(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-25
(45)【発行日】2025-03-05
(54)【発明の名称】改善長尺リターンローラー及びそれを含む長尺リターンローラー群
(51)【国際特許分類】
B65G 39/07 20060101AFI20250226BHJP
【FI】
B65G39/07
(21)【出願番号】P 2024051977
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000253226
【氏名又は名称】濱田重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 正則
(72)【発明者】
【氏名】佐野 考康
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康平
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-249218(JP,A)
【文献】実開昭59-046916(JP,U)
【文献】特開2023-080518(JP,A)
【文献】実開昭59-146314(JP,U)
【文献】実公昭53-031593(JP,Y2)
【文献】実開昭50-114084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 39/00 - 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト幅が1400mm以上のベルトコンベヤにおいて、リターン側ベルトの下面側に配置される回転軸部及びローラー部からなり、前記リターン側ベルトの下面を支持する改善長尺リターンローラーであって、
前記ローラー部の長手方向中央
のみの周囲に、幅150
mm超500mm
以下に亘って、厚さ5
mm超15mm
以下の耐摩耗性シートが固着されている
ことを特徴とする改善長尺リターンローラー。
【請求項2】
前記耐摩耗性シートは、ゴムセラミックシートである
ことを特徴とする請求項1に記載の改善長尺リターンローラー。
【請求項3】
請求項1又は2に係る発明の改善長尺リターンローラーと、ローラー部に耐摩耗性シートが固着されていない通常長尺リターンローラーとを、所定間隔で交互に3本以上リターン側ベルトの下面側に配置した
ことを特徴とする長尺リターンローラー群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗防止対策を施したベルトコンベヤの改善長尺リターンローラー及び同改善長尺リターンローラーを含んで配置されている長尺リターンローラー群に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、製銑原料などの搬送用としてベルトコンベヤが多用されているが、戻り側のベルトには粉が付着するため、ベルト クリーナー等で清掃を行っている。
しかしながら、この付着粉を完全に除去することは不可能であり、また、ベルトクリーナー自体も時間の経過に伴って劣化し清掃機能が低下する。このため、戻り側のベルトに粉が付着した状態で、リターンローラーとの接触が起こり、付着粉及びリターンローラーのベルトコンベヤ重量等で摩耗が起こって胴割れに至ることがある。
このような課題に対し、以下のような先行技術が開示されている。
例えば、特許文献1(実開昭54-93990号公報)には、ピッチ、タール等の粘着性を有する物質をベルトコンベヤで輸送する場合に、ベルト面と接するリターンローラーを厚さ1mm以上のゴム状弾性体で覆うことにより、輸送物質の付着を防止でき長期運転が可能である旨記載されている(特に、明細書第4頁第5~10行及び第2図を参照)。
【0003】
また、特許文献2(特開平9-77234号公報)には、リターンローラー用ディスクローラー(3)において、セラミックス製リング(4)を使用する場合に、芯金(1)とセラミックス製リング(4)の間に衝撃吸収材として1mm~50mmの厚みのゴム板(5)を挿入することにより、従来の金属ローラーに比べ耐用があり、性能上も問題なく、経済面および安全面での効果がある旨記載されている(特に、段落0009及び
図2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭54-93990号公報
【文献】特開平9-77234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているベルトコンベヤは、粘着性物質の付着防止を目的としたものであり、鉄鉱石等の摩耗性のある物質には不向きである。
また、特許文献2に記載されているリターンローラー用ディスクローラーは、構造が複雑でありコストがかかるという問題がある。
さらに、鉄鉱石やコークスを搬送するベルトコンベヤの返りベルトには、クリーナーで掻き取りきれない粉状物が付着しているため、この付着物がリターンローラーと接触し、リターンローラーの表面を摩耗させ破断することがある。
特に、ベルト幅1400mm以上のベルトコンベヤはベルト重量が重く(1400mmの場合27kg/m、1600mmの場合33kg/m)、長尺リターンローラーにかかる荷重が大きいため、ベルトと長尺リターンローラー中央部との集中的な接触が発生し、胴割れに至るケースが多い(不良原因の90%以上が中央部胴割れ)。
本発明は、このような問題を解決するために、ベルトと長尺リターンローラー中央部の集中的な接触に対する耐久性を向上させ、中央部胴割れを防止することを第1の課題としており、長尺リターンローラーに胴割れ防止対策を施しても重くなり過ぎず交換作業を行い易い、しかも安価な改善長尺リターンローラーの提供を第2の課題としている。
また、本発明は、ベルトとリターンローラー中央部の集中的な接触を緩和し、中央部胴割れを防止することができる長尺リターンローラー群の提供を第3の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、
ベルト幅が1400mm以上のベルトコンベヤにおいて、リターン側ベルトの下面側に配置される回転軸部及びローラー部からなり、前記リターン側ベルトの下面を支持する改善長尺リターンローラーであって、
前記ローラー部の長手方向中央のみの周囲に、幅150mm超500mm以下に亘って、厚さ5mm超15mm以下の耐摩耗性シートが固着されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の改善長尺リターンローラーにおいて、
前記耐摩耗性シートは、ゴムセラミックシートであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の改善長尺リターンローラーと、ローラー部に耐摩耗性シートが固着されていない通常長尺リターンローラーとを、所定間隔で交互に3本以上リターン側ベルトの下面側に配置した
ことを特徴とする長尺リターンローラー群である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び2に係る発明の改善長尺リターンローラーは、ローラー部の長手方向中央のみの周囲に、幅150mm超500mm以下に亘って、厚さ5mm超15mm以下の耐摩耗性シート(請求項2ではゴムセラミックシート)が固着されているので、ベルトと改善長尺リターンローラー中央部の集中的な接触に対する耐久性が向上し、中央部胴割れを防止することができる。
また、ローラー部の周囲全面に耐摩耗性シートを固着した長尺リターンローラーと比べると、重量が軽くなるので交換作業が行い易く、耐摩耗性シートの使用量が少なくなるので胴割れ防止対策を施した改善長尺リターンローラーを安価に提供することができる。
【0010】
請求項3に係る発明の長尺リターンローラー群は、摩耗防止対策を施した請求項1又は2に係る発明の改善長尺リターンローラーと、ローラー部に耐摩耗性シートが固着されていない通常長尺リターンローラーとを、所定間隔で交互に3本以上リターン側ベルトの下面側に配置してあるので、ベルトとリターンローラー中央部の集中的な接触を緩和させ、中央部胴割れを防止することができる。また、請求項1又は2に係る発明の改善長尺リターンローラーの配置数を減少させることができるので、中央部胴割れを防止することができる長尺リターンローラー群をより安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】改善長尺リターンローラーを適用した実施例1に係るベルトコンベヤの側面図。
【
図2】通常長尺リターンローラーを正面側から見た図。
【
図3】改善長尺リターンローラーを正面側から見た図。
【
図4】改善長尺リターンローラーを製造する際に用いるローラースタンドの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例によって、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示す実施例1に係るベルトコンベヤは、図示していないモータによって回転する駆動プーリ11と、駆動プーリ11に従って回転する従動プーリ12と、駆動プーリ11の近くの下方側に配置されている駆動側スナッププーリ13と、従動プーリ12寄りの下方に配置されているテンションプーリ14と、テンションプーリ14上方の駆動プーリ11側(
図1では左側)に配置され、リターン側ベルト18bの下面を支持する駆動側ベンドプーリ15と、テンションプーリ14上方の従動プーリ12側(
図1では右側)に配置され、リターン側ベルト18bの下面を支持する従動側ベンドプーリ16及び従動プーリ12の近くの下方側に配置されている従動側スナッププーリ17を備えており、さらに、駆動プーリ11、駆動側スナッププーリ13、駆動側ベンドプーリ15、
テンションプーリ14、従動側ベンドプーリ16、従動側スナッププーリ17及び従動プーリ12に巻回されたベルト18(幅1600mm)と、リターン側ベルト18bの下面を支持する8つの改善長尺リターンローラー2と、を備えている。
そして、駆動側ベンドプーリ15、
テンションプーリ14及び従動側ベンドプーリ16はテンション部19を構成しており、
テンションプーリ14が有している錘による一定の力で常にベルト18を張った状態に保つことができる。
また、実施例1に係るベルトコンベヤは、駆動プーリ11を回転させることによって、搬送側ベルト18aの上面に載せられた製銑原料などの搬送物(図示せず)を、搬送方向(
図1では右矢印の方向)へ搬送する。このとき、リターン側ベルト18bは搬送方向と反対の戻り方向(
図1では左矢印の方向)へ移動する。
【0014】
通常長尺リターンローラー1は、
図2に示すように回転軸部3(長さ1730mm、直径30mm)及びローラー部4(長さ1630mm、直径300mm)からなっている。
また、本発明の要部である改善長尺リターンローラー2は、通常長尺リターンローラー1と同じ構成の回転軸部3及びローラー部4を有し、
図3に示すようにローラー部4の長手方向中央
のみの周囲に幅200mmに亘って、厚さ8mmのゴムセラミックシート5が固着されている。そして、
図1に示す実施例1に係るベルトコンベヤでは、駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間に、7つの改善長尺リターンローラー2を一定の間隔で配置して、改善長尺リターンローラー群を構成している。また、従動側スナッププーリ17と従動プーリ12との間には、1つの改善長尺リターンローラー2を配置している。
【0015】
図4は、改善長尺リターンローラー2のローラー部4にゴムセラミックシート5を固着する際に用いるローラースタンド6の説明図である。
そして、改善長尺リターンローラー2は、次の手順により製造する。
(手順1)通常長尺リターンローラー1を用意する。
(手順2)ローラー部4の長手方向中央の周囲を、幅220mm程度に亘って電動サンダー(図示せず)を用いて研磨する。
(手順3)幅200mm、長さ992mm、厚さ8mmのゴムセラミックシート5を用意し、裏面側を研磨した後にゴム糊を塗布する。
(手順4)
図4に示すように、通常長尺リターンローラー1の回転軸部3をローラースタンド6の支持部7に載せる。そして、通常長尺リターンローラー1を回転させながら、ゴム糊8を長さ200mmの刷毛でローラー部4の中央に塗布する。
(手順5)ゴム糊8が塗布された通常長尺リターンローラー1を、ローラースタンド6に載せたまま20分間放置する。
(手順6)手順3でゴム糊を塗布したゴムセラミックシート5を、手順5で20分間放置した通常長尺リターンローラー1のゴム糊8が塗布された部分に巻き付け、ゴムセラミックシート5の表面側からハンマーで叩くなどして周囲から圧力を加える。
【0016】
上記の手順1~6によって、改善長尺リターンローラー2を8つ製造した後、駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間に、7つの改善長尺リターンローラー2を一定の間隔で配置し、従動側スナッププーリ17と従動プーリ12との間に、1つの改善長尺リターンローラー2を配置すると、
図1に示す実施例1に係るベルトコンベヤが完成する。
完成したベルトコンベヤを1年半試験的に運用して、ローラー部4に固着されているゴムセラミックシート5の摩耗度合いを確認したところ、30%程度であることが分かった。この結果からみて、改善長尺リターンローラー2の耐用年数は4年程度と推測される。
【実施例2】
【0017】
図5は実施例2に係るベルトコンベヤの側面図である。
実施例2に係るベルトコンベヤは、実施例1に係るベルトコンベヤにおける駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間に配置されている、7つの改善長尺リターンローラー2からなる改善長尺リターンローラー群に代えて、3つの通常長尺リターンローラー1と4つの改善長尺リターンローラー2からなる長尺リターンローラー群とした点のみが相違点である。そのため、長尺リターンローラー群以外の構成については、
図5でも
図1~3と同じ番号を用いて説明する。
【0018】
実施例2に係る長尺リターンローラー群は、実施例1に係る改善長尺リターンローラー群と同様に、駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間に配置されているが、実施例1の7つの改善長尺リターンローラー2のうちの駆動側スナッププーリ13から2番目、4番目、6番目の改善長尺リターンローラー2を、通常長尺リターンローラー1に置換してある。すなわち、実施例2では、4つの改善長尺リターンローラー2と3つの通常長尺リターンローラー1を一定の間隔で交互に配置して長尺リターンローラー群を構成している。
このような構成としたのは、通常長尺リターンローラー1と改善長尺リターンローラー2を組み合わせた様々な長尺リターンローラー群について評価試験を行った結果、改善長尺リターンローラー2の両側にある通常長尺リターンローラー1は、中央部摩耗が少ないことが分かったためである。
【0019】
実施例1及び2の変形例を列記する。
(1)実施例1及び2に係るベルトコンベヤのベルト幅は1600mmであったが、ベルト幅が1400mm以上であれば、中央部胴割れを防止する効果が得られる。
なお、ベルト幅が1200mmの場合、ローラー部の両端付近と中央付近でベルトとの接触による摩耗が見られるが、中央付近での中央部胴割れ破損より両端付近での鏡板破損が多い。また、ベルト幅が1050mm又は750mmの場合、ローラー部の両端付近でベルトとの接触による摩耗が見られ、両端付近での鏡板破損がほとんどである。
(2)実施例1及び2における改善長尺リターンローラー2では、ローラー部4の長手方向中央のみの周囲に幅200mmに亘って、厚さ8mmのゴムセラミックシート5が固着されていたが、幅は200mmに限らず150mm超500mm以下、厚さは8mmに限らず5mm超15mm以下の範囲であれば、ベルト18と改善長尺リターンローラー2との中央部における集中的な接触に対する耐久性向上、ゴムセラミックシート5の使用量を節減する効果が得られる。
ただし、経済性や装着時の容易性を考慮すると、幅は150mm超300mm以下、厚さは5mm超10mm以下の範囲にした方が良い。
また、ゴムセラミックシート5に代えて、他の耐摩耗性ゴムや超高分子量ポリエチレン、POM(ポリアセタール)、PTFE(フッ素樹脂)等の耐摩耗性樹脂からなる耐摩耗性シートを固着しても良い。
(3)実施例1に係るベルトコンベヤにおいては、駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間に、7つの改善長尺リターンローラー2を一定の間隔で交互に配置して、改善長尺リターンローラー群を構成し、実施例2に係るベルトコンベヤにおいては、駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間に、4つの改善長尺リターンローラー2と3つの通常長尺リターンローラー1を一定の間隔で交互に配置して、長尺リターンローラー群を構成したが、一定の間隔に限らず、不定の所定間隔で配置しても良い。
(4)実施例1及び2に係るベルトコンベヤの駆動側スナッププーリ13と駆動側ベンドプーリ15との間は、通常長尺リターンローラー1と改善長尺リターンローラー2が直線に沿って配置され、直線状にベルト18が掛けられていたが、曲線に沿って配置しても良い。
そして、曲線に沿って配置する場合、曲線の変曲点付近に改善長尺リターンローラー2を配置するとともに、その前後に通常長尺リターンローラー1又は改善長尺リターンローラー2を短い間隔(概ね1~2m間隔)で配置すると、ベルト18とローラー部4の中央部との集中的な接触を緩和させることができ、中央部胴割れを防止する効果が高くなる。
【符号の説明】
【0020】
1 通常長尺リターンローラー 2 改善長尺リターンローラー 3 回転軸部
4 ローラー部 5 ゴムセラミックシート 6 ローラースタンド
7 支持部 8 ゴム糊
11 駆動プーリ 12 従動プーリ 13 駆動側スナッププーリ
14 テンションプーリ 15 駆動側ベンドプーリ
16 従動側ベンドプーリ 17 従動側スナッププーリ
18 ベルト 18a 搬送側ベルト 18b リターン側ベルト
【要約】
【課題】ベルトと長尺リターンローラー中央部の集中的な接触に対する耐久性を向上させ、中央部胴割れを防止すること、長尺リターンローラーに胴割れ防止対策を施しても安価で重くなり過ぎず交換作業を行い易くすること、及び中央部胴割れを防止することができる長尺リターンローラー群を提供すること。
【解決手段】ローラー部4の長手方向中央の周囲に幅200mmに亘って、厚さ8mmのゴムセラミックシート5が固着されている改善長尺リターンローラー2及び改善長尺リターンローラー2を3本以上リターン側ベルトの下面側に配置した長尺リターンローラー群。
【選択図】
図3