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特許7640728物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法、修繕装置及び修繕システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法、修繕装置及び修繕システム
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/14 20060101AFI20250226BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20250226BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20250226BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20250226BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
B05D7/14 S
B05C9/10
B05C11/00
B05D3/06 Z
B05D3/10 F
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2023554376
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022055603
(87)【国際公開番号】W WO2022189299
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】102021202380.0
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009438
【氏名又は名称】グラット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Glatt GmbH
【住所又は居所原語表記】Werner-Glatt-Str. 1, D-79589 Binzen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ノーヴァク・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】グリーマン・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クレブス・エックハルト
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0362827(US,A1)
【文献】特開2020-186556(JP,A)
【文献】特開2003-266036(JP,A)
【文献】特開2018-001199(JP,A)
【文献】特開2018-013101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 1/00-21/00
B23P 6/00-6/04
F03D 80/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
修繕装置(1)を用いて物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法であって、
a)前記腐食損傷を有する前記表面をレーザなしにプレクリーニングし、
b)前記腐食損傷を有する前記表面をレーザクリーニングし、当該レーザクリーニングは、前記表面の、選択的な、負荷の少ない、孔の奥までの、かつ傷を付けないクリーニングとして、腐食した材料からなる層の、レーザビームによる蒸発又は焼灼による前記表面からの除去を含み、
c)前記レーザクリーニングにより処理した前記表面に保護層をコーティングする、
方法ステップを含む、物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法。
【請求項2】
前記腐食損傷を有する前記表面の前記プレクリーニングは、前記表面のラフクリーニング及び/又は脱塩及び/又は乾燥を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラフクリーニングを、化学的なクリーニング剤により、又はブラシユニットを用いた機械的なクリーニングとして実施することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱塩を脱イオン水により実施する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱塩後、前記腐食損傷を有する前記表面上の可溶性の塩の濃度測定を実施することを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記可溶性の塩の前記濃度測定をブレスル法により実施することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面の前記乾燥を油分を含まない圧縮空気により実施することを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記腐食損傷を有する前記表面の前記プレクリーニング後、前記表面を少なくとも部分的に、材料を取り去る表面後処理にかけることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記表面から、形成されているエッジを取り去ることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記腐食損傷を有する前記表面の前記レーザクリーニングは除去された前記腐食し材料の吸引含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザクリーニング後、レーザビームにより加工した前記表面の表面粗さの検査を実施することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記表面粗さの前記検査のために、レーザクリーニングした前記表面の少なくとも一部分の印象を製作し、前記印象の表面粗さを分析することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
レーザクリーニングした前記表面の、前記印象のために使用した前記部分のみ、前記印象の前記製作後、再クリーニングすることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記再クリーニングをアルコールにより実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記保護層を、前記レーザクリーニングにより処理した前記表面上に、単層又は複層で塗工することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
インサイチュ法として実施することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
風力原動機により形成される物体(2)の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するのに使用することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法を実施する前記修繕装置(1)を前記風力原動機に着脱自在取り付けることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
物体(2)の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する修繕装置(1)であって、エンドエフェクタ(9,24)を受けるのに適した方向付け装置(10)を有する担体装置(7)を備え、前記方向付け装置(10)は、前記方向付け装置(10)に配置される前記エンドエフェクタ(9,24)を移動及び/又は旋回させることができるようにするのに適しており、前記担体装置(7)は、保持装置(8)を有し、前記保持装置(8)により、前記担体装置(7)は、前記エンドエフェクタ(9,24)を受ける前記方向付け装置(10)が前記腐食損傷の領域に位置決めされているように、前記物体(2)に位置が動かないようにして取り付け可能である、物体(2)の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する修繕装置(1)。
【請求項20】
前記エンドエフェクタ(9)は、前記方向付け装置(10)に着脱自在に配置されており、これにより、別のエンドエフェクタ(24)との交換を可能にすることができることを特徴とする、請求項19に記載の修繕装置(1)。
【請求項21】
前記保持装置(8)は、前記担体装置(7)を前記物体(2)に着脱自在に取り付ける取り付け装置(11)を有することを特徴とする、請求項19又は20に記載の修繕装置(1)。
【請求項22】
前記取り付け装置(11)は、前記担体装置(7)を前記物体(2)に磁気式に取り付ける永久磁石式の磁石装置(13)として形成されていることを特徴とする、請求項21に記載の修繕装置(1)。
【請求項23】
前記保持装置(8)は、基体(14)を有し、前記基体(14)には、前記取り付け装置(11)と、前記方向付け装置(10)を担持する担体アーム(15)とが配置されていることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
【請求項24】
前記担体アーム(15)は、前記保持装置(8)の前記基体(14)に旋回可能に、かつ様々な旋回位置(16)で固定可能に配置されていることを特徴とする、請求項23に記載の修繕装置(1)。
【請求項25】
前記方向付け装置(10)は、可動に前記担体アーム(15)に配置されるエンドエフェクタ担体(18)と、位置決め手段(19)とを有し、前記位置決め手段(19)により、前記エンドエフェクタ担体(18)は、前記担体アーム(15)に対して相対的に可動かつ方向付け可能であることを特徴とする、請求項19から24のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
【請求項26】
前記エンドエフェクタ(9,24)は、レーザ装置(25)としてかつ/又はプレクリーニング装置(33)としてかつ/又はコーティング装置(39)としてかつ/又は乾燥装置としてかつ/又はレーザクリーニングした表面の少なくとも一部分の印象の製作のための印象採得装置としてかつ/又は処理した表面上に塗工した保護層の層厚さを求めるための層厚さ測定装置(42)として形成されていることを特徴とする、請求項19から25のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
【請求項27】
前記レーザ装置(25)は、レーザヘッド(29)とレーザ源とを有し、前記レーザ源は、光伝達装置(30)により前記レーザヘッド(29)に接続されていることを特徴とする、請求項26に記載の修繕装置(1)。
【請求項28】
前記レーザ装置(25)は、前記腐食を除去する際に生じる腐食した材料を吸引する吸引装置(31)を有することを特徴とする、請求項26又は27に記載の修繕装置(1)。
【請求項29】
前記プレクリーニング装置(33)は、ラフクリーニングユニット(34)及び/又は脱塩ユニット(35)及び/又は乾燥ユニット(37)及び/又は可溶性の塩の濃度測定のための濃度測定ユニット(36)を有することを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
【請求項30】
前記修繕装置(1)は、前記修繕装置(1)を開ループ及び/又は閉ループ制御する制御装置(32)を備えることを特徴とする、請求項19から29のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
【請求項31】
修繕システム(3)であって、請求項19から30のいずれか一項に記載の修繕装置(1)と、風力原動機とを備え、前記修繕装置(1)は、前記風力原動機に着脱自在に取り付けられている、修繕システム(3)。
【請求項32】
前記修繕装置(1)は、前記風力原動機のロータブレーキ装置(6)のブレーキキャリパ(4)取り付けられていることを特徴とする、請求項31に記載の修繕システム(3)。
【請求項33】
前記修繕装置(1)は、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法を実施するのに用いられることを特徴とする、請求項31又は32に記載の修繕システム(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法、修繕装置及び修繕システムに関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる種類の物体、特に風力原動機において、物体の気象に曝される表面に、腐食に起因する損傷が生じることがよくある。腐食に起因する損傷は、対応する物体の利用が妨げられてしまうことに至らしめる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、物体における腐食損傷を取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、冒頭で挙げた形態の方法において、修繕装置を用いて、a)腐食損傷を有する表面をレーザなしにプレクリーニングし、b)腐食損傷を有する表面をレーザクリーニングし、c)レーザクリーニングにより処理した表面に保護層をコーティングする、という方法ステップを実施することにより解決される。意想外に判明したことは、本方法により、保護層として、物体の、レーザクリーニングにより処理した表面上に塗工したコーティングが、より高品質であり、ひいてはより長寿命であることである。
【0005】
腐食損傷とは、一方では、物体、特に風力原動機の気象に曝される表面に腐食が形成され、他方では、例えば何らかの不具合をもったコーティングが表面上に塗工されていることと解すべきである。腐食損傷の修繕は、今や、腐食した材料及び/又は何らかの不具合をもって被着されたコーティングを取り去ることにある。
【0006】
方法のこれに関する一発展形によれば、腐食損傷を有する表面のプレクリーニングは、表面のラフクリーニング及び/又は脱塩及び/又は乾燥を含む。
【0007】
ラフクリーニングを、合目的的には、化学的なクリーニング剤、例えば水溶性の界面活性剤により、又は機械的なクリーニングにより、例えばブラシユニットを用いて実施する。ラフクリーニングにより、例えば油分を含む汚損、摩耗部品から結果として生じる汚損、塩害による汚損及び異物によるその他の汚損を、腐食損傷を有する表面からクリーニングする。
【0008】
脱塩を、好ましくは、脱イオン水により実施する。脱イオン水は、以下では、脱塩水又は蒸留水も指すものとする。方法の別の一発展形に応じて、脱塩後、腐食損傷を有する表面上の可溶性の塩の濃度測定を実施する。
【0009】
可溶性の塩の濃度測定をブレスル法により実施する。気象に曝される表面を保護する場合、コーティング前に、表面は、塩害による汚損について検査されなければならない。塩害による汚損は、コーティングの付着及び品質を著しく損ねてしまうことがある。塩イオンの濃度に依存した水の導電率の上昇に基づくブレスル法は、ISO規格8502-6及び8502-9に従い、この検査のための標準である。
【0010】
表面の乾燥を、好ましくは、油分を含まない圧縮空気により実施する。これにより、ラフクリーニング及び/又は脱塩の残渣を、腐食損傷を有する表面から取り除く。
【0011】
方法の付加的な有利な一構成によれば、腐食損傷を有する表面のプレクリーニング後、この表面を少なくとも部分的に、材料を取り去る表面後処理にかける。この表面後処理時、合目的的には、表面から、形成されているエッジを取り去る。この準備措置も、塗工される保護層の、表面上への改善された付着に役立ち、これにより、より高品質かつより長寿命のコーティングに至る。
【0012】
別の有利な一構成によれば、腐食損傷を有する表面のレーザクリーニングは、腐食した材料の、レーザビームによる除去と、除去された腐食した材料の吸引とを含む。レーザクリーニングは、特別に構成されたクラス4の固体レーザにより実施され、短いレーザパルスが、集束されてクリーニングすべき表面に衝突する。腐食した材料からなる層は、少なくとも部分的に吸収されるレーザ放射により、クリーニングすべき表面から取り去られる。レーザクリーニングは、腐食損傷を有する表面の、選択的な、負荷の少ない、孔の奥までの、かつ傷を付けないクリーニングを可能にする。除去された腐食した材料の、同時に実施される吸引は、腐食損傷を有する表面の、実質的に残渣フリーのクリーニングに至る。
【0013】
好ましくは、レーザクリーニング後、レーザビームにより加工した表面の表面粗さの検査を実施する。表面粗さの検査のために、レーザクリーニングした表面の少なくとも一部分の印象を製作し、印象の表面粗さを分析する。印象の製作後、レーザクリーニングした表面の、印象のために使用した部分のみ、再クリーニングする。再クリーニングをアルコール、合目的的にはプロパン-2-オールにより実施する。表面粗さの検査は、コーティングのために処理した表面の、通例は後置される評価、ひいては、塗工した保護層の品質及び寿命の査定を可能にする。
【0014】
さらに、方法の好ましい一構成では、保護層を、レーザクリーニングにより処理した表面上に、単層又は複層で塗工する。例えば複層の保護層は、塗工したコーティングの品質及び寿命のさらなる改善を可能にする。この場合、コーティングを気象の要件に適合させるべく、層厚さの異なる様々な層が実現されてもよい。
【0015】
本方法を、合目的的には、インサイチュ法として実施する。
【0016】
好ましくは、本方法を、風力原動機、特に洋上風力原動機により形成される物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するのに使用する。本方法を実施する修繕装置を風力原動機に着脱自在に、特に風力原動機のロータブレーキ装置のブレーキキャリパに、特に永久磁石の磁力により取り付ける。洋上風力原動機の場合、海水を含む気象に基づき、腐食損傷が起こることがよくあるので、本方法は、特に、風力原動機、特に洋上風力原動機の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するのに、ここでは最適に使用可能である。
【0017】
さらに上記課題は、冒頭で挙げた形態の修繕装置において、修繕装置が、エンドエフェクタを受けるのに好適な方向付け装置を有する担体装置を備え、方向付け装置は、方向付け装置に配置されるエンドエフェクタを移動及び/又は旋回させることができるようにするのに好適であり、担体装置は、保持装置を有し、保持装置により、担体装置は、エンドエフェクタを受ける方向付け装置が腐食損傷の領域に位置決めされているように、物体に取り付け可能であることにより解決される。修繕装置により、生じる腐食損傷を物体においてインサイチュで修繕することが可能である。
【0018】
腐食損傷とは、一方では、物体、特に風力原動機の気象に曝される表面に腐食が形成され、他方では、例えば何らかの不具合をもったコーティングが表面上に塗工されていることと解すべきである。腐食損傷の修繕は、今や、腐食した材料及び/又は何らかの不具合をもって被着されたコーティングを取り去ることにある。
【0019】
修繕装置の、これに関して有利な一構成では、エンドエフェクタは、方向付け装置に着脱自在に配置されており、これにより、別のエンドエフェクタとの交換を可能にすることができる。エンドエフェクタの交換により、修繕装置の多機能性が達成され、この多機能性は、事後的にも、修繕装置の機能の拡張に至る。
【0020】
好ましくは、保持装置は、担体装置を物体に着脱自在に取り付ける取り付け装置を有する。この場合、取り付け装置は、担体装置を物体に磁気式に取り付ける永久磁石式の磁石装置として形成されている。これにより極めて簡単な取り付け可能性が提供されている。
【0021】
さらに保持装置は、基体を有し、基体には、取り付け装置と、方向付け装置を担持する担体アームとが配置されている。担体アームは、保持装置の基体に旋回可能に、かつ様々な旋回位置で固定可能に配置されている。
【0022】
合目的的には、方向付け装置は、可動に担体アームに配置されるエンドエフェクタ担体と、位置決め手段とを有し、位置決め手段により、エンドエフェクタ担体は、担体アームに対して相対的に可動かつ方向付け可能である。
【0023】
修繕装置の別の有利な一発展形によれば、エンドエフェクタは、レーザ装置としてかつ/又はプレクリーニング装置としてかつ/又はコーティング装置としてかつ/又は乾燥装置としてかつ/又は印象採得装置としてかつ/又は層厚さ測定装置として形成されている。
【0024】
好ましくは、レーザ装置は、レーザヘッドとレーザ源とを有し、レーザ源は、光伝達装置によりレーザヘッドに接続されている。これによりレーザ装置の分散配置が可能である。さらに好ましくは、レーザ装置は、腐食を除去する際に生じる腐食した材料を吸引する吸引装置を有する。レーザクリーニングは、腐食損傷を有する表面の、選択的な、負荷の少ない、孔の奥までの、かつ傷を付けないクリーニングを可能にする。除去された修正された材料の、好ましくは同時に実施される吸引は、腐食損傷を有する表面の、実質的に残渣フリーのクリーニングに至る。
【0025】
修繕装置の有利な一構成に応じて、プレクリーニング装置は、ラフクリーニングユニット及び/又は脱塩ユニット及び/又は乾燥ユニット及び/又は濃度測定ユニットを有する。
【0026】
ラフクリーニングは、合目的的には、化学的なクリーニング剤、例えば水溶性の界面活性剤により実施され、クリーニング剤は、ラフクリーニングユニットにより、対応する表面に対して、特に、スプレノズル、好ましくは、単材ノズル又は複材ノズルを用いた吹き付けにより被着可能である。クリーニング剤は、加圧されて吹き付けられてもよい。ラフクリーニングは、機械的なクリーニングにより、例えば、エンドエフェクタに配置されるブラシユニットを用いて実施されてもよい。ブラシユニットは、好ましくは、1つ又は複数のブラシヘッドを有している。ラフクリーニングにより、例えば油分を含む汚損、摩耗部品から結果として生じる汚損、塩害による汚損及び異物によるその他の汚損は、腐食損傷を有する表面からクリーニングされる。
【0027】
脱塩は、好ましくは、脱イオン水により実施される。脱イオン水も、好ましくは、スプレノズル装置として、特に単材ノズル又は複材ノズルとして形成されるスプレ装置により、脱塩すべき対応する表面に対して吹き付けられる。
【0028】
脱塩後に実施される、腐食損傷を有する表面上の可溶性の塩の濃度測定は、ブレスル法により実施される。
【0029】
表面の乾燥は、好ましくは、油分を含まない圧縮空気を吹き出す圧縮空気装置により実施される。これにより、ラフクリーニング及び/又は脱塩の残渣は、腐食損傷を有する表面から取り除かれる。
【0030】
合目的的には、保護層として、物体、特に風力原動機の、プレクリーニング及びレーザクリーニングにより処理した表面上に、コーティング装置により塗工される。コーティング装置は、好ましくは、単材ノズル又は複材ノズルの形態のスプレノズル装置として形成されている。これにより保護層は、一定の、予め規定された層厚さで、処理した表面上に塗工され、その結果、保護層は、均一に乾燥する。
【0031】
層厚さ測定装置は、処理した表面上に塗工した保護層の層厚さを非破壊式の方法で求めるのに好適である。非破壊式の方法は、とりわけ渦電流検査、マイクロ波検査、超音波検査である。
【0032】
修繕装置は、合目的的には、修繕装置を開ループ及び/又は閉ループ制御する制御装置を備える。好ましくは、修繕装置の1つのエンドエフェクタ又は複数のエンドエフェクタは、物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法を実質的に自動化させるべく、制御装置により開ループ及び/又は閉ループ制御される。
【0033】
さらに上記課題は、冒頭で挙げた形態の修繕システムにおいて、修繕システムが、請求項19から30のいずれか一項に記載の修繕装置と、風力原動機とを備える修繕システムであり、修繕装置は、風力原動機に着脱自在に取り付けられていることにより解決される。
【0034】
これに関する修繕システムにおいて、修繕装置は、好ましくは、風力原動機のロータブレーキ装置のブレーキキャリパに、特に永久磁石の磁力により取り付けられている。
【0035】
合目的的には、修繕装置は、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法を実施するのに好適である。
【0036】
以下に本発明について添付の図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】修繕装置の一実施の形態の正面図である。
図2】修繕装置の本実施の形態の右の側面図である。
図3】修繕装置の本実施の形態の左の側面図である。
図4】修繕装置の本実施の形態の上面図である。
図5】修繕装置の本実施の形態の下面図である。
図6】プレクリーニング用のエンドエフェクタの第1の実施の形態の概略図である。
図7】コーティング装置と層厚さ測定装置とを有するエンドエフェクタの第2の実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
特に断りのない限り、以下の説明は、風力原動機として形成される物体2の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する修繕装置1を備える修繕システム3の、図面に示すすべての実施の形態に関する。
【0039】
腐食損傷とは、一方では、物体、特に風力原動機の気象に曝される表面に形成される腐食と解され、他方では、何らかの不具合をもって表面上に塗工されたコーティングと解される。腐食損傷の修繕は、これに応じて、腐食した材料及び/又は何らかの不具合をもって被着されたコーティングを取り去ることにある。
【0040】
修繕装置1は、着脱自在に、風力原動機、特に洋上風力原動機の、ブレーキキャリパ4とブレーキディスク5とを有するロータブレーキ装置6の、破線で示すブレーキキャリパ4に取り付けられている。
【0041】
ブレーキキャリパ4に取り付けられる修繕装置1は、担体装置7を備え、担体装置7は、保持装置8と、エンドエフェクタ9を受けるのに好適な方向付け装置10とを有している。
【0042】
保持装置8は、担体装置7を風力原動機のロータブレーキ装置6のブレーキキャリパ4に着脱自在に取り付ける取り付け装置11を有している。取り付け装置11は、担体装置7をブレーキキャリパ4に磁気式に取り付ける、2つの永久磁石12を有する永久磁石式の磁石装置13として形成されている。
【0043】
保持装置8は、一方の永久磁石12に配置される基体14を有し、基体14には、取り付け装置11と、方向付け装置10を担持する担体アーム15とが配置されている。長手方向軸線Xを有する担体アーム15は、保持装置8の基体14に旋回可能に、かつ様々な旋回位置16で固定可能に配置されている。例示的に、図示の実施の形態では、担体アーム15は、一方の永久磁石12に配置される旋回装置17により、水平の旋回位置16に旋回されている。旋回装置17は、制御装置32により開ループ及び/又は閉ループ制御されるので、旋回装置17は、空気圧式に運転される往復動ピストン26により、基体14に配置される担体アーム15を旋回させることが可能である。
【0044】
担体装置7は、エンドエフェクタ9を受ける方向付け装置10が腐食損傷の領域に位置決めされているように、物体2に取り付けられている。
【0045】
方向付け装置10は、方向付け装置10に配置されるエンドエフェクタ9を移動及び/又は旋回させることができるようにするのに好適である。このために方向付け装置10は、可動に担体アーム15に配置されるエンドエフェクタ担体18と、位置決め手段18とを有し、位置決め手段18により、エンドエフェクタ担体18は、担体アーム15に対して相対的に可動かつ方向付け可能である。位置決め手段19は、特にサーボモータとして形成される駆動ユニット20、駆動スピンドル21及び連結要素22を有している。識別しやすくするために、位置決め手段19に割り当てられる駆動ユニット20、駆動スピンドル21及び連結要素22の符号には、それぞれ、a乃至cを付して示すものとする。
【0046】
エンドエフェクタ担体18を担体アーム15の長手方向軸線Xの軸線方向で動かすべく、エンドエフェクタ担体18は、第1の駆動スピンドル21aと第1の連結要素22aとを介して第1の駆動ユニット20aに結合されるキャリッジ23上に配置されている。
【0047】
エンドエフェクタ担体18を、担体アーム15の長手方向軸線Xに相当する回転軸線Y回りに、かつこの回転軸線Yに対して垂直に方向付けられた別の回転軸線Z回りに方向付けるべく、エンドエフェクタ担体18は、第2及び第3の駆動スピンドル21b,21cと、第2及び第3の連結要素22b,22cとを介して、位置決め手段19の第2及び第3の駆動ユニット20b,20cに結合されている。このためにエンドエフェクタ担体18は、別のキャリッジ27上に配置され、その結果、エンドエフェクタ担体18は、長手方向軸線Xの軸線方向でのこの別のキャリッジ27の運動時、弧状の長穴28内でのこの別のキャリッジ27の案内に基づいて、回転軸線Z回りの回転を実施する。回転軸線Y回りのエンドエフェクタ担体18の回転は、連結要素22cに接続される歯車結合43を介して達成される。
【0048】
位置決め手段19により、これに応じて、方向付け装置10に属するエンドエフェクタ担体18を、一空間座標内で移動させるとともに、それとは独立して、2つの回転軸線回りに回転させることができ、これにより、物体2の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するエンドエフェクタを、表面に対して最適に方向付けることが可能である。
【0049】
エンドエフェクタ9は、方向付け装置10に着脱自在に配置されており、これにより、別のエンドエフェクタ24との交換を可能にすることができる。
【0050】
エンドエフェクタ9は、図示の実施の形態では、レーザ装置25を有している。
【0051】
レーザ装置25は、レーザヘッド29とレーザ源とを有し、レーザ源は、光伝達装置30によりレーザヘッド29に接続されている。レーザヘッド29は、合目的的には、マニピュレーションのために複数の自由度を有する遠隔制御されるレーザヘッドホルダ内に装着されている。こうしてレーザ装置25は、表面領域全体のレーザクリーニングを可能にする様々な幾何学的な調整を実現するのに好適である。すべての位置のために、191mm~211mmの焦点距離が、表面法線に対して-3°~+5°の角度範囲で実現され得る。加えてレーザ装置25は、腐食を除去する際に生じる腐食した材料を吸引する吸引装置31を有している。レーザクリーニングの際、通例、材料エミッションが発生するので、吸引管が、クリーニングすべき表面の近傍へと寄せられる。
【0052】
修繕装置1は、修繕装置1を、合目的的には、少なくともしかし、旋回装置17、方向付け装置10及びエンドエフェクタ9を、開ループ及び/又は閉ループ制御する制御装置32を備えている。制御装置32は、好ましくは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)として形成されている。制御装置32は、例示的に図2に示してある。
【0053】
図示しない一実施の形態において、修繕装置1は、様々な方法ステップを完全自動化して、かつエンドエフェクタ9,24の交換なしに実施すべく、複数のエンドエフェクタ9,24を備えている。エンドエフェクタ9,24は、この場合、制御装置32を介して個々に応答可能なそれぞれ異なる担体アーム上に配置されていることができ、これらの担体アームは、その実施の形態において、好ましくは、説明した担体アーム15に相当する。
【0054】
修繕装置1は、物体2の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法を実施する。本方法は、風力原動機、特に洋上風力原動機により形成される物体2の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するのに使用される。洋上風力原動機の場合、海水を含む気象に基づき、腐食損傷が起こることがよくあるので、本方法は、特に洋上風力原動機の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するのに最適に使用可能である。本方法は、合目的的には、インサイチュ法として、すなわち風力原動機のその場で、実施される。
【0055】
修繕装置1により実施される方法は、a)腐食損傷を有する表面をレーザなしにプレクリーニングし、b)腐食損傷を有する表面をレーザクリーニングし、c)レーザクリーニングにより処理した表面に保護層をコーティングする、という方法ステップを含んでいる。保護層は、この場合、コーティング及び/又はシーリングとして形成されていることができる。
【0056】
腐食損傷を有する表面のプレクリーニングは、合目的的には、表面のラフクリーニング、脱塩及び乾燥のプレクリーニングステップを含んでいる。プレクリーニングの個々のプレクリーニングステップは、好ましくは、前述の順序に応じて、すなわち、ラフクリーニング、脱塩及び乾燥の順に実施される。個々のプレクリーニングステップの省略は、可能であるが、決して推奨するものではない。
【0057】
修繕装置1は、ラフクリーニングのために使用可能な、プレクリーニング装置33として形成される別のエンドエフェクタ24を備えている。このプレクリーニング装置33として形成される別のエンドエフェクタ24は、ラフクリーニングユニット34、脱塩ユニット35、濃度測定ユニット36及び乾燥ユニット37を有し、概略的に図6に示してある。このためにプレクリーニング装置33は、3つのノズルシステム38a~cと上記濃度測定ユニット36とを有している。ノズルシステムの識別性をよくするために、ノズルシステムは、a乃至cを付して示すものとする。ノズルシステム38a~cは、好ましくは、個々に方向付け可能であり、それぞれ1つのシステム源に、それぞれのノズルシステム38a~cに割り当てられる管路網を介して接続されている。制御装置32との連係により、プレクリーニング装置33は、合目的的には、完全に自動化されている又は自動化可能である。
【0058】
好ましくは、ラフクリーニングは、クリーニング剤、特に化学的なクリーニング剤、例えば水溶性の界面活性剤により実施され、クリーニング剤は、ラフにクリーニングすべき表面に対して、プレクリーニング装置33のノズルシステム38aにより吹き付けられる。ラフクリーニングにより、例えば油分を含む汚損、摩耗部品から結果として生じる汚損、塩害による粗めの汚損及び異物又はこれに類するものによるその他の汚損は、腐食損傷を有する表面からクリーニングされる。
【0059】
図示しない一実施の形態に応じて、ラフクリーニングは、機械的なクリーニングにより、例えばエンドエフェクタ9,24に配置されるブラシユニットを用いて実施される。ブラシユニットは、好ましくは、1つ又は複数のブラシヘッドを有している。ブラシユニットは、合目的的には、金属ブラシを有し、金属ブラシは、クリーニングすべき表面に押し付けられ、而して異物粒子を払拭し、かつ塗料粒子及び腐食粒子を除去する。それらの剥離を容易にすべく、圧縮空気が使用される。而して、化学的なクリーニングの場合と同様に、例えば油分を含む汚損、摩耗部品から結果として生じる汚損、塩害による粗めの汚損及び異物又はこれに類するものによるその他の汚損は、腐食損傷を有する表面からクリーニングされる。
【0060】
脱塩は、続いて、好ましくは、脱イオン水により実施され、脱イオン水は、ラフにクリーニングされた表面に対して、プレクリーニング装置33の対応するノズルシステム38bにより吹き付けられる。脱イオン水は、以下では、脱塩水又は蒸留水も指すものとする。原理的には、表面の脱塩のために塩イオンを受け入れることが可能なあらゆる液体が好適である。水は、プレクリーニングすべき表面を攻撃することがないため、特に好適である。
【0061】
脱塩後、好ましくは、腐食損傷を有する表面上の可溶性の塩の濃度測定が実施される。可溶性の塩の濃度測定は、ブレスル法により実施される。気象に曝される表面を保護する場合、コーティング前に、表面は、塩害による汚損について検査されなければならない。塩害による汚損は、コーティングの付着及び品質を著しく損ねてしまうことがある。塩イオンの濃度に依存した水の導電率の上昇に基づくブレスル法は、ISO規格8502-6及び8502-9に従い、この検査のための標準である。
【0062】
表面の乾燥は、好ましくは、油分を含まない圧縮空気により実施され、圧縮空気は、やはりプレクリーニング装置33の対応するノズルシステム38cを介して供与される。これにより、ラフクリーニング及び/又は脱塩の残渣は、腐食損傷を有する表面から取り除かれ、表面は、汚染されない。
【0063】
前述のプレクリーニング装置33は、4つの個々のエンドエフェクタ24として形成されていてもよい。
【0064】
プレクリーニング後、必要であれば、腐食損傷を有する表面は、少なくとも部分的に、材料を取り去る表面後処理にかけられる。例えば表面から、形成されているエッジが取り去られる。この準備措置も、塗工される保護層の、表面上への改善された付着に役立ち、これにより、より高品質かつより長寿命のコーティングに至る。このために別のエンドエフェクタ24が使用され、方向付け装置10上に配置されてもよい。
【0065】
これに続いて、腐食損傷を有する表面のレーザクリーニングが実施される。このために、特別に構成されたクラス4の固体レーザを有するレーザが使用される。短いレーザパルスを送出し、集束されてクリーニングすべき表面に衝突するレーザビームにより、腐食した材料は、表面から蒸発又は焼灼により除去される。レーザクリーニングは、而して、腐食損傷を有する表面の、選択的な、負荷の少ない、孔の奥までの、かつ傷を付けないクリーニングを可能にする。同時に、レーザ装置25によりクリーニングすべき表面が、レーザクリーニング後、腐食した材料の残渣をもはや実質的に有しないように、除去された腐食した材料の吸引が、レーザヘッド29の下方に配置される吸引装置31により実施される。
【0066】
好ましくは、レーザクリーニング後、必要な場合、レーザビームにより加工した表面の表面粗さの検査が実施される。表面粗さの検査のために、レーザクリーニングした表面の少なくとも一部分の印象が、1種類又は複数種類のエンジニアリングシリコーンから製作され、この印象の表面粗さが分析される。印象の製作後、レーザクリーニングした表面の、印象のために使用した部分のみ、再クリーニングされる。好ましくは、1回の再クリーニングが実施される。この再クリーニングは、アルコール、合目的的にはプロパン-2-オールにより実施される。表面粗さの検査は、分析ラボでの、コーティングのために処理した表面の、通例は後置される評価を可能にし、ひいては、塗工した保護層の品質及び寿命の査定を可能にする。好ましくは、レーザクリーニングした表面の表面粗さは、1μm以下であることが望ましい。このためにも、印象採得装置として形成される別のエンドエフェクタ24が使用され、方向付け装置10上に配置され得る。
【0067】
その後、保護層が、レーザクリーニングにより処理した表面上に、単層又は複層で塗工される。塗工は、図示の実施の形態では、コーティング装置39として形成される別のエンドエフェクタ24により実施される。このようなコーティング装置は、図7に概略的に示してあり、スプレノズル40と、管路システムと、コーティング材料を貯蔵するシステム源とを有するノズルシステム41として形成されている。スプレノズル40は、塗工すべきコーティング次第で、単材ノズル又は複材ノズルとして形成されている。例えば複層の保護層は、単層の保護層と比較して、塗工したコーティングの品質及び寿命のさらなる改善を可能にする。この場合、コーティングを気象の要件に適合させるべく、層厚さの異なる様々な層が実現されてもよい。コーティング装置として、例えばスプレ塗装又は刷毛塗装、カートリッジガン又は防食層のマニュアル式の着装が使用され得る。
【0068】
好適なコーティングは、とりわけSIKAのSikaCor SW-1000 Repa-Cor、STEELPAINT又はHEMPELのHempadur EM 35740である。
【0069】
コーティング装置により、さらに表面シーリングを塗工する可能性がある。ここでは、例えばSTOPAQのEasyQote VE Paste又はEasyQote VE Basecote等のシーリングが使用される。
【0070】
層厚さ測定装置42は、処理した表面上に塗工した保護層の層厚さを非破壊式の方法で求めるのに好適である。非破壊式の方法は、とりわけ渦電流検査、マイクロ波検査、超音波検査である。層厚さ測定装置42は、好ましくは、エンドエフェクタ24に配置され、特に好ましくは、コーティング装置39とともにエンドエフェクタ24に配置されている。層厚さ測定は、合目的的には、保護層の乾燥後、又は表面のコーティングに並行して実施される。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
修繕装置(1)を用いて物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法であって、
a)前記腐食損傷を有する前記表面をレーザなしにプレクリーニングし、
b)前記腐食損傷を有する前記表面をレーザクリーニングし、
c)前記レーザクリーニングにより処理した前記表面に保護層をコーティングする、
方法ステップを含む、物体の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する方法。
2.
前記腐食損傷を有する前記表面の前記プレクリーニングは、前記表面のラフクリーニング及び/又は脱塩及び/又は乾燥を含むことを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.
前記ラフクリーニングを、化学的なクリーニング剤により、又はブラシユニットを用いた機械的なクリーニングとして実施することを特徴とする、上記2に記載の方法。
4.
前記脱塩を脱イオン水により実施する、上記2又は3に記載の方法。
5.
前記脱塩後、前記腐食損傷を有する前記表面上の可溶性の塩の濃度測定を実施することを特徴とする、上記2から4のいずれか一項に記載の方法。
6.
前記可溶性の塩の前記濃度測定をブレスル法により実施することを特徴とする、上記5に記載の方法。
7.
前記表面の前記乾燥を油分を含まない圧縮空気により実施することを特徴とする、上記2から6のいずれか一項に記載の方法。
8.
前記腐食損傷を有する前記表面の前記プレクリーニング後、前記表面を少なくとも部分的に、材料を取り去る表面後処理にかけることを特徴とする、上記1から7のいずれか一項に記載の方法。
9.
前記表面から、形成されているエッジを取り去ることを特徴とする、上記8に記載の方法。
10.
前記腐食損傷を有する前記表面の前記レーザクリーニングは、腐食した前記材料の、レーザビームによる除去と、除去された腐食した前記材料の吸引とを含むことを特徴とする、上記1から9のいずれか一項に記載の方法。
11.
前記レーザクリーニング後、レーザビームにより加工した前記表面の表面粗さの検査を実施することを特徴とする、上記1から10のいずれか一項に記載の方法。
12.
前記表面粗さの前記検査のために、レーザクリーニングした前記表面の少なくとも一部分の印象を製作し、前記印象の表面粗さを分析することを特徴とする、上記11に記載の方法。
13.
レーザクリーニングした前記表面の、前記印象のために使用した前記部分のみ、前記印象の前記製作後、再クリーニングすることを特徴とする、上記12に記載の方法。
14.
前記再クリーニングをアルコールにより実施することを特徴とする、上記13に記載の方法。
15.
前記保護層を、前記レーザクリーニングにより処理した前記表面上に、単層又は複層で塗工することを特徴とする、上記1から14のいずれか一項に記載の方法。
16.
インサイチュ法として実施することを特徴とする、上記1から15のいずれか一項に記載の方法。
17.
風力原動機、特に洋上風力原動機により形成される物体(2)の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕するのに使用することを特徴とする、上記1から16のいずれか一項に記載の方法。
18.
前記方法を実施する前記修繕装置(1)を前記風力原動機に着脱自在に、特に前記風力原動機のロータブレーキ装置(6)のブレーキキャリパ(4)に、特に永久磁石の磁力により取り付けることを特徴とする、上記17に記載の方法。
19.
物体(2)の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する修繕装置(1)であって、エンドエフェクタ(9,24)を受けるのに好適な方向付け装置(10)を有する担体装置(7)を備え、前記方向付け装置(10)は、前記方向付け装置(10)に配置される前記エンドエフェクタ(9,24)を移動及び/又は旋回させることができるようにするのに好適であり、前記担体装置(7)は、保持装置(8)を有し、前記保持装置(8)により、前記担体装置(7)は、前記エンドエフェクタ(9,24)を受ける前記方向付け装置(10)が前記腐食損傷の領域に位置決めされているように、前記物体(2)に取り付け可能である、物体(2)の気象に曝される表面の腐食損傷を修繕する修繕装置(1)。
20.
前記エンドエフェクタ(9)は、前記方向付け装置(10)に着脱自在に配置されており、これにより、別のエンドエフェクタ(24)との交換を可能にすることができることを特徴とする、上記19に記載の修繕装置(1)。
21.
前記保持装置(8)は、前記担体装置(7)を前記物体(2)に着脱自在に取り付ける取り付け装置(11)を有することを特徴とする、上記19又は20に記載の修繕装置(1)。
22.
前記取り付け装置(11)は、前記担体装置(7)を前記物体(2)に磁気式に取り付ける永久磁石式の磁石装置(13)として形成されていることを特徴とする、上記21に記載の修繕装置(1)。
23.
前記保持装置(8)は、基体(14)を有し、前記基体(14)には、前記取り付け装置(11)と、前記方向付け装置(10)を担持する担体アーム(15)とが配置されていることを特徴とする、上記19から22のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
24.
前記担体アーム(15)は、前記保持装置(8)の前記基体(14)に旋回可能に、かつ様々な旋回位置(16)で固定可能に配置されていることを特徴とする、上記23に記載の修繕装置(1)。
25.
前記方向付け装置(10)は、可動に前記担体アーム(15)に配置されるエンドエフェクタ担体(18)と、位置決め手段(19)とを有し、前記位置決め手段(19)により、前記エンドエフェクタ担体(18)は、前記担体アーム(15)に対して相対的に可動かつ方向付け可能であることを特徴とする、上記19から24のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
26.
前記エンドエフェクタ(9,24)は、レーザ装置(25)としてかつ/又はプレクリーニング装置(33)としてかつ/又はコーティング装置(39)としてかつ/又は乾燥装置としてかつ/又は印象採得装置としてかつ/又は層厚さ測定装置(42)として形成されていることを特徴とする、上記19から25のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
27.
前記レーザ装置(25)は、レーザヘッド(29)とレーザ源とを有し、前記レーザ源は、光伝達装置(30)により前記レーザヘッド(29)に接続されていることを特徴とする、上記26に記載の修繕装置(1)。
28.
前記レーザ装置(25)は、前記腐食を除去する際に生じる腐食した材料を吸引する吸引装置(31)を有することを特徴とする、上記26又は27に記載の修繕装置(1)。
29.
前記プレクリーニング装置(33)は、ラフクリーニングユニット(34)及び/又は脱塩ユニット(35)及び/又は乾燥ユニット(37)及び/又は濃度測定ユニット(36)を有することを特徴とする、上記26から28のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
30.
前記修繕装置(1)は、前記修繕装置(1)を開ループ及び/又は閉ループ制御する制御装置(32)を備えることを特徴とする、上記19から29のいずれか一項に記載の修繕装置(1)。
31.
修繕システム(3)であって、上記19から30のいずれか一項に記載の修繕装置(1)と、風力原動機とを備え、前記修繕装置(1)は、前記風力原動機に着脱自在に取り付けられている、修繕システム(3)。
32.
前記修繕装置(1)は、前記風力原動機のロータブレーキ装置(6)のブレーキキャリパ(4)に、特に永久磁石の磁力により取り付けられていることを特徴とする、上記31に記載の修繕システム(3)。
33.
前記修繕装置(1)は、上記1から18のいずれか一項に記載の方法を実施するのに好適であることを特徴とする、上記31又は32に記載の修繕システム(3)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7