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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】ファンおよび空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20250227BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
F04D29/66 N
F04D29/42 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023107923
(22)【出願日】2023-06-30
(65)【公開番号】P2025006884
(43)【公開日】2025-01-17
【審査請求日】2024-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 洋峻
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】寺川 あづみ
(72)【発明者】
【氏名】三船 友梨恵
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-106395(JP,U)
【文献】特開平05-240193(JP,A)
【文献】実開平04-066394(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車(33)と、
前記羽根車(33)を囲む周壁(43)を有し、該羽根車(33)と前記周壁(43)との間に空気通路(46)を形成するケーシング(40)とを備え、
前記周壁(43)は、
スクロール形状の第1内面(51a,52a)を形成するスクロール部(51,52)と、
前記スクロール部(51,52)に対して径方向内方に屈曲し、前記第1内面(51a,52a)と滑らかに連続しない第2内面(53a)を形成する非連続部(53)とを有し、
前記周壁(43)には、前記スクロール部(51,52)と前記非連続部(53)との境界から、前記空気通路(46)の吹出口(45)までの領域の範囲内に、多孔質部(60)が設けられる
ファン。
【請求項2】
前記スクロール部(51,52)は、前記非連続部(53)の下流端に接続し、
前記多孔質部(60)は、前記周壁(43)において、前記非連続部(53)の下流端から前記空気通路(46)の前記吹出口(45)までの領域の範囲内に設けられる
請求項1に記載のファン。
【請求項3】
前記多孔質部(60)は、前記周壁(43)を構成する
請求項1または2に記載のファン。
【請求項4】
前記多孔質部(60)は、前記周壁(43)の内面から外面に亘って形成される
請求項3に記載のファン。
【請求項5】
前記多孔質部(60)は、前記周壁(43)の内面に固定される多孔質部材(61)である
請求項1または2に記載のファン。
【請求項6】
シロッコ式ファンである
請求項1または2に記載のファン。
【請求項7】
請求項1または2に記載のファンを備える
空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファンおよび空気調和装置に関する
【背景技術】
【0002】
従来より、羽根車を有するファンが知られている。特許文献1には、シロッコファンが開示されている。シロッコファンは、羽根車と、羽根車を囲むケーシングとを有する。ケーシングの周壁の内面は、スクロール形状である。羽根車が回転すると、ケーシングの軸心側にある吸込口から、空気が吸い込まれる。この空気は、ケーシングと、羽根車との間の空気通路を通って、ケーシングの吐出部の先端の吹出口から吹き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-14021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、羽根車をケーシングが囲んだファンにおいて、ケーシングの一部をカットするような構造を採用することが考えられる。具体的には、例えばケーシングの周壁の一部を平坦な形状とすることで、ケーシングの周方向の長さを短くできる。その結果、このファンを空気調和装置などの空調ケーシングにコンパクトに収容できる。これにより、空気調和装置の小型化を図ることができる。
【0005】
一方、このようにファンの周壁にカットした構造を採用する場合、スクロール部の内面と、カット部を設けた部分(非連続部)とが滑らかに連続しなくなる。このため、空気通路では、スクロール部と非連続部との境界を起点として渦流が発生し、騒音が増大してしまう。
【0006】
本開示は、スクロール部と非連続部との境界を起点として渦流が発生することを抑制できるファンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様のファンは、羽根車(33)と、羽根車(33)を囲む周壁(43)を有し、羽根車(33)と周壁(43)との間に空気通路(46)を形成するケーシング(40)とを備える。周壁(43)は、スクロール形状の第1内面(51a,52a)を形成するスクロール部(51,52)と、スクロール部(51,52)に対して径方向内方に屈曲し、第1内面(51a,52a)と滑らかに連続しない第2内面(53a)を形成する非連続部(53) とを有する。周壁(43)には、スクロール部(51,52)と非連続部(53)との境界から、空気通路(46)の吹出口(45)までの領域の範囲内に、多孔質部(60)が設けられる。
【0008】
第1の態様の周壁(43)には、スクロール部(51,52)と非連続部(53)との境界から、空気通路(46)の吹出口(45)までの領域の範囲内に多孔質部(60)が設けられる。多孔質部(60)は、複数の孔を有し、渦流の発生を抑制する機能を有する。このため、この領域の範囲内に多孔質部(60)を設けることで、スクロール部(51,52)と非連続部(53)との境界を起点として、その下流側において渦流が発生することを抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記スクロール部(51,52)は、前記非連続部(53)の下流端に接続し、前記多孔質部(60)は、前記周壁(43)において、前記非連続部(53)の下流端から前記空気通路(46)の前記吹出口(45)までの領域の範囲内に設けられる。
【0010】
第2の態様では、スクロール部(51,52)が非連続部(53)の下流端に接続される。このため、空気通路(46)が非連続部(53)を通過すると、非連続部(53)とスクロール部(51,52)との境界を起点として渦流が発生し、スクロール部(51,52)で空気が大きく乱れてしまう。これに対し、第2の態様では、非連続部(53)の下流端から空気通路(46)の吹出口(45)までの領域の範囲内に多孔質部(60)が設けられるので、スクロール部(51,52)での渦流の発生を抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、多孔質部(60)は、周壁(43)を構成する。
【0012】
第3の態様では、周壁(43)が多孔質部(60)によって構成されるので、ファン(30)の部品点数を削減できる。
【0013】
第4の態様は、第3の態様において、前記多孔質部(60)は、前記周壁(43)の内面から外面に亘って形成される。
【0014】
第4の態様では、多孔質部(60)が周壁(43)の内面(43a)から周壁(43)の外面(43b)に亘って形成される。多孔質部(60)は、複数の孔が連通する連続気泡であるので、周壁(43)の内面側の空気を、多孔質部(60)を通じて周壁(43)の外面(43b)側に逃がすことができる。その結果、多孔質部(60)による渦流の発生を抑制できる。
【0015】
第5の態様は、第1または第2の態様において、多孔質部(60)は、周壁(43)の内面に固定される多孔質部材(61)である。
【0016】
第5の態様では、周壁(43)の内面に多孔質部(60)である多孔質部材(61)を設けることで、ファン(30)に渦流の発生の抑制効果を付与できる。
【0017】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、ファンは、シロッコ式ファンである。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様のファンを有する空気調和装置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態の空気調和装置の概略の構成を示す縦断面図である。
図2図2は、ファンの側面図である。
図3図3は、図2のIII-III線の断面図である。
図4図4は、変形例1のファンの図3に相当する図である。
図5図5は、変形例2のファンの図3に相当する図である。
図6図6は、変形例3のファンの多孔質部材の近傍を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。
【0021】
(1)空気調和装置
ファン(30)は、空気調和装置(10)に適用される。空気調和装置(10)は、室内空気を調和する。本実施形態の空気調和装置(10)は、空気の温度を調節する。空気調和装置(10)は、室外空気を室内に供給する外調機である。図1に示すように、空気調和装置(10)は、天井裏に配置される室内ユニット(10a)を有する。室内ユニット(10a)は、空調ケーシング(11)と、空調ケーシング(11)内に収容されるファン(30)および室内熱交換器(17)を有する。
【0022】
空調ケーシング(11)は、横長の直方体の箱状である。空調ケーシング(11)は、互いに向か合う第1側板(12)および第2側板(13)を有する。第1側板(12)には外気吸込口(14)が形成され、第2側板(13)には給気口(15)が形成される。外気吸込口(14)は、吸込ダクトを介して室外空間と連通する。給気口(15)は、給気ダクトを介して室内空間を連通する。空調ケーシング(11)の内部には、外気吸込口(14)から給気口(15)までに亘って、空気が流れる空調通路(16)が形成される。
【0023】
ファン(30)は、空調通路(16)に配置される。ファン(30)は、遠心ファンである。厳密には、ファン(30)は、シロッコ式ファンである。
【0024】
室内熱交換器(17)は、空気と冷媒とを熱交換させる。室内熱交換器(17)は、冷媒回路に接続される。冷媒回路は、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁、および室内熱交換器(17)を有する。冷媒回路は、冷媒を循環させることで蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。圧縮機および室外熱交換器は、室外ユニットに設けられる。
【0025】
冷房運転時には、圧縮機およびファン(30)が運転され、室内熱交換器(17)が蒸発器として機能する。外気吸込口(14)から空調通路(16)に流入した空気は、室内熱交換器(17)を通過する。室内熱交換器(17)では、蒸発する冷媒によって空気が冷却される。室内熱交換器(17)で冷却された空気は、給気口(15)、給気ダクトを介して室内空間に供給される。
【0026】
暖房運転時には、圧縮機およびファン(30)が運転され、室内熱交換器(17)が凝縮器(放熱器)として機能する。外気吸込口(14)から空調通路(16)に流入した空気は、室内熱交換器(17)を通過する。室内熱交換器(17)では、凝縮する冷媒によって空気が加熱される。室内熱交換器(17)で加熱された空気は、給気口(15)、給気ダクトを介して室内空間に供給される。
【0027】
(2)ファンの概要
図1図3に示すファン(30)は、モータ(31)と、モータ(31)に回転駆動される駆動軸(32)と、駆動軸(32)に連結する羽根車(33)と、羽根車(33)を収容するケーシング(40)とを有する。モータ(31)は、モータ支持台(34)によって支持される。駆動軸(32)は、モータ(31)と連結し、水平方向に延びる。ファン(30)は、モータ(31)の駆動軸(32)が水平方向に沿って延びる縦置き式である。羽根車(33)は、その回転軸が駆動軸(32)と連結する。羽根車(33)は、その回転方向(図3の矢印Rで示す方向)に配列される複数の翼(33a)を有する。
【0028】
ケーシング(40)は、円筒状のケーシング本体(40a)と、ケーシング本体(40a)の外周部分からケーシング本体(40a)の接線方向に延びる吐出部(40b)とを有する。
【0029】
ケーシング本体(40a)は、第1壁(41)、第2壁(42)、および周壁(43)を有する。第1壁(41)は、ケーシング本体(40a)における軸方向の一端側に形成され、第2壁(42)は、ケーシング本体(40a)における軸方向の他端側に形成される。第1壁(41)は、羽根車(33)を挟んでモータ(31)側に位置し、第2壁(42)は、羽根車(33)を挟んでモータ(31)と反対側に位置する。第1壁(41)および第2壁(42)は、円板状である。第2壁(42)の中心部分には、吸込口(44)が形成される。周壁(43)は、羽根車(33)の外周縁部を囲む。周壁(43)は、羽根車(33)に沿った略円弧状である。
【0030】
吐出部(40b)は、ケーシング本体(40a)の内部と連通するダクトを構成する。吐出部(40b)は、その軸方向の両端が開口する矩形筒状に形成される。吐出部(40b)の軸方向の一端の開口は、ケーシング本体(40a)の内部と連続する。吐出部(40b)の軸方向の他端の開口は、吹出口(45)を構成する。ケーシング(40)の内部には、吸込口(44)から吹出口(45)までに亘って、空気が流れる空気通路(46)が形成される。
【0031】
(3)ケーシングの詳細な構造
図3に示すように、本実施形態のファン(30)の周壁(43)は、空気通路(46)の空気流れの上流側から下流側に向かって順に、第1スクロール部(51)、カット部(53)、および第2スクロール部(52)を有する。周壁(43)は、ケーシング(40)内の空気通路(46)と、ケーシング(40)の外側の空間とを区画する。
【0032】
第1スクロール部(51)および第2スクロール部(52)は、スクロール状の壁である。第1スクロール部(51)の内側には、第1スクロール面(51a)が形成され、第2スクロール部(52)の内側には、第2スクロール面(52a)が形成される。第1スクロール面(51a)および第2スクロール面(52a)は、第1内面の一例である。
【0033】
第1スクロール面(51a)と第2スクロール面(52a)とは、スクロール形状である。厳密には、第1スクロール面(51a)と第2スクロール面(52a)とは、インボリュート曲面を構成する。第1スクロール面(51a)と第2スクロール面(52a)とは、駆動軸(32)の軸心に直角な断面でみる場合に、インボリュート曲線状である。第1スクロール面(51a)と第2スクロール面(52a)とは、羽根車(33)の回転方向に進むにつれて曲率が小さくなる。第2スクロール面(52a)の曲率は、第1スクロール面(51a)の曲率より小さい。
【0034】
カット部(53)は、非連続部である。カット部(53)は、第1スクロール部(51)と第2スクロール部(52)との間に設けられる。カット部(53)は、第1スクロール部(51)の下流端と、第2スクロール部(52)の上流端とに接続する。本実施形態のカット部(53)は、周壁(43)の下側に位置する。カット部(53)を周壁(43)の下側に形成することで、周壁(43)にカット部(53)を形成しない構成と比較して、ケーシング(40)の上下方向の高さが低くなる。カット部(53)は、平板状の壁である。カット部(53)は、その上流端から下流端に向かって水平方向に延びる。
【0035】
カット部(53)の内側にはカット面(53a)が形成される。カット面(53a)は、平坦な平面である。カット面(53a)は、その上流端から下流端に向かって水平方向に延びる。カット面(53a)は、駆動軸(32)の軸心に直角な断面でみる場合に、水平に延びる直線状である。カット面(53a)は、第2内面の一例である。
【0036】
カット部(53)は、第1スクロール部(51)に対して周壁(43)の径方向内方に屈曲する。このため、第1スクロール部(51)の第1スクロール面(51a)は、カット部(53)のカット面(53a)と滑らかに連続しない。言い換えると、第1スクロール面(51a)とカット面(53a)とは、接線連続しない。具体的には、第1スクロール面(51a)の下流端と、カット面(53a)の上流端とは、接線を共有しない。
【0037】
カット部(53)は、第2スクロール部(52)に対して周壁(43)の径方向内方に屈曲する。このため、第2スクロール部(52)の第2スクロール面(52a)は、カット部(53)のカット面(53a)と滑らかに連続しない。言い換えると、第2スクロール面(52a)とカット面(53a)とは、接線連続しない。具体的には、第2スクロール面(52a)の上流端と、カット面(53a)の下流端とは、接線を共有しない。
【0038】
図3は、空気通路(46)の空気の流れを破線矢印で示す。空気通路(46)は、羽根車(33)の外周縁部とケーシング(40)の内面との間に形成される。空気通路(46)では、羽根車(33)と周壁(43)のうち最も近接した部分(図3における羽根車(33)の左端部付近)が、空気通路(46)の流入部に相当する。空気通路(46)では、カット部(53)と羽根車(33)との間の径方向の間隔が、第2スクロール部(52)と羽根車(33)との間の径方向の間隔よりも狭い。空気通路(46)は、特に第2スクロール部(52)と羽根車(33)との間において、回転方向の進むにつれて径方向の幅が拡大する。
【0039】
(4)渦流の発生
上述したように、周壁(43)の内面は、滑らかに連続しない箇所がある。具体的には、カット面(53a)と第2スクロール面(52a)とは、滑らかに連続しない(接線連続しない)。このため、空気通路(46)では、カット面(53a)と第2スクロール面(52a)の境界(a)を起点として、周壁(43)の内面付近の空気が剥離し、渦流が発生しやすくなる。境界(a)を起点として渦流が発生すると、第2スクロール面(52a)を通過する空気が大きく乱れてしまい、騒音が発生するという課題がある。
【0040】
(5)多孔質部
本実施形態では、上記の課題を解決するために、周壁(43)に多孔質部(60)を設けている。多孔質部(60)は、多数の微細な孔が連続する多孔質材料で構成される。多孔質材料は、樹脂、セラミックス、金属などである。樹脂は、例えば発泡樹脂である。金属やセラミックスは、多孔質焼結体である。多孔質部(60)の孔(空隙)の平均径は、例えば15μm~300μmの範囲である。多孔質部(60)の気孔率(=空隙の体積/多孔質部全体の体積)は、例えば35%~90%の範囲である。
【0041】
多孔質部(60)は、周壁(43)のうち、カット面(53a)と第2スクロール面(52a)の境界(a)から、吹出口(45)までの領域の範囲内に設けられる。言い換えると、多孔質部(60)は、カット部(53)の下流端から吹出口(45)までの領域の範囲内に設けられる。本実施形態の多孔質部(60)は、境界(a)から吹出口(45)に亘って設けられる。多孔質部(60)は、周壁(43)の軸方向の両端に亘って形成される。
【0042】
多孔質部(60)は、空気通路(46)での渦流の発生を抑制する機能を有する。境界(a)から吹出口(45)に亘って多孔質部(60)を設けることで、境界(a)を起点する渦流の発生を抑制できる。
【0043】
多孔質部(60)は、ケーシング(40)の周壁(43)を構成する。多孔質部(60)は、周壁(43)の内面(43a)から外面(43b)に亘って形成される。言い換えると、ケーシング(40)内の空気通路(46)と、ケーシング(40)の外部とは、多孔質部(60)の複数の孔を介して連通する。これにより、空気通路(46)の空気の圧力が上昇すると、この空気が多孔質部(60)を厚さ方向に透過してケーシング(40)の外部に僅かに漏れる。その結果、空気通路(46)での圧力変動を抑制できる。これにより、点aの境界を起点する渦流の発生を効果的に抑制できる。
【0044】
本実施形態の周壁(43)では、カット部(53)および第1スクロール部(51)には、多孔質部(60)が設けられてない。言い換えると、多孔質部(60)は、周壁(43)のうち、カット面(53a)と第2スクロール面(52a)の境界(a)から、吹出口(45)までの領域の範囲内にのみ設けられる。言い換えると、周壁(43)では、境界(a)から上流側に多孔質部(60)でない、非多孔質部が設けられる。このため、周壁(43)では、多孔質部(60)が設けられる部分が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0045】
(6)実施形態の効果
本実施形態のファン(30)の周壁(43)は、スクロール形状の第2スクロール面(52a)を形成する第2スクロール部(52)と、第2スクロール部(52)に対して径方向内方に屈曲し、第2スクロール面(52a)と滑らかに連続しないカット面(53a)を形成するカット部(53)とを有する。
【0046】
周壁(43)に、スクロール部(51,52)に対して径方向内方に屈曲する非連続部(53)を形成することで、ケーシング(40)の一部を径方向に小型化できる。一方、スクロール部(51,52)に非連続部(53)を設けると、スクロール部(51,52)の第1内面(51a,52a)と非連続部(53)の第2内面(53a)とが滑らかに連続しないので、両者の境界を起点として空気が内面から剥離しやすくなり、境界を起点として渦流が生じやすくなる。
【0047】
これに対し、周壁(43)には、第2スクロール部(52)とカット部(53)との境界(a)から、空気通路(46)の吹出口(45)までの領域の範囲内に、多孔質部(60)が設けられる。周壁(43)には、第2スクロール部(52)とカット部(53)との境界(a)から、空気通路(46)の吹出口(45)までの領域の範囲内に、多孔質部(60)が設けられる。これにより、境界(a)を起点として、空気が剥離することを抑制でき、さらには渦流の発生を抑制できる。その結果、渦流に起因する騒音の発生を抑制できる。
【0048】
実施形態では、多孔質部(60)が周壁(43)の一部を構成する。つまり、多孔質部(60)は、空気通路(46)を形成するための隔壁を兼用する。このため、ファン(30)の部品点数を削減できる。
【0049】
実施形態では、多孔質部(60)が、周壁(43)の内面(43a)から外面(43b)に亘って形成される。これにより、境界(a)の下流側における空気の圧力変動を抑制できるので、境界(a)を起点として渦流が発生することを効果的に抑制できる。
【0050】
(6)変形例
上述したファン(30)は、次のような変形例の構成としてもよい。以下では、上記実施形態と異なる点について説明する。
【0051】
(6-1)変形例1
図4に示す変形例1では、第1スクロール部(51)とカット部(53)との境界(b)から、吹出口(45)までの領域の範囲内に多孔質部(60)が設けられる。言い換えると、多孔質部(60)は、カット部(53)の上流端から吹出口(45)までの領域の範囲内に設けられる。図4の例では、多孔質部(60)は、境界(b)から吹出口(45)までに亘って設けられる。多孔質部(60)は、第1スクロール部(51)には設けられない。
【0052】
第1スクロール面(51a)と、カット面(53a)とは滑らかに連続しないので、境界(b)を起点に空気が剥離し、渦流が発生する可能性がある。これに対し、境界(b)の下流側に多孔質部(60)を設けることで、渦流の発生を抑制できる。
【0053】
(6-2)変形例2
図5に示す変形例2では、第2スクロール部(52)に多孔質部(60)が設けられ、吐出部(40b)には多孔質部(60)が設けられない。変形例2では、多孔質部(60)は、境界(a)から第2スクロール部(52)の下流端までに亘って設けられる。これにより、境界(a)を起点する渦流の発生を抑制できる。図5の例では、多孔質部(60)は、カット部(53)に設けられないが、変形例1と同様、カット部(53)に多孔質部(60)を設けてもよい。
【0054】
(6-3)変形例3
図6に示す変形例3では、ケーシング(40)の周壁(43)の内面に、多孔質部(60)である多孔質部材(61)が固定される。周壁(43)には、多孔質部材(61)が嵌まる凹部(62)が形成される。多孔質部材(61)は、凹部(62)の内部に貼り付けられる。周壁(43)に凹部(62)を形成せず、周壁(43)の内面に多孔質部材(61)を貼り付けてもよい。
【0055】
(6)その他の実施形態
ファン(30)は、スクロール部(51,52)および非連続部(53)が形成されるケーシング(40)を有するものであればよく、例えばターボ式ファンであってもよい。
【0056】
ファン(30)は、駆動軸(32)が鉛直方向に延びる横置き式であってもよいし、駆動軸(32)が他の方向に延びるように配置されてもよい。
【0057】
ファン(30)は、第1壁(41)と第2壁(42)との双方に吸込口(44)が形成される、両吸込式のファンであってもよい。
【0058】
周壁(43)に、2つ以上のカット部(53)を設けてもよい。周壁(43)の上側や、側方側にカット部(53)を形成してもよい。
【0059】
周壁(43)において、カット部(53)の途中からスクロール部(51,52)の所定の範囲に亘って多孔質部(60)を設けてもよい。
【0060】
カット部(53)は、平板状でなくてもよく、スクロール部(51,52)に対して径方向内方に屈曲するのであれば、円弧板状であってもよい。
【0061】
空気調和装置(10)は、対象空間の空気を浄化する空気清浄機、対象空間を換気する換気装置、対象空間の湿度を調節する調湿装置であってもよい。
【0062】
室内ユニット(10a)は、天井吊り式、壁掛け式、床置き式であってもよい。
【0063】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0064】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上に説明したように、本開示は、ファンおよび空気調和装置について有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 空気調和装置
30 ファン
33 羽根車
40 ケーシング
43 周壁
45 吹出口
46 空気通路
51,52 スクロール部
51a,52a 第1内面
53 カット部(非連続部)
53a カット面(第2内面)
60 多孔質部
61 多孔質部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6