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特許7640708画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/387 20060101AFI20250226BHJP
   G06T 7/12 20170101ALI20250226BHJP
【FI】
H04N1/387
H04N1/387 200
G06T7/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023539534
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029280
(87)【国際公開番号】W WO2023013021
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 智晃
(72)【発明者】
【氏名】近江 国彦
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016898(JP,A)
【文献】特開2019-033329(JP,A)
【文献】特開2017-163411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/387
G06T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿から光学的に読み取られた画像データにおける階調変化に基づいて原稿端を構成する複数の端点の位置を特定し、前記複数の端点から原稿の矩形を算出する端点特定部と、
前記矩形を構成する直線と、近傍に存在する他の端点に基づいて、前記端点の位置を補正するノイズ補正部と、
前記ノイズ補正部により補正された端点を含む複数の端点を繋いで、原稿の外縁を決定する外縁決定部と、
前記画像データのうち、前記外縁決定部により決定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰し部と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記塗潰し部は、前記画像データを光学的に読み取る時に用いられた原稿の背景色とは異なる色で、前記外縁よりも外側を塗り潰す
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記塗潰し部は、前記画像データを受け渡すソフトウェアに関連付けられた色で、前記外縁よりも外側を塗り潰す
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ノイズ補正部は、原稿のいずれの辺に相当するかに応じて、補正処理を実施する
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
原稿から光学的に読み取られた画像データにおける階調変化に基づいて原稿端を構成する複数の端点の位置を特定し、前記複数の端点から原稿の矩形を算出する端点特定ステップと、
前記矩形を構成する直線と、近傍に存在する他の端点に基づいて、前記端点の位置を補正するノイズ補正ステップと、
前記ノイズ補正ステップにより補正された端点を含む複数の端点を繋いで、原稿の外縁を決定する外縁決定ステップと、
前記画像データのうち、前記外縁決定ステップにより決定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰しステップと
を有する画像処理方法。
【請求項6】
原稿から光学的に読み取られた画像データにおける階調変化に基づいて原稿端を構成する複数の端点の位置を特定し、前記複数の端点から原稿の矩形を算出する端点特定ステップと、
前記矩形を構成する直線と、近傍に存在する他の端点に基づいて、前記端点の位置を補正するノイズ補正ステップと、
前記ノイズ補正ステップにより補正された端点を含む複数の端点を繋いで、原稿の外縁を決定する外縁決定ステップと、
前記画像データのうち、前記外縁決定ステップにより決定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰しステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する外縁特定部と、
前記画像データのうち、前記外縁特定部により特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰し部と、
前記塗潰し部により前記外縁よりも外側を塗り潰された前記画像データを、それぞれに背景色を関連付けた複数のソフトウェアの少なくとも一つへ出力するファイル出力部と、
前記ファイル出力部による出力先のソフトウェアに関連付けられた背景色を選択する背景色選択部と、
を有し、
前記塗潰し部は、前記背景色選択部により選択された背景色で、前記外縁よりも外側を塗り潰すことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する外縁特定ステップと、
前記画像データのうち、前記外縁特定ステップにより特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰しステップと、
前記塗潰しステップにより前記外縁よりも外側を塗り潰された前記画像データを、それぞれに背景色を関連付けた複数のソフトウェアの少なくとも一つへ出力するファイル出力ステップと、
前記ファイル出力ステップによる出力先のソフトウェアに関連付けられた背景色を選択する背景色選択ステップと、
を含み、
前記塗潰しステップは、前記背景色選択ステップにより選択された背景色で、前記外縁よりも外側を塗り潰す画像処理方法。
【請求項9】
原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する外縁特定ステップと、
前記画像データのうち、前記外縁特定ステップにより特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰しステップと、
前記塗潰しステップにより前記外縁よりも外側を塗り潰された前記画像データを、それぞれに背景色を関連付けた複数のソフトウェアの少なくとも一つへ出力するファイル出力ステップと、
前記ファイル出力ステップによる出力先のソフトウェアに関連付けられた背景色を選択する背景色選択ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記塗潰しステップは、前記背景色選択ステップにより選択された背景色で、前記外縁よりも外側を塗り潰すプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、スキャン対象物をスキャンし、画像データを出力するスキャン部と、前記画像データのエッジを抽出するエッジ抽出部と、前記エッジに基づいて、前記画像データの非エッジ領域を検出する非エッジ領域検出部と、前記非エッジ領域が、前記スキャン対象物の画像領域であるかまたは背景の画像領域であるか、所定の条件に基づいて仮判定する仮判定部と、仮判定された前記非エッジ領域の配置に基づいて、前記非エッジ領域の仮判定を補正する補正部と、を有することを特徴とする画像処理装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、用紙をスキャンする画像読み取り部と、用紙を挟んで画像読み取り部に対向して配置され、複数の背景色を切り替え可能な背景部材と、を備える検査装置に、用紙の角部の色を判別する色判別部と、複数の背景色の中から、用紙の角部の色に対してコントラストが相対的に高い背景色を選択する背景色選択部と、選択された背景色の背景部材を用いて画像読み取り部が用紙をスキャンした結果に基づいて、用紙の角折れを検知する角折れ検知部と、を設ける検査装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、所定の地色に文字または図形が特定のパターン色で記載された帳票のイメージを、該地色とは異なる背景色を有する背景と共に画素に分解して読み取るイメージ読取手段と、前記イメージ読取手段で読み取られた帳票のイメージの形状及び寸法を、予め登録された帳票形式情報と比較してそのイメージの周辺部に欠損箇所が有るか否かを検索する欠損検索手段と、前記イメージに欠損箇所が有る場合に該欠損箇所を前記帳票の地色で補って補正する欠損補正手段と、正常に読み取られた前記帳票のイメージ及び前記欠損補正手段で補正された前記帳票のイメージの所定の位置に、予め定められた文字または図形の追加パターンを追加するパターン追加手段とを、備えたことを特徴とするイメージ編集システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、原稿の一方の面に光を照射する第1光源と、原稿の他方の面に光を照射する第2光源と、前記第1光源から照射され原稿の一方の面で反射された光を受光して当該原稿の読取画像を読み取ると共に、前記第2光源から照射された光を受光して当該原稿の透過画像を読み取る読取手段と、前記透過画像に基づいて原稿の状態を検出する制御手段と、を備えることを特徴とする画像読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-163411
【文献】特開2020-057902
【文献】特開2001-144946
【文献】特許第4933402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学的に読み取られた画像データをより活用しやすいものにする画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する外縁特定部と、前記画像データのうち、前記外縁特定部により特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰し部とを有する。
【0009】
好適には、前記塗潰し部は、前記画像データを光学的に読み取る時に用いられた原稿の背景色とは異なる色で、前記外縁よりも外側を塗り潰す。
【0010】
好適には、前記塗潰し部は、前記画像データを受け渡すソフトウェアに関連付けられた色で、前記外縁よりも外側を塗り潰す。
【0011】
好適には、前記外縁特定部は、前記画像データにおける階調変化に基づいて、原稿端を構成する端点の位置を特定する端点特定部と、前記端点特定部により特定された複数の端点を繋いで、原稿の外縁を決定する外縁決定部とを含む。
【0012】
好適には、前記外縁特定部は、近傍に存在する他の端点に基づいて、端点の位置を補正するノイズ補正部をさらに含み、前記外縁決定部は、前記ノイズ補正部により補正された端点の位置に基づいて、原稿の外縁を決定する。
【0013】
好適には、前記ノイズ補正部は、原稿のいずれの辺に相当するかに応じて、補正処理を実施する。
【0014】
また、本発明に係る画像処理方法は、原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する外縁特定ステップと、前記画像データのうち、前記外縁特定ステップにより特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰しステップとを有する。
【0015】
また、本発明に係るプログラムは、原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する外縁特定ステップと、前記画像データのうち、前記外縁特定ステップにより特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す塗潰しステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
光学的に読み取られた画像データをより活用しやすいものにする画像処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】画像処理システム1の全体構成を例示する図である。
図2】スキャン画像のクロップ処理と原稿端の関係を説明する図である。
図3】画像処理の概要を説明する図である。
図4】画像処理装置2のハードウェア構成を例示する図である。
図5】画像処理装置2の機能構成を例示する図である。
図6】外縁特定部300をより詳細に説明する図である。
図7】画像処理装置2の全体動作(S10)を説明するフローチャートである。
図8】ファイルの出力先と背景色を関連付けるテーブルを例示する図である。
図9】端点特定部302の処理を説明する図である。
図10】端点特定部302により特定された端点のノイズを例示する図である。
図11】塗潰し部320の処理を説明する図である。
図12】原稿端の検知結果を例示し、その問題点を説明する図である。
図13】判別分析法の概要を説明する図である。
図14】塗潰し部320により塗り潰される背景領域のバリエーションを例示する図である。
図15】直線領域におけるノイズ補正処理(S200)を説明するフローチャートである。
図16】近接する3つの端点で形成される局所角度を例示する図である。
図17】非直線領域におけるノイズ補正処理(S240)を説明するフローチャートである。
図18】局所エグレを例示する図である。
図19】テカリ辺と影辺を説明する図である。
図20】白色の裏当てでスキャンされたスキャン画像と、黒色の背景色で塗り潰された画像とを比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、画像処理システム1の全体構成を例示する図である。
図1に例示するように、画像処理システム1は、画像処理装置2と、スキャナ装置4とを含み、これらはケーブル7を介して互いに接続している。
画像処理装置2は、例えば、コンピュータ端末であり、スキャナ装置4から受信した画像データに対して画像処理を施す。
スキャナ装置4は、原稿(画像表示媒体)から光学的に画像データを読み取る画像読取装置であり、例えば、読み取られた画像データを、ケーブル7を介して画像処理装置2に送信する。
ケーブル7は、例えば、USBケーブルである。
なお、本例では、ケーブル7を介して、スキャナ装置4から画像処理装置2に画像データを送信する形態を具体例として説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、画像データは無線通信によりスキャナ装置4から画像処理装置2に送信されてもよいし、画像処理装置2がスキャナ装置4に内蔵されていてもよい。
【0019】
上記構成において、スキャナ装置4の一般的なハードウェア構成において、通過する紙(原稿)を撮像する際の下敷きになる「裏当て」が存在する。
この裏当ては、裏当ての色(背景色)によってメリット・デメリットが存在するため、製品によって異なることが多い。
もちろん、原稿の切出し機能(クロップ)を用いる場合は、これらの差は気になり難い(キレイな矩形においては、裏当て部分が見えることがない)が、必ずしも切出し前提で運用されるとも限らない。この場合、読み取り画像における「裏当て部分」は、図2(A)のように見える。すなわち、裏当ての存在は、必ずしもユーザに見えないとは限らず、「裏当ての目立ち具合」が業務に直結するケースも存在する。
【0020】
また、白裏当て上で白い紙を読むケースでは、一般的に、原稿と裏当ての諧調差が少なく、更に光源の照射に伴う影やテカリといった要因から、原稿エッジ点(諧調差をもとに検索する事例が多い)は、一点一点は正確には把握できないことが多い。
そのため、クロップは、図2(B)に例示するように、「矩形」を前提とすることで、近似直線や近似矩形の作成により、疑似的に「高精度な矩形検出」を実現している。
しかしながら、スキャナ装置4に求められる機能として、必ずしも矩形切出しさえ出来れば十分というわけではなく、非矩形でも正確に原稿エッジを追従した切出し(裏当て部の削除)や、同様に折れ欠けの検出などの要望が存在する。これらの機能は、黒色の裏当て上での白い紙の原稿という限られた環境では、実現されているが、白色の裏当て上での白い紙の原稿では実現されていない。
【0021】
そこで、本実施形態の画像処理システム1では、画像処理装置2は、スキャナ装置4により読み取られた画像データに関して、図3に例示するように、原稿領域のみを切り出し、スキャナ装置4により読み取られた画像(スキャン画像)と同サイズの背景画像(黒画像)を作成し、これら2つの画像を合成する。これにより、スキャナ装置4が白色の裏当てでスキャンを行った場合でも、画像処理装置2が、背景領域を黒色で塗り潰したスキャン画像を生成することができる。
【0022】
図4は、画像処理装置2のハードウェア構成を例示する図である。
図4に例示するように、画像処理装置2は、CPU200、メモリ202、HDD204、ネットワークインタフェース206(ネットワークIF206)、表示装置208、及び、入力装置210を有し、これらの構成はバス212を介して互いに接続している。
CPU200は、例えば、中央演算装置である。
メモリ202は、例えば、揮発性メモリであり、主記憶装置として機能する。
HDD204は、例えば、ハードディスクドライブ装置であり、不揮発性の記録装置としてコンピュータプログラム(例えば、図5の画像処理プログラム3)やその他のデータファイルを格納する。
ネットワークIF206は、有線又は無線で通信するためのインタフェースであり、例えば、スキャナ装置4との通信を実現する。
表示装置208は、例えば、液晶ディスプレイである。
入力装置210は、例えば、キーボード及びマウスである。
【0023】
図5は、画像処理装置2の機能構成を例示する図である。
図5に例示するように、本例の画像処理装置2には、画像処理プログラム3がインストールされ、動作する。画像処理プログラム3は、例えば、CD-ROM等の記録媒体に格納されており、この記録媒体を介して、画像処理装置2にインストールされる。
画像処理プログラム3は、外縁特定部300、背景色選択部310、塗潰し部320、及び、ファイル出力部330を有する。
なお、画像処理プログラム3の一部又は全部は、ASICなどのハードウェアにより実現されてもよく、また、OS(Operating System)の機能を一部借用して実現されてもよい。
【0024】
画像処理プログラム3において、外縁特定部300は、スキャナ装置4により原稿から光学的に読み取られた画像データに関して、原稿の外縁を特定する。
より具体的には、外縁特定部300は、図6に示すように、端点特定部302、ノイズ補正部304、及び、外縁決定部306を含む。端点特定部302は、画像データにおける階調変化に基づいて、原稿端を構成する端点(原稿エッジ点)の位置を特定する。ノイズ補正部304は、端点特定部302により特定された原稿の端点について、近傍に存在する他の端点に基づいて、原稿の端点の位置を補正する。外縁決定部306は、端点特定部302により特定された複数の端点(又は、ノイズ補正部304により補正された端点)を繋いで、原稿の外縁を決定する。
【0025】
背景色選択部310は、塗潰し部320が用いる背景色を選択する。例えば、背景色選択部310は、スキャナ装置4の裏当てと異なる色を、塗潰し部320が用いる背景色として選択する。また、背景色選択部310は、画像データを受け渡すソフトウェアに関連付けられた色を、塗潰し部320が用いる背景色として選択してもよい。本例の背景色選択部310は、ファイル出力部330により画像データが出力される出力先に応じて、塗潰し部320が用いる背景色を選択する。
【0026】
塗潰し部320は、スキャナ装置4により読み取られた画像データのうち、外縁特定部300により特定された外縁よりも外側を既定の色で塗り潰す。例えば、塗潰し部320は、スキャナ装置4により読み取られた画像データのうち、外縁特定部300により特定された外縁よりも外側を、背景色選択部310により選択された色で塗り潰す。本例の塗潰し部320は、外縁特定部300により特定された原稿の外縁に従って、スキャン画像から原稿領域のみを切り出し、スキャン画像と同サイズの背景画像(背景色選択部310により選択された色で塗り潰された画像)を作成し、背景画像の上に、切出された原稿領域の画像を重畳する。
【0027】
ファイル出力部330は、塗潰し部320により外縁よりも外側が既定の色で塗り潰しされた画像データを、既定の出力先に出力する。例えば、ファイル出力部330は、塗潰し部320により外縁よりも外側が既定の色で塗り潰しされた画像データを、画像処理装置2内の他の画像処理ソフトウェア(画像処理アプリ)、又は、外部のWebサービス等に出力する。
【0028】
図7は、画像処理装置2の全体動作(S10)を説明するフローチャートである。
図7に例示するように、ステップ100(S100)において、画像処理装置2の画像処理プログラム3(図5)は、スキャナ装置4により読み取られた画像データ(スキャン画像)を取得する。
ステップ105(S105)において、画像処理プログラム3の端点特定部302(図6)は、取得したスキャン画像の外側から、階調変化が基準値以上または色の変化が基準値以上となる点を探索して、原稿の端点を特定する。
【0029】
ステップ20(S20)において、ノイズ補正部304(図6)は、端点特定部302により特定された端点の位置を補正する。詳細は、図15図19を参照して後述する。
【0030】
ステップ115(S115)において、外縁決定部306は、端点特定部302により特定された端点、又は、ノイズ補正部304により補正された端点を繋いで、スキャン画像における原稿の外縁を決定する。
ステップ120(S120)において、背景色選択部310(図5)は、図8に例示するテーブルを参照して、ファイル出力部330による画像データの出力先に関連付けられた背景色を選択する。
【0031】
ステップ125(S125)において、塗潰し部320は、外縁決定部306により決定された原稿の外縁に従って、スキャン画像から原稿領域の画像を切り出し、切り出された原稿領域の画像を、背景色選択部310により選択された背景色の背景画像の上に重畳して、原稿の外側が既定の背景色で塗り潰された画像を生成する。
ステップ130(S130)において、ファイル出力部330は、塗潰し部320により原稿の外側が塗り潰された画像データを既定の出力先に出力する。
【0032】
図9は、端点特定部302の処理を説明する図である。
図9(A)に例示するように、端点特定部302は、原稿とスキャナ背景(裏当て)との境界位置(複数の端点)を、階調の変化量に基づいて検出する。さらに、端点特定部302は、図9(B)に例示するように、原稿の端点(原稿エッジのサンプリング点)から、 ハフ変換等で尤もらしい直線群で近似し、原稿の矩形(4本の直線)を算出し決定する。また、端点特定部302は、決めた4直線で画像を切り出し、図9(C)に例示するように、スキュー補正する。この時、切り出された画像の外側に 決められた大きさの余白を残してもよい。
【0033】
図10は、端点特定部302により特定された端点のノイズを例示する図である。
図10に例示するように、端点特定部302により特定された端点(原稿エッジのサンプリング点)には、境界検出精度などの悪影響でノイズサンプルが含まれる。
これらのノイズは、塗潰し部320による塗潰し処理において画質劣化の要因となるため、これらのノイズを取る処理が必要である。
具体的には、ノイズ補正部304が、図10の直線(点線)から一定以上離れている端点であり、かつ、両隣りの端点が直線付近であるものを、ノイズとして補正の対象とする。
【0034】
図11は、塗潰し部320の処理を説明する図である。
外縁決定部306は、図11(A)に例示するように、端点特定部302により特定された端点、又は、ノイズ補正部304により補正された端点を直線で結び、原稿の外縁(外周)を決定する。
塗潰し部320は、図11(B)に例示するように、外縁決定部306により決定された外縁の外側を、既定の色(背景色選択部310により選択された色)で塗り潰す。さらに、塗潰し部320は、原稿領域を矩形でカットして(外側の余白をカットして)、図11(C)の出力用画像データとする。出力用画像データは、図11(C)に例示するように、スキャナ装置4の裏当てが白色であっても、背景色が黒に塗り替えられたものとなり、かつ、破れなど破損部の色を塗り替えた画像となる。
【0035】
図12は、原稿端の検知結果を例示し、その問題点を説明する図である。
スキャナ装置4によるスキャン時に、原稿搬送による原稿の物理的な揺れや、光源・反射もブレるため、端点特定部302によるエッジ検出(端点特定)は、必ずしも高精度な検出はできず、ある程度の幅で変動する。この現象は、とりわけ裏当てが白色である場合において顕著である。なお、裏当てが黒色であり、原稿の紙が白紙である場合、または、その逆の場合においては、諧調差が非常に大きいため、正確なエッジ検出が期待である。
例えば、現実の原稿に対するエッジ点(端点)は、図12(A)のようなブレを含むことが多い。ここで、このエッジ点(端点)を用いて原稿の輪郭を走査したいが、図12(B)のように、単にエッジ点を接続した場合、原稿端が細かく変動し、実際の欠けは反映できても、もともとの原稿形状が直線的ではなくなり、現物以上に歪な輪郭線になりがちである。
また、一般的なクロップのように、単に近似直線に従った場合は、図12(C)のように、当然ながら、原稿の形状に沿うものの、実際にある欠けも無視しがちである。
本実施形態では、図12(B)及び(C)の利点を兼ね備える、図12(D)のような形状の輪郭線が必要である。
【0036】
本例の外縁特定部300は、図12(B)と図12(C)を重ね合わせ、「一定以上」乖離がある領域(図12(E)の乖離領域)を探す。外縁特定部300は、乖離領域について、図12(B)を採用し、その他領域では図12(C)を採用することで、図12(D)に近い、図12(F)の外縁を決定する。
また、「一定以上乖離があるかどうか」の閾値については、例えば、固定値(例えば 2mm)を用いてもよいし、図12(B)と図12(C)における全ての乖離値を集計し、判別分析法により動的に求めてもよい。動的な判別分析法は、例えば、図13に示す乖離値の出現頻度に基づいて閾値を設定し、閾値との比較により行う。
【0037】
図14は、塗潰し部320により塗り潰される背景領域のバリエーションを例示する図である。
本例の塗潰し部320は、スキャナ装置4の裏当てが白色である場合に、黒色で背景領域を塗り潰すが、これに限定されるものではなく、例えば、バリエーション1として、 原稿の地色に合わせて、動的に裏当て相当の部分を切り替えてもよい。具体的には、塗潰し部320は、背景色と遠い色(白い紙なら黒色の背景、黒い紙なら白色の背景)、又は、背景色と近い色(白い紙なら白背景、赤い紙なら赤背景)で塗り潰す。
また、塗潰し部320は、バリエーション2として、赤などの極めて特異な色で塗り潰してもよいし、バリエーション3として、ドットなどの模様をもった背景画像にしてもよい。
また、塗潰し部320は、バリエーション4として、ユーザによる目視確認を支援するために、原稿の輪郭線を表示してもよいし、バリエーション5として、透過(アルファチャンネル等)属性を持たせてもよい。
【0038】
次に、図7のノイズ補正処理(S20)をより詳細に説明する。ノイズ補正処理(S20)には、直線領域におけるノイズ補正処理(S200)と、非直線領域(破れ箇所等)におけるノイズ補正処理(S240)とが含まれている。
まず、直線領域におけるノイズ補正処理(S200)を説明する。
図15は、直線領域におけるノイズ補正処理(S200)を説明するフローチャートである。
図16は、近接する3つの端点で形成される局所角度を例示する図である。
図15に例示するように、ノイズ補正部304(図6)は、直線領域(上下左右の辺)におけるエッジ点(端点特定部302により特定された端点)を採取し(S202)、ハフ変換や最小二乗法によって、採取されたエッジ点(端点)に基づいて、各辺の直線式を算出する(S204)。
次に、ノイズ補正部304は、エッジ点毎に直線からの距離を算出し(S206)、算出された距離が基準値よりも遠いか否かを判定する(S208)。
ノイズ補正部304は、算出された距離が基準値以下である場合に(S208:No)、そのエッジ点(端点)を安定エッジとし(S210)、算出された距離が基準値よりも遠い場合に(S208:Yes)、そのエッジ点(端点)をノイズ候補とする(S212)。
【0039】
ノイズ補正部304は、図16に例示するように、ノイズ候補のエッジ点と、その両隣のエッジ点がなす局所角度を算出し(S214)、算出された局所角度が基準角度よりも小さいか否かを判定する(S216)。
ノイズ補正部304は、算出された局所角度が基準角度よりも小さい場合に(S216:Yes)、このノイズ候補のエッジ点をノイズエッジとし(S218)、算出された局所角度が基準角度以上である場合に(S216:No)、ノイズ候補から外して、次のエッジ点の処理に移行する。
ノイズ補正部304は、ノイズエッジとしたエッジ点の座標値を、直線上の点(垂直交点)の座標値に置き換える(S220)。なお、本例では、直線上の点の座標値に置き換えているが、ノイズエッジとなったエッジ点を単に削除してもよい。
ノイズ補正部304は、上記の処理を各エッジ点について実施する。
【0040】
次に、非直線領域(破れ箇所等)におけるノイズ補正処理(S240)を説明する。非直線領域とは、原稿のコーナーや、辺の途中にある折れや破れに相当する領域であり、ジャギーが発生しやすいため、座標値のスムージングを補正処理として行う。
図17は、非直線領域におけるノイズ補正処理(S240)を説明するフローチャートである。
図18は、局所エグレを例示する図であり、図19は、テカリ辺と影辺を説明する図である。
図17に例示するように、ノイズ補正部304(図6)は、原稿の辺毎にループ処理する(S242)。ノイズ補正部304は、各辺がテカリ辺であるか否かを判定し(S244)、テカリ辺ではないと判定された場合(S244:No)、残りの辺の処理に移行し(S246)、テカリ辺であると判定された場合(S244:Yes)、S248以降の処理を行う。ここで、テカリ辺とは、図19に示すように、スキャナ装置4の光センサから原稿端の影が見えない辺であり、影辺とは、スキャナ装置4の光センサから原稿端の影が見える辺である。原稿の辺がテカリ辺であるか影辺であるかは、スキャナ装置4の光源と光センサと原稿の位置関係によって決まる。つまり、原稿の4辺のいずれがテカリ辺であるかは、スキャナ装置4の機種毎に予め設定されている。なお、直線領域における端点(エッジ点)のばらつき度合いに基づいて、テカリ辺であるか否かを判定してもよい。
【0041】
処理対象がテカリ辺である場合に、ノイズ補正部304は、直線から離れたサンプル群を抽出する(S248)。サンプル群とは、直線から離れた端点(エッジ点)であって、互いに近い位置に存在する連続した複数の端点のまとまりである。
ノイズ補正部304は、抽出されたサンプル群毎にループ処理する(S250)。すなわち、ノイズ補正部304は、未処理のサンプル群が無くなった場合(S252:Yes)、ループ処理を抜け、未処理のサンプル群が存在する場合(S252:No)、S254以降の処理を行う。
【0042】
ノイズ補正部304は、処理対象のサンプル群の中から、始点と終点を定める(S254)。
ノイズ補正部304は、始点と終点のセットが存在するか否かを判定し(S256)、始点と終点のセットが存在しない場合にS250の処理に移行し、始点と終点のセットが存在する場合にS258の処理に移行する.。
【0043】
ノイズ補正部304は、始点と終点の間の座標値をスムージングするように、始点と終点の間に存在する端点である中点についてループ処理する(S258)。すなわち、ノイズ補正部304は、各中点について、原稿の内側にエグレているか否かを判定し(S260)、内側にエグレている中点について、図18に示すように、中点の座標を、始点と終点を結ぶ直線上の座標に書き換える(S262)。なお、本例のエグレとは、始点と終点の間に存在する端点(エッジ点)が、始点と終点を結ぶ直線よりも原稿の内側に基準以上入り込んでいる状態である。エグレているか否かの判定は、例えば、始点、中点及び終点の3点でできる線分の角度が基準角度以下であるか否かで行われる。
なお、ノイズ補正部304は、4辺矩形直線算出の際のスキュー角度の度合いに基づいて(スキュー角度が大きい場合に)、他の辺(影が見えない側の他の辺)をテカリ辺として追加するように構成してもよい。また、ノイズ補正部304は、破れ個所の破れ具合に基づいて、影が見えない側の部分エッジを 部分的にテカリ域として加えてもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の画像処理装置2によれば、スキャナ装置4の裏当ての色に制約されず、適切な背景色の画像データを得ることができる。例えば、白色の裏当て中の白原稿エッジの抽出精度が向上する。そのため、原稿の外形を非矩形外形として精度よく抽出でき、原稿の欠けや破れも忠実に再現できる。
また、原稿外の色を目的(アプリ等)に応じて自由に置き換えることができ、真贋判定などの後段アプリ側の特性に合った画像加工が可能になる。例えば、図20に示すように、スキャナ装置4のスキャン画像(図20の左側)と、黒色の背景で塗り潰した画像(図20の右側)を比較してもわかるように、原稿の欠け部分や折れ部分がより目立たせることができ、後段の処理でミスが発生しにくくなる。
さらには、スキャナ装置4のハードウェアが白色の裏当てのみの安価な構成であっても、裏あて黒が実現でき、コスト効果が期待できる。
また、矩形原稿の欠けや破れなどの欠損箇所を忠実に抽出できるため、その補修(色塗り)が可能になる。非矩形原稿(丸い原稿など)でも、原稿輪郭を抽出できる。
テカリや厚紙による裏あて階調変動などの不安定要因があっても、忠実に原稿輪郭を抽出できる
【0045】
なお、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 画像処理システム
2 画像処理装置
3 画像処理プログラム
4 スキャナ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20