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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】鋼管杭構造および鋼管杭構造用の止め板
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/30 20060101AFI20250227BHJP
   E02D 5/48 20060101ALI20250227BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
E02D5/30 A
E02D5/48
E02D27/12 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021189520
(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公開番号】P2023076227
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】妙中 真治
(72)【発明者】
【氏名】阿形 淳
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-180460(JP,A)
【文献】特開2015-175193(JP,A)
【文献】特開2013-180460(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1013028(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22- 5/80
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側から下端側に向かって縮径するテーパー部を有する鋼管杭と、
前記テーパー部の内部に設置され、前記テーパー部の上端径より小さく下端径より大きい外径の円盤状の止め板と、
前記鋼管杭内で前記止め板の上側に充填されたコンクリートと、
を備えたことを特徴とする鋼管杭構造。
【請求項2】
前記テーパー部の上端は、前記鋼管杭の杭頭径Dに対して、前記鋼管杭の杭頭部からの距離が6D以下の間に位置することを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭構造。
【請求項3】
前記止め板の外周縁には、上端側から下端側に向かって縮径するテーパー面が形成され、
前記鋼管杭の前記テーパー部の鋼管杭側テーパー角度αと、前記止め板の前記テーパー面の止め板側テーパー角度βとは、(1)式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭構造。
【数1】
【請求項4】
前記止め板には、下方に突出するとともに、前記鋼管杭のテーパー部より下の鋼管内に嵌入された状態で支持されるガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鋼管杭構造。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記下の鋼管内に嵌入された部分において、前記止め板の設置時における前記鋼管杭の前記テーパー部の下端から前記ガイド部材の下端までの距離Lで(2)式を満たし、
前記鋼管杭の前記テーパー部における下端径をD’としたときに、前記下の鋼管における水平断面において、前記ガイド部材の少なくとも一部が0.8D’の仮想円と0.9D’の仮想円との間の領域に存在し、かつ前記ガイド部材の外端部が前記0.9D’の仮想円より外側に位置しないことを特徴とする請求項4に記載の鋼管杭構造。
【数2】
【請求項6】
前記ガイド部材は、(3)式を満たす前記距離Lの範囲に位置することを特徴とする請求項5に記載の鋼管杭構造。
【数3】
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鋼管杭構造に使用されることを特徴とする鋼管杭構造用の止め板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭構造および鋼管杭構造用の止め板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管杭には鉛直方向の荷重(軸方向力)と地震や風などによる水平方向の荷重が作用し、この水平方向の荷重により曲げモーメントが生じる。そのため、鋼管杭の設計の際には鉛直方向および水平方向の支持力を考慮することが必要である。とくに、水平荷重については杭上部で発生する大きな曲げモーメントに対して、杭径を大きくする方法や板厚を厚くする方法を採用することが一般的である。
【0003】
これに対して、効率的に杭頭部を補強する技術として、例えば特許文献1、2に示されるような杭頭部にコンクリートを充填させて剛性を増加させるCFT構造(コンクリート充填鋼管構造)が知られている。
特許文献1に示すCFT構造の鋼管杭では、コンクリートを充填する区間の最下端の位置にコンクリートを堰き止めるための止め板を設けることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、他の止め板の構造として、杭頭部に固定されて吊り下げた棒鋼を介して定盤部材を吊り下げる構成について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-297865号公報
【文献】特開平10-311045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に示すようなCFT構造の鋼管杭では、止め板を所定の高さに設置するために、鋼管の内部に止め板を下方から支持するための止め爪や鋼製リングなどを溶接する製造工程が必要になる。この場合、鋼管内部の加工になることから製造工程やコストが増加するという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0007】
また、上述した特許文献2の場合には、部材として複数の鋼材を組み合わせる必要がある点や、固定金具設置の手間がある点といった問題があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート充填用の止め板を鋼管杭内に簡単に設置することができ、施工効率の向上を図ることができ、しかも施工にかかるコストを低減できる鋼管杭構造および鋼管杭構造用の止め板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る鋼管杭構造では、上端側から下端側に向かって縮径するテーパー部を有する鋼管杭と、前記テーパー部の内部に設置され、前記テーパー部の上端径より小さく下端径より大きい外径の円盤状の止め板と、前記鋼管杭内で前記止め板の上側に充填されたコンクリートと、を備えたことを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、コンクリートの打設高さに合わせた位置にテーパー部を設けることにより、そのテーパー部にテーパー部の上端径より小さく下端径より大きい外径の円盤状の止め板を簡単に設置することができる。そのため、鋼管杭内に充填されるコンクリートの底蓋として機能する止め板を設けることができ、従来のように止め板を鋼管杭の内部の所定の高さに固定するための鋼管リング等の部材の溶接が不要となるため、製造工程やコストを低減することができる。
また、本発明では、仮に、杭打設の深さが当初予定からずれた際にも、止め板の径を変更することで止め板の設置レベルを現場で調整することが可能となる。
【0011】
本発明に係る鋼管杭構造では、前記テーパー部の上端は、前記鋼管杭の杭頭径Dに対して、前記鋼管杭の杭頭部からの距離が6D以下の間に位置することが好ましい。
【0012】
この場合には、鋼管杭の杭頭径Dに対して、鋼管杭の杭頭部からの距離が6D以下の間にテーパー部が位置することになる。そのため、鋼管杭に作用する曲げモーメントが収束する位置に、鋼管杭の断面が小さくなるテーパー部を配置することができる。
【0013】
本発明に係る鋼管杭構造では、前記止め板の外周縁には、上端側から下端側に向かって縮径するテーパー面が形成され、前記鋼管杭の前記テーパー部の鋼管杭側テーパー角度αと、前記止め板の前記テーパー面の止め板側テーパー角度βとは、(1)式を満たすことが好ましい。
【0014】
【数1】
【0015】
この場合には、止め板の外周縁の上面側がテーパー部の管内面に接触した状態で止め板を配置することができるので、安定した姿勢で止め板を配置することができ、コンクリートの充填性を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る鋼管杭構造では、前記止め板には、下方に突出するとともに、前記鋼管杭のテーパー部より下の鋼管内に嵌入された状態で支持されるガイド部材が設けられていることを特徴としてもよい。
【0017】
このような構成とすることにより、ガイド部材がテーパー部より下の鋼管内に嵌合されるので、止め板の姿勢を安定させることができ、止め板を設置するときに、安定した姿勢で止め板を配置することができるほか、コンクリートを鋼管内に充填したときに、止め板がずれたりして下方にコンクリートが漏れ出すことを防止できる。そのため、より施工効率の向上を図ることができ、しかも施工にかかるコストを低減できる。
【0018】
また、本発明に係る鋼管杭構造では、前記ガイド部材は、前記下の鋼管内に嵌入された部分において、前記止め板の設置時における前記鋼管杭の前記テーパー部の下端から前記ガイド部材の下端までの距離Lで(2)式を満たし、前記鋼管杭の前記テーパー部における下端径をD’としたときに、前記下の鋼管における水平断面において、前記ガイド部材の少なくとも一部が0.8D’の仮想円と0.9D’の仮想円との間の領域に存在し、かつ前記ガイド部材の外端部が前記0.9D’の仮想円より外側に位置しないことを特徴としてもよい。
【0019】
【数2】
【0020】
このような構成とすることにより、ガイド部材をテーパー部より下の鋼管内に安定した状態で嵌合されるので、止め板の姿勢を安定させることができ、止め板設置時の姿勢安定性を高めることができるうえ、コンクリート打設時における止め板の回転を防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る鋼管杭構造では、前記ガイド部材は、(3)式を満たす前記距離Lの範囲に位置することを特徴としてもよい。
【0022】
【数3】
【0023】
この場合には、より止め板の姿勢を安定させることができ、止め板設置時の姿勢安定性を高めることができるうえ、コンクリート打設時における止め板の回転を例えば略6°未満に抑えることができる。
【0024】
また、本発明に係る鋼管杭構造用の止め板では、上述した鋼管杭構造に使用されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の鋼管杭構造および鋼管杭構造用の止め板によれば、コンクリート充填用の止め板を鋼管杭内に簡単に設置することができ、施工効率の向上を図ることができ、しかも施工にかかるコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態による鋼管杭構造を示す縦断面図である。
図2図1に示す鋼管杭構造の要部を拡大した縦断面図である。
図3】止め板の斜視図である。
図4】止め板の側面図である。
図5】他の形状の止め板の一例を示す側面図である。
図6】深度における曲げモーメントを示す図である。
図7】N値毎の深度と曲げモーメントの関係を示す図である。
図8】(a)~(c)は、鋼管杭構造の施工方法を示す図である。
図9】第2実施形態による鋼管杭構造を示す縦断面図である。
図10】第2実施形態による鋼管杭構造の要部を拡大した縦断面図である。
図11】第2実施形態による止め板の構成を示す側面図である。
図12】第2実施形態による止め板の構成を示す水平断面図である。
図13】(a)、(b)は、止め板の回転角度を説明するための図である。
図14】ガイド部材の他の形態を示す側面図である。
図15】ガイド部材の他の形態を示す側面図である。
図16】ガイド部材の他の形態を示す側面図である。
図17】ガイド部材の他の形態を示す側面図である。
図18】第3実施形態による鋼管杭構造の要部を拡大した縦断面図である。
図19】第1変形例による止め板構造を示す斜視図である。
図20】第1変形例による止め板構造を示す水平断面図である。
図21】第2変形例による止め板構造を示す斜視図である。
図22】第3変形例による止め板構造を示す斜視図である。
図23】第3変形例による止め板構造を示す水平断面図である。
図24】(a)は第4変形例による止め板構造を下方から見た水平断面図、(b)は比較による止め板構造である。
図25】(a)、(b)は、第5変形例による止め板構造を下方から見た水平断面図である。
図26】(a)、(b)は、第6変形例による止め板構造を下方から見た水平断面図である。
図27】(a)、(b)は、第7変形例による止め板構造を下方から見た水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態による鋼管杭構造および鋼管杭構造用の止め板について、図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1及び図2に示す本実施形態による鋼管杭構造1は、管軸O方向を上下方向に向けて設置されコンクリート4が充填される鋼管杭2において、鋼管杭2の管体の上下方向の中間部に配置されてコンクリート4を堰き止めるための蓋部材(後述する止め板3)が設けられている。
【0029】
鋼管杭構造1は、上端側から下端側に向かって縮径するテーパー部20を有する鋼管杭2と、テーパー部20の管内面20cに設置されテーパー部20の上端径D1より小さく下端径D2より大きい外径の円盤状の止め板3と、鋼管杭2内で止め板3の上側に充填されたコンクリート4と、を備えている。なお、後述のように止め板3の外周縁にテーパー面が形成されている場合、止め板3の上面3aの直径を止め板3の外径とする。
【0030】
鋼管杭2は、上部から順に、大径部21、テーパー部20、小径部22を有している。テーパー部20は、大径部21の下端(テーパー部20の上端20a)から小径部22の上端(テーパー部20の下端20b)に向けて全体が縮径している。大径部21は、テーパー部20より上の鋼管である。大径部21の内径は、テーパー部20の上端20aの内径(上端径D1)に一致している。小径部22は、テーパー部20より下の鋼管である。小径部22の内径は、テーパー部20の下端20bの内径(下端径D2)に一致している。鋼管杭2の板厚は全長にわたって一定である。すなわち、大径部21、テーパー部20、および小径部22の板厚は一定である。
【0031】
鋼管杭2のテーパー部20の上端20aの高さ方向の位置(鋼管杭2の杭頭部2A(杭上端)からの距離)は、鋼管杭2の杭頭径Dに対して6D以下の間に位置するように設定されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、止め板3は、テーパー部20の上下方向の中間部に配置される。止め板3は、テーパー部20の管内面20cに当接した状態で管内に充填されるコンクリート4を下方から押さえる保持力を有している。止め板3としては、鋼板やプラスチック板からなる板状に形成されている。なお、止め板3は、設置時の安定性とコンクリートを下方から押さえる保持力が確保できれば、その材質および中空か密実かや、平らか湾曲・凹凸があるかといった形状は問わない。
【0033】
図3及び図4に示すように、止め板3の外周縁には、上面3aから下面3bに向かって漸次、縮径する傾斜面(テーパー面3c)が形成されている。そして、鋼管杭2のテーパー部20の鋼管杭側テーパー角度α(図2参照)と、止め板3のテーパー面3cの止め板側テーパー角度β(図3図4参照)とは、(1)式を満たすように設定されている。
【0034】
【数4】
【0035】
なお、図5に示す止め板3Aは、外周縁にテーパー面が形成されていない外周縁3dのものを採用することも可能である。この場合の止め板3Aは、上面3aと下面3bの外径が一定である。止め板3Aの外径は、図2に示す大径部21の内径(テーパー部20の上端径D1)よりも小さく小径部22の内径(テーパー部20の下端径D2)よりも大きく設定されている。
【0036】
このように鋼管杭構造1の施工では、図2に示すように、鋼管杭2において杭頭付近の大径部21から下方に向けて漸次、縮径するテーパー部20を有し、大径部21の内径(テーパー部20の上端径D1)よりも小さく小径部22の内径(テーパー部20の下端径D2)よりも大きい円盤状の止め板3をテーパー部20の管内面20cに設置することで、充填されるコンクリート4を受ける蓋部材を設けることができる。
【0037】
ここで、テーパー部20を設ける高さ方向の位置と、テーパー部20のテーパー形状について具体的に説明する。
一般に、図1に示すように、杭頭部2Aに水平力が働いた際の曲げモーメントは杭頭径Dに対して杭頭部2Aから6D以深では小さく収束することが知られている。そのため、テーパー部20の上端20aの位置を杭頭部2Aから6D以内の範囲に配置することで、低コストにコンクリート4の充填を行うことができる。
【0038】
図1に示す二点鎖線Mは、鋼管杭2に作用する曲げモーメントを示している。
図1に示すように、テーパー部20の具体的な位置(高さ)としては、杭頭部2A付近の曲げモーメントMの急変部Maがテーパー部20の上端より上に位置することが好ましい。すなわち、テーパー部20は、曲げモーメントMがある程度収束した位置に配置されるように設定されている。
【0039】
図6は、N値が5である地盤Gにおけるストレート杭(実線M1)とテーパー部を有するテーパー杭(点線M2)における曲げモーメント分布の比較を示している。ストレート杭は、直径300mmで、鋼管厚6mmである。テーパー杭は、杭頭径300mm、下杭径200mm、鋼管厚6mm、杭頭部から1m~1.5m部分がテーパー形状としたものである。杭頭部の領域(深度0m~1m程度)の曲げモーメントM(kN・m)の大きさは、ストレート杭(M1)とテーパー杭(M2)で同程度である。テーパー杭の曲げモーメントM2は、テーパー部より下方の下杭径(小径部の内径)が小さい分、ストレート杭の曲げモーメントM1よりも小さくなっている。
【0040】
また、図7は、テーパー杭についてN値が異なる3種の地盤(N値=2.5、5、10)における曲げモーメントの分布を比較したものを示している。符号M3、M4、M5は、それぞれN値2.5、5、10における曲げモーメントを示している。縦軸は曲げモーメントについて、その絶対値を杭頭モーメントに対する割合として表し、横軸は深度(距離y)と杭頭径Dを用いてy/Dで表される。曲げモーメントMは単調に減少した後に杭頭径Dに対して4D~7Dの深度で微増しているが、3D~5Dの深度で一定値以下に収束していることがわかる。
【0041】
また、縮径による断面係数の低下率は、小径部の内径が杭頭径Dの半分になった場合でも0.24倍程度であるが、各地盤で3D~5Dの深度で曲げモーメントMが杭頭部2Aで発生するモーメントの0.2倍以下に抑えられていることが確認できる。
これらのことから、実務上、鋼管杭2のテーパー部20の上端位置は杭頭部2Aから3D~5Dに配置するのが好ましい。
【0042】
次に、上述した止め板3を使用した鋼管杭構造1の施工手順について、図7等の図面を用いて具体的に説明する。
図8(a)に示すように、先ず鋼管杭2を地盤Gに圧入(羽根杭の場合は回転圧入)させて打設する。鋼管杭2の打設方法としては、例えば中堀工法、プレボーリング工法、打撃工法、及び回転圧入工法等を適用することができる。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、ワイヤーケーブル等のワイヤー5によって止め板3を鋼管杭2内に下降させ、その止め板3を鋼管杭2のテーパー部20の管内面20cに設置する(図8(c)参照)。
このとき、止め板3を吊った状態で鋼管杭2の上方からテーパー部20の管内面20cまで落とし込む。止め板3を落とし込む位置は、図2及び図8(c)に示すように、鋼管杭2内に充填されるコンクリート4の下端面4aが止め板3の上面3aとなる位置とされる。
なお、止め板3を設置する前に打設された鋼管杭2内にベントナイト液が溜まっている場合には、止め板3に錘を取り付けてベントナイト液中に沈み込ませるようにしてもよい。また、止め板3を設置する前に鋼管杭2内に溜まっているベントナイト液を排出した後、止め板3を設置するようにしてもよい。
【0044】
次に、図8(c)に示すように、止め板3のテーパー面3cをテーパー部20の管内面20cに当接させる。これにより、管内面20cと止め板3のテーパー面3cとの摩擦力や拘束力を十分に発現させることができ、止め板3によって後から打設されるコンクリート4を下方から堰き止める底蓋を構成することができる。その後、不図示の鋼管杭2内のベントナイト液をバキュームを使用して吸い上げて排出し、コンクリート配管を鋼管杭2内に挿入し、コンクリートを打設する。
【0045】
その後、図8(c)に示すように、鋼管杭2の杭頭部2Aにコンクリート4を流し込み充填する。コンクリート4を打設することで、鋼管杭2にコンクリート4が充填された管状構造物の施工が完了となる。これにより、コンクリート4が充填された鋼管杭2は、管状構造として耐力を向上させることができる。
【0046】
次に、上述した鋼管杭構造1および鋼管杭構造用の止め板3の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態によれば、コンクリート4の打設高さに合わせた位置に鋼管杭2のテーパー部20を設けることにより、テーパー部20の上端径D1より小さく下端径D2より大きい外径の円盤状の止め板3をテーパー部20に簡単に設置することができる。そのため、鋼管杭2内に充填されるコンクリート4の底蓋として機能する止め板3を設けることができ、従来のように止め板を鋼管杭の内部の所定の高さに固定するための鋼管リング等の部材の溶接が不要となるため、製造工程やコストを低減することができる。
また、本実施形態では、仮に、杭打設の深さが当初予定からずれた際にも、止め板3の径を変更することで止め板の設置レベルを現場で調整することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、鋼管杭2の杭頭径Dに対して、鋼管杭2の杭頭部2Aからの距離が6D以下の間にテーパー部20が位置されている。そのため、鋼管杭2に作用する曲げモーメントが収束する位置に、鋼管杭2の断面が小さくなるテーパー部20を配置することができる。
【0048】
また、本実施形態では、鋼管杭2のテーパー部20の鋼管杭側テーパー角度αと、止め板3のテーパー面3cの止め板側テーパー角度βとは、上記(1)式を満たしているので、止め板3の外周縁の上面側がテーパー部20の管内面に接触した状態で止め板3を配置することができる。そのため、安定した姿勢で止め板3を配置することができ、コンクリート4の充填性を高めることができる。
【0049】
上述した本実施形態による鋼管杭構造1および鋼管杭構造用の止め板3では、鋼管杭2にテーパー形状のテーパー部20を設けることにより、コンクリート4を充填するための止め板3を簡単に設置することができ、施工効率の向上を図ることができ、しかも施工にかかるコストを低減できる。
【0050】
(第2実施形態)
図9及び図10に示すように、第2実施形態による鋼管杭構造1Aでは、止め板3の下面3bから下方に突出するとともに、鋼管杭2の内側に嵌入された状態で支持される円筒状のガイド部材31が止め板3に設けられた構成となっている(図11参照)。
【0051】
止め板3は、鋼管杭2の打設後にワイヤー5(図8(b)参照)を用いて吊り下げる方法により設置される。その際に、止め板3の回転を防止するためや安定性の確保のために、止め板3の下面3bにガイドの役割を有するガイド部材31が取り付けられている。ガイド部材31においても、止め板3と同様に、止め板3の設置時の安定性が確保できれば、その材質や中空か密実かといった形状は問わない。
【0052】
ガイド部材31は、小径部22(下の鋼管)内に嵌入された部分において、止め板3の設置時における鋼管杭2のテーパー部20の下端20bからガイド部材31の下端31aまでの距離Lで(2)式を満たす。
また、鋼管杭2のテーパー部20における下端径をD2(以下では、「D’」を使用)としたときに、図12に示すように、小径部22における水平断面において、ガイド部材31の少なくとも一部が0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在し、かつガイド部材31の外端部31bが0.9D’の外仮想円K2より外側に位置しないように設定されている。さらに、ガイド部材31は、(3)式を満たす距離Lの範囲に位置するように設定することがより好ましい。
ここで、ガイド部材31の外端部31bは、管軸O方向から見た平面視でガイド部材31における止め板3の中心軸から最も離れて位置する部位と定義する。
【0053】
【数5】
【0054】
【数6】
【0055】
このように、本実施形態では、ガイド部材の外端部が0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hにおいて、少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つ以上存在する。
【0056】
本実施形態では、図12に示すように、円筒状のガイド部材31の一部(外周側部分)が領域Hに存在している。なお、本実施形態では、ガイド部材31が止め板3の中心軸C1を筒軸とした円筒状であり、ガイド部材31の中心軸が管軸Oに一致しているので、前記領域Hにおいて全周にわたって中心からずれることなく均等に配置されている。
このように、ガイド部材31の中心軸が止め板3の中心軸C1と一致している場合には、ガイド部材31の中心軸C1からガイド部材31の外端部31bまでの距離dは、小径部22の内径D’との関係を(4)式で示すことができる。
【0057】
【数7】
【0058】
すなわち、本第2実施形態のように円筒形状のガイド部材31を用いた場合では、止め板3の回転角度θ(図13(a)、(b)参照)を6°程度に抑えることが可能となる。
【0059】
ここで、止め板3の回転角度θが6°未満になる理由について説明する。
図13(a)は、止め板3が板面が鋼管杭2の管軸Oに対して垂直方向となる姿勢で設置された場合の断面図を示している。このときの回転角度θは0°である。図13(a)に示す符号L’の距離は、ガイド部材31の中心軸C1方向に延びる距離を示しているが、後述の通り以下の回転角度θの最大値を算出するうえでは、上述したテーパー部20の下端20bからガイド部材31の下端31aまでの距離Lと同じ(L’=L)である。
【0060】
図13(b)に示すように、止め板3が鋼管杭2の管軸Oを通る水平軸を中心にして回転した場合の断面図を示している。
この場合、ガイド部材31と小径部22の内面22aとの接触で回転が止まるため、ガイド部材31と内面22aとの距離xは、(D’-2d)/2だけ回転する。図13(b)に示す3つの頂点A、B、Cで囲まれる三角形から、回転角度θは、tanθ=辺BC/辺ABにより求められる。ここで、AB=L’、BC≦(D’-2d)/2であるから、tanθは、下記(5)式となる。
このとき、L≧D’かつ2d≧0.8D’とすると、回転角度θが最大となるのは、2d=0.8D’かつ、ガイド部材31の上端が鋼管杭のテーパー部20の下端20bの位置(深さ)に配置され(L’=L)、テーパー部20の下端20bからガイド部材31の下端までの距離がD’となる(L=D’)ときであるから、(6)式より、回転角度はθ≦5.8°となる。
【0061】
【数8】
【0062】
次に、上述した(2)式および(4)式を満たすガイド部材31の形態を図14図15に示し、(3)式および(4)式を満たすガイド部材31の形態を図16図17に示す。
図14に示すガイド部材31Aは、距離Lが0より大きい形態である。このガイド部材31Aは、上部が小径筒部310であり、下部が大径筒部311である。小径筒部310は、鋼管杭2のテーパー部20に配置されている。小径筒部310の径2dは、0.8D’未満であってもよい。大径筒部311の径2dは、テーパー部20の下端20bよりも深い位置において上記(4)式を満たす部分が存在するように設定されている。
【0063】
図15に示すガイド部材31Bは、距離Lが0より大きい形態である。このガイド部材31Bは、上部と下部とが同径の大径筒部312、313であり、中間部が小径筒部314であり、さらに上部の大径筒部312の一部および下部の大径筒部313がテーパー部20の下端20bよりも深い位置に存在し、下部の大径筒部313の一部は鋼管杭のテーパー部20の下端20bから深さ1D’以上の範囲となっている。小径筒部314は、テーパー部20の下端20bから深さ方向に1D’未満の範囲に配置されている。小径筒部314の径2dは、0.8D’未満であってもよい。上部の大径筒部312および下部の大径筒部313の径2dは、テーパー部20の下端20bよりも深い位置において上記(4)式を満たす部分が存在するように設定されている。
【0064】
図16に示すガイド部材31Cは、距離Lが(3)式を満たす範囲の形態である。このガイド部材31Cは、上部と下部とが同径の大径筒部315、316であり、中間部が小径筒部317であり、さらに下部の大径筒部316の一部がテーパー部の下端から深さ方向に1D’以上の範囲に配置されている。小径筒部317は、一部がテーパー部20に配置され、かつ他の部分がテーパー部の下端から深さ方向に1D’未満の範囲に配置されている。小径筒部317の径2dは、0.8D’未満であってもよい。下部の大径筒部316の径2dは、テーパー部の下端から1D’以上の深さにおいて上記(4)式を満たす部分が存在するように設定されている。
【0065】
図17に示すガイド部材31Dは、距離Lが(3)式を満たす範囲の形態である。このガイド部材31Dは、上部が大径筒部318であり、下部が下方に向けて縮径される縮径部319であり、さらに下部の縮径部319の一部がテーパー部の下端から深さ方向に1D’以上の範囲に配置されている。大径筒部318は、一部がテーパー部20に配置され、かつ他の部分がテーパー部の下端から深さ方向に1D’未満の範囲に配置されている。縮径部319の径2dは、テーパー部の下端から1D’以上の深さにおいて上記(4)式を満たす部分が存在すれば、それ以外の部分は0.8D’未満であってもよい。大径筒部318の径2dは、テーパー部の下端から1D’以上の深さにおいて上記(4)式を満たすように設定されている。
【0066】
また、本実施形態では、鋼管杭2のテーパー部20の下端からガイド部材31の下端までの距離Lと、の関係で(3)式および(4)式を満たしているので、ガイド部材31をテーパー部20より小径部22内に安定した状態で嵌合されるので、止め板3の姿勢を安定させることができ、コンクリート4の充填性を高めることができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、ガイド部材31がテーパー部20より下の鋼管内に嵌合されるので、止め板3の姿勢を安定させることができ、止め板3を設置するときに、安定した姿勢で止め板3を配置することができるほか、コンクリート4を鋼管内に充填したときに、止め板3がずれたりして下方にコンクリート4が漏れ出すことを防止できる。そのため、より施工効率の向上を図ることができ、しかも施工にかかるコストを低減できる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、上述した図2に示す第2実施形態の止め板3は、コンクリート4の自重に耐える強度と、コンクリート4の充填性が確保できればよく、その材質や厚みは制限されることはない。図18に示す第3実施形態の止め板3Bは、上述した第1実施形態の止め板3よりも厚みを大きくしたものである。
【0069】
第3実施形態では、止め板3Bの厚みを大きくすることにより、鋼管杭2のテーパー部20の管内面20cとの接触する面積を増やすことができ、密着性を高めることができる。これにより、上方から充填されるコンクリート4が止め板3Bよりも下方に流出することをより確実に抑制することができる。
【0070】
(第1変形例)
次に、図19に示す第1変形例による第1止め板構造30Aは、上述した第2実施形態のテーパーのない止め板3Aの下方に上下方向から見て断面四角形の四角柱状のガイド部材32を設けた構成である。
第1止め板構造30Aでは、ガイド部材32が鋼管杭2の小径部22(図2参照)に挿入され、その小径部22の内面にガイド部材32の4つの角部32a(外端部)が近接した状態で配置されている。
【0071】
なお、第1変形例の場合には、図20に示すように、ガイド部材32がその安定性を発揮するためには、水平断面視で小径部22の内径の0.8~0.9倍の範囲(内仮想円K1と外仮想円K2との間の領域H)に対して、ガイド部材32の角部32aが通過する位置が少なくとも3箇所以上(第1変形例では4箇所)が存在している。
【0072】
(第2変形例)
次に、図21に示す第2変形例による第2止め板構造30Bは、上述した第2実施形態のテーパーの無い止め板3Aの下面3bから下方に棒鋼、長ボルト、鉄筋等の複数の長尺部材33Aを延ばしたガイド部材33を設けた構成である。第2止め板構造30Bでは、ガイド部材33の長尺部材33Aが鋼管杭2の小径部22(図2参照)に挿入され、その小径部22の内面に4本の長尺部材33Aが近接した状態で配置されている。
【0073】
なお、第2変形例の場合には、ガイド部材33がその安定性を発揮するためには、小径部(図2参照)の内径の0.8~0.9倍の範囲(後述する図24(a)、(b)に示す点線で囲まれた符号Hの領域)に対して、ガイド部材33の複数の長尺部材33Aが通過する位置が少なくとも3箇所以上(第2変形例では4箇所)が存在している。
【0074】
(第3変形例)
次に、図22に示す第3変形例による第3止め板構造30Cは、上述した第2実施形態のテーパーの無い止め板3Aの下面3bにH形鋼からなるガイド部材34を設けた構成である。ガイド部材34は、材軸方向が止め板3Aの下面3bに直交方向となっている。第3止め板構造30Cでは、ガイド部材34が鋼管杭2の小径部22(図2参照)に挿入され、その小径部22の内面にガイド部材34の4箇所の角部34a(外端部)が近接した状態で配置されている。
【0075】
なお、第3変形例の場合には、図23に示すように、ガイド部材34がその安定性を発揮するためには、小径部(図2参照)の内径の0.8~0.9倍の範囲(内仮想円K1と外仮想円K2との間の領域H)に対して、ガイド部材34の角部34aが通過する位置が少なくとも3箇所以上(第3変形例では4箇所)が存在している。
【0076】
(第4変形例)
次に、図24(a)に示す第4変形例による第4止め板構造30Dは、上述した第2実施形態のテーパーの無い止め板3Aの下方に上下方向から見た平面視で断面三角形の三角柱状のガイド部材35を設けた構成である。第4止め板構造30Dでは、ガイド部材35が鋼管杭2の小径部22(図2参照)に挿入され、その小径部22の内面にガイド部材35の3箇所の角部35a(外端部)が近接した状態で配置されている。
【0077】
第4変形例の場合には、ガイド部材35がその安定性を発揮するためには、小径部22(図2参照)の内径の0.8~0.9倍の領域Hに対して、ガイド部材35の角部35aが通過する位置が少なくとも3箇所以上(第4変形例では3箇所)が存在している。
なお、図24(b)に示すようなテーパーの無い止め板3Aの下方に上下方向から見た平面視で断面I形状の板状のガイド部材36の場合には、小径部22(図2参照)の内径の0.8~0.9倍の領域Hに対して、ガイド部材36の端部36aが通過する位置が2箇所であるので、ガイドとしての安定性が得られにくい。
【0078】
次に、図25(a)、(b)に示す第5変形例は、ガイド部材41、42の端部が止め板の中心軸(管軸O)から等距離に配置されていない構成である。
図25(a)のガイド部材41は、断面二等辺三角形のものであり、3つの頂部41a、41b、41cのそれぞれが0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在している。この場合、1つの頂部41aのみが管軸方向から見て最も管軸Oからの距離が大きい外端部となる。
【0079】
図25(b)のガイド部材42は、断面正三角形のものであり、3つの頂部42a、42b、42cのそれぞれが0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在している。この場合、2つの頂部42b、42cが管軸方向から見て最も管軸Oからの距離が大きい外端部となる。
【0080】
次に、図26(a)、(b)に示す第6変形例は、ガイド部材43、44の中心軸C1(重心)と管軸Oとがずれて配置された状態を示している。
図26(a)のガイド部材43は、断面正三角形のものであり、3つの頂部43a、43b、43cのそれぞれが0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在している。そして、この場合、3つの頂部43a、43b、43cのうち1つの頂部43aが管軸方向から見て最も管軸Oからの距離が大きい外端部となる。
【0081】
図26(b)のガイド部材44は、断面正方形のものであり、4つの頂部44a、44b、44c、44dのそれぞれが0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在している。そして、この場合、4つの頂部44a、44b、44c、44dのうち2つの頂部44a、44bが管軸方向から見て最も管軸Oからの距離が大きい外端部となる。
【0082】
次に、図27(a)、(b)に示す第7変形例は、ガイド部材45、46の頂部の一部のみが上記の領域Hに存在している構成のものである。
図27(a)のガイド部材45は、断面正三角形のものであり、3つの頂部45a、45b、45cのうち1つの頂部45aのみが0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在し、他の2つの頂部45b、45cが内仮想円K1よりも内側に存在している。この場合、3つの頂部45a、45b、45cのうち1つの頂部45aが管軸方向から見て最も管軸Oからの距離が大きい外端部となる。
このように外端部が1つであっても、その1つの外端部(頂部45a)が領域Hに存在することによって、特定の方向への回転を防止できる効果を有する。
【0083】
図27(b)のガイド部材46は、断面長方形のものであり、4つの頂部46a、46b、46c、46dのうち2つの頂部46a、46bが0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在し、他の2つの頂部46c、46dが内仮想円K1よりも内側に存在している。この場合、2つの頂部46a、46bが管軸方向から見て最も管軸Oからの距離が大きい外端部となる。
【0084】
以上、本発明による鋼管杭構造および鋼管杭構造用の止め板の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
例えば、本実施形態では、鋼管杭2のテーパー部20の上端20aは、鋼管杭2の杭頭径Dに対して、鋼管杭2の杭頭部2Aからの距離が6D以下の間に位置するように構成しているが、これに限定されることはない。
【0086】
また、本実施形態では、止め板3の外周縁に上端側から下端側に向かって縮径するテーパー面3cが形成され、鋼管杭2のテーパー部20の鋼管杭側テーパー角度αと、止め板3のテーパー面3cの止め板側テーパー角度βとが上記(1)式を満たしているが、これに限定されることはない。
【0087】
また、止め板3には、下方に突出するとともに、鋼管杭2の内側に嵌入された状態で支持されるガイド部材31が設けられているが、このようなガイド部材31を省略することが可能である。すなわち、円盤状の止め板3のみの構成であってもよい。
【0088】
また、本実施形態では、ガイド部材31が、止め板3の中心からガイド部材31の外端部31bまでの距離dと、鋼管杭2のテーパー部20における下端の内径D’と、前記止め板の設置時における鋼管杭2の前記テーパー部の下端からガイド部材31の下端31aまでの距離Lと、の関係で上記(2)式((3)式)および(4)式を満たすように設定されているが、これに限定されることはない。さらに、本実施形態では、上記(2)式を満たし、かつ小径部22における水平断面において、ガイド部材の少なくとも一部が0.8D’の内仮想円K1と0.9D’の外仮想円K2との間の領域Hに存在し、かつガイド部材の外端部が0.9D’の外仮想円K2より外側に位置しないように設定されているが、これに限定されることはない。
【0089】
また、止め板3の長さ寸法や数量、形状は任意に設定することが可能である。
【0090】
また、鋼管杭2の板厚は管軸O方向の全長にわたって一定である必要はなく、任意に設定することが可能である。
【0091】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 鋼管杭構造
2 鋼管杭
3、3A、3B、 止め板
4 コンクリート
20 テーパー部
20c 管内面
21 大径部
22 小径部
30A~30E 止め板構造
31 ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
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