもよい。この場合、第2部分5Aの外面502は、第1部分4Aの外面402に対して外側に突出しなくてもよい。
【0069】
第2部分51A~53Aは、周方向E1において均等な感覚で配置されなくてもよい。例えば第2部分51A~53Aは、バルーン3のうち周方向E1の一部に局所的に設けられてもよい。
【0070】
膨張状態のバルーン3に窪み5Bは設けられなくてもよい。この場合、膨張状態におけるバルーン3の内面は、凹凸のない筒状に形成されてもよい。バルーン3の第1部分4Aと第2部分5Aとは、異なる材料により形成されてもよい。例えば第2部分5Aは、第1部分4Aを形成する材料に対して新たな材料をドーピングすることによって形成されてもよい。
【0071】
<バルーンカテーテル1B>
図4に示すバルーンカテーテル1Bのバルーン3のように、第2部分51A~53Aの各々の外面502が丸みを帯びていてもよい。この場合、バルーン3が血管内を通過する場合において、第2部分5Aが血管の内壁に引っかかることを抑制できる。このため、バルーンカテーテル1Bは、バルーン3の血管内における通過性を良好にできる。
【0072】
なお、第2部分5Aの外面502の形状は上記に限定されず、用途や機能に応じて様々な形状を取り得ることはいうまでもない。
【0073】
<バルーンカテーテル1C>
図5に示すバルーンカテーテル1Cのバルーン3のように、膨張状態において、第1部分4Aの内面401と中心軸C1との間の距離D11と、第2部分5Aの内面501と中心軸C1との間の距離D21とは同一でもよい。この場合、バルーン3の内面301には段差は形成されず、断面において内面401、501は真円を形成する。
【0074】
<バルーンカテーテル1D>
図6に示すバルーンカテーテル1Dのバルーン3のように、膨張状態において、第1部分4Aの外面402と中心軸C1との間の距離D12と、第2部分5Aの外面502と中心軸C1との間の距離D22とは同一でもよい。この場合、バルーン3の外面302には段差は形成されず、断面において外面402、502は真円を形成する。又、バルーン3の内面301には、第2部分5Aの内面501に対応する部分で内側に突出する段差が形成される。
【0075】
<バルーンカテーテル1E>
図7に示すバルーンカテーテル1Eのバルーン3のように、先端連結部3Aに配置された第2部分5Aにスリット7Aが設けられ、膨張部3Bに配置された第2部分5Aにスリット7Bが設けられ、基端連結部3Cに配置された第2部分5Aに2つのスリット7Cが設けられてもよい。スリット7A~7Cは、第2部分5Aの外面502から中心軸C1に向けて延びる切れ込み又は切り欠きである。
【0076】
先端連結部3Aに配置された第2部分5Aに設けられたスリット7Aは、収縮状態において先端連結部3Aが広がることを抑制しつつ、先端連結部3Aの柔軟性を維持できる。従って、バルーンカテーテル1Eは、収縮状態のバルーン3を血管に挿入する場合における通過性を向上させることができる。
【0077】
基端連結部3Cに配置された第2部分5Aに設けられたスリット7Cは、収縮状態において基端連結部3Cが広がることを抑制しつつ、基端連結部3Cの柔軟性を維持できる。従って、バルーンカテーテル1Eは、収縮状態のバルーン3を血管から引き抜く場合における通過性を向上させることができる。
【0078】
膨張部3Bに配置された第2部分5Aに設けられた2つのスリット7Bは、収縮状態において膨張部3Bが広がることを抑制できる。又、膨張部3Bに配置された第2部分5Aが湾曲した血管内で突っ張らなくなるので、湾曲した血管に対するバルーン3の追従性を向上させることができる。
【0079】
なお、スリット7A~7Cの底部、言い換えれば、スリット7A~7Cのうち中心軸C1に最も近接する部分は、第2部分5Aの底面503(図1参照)に対し、半径方向の外側に位置するとよい。これにより、収縮状態のバルーン3を血管内に挿入する際、第2部分5Aによる突っ張り棒の役目を効果的に発揮させることができる。図7においてスリット7A、7B、7Cのうち一部のみが第2部分5Aに設けられてもよい。例えば、バルーン3の膨張部3Bの第2部分5Aにのみスリット7Bが設けられ、先端連結部3A及び基端連結部3Cの第2部分5Aにスリット7A、7Cは設けられなくてもよい。
【0080】
<バルーンカテーテル1F>
図8は、バルーンカテーテル1Fのバルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程を示す。図8(A)に示す膨張状態のバルーン3から、圧縮流体が除去されたとする。圧縮流体の除去に応じ、バルーン3は、膨張状態から収縮状態に変形する。
【0081】
図8(B)に示すように、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程で、第2部分51A~53Aは第1部分41A~43Aよりも先に中心軸C1に向けて移動する。第1部分41A~43Aは、周方向E1(図1参照)の両端部を除く部分が外側に押し出され、仮想円Sよりも外側に突出する。図8(C)に示すように、第1部分41Aは、頂点P(1)において曲率が最大となる。第1部分42Aは、頂点P(2)において曲率が最大となる。第1部分43Aは、頂点P(3)において曲率が最大となる。
【0082】
図9に示すように、中心軸C1から、第1部分41Aの頂点P(1)を通って半径方向に延びる仮想的な平面を、「W41」と表記する。中心軸C1から、第1部分42Aの頂点P(2)を通って半径方向に延びる仮想的な平面を、「W42」と表記する。中心軸C1から、第1部分43Aの頂点P(3)を通って半径方向に延びる仮想的な平面を、「W43」と表記する。中心軸C1から、第2部分51Aの頂点500を通って半径方向に延びる仮想的な平面を、「W51」と表記する。中心軸C1から、第2部分52Aの頂点500を通って半径方向に延びる仮想的な平面を、「W52」と表記する。中心軸C1から、第2部分53Aの頂点500を通って半径方向に延びる仮想的な平面を、「W53」と表記する。
【0083】
平面W51、W52のそれぞれからの距離が等しい仮想平面、即ち、平面W51、W52のなす角度を二等分する仮想平面を、「平面W410」と表記する。平面W52、W53のそれぞれからの距離が等しい仮想平面、即ち、平面W52、W53のなす角度を二等分する仮想平面を、「平面W420」と表記する。平面W53、W51のそれぞれからの距離が等しい仮想平面、即ち、平面W53、W51のなす角度を二等分する仮想平面を、「平面W430」と表記する。周方向E1(図1参照)のうち、図9において反時計回り方向側を、「周方向E1の一方側E11」という。
【0084】
平面W51、W41間のなす角度、平面W52、W42間のなす角度、平面W53、W43間のなす角度は等しい。以下、この角度を「θa」と表記する。平面W41、W52間のなす角度、平面W42、W53間のなす角度、平面W43、W51間のなす角度は等しい。以下、この角度を「θb」と表記する。この場合、角度θaよりも角度θbの方が大きい(θa<θb)。つまり、頂点P(1)は、平面W410に対して周方向E1の一方側E11に配置される。頂点P(2)は、平面W420に対して周方向E1の一方側E11に配置される。頂点P(3)は、平面W430に対して周方向E1の一方側E11に配置される。
【0085】
なお図9では、平面W51、W41間のなす角度θaのみ示し、平面W52、W42間のなす角度θa、及び平面W53、W43間のなす角度θaは省略されている。又、平面W41、W52間のなす角度θbのみ示し、平面W42、W53間のなす角度θb、及び平面W43、W51間のなす角度θbは省略されている。
【0086】
第1部分41Aのうち、第2部分51Aとの接続部分から頂点P(1)まで延びる部分を、第1延伸部411という。第1部分41Aのうち、第2部分52Aとの接続部分から頂点P(1)まで延びる部分を、第2延伸部412という。第1部分42Aのうち、第2部分52Aとの接続部分から頂点P(2)まで延びる部分を、第1延伸部421という。第1部分42Aのうち、第2部分53Aとの接続部分から頂点P(2)まで延びる部分を、第2延伸部422という。第1部分43Aのうち、第2部分53Aとの接続部分から頂点P(3)まで延びる部分を、第1延伸部431という。第1部分43Aのうち、第2部分51Aとの接続部分から頂点P(3)まで延びる部分を、第2延伸部432という。
【0087】
第1延伸部411、421、431の長さは等しい。以下、この長さを「La」と表記する。又、第2延伸部412、422、432の長さは等しい。以下、この長さを「Lb」と表記する。この場合、長さLaよりも長さLbの方が長い(La<Lb)。なお図9では、第1延伸部421の長さLaのみ示し、第1延伸部411、431の長さLaは省略されている。又、第2延伸部422の長さLbのみ示し、第2延伸部412、432の長さLbは省略されている。
【0088】
第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分51Aの頂点500との間の距離、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分52Aの頂点500との間の距離、及び、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分53Aの頂点500との間の距離は等しい。以下、この距離を「Lc」と表記する。第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分52Aの頂点500との間の距離、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分53Aの頂点500との間の距離、及び、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分51Aの頂点500との間の距離は等しい。以下、この距離を「Ld」と表記する。この場合、距離Lcよりも距離Ldの方が長い(Lc<Ld)。
【0089】
なお図9では、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分53Aの頂点500との間の距離Lcのみ示し、第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分51Aの頂点500との間の距離Lc、及び、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分52Aの頂点500との間の距離Lcは省略されている。又、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分51Aの頂点500との間の距離Ldのみ示し、第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分52Aの頂点500との間の距離Ld、及び、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分53Aの頂点500との間の距離Ldは省略されている。
【0090】
図8(D)に示すように、第2部分51A~53Aが内側チューブ22に近接する位置まで移動した状態で、第1部分41A~43Aは折り畳まれる。この状態でも、図9で説明した長さLa、Lbの関係(La<Lb)、距離Lc、Ldの関係(Lc<Ld)、及び、角度θa、θbの関係(θa<θb)は維持される。
【0091】
図8(E)に示すように、第1部分41A~43Aは、折り畳まれた状態で第2部分51A~53Aを外側から覆い、羽根部41B~43Bを形成させる。これにより、バルーン3は収縮状態となる。
【0092】
ここで、第1部分41Aの第1延伸部411の長さLaよりも第2延伸部412の長さLbの方が長い(La<Lb)。第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分51Aの頂点500との間の距離Lcよりも、第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分52Aの頂点500との間の距離Ldの方が長い(Lc<Ld)。頂点P(1)は、平面W410に対して周方向E1の一方側E11に配置される。このため、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する場合において、第1部分41Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分51Aに近接する位置に配置され易い。同様に、第1部分42Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分52Aに近接する位置に配置され易い。第1部分43Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分53Aに近接する位置に配置され易い。
【0093】
このためバルーンカテーテル1Fでは、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程における第1部分4Aの位置が安定化し、第2部分5Aを覆う位置に容易に配置される。従って、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程で、第1部分4Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分5Aを容易に覆うことが可能となる。又、バルーンカテーテル1Fは、バルーン3が膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、収縮状態において第1部分4Aにより第2部分5Aを適切に覆うことができる。
【0094】
<バルーンカテーテル1G>
バルーンカテーテル1Gは、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程における第1部分41A、42A、43Aの形状が、バルーンカテーテル1Fの場合と相違する。図10は、バルーンカテーテル1Gのバルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程を示す。図10(A)、図10(B)の状態は、図8(A)、図8(B)と同一である。
【0095】
バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程で、第1部分41A~43Aは外側に押し出され、仮想円Sよりも外側に突出する。図10(C)に示すように、第1部分41Aは、頂点P(1)において曲率が最大となる。第1部分42Aは、頂点P(2)において曲率が最大となる。第1部分43Aは、頂点P(3)において曲率が最大となる。バルーン3における長さLa、Lbの関係(La<Lb)、及び距離Lc、Ldの関係(Lc<Ld)は、バルーンカテーテル1F(図9参照)の場合と同様である(図11参照)。又、平面W410と頂点P(1)との位置関係、平面W420と頂点P(2)との位置関係、及び、平面W430と頂点P(3)との位置関係についても、バルーンカテーテル1F(図9参照)の場合と同様である(図11参照)。
【0096】
図11に示すように、第1部分41Aの第1延伸部411の一部(枠線Q41内の部分)は、平面W41に対し、周方向E1(図1参照)の一方側E11と反対側(以下、「周方向E1の他方側E12」という。)、即ち、平面W41に対して第2部分52Aがある側に配置される。第1部分42Aの第1延伸部421の一部(枠線Q42内の部分)は、平面W42に対して周方向E1の他方側E12、即ち、平面W41に対して第2部分53Aがある側に配置される。第1部分43Aの第1延伸部431の一部(枠線Q43内の部分)は、平面W43に対して周方向E1の他方側E12、即ち、第2部分51Aがある側に配置される。
【0097】
第1部分41Aの頂点P(1)における第1部分41Aの接線と直交してバルーン3の外側に延びる方向Y41を定義する。方向Y41は、中心軸C1を中心とする半径方向に対し、周方向E1の一方側E11に傾斜して延びる。第1部分42Aの頂点P(2)における第1部分42Aの接線と直交してバルーン3の外側に延びる方向Y42を定義する。方向Y42は、中心軸C1を中心とする半径方向に対し、周方向E1の一方側E11に傾斜して延びる。第1部分43Aの頂点P(3)における第1部分43Aの接線と直交してバルーン3の外側に延びる方向Y43を定義する。方向Y43は、中心軸C1を中心とする半径方向に対し、周方向E1の一方側E11に傾斜して延びる。
【0098】
図10(D)に示すように、第2部分51A~53Aが内側チューブ22に近接する位置まで移動した状態で、第1部分41A~43Aは折り畳まれる。この状態でも、図11で説明した長さLa、Lbの関係(La<Lb)、距離Lc、Ldの関係(Lc<Ld)は維持される。一方、図10(D)では、平面W41、W51が一致し、平面W42、W52が一致し、平面W43、W53が一致する。
【0099】
第1部分41Aの第1延伸部411は、全域に亘って、平面W41に対して周方向E1の他方側E12(図11参照)に配置される。第1部分42Aの第1延伸部421は、全域に亘って、平面W42に対して周方向E1の他方側E12に配置される。第1部分43Aの第1延伸部431は、全域に亘って、平面W43に対して周方向E1の他方側E12に配置される。方向Y41、Y42、Y43(図11参照)は、それぞれ、半径方向に対して周方向E1の一方側E11(図11参照)に傾斜する。
【0100】
図10(E)に示すように、第1部分41A~43Aは、折り畳まれた状態で第2部分51A~53Aを外側から覆い、羽根部41B~43Bを形成させる。これにより、バルーン3は収縮状態となる。
【0101】
ここで、第1部分41Aの頂点P(1)は、平面W410に対して周方向E1の一方側E11に配置される。又、第1延伸部411の一部が平面W41に対して周方向E1の他方側E12に配置され、方向Y41が平面W41に対して周方向E1の一方側E11に傾斜する。このため、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する場合において、第1部分41Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分51Aに近接する位置に配置され易く、且つ、第2部分51Aを半径方向の外側から覆い易くなる。同様に、第1部分42Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分52Aに近接する位置に配置され易く、且つ、第2部分52Aを半径方向の外側から覆い易くなる。第1部分43Aは、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分53Aに近接する位置に配置され易く、且つ、第2部分53Aを半径方向の外側から覆い易くなる。
【0102】
つまり、バルーンカテーテル1Gでは、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程における第1部分4Aの位置が安定化し、周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分5Aを覆う位置に容易に配置される。更に、バルーンカテーテル1Gでは、バルーン3が膨張状態から収縮状態に変形する過程において、第1部分4Aが第2部分5Aを半径方向の外側から覆い易い形状となる。従って、バルーンカテーテル1Gは、第1部分4Aに対して周方向E1の一方側E11に隣接する第2部分5Aを、第1部分4Aにより容易に覆うことが可能となる。又、バルーンカテーテル1Gは、バルーン3が膨張状態と収縮状態とに繰り返し変形した場合でも、収縮状態において第1部分4Aにより第2部分5Aを適切に覆うことができる。
【0103】
<バルーンカテーテル1F、1Gに関する特記事項>
第1延伸部411、421、431の長さは、それぞれ異なっていてもよい。第2延伸部412、422、432の長さは、それぞれ異なっていてもよい。この場合、第1部分41Aにおいて、第1延伸部411よりも第2延伸部412の方が長ければよい。第1部分42Aにおいて、第1延伸部421よりも第2延伸部422の方が長ければよい。第1部分43Aにおいて、第1延伸部431よりも第2延伸部432の方が長ければよい。
【0104】
第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分51Aの頂点500との間の距離、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分52Aの頂点500との間の距離、及び、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分53Aの頂点500との間の距離は、それぞれ異なっていてもよい。第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分52Aの頂点500との間の距離、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分53Aの頂点500との間の距離、及び、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分51Aの頂点500との間の距離は、それぞれ異なっていてもよい。この場合、第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分51Aの頂点500との間の距離よりも、第1部分41Aの頂点P(1)と第2部分52Aの頂点500との間の距離の方が長ければよい。第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分52Aの頂点500との間の距離よりも、第1部分42Aの頂点P(2)と第2部分53Aの頂点500との間の距離の方が長ければよい。第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分53Aの頂点500との間の距離よりも、第1部分43Aの頂点P(3)と第2部分51Aの頂点500との間の距離の方が長ければよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11