(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】負極活物質及びその製造方法、並びに負極活物質を含む装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20250226BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250226BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2023558952
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2022094848
(87)【国際公開番号】W WO2023225884
(87)【国際公開日】2023-11-30
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 静▲嫻▼
(72)【発明者】
【氏名】王 家政
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-506882(JP,A)
【文献】特表2023-536191(JP,A)
【文献】特表2023-547418(JP,A)
【文献】特開2016-134382(JP,A)
【文献】特表2018-534720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素骨格を有する炭素マトリックス粒子と、
前記炭素マトリックス粒子の前記炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子と、を含む炭素-ケイ素複合体を含む負極活物質であって、
前記炭素-ケイ素複合体の外周領域において、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A
1と前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B
1とは、0.8≦B
1/A
1≦2.5
を満たし、
前記炭素-ケイ素複合体の外周領域は、前記炭素-ケイ素複合体の外表面から前記炭素-ケイ素複合体の内部に向かってr/2以内の距離で延びた領域であり、rは前記炭素-ケイ素複合体の短径を表
し、
前記炭素-ケイ素複合体の中心領域において、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A
2
と前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B
2
とは、1.05≦A
2
/B
2
≦50を満たし、
前記炭素-ケイ素複合体の中心領域は、前記炭素-ケイ素複合体の幾何中心からの距離がr/2以内の領域である、負極活物質。
【請求項2】
前記炭素-ケイ素複合体の中心領域において、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A
2と前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B
2とは
、1.05≦A
2/B
2≦3を満たし、
前記炭素-ケイ素複合体の中心領域は、前記炭素-ケイ素複合体の幾何中心からの距離がr/2以内の領域である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率Aは、前記炭素-ケイ素複合体の幾何中心から前記炭素-ケイ素複合体の外表面に向かう方向に減少する傾向にあり、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率Bは、前記炭素-ケイ素複合体の幾何中心から前記炭素-ケイ素複合体の外表面に向かう方向に増加する傾向にあ
る、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率Aと、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率Bとは、さらに、1≦A/B≦3
を満たす、請求項
3に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記炭素マトリックス粒子は、黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの1種又は複数種を含む、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記炭素骨格は多孔質炭素骨格であり、前記ケイ素ナノ粒子は前記多孔質炭素骨格の孔内及び/又は表面にあり、
前記多孔質炭素骨格は、前記炭素骨格を貫通した孔を含み、
前記孔の孔径が1nm~200nm
であり、
前記多孔質炭素骨格の空隙率が40%~70%
である、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記ケイ素ナノ粒子の粒径Dが、D≦10nmである、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項8】
前記負極活物質は、前記炭素-ケイ素複合体を被覆する導電層をさらに含む、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項9】
前記導電層の厚さが、≦3.5μm
である、請求項
8に記載の負極活物質。
【請求項10】
前記導電層は、炭素層及び/又は導電性ポリマー層を含み、
前記導電性ポリマー層は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド、及びポリパラフェニレンのうちの1種又は複数種を含む、請求項8に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記負極活物質の平均粒径Dv50は、5μm≦Dv50≦11μmであり、
前記負極活物質の平均粒径Dv90、Dv10及びDv50が、(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.4を満たす、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項12】
前記負極活物質の比表面積BETが、BET≦4m
2/gである、請求項1又は2に記載の負極活物質。
【請求項13】
負極活物質の製造方法であって、
炭素骨格を有する炭素マトリックス粒子にケイ素前駆体を含むガスを供給するステップS100と、
化学気相堆積により、前記ケイ素前駆体から前記炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子を生成して、炭素-ケイ素複合体を得るステップS200と、を含み、
前記炭素-ケイ素複合体の外周領域において、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A
1と前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B
1とは、0.8≦B
1/A
1≦2.5
を満たし、
前記炭素-ケイ素複合体の外周領域は、前記炭素-ケイ素複合体の外表面から前記炭素-ケイ素複合体の内部に向かってr/2以内の距離で延びた領域であ
り、
前記炭素-ケイ素複合体の中心領域において、前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A
2
と前記炭素-ケイ素複合体の総質量に対する前記炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B
2
とは、1.05≦A
2
/B
2
≦50を満たし、
前記炭素-ケイ素複合体の中心領域は、前記炭素-ケイ素複合体の幾何中心からの距離がr/2以内の領域である、負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記ケイ素-炭素複合体上に導電層を形成するステップS300をさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の負極活物質を含む、二次電池。
【請求項16】
請求項15に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項18】
請求項
15に記載の二次電池、請求項
16に記載の電池モジュール、又は請求項
17に記載の電池パックを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池の分野に関し、具体的には、負極活物質及びその製造方法、並びに負極活物質を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、高容量、長寿命などの特性を有し、携帯電話、ラップトップ、電気バイク、電気自動車、電気飛行機、電気船、電気自動車玩具、電気船玩具、電気飛行機玩具や電気工具などの電子機器に広く使用される。二次電池は飛躍的に進歩しているので、二次電池の特性がより高く求められている。二次電池の特性を向上させるために、負極活物質などの二次電池内部の材料を最適化して改善するのが一般的である。負極活物質は、二次電池内の金属イオンと電子のキャリアとして、エネルギーの貯蓄・放出の役割を果たし、二次電池の特性に無視できない影響を与える。
【0003】
しかし、現在改良された負極活物質を二次電池に用いても、二次電池のサイクル特性やレート特性は依然として劣っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、負極活物質及びその製造方法、並びに負極活物質を含む装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1態様は、炭素骨格を有する炭素マトリックス粒子と、
炭素マトリックス粒子の炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子と、を含む炭素-ケイ素複合体を含む負極活物質であって、
炭素-ケイ素複合体の外周領域において、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A1と炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B1とは、0.8≦B1/A1≦2.5、選択的には、1≦B1/A1≦1.5を満たし、
ここで、炭素-ケイ素複合体の外周領域は、炭素-ケイ素複合体の外表面から炭素-ケイ素複合体の内部に向かってr/2以内の距離で延びた領域であり、rは前記炭素-ケイ素複合体の短径を表す、負極活物質を提供する。
【0006】
これによって、本願の負極活物質を二次電池に用いると、二次電池のサイクル中にケイ素ナノ粒子は体積膨張する可能性があるが、ケイ素ナノ粒子が炭素骨格に付着しているため、炭素骨格はケイ素ナノ粒子の膨張をある程度制限する効果が奏する。特に、炭素-ケイ素複合体の外周領域が0.8≦B1/A1≦2.5を満たす場合、ケイ素ナノ粒子が炭素骨格に均一に付着しており、炭素マトリックス粒子はケイ素ナノ粒子の体積膨張を大幅に制限して、負極活物質の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。ケイ素ナノ粒子は、比容量が高いため、負極活物質の容量を向上させ、且つ金属イオンの挿入電圧が低く、金属イオンの挿入に有利であり、二次電池のレート特性を向上させることができる。炭素マトリックス粒子は、導電性が良好であるため、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、炭素-ケイ素複合体の中心領域において、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A2と、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B2とは、1.05≦A2/B2≦50、選択的には、1.05≦A2/B2≦3を満たし、炭素-ケイ素複合体の中心領域は、炭素-ケイ素複合体の幾何中心からの距離がr/2以内の領域である。
【0008】
これによって、本願のケイ素-炭素複合体の中心領域は1.05≦A2/B2≦50を満たすことにより、ケイ素ナノ粒子の炭素骨格への付着均一程度をさらに向上させ、負極活物質の構造安定性をさらに改善することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率Aは、炭素-ケイ素複合体の幾何中心から炭素-ケイ素複合体の外表面に向かう方向に減少する傾向にあり、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率Bは、炭素-ケイ素複合体の幾何中心から炭素-ケイ素複合体の外表面に向かう方向に増加する傾向にある。
【0010】
これによって、本願では、炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子の含有量が徐々に増加し、ケイ素ナノ粒子の含有量が多くなり、負極活物質の容量を大幅に向上させることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率Aと、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率Bとは、さらに、1≦A/B≦3、さらに選択的には、1.3≦A/B≦2を満たす。
【0012】
これによって、本願では、炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子の含有量が上記範囲を満たすと、ケイ素ナノ粒子の含有量が多くなり、負極活物質の容量を大幅に向上させることができる。炭素マトリックス粒子の含有量は適度であり、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、炭素マトリックス粒子は、黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの1種又は複数種を含む。このような炭素マトリックス粒子は、ケイ素ナノ粒子の付着担体となる炭素骨格構造を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、炭素骨格は多孔質炭素骨格であり、ケイ素ナノ粒子は多孔質炭素骨格の孔内及び/又は表面にある。
【0015】
これによって、本願では、ケイ素ナノ粒子の少なくとも一部が多孔質炭素骨格の孔内に付着しているため、二次電池のサイクル中に、多孔質炭素骨格がその孔内のケイ素ナノ粒子の体積膨張をある程度制限し、ケイ素ナノ粒子の体積膨張を一定範囲に制限することで、負極活物質の構造安定性を確保して二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、多孔質炭素骨格は、炭素骨格を貫通した孔を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、孔の孔径が、1nm~200nm、選択的には、1nm~50nmである。この孔径範囲の孔は、ケイ素ナノ粒子の付着に寄与し、孔内に付着したケイ素ナノ粒子の体積膨張を効果的に制限することができる。また、体積膨張後のケイ素ナノ粒子は、多孔質炭素骨格に損傷を与えることが実質的にない。これにより、多孔質炭素骨格の構造安定性は、確保される。
【0018】
いくつかの実施形態では、多孔質炭素骨格の空隙率が、40%~70%、選択的には、50%~60%である。多孔質炭素骨格の空隙率が上記範囲を満たすと、多孔質炭素骨格における孔の体積の割合が高く、その孔内にケイ素ナノ粒子が付着し、ケイ素ナノ粒子と炭素マトリックス粒子とが相乗的に機能することで、負極活物質の容量及び導電性を向上させることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、ケイ素ナノ粒子の粒径Dが、D≦10nmである。ケイ素ナノ粒子は、粒径Dは小さいと炭素骨格の表面及び/又は孔内への付着に有利であり、且つその分布がより均一であり、負極活物質全体の特性の均一性を向上させるのに有利である。
【0020】
いくつかの実施形態では、負極活物質は、炭素-ケイ素複合体を被覆する導電層をさらに含む。導電層は、炭素-ケイ素複合体の表面に被覆された連続した層状構造であり、ケイ素-炭素複合体の表面の空隙を覆い、ケイ素-炭素複合体の比表面積を小さくし、ケイ素-炭素複合体と電解液との副反応のリスクを低減させ、ケイ素-炭素複合体の構造安定性を向上させることができる。また、上記物質は優れた導電性を有するので、負極活物質の導電性を大幅に向上させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、導電層の厚さが、≦3.5μm、選択的には、2.5μm~3.3μmである。導電層の厚さが上記範囲を満たすと、負極活物質全体の導電性を向上させ、且つ負極活物質中の金属イオンの円滑な移動を確保することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、導電層は、炭素層及び/又は導電性ポリマー層を含み、選択的には、導電性ポリマー層は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド、及びポリパラフェニレンのうちの1種又は複数種を含む。炭素層は、ケイ素-炭素複合体の表面に均一に分散するのに有利であるため、ケイ素-炭素複合体全体の導電性を向上させることができる。導電性ポリマー層はケイ素-炭素複合体との結合力が強く、ケイ素-炭素複合体から剥離しにくいので、負極活物質の構造安定性を向上させ、且つ負極活物質の導電性をさらに向上させることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、負極活物質の平均粒径Dv50が、5μm≦Dv50≦11μmである。負極活物質の平均粒径Dv50が上記範囲を満たすと、負極活物質の構造が安定的になり、その動的特性が良好となり、負極活物質の初回クーロン効率を向上させるのに有利である。
【0024】
いくつかの実施形態では、負極活物質の平均粒径Dv90、Dv10、及びDv50は、(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.4を満たす。負極活物質の粒径分布が上記範囲を満たすと、負極活物質全体の平均粒径が適度であり、粒径分布が均一であり、負極活物質全体の特性の均一性を向上させるのに有利である。
【0025】
いくつかの実施形態では、負極活物質の比表面積BETはが、BET≦4m2/gである。負極活物質の比表面積BETが上記範囲を満たすと、比表面積の範囲が適度であり、負極活物質の動的特性が良好であり、負極活物質の初回クーロン効率に有利である。
【0026】
本願の第2態様は、負極活物質の製造方法であって、
炭素骨格を有する炭素マトリックス粒子にケイ素前駆体を含むガスを供給するステップS100と、
化学気相堆積により、ケイ素前駆体から炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子を生成して、炭素-ケイ素複合体を得るステップS200と、を含み、
炭素-ケイ素複合体の中心領域において、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A2と、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B2とは、1.05≦A2/B2≦50、選択的には1.05≦A2/B2≦3を満たし、ここで、炭素-ケイ素複合体の中心領域は、炭素-ケイ素複合体の幾何中心からの距離がr/2以内の領域であり、rは炭素-ケイ素複合体の短径を表し、
炭素-ケイ素複合体の外周領域において、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A1と、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B1とは、0.8≦B1/A1≦2.5、選択的には、1≦B1/A1≦1.5を満たし、ここで、炭素-ケイ素複合体の外周領域は、炭素-ケイ素複合体の外表面から炭素-ケイ素複合体の内部に向かってr/2以内の距離で延びた領域である、負極活物質の製造方法を提供する。
【0027】
これによって、本願の実施例に係る方法は、製造プロセスが簡単であり、プロセス条件の調整が容易である。また、それによって得られた負極活物質を二次電池に用いると、二次電池のサイクル特性が良好である。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、ケイ素-炭素複合体上に導電層を形成するステップS300をさらに含んでもよい。ケイ素-炭素複合体の表面に導電層を形成してケイ素-炭素複合体を被覆することにより、負極活物質全体の導電性を向上させる。
【0029】
本願の第3態様は、本願の第1態様のいずれかの実施例に記載の負極活物質、又は本願の第2態様のいずれかの実施例で製造された負極活物質を含む二次電池をさらに提供する。
【0030】
本願の第4態様は、本願の第3態様の実施例に記載の二次電池を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0031】
本願の第5態様は、本願の第4態様の実施例に記載の電池モジュールを含む電池パックをさらに提供する。
【0032】
本願の第6態様は、本願の第3態様の実施例に記載の二次電池、本願の第4態様の実施例に記載の電池モジュール、又は本願の第5態様の実施例に記載の電池パックを含む電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本願の実施例の技術案をより説明にするために、以下では、本願の実施例に使用される図面について簡単に説明する。明らかに、以下で説明される図面は本願の実施形態の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本願の一実施形態に係る負極活物質の製造流れの概略図である。
【
図2】本願の他の実施形態に係る負極活物質の製造流れの概略図である。
【
図3】本願の更なる実施形態に係る負極活物質の製造流れの概略図である。
【
図4】本願の一実施形態に係る二次電池の概略図である。
【
図5】
図4に示す本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
【
図6】本願の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。
【
図7】本願の一実施形態に係る電池パックの概略図である。
【
図8】
図7に示す本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
【
図9】本願の一実施形態に係る電力消費装置の概略図である。
【符号の説明】
【0034】
符号は以下のとおりである。
1 二次電池
11 外装体
111 トップカバーアセンブリ
112 ケース
12 電極アセンブリ
10 電池モジュール
20 電池パック
21 上筐体
22 下筐体
30 電力消費装置
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本願の電解液、二次電池、電池及び電力消費装置を具体的に開示する実施形態を詳細に説明する。しかし、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細な説明や、実際には同じ構造の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。さらに、図面および以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0036】
本願に開示されている「範囲」は、下限及び上限の形で限定され、所定の範囲は、特定の範囲の境界を規定する下限及び上限を選択することによって限定される。このように定義された範囲は、エンド値を含んでもよく、含まなくてもよく、また、任意の組み合わせが可能であり、すなわち、任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせて1つの範囲を形成することが可能である。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲が挙げられる場合、60~110と80~120の範囲も予想されていると理解することができる。また、最小範囲値として1と2、最大範囲値として3、4、5が挙げられている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、及び2~5の範囲はすべて予想される。本願において、特に断らない限り、「a~b」の範囲は、aとbとの間の任意の実数の組み合わせの短縮表現を表す。ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書において「0~5」の間のすべての実数が挙げられていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせを短縮したものである。また、あるパラメータが2以上の整数であると記述されている場合、そのパラメータが例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることが開示されていることに対応している。
【0037】
特に断らない限り、本願のすべての実施形態及び任意の実施形態は、互いに組み合わされて新たな技術案を形成することができる。特に断らない限り、本願のすべての技術的特徴及び任意の技術的特徴は、互いに組み合わされて新たな技術案を形成することができる。
【0038】
特に断らない限り、本願のすべてのステップは、順次に行われてもよいし、ランダムに行われてもよいし、好ましくは順次行われてもよい。例えば、方法はステップ(a)と(b)を含む場合は、方法が順次行われるステップ(a)および(b)を含んでもよく、または、順次行われるステップ(b)および(a)を含んでもよいことを示している。例えば、方法はステップ(c)をさらに含んでもよいと言及した場合は、ステップ(c)が任意の順序で方法に加えられてもよいことを示している。例えば、方法は、ステップ(a)、(b)および(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)および(b)を含んでもよく、また、ステップ(c)、(a)および(b)を含んでもよい。
【0039】
特に断らない限り、本願で記載される「含む」、「有する」、「備える」は、開放式であることを意味し、また、閉鎖式であってもよい。例えば、前記「含む」、「有する」、「備える」は、挙げられていない他の成分をさらに「含む」、「有する」、「備える」こと、または挙げられている成分のみを「含む」、「有する」、「備える」ことを表すことができる。
【0040】
特に断らない限り、本願において、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「AまたはB」という語句は、「A、B、またはAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれの条件も満たされる。Aが真(または存在)であり、Bが偽(または存在しない)である。Aが偽(または存在しない)であり、Bが真(または存在する)である。またはAとBの両方が真である(または存在する)。
負極活物質
【0041】
第1態様では、本願は負極活物質を提供する。当該負極活物質は、炭素マトリックス粒子とケイ素ナノ粒子とを含む炭素-ケイ素複合体を含む。
【0042】
炭素マトリックス粒子は、炭素骨格を有する。当該炭素骨格は、中実構造であってもよいし、孔を有する多孔質骨格構造であってもよい。
【0043】
本願では、孔とは、負極活物質の外表面に対して窪んでおり、且つ負極活物質の内部まで窪んだ窪み構造、又は負極活物質を貫通した貫通孔を表す。多孔質骨格構造は、負極活物質内に複数の孔を有することを示し、複数の孔が互いに平行に及び/又は交差して配置されていてもよい。多孔質構造は、孔径、孔長や孔径分布などのパラメータを含む。炭素マトリックス粒子の多孔質炭素骨格の孔径は、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔を含む。ミクロ孔とは、直径が約2nm未満の孔である。メソ孔とは、直径が約2nmから約5nmの孔である。マクロ孔とは、直径が50nmを超える孔である。
【0044】
ケイ素ナノ粒子の粒径はナノスケールであり、ケイ素ナノ粒子を炭素骨格上に形成する際に、ケイ素ナノ粒子が炭素骨格上に均一により付着しやすくなる。
【0045】
炭素骨格が中実構造である場合、ケイ素ナノ粒子は、炭素骨格の表面の少なくとも一部に付着していてもよい。炭素骨格が多孔質骨格構造である場合、ケイ素ナノ粒子は、炭素骨格の表面の少なくとも一部及び炭素骨格の孔内に付着していてもよく、ケイ素ナノ粒子は、炭素骨格の孔を実質的に全て充填していてもよい。
【0046】
炭素マトリックス粒子とケイ素ナノ粒子を組み合わせて炭素-ケイ素複合体が形成され、炭素-ケイ素複合体は、幾何学的形状が不規則な粒子であってもよい。この場合、三軸径特徴評価法を用いてその粒径を特徴評価することができる。具体的な特徴評価方法として、炭素-ケイ素複合体の平面投影図上で長径lと短径rを測定し、投影平面の垂直方向で炭素-ケイ素複合体の厚さhを測定する。ケイ素-炭素複合体をそれに接する直方体の中に置き、直方体の長辺をl、短辺をr、厚さをhとすることで、ケイ素-炭素複合体の実際の寸法を反映していると理解することもできる。
【0047】
ケイ素-炭素複合体は、中心領域と、外周領域と、中心領域と外周領域との間にある遷移領域とを含む。中心領域とは、ケイ素-炭素複合体の幾何中心からの距離がr/2以内の領域であると考えられる。外周領域とは、ケイ素-炭素複合体の外表面からケイ素-炭素複合体の内部に向かってr/2以内の距離で延びた領域であると考えられる。
【0048】
ケイ素-炭素複合体が、ケイ素-炭素複合体の表面に対して窪んだ窪み構造を含む場合、本願では、窪み構造の表面は、ケイ素-炭素複合体の外表面ではなく、ケイ素-炭素複合体の内部構造とする。
【0049】
ケイ素-炭素複合体の外周領域では、ケイ素ナノ粒子の付着量が多く、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A1と、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B1とは、0.8≦B1/A1≦2.5を満たす。
【0050】
A1とB1が上記範囲を満たすと、炭素マトリックス粒子の内部に付着したケイ素ナノ粒子の質量が高くなり、負極活物質の容量を大幅に向上させ、且つ金属イオンの挿入電圧が低く、金属イオンの挿入に有利であり、二次電池のレート特性が向上することができる。また、炭素マトリックス粒子は、ケイ素ナノ粒子の体積膨張を大幅に制限し、負極活物質の構造安定性を向上させて二次電池のサイクル特性を向上させることができる。選択的には、1≦B1/A1≦1.5である。一例として、B1/A1は、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4若しくは2.5であってもよく、又は、上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0051】
上記負極活物質を二次電池に用いると、二次電池のサイクル中にケイ素ナノ粒子が体積膨張する可能性があるが、ケイ素ナノ粒子が炭素骨格に付着しているため、炭素骨格はケイ素ナノ粒子の膨張をある程度抑制する効果を奏する。特に、炭素-ケイ素複合体の外周領域が0.8≦B1/A1≦2.5を満たす場合、炭素マトリックス粒子はケイ素ナノ粒子の体積膨張を大幅に抑制し、負極活物質の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。ケイ素ナノ粒子は、比容量が高いため、負極活物質の容量を向上させ、且つ金属イオンの挿入電圧が低く、金属イオンの挿入に有利であり、二次電池のレート特性が向上することができる。炭素マトリックス粒子の導電性が良好であるため、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0052】
いくつかの実施例では、ケイ素ナノ粒子の炭素マトリックス粒子への付着は一定の分布傾向を有する。ケイ素-炭素複合体の中心領域では、ケイ素ナノ粒子の付着量は小さく、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A2と、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B2とは、1.05≦A2/B2≦50を満たす。
【0053】
A2とB2が上記範囲を満たすと、炭素マトリックス粒子の内部に付着したケイ素ナノ粒子の質量が低く、二次電池のサイクル中に炭素マトリックス粒子がケイ素ナノ粒子に対して良好な膨張低減作用を発揮し、負極活物質の構造安定性を向上させ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。A2/B2の減少に伴い、炭素マトリックス粒子に付着するケイ素ナノ粒子の含有量の増加は、負極活物質の容量を向上させ、且つ金属イオンの挿入電圧が低く、金属イオンの挿入に有利であり、二次電池のレート特性が向上することができる。選択的には、1.05≦A2/B2≦3である。一例として、A2/B2は、1.05、1.1、1.15、1.20、1.25、1.30、1.40、1.50、1.60、1.70、1.80、1.90、2.0、2.2、2.5、2.8、3.0、5、10、15、20、25、30、35、40、45若しくは50であってもよく、又は、上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0054】
本願のケイ素-炭素複合体の中心領域が1.05≦A2/B2≦50を満たすことにより、ケイ素ナノ粒子の炭素骨格への付着均一程度をさらに向上させ、負極活物質の構造安定性をさらに改善することができる。
【0055】
いくつかの実施例では、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率Aは、炭素-ケイ素複合体の幾何中心から炭素-ケイ素複合体の外表面に向かう方向に減少する傾向にあり、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率Bは、炭素-ケイ素複合体の幾何中心から炭素-ケイ素複合体の外表面に向かう方向に増加する傾向にある。
【0056】
ケイ素-炭素複合体が不規則な形状であり得るが、ケイ素-炭素複合体の幾何中心は、それに正接する直方体の幾何中心と等価であってもよい。ケイ素-炭素複合体の幾何中心からケイ素-炭素複合体の外表面に向かう方向において、炭素元素の質量百分率Aが徐々に減少し、ケイ素元素の質量百分率Bが徐々に向上し、すなわち炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子の含有量が徐々に向上し、ケイ素ナノ粒子の含有量が高くなるため、負極活物質の容量を大幅に向上させることができる。
【0057】
選択的には、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率Aと、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率Bとは、さらに、1≦A/B≦3、さらに選択的には、1.3≦A/B≦2を満たす。一例として、A/Bは、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.8、2.0、2.1、2.2、2.3、2.5、2.8若しくは3であってもよく、又は、上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0058】
いくつかの実施例では、炭素マトリックス粒子は、黒鉛、ソフトカーボン及びハードカーボンのうちの1種又は複数種を含む。一例として、炭素マトリックス粒子はハードカーボンを含むことができる。このような炭素マトリックス粒子は、ケイ素ナノ粒子の付着担体となる炭素骨格構造を提供する。
【0059】
いくつかの実施例では、炭素骨格は多孔質炭素骨格であってもよい。多孔質炭素骨格は孔を含み、ケイ素ナノ粒子は炭素骨格の表面に付着することができるだけでなく、孔内に充填されていてもよい。換言すれば、ケイ素ナノ粒子は、多孔質炭素骨格の孔内及び/又は表面にある。
【0060】
負極活物質を二次電池に用いると、ケイ素ナノ粒子の少なくとも一部が多孔質炭素骨格の孔内に付着しているため、二次電池のサイクル中に、多孔質炭素骨格はその孔内のケイ素ナノ粒子の体積膨張をある程度制限し、ケイ素ナノ粒子の体積膨張を一定の範囲に制限することで、負極活物質の構造安定性を確保し、二次電池のサイクル特性を向上させる。
【0061】
いくつかの実施例では、多孔質炭素骨格は、炭素骨格を貫通した孔を有する。この孔の部分にケイ素ナノ粒子が付着していると、ケイ素ナノ粒子が多孔質炭素骨格の各領域に均一に付着するのに有利であり、ケイ素-炭素複合体の各領域のケイ素の体積膨張が実質的に一致して、これにより、多孔質炭素骨格の各領域の特性の均一性を向上させ、負極活物質全体の特性の均一性を向上させる。
【0062】
いくつかの実施例では、多孔質炭素骨格の孔の孔径はナノ孔径であり、この孔径範囲の孔はケイ素ナノ粒子の付着に寄与し、孔内に付着したケイ素ナノ粒子の体積膨張を効果的に制限することができる。また、体積膨張後のケイ素ナノ粒子は多孔質炭素骨格に損傷を与えることが実質的にない。これにより、多孔質炭素骨格の構造的安定性は確保される。
【0063】
選択的には、多孔質炭素骨格の孔の孔径は1nm~200nm、さらに選択的には、1nm~50nmであってもよい。一例として、多孔質炭素骨格の孔の孔径は、1nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、120nm、150nm、180nm若しくは200nmであってもよく、又は、上記のいずれか2つの数値からなる範囲あってもよい。
【0064】
いくつかの実施例では、多孔質炭素骨格の空隙率は40%~70%である。
【0065】
多孔質炭素骨格の空隙率とは、多孔質炭素骨格の総体積における多孔質炭素骨格内の孔の体積の割合である。
【0066】
多孔質炭素骨格の空隙率が上記範囲を満たすと、多孔質炭素骨格における孔の体積が大きく、その孔内にケイ素ナノ粒子が付着し、ケイ素ナノ粒子と炭素マトリックス粒子とが相乗的に機能することで、負極活物質の容量及び導電性を向上させることができる。選択的には、多孔質炭素骨格の空隙率は、50%~60%であってもよい。一例として、多孔質炭素骨格の空隙率は、40%、42%、45%、48%、50%、52%、55%、58%、60%、62%、65%、68%、70%であってもよく、又は、上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0067】
本願では、炭素マトリックス粒子に空隙率を導入することは、種々の方法で達成することができる。例えば、加工条件を調整することによって、炭素マトリックス粒子の空隙率を達成し、多孔質炭素骨格を製造することができる。
【0068】
いくつかの実施例では、ケイ素ナノ粒子の粒径Dは、D≦10nmを満たす。
【0069】
ケイ素ナノ粒子は、粒径Dが小さく、炭素骨格の表面及び/又は孔内への付着がより容易である。また、その分布がより均一であり、負極活物質全体の特性の均一性を向上させるのに有利である。一例として、Dは、10nm、8nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、又は1nmであってもよい。
【0070】
いくつかの実施例では、負極活物質は、炭素-ケイ素複合体を被覆する導電層をさらに含んでもよい。導電層は炭素-ケイ素複合体の表面に被覆された連続構造であり、複合体の不連続な領域を接続し、負極活物質全体の導電性を向上させることができる。
【0071】
ケイ素-炭素複合体が中実構造である場合、導電層がケイ素-炭素複合体の表面に被覆されることにより、負極活物質全体の導電性を向上させることができる。ケイ素-炭素複合体が多孔質炭素骨格を含む場合、ケイ素ナノ粒子が多孔質炭素骨格の孔内に充填されるため、ケイ素-炭素複合体全体が中実構造となり、導電層がケイ素-炭素複合体の表面に被覆されることにより、負極活物質の表面が連続した導電面となり、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0072】
いくつかの実施例では、導電層は、炭素層及び/又は導電性ポリマー層を含んでもよい。導電層は、炭素-ケイ素複合体の表面に被覆される連続した層状構造であり、ケイ素-炭素複合体表面の空隙を覆き、ケイ素-炭素複合体の比表面積を小さくし、ケイ素-炭素複合体と電解液との副反応のリスクを低減させ、ケイ素-炭素複合体の構造安定性を向上させることができる。また、上記物質は優れた導電性を有するので、負極活物質の導電性を大幅に向上させることができる。
【0073】
いくつかの例として、炭素層は、炭素粒子を含むことができる。炭素粒子は、粒径が小さいであるとケイ素-炭素複合体の表面に均一に分散するのに有利である。これによって、ケイ素-炭素複合体全体の導電性を向上させることができる。
【0074】
いくつかの別の例として、導電性ポリマー層は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド、及びポリパラフェニレンのうちの1種又は複数種を含んでもよい。このような導電性ポリマー層は、ケイ素-炭素複合体との結合力が強く、ケイ素-炭素複合体から剥離しにくいので、負極活物質の構造安定性を向上させ、且つ負極活物質の導電性をさらに向上させることができる。
【0075】
いくつかの実施例では、導電層の厚さが、≦3.5μm、選択的には、2.5μm~3.3μmであってもよい。
【0076】
導電層の厚さが上記範囲を満たすと、負極活物質全体の導電性を向上させ、且つ負極活物質中の金属イオンの円滑な移動を確保することができる。選択的には、導電層の厚さは、2.5μm~3.3μmであってもよく、一例として、導電層の厚さは、1μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3μm、3.3μm若しくは3.5μmであってもよく、又は、上記のいずれか2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0077】
いくつかの実施例では、負極活物質の平均粒径Dv50が、5μm≦Dv50≦11μmである。
【0078】
負極活物質のDv50の数値とは、負極活物質のメジアン粒度を意味する。具体的には、ある特定のDv50の数値は、総体積の50%を有する粒子の粒径がこの数値より大きく、又は総体積の50%を有する粒子の粒径がこの数値より小さいことを意味する。負極活物質のDv50の数値はGB/T19077-2016に規定された方法を参照して測定することができる。
【0079】
負極活物質の平均粒径Dv50が上記範囲を満たすと、負極活物質の構造が安定的であり、動的特性が良好となり、負極活物質の初回クーロン効率を向上させるのに有利となる。一例として、負極活物質の平均粒径Dv50は、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm又は11μmであってもよいが、もちろん、上記のいずれかの2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0080】
選択的には、負極活物質の平均粒径Dv90、Dv10及びDv50は、(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.4を満たす。
【0081】
(Dv90-Dv10)/Dv50は、負極活物質の粒径分布spinを表す。
【0082】
負極活物質のDv10の数値は、粒子中の体積分布の10%に対応する粒度を表し、具体的には、粒子のうち総体積の10%を有する粒子の粒径がこの数値より大きく、又は総体積の90%を有する粒子の粒径がこの数値より小さいことを意味する。負極活物質のDv10の数値は、GB/T19077-2016に規定された方法を参照して測定することができる。
【0083】
負極活物質のDv90の数値は、粒子中の体積分布の90%に対応する粒度を表し、Dv90の数値は、総体積の90%を有する粒子の粒径がこの数値より大きく、又は総体積の10%を有する粒子の粒径がこの数値より小さいことを意味する。負極活物質のDv90の数値はGB/T19077-2016に規定された方法を参照して測定することができる。
【0084】
負極活物質の粒径分布が上記範囲を満たすと、負極活物質全体の平均粒径は適度である。また、その粒径分布は均一であり、負極活物質全体の特性の均一性を向上させるのに有利である。一例として、(Dv90-Dv10)/Dv50は、1.4、1.3、1.2、1.1、1、又は0.75であってもよいが、もちろん、上記のいずれかの2つの数値からなる範囲であってもよい。本願は、負極活物質を製造する過程において、複数の直径のボールミルビーズを用いて一括して粉砕することにより、負極活物質の粒径分布を制御することができる。
【0085】
いくつかの実施例では、負極活物質の比表面積BETは、BET≦4m2/gであってもよい。
【0086】
比表面積とは、BET技術で測定可能な物質の総比表面積を意味する。通常、表面積はm2/gの単位で表される。BET(Brunauer/Emmett/Teller)技術は、不活性ガス(例えば窒素ガス)を使用して、負極活物質に吸着されたガスの量を測定し、材料のアクセス可能な(accessible)表面積を決定するために、当該技術分野で一般的に使用されている。
【0087】
負極活物質の比表面積BETが上記範囲を満たすと、比表面積の範囲は適度であり、負極活物質の動的特性は良好であり、負極活物質の初回クーロン効率に有利である。一例として、BETは4m2/g、3.5m2/g、3m2/g、2.5m2/g、2m2/g、1.5m2/g、1m2/g又は0.75m2/gであってもよいが、もちろん、上記のいずれかの2つの数値からなる範囲であってもよい。
負極活物質の製造方法
【0088】
第2態様では、本願は、本願の第1態様のいずれかの実施例に係る負極活物質を製造するための負極活物質の製造方法をさらに提供する。
【0089】
図1に示すように、この方法は、具体的には、
炭素骨格を有する炭素マトリックス粒子にケイ素前駆体を含むガスを供給するステップS100と、
化学気相堆積により、ケイ素前駆体から炭素骨格に付着したケイ素ナノ粒子を生成して、ケイ素-炭素複合体を得るステップS200と、を含む。
【0090】
ケイ素前駆体が化学気相堆積により炭素骨格上に堆積されてケイ素ナノ粒子を形成することにより、炭素マトリックス粒子とケイ素ナノ粒子とが複合化してケイ素-炭素複合体となる。炭素元素とケイ素元素とが相乗的に機能することで、負極活物質の導電性と容量を向上させた上で、炭素マトリックス粒子は、ケイ素ナノ粒子の体積膨張をある程度制限し、負極活物質の構造安定性を確保することができる。
【0091】
特に、炭素-ケイ素複合体の外周領域において、炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体の炭素元素の質量百分率A1と炭素-ケイ素複合体の総質量に対する炭素-ケイ素複合体のケイ素元素の質量百分率B1とが、0.8≦B1/A1≦2.5、選択的には、1≦B1/A1≦1.5を満たすという要件を負極活物質が満たす場合、炭素元素とケイ素元素とがより相乗的に機能して、負極活物質の構造安定性及び容量を向上させることができる。
【0092】
ステップS100では、気相堆積炉の加熱室に予め炭素マトリックス粒子を入れておき、真空ポンプを用いて加熱室を真空吸引するようにしてもよい。加熱室内に保護ガスを導入し、加熱室が保護ガスで満たされた後、ケイ素前駆体を含むガスを加熱室内に導入し、加熱室を一定の圧力に維持する。
【0093】
本願では、保護ガスとして不活性ガス及び/又は水素ガスを採用し、保護ガスとケイ素前駆体を含むガスとを一緒に炭素マトリックス粒子に導入することができる。一例として、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスのうちの1種又は複数種を含んでもよい。一例として、ケイ素前駆体を含むガスは、シラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン及びテトラクロロシランのうちの1種又は複数種を含む。
【0094】
本願では、堆積条件を制御することにより堆積効果を向上させることができる。特に、炭素マトリックス粒子が多孔質炭素骨格を含む場合、多孔質炭素骨格の孔内におけるケイ素ナノ粒子の堆積の均一性を調整することで、多孔質炭素骨格がケイ素ナノ粒子の膨張体積をより低減させ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。また、多孔質炭素骨格上に堆積したケイ素ナノ粒子が実質的に凝集しないので、二次電池のサイクル特性を確保することができる。
【0095】
いくつかの実施例では、ケイ素前駆体を含むガスと保護ガスとのガス流量の比が、(1~10):1であってもよい。
【0096】
いくつかの実施例では、加熱室は、450℃~1000℃に昇温して2h~10h保温し、炉内圧力が正圧とされる。
【0097】
いくつかの実施例では、加熱室は、相対真空度が100Pa~800Paとなるまで真空吸引され、かつ、回転機能を備え、回転数が0.5r/min~3r/minに制御される。
【0098】
S200では、化学気相堆積の過程において、ケイ素前駆体を加熱によりケイ素ナノ粒子に分解して炭素マトリックス粒子上に堆積させることができる。炭素マトリックス粒子が多孔質炭素骨格を含む場合、ケイ素ナノ粒子が多孔質炭素骨格の孔内及び/又は表面に堆積されてもよい。
【0099】
加熱室の保温が終了した後、ケイ素前駆体を含むガスの導入を停止し、形成されたケイ素ナノ粒子が自然に冷却された後、保護ガスの導入を停止する。ステップS200で形成された炭素-ケイ素複合体を最終的な負極活物質の完成品とすることができる。もちろん、ステップS200が終了した後に、負極活物質のさらなる特性向上を図るために、ステップS510及び/又はS300などの他の工程を行ってもよい。
【0100】
図2に示すように、いくつかの実施例では、負極活物質の製造方法は、
ケイ素-炭素複合体上に導電層を形成するステップS300をさらに含んでもよい。
【0101】
導電層は、炭素層及び/又は導電性ポリマー層を含んでもよい。ケイ素-炭素複合体の表面に導電層を形成してケイ素-炭素複合体を被覆することにより、負極活物質全体の導電性を向上させる。
【0102】
ステップS300で形成されたケイ素-炭素複合体を最終的な負極活物質の完成品とすることができる。もちろん、ステップS300が終了した後に、負極活物質のさらなる特性向上を図るために、ステップS520などの他の工程を行ってもよい。
【0103】
いくつかの例では、炭素層を形成する際に、化学気相堆積により、炭化水素系ガスを炭素源として炭素層を生成し、ケイ素-炭素複合体の表面に被覆してもよい。いくつかの実施例では、炭化水素系ガスは、C1~C3直鎖アルカン、シクロプロパン、C2~C3アルケン及びC2~C3アルキンを含んでもよい。一例として、C1~C3直鎖アルカンは、メタン、エタン及びプロパンのうちの1種又は複数種を含んでもよい。C2~C3オレフィンは、エチレン及び/又はプロピレンを含んでもよい。C2~C3アルキンは、アセチレン及び/又はプロピレンを含んでもよい。
【0104】
本願は、保護雰囲気下で炭素層を形成することができる。保護ガスとしては、窒素ガス又はアルゴンガスを用いることができる。
【0105】
本願は、堆積条件を制御することにより堆積効果を向上させ、ケイ素-炭素複合体の表面の空隙を被覆し、負極活物質の比表面積を小さくし、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0106】
いくつかの実施例では、炭化水素系ガスと保護ガスとのガス流量の比が、1:(1.5~10)である。
【0107】
いくつかの実施例では、炭素層を形成する過程で温度が750℃~950℃に制御され、被覆時間が2h~8hに制御される。
【0108】
いくつかの別の例として、導電性ポリマー層を形成する際に、有機ポリマーを溶媒法により溶媒に溶解した後、炭素-ケイ素複合体と均一に混合し、溶媒を除去することにより、有機ポリマーをケイ素-炭素複合体の表面に被覆された導電性ポリマー層に形成してもよい。一例として、有機ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド、及びポリパラフェニレンのうちの1種又は複数種を含んでもよい。溶媒は、アセトン、又はメタノールなどを含んでもよい。本願は、被覆条件を制御することにより被覆効果を向上させ、ケイ素-炭素複合体の表面の空隙を被覆し、負極活物質の比表面積を小さくし、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0109】
いくつかの実施例では、負極活物質の製造方法は、ケイ素-炭素複合体をスクリーニングし、予め設定された粒径範囲に適合する負極活物質を分離するステップS500をさらに含んでもよい。
【0110】
ステップS500のスクリーニングのステップは、ステップS200の後に行われるステップS510を含んでもよい。
【0111】
S510:ケイ素-炭素複合体に第1回のスクリーニングを行い、予め設定された第1粒径範囲に満たすケイ素-炭素複合体を分離する。このステップは、ケイ素ナノ粒子が堆積されていないものを除去することができる。一例として、予め設定された第1粒径範囲は、Dv10≧1.5μmであってもよい。第1回のスクリーニングの過程では、粒径の小さいケイ素-炭素複合体を除去することができるので、ケイ素-炭素複合体の粒径分布を均一にすることができる。第1回のスクリーニングの過程が終了した後により得られたケイ素-炭素複合体は、負極活物質の完成品とすることができる。もちろん、第1回のスクリーニングの過程が終了した後、負極活物質のさらなる特性向上を図るために、ステップS300などの他の工程により処理を継続してもよい。
【0112】
ステップS500のスクリーニングのステップは、ステップS300の後に行われるステップS520をさらに含んでもよい。
【0113】
S520:ケイ素-炭素複合体に第2回のスクリーニングを行い、予め設定された第2粒径範囲に満たすケイ素-炭素複合体を分離する。一例として、予め設定された第2粒径範囲は、5μm≦Dv50≦11μmであってもよい。
【0114】
図3に示すように、いくつかの実施例では、負極活物質の製造方法は、多孔質炭素骨格を含む炭素マトリックス粒子を製造するステップS400をさらに含み、具体的には、製造工程は、ステップS410~ステップS440を含む。
【0115】
S410:バイオマスを炭素源として粉砕する。バイオマスとしてヤシ殻、樹皮、及び果核のうちの1種又は複数種を用いることができる。
【0116】
S420:粉砕されたバイオマスを無機酸で洗浄し、無機酸として硫酸、塩酸、フッ化水素酸の1種又は複数種を用いることができる。無機酸の濃度は1mol/L~5mol/Lであり、酸洗時間は0.5h~2hである。
【0117】
S430:酸洗後のバイオマスを脱イオン水で洗浄して残留酸を除去した後、不活性雰囲気中でバイオマスを前炭化する。不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、及びヘリウムガスから選ばれる1種又は複数種であってもよい。前炭化温度は400~500℃であり、前炭化時間は2h~5hである。
【0118】
S440:前炭化後のバイオマスを高温炭化して多孔質炭素材料を得る。炭化温度は800℃~1600℃であり、炭化時間は2h~4hである。
【0119】
多孔質炭素骨格中にケイ素ナノ粒子を堆積させることは、多孔質炭素骨格によるケイ素ナノ粒子の体積膨張の制限にさらに有利であり、負極活物質の構造安定性を確保する。
【0120】
本願では、酸洗の濃度、酸洗時間、前炭化温度、前炭化時間、炭化温度及び炭化時間の少なくとも1つの変化を制御することにより、多孔質炭素骨格の孔径、空隙率などを調整することができる。
二次電池
【0121】
第3態様では、本願は、二次電池を提供する。本願の二次電池は、さらに、正極シート、負極シート、セパレータ、及び電解液をさらに含んでもよい。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に配置され、正極シートと負極シートとを分離する。
[負極シート]
【0122】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一方の面上に設けられた負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0123】
一例として、負極集電体は、その厚み方向に対向する2つの表面を有する。負極活物質層は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0124】
いくつかの実施例では、負極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えば銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材層と、高分子材料基材層の少なくとも1つの表面上に形成された金属層とを含むことができる。複合集電体は、高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を形成することによって形成することができる。
【0125】
いくつかの実施例では、負極活物質は、本願の第1態様のいずれかの実施例に係る負極活物質を含んでもよく、本願の第2態様のいずれかの実施例に係る方法によって製造された負極活物質であってもよい。
【0126】
本願の二次電池では、サイクル中に炭素骨格はケイ素ナノ粒子の膨張をある程度抑制する効果を奏する。特に、炭素-ケイ素複合体の外周領域が0.8≦B1/A1≦2.5を満たす場合、炭素マトリックス粒子は、ケイ素ナノ粒子の体積膨張を大幅に制限し、負極活物質の構造安定性を向上させ、さらに二次電池のサイクル特性を向上させることができる。ケイ素ナノ粒子は、比容量が高いため、負極活物質の容量を向上させ、且つ金属イオンの挿入電圧が低く、金属イオンの挿入に有利であり、二次電池のレート特性を向上させることができる。炭素マトリックス粒子は、導電性が良好であるため、負極活物質の導電性を向上させることができる。
【0127】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、選択的に、バインダを含んでもよい。バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0128】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、選択的に、導電剤をさらに含んでもよい。導電剤は、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及び炭素ナノ繊維から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0129】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、選択的に、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤をさらに含んでもよい。
【0130】
いくつかの実施例では、負極シートは、負極活物質、導電剤、バインダ、及び任意の他の成分などの負極シートを製造するための上記の成分を溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させて負極スラリーを形成し、負極集電体上にこの負極スラリーを塗布し、乾燥、コールドプレスなどの工程を経て、負極シートを得ることによって製造することができる。
[正極シート]
【0131】
正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの面上に設けられた正極活物質層と、を含む。正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0132】
一例として、正極集電体は、その厚み方向に対向する2つの表面を有する。正極活物質層は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられている。
【0133】
いくつかの実施例では、正極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材層と、高分子材料基材層の少なくとも1つの表面上に形成された金属層とを含むことができる。複合集電体は、高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を形成することによって形成することができる。
【0134】
いくつかの実施例では、正極活物質は、当該技術分野で公知の電池用の正極活物質を用いることができる。一例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれらの改質化合物のうちの少なくとも1種を含むことができる。しかし、本願はこれらの材料に限定されるものではなく、電池の正極活物質として用いることができる従来の他の材料を用いることもできる。これらの正極活物質は、1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(略してNCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(略してNCM523)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(略してNCM211)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(略してNCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(略してNCM811)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びこれらの改質化合物などのうちの少なくとも1種を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(略してLFP))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料のうちの少なくとも1種を含むことができるが、これらに限定されない。
【0135】
いくつかの実施例では、正極活物質層は、選択的に、バインダをさらに含んでもよい。一例として、バインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0136】
いくつかの実施例では、正極活物質層は、選択的に、導電剤をさらに含んでもよい。一例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、コーチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及び炭素ナノ繊維のうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0137】
いくつかの実施例では、正極シートは、正極活物質、導電剤、バインダ、及び任意の他の成分などの正極シートを製造するための上記の成分を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを形成し、正極集電体にこの正極スラリーを塗布し、乾燥、コールドプレスなどの工程を経て、正極シートを得ることによって製造することができる。
[セパレータ]
【0138】
いくつかの実施例では、二次電池はセパレータをさらに含む。本願では、セパレータは、その種類に特に限定がなく、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0139】
いくつかの実施例では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種であってもよい。セパレータは、単層の薄膜であってもよいし、多層の複合薄膜であってもよく、特に限定されない。セパレータが多層の複合薄膜である場合、各層の材料は同一であっても異なっていてもよく、特に限定されない。
【0140】
いくつかの実施例では、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリとすることができる。
[電解質]
【0141】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願では、電解質は、その種類に特に限定がなく、要求に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液状、ゲル状、又は全固体であってもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、電解質は電解液を用いる。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ビスフルオロスルホニルイミドリチウム、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、及びジエチルスルホンから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、電解液は、選択的に、添加剤をさらに含んでもよい。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含んでもよく、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温又は低温特性を改善する添加剤など、電池のある特性を改善することができる添加剤を含んでもよい。
【0146】
いくつかの実施例では、二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するのに有用である。
【0147】
いくつかの実施例では、二次電池の外装体は、ハードプラスチックケース、アルミニウケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装体は、袋式ソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、及びポリブチレンサクシネートなどのうちの少なくとも1種のようなプラスチックであってもよい。本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形又は他の任意の形状としてもよい。例えば、
図4及び
図5には、角形構造の二次電池1が例示されている。
【0148】
いくつかの実施例では、二次電池1は外装体11を含む。外装体11は、トップカバーアセンブリ111と、ケース112とを含む。正極シート、負極シート及びセパレータで構成された電極アセンブリ12はケース112内に収容され、ケース112内には電解液も収容されている。正極シート又は負極シートはタブを含む。二次電池1の充放電時に、正極シートと負極シートとの間に活性イオンが往復して挿入・脱離される。電解液は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に配置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすと同時に、活性イオンを通過させる。この二次電池1は、具体的には、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池などの捲回型や積層型の電池であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0149】
選択的には、ケース112は、底板と、底板に接続された側板と、を含んでもよく、底板と側板により収納室が画定される。ケース112は、収納室に連通している開口を有し、トップカバーアセンブリ111は、開口を覆って、収納室を密閉させることができる。正極シート、負極シート、及びセパレータを捲回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ12に形成してもよい。電極アセンブリ12は、収納室に封止される。電解液は電極アセンブリ12に含浸される。二次電池1に含まれる電極アセンブリ12の数は1種又は複数種であってもよく、当業者によって要求に応じて選択してもよい。
【0150】
いくつかの実施例では、二次電池1を電池として組み立てることができる。電池は、電池モジュール又は電池パックであってもよい。例えば、電池モジュールに含まれる二次電池1の数は1種又は複数種であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途や容量に応じて当業者が選択することができる。
【0151】
図6は、一例としての電池モジュール10である。
図6を参照すると、電池モジュール10には、複数の二次電池1は電池モジュール10の長手方向に沿って順次配列されてもよい。もちろん、任意の他の形態で配置されてもよい。さらに、ファスナーによりこの複数の二次電池1を固定してもよい。選択的には、電池モジュール10は、複数の二次電池1を収容する収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよい。
【0152】
いくつかの実施例では、上記の電池モジュール10は、さらに電池パックとして組み立てられてもよい。電池パックに含まれる電池モジュール10の数は、1種又は複数種であってもよく、具体的な数は、電池パックの用途や容量に応じて当業者が選択することができる。もちろん、電池パックは、複数の二次電池1から直接構成されてもよい。
【0153】
図7及び
図8は、一例としての電池パック20である。
図7及び
図8を参照すると、電池パック20には、電池筐と、電池筐内に配置された複数の電池モジュール10とが含まれていてもよい。電池筐は、上筐体21と、下筐体22とを含む。上筐体21は、下筐体22に覆われて、電池モジュール10を収容する閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール10は、電池筐内に任意の態様で配置されてもよい。
【0154】
また、本願は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。二次電池、電池モジュール又は電池パックは、電力消費装置の電源としても、電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとしても使用することができる。電力消費装置は、モバイル機器(例えば携帯電話、ラップトップなど)、電気車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び人工衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。電力消費装置は、その使用要求に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0155】
図9は、一例としての電力消費装置30である。当該電力消費装置30は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置30が二次電池に要求する高出力化及び高エネルギー密度化に応えるために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。装置の別の例として、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般的に軽量化、薄型化を要求するため、電源として二次電池を採用することができる。
実施例
【0156】
以下、本願の実施例を説明する。以下に記載される実施例は、本願を説明するためにのみ使用される例示的なものであり、本願を限定するものとして理解すべきではない。実施例に具体的な技術若しくは条件が明記されていない場合、当該技術分野の文献に記載された技術若しくは条件に従って、又は製品の説明書に従って行う。使用した試薬又は機器は、製造メーカーが明記されていない場合、いずれも市販品として入手できる通常の製品である。
実施例1
1、正極シートの製造
【0157】
正極集電体として厚さ8μmのアルミニウム箔を用いた。正極活物質であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333)、導電性カーボンブラック、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、適量のN-メチルピロリドン(NMP)の溶媒中で93:2:5の重量比で十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成した。この正極スラリーを正極集電体の表面に塗布し、乾燥などの工程を経て、正極シートを得た。
2、負極シートの製造
2.1 負極活物質の製造
【0158】
多孔質炭素骨格を含むハードカーボンを気相堆積炉の加熱室に入れ、真空ポンプを用いて加熱室を相対真空度100Pa~800Paに真空吸引した。
【0159】
加熱室内に窒素ガスを導入し、加熱室内で窒素ガスが満たされた後、ケイ素前駆体を含むガスを加熱室内に導入し、ケイ素前駆体を含むガスと保護ガスとのガス流量の比を5:1とした。
【0160】
加熱室を600℃まで昇温し、5h保温し、気相堆積炉を正圧に維持した。ケイ素前駆体を含むガスを分解してケイ素ナノ粒子とし、ハードカーボンの孔内及び/又は表面に堆積させて、ケイ素-炭素複合体を得た。
【0161】
加熱室での保温が終了した後、ケイ素前駆体を含むガスの導入を停止し、ケイ素ナノ粒子を自然に冷却した後、窒素ガスの導入を停止した。
2.2 負極シートの製造
【0162】
負極活物質(ケイ素-炭素複合体)、導電性カーボンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、バインダであるスチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBR)を適量の脱イオン水中で96.5:1.0:1.0:1.5の重量比で十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーを形成した。この負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥などの工程を経て、負極シートを得た。
3、電解液の製造
【0163】
エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して有機溶媒を得、次いで、十分に乾燥させたリチウム塩LiPF6を混合後の有機溶媒に溶解し、濃度1mol/Lの電解液を製造した。
4、二次電池の製造
【0164】
正極シート、セパレータ(PP/PE/PP複合薄膜)、負極シートを順次積層したものを捲回して、電池セルとし、ハウジングに入れて、上記電解液を電池セルに注入し、その後、封口、静置、ホット・コールドプレス、化成などの工程を経て、二次電池を得た。
実施例2~実施例11
【0165】
実施例1と比べて、ケイ素-炭素複合体中の炭素元素とケイ素元素の質量百分率の分布が異なり、炭素元素とケイ素元素の質量百分率の分布を満たすために、各実施例では、ハードカーボンの粒径Dv50やSpinが異なるなど、粒径分布の異なる負極活物質を採用することができる。
実施例12
【0166】
実施例12では、炭素マトリックス粒子は非多孔質ハードカーボンを用いた点は実施例1と異なる。
実施例13
【0167】
実施例13では、炭素マトリックス粒子は非多孔質黒鉛を用いた点は実施例1と異なる。
実施例14
【0168】
実施例14では、ケイ素-炭素複合体の表面が導電層で被覆されていない点は実施例1と異なる。
実施例15~実施例18
【0169】
実施例15~18では、孔径及び空隙率の異なるハードカーボンを用いた点は実施例1と異なる。
実施例19及実施例20
【0170】
実施例19及び実施例20では、異なる粒径のケイ素ナノ粒子を用いた点は実施例1と異なる。
実施例21~実施例24
【0171】
実施例21~24では、異なる導電層の厚さを用いた点は実施例1と異なる。
実施例25及び実施例26
【0172】
実施例25~26では、異なる導電層の材質を用いた点は実施例1と異なる。
実施例27~実施例31
【0173】
実施例27~実施例31では、粒径Dv50及び粒径分布spinの少なくとも一方が異なる点は実施例1と異なる。
比較例1~比較例2
【0174】
ケイ素-炭素複合体中の炭素元素とケイ素元素の質量百分率の分布が異なる点は実施例1と異なり、炭素元素とケイ素元素の質量百分率の分布を満たすために、各実施例では、ハードカーボンの粒径Dv50やSpinが異なるなど、粒径分布の異なる負極活物質を採用することができる。
比較例3
【0175】
負極活物質として、ケイ素ナノ粒子が堆積されておらず、導電層が被覆されていない多孔質ハードカーボンを用いた点は実施例1と異なる。
【0176】
実施例と比較例の負極活物質のパラメータは、表1~表7に示される。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
表1~表7では、炭素マトリックス粒子の多孔質構造の制御過程について、炭素マトリックス粒子がハードカーボンである場合を例として説明する。バイオマスを炭素源として粉砕し、バイオマスとしてヤシ殻、樹皮、及び果核のうちの1種又は複数種を用いる。粉砕されたバイオマスを無機酸で洗浄し、無機酸として硫酸、塩酸、フッ化水素酸の1種又は複数種を用いることができる。無機酸の濃度は1mol/L~5mol/Lであり、酸洗時間は0.5h~2hである。酸洗後のバイオマスを脱イオン水で洗浄して残留酸を除去した後、不活性雰囲気中でバイオマスを前炭化する。不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、及びヘリウムガスから選ばれる1種又は複数種であってもよい。前炭化温度は400℃~500℃であり、前炭化時間は2h~5hである。前炭化後のバイオマスを高温炭化して多孔質炭素材料を得る。炭化温度は800℃~1600℃であり、炭化時間は2h~4hである。
特性試験
負極活物質の試験部分
1、炭素-ケイ素複合体中のケイ素及び炭素元素分布の特徴評価
【0185】
エネルギースペクトル法によるイオン研磨断面についての元素分析は、GB-T17359-2012試験標準に準拠して、粒子断面の元素分布を試験した。
2、炭素-ケイ素複合体中のケイ素元素の含有量の試験
【0186】
発光スペクトル試験(ICP:Inductively coupled plasma)を用いてケイ素元素の含有量を測定し、具体的には、炭素-ケイ素複合体をサンプルとして、王水とフッ化水素酸HFを用いてサンプルに対して消化を行い、15minで消化した溶液と完全に消化した溶液を用いてICP試験を行い、45minで消化した溶液中のケイ素の含有量は「炭素-ケイ素複合体の外周領域」のケイ素の含有量であり、完全に消化した溶液と1hで消化した溶液中のケイ素の含有量の差は「炭素-ケイ素複合体の中心領域」のケイ素の含有量である。
3、炭素-ケイ素複合体中の炭素元素の含有量の試験
【0187】
赤外線吸収法による炭素-硫黄の含有量分析は、GB/T20123-2006試験標準に準拠して試験し、具体的には、炭素-ケイ素複合体をサンプルとして、試験20min時の炭素の含有量を、「炭素-ケイ素複合体の外周領域」の炭素の含有量とし、試験20minと試験終了時の炭素の含有量の差を「炭素-ケイ素複合体の外周領域」の炭素の含有量とした。
4、炭素-ケイ素複合体の短径rの試験
【0188】
三軸特徴評価法により短径rを測定し、具体的には、炭素-ケイ素複合体の平面投影図上で短径rを測定した。
5、負極活物質のDv10、Dv90、Dv50の測定
【0189】
レーザー回折粒度分布測定装置(Malvern Mastersizer 3000)を用い、粒度分布レーザー回折法GB/T19077-2016に準拠して粒度分布を測定し、Dv10、Dv90、Dv50を得て、(Dv90-Dv10)/Dv50を算出した。
6、負極活物質の比表面積のBET測定
【0190】
ガス吸着法による比表面積測定は、GB/T19587-2017試験標準に準拠して試験し、具体的には、負極活物質をサンプルとして、サンプル管を-196℃の液体窒素に浸漬し、0.05~0.30の相対圧力で、各圧力での窒素の固体表面の吸着量を測定し、BET多層吸着理論及びその式に基づいて、サンプルの単分子層の吸着量を求め、負極活物質の比表面積を算出した。
【0191】
BETの計算式:
【数1】
式中、n
aは吸着されるガス量(単位mol/g)、p/p
0は相対圧力、n
mは単分子層の吸着量、Cは吸着剤の表面上の吸着層の数を制限するための補正パラメータである。
7、炭素マトリックス粒子の空隙率の測定
【0192】
GB/T24586に従ってガス置換法で測定した。空隙率P=(V1-V2)/V1*100%であり、ここで、V1はサンプルの見かけ体積、V2は試料の真の体積である。
8、炭素マトリックス粒子の孔径の測定
【0193】
ガス吸着法による孔径試験は、GB/T19587-2017&GB/T21650.2-2008試験標準に準拠して試験し、具体的には、ケイ素-炭素複合体をサンプルとして、サンプル管を-196℃の液体窒素に浸漬し、窒素ガスを0~1の相対圧力下で被測定材料に吸着し、各段の孔径の体積と対応する分圧との関係図に基づいて多孔質材料の孔径分布を特徴評価した。
9、ケイ素ナノ粒子の粒径Dの測定
【0194】
JIS/K0131-1996試験標準に準拠してサンプルについて試験してXRDパターンを得て、サンプルのXRDパターンに基づいて、Si(111)結晶面の回折ピークの半ピーク幅βと回折角度θを、デバイ・シェラー(Debye-Scherrer)式に代入して計算し、ナノケイ素粒子の粒径を得た。デバイ・シェラー式は、Dhkl=k・λ/(βcosθ)である。
【0195】
式中、Dhklはナノケイ素粒子の粒径(単位nm)を表し、kはシェラー定数を表し、0.89であり、λは入射したX線の波長を表し、0.15406nmであり、βは回折ピークの半ピーク幅(単位rad)を表し、θは回折角(単位度)を表す。
10、導電層の厚さの測定
【0196】
走査型電子顕微鏡法を用いて、JY/T010-1996試験標準に準拠してサンプルのイオン研磨断面のトポグラフィーを測定し、断面のトポグラフィーにより材料本体外の導電被覆層の厚さを測定した。
二次電池のサイクル特性の試験
1、二次電池の常温サイクル特性の試験
【0197】
試験条件を常温として、作製した二次電池を0.5Cレートで充電し、0.5Cレートで放電し、満充電と満放電のサイクル試験を行い、二次電池の容量が初期容量の80%に減衰すると、試験を停止し、サイクル数を記録した。
【0198】
二次電池を常温で30分間静置した後、0.5Cの定電流で4.2Vまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で0.05Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cの定電流で2.8Vまで放電することを一つの充放電サイクルとし、今回の放電容量は電池の初回放電容量とし、電池に対して上記の方法で1000回サイクルの充放電試験を行い、1000回サイクル以降の放電容量を記録した。
【0199】
二次電池の1000回サイクルした後の容量維持率(%)=(1000回サイクルの放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%
2、二次電池の45℃でのサイクル特性の試験
【0200】
試験条件を45℃とし、作製した二次電池を1Cレートで充電し、1Cレートで放電し、満充電と満放電のサイクル試験を行い、二次電池の容量が初期容量の80%に減衰すると、試験を停止し、サイクル数を記録した。
【0201】
二次電池を45℃で30分間静置した後、1Cの定電流で4.2Vまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で0.05Cまで充電し、5分間静置した後、1Cの定電流で2.8Vまで放電することを一つの充放電サイクルとし、今回の放電容量は電池の初回放電容量とし、電池に対して上記の方法で1000回サイクルの充放電試験を行い、1000回サイクル以降の放電容量を記録した。
【0202】
二次電池の1000回サイクルした後の容量維持率(%)=(1000回サイクルの放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%
試験結果
【0203】
本願の負極活物質が二次電池のサイクル特性を改善させる作用は表8~表11に示される。
【0204】
【0205】
表8から分かるように、比較例1と比較例2と比べて、実施例1~実施例11では、ケイ素ナノ粒子が炭素骨格上に均一に堆積した場合、二次電池のサイクル特性が優れている。0.8≦B1/A1≦2.5、特に1≦B1/A1≦1.5とすることにより、炭素骨格の孔内にケイ素ナノ粒子を均一に堆積させ、二次電池のサイクル中にケイ素ナノ粒子の膨張を効果的に抑制し、負極活物質の構造安定性を向上させ、さらに二次電池のサイクル特性を改善することができる。さらに、1.05≦A2/B2≦50、特に1.05≦A2/B2≦3とすることにより、ケイ素ナノ粒子を炭素骨格の構造全体にさらに均一に堆積させ、二次電池のサイクル特性をさらに改善することができる。よりさらに、1≦A/B≦3、特に1.3≦A/B≦2とすることにより、ケイ素ナノ粒子を炭素骨格の構造全体に一層均一に堆積させ、二次電池のサイクル特性を一層向上させることができる。
【0206】
【0207】
表9から分かるように、比較例3では、ハードカーボン上にケイ素ナノ粒子が堆積しておらず、全体としてのサイクル特性が悪くなる。比較例3と比べて、実施例12~13では、ケイ素ナノ粒子の非多孔質ハードカーボン上への堆積は、負極活物質の構造安定性をある程度改善することができる。実施例1では、多孔質ハードカーボン中にケイ素ナノ粒子を堆積させることにより、負極活物質の構造安定性を大幅に改善させ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。実施例14と比べて、実施例1では、ケイ素-炭素複合体の表面に導電層を形成することにより、二次電池の導電性をさらに改善することができる。
【0208】
【0209】
表10から分かるように、実施例1、実施例15及び実施例18では、ハードカーボンの孔径及び空隙率を制御することにより、ケイ素ナノ粒子の堆積効果を調整し、負極活物質の構造安定性を制御することができる。
【0210】
実施例19及び実施例20では、ケイ素ナノ粒子の粒径を制御することにより、ケイ素-炭素複合体の特性を適切に制御することができる。
【0211】
実施例21~26では、負極活物質の導電層を制御することにより、負極活物質の導電特性を改善することができる。
【0212】
【0213】
表11から分かるように、実施例27~31では、負極活物質の粒径を制御することにより、負極活物質の特性を改善し、二次電池のサイクル特性を改善することができる。
【0214】
本願は、好ましい実施例を参照して説明されたが、本願の範囲を逸脱することなく、様々な改良を行い、且つその構成要素を等価物と交換することができる。特に、構造的な衝突が存在しない限り、各実施例に記載された各技術的特徴は任意の方式で組み合わされてもよい。本願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、請求の範囲内に含まれるすべての技術的解決手段を含む。