(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】負極シート及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20250226BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20250226BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250226BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20250226BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250226BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250226BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20250226BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20250226BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250226BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/1395
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/587
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2023554048
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2022095235
(87)【国際公開番号】W WO2023225937
(87)【国際公開日】2023-11-30
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】王 家政
(72)【発明者】
【氏名】▲厳▼ 青▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 良彬
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲暁▼斌
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 子建
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179592(JP,A)
【文献】特開2013-229163(JP,A)
【文献】特開2007-035434(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109888266(CN,A)
【文献】国際公開第2010/038609(WO,A1)
【文献】特開2016-028375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、第1負極活物質層と、を含み、
前記第1負極活物質層は前記負極集電体の少なくとも1つの面に設けられ、
質量%で計算して、前記第1負極活物質層の成分は、30%~70%のシリコン系材料、15%~40%のバインダー及び15%~40%の導電剤を含
み、
前記バインダー及び前記導電剤は多孔質導電性ネットワークを形成し、前記多孔質導電性ネットワークは前記シリコン系材料を被覆することを特徴とする、負極シート。
【請求項2】
前記第1負極活物質層の厚さ方向に垂直な断面において、前記シリコン系材料及び前記多孔質導電性ネットワークの面積比は1:(0.5~1.5)であることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項3】
前記シリコン系材料は単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金及びリチウムプレドープシリコン酸化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項4】
前記シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は1μm~15μmであることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項5】
前記シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は4μm~8μmであることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項6】
前記第1負極活物質層の成分において、前記シリコン系材料の質量%は45%~55%であることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項7】
前記バインダーのガラス転移温度は≦25℃であることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項8】
前記バインダーはスチレンブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴム、アクリル系化合物及びブタジエンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
7に記載の負極シート。
【請求項9】
前記第1負極活物質層の成分において、前記バインダーの質量%は18%~23%であることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項10】
前記第1負極活物質層の成分において、前記導電剤の質量%は25%~35%であることを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項11】
前記導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項12】
前記導電剤はグラファイト、導電性カーボンブラック及びカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項13】
前記導電剤において、前記グラファイトの質量%は85%~97%であることを特徴とする、請求項1
2に記載の負極シート。
【請求項14】
前記グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は1μm~20μmであることを特徴とする、請求項1
1に記載の負極シート。
【請求項15】
前記グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は2μm~4μmであることを特徴とする、請求項1
1に記載の負極シート。
【請求項16】
前記負極シートはさらに、第2負極活物質を含む第2負極活物質層を含み、前記第2負極活物質はグラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、スズ系材料、チタン酸リチウム及びシリコン含有活物質のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
1に記載の負極シート。
【請求項17】
前記第2負極活物質はグラファイトであることを特徴とする、請求項1
6に記載の負極シート。
【請求項18】
シリコン系材料、導電剤及びバインダーを負極ペーストに製造するステップと、
負極集電体の少なくとも1つの面に負極ペーストを塗布し、乾燥させて、第1負極活物質層を製造するステップと、を含み、
質量%で計算して、前記第1負極活物質層の成分は、30%~70%の前記シリコン系材料、15%~40%の前記バインダー及び15%~40%の前記導電剤を含
み、
前記バインダー及び前記導電剤は多孔質導電性ネットワークを形成し、前記多孔質導電性ネットワークは前記シリコン系材料を被覆することを特徴とする、負極シートの製造方法。
【請求項19】
請求項
1に記載の負極シー
トを含むことを特徴とする、二次電池。
【請求項20】
請求項
19に記載の二次電池を含むことを特徴とする、電池モジュール。
【請求項21】
請求項2
0に記載の電池モジュールを含むことを特徴とする、電池パック。
【請求項22】
請求項
19に記載の二次電池、請求項2
0に記載の電池モジュール、又は請求項2
1に記載の電池パックから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池分野に関し、具体的には負極シート及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池の負極材料は、一般的に天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料が主であるが、炭素材料の容量はすでにその理論容量(372mAh/g)に近づいているため、二次電池の容量の増加は制限されている。シリコンは二次電池の負極材料の一つとして、高い理論容量(4200mAh/g)を有し、環境にやさしく、埋蔵量が豊富である等の特徴を有し、広く注目されている。しかしながら、リチウムの挿入と脱離による大きな体積変化及び表面に形成される不安定な固体電解質膜は、充放電過程において、シリコン含有負極シートの劣化をもたらし、且つサイクル安定性に劣るため、シリコン含有負極シートの二次電池における応用は制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記問題に基づき、本願は、負極シートの体積膨張を減少させ、負極シートのサイクル特性を改善することができる負極シート及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の一態様によれば、負極集電体と、第1負極活物質層と、を含み、
前記第1負極活物質層は前記負極集電体の少なくとも1つの面に設けられ、
質量%で計算して、前記第1負極活物質層の成分は、30%~70%のシリコン系材料、15%~40%のバインダー及び15%~40%の導電剤を含む負極シートを提供する。
【0005】
上記負極シートは、第1負極活物質層の成分の合理的な配合比率により、負極シート中のシリコン系材料の充放電サイクルにおいて、体積膨張を小さくさせ、それにより負極シートの劣化を回避して、負極シートのサイクル膨張率及びサイクル寿命を改善する。
【0006】
いくつかの実施例において、前記バインダー及び前記導電剤は多孔質導電性ネットワークを形成し、前記多孔質導電性ネットワークは前記シリコン系材料を被覆する。
【0007】
いくつかの実施例において、前記第1負極活物質層の厚み方向に垂直な断面において、前記シリコン系材料及び前記多孔質導電性ネットワークの面積比は1:(0.5~1.5)である。
【0008】
いくつかの実施例において、前記シリコン系材料は単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金及びリチウムプレドープシリコン酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
いくつかの実施例において、前記シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は1μm~15μmである。
【0010】
いくつかの実施例において、前記シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は4μm~8μmである。
【0011】
いくつかの実施例において、前記第1負極活物質層の成分における前記シリコン系材料の質量%は45%~55%である。
【0012】
いくつかの実施例において、前記バインダーのガラス転移温度は≦25℃である。
【0013】
いくつかの実施例において、前記バインダーはスチレンブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴム、アクリル系化合物及びブタジエンのうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの実施例において、前記第1負極活物質層の成分における前記バインダーの質量%は18%~23%である。
【0015】
いくつかの実施例において、前記第1負極活物質層の成分における前記導電剤の質量%は25%~35%である。
【0016】
いくつかの実施例において、前記導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
いくつかの実施例において、前記導電剤はグラファイト、導電性カーボンブラック及びカーボンナノチューブを含む。
【0018】
いくつかの実施例において、前記導電剤における前記グラファイトの質量%は85%~97%である。
【0019】
いくつかの実施例において、前記グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は1μm~20μmである。
【0020】
いくつかの実施例において、前記グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は2μm~4μmである。
【0021】
いくつかの実施例において、前記負極シートはさらに、第2負極活物質層を含み、前記第2負極活物質層は第2負極活物質を含み、前記第2負極活物質はグラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、スズ系材料、チタン酸リチウム及びシリコン含有活物質のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
いくつかの実施例において、前記第2負極活物質はグラファイトである。
【0023】
第2態様によれば、本願は、
シリコン系材料、導電剤及びバインダーを負極ペーストに製造するステップと、
負極集電体の少なくとも1つの面に前記負極ペーストを塗布し、乾燥させて、第1負極活物質層を製造するステップと、を含み、
質量%で計算して、前記第1負極活物質層の成分は、30%~70%の前記シリコン系材料、15%~40%の前記バインダー及び15%~40%の前記導電剤を含む、負極シートの製造方法をさらに提供する。
【0024】
第3態様によれば、本願は、上記の負極シート又は上記の負極シートの製造方法に基づいて製造された負極シートを含む二次電池をさらに提供する。
【0025】
第4態様によれば、本願は、上記の二次電池を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0026】
第5態様によれば、本願は、上記の電池モジュールを含む電池パックをさらに提供する。
【0027】
第6態様によれば、本願は、上記の二次電池、上記の電池モジュール又は上記の電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。
【0028】
本願における1つ又は複数の実施例の詳細は、以下の図面及び説明に記載されており、本願の他の特徴、目的及び利点は明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本願の一実施形態に係る二次電池の概略図である。
【
図2】
図1に示した本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
【
図3】本願の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。
【
図4】本願の一実施形態に係る電池パックの概略図である。
【
図5】
図4に示す本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
【
図6】本願の一実施形態に係る二次電池を電源として用いる電力消費装置の概略図である。
【
図7】本願の実施例1に係る負極シートの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、aはシリコン系材料を示し、bは多孔質導電性ネットワークを示す。
【
図8】本願の比較例1に係る負極シートの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、cはシリコン系材料を示し、dは導電剤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書に開示される本発明の実施例及び/又は例をよりよく説明及び例証するために、1つ以上の図面を参照することができる。図面を説明するために使用される追加の詳細又は例は、開示された発明、現在説明されている実施例及び/又は例、さらには現在理解されているそれらの発明の最良の形態のいずれかの範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0031】
本願を理解しやすくするために、以下に関連する図面を参照して本願をより全面的に説明する。図面は、本願の好ましい実施例を示す。しかしながら、本願は多くの異なる形態で実現させることができ、本明細書に記載の実施例に限定されない。むしろ、これらの実施例を提供する目的は、本願の開示内容を詳細且つ全面的に理解させることにある。
【0032】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本願の明細書で使用される用語は、単に具体的な実施例を説明することが目的であり、本願を限定することを意図したものではない。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数の任意及びすべての組み合わせを含む。
【0033】
従来の二次電池の負極活物質として、炭素材料の容量はすでにその理論容量(372mAh/g)に近づいているため、二次電池の容量の増加は制限されている。シリコンは高い理論容量(4200mAh/g)を有することから、二次電池の容量を増加させる新世代の負極活物質として有望である。しかしながら、シリコン系材料は高い体積効果を有し、負極シートに用いられると、サイクル過程における大きな体積膨張が極性シートの膜剥離、粉落ち、しわなどの問題を引き起こし、性能の劣化は深刻である。そのため、ほとんどの場合炭素材料と混合することでのみ使用され、且つシリコン系材料の使用比率は大幅に制限され、シリコンの含有量は、一般的に15wt%以下である。
【0034】
本願の発明者らによる研究と発明の結果、30wt%~70wt%のシリコン系材料を含む負極活物質層を設置し、且つ負極活物質層におけるバインダー及び導電剤の使用量を増加させることにより、シリコンの充電過程における体積膨張を効果的に減少させ、負極シートの不可逆的な体積変化を減少させることができ、それにより負極シートは低いサイクル膨張率及び長いサイクル寿命を有する。また、負極活物質層におけるシリコンの含有量が多いため、負極シートのエネルギー密度を向上させることができる。
【0035】
本願は負極シート及びその製造方法と、該負極シートを使用した二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。このような二次電池は電池を使用する様々な電力消費装置に適用され、例えば、携帯電話、携帯機器、ノートパソコン、電気自動車、電動玩具、電動工具、電動車両、船舶及び宇宙機などであり、宇宙機は航空機、ロケット、スペースシャトル及びスペースシップなどを含む。
【0036】
本願の一実施形態によれば、負極集電体と、第1負極活物質層と、を含む負極シートを提供する。
【0037】
第1負極活物質層は負極集電体の少なくとも1つの面に設けられる。一例として、負極集電体は、それ自体の厚み方向に対向する2つの面を有し、第1負極活物質層は、負極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0038】
質量%で計算して、第1負極活物質層の成分は、30%~70%のシリコン系材料、15%~40%のバインダー及び15%~40%の導電剤を含む。
【0039】
上記負極シートは、第1負極活物質層の成分の合理的な配合比率により、負極シート中のシリコン系材料の充放電サイクルにおいて、体積膨張を小さくさせ、それにより負極シートの劣化を回避して、負極シートのサイクル膨張率及びサイクル寿命を改善する。
【0040】
好ましくは、第1負極活物質層の成分において、シリコン系材料の質量%は30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%又は70%である。さらに好ましくは、第1負極活物質層の成分において、シリコン系材料の質量%は45%~55%である。シリコン系材料の質量%が上記範囲内にあると、負極シートの総合的な性能がより良好となる。
【0041】
第1負極活物質層中に30%~70%の質量%でシリコン系材料が含まれるため、良好な機械的特性を保持するために、高い含有量のバインダーで充放電過程におけるシリコン系材料の体積膨張を抑制する必要がある。バインダーの含有量が少なすぎると、膨張抑制能力が相対的に弱くなり、バインダーの含有量が多すぎると、負極シートの導電性能に影響を及ぼし、極性シートの内部抵抗を増加させる。好ましくは、第1負極活物質層の成分において、バインダーの質量%は15%、20%、25%、30%、35%又は40%である。さらに好ましくは、第1負極活物質層の成分において、バインダーの質量%は18%~23%である。
【0042】
第1負極活物質層中のシリコン系材料及びバインダーの導電性能はいずれも低く、導電剤により負極シートの導電性能を改善し、負極シートの内部抵抗を低下させる必要がある。好ましくは、第1負極活物質層の成分において、導電剤の質量%は15%、20%、25%、30%、35%又は40%である。さらに好ましくは、第1負極活物質層の成分において、導電剤の質量%は25%~35%である。
【0043】
いくつかの実施例において、バインダー及び導電剤は多孔質導電性ネットワークを形成し、多孔質導電性ネットワークはシリコン系材料を被覆する。バインダー及び導電剤で形成された多孔質導電性ネットワークがシリコン系材料を被覆するため、充電過程におけるシリコン系材料の体積膨張を効果的に減少させることができ、且つバインダーの含有量が多いため、多孔質導電性ネットワークは良好な機械的特性を有し、その構造はシリコン系材料の膨張によって破壊されにくく、同時に放電過程で多孔質導電性ネットワークが収縮するため、負極シートの不可逆的な体積変化を大幅に減少させる。バインダー及び導電剤で形成された多孔質導電性ネットワークは高い導電性能をさらに有し、シリコン系材料及びバインダーの含有量が多いことによる内部抵抗が増加するという問題を効果的に改善することができる。また、多孔質導電構造はさらに電解液の浸潤を加速して、極性シートのイオン導電性を向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、第1負極活物質層の厚み方向に垂直な断面において、シリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比は1:(0.5~1.5)である。シリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比は、極性シートの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を分析することによって得られる。シリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比を上記範囲内に制御することにより、負極シートの不可逆的な体積変化が小さくなり、良好なサイクル安定性を有する。好ましくは、第1負極活物質層の厚み方向に垂直な断面において、シリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比は1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1.0、1:1.2、1:1.5である。さらに好ましくは、第1負極活物質層の厚み方向に垂直な断面において、シリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比は1:(1.1~1.5)である。
【0045】
いくつかの実施例において、シリコン系材料は単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金及びリチウムプレドープシリコン酸化物のうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
いくつかの実施例において、シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は1μm~15μmである。Dv50とは、体積分布の50%に相当する粒径を指す。例として、Dv50はGB/T 19077-2016粒度分布レーザー回折法を参照し、英国マルバーン社のMastersizer 2000E型レーザー粒度分析装置などのレーザー粒度分析装置を用いて容易に測定することができる。シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50を上記範囲に制御することにより、負極シートのペーストの製造を容易にする。シリコン系材料のDv50が小さすぎるとペーストの製造に不利であり、シリコン系材料のDv50が大きすぎるとその導電性能を悪化させる。好ましくは、シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm又は15μmである。さらに好ましくは、シリコン系材料の体積基準粒度分布Dv50は4μm~8μmである。
【0047】
いくつかの実施例において、バインダーはガラス転移温度≦25℃の可撓性バインダーを含む。ガラス転移温度が低い可撓性バインダーを選択して用いることにより、それは比較的広い温度範囲で高い弾性状態であることができ、高い弾性限界及び大きな破断伸びを有し、体積変化が大きいシリコン系材料と組み合わされて負極シートの体積膨張を効果的に制御することができる。
【0048】
いくつかの実施例において、可撓性バインダーはスチレンブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴム、アクリル系化合物及びブタジエンのうちの少なくとも1つを含む。具体的には、アクリル系化合物は、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸ラウリルから選択される少なくとも1つを含む。
【0049】
いくつかの実施例において、バインダーはガラス転移温度>25℃の硬質バインダーをさらに含む。ガラス転移温度が25℃より高い硬質バインダーは強度が高く、シリコン系材料の膨張と粉化を大幅に抑制することができ、且つ負極シートは適切な柔軟性を有するので、第1負極活物質層に亀裂や膜剥離が生じない。
【0050】
いくつかの実施例において、硬質バインダーはポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
いくつかの実施例において、質量%で計算して、バインダーは90%~100%の可撓性バインダー、及び0~10%の硬質バインダーを含む。バインダーの配合比を上記範囲内に制御することにより、負極シートのサイクル膨張率が低く、サイクル特性がより良好である。
【0052】
いくつかの実施例において、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含む。
【0053】
より好ましくは、導電剤はグラファイト、導電性カーボンブラック及びカーボンナノチューブを含む。導電性カーボンブラックは良好な導電性能を有するだけでなく、リチウムの挿入と脱離にも関与する。カーボンナノチューブは優れた導電性能を有し、且つ大きなアスペクト比を有し、シリコン系材料との導電接触を改善する。グラファイトも同様に優れた導電性能を有し、且つコストが相対的に低い。グラファイト、導電性カーボンブラック及びカーボンナノチューブを導電剤として選択し用いることにより、負極シートの体積膨張を改善すると同時に負極シートの導電性能を保証することに有利である。
【0054】
グラファイトは良好な導電性能及び電気的、化学的特性を有し、且つコストが低く、主な導電剤として使用することができる。いくつかの実施例において、導電剤において、グラファイトの質量%は85%~97%である。
【0055】
導電性カーボンブラックは充放電過程においてリチウムの挿入と脱離に関与するが、可逆的部分は20%を超えないため、導電性カーボンブラックの含有量が多すぎる負極シートのサイクル特性に影響を与える。いくつかの実施例において、導電剤において、導電性カーボンブラックの質量%は1%~14%である。
【0056】
カーボンナノチューブは全体が線形構造を呈し且つ管径が10nm未満であるため、カーボンナノチューブの使用量が多すぎるとペーストの製造に影響を及ぼし、加工性能に劣る。いくつかの実施例において、導電剤において、カーボンナノチューブの質量%は0.5%~6%である。
【0057】
発明者らの研究の結果、導電剤におけるグラファイトの体積基準粒度分布の大きさは、負極シートの導電性能に著しく影響し、グラファイトの体積基準粒度分布が大きいと、負極シートの電気抵抗が相対的に高くなり、グラファイトの体積基準粒度分布が小さいと、導電性能が良好な多孔質導電性ネットワークの形成に有利であり、負極シートの電気抵抗は相対的に低くなることが分かった。いくつかの実施例において、グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は1μm~20μmである。好ましくは、グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は1μm、3μm、5μm、8μm、10μm、12μm、15μm、16μm、18μm又は20μmである。さらに好ましくは、グラファイトの体積基準粒度分布Dv50は2μm~4μmである。
【0058】
いくつかの実施例において、質量%で計算して、第1負極活物質層の成分は0.5%~2%の分散剤をさらに含む。分散剤は第1負極活物質層におけるシリコン系材料、バインダー及び導電剤の分散分布を改善することができる。好ましくは、第1負極活物質層の成分において、分散剤の質量%は0.5%、0.7%、1%、1.3%、1.5%、1.8%又は2%である。さらに好ましくは、第1負極活物質層の成分において、分散剤の質量%は0.8%~1.2%である。
【0059】
いくつかの実施例において、分散剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)のうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
いくつかの実施例において、負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えば銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材の少なくとも1つの面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金などの金属材料を、高分子材料基材上に形成することにより形成することができる。高分子材料基材は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などを含む基材から選択される。
【0061】
いくつかの実施例において、負極シートは、好ましくは、第2負極活物質層をさらに含み、
第2負極活物質層は第2負極活物質を含み、第2負極活物質はグラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、スズ系材料、チタン酸リチウム及びシリコン含有活性材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
具体的には、第2負極活物質層において、シリコン含有活性材料の質量%は<30%である。
【0063】
好ましくは、第2負極活物質はグラファイトである。
【0064】
いくつかの実施例において、第2負極活物質層は第1負極活物質層と負極集電体との間に設けられ、又は、第2負極活物質層は第1負極活物質層の負極集電体から離れた面に設けられる。好ましくは、第2負極活物質層は第1負極活物質層の負極集電体から離れた面に設けられる。第2負極活物質層が第1負極活物質層の負極集電体から離れた面に設けられることにより、負極シートのサイクル膨張率をより低下させ、且つ電池のサイクル特性を改善することができる。
【0065】
理解されるように、第2負極活物質層の数は少なくとも1つであり、少なくとも1つの第2負極活物質層は、第1負極活物質層の負極集電体から離れた面に設けられる。一例として、第2負極活物質層の数がnで、n=1である場合、第1負極活物質層は集電体の表面に設けられ、第2負極活物質層は第1負極活物質層の負極集電体から離れた面に設けられ、n>1である場合、第1負極活物質層の負極集電体から離れた面に少なくとも1つの第2負極活物質層が設けられる。上記構造とすることで、第1負極活物質層が負極シートの外面に設けられることを回避して、負極シートのサイクル膨張率をより低下させ、負極シートのサイクル特性を改善することができる。
【0066】
いくつかの実施例において、第2負極活物質層は、好ましくはバインダーをさらに含む。バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0067】
いくつかの実施例において、第2負極活物質層は、好ましくは導電剤をさらに含む。導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0068】
いくつかの実施例において、第2負極活物質層は、好ましくは、増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を含む。
【0069】
本願の別の実施形態は、以下のステップS1~S2を含む負極シートの製造方法をさらに提供する。
【0070】
ステップS1では、シリコン系材料、導電剤及びバインダーを負極ペーストに製造する。
【0071】
いくつかの実施例において、ステップS1は具体的に、シリコン系材料、導電剤及び分散剤(分散剤総量の30wt%~50wt%)を真空撹拌機で均一に乾燥混合した後、脱イオン水を加えて均一に混錬し、次いで残りの分散剤と脱イオン水を加えて真空下で均一に撹拌し、さらにバインダーを加えて真空下で均一に撹拌して、負極ペーストを得る。
【0072】
ステップS2では、負極集電体の少なくとも1つの面に負極ペーストを塗布し、乾燥させて、第1負極活物質層を製造する。質量%で計算して、第1負極活物質層の成分は、30%~70%のシリコン系材料、15%~40%のバインダー及び15%~40%の導電剤を含む。
【0073】
いくつかの実施例において、第1負極活物質層の成分は0.5%~2%の分散剤をさらに含む。
【0074】
いくつかの実施例において、ステップS2の塗布、乾燥処理は具体的に、負極ペーストを1m/min~4m/minの速度で負極集電体上に押し出して塗布し、次いで80℃~120℃で10min~20min焼成する。
【0075】
以下、適宜図面を参照して、本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置について説明する。
【0076】
本願の一実施形態において、二次電池を提供する。
【0077】
一般的に、二次電池は正極シート、負極シート、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすと同時に、イオンを通過させることができる。
【0078】
負極シート
負極シートは、負極集電体と、負極活物質を含み負極集電体の少なくとも1つの面に設置された負極活物質層と、を含む。本願の実施形態において、負極シートは上記第1態様が提供する負極シートを用いる。
【0079】
正極シート
正極シートは、正極集電体と、正極活物質を含み正極集電体の少なくとも1つの面に設置された正極活物質層と、を含む。
【0080】
一例として、正極集電体は、その厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極活物質層は、正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0081】
いくつかの実施例において、正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0082】
いくつかの実施例において、正極活物質は本分野で公知の電池用正極活物質を使用することができる。一例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物、及びそれらのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1つを含んでもよい。しかし、本願はこれらの材料に限定されず、電池の正極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム遷移金属酸化物の例はリチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(略称NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(略称NCM523)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(略称NCM211)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(略称NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(略称NCM811))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその改質化合物等のうちの少なくとも1つが含まれてもよいが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩としては、例えば、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(略称LFP))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも1つが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施例において、正極活物質層は、好ましくはバインダーをさらに含む。一例として、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0084】
いくつかの実施例において、正極活物質層は、好ましくは導電剤をさらに含む。一例として、導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0085】
いくつかの実施例において、以下の方法で正極シートを製造することができる。上記正極シートを製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極ペーストを形成し、正極ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等のステップを経て、正極シートを得ることができる。
【0086】
電解質
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は電解質の種類を特に限定せず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は液体、ゲル又は完全な固体であってもよい。
【0087】
いくつかの実施例において、電解質は電解液を使用する。電解液は電解質塩及び溶媒を含む。
【0088】
いくつかの実施例において、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロオキサレートボレート、リチウムビスオキサレートボレート、リチウムジフルオロオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェートのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0089】
いくつかの実施例において、溶媒はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1、4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、及びジエチルスルホンのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0090】
いくつかの実施例において、電解液は、好ましくは添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤が含まれていてもよく、さらに、電池の特定の特性を改善することができる添加剤、例えば、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温又は低温特性を改善する添加剤などが含まれていてもよい。
【0091】
セパレータ
いくつかの実施例において、二次電池はセパレータをさらに含む。本願はセパレータの種類を特に制限せず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0092】
いくつかの実施例において、セパレータの材質はガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つから選択することができる。セパレータは単層フィルムであっても多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同一でも異なっていてもよく、特に限定されない。
【0093】
いくつかの実施例において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスを介して電極アセンブリに製造することができる。
【0094】
いくつかの実施例において、二次電池は外装材を含むことができる。 該外装材は上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いられる。
【0095】
いくつかの実施例において、二次電池の外装材は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装材は、パウチ型ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0096】
本願は二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0097】
いくつかの実施例において、
図2を参照すると、外装材は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続された側板を含み、底板及び側板で囲まれた収容キャビティが形成される。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は開口をカバーして、収容キャビティを密閉することができる。正極シート、負極シート及びセパレータから捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は収容キャビティ内に封入される。電解液は電極アセンブリ52内に含浸している。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際の要件に応じて選択することができる。
【0098】
いくつかの実施例において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0099】
図3は一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5を電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方法で配置してもよい。また、該複数の二次電池5は締結具によって固定することができる。
【0100】
好ましくは、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外ケースをさらに備えてもよい。
【0101】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0102】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1である。
図4及び
図5を参照すると、電池パック1は、電池ケース及び電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ケースは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に被せることができ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ケース内に配置することができる。
【0103】
また、本願は、本願に係る二次電池、電池モジュール又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。二次電池、電池モジュール又は電池パックは、電力消費装置の電源として使用されてもよく、電力消費装置のエネルギー貯蔵要素として使用されてもよい。電力消費装置はモバイル機器、電動車両、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むことができるが、これらに限定されない。モバイル機器は、例えば携帯電話、ノートパソコンなどであってもよく、電動車両は、例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0104】
電力消費装置として、二次電池、電池モジュール又は電池パックをその使用要件に応じて選択することができる。
【0105】
図6は、一例としての電力消費装置6である。該電力消費装置6は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。 該電力消費装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0106】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般的に軽量薄型化が求められており、電源として二次電池を用いることができる。
【0107】
実施例
以下、本願の実施例について説明する。 以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものと理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が示されていない場合、本分野の文献に記載された技術又は条件に従って、又は製品の説明書に従って実行される。使用した試薬又は機器にメーカーが記載されていない場合、いずれも市販の一般的な製品である。
【0108】
実施例1:
実施例1の負極シートの製造:一酸化シリコン(SiO)、バインダー、分散剤(CMC-Na)、導電剤を45%:20.4%:1.2%:33.4%の質量比で脱イオン水の中で十分に撹拌混合して、負極ペーストを製造する。一酸化シリコンのDv50は6.8μmであり、バインダーは質量比94%:6%のスチレンブタジエンゴム(SBR)とポリアクリル酸(PAA)である。導電剤は質量比96.1%:3%:0.9%の人造グラファイト、導電性カーボンブラック(Super-P、SP)及びカーボンナノチューブ(CNT)であり、人造グラファイトのDv50は3.5μmである。上記のペーストを、押し出し塗布により厚みが8μmの銅集電体上に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、切断を経て、圧粉密度が1.65g/cm3、塗布重量が5.19mg/cm2の負極シートを得る。
【0109】
図7を参照すると、これは実施例1の負極シートの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、第1負極活物質層のシリコン系材料(a)及び多孔質導電性ネットワーク(b)が観察でき、多孔質導電性ネットワークは豊富な細孔構造を有し、且つシリコン系材料の粒子は多孔質導電性ネットワーク内に分散している。
【0110】
実施例1~25及び比較例1~4の負極シートの組成配合比は表1に記録されている。
【0111】
【0112】
実施例2~7:
実施例2~7の負極シートが実施例1と異なる点は、一酸化シリコン、バインダー及び導電剤の質量比が異なることである。
【0113】
実施例8:
実施例8が実施例1と異なる点は、バインダーが質量比90%:10%のスチレンブタジエンゴム(SBR)とポリアクリル酸(PAA)であることである。
【0114】
実施例9:
実施例9が実施例1と異なる点は、バインダーがスチレンブタジエンゴム(SBR)であることである。
【0115】
実施例10:
実施例10が実施例1と異なる点は、バインダーが質量比80%:20%のスチレンブタジエンゴム(SBR)とポリアクリル酸(PAA)であることである。
【0116】
実施例11~13:
実施例11~13が実施例1と異なる点は、一酸化シリコンのDv50が異なることである。
【0117】
実施例14~16:
実施例14~16が実施例1と異なる点は、導電剤における人造グラファイトのDv50が異なることである。
【0118】
実施例17:
実施例17が実施例1と異なる点は、導電剤が3.5μmの人造グラファイトであることである。
【0119】
実施例18:
実施例18が実施例1と異なる点は、導電剤が導電性カーボンブラック(Super-P、SP)であることである。
【0120】
実施例19~23:
実施例19~23が実施例1と異なる点は、導電剤における人造グラファイト、導電性カーボンブラック(Super-P、SP)及びカーボンナノチューブ(CNT)の配合比が異なることである。
【0121】
実施例24:
実施例24の負極シートの製造:
第1負極ペースト:一酸化シリコン、バインダー、分散剤(CMC-Na)、導電剤を45%:20.4%:1.2%:33.4%の質量比で脱イオン水の中で十分に撹拌混合して、第1負極ペーストを製造する。一酸化シリコンのDv50は6.8μmであり、バインダーは質量比94%:6%のスチレンブタジエンゴム(SBR)とポリアクリル酸(PAA)である。導電剤は質量比96.1%:3%:0.9%の人造グラファイト、導電性カーボンブラック(Super-P、SP)及びカーボンナノチューブ(CNT)であり、人造グラファイトのDv50は3.5μmである。
【0122】
第2負極ペースト:人造グラファイト、バインダー(SBR)、分散剤(CMC-Na)、導電性カーボンブラック(Super-P、SP)を96.2%:1.8%:1.2%:0.8%の質量比で脱イオン水の中で十分に撹拌混合して、第2負極ペーストを製造し、人造グラファイトのDv50は14.3μmである。
【0123】
ダブルキャビティ押し出し塗布装置を利用して、第1負極ペーストを厚みが8μmの銅集電体上に均一に塗布して第1負極活物質層を形成し、同時に第2負極ペーストを第1負極活物質層の上に均一に塗布して第2負極活物質層を形成し、乾燥、冷間プレス、切断を経て、圧粉密度が1.65g/cm3、塗布重量が8.37mg/cm2の負極シートを得て、一酸化シリコンの負極シート活物質層に占める質量比は15%である。
【0124】
実施例25:
実施例25が実施例24と異なる点は、実施例24の第2負極ペーストを集電体上に塗布して一層の第2負極活物質層を形成し、実施例24の第1負極ペーストを第2負極活物質層上に塗布して第1負極活物質層を形成し、成分は変更せず、一酸化シリコンの極性シート塗布層に占める質量比は15%であることである。
【0125】
比較例1:
比較例1が実施例1と異なる点は、バインダーが占める質量比が2.3%で、導電剤が占める質量比が51.5%であり、SBRとPAAとの質量比が65.2%:34.8%であることである。比較例1の負極シートの組成は、従来のシリコン含有負極シートの一般的な配合比率である。
【0126】
図8を参照すると、これは比較例1の負極シートの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、第1負極活物質層におけるシリコン系材料(c)及び導電剤(d、主にグラファイト)が観察でき、少量のバインダーが第1負極活物質層に分散しておりその分布を観察することは困難であり、実施例1の負極シートと異なり、比較例1の負極シートにおける導電剤はブロック状を呈して分布しており、多孔質構造は観察できない。
【0127】
比較例2:
比較例2が実施例1と異なる点は、バインダーが占める質量比が48.8%であり、導電剤が占める質量比が5%であることである。
【0128】
比較例3:
比較例3が実施例1と異なる点は、一酸化シリコンが占める質量比が15%で、バインダーが占める質量比が2.3%で、導電剤が占める質量比が81.5%であり、SBRとPAAとの質量比が65.2%:34.8%であることである。
【0129】
比較例4:
比較例4が実施例24と異なる点は、集電体の表面に設けられた第1負極ペーストが比較例1のペーストの組成であり、その他の成分は変更せず、一酸化シリコンの極性シート活物質層に占める質量比は15%であることである。
【0130】
正極シートの製造:
正極活物質のLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤のアセチレンブラックを質量比97%:1.5%:1.5%で溶媒のN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、十分に撹拌し均一に混合して正極ペーストを製造し、正極ペーストを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、その後乾燥、冷間プレス、切断を経て正極シートを得る。
【0131】
セパレータ:ポリプロピレンフィルムを用いる。
【0132】
電解液の製造:
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合し、次いでLiPF6を上記溶液に均一に溶解させて、電解液を得る。該電解液において、LiPF6の濃度は1mol/Lである。
【0133】
二次電池の製造:
正極シート、セパレータ、負極シートを順にラミネートし且つ捲回して、電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装材の中に入れて、上記製造された電解液を加え、封入、静置、化成、エージングなどのプロセスを経て二次電池を得る。
【0134】
試験の部:
負極シートのイオンミリングによる断面形状の分析(CP):
アルゴンガスをイオン化してアルゴンイオンを生成し、加速集束を経た後にサンプル表面の原子又は分子を衝突させ、イオンミリングを実現して、負極シートの断面サンプルを製造する。走査型電子顕微鏡(SEM)(ZEISS Sigma 300など)を使用して、負極シートの断面を撮影する。参照標準:JY/T010-1996《分析型走査型電子顕微鏡方法通則》。単位面積当たりの画像におけるシリコン系材料の占める面積比を分析して計算し、残りの部分を多孔質導電性ネットワークとすることにより、シリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比を計算する。
【0135】
二次電池の内部抵抗試験:
二次電池の内部抵抗は電池内部抵抗測定装置(安柏社の型番ATS21)により測定する。電池内部抵抗測定装置のプローブを二次電池の両側の極性カラムに5s挟んだ後、測定装置の数字が安定してから、抵抗値を読み取る。
【0136】
二次電池の45℃におけるサイクル特性試験:
二次電池に、45℃の恒温環境において、レート1Cで、電圧が4.25Vになるまで定電流充電し、さらに4.25Vの電圧で電流が0.05C以下になるまで定電圧充電した後、5min静置し、次いでレート1Cで、電圧が2.5Vになるまで定電流放電し、5min静置し、これが1サイクルの充放電過程であり、この時の放電容量を二次電池の1回目のサイクルの放電容量として記録する。二次電池に、上記方法に従って、セル容量が80%に減衰するまでサイクル充放電試験を行い、サイクル数を記録する。
【0137】
二次電池の45℃における極性シートの満充電サイクル膨張性能試験:
二次電池の負極シートの冷間プレス工程が完了した時のシート厚みをh0と記し、上記二次電池の45℃におけるサイクル特性試験方法に基づき、二次電池を100サイクルさせ、レート1Cで4.25Vになるまで定電流充電し、さらに4.25Vの電圧で電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、5min静置し、この時にセルは満充電状態であり、次いで乾燥室内でサイクル後のセルを分解し、100サイクル後の負極シートの厚みをh100満充と記し、二次電池の45℃における極性シートの100サイクル満充電サイクル膨張率Δh100満充(%)=(h100満充-h0)/h0*100%である。
【0138】
二次電池の45℃における極性シートの不可逆的サイクル膨張性能試験:
二次電池の負極シートの冷間プレス工程が完了した時のシート厚みをh0と記し、上記二次電池の45℃におけるサイクル特性試験方法に基づき、二次電池を100サイクルさせ、レート0.1Cで2.5Vになるまで放電した後、5min静置し、次いで乾燥室内でサイクル後のセルを分解し、100サイクル後の負極シートの厚みをh100満放と記し、二次電池の45℃における極性シートの100サイクル不可逆的サイクル膨張率Δh100不可逆(%)=(h100満放-h0)/h0*100%である。
【0139】
【0140】
表2の関連データから分かるように、実施例1~22の二次電池において、負極シート断面上のシリコン系材料と多孔質導電性ネットワークとの面積比は1:(0.8~1.5)であり、二次電池の内部抵抗は6mΩ~8mΩであり、容量が80%まで減衰した時のサイクル数は427~720、100サイクルにおける満充電サイクル膨張率は71%~150.1%、100サイクルにおける不可逆的サイクル膨張率は14%~33.2%である。
【0141】
比較例1における二次電池の内部抵抗は6.3mΩであり、容量が80%まで減衰した時のサイクル数は312、100サイクルにおける満充電サイクル膨張率は189%、100サイクルにおける不可逆的サイクル膨張率は106%である。比較例1における従来のシリコン含有負極シートと比較して、実施例1~22の負極シートの組成による二次電池は比較例1に近い内部抵抗を有し、サイクル特性は比較例1の二次電池より優れており、且つ満充電充サイクル膨張率及び不可逆的サイクル膨張率はいずれも比較例1よりも低く、これは実施例1~22で用いられた本願が提供する負極シートが、負極シートのサイクル膨張を効果的に制御できることを示しており、且つ不可逆的サイクル膨張率がより低いことは、負極シートにおけるシリコンの体積膨張が負極シートに及ぼす不可逆的劣化が小さいことを示しており、従って実施例1~22の二次電池は良好なサイクル特性を有する。
【0142】
実施例23の負極ペーストにおけるCNTは含有量が多く、負極ペーストの製造に用いると、ペーストが分散しにくく、負極シートの製造には不利である。
【0143】
実施例24~25の二次電池において、二次電池の内部抵抗は6.4mΩ~6.5mΩであり、容量が80%まで減衰した時のサイクル数は818~1123、100サイクルにおける満充電サイクル膨張率は48.1%~48.4%、100サイクルにおける不可逆的サイクル膨張率は9.8%~10.2%である。負極シートにおいて、シリコンを含む第1負極活物質層と純グラファイトの第2負極活物質層を複合することにより、二次電池のサイクル膨張率がより低く、サイクル特性が良好であり、特に、実施例24はシリコンを含む第1負極活物質層が負極集電体と第2負極活物質層との間に設けられ、サイクル特性がより良好である。
【0144】
実施例1と比較して、比較例2の負極シートでは、バインダーの質量含有量が48.8%に達し、比較例1の二次電池に対しても、比較例2の二次電池のサイクル膨張率(満充電サイクル膨張率及び不可逆的サイクル膨張率)は明らかに上昇するが、バインダーの含有量が多すぎるため、二次電池の内部抵抗が大きくなり、サイクル特性に劣る。
【0145】
比較例3の負極シートにおいて導電剤(主にグラファイト)を用いて一酸化シリコンの一部を代替し、バインダーの配合比率は比較例1と同じであり、実施例24又は25の負極シートと同じ一酸化シリコン含有量を有するが、サイクル膨張率は実施例24又は25より明らかに高く、サイクル特性も実施例24又は25より低い。
【0146】
比較例4と実施例24との相違点は第1負極活物質層の配合比率が異なることであり、比較例4の二次電池容量が80%まで減衰した時のサイクル数は453、100サイクルにおける満充電サイクル膨張率は84.3%、100サイクルにおける不可逆的サイクル膨張率は43.1%である。以上から分かるように、負極シートが2層の活物質層構造である場合、従来のシリコン含有活物質層の配合比率で製造された第1負極活物質層は体積膨張が顕著であり、純グラファイト負極活物質層と複合すると、比較例1の二次電池に比較して、サイクル特性は改善されるが、実施例24より明らかに劣る。
【0147】
上記実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴のすべての可能な組み合わせを説明しないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、いずれも本明細書に記載された範囲とみなされるべきである。
【0148】
上記実施例は本願のいくつかの実施形態を示すものに過ぎず、その説明は具体的かつ詳細であるが、これにより発明の特許請求の範囲を限定するものと理解すべきではない。指摘すべきこととして、当業者であれば、本願の概念から逸脱しない前提で、さらにいくつかの変更及び改良を行うことができ、それらもすべて本願の保護範囲とみなされるべきである。従って、本願の特許の保護範囲は添付の特許請求の範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0149】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
6 電力消費装置