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特許7640771う蝕抑制組成物、並びにこれを用いた甘味組成物、食品、サプリメント、歯磨剤組成物、及び洗口液組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】う蝕抑制組成物、並びにこれを用いた甘味組成物、食品、サプリメント、歯磨剤組成物、及び洗口液組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/721 20060101AFI20250226BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20250226BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250226BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250226BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250226BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20250226BHJP
【FI】
A61K31/721
A61P1/02
A61P31/04
A61K47/26
A61K47/36
A61Q11/00
A61K8/73
A23L33/125
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024043788
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313014608
【氏名又は名称】ウェルネオシュガー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】仲野 道代
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰之
(72)【発明者】
【氏名】山本 美桜
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/035725(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/023742(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/172635(WO,A1)
【文献】特開2019-052186(JP,A)
【文献】CIデキストランシリーズ ナチュラルキッズ バナナ味 歯みがき剤 1本(63g),Amazon[online],取り扱い開始日2023年4月11日, [検索日2024.05.30],https://www.amazon.co.jp/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L33/00
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C12P 19/08
A61K31/721
A61P1/02
C13K
Mintel GNPD
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/KOSMET(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDremIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)サイクロデキストランと、(B)スクロースと、を含有し
記(B)成分100質量部に対する前記(A)成分の割合が100質量部以下である、う蝕抑制組成物(ホップ抽出物を含有するものを除く)。
【請求項2】
(A)サイクロデキストランと、(B)スクロースと、を含有し
記(B)成分100質量部に対する前記(A)成分の割合が10質量部以下である、甘味組成物(ホップ抽出物を含有するものを除く)。
【請求項3】
(A)サイクロデキストランと、(B)スクロースと、を含有し
記(B)成分100質量部に対する前記(A)成分の割合が10質量部以下である、食品(ホップ抽出物を含有するものを除く)。
【請求項4】
(A)サイクロデキストランと、(B)スクロースと、を含有し
記(B)成分100質量部に対する前記(A)成分の割合が10質量部以下である、サプリメント(ホップ抽出物を含有するものを除く)。
【請求項5】
(A)サイクロデキストランと、(B)スクロースと、を含有し
記(B)成分100質量部に対する前記(A)成分の割合が100質量部以下である、歯磨剤組成物(ホップ抽出物を含有するものを除く)。
【請求項6】
(A)サイクロデキストランと、(B)スクロースと、を含有し
前記(B)成分100質量部に対する前記(A)成分の割合が100質量部以下である、洗口液組成物(ホップ抽出物を含有するものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、う蝕抑制組成物、並びにこれを用いた甘味組成物、食品、サプリメント、歯磨剤組成物、及び洗口液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕(うしょく)は、歯の実質欠損のなかで、生物的要因を原因とするものを指し、口腔内の細菌が糖質から作った酸による歯の脱灰等が主な原因であることが知られている。
う蝕の原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)は、グラム陽性で通性嫌気性のレンサ球菌の一種である。このストレプトコッカス・ミュータンスは、自ら産生するグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)により、スクロースを原料として、粘着性の多糖類であるグルカンを合成する。このグルカンは、歯の表面で他の口腔内細菌とともに、プラークと呼ばれる塊を形成してその内部で酸を産生し、これが歯の表面を侵食して、歯を脱灰することにより虫歯が形成される。グルカンが形成されない場合、ストレプトコッカス・ミュータンス等の口腔内細菌が、歯の表面に付着しづらくなるため、う蝕の抑制につながる。
【0003】
従来、一部の環状オリゴ糖に、ストレプトコッカス・ミュータンスのGTFの酵素活性を阻害し、う蝕を抑制する作用があることが知られていた。例えば、環状イソマルトオリゴ糖を有効成分として含有する抗う蝕剤が知られていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3400868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、う蝕等の口腔内疾患が、口腔内疾患以外の疾患にも影響を及ぼす可能性が指摘されており、う蝕を抑制することの医学的重要性が高まっている。このため、本発明は、従来の抗う蝕剤と比較しても、より高い水準で、う蝕を抑制できるう蝕抑制組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする所定の環状構造を有するオリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖とを含有するう蝕抑制組成物によれば、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0007】
第1の特徴に係る発明は、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状構造を有するオリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖と、を含有し、上記(A)成分がサイクロデキストラン及び/又はサイクロデキストラン誘導体であり、上記サイクロデキストラン誘導体は、サイクロデキストランが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが他の極性基に置換されている、う蝕抑制組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のう蝕抑制組成物は、(A)グルコースを構成単位とする所定の環状オリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖とを含有し、これらがう蝕抑制に対して協働して作用するため、従来の抗う蝕剤と比較しても、より高い水準で、う蝕を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、サイクロデキストラン(CI)の構造式の一例である。
図2図2は、シクロデキストリン(CD)の構造式の一例である。
図3図3は、〔試験1〕サイクロデキストラン存在下/非存在下でのストレプトコッカス・ミュータンスの増殖速度の検討の結果である。
図4図4は、〔試験2〕サイクロデキストラン存在下/非存在下でのストレプトコッカス・ミュータンスによるバイオフィルム形成量の測定結果である。
図5図5は、〔試験3〕ストレプトコッカス・ミュータンスによるバイオフィルム構造の観察における、[試験3-1]菌体の染色と顕微鏡観察によるバイオフィルム構造の確認の結果である。
図6図6は、〔試験3〕ストレプトコッカス・ミュータンスによるバイオフィルム構造の観察における、[試験3-1]菌体の染色と顕微鏡観察によるバイオフィルム構造の確認の結果である。
図7図7は、〔試験3〕ストレプトコッカス・ミュータンスによるバイオフィルム構造の観察における、[試験3-2]バイオフィルム中のグルカン及び菌量の検討結果である。
図8図8は、〔試験4〕ストレプトコッカス・ミュータンスのグルカン合成酵素の活性阻害効果の検証における、[試験4-1]サイクロデキストランを13%以上含む市販のデキストラン混合物を用いた検証結果である。
図9図9は、〔試験4〕ストレプトコッカス・ミュータンスのグルカン合成酵素の活性阻害効果の検証における、[試験4-2]サイクロデキストランの高純度試料を用いた検証結果である。
図10図10は、〔試験5〕サイクロデキストランのGTF活性阻害様式の検証における、[試験5-1]ウエスタンブロッティングによるタンパクの発現量の検討結果である。
図11図11は、〔試験5〕サイクロデキストランのGTF活性阻害様式の検証における、[試験5-2]活性染色を利用した酵素活性に対する影響の検証結果である。
図12図12は、〔試験5〕サイクロデキストランのGTF活性阻害様式の検証における、[試験5-3]酵素基質反応の観点からの酵素活性に対する影響の検証結果である。
図13図13は、〔試験5〕サイクロデキストランのGTF活性阻害様式の検証における、[試験5-3]酵素基質反応の観点からの酵素活性に対する影響の検証結果である。
図14図14は、〔試験6〕ラット動物う蝕モデルにおける飼料にサイクロデキストランを添加した場合のストレプトコッカス・ミュータンスによるう蝕の発生に対する阻害効果の検討結果である。
図15図15は、〔試験6〕ラットう蝕実験モデルにおける飼料にサイクロデキストランを添加した場合のプラーク沈着抑制効果の検討結果である。
図16図16は、〔試験6〕ラット動物う蝕モデルにおける飲料水にサイクロデキストランを添加した場合のストレプトコッカス・ミュータンスによるう蝕の発生に対する阻害効果の検討結果である。
図17図17は、〔試験6〕ラットう蝕実験モデルにおける飲料水にサイクロデキストランを添加した場合のプラーク沈着抑制効果の検討結果である。
図18図18は、〔試験7〕触媒ドメイン(CAT)組み換えタンパク質の作製の試験結果である。
図19図19は、〔試験7〕触媒ドメイン(CAT)組み換えタンパク質の作製の試験結果である。
図20図20は、〔試験8〕バイオフィルム破砕試験による菌体間結合力の検討結果である。
図21図21は、〔試験9〕ヒト試験による口腔プラーク沈着抑制効果の検討における研究アウトラインを示すフローチャートである。
図22図22は、〔試験9〕ヒト試験による口腔プラーク沈着抑制効果の検討結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
<う蝕抑制組成物>
本実施形態に係るう蝕抑制組成物は、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状構造を有するオリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖と、を含有する。
【0012】
上述のとおり、ストレプトコッカス・ミュータンスは、自ら産生するグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)により、ショ糖を原料として、粘着性の多糖類であるグルカンを合成し、これにより歯の表面にプラークが形成される。本実施形態に係るう蝕抑制組成物は、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状オリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖と、を含有することにより、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状オリゴ糖のみを含有する組成物よりも、より高いう蝕抑制効果を発揮しうるものである。
【0013】
〔(A)成分;グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状オリゴ糖〕
本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有する(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状オリゴ糖としては、サイクロデキストラン及び/又はこれらが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが他の極性基に置換されている誘導体(以下、単に「サイクロデキストランの誘導体」とも称する)を挙げることができる。
【0014】
このうち、サイクロデキストランの誘導体としては、自然界に見いだされる化合物と、人工的に合成される化合物のいずれをも含む。サイクロデキストランが有するアルコール性水酸基を置換していてもよい極性基としては、特に限定されるものでないが、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アルコキシル基、グリコシル基、チオール基、スルフィド基、セレノール基、アミノ基、アミド基、リン酸基を挙げることができる。これらの極性基は、1分子のサイクロデキストランの単一の水酸基を置換していてもよいし、複数の極性基を同じ極性基で置換していてもよいし、複数の極性基を異なる極性基で置換していてもよい。
【0015】
また、グルコース誘導体とは、上記のサイクロデキストランの誘導体を構成する構成単位のうち、グルコース以外のものを指す。ここで、仮に、サイクロデキストラン誘導体に導入された置換基が、グルコースからサイクロデキストランが合成された後に導入されたものである場合においても、サイクロデキストランのグリコシド結合を加水分解して得られうる構成単位のうち、グルコース以外のものについても、「グルコース誘導体」に含めて考えるものする。よって、「グルコース誘導体」の語は、サイクロデキストランの誘導体の合成にあたり、グルコース誘導体が合成原料として用いられることまでを意味するものではない。
【0016】
[サイクロデキストラン及びサイクロデキストランの誘導体]
図1は、サイクロデキストラン(CI)の構造式の一例である。サイクロデキストランは、4個以上33個以下のグルコースがα-1,6-グリコシド結合で環状に連結した環状イソマルトオリゴ糖である。本実施形態に係るう蝕抑制組成物において、う蝕の効果的抑制の観点からは、(A)成分としてサイクロデキストランを用いることが好ましい。
【0017】
サイクロデキストランの誘導体として好ましい化合物の具体例は、サイクロデキストランが、一部のグルコース残基から分岐したサイクロデキストランの分岐体(アルコール性水酸基がグリコシル基に置換されているもの)や、一部のグルコース残基の水酸基がアミノ基に置換されたサイクロデキストランのアミノ置換体が挙げられる。なお、後者に含まれる単糖残基のうち、特に、グルコース残基の2位の水酸基がアミノ基に置換されているものを、一般にグルコサミン残基と称する。
【0018】
一例として、サイクロデキストランは、バチルス属の微生物の培養液や環状イソマルトオリゴ糖合成酵素の反応液から得ることができる(特許第3075873号、特許第3117328号参考;なお、参考文献の内容は、参照により本明細書の一部として組み込まれるが、本明細書に特別に記載のある事項は、本明細書の記載事項が優先する)。微生物や酵素を利用してサイクロデキストランを得た場合、サイクロデキストランと、サイクロデキストランの分岐体の混合物として得られる。このサイクロデキストランと、サイクロデキストランの分岐体の混合物は、必要に応じ、従来公知のアフィニティークロマトグラフィーやゲルろ過クロマトグラフィー等を用いることにより、サイクロデキストランの濃度が75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは99%以上となった組成物や、サイクロデキストランの分岐体の濃度が75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは99%以上となった組成物に分離することもできる。本実施形態に係るう蝕抑制組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、サイクロデキストランと、サイクロデキストランとの分岐体の混合物、サイクロデキストランの濃度が75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは99%以上となった組成物や、サイクロデキストランの分岐体の濃度が75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは99%以上となった組成物のいずれを用いてもよい。
【0019】
なお、本明細書において、「サイクロデキストラン」と言及する場合、分岐構造を有さない環状イソマルトオリゴ糖であるサイクロデキストランを指し、分岐構造を有するものは、「サイクロデキストランの分岐体」として「サイクロデキストラン」とは区別するものとする。
【0020】
なお、サイクロデキストラン(CI)と相互に類似する化合物として、シクロデキストリン(CD)が知られている。図2は、シクロデキストリン(CD)の構造式の一例である。
【0021】
CIとCDとは、複数個のグルコースが環状に連結した環状オリゴ糖である点で共通するが、両者は以下の点で相違する。第1に、CIは、4個から33個のグルコースが結合するのに対し、CDは、6個から8個のグルコースが結合する点で異なる。第2に、CIは、グルコースがα-1,6-グリコシド結合で連結するのに対し、CDは、グルコースがα-1,4-グリコシド結合で連結する点で異なる。第3に、CIの分子構造は、口径が大きく浅いのに対し、CDの分子構造は、口径が小さく深い点で異なる。第4に、CIは、水への溶解性が高いのに対し、CDは、水への溶解性が低い点で異なる。
【0022】
〔(B)成分;(A)成分以外の糖〕
本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有する、(A)成分以外の糖としては、本発明の効果を損なわない範囲で特に限定されず、任意の糖を挙げることができる。しかしながら、(B)成分は、これらの糖の中でも、アルドース若しくはケトースである単糖、又は加水分解によりアルドース及び/若しくはケトースを含有する混合物を生成しうる、二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、若しくは多糖であることが好ましい。そのような単糖、二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、多糖については、以下に代表例を列挙する。
【0023】
[単糖]
本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有していてもよい、アルドース又はケトースである単糖としては、従来公知のアルドース又はケトースである単糖を挙げることができる。
【0024】
このうち、アルドースとは、C2n(但し、nは3以上の整数)で表され、且つ、末端にアルデヒド基を1つ有する単糖を意味する。アルドースである単糖としては、より具体的には、グリセルアルデヒド(C3)、エリトロース(C4)、トレオース(C4)、リボース(C5)、アラビノース(C5)、キシロース(C5)、リキソース(C5)、アロース(C5)、アルトロース(C6)、グルコース(C6)、マンノース(C6)、グロース(C6)、イドース(C6)、ガラクトース(C6)、タロース(C6)等を挙げることができる。これらの単糖の中でも特にグルコースが好ましい。
【0025】
ケトースについては、アルドースと同様にC2n(但し、nは3以上の整数)で表されるものの、鎖状構造の内部にケト基(ケトン性カルボニル基)を1つ有する単糖を意味する。ケトースである単糖としては、より具体的には、ジヒドロキシアセトン(C3)、エリトルロース(C4)、キシルロース(C5)、リブロース(C5)、プシコース(C6)、フルクトース(C6)、ソルボース(C6)、タガトース(C6)等を挙げることができる。これらの単糖の中でも特にフルクトースが好ましい。
【0026】
[二糖]
加水分解によりアルドース及び/又はケトースを含有する混合物を生成しうる二糖は、構成糖としてアルドース及び/又はケトースである単糖を有する二糖を指し、より具体的には、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、パルチノース、キシロビオース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース等を挙げることができる。これらの中でも、上記に二糖として、スクロース、ラクトース、マルトースを採用することが好ましく、スクロースを採用することが好ましい。なお、スクロースは、グルコースとフルクトースがα(1→2)結合した二糖、ラクトースは、グルコースとガラクトースがβ(1→4)結合した二糖、マルトースは、グルコースとグルコースがα(1→4)結合した二糖である。
【0027】
特に、(B)成分は、二糖を含むことが好ましく、二糖の中でも、グルコース及び/又はフルクトースを構成単位とする二糖を含むことが好ましい。う蝕抑制組成物が(A)成分に加えて、グルコース及び/又はフルクトースを構成単位とする二糖を含有することにより、(A)成分とグルコース及び/又はフルクトースを構成単位とする二糖が協働的に作用し、(A)成分単独の場合よりも、う蝕抑制効果が高まる。なお、通常、グルコース及び/又はフルクトースを構成単位とする二糖の一つのスクロースは、ストレプトコッカス・ミュータンス等の口腔内細菌の栄養源として利用されるなど、う蝕の原因となることが知られていた。このため、スクロース自体が(A)成分と協働的に作用し、う蝕抑制効果が高まるという事実は、当業者の予測の範囲を大きく超えたものである。
【0028】
グルコース及び/又はフルクトースを構成単位とする二糖としては、スクロース及びマルトースを挙げることができる。これらのうち、スクロースはグルコース及びフルクトースがα-1,2-グリコシド結合した二糖である。また、マルトースは2つのグルコースがα-1,4-グリコシド結合した二糖である。よって、スクロース及びマルトースは、少なくとも1つの構成単位がグルコースであり、α-グリコシド結合をしている点において、相互に構造的類似性を有している。なお、本実施形態に係るう蝕抑制組物に配合するグルコース及び/又はフルクトースを構成単位とする二糖としては、スクロースを利用することが最も好ましい。
【0029】
[オリゴ糖]
加水分解によりアルドース及び/又はケトースを含有する混合物を生成しうるオリゴ糖は、構成糖としてアルドース及び/又はケトースである単糖を有するオリゴ糖を指し、より具体的には、セロビオース、トレハロース、イソマルトース、パルチノース、キシロビオース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトスクロース、イソマルトオリゴ糖、及びケストース等を挙げることができる。
【0030】
[環状オリゴ糖]
加水分解によりアルドース及び/又はケトースを含有する混合物を生成しうる環状オリゴ糖は、構成糖としてアルドース及び/又はケトースである単糖を有する環状オリゴ糖を指す。環状オリゴ糖としては、上述のシクロデキストリンが代表的であり、このうち、グルコースが6個、7個、又は8個結合しているものが知られている。これらのシクロデキストリンについては、場合に応じ、α-シクロデキストリン(シクロヘキサアミロース、α-CD;グルコースが6個結合しているもの)、β-シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース、β-CD;グルコースが7個結合しているもの)、γ-シクロデキストリン(シクロオクタアミロース、γ-CD;グルコースが8個結合しているもの)と称することもある。しかしながら、環状オリゴ糖としては、シクロデキストリンのみに限定されず、構成糖としてグルコース以外の単糖を有する環状オリゴ糖であってもよい。
【0031】
[多糖]
加水分解によりアルドース及び/又はケトースを含有する混合物を生成しうる多糖は、構成糖としてアルドース及び/又はケトースである単糖を有する多糖を指し、より具体的には、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、ガラクトゲン等を挙げることができる。なお、これらのうち、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲンは、いずれもグルコースを構成糖とする多糖であり、分岐構造等が相互に相違する傾向にある。また、ガラクトゲンは、ガラクトースを構成糖とする多糖である。
【0032】
[その他の糖]
本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有する、(A)成分以外の糖としては、上記の単糖、二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、及び多糖以外にも、アミノ糖、デオキシ糖、糖アルコール、ラクトン、並びにこれらを構成糖とする二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、及び多糖を用いてもよい。構成糖としてのアミノ糖、デオキシ糖、糖アルコール、ラクトンとしては、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコリルノイラミン酸、デアミノノイラミン酸、D-デオキシリボース、L-フコース、L-ラムノース、D-キノボース、ソルビトール、キシリトール、グルコノラクトン、マルチトール、エリスリトール、及びスクラロース等を挙げることができる。本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有する、(A)成分以外の糖が、二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、及び多糖である場合、これらのアミノ糖、デオキシ糖、糖アルコール、及びラクトンは、上述のアルドース及び/又はケトースとともに、二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、及び多糖を構成していてもよいし、アミノ糖、デオキシ糖、糖アルコール、及びラクトンのみで二糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、及び多糖を構成していてもよい。
【0033】
〔(A)成分及び(B)成分の配合割合〕
本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有する、(A)成分及び(B)成分の配合割合は、(B)成分100質量部に対して、(A)成分の配合量の下限値が0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。(A)成分の割合の下限値が上記の条件を満たすことにより、過剰な(B)成分の存在による、口腔内の酸性化が抑制されやすくなり、本実施形態に係るう蝕抑制組成物のう蝕抑制効果が高まる。
【0034】
また、本実施形態に係るう蝕抑制組成物が含有する、(A)成分及び(B)成分の配合割合は、(B)成分100質量部に対して、(A)成分の配合量の上限値が500質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることがより更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。(A)成分の割合の上限値が上記の条件を満たすことにより、う蝕抑制効果における(A)成分と(B)成分との協働作用がより高まり、本実施形態に係るう蝕抑制組成物のう蝕抑制効果が高まる。
【0035】
<う蝕抑制組成物を含有する甘味組成物、食品、サプリメント>
本実施形態に係るう蝕抑制組成物を、これを、甘味組成物、食品、サプリメントとして構成してもよい。本実施形態に係るう蝕抑制組成物を、甘味組成物、食品、サプリメントとして構成することにより、喫食してもう蝕を起こしにくい、甘味組成物、食品、サプリメントを提供することができる。
【0036】
このうち、う蝕抑制組成物を含有する食品としては、特に限定されるものではなく、完成品のみならず、半製品も含まれる。例えば、冷凍食品、冷凍生地、缶詰食品、瓶詰食品、チルド食品、加圧加熱殺菌食品、乾燥食品、肉加工品、魚介加工品、野菜加工品、果実加工品、穀類加工品、調味料類、飲料類、焼き菓子類、和菓子類、洋菓子類、チョコレート、準チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート菓子、可食フィルム、キャンディー類(グミ、あめ等)、ガム、タブレット、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、プレミックス製品、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料、ペットフード等を挙げることができる。
【0037】
また、う蝕抑制組成物を含有するサプリメントとしては、ベースサプリメント、ヘルスサプリメント、オプショナルサプリメント等を挙げることができ、それぞれに含有される栄養機能食品成分としては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、酵素類、食物繊維類、コエンザイムQ10、プラセンタ、ヒアルロン酸、コラーゲン、コラーゲンペプチド、アスタキサンチン、オメガ3脂肪酸、グルコサミン、コンドロイチン等を挙げることができる。
【0038】
〔甘味組成物、食品、サプリメントが含んでいてもよいその他の成分〕
本実施形態に係るう蝕抑制組成物を含有する甘味組成物、食品、サプリメントは、それぞれ、食品添加物、食品、栄養補助食品に分類されうるものであり、食品添加物、食品、栄養補助食品の分野で一般に使用されうる(A)成分及び(B)成分以外の添加物を含んでいてもよい。そのような添加物としては、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、酸味料、酵素、香辛料、色素、保存料、香料、甘味料、調味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、発泡剤、膨張剤、着色料、酸化剤、防腐剤、製菓用ゼラチン、製菓用アルブミン、製菓用デンプン、殺菌料、酸化防止剤、防カビ剤等を挙げることができる。また、本実施形態に係るう蝕抑制組成物を含有する甘味組成物、食品、サプリメントは、本発明の目的を阻害しない範囲において、(A)成分と構造の類似した、直鎖、分岐鎖、環状の多糖類を含んでいてもよい。
【0039】
<う蝕抑制組成物を含有するう蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物>
本実施形態に係るう蝕抑制組成物を、これを、う蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物として構成してもよい。本実施形態に係るう蝕抑制組成物を、甘味組成物、食品、サプリメントとして構成することにより、これを使用した使用者がう蝕を効果的に抑制できる。これらのう蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧品のいずれに分類されるものであってもよく、薬用成分や美容成分を配合されていてもよい。
【0040】
〔う蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物が含んでいてもよいその他の成分〕
本実施形態に係るう蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物は、必要に応じ他の薬用成分を併用することにより、口臭、歯周病、知覚過敏等の口腔内疾患を治療、抑制、予防するものであってもよいし、歯質を強化できるものであってもよい。本実施形態に係るう蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物が含有していてもよい、(A)成分及び(B)成分以外の薬用成分としては、例えば、フッ素、キシリトール、プロポリス、センブリエキス、ハイドロキシアパタイト等の従来慣用されているものを挙げることができる。歯磨剤組成物、洗口液組成物の具体的態様として、歯磨粉、洗口液、うがい薬、マウススプレー等のオーラルケア用品が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係るう蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物は、その態様に応じ、従来慣用される任意の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、本発明の目的を阻害しない限り、限定されないが、研磨剤、粘結剤、着色剤、香料、甘味剤等を挙げることができる。また、本実施形態に係るう蝕抑制剤、歯磨剤組成物、洗口液組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、(A)成分と構造の類似した、直鎖、分岐鎖、環状の多糖類を含んでいてもよい。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
なお、各種試験の実施にあたり、各種の培地・緩衝液・試薬の調製、試験のプロトコルの決定は、Michael R. Greenら著,”Moleclar Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)の記載を参考に実施した。参考文献の内容は参照により本明細書の一部として組み込まれるが、本明細書に特別に記載のある事項は、本明細書の記載事項が優先する。
【0044】
〔試験1〕サイクロデキストラン存在下/非存在下でのストレプトコッカス・ミュータンスの増殖速度の検討
Todd-Hewitt液体培地(以下、「TH液体培地」とも称する)を用いて37℃で18時間培養した、ストレプトコッカス・ミュータンス MT8148株の供試菌液100μLを新鮮なTodd-Hewitt(TH)液体培地10mLで継代培養した。最終濃度が0%から1%になるようにCI-Dextran mix(サイクロデキストランを13%以上含むデキストラン混合物、日新製糖株式会社製、以下同じ)を培地に添加した。可視分光光度計(Novaspec plus、Amersham Biosciences製)を用い、波長570nmにて、この菌液の濁度を1時間毎に経時的に測定した。結果を図3に示す。
【0045】
図3より明らかなように、菌の増殖は最終的には、サイクロデキストランを添加した場合も、サイクロデキストランを添加しない場合も、ともに同等の細胞数に収束し、変化は見られなかった。しかしながら、対数増殖期においては、サイクロデキストランを添加した場合に、明らかに、濃度依存的に増殖速度の遅延が認められた。
【0046】
〔試験2〕サイクロデキストラン存在下/非存在下でのストレプトコッカス・ミュータンスによるバイオフィルム形成量の測定
ストレプトコッカス・ミュータンス MT8148株の供試菌を10mLのTH液体培地にて37℃で18時間培養後、培養した供試菌液を0.25%スクロース添加TH液体培地に希釈し、FALCON(登録商標)96穴平底細胞培養用マイクロタイタープレート(Corning社製)の各ウェルに100μLずつ分注して、37℃で2日間嫌気的に培養した。その際、最終濃度が0.16%から10%になるようCI-Dextran mix (日新製糖株式会社製)を培地に添加した。各ウェルの浮遊菌液を取り除いた後に、25μLの1%Crystal violet溶液(ナカライテスク株式会社製)を加えて15分間室温に静置することにより付着した菌体を染色し、蒸留水で6回洗浄を行った。その後、95%エタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製)を加えて洗浄し、乾燥後、蒸留水を加えて波長570nmにおける吸光度を測定した。結果を図4に示す。
【0047】
図4から明らかなように、バイオフィルム形成量は、濃度依存的に減少した。なお、CI-Dextran mixを添加していない試料と、CI-Dextran mixを所定の濃度で添加した試料との間で有意性検定を行ったところ、CI-Dextran mixを添加していない試料と、CI-Dextran mixを所定の濃度で添加した全ての試料との間の差は統計的に有意となった(p<0.001, Fisher's PLSD)。
【0048】
〔試験3〕ストレプトコッカス・ミュータンスによるバイオフィルム構造の観察
[試験3-1]菌体の染色と顕微鏡観察によるバイオフィルム構造の確認
ストレプトコッカス・ミュータンス MT8148株をTH液体培地で37℃、18時間培養後、遠心分離により菌体を回収した。10mMのヘキシジウムアイオダイド(Invitrogen(商標)、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で菌体を染色し、0.5%スクロース含有化学合成培地にて、波長600nmにおける濁度が0.1となるよう調整し生菌試料とした。これらの菌液及び各試料をポリスチレン製8穴Lab-Tekチャンバースライドシステム(Nunc[商標]、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に200μLずつ播種し、37℃、24時間培養した。最終濃度が0%から10%になるようにCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を培地に添加した。形成されたバイオフィルムを共焦点走査型レーザー顕微鏡LSM780(Version 4.2,カールツァイスマイクロイメージング社製)にて観察した。さらにImageJ(登録商標)を用いて密度を算定した。共焦点走査型レーザー顕微鏡で観察した顕微鏡像を図5に、ImageJを用いて計算したバイオフィルムの密度を図6にそれぞれ示す。
【0049】
図5及び図6から明らかなように、バイオフィルム構造は、CI-Dextran mixの濃度が上昇するにつれ、密度が疎となっており、バイオフィルムの厚みも減少していた。なお、CI-Dextran mixを添加していない試料と、CI-Dextran mixを0.625%以上の濃度で添加した試料との間での密度の差は、統計的にも有意であった(Fisher's PLSD)。
【0050】
[試験3-2]バイオフィルム中のグルカン及び菌量の検討
ストレプトコッカス・ミュータンス MT8148株を蛍光核酸染色色素SYTO(登録商標)9 greenで染色した後、1%スクロース含有CDM培地にて調整した。Alexa Fluor(登録商標)647-標識デキストランを加えた後、チャンバースライドに播種した。培養を開始するタイミングで最終濃度が0%から10%になるようにCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を培地に添加し、24時間37℃にて嫌気培養した後、形成されたバイオフィルムを共焦点走査型レーザー顕微鏡LSM780(Version 4.2,カールツァイスマイクロイメージング社製)にて観察した。図7に顕微鏡写真を示す。
【0051】
図7から明らかなように、サイクロデキストラン存在下においては、バイオフィルム中におけるグルカン量も菌量も顕著に減少し、サイクロデキストランの添加量が増加する程、グルカン量も菌量もより減少する傾向が見られた。
【0052】
〔試験4〕ストレプトコッカス・ミュータンスのグルカン合成酵素の活性阻害効果の検証
[試験4-1]サイクロデキストランを13%以上含む市販のデキストラン混合物を用いた検証
1%スクロース含有リン酸緩衝液にCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を0%から1%の各濃度になるように添加した。rGTFB(組み換えGTFB)を10μL添加し、37℃で16時間培養した。培養後、合成された非水溶性グルカンを吸光度550nmで測定して、rGTFBの活性阻害効果を検証した。結果を図8に示す。
【0053】
図8から明らかなように、非水溶性グルカンの合成量はCI-Dextran mix濃度が高まるにつれて減少しており、CI-Dextran mix濃度依存的にrGTFBの活性が阻害されることが示された。CI-Dextran mixを添加していない試料と、CI-Dextran mixを添加した試料との間で有意性検定を行ったところ、CI-Dextran mixを添加していない試料と、CI-Dextran mixを所定の濃度で添加した全ての試料との間の差は統計的に有意となった(p<0.001, Fisher's PLSD)。
【0054】
[試験4-2]サイクロデキストランの高純度試料を用いた検証
CI-Dextran mixに代えてサイクロデキストランの高純度試料を用いた点以外は、〔試験4〕と同様にグルカン合成酵素の活性阻害効果を検証した。結果を図9に示す。なお、サイクロデキストランは、上記のCI-Dextran mixをクロマトグラフィーによる分画により得たものであり、図9に記載の試料のうち、CI7、CI8、CI9、C10、C11と表されるものは、それぞれ、主に、グルコースが7個、8個、9個、10個、11個連結した環状構造を有するオリゴ糖が含まれる試料である。
【0055】
図9から明らかなように、上記のCI-Dextran mixと同様、サイクロデキストランの高純度試料でも非水溶性グルカンの合成を効果的に抑制したが、特にグルコースが7個連結された、CI7を主に含むサイクロデキストランの高純度試料の効果が最も優れた効果を発揮した。
【0056】
〔試験5〕サイクロデキストランのGTF活性阻害様式の検証
[試験5-1]ウエスタンブロッティングによるタンパクの発現量の検討
ストレプトコッカス・ミュータンス MT8148株をCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)及びスクロースを0%から10%の各濃度になるように添加したTH液体培地にて静止期まで培養した後、遠心分離により菌体を回収した。2倍濃度のSDS-PAGE用バッファーを等量混合し、加熱してSDS-PAGE用試料とした。アクリルアミドの濃度は分離ゲル用として10%、濃縮ゲル用として3%を用いて、電気泳動を行った。泳動後、通電することによりアクリルアミドゲル層から転写膜へ転写し、ウサギ抗CA-GTF抗体と室温で1時間反応させた。反応後洗浄し、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンと室温でさらに1時間反応させ、発色基質を加えて発色させて、バンドを視覚化した。結果を図10に示す。
【0057】
図10から明らかなように、スクロース濃度を1%とし、サイクロデキストランの濃度を変化させた場合では、0.25%以上でGTFタンパクの分子量である145kDaから155kDa付近のバンドの発現が強く認められた。これは、スクロースから生成されたグルカンとCI-Dextran mixに元々含まれるグルカンの存在により、GTFの発現が上昇した可能性を示唆するものである。一方で、CI-Dextran mix濃度を0.5%とし、スクロースの濃度を変化させた場合では、0.5%以上の濃度になるとGTFタンパクの発現の減少が認められた。
【0058】
[試験5-2]活性染色を利用した酵素活性に対する影響の検証
[試験5-1]と同様にサンプルを作製し、SDS-PAGEを用いて電気泳動後、ゲルをスクロースとTriton-Xを混和した溶液で、37℃で18時間振とうした。ゲル上に存在するGTFB及びGTFCにより生成されたグルカンをパラノースアニリン溶液により染色した。結果を図11に示す。
【0059】
図11から明らかなように、はじめに、スクロースとCI-Dextran mixとのそれぞれ単独でのGTFの活性を調べたところ、スクロース単独では0.125%まで強い活性が認められ、0.25%以上では活性が減少したものの、0.25%から1.5%までの間で、同程度の活性が認められた。一方、CI-Dextran mix単独では、濃度依存的にGTF活性の上昇が認められた。CI-Dextran mixを0.5%に固定し、スクロースの濃度を0%から1%まで変動させて試験した場合、スクロース濃度が0.5%以上の場合に、スクロース濃度0.25%以下の場合と比較して活性の顕著な減少が認められた。
【0060】
[試験5-3]酵素基質反応の観点からの酵素活性に対する影響の検証
CI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を0%(CI無し)又は0.25%添加し(CI有り)、スクロースの濃度を0mMから25 mMまで段階希釈し添加したリン酸緩衝液に、rGTFBを10μL添加し、37℃で16時間培養後、合成された非水溶性グルカンを吸光度550nmで測定した。結果を図12に示す。
【0061】
図12から明らかなように、CI添加群(CI有り)では最大速度Vmaxは約50%減少した。最終的なグルカンの合成量が低下した。
【0062】
この結果をもとに、Lineweaver-Burk プロットを用いて、rGTFBによるグルカン合成酵素活性阻害効果の酵素反応速度論的解析を行った。結果を図13に示す。Lineweaver-Burkプロットでは直線がY軸と交わる点が1/Vmaxを表し、傾きがK/Vmaxを表すため、ここからVmaxとK値を求められる。CI非添加群(CI無し)では、最大反応速度(Vmax)は0.44nmol/minで、ミカエリス定数(K値;反応速度がVmaxの1/2のときの基質濃度)は1.54mMであった。一方でCI添加群(CI有り)では、Vmaxは0.57nmol/minで、K値は4.43mMであった。
【0063】
これらの結果から、サイクロデキストランによる酵素活性の阻害形式を以下のとおりに推測する。酵素活性の阻害様式には、拮抗阻害、非拮抗阻害、及び不拮抗阻害の3種類の形式が存在する。拮抗阻害は、阻害剤が酵素の活性部位に結合し基質の結合を妨げる阻害様式である。基質と阻害剤が競って活性部位に結合するため、K値は大きくなるがVmaxは変化しない。非拮抗阻害は、阻害剤が酵素の活性部位以外に結合し酵素の立体構造を変えることで基質の結合を妨げる阻害様式である。阻害剤は活性部位以外に結合するため、基質の親和性には変化がなくK値は変わらないが、酵素の立体構造が変化するためVmaxは低下する。不拮抗阻害は酵素基質複合体に阻害剤が結合し反応を妨げる阻害様式である。酵素と基質が結合した後に阻害剤が結合するため、K値とVmaxはともに変化する。試験の結果からは、K値が大きくなり1/Vmaxに変化がなかったため、サイクロデキストランのGTFBへの阻害効果は拮抗阻害である可能性が示された。
【0064】
〔試験6〕ラット動物う蝕モデルにおける飼料・飲料水にサイクロデキストランを添加した場合の ストレプトコッカス・ミュータンスによるう蝕の発生に対する阻害効果、及びプラーク沈着抑制効果の検討
実験動物として、生後15日目に強制離乳させた、特定された微生物や寄生虫が存在しない(SPF)のSprague Dawley系ラットの雄を使用し、一群を10匹として実験に供試した。生後15日目及び16日目の2日間、供試菌の定着を容易にするために口腔内の抗生物質処理を行った。その後、生後18日目から生後22日目までの5日間、ストレプトコッカス・ミュータンスMT8148 R株をBrain Heart Infusion(BHI)液体培地中で37℃にて18時間培養後、遠心し、1/100量の滅菌生理食塩水で懸濁したものを接種菌液として、100μLを1日1回、マイクロピペットを用いてラットロ腔内に直接接種し感染させた。供試菌の感染の当日から、スクロース56%含有う蝕誘発性飼料Diet 2000にCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を、0.625%、1.25%、2.5%、5%添加したものを与え、実験が終了するまで自由に摂取させた。飲料水としては、蒸留水を自由に摂取させた。生後72日目にクロロホルム麻酔下でラットを屠殺し、顎骨を無菌的に摘出し、エリスロシンを用いて上顎の歯牙を染色し、プラークをRegoratiとHotzの方法で求めた。さらに上下顎臼歯のう蝕スコアをKeyesの方法をOoshimaらがラット用に改変したもので算出した。同様に、蒸留水にCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を0.625%、1.25%、2.5%、5%を添加したものを与え、飼料としてはスクロース56%含有う蝕誘発性飼料Diet 2000を自由に摂取させた試験も行った。結果を図14から図17に示す。
【0065】
図14及び図17から明らかなように、飼料にCI-Dextran mixを添加した場合、CI-Dextran mixを1.25%添加したものが最もう蝕抑制効果が高いことが明らかとなった。プラーク沈着の抑制については、CI-Dextran mixを0.625%の低濃度で添加した条件でも、有意に低下していることが明らかとなった(p<0.01, Tukey)。これらの結果から、CI-Dextran mixがプラーク沈着を抑制することによりう蝕の発生が抑えることができたものと考えられる。
【0066】
〔試験7〕触媒ドメイン(CAT)組み換えタンパク質の作製
GTFBにはスクロース結合部位であるCATと、グルコースを転位させてグルカンを合成するGBDの2つの機能ドメインが存在する。酵素阻害活性様式が拮抗阻害である可能性が示されたことから、CIがCATに結合し、スクロースがCATに結合することを阻害している可能性が考えられた。そこで、CATの部分タンパクrGTFB(CAT)を作製し、スクロースと反応させ、生成したグルコースを、銅試薬を用いた還元糖の定量法であるSomogyi-Nelson法により測定した。
【0067】
ストレプトコッカス・ミュータンス UA159株のgtfB遺伝子の全塩基配列をもとに、CATドメイン部分をPCR法により増幅し、かつその後、このDNA断片をプラスミドpGEX6P-1に挿入するためのタンパク発現用プライマーpGEX6P-1(CAT)-Fと、pGEX6P-1(CAT)-Rを設計した。このタンパク発現用プライマーを用いてPCR法で得られたDNA断片を、PrimeSTAR(登録商標)Max DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いて、プラスミドpGEX6P-1に挿入したプラスミドpGEX6P-1(CAT)を作製した。pGEX6P-1(CAT)をタンパク発現用大腸菌E.coli BL21株に形質転換し、大量培養後、遠心分離により得られた菌体をPBS緩衝液に懸濁した後、超音波処理して大腸菌の細胞壁を破壊した。遠心分離により上清を得た後、グルタチオンセファロース4B(登録商標)カラム(GEヘルスケア社製)にて精製し、GST-rGTFB(CAT)を以下の実験に供与した。
【0068】
GST-rGTFB(CAT)と1%スクロースを添加した滅菌精製水にCI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を0%から1.25%になるように段階希釈して添加し、37℃で1時間酵素反応させた。Somogyi銅液(富士フィルム和光純薬株式会社製)を添加し、20分煮沸した後、さらにNelson液(富士フィルム和光純薬株式会社製)を添加し、15分静置した。その後、波長500nmの吸光度を測定した。結果を図18及び図19に示す。
【0069】
図18から明らかなように、スクロースの分解に伴うグルコース産生による、グルコース産生量は、CI-Dextran mixの添加に伴い統計上有意に減少した(p<0.05、P<0.0001)。また、図19から明らかなように、スクロースの存在下ではCI-Dextran mix 0.25%で、活性はほぼ消失し、その活性減少効果はスクロース非存在下よりも高かった。このことから、サイクロデキストランはGTFBのCATにスクロースと拮抗して結合することで、スクロースのグルコースとフルクトースへの分解を阻害し、その結果、グルカンの合成を抑制していることが明らかとなった。
【0070】
なお、類似の試験を、スクロースに代えてフルクトース及びマルトースをそれぞれ利用して実施した。その結果、フルクトースでは、図19に見られるような、単糖の存在下でのCI-Dextran mixの併用による活性の消失は見られなかった。一方、マルトースについては、スクロースに比べて程度は劣るものの、二糖の存在下でのCI-Dextran mixの併用による活性の低下が認められた。
【0071】
〔試験8〕バイオフィルム破砕試験による菌体間結合力の検討
ストレプトコッカス・ミュータンス MT8148株を培養後、FALCON(登録商標)6穴細胞培養用マルチウェルプレート(Corning社製)に分注し、CI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)を0%から1.25%の添加量で添加し、嫌気下、37℃で24時間培養した。PBS緩衝液にて洗浄後、PBS緩衝液に再懸濁し、Handy Sonic model UR-21Pで2分間、レベル7で超音波処理した。PBS緩衝液で洗浄後、PBS緩衝液に再懸濁し、セルスクレーパー「スミロン」(住友ベークライト株式会社製)を使用し、形成されたバイオフィルムを剥離した。剥離したバイオフィルムを滅菌生理食塩水にて段階的に希釈し、Trypticase Soy寒天培地(ベクトン・デッキンソン・アンド・カンパニー社製)に播種し、嫌気下、37℃で、2日間培養した。対象群には、超音波未処理のバイオフィルムとして、超音波処理をせずに同様に菌体を回収したものをTrypticase Soy寒天培地に播種して用いた。培養後、コロニー数を計測し、菌数に対する超音波処理後の残存菌数の割合をその菌の菌体間結合力を表す指標として算出した。結果を図20に示す。
【0072】
図20から明らかなように、CI-Dextran mixの濃度が上昇するにつれ、バイオフィルム中の菌数は減少した。CI-Dextran mixを添加しない場合と1%添加した場合とを比較すると、1%添加した場合ではバイオフィルム中の菌数は約65%の低下が認められた(p < 0.01, Tukey)。
【0073】
〔試験9〕ヒト試験による口腔プラーク沈着抑制効果の検討
図21のフローチャートに試験9の研究アウトラインを示す。日常生活において1日3回食事時に水又はサイクロデキストラン溶液(約200mL)を飲用し、さらに、間食時と就寝時には100mLも飲用した。試験期間を7日間とした。試験飲料は1.2% CI-Dextran mix(日新製糖株式会社製)水溶液、又は水とし、試験前後のプラークスコア及びミュータンスレンサ球菌数を評価した。結果を図22に示す。
【0074】
被験者は17名であったが、唾液中のミュータンスレンサ球菌数が、除外基準である唾液中の(総)ミュータンスレンサ球菌数103CFU/mL以下であったため、6名を除外した。最終的な試験に参加したボランティアは11名(31歳から59歳:平均49.1歳)であった。被験者のミュータンスレンサ球菌数は、1.1×10~6.4×10CFU/mLであり、平均は2.9×10CFU/mLであった。試験終了後の1歯面当たりのプラークスコアは水の場合は1.55であり、CI-Dextran mix水溶液の場合は0.97であり、有意差が認められた(p<0.01, Fisher's PLSD)。以上の結果より、CI-Dextran mix水溶液を飲用した場合は、水を飲用した場合より、顕著にプラーク沈着が抑制された。

【要約】
【課題】従来の抗う蝕剤と比較しても、より高い水準でう蝕を抑制できるう蝕抑制組成物等を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする環状構造を有するオリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖と、を含有し、前記(A)成分がサイクロデキストラン及び/又はサイクロデキストラン誘導体であり、前記サイクロデキストラン誘導体は、サイクロデキストランが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが他の極性基に置換されている、う蝕抑制組成物である。本発明によれば、上記組成物が、(A)グルコース及び/又はグルコース誘導体を構成単位とする所定の環状構造を有するオリゴ糖と、(B)(A)成分以外の糖とを含有し、これらがう蝕抑制に対して協働して作用するため、従来の抗う蝕剤と比較しても、より高い水準で、う蝕を抑制できる。
【選択図】図1
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