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<図1>
  • 特許-電源システム 図1
  • 特許-電源システム 図2
  • 特許-電源システム 図3
  • 特許-電源システム 図4
  • 特許-電源システム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20250227BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J3/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023147482
(22)【出願日】2023-09-12
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 有貴
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-244124(JP,A)
【文献】特開平02-131334(JP,A)
【文献】特開平08-223822(JP,A)
【文献】特開2015-116052(JP,A)
【文献】特開平05-115136(JP,A)
【文献】特開平02-219427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線を開閉する開閉スイッチと、
注入トランスを介して前記開閉スイッチに対して並列となるように前記電力線に接続され、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、
前記開閉スイッチに対して並列となるように前記注入トランスと前記電力線との間に設けられ、互いに直列に接続された抵抗素子とコンデンサ素子により構成される交流フィルタと、
前記開閉スイッチに対して並列となるように前記注入トランスと前記電力線との間に設けられ、かつ前記交流フィルタに対して直列となるように接続され、サージ電流を吸収するリアクトル素子と、
前記開閉スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、
前記制御部が、
前記電力系統の異常が発生した場合に、前記開閉スイッチを開放し、前記電力変換器を駆動させて前記負荷の電圧の低下を補償する補償制御を行い、
前記電力系統が復電した場合に、前記開閉スイッチを投入するとともに、前記電力変換器を停止させる電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、停電や瞬時電圧低下(以下、瞬低とも言う。)に対して、電力変換器を制御することにより、電力系統から解列して負荷を補償する電源システムが提案されている。この種の電源システムは、例えば特許文献1に示すように、瞬低等の電力系統の異常が発生した場合、電力系統と負荷とを接続する電力線を開閉する開閉スイッチを開放させるとともに、注入トランスを介して開閉スイッチに並列に設けられた電力変換器を駆動させ、電力系統の電圧低下量に相当する補償電圧を負荷に供給することにより、負荷電圧の低下を補償している。そしてこの種の電源システムは、電力系統が復電した場合には、開閉スイッチを再び投入するとともに、電力変換器を停止してゲートブロックするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第2578802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記した電源システムでは、注入トランスの一次側(すなわち、注入トランスと電力線との間)に、開閉スイッチに対して並列に接続された交流フィルタを設けて、交流と直流を変換する時に発生する高調波電流を吸収させるものがある。このような電源システムでは、電力系統が復電した際に、急峻な回復電圧に伴うサージ電流は、交流フィルタを経由して負荷に流れることになる。この際、計測遅れや注入トランスのインダクタンスに起因する遅延により、電力変換器からの補償電圧が系統電圧の急増に追従できず、負荷過電圧が生じることがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、系統電圧の低下分を電力変換器から補償する電源システムにおいて、系統電圧回復時に生じる負荷過電圧を抑制することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る電源システムは、前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線を開閉する開閉スイッチと、前記開閉スイッチに対して並列となるように前記電力線に接続され、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、前記開閉スイッチに対して並列となるように前記電力変換器と前記電力線との間に設けられた交流フィルタと、前記開閉スイッチに対して並列となり、かつ前記交流フィルタに対して直列となるように接続されたリアクトル素子と、前記開閉スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記電力系統の異常が発生した場合に、前記開閉スイッチを開放し、前記電力変換器を駆動させて前記負荷の電圧の低下を補償する補償制御を行い、前記電力系統が復電した場合に、前記開閉スイッチを投入するとともに、前記電力変換器を停止させるものである。
【0007】
このような電源システムであれば、開閉スイッチに対して並列となり、かつ交流フィルタに対して直列となるように接続されたリアクトル素子を備えているので、電力系統が復電した際に、急峻な回復電圧に伴うサージ電流をリアクトル素子で吸収することができ、これにより系統電圧回復時に生じる負荷過電圧を抑制することができる。
【0008】
また本発明の効果を顕著に奏する前記電源システムの具体的態様としては、前記電力変換器が注入トランスを介して前記開閉スイッチに並列に設けられており、前記交流フィルタが前記注入トランスと前記電力線との間に設けられているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
このように構成した本発明によれば、系統電圧の低下分を電力変換器から補償する電源システムにおいて、系統電圧回復時に生じる負荷過電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
図2】従来の電源システムを用いたシミュレーション結果を示す図。
図3】従来の電源システムを用いたシミュレーション結果を示す図。
図4】同実施形態の電源システムを用いたシミュレーション結果を示す図。
図5】同実施形態の電源システムを用いたシミュレーション結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態における電源システム100は、図1に示すように、電力系統10及び負荷20の間に設けられ、負荷20に電力を供給するものである。本実施形態において、電力系統10の正常時に、電源システム100が電力系統10と負荷20とを電気的に接続することにより、電力系統10から負荷20へと給電している。一方、電力系統10で停電や瞬時電圧低下(以下、瞬低とも言う。)等といった異常が発生すると、電源システム100は、電力系統10から負荷20への給電を遮断して、負荷20の電圧低下分を補償する。なお、本実施形態における電源システム100は、三相電力を供給するものであるが、相の数は特に限定されない。
【0013】
具体的に電源システム100は、電力系統10から負荷20に給電するための電力線Lを開閉する開閉スイッチ3と、電力系統10の電圧である系統電圧を測定する系統電圧測定部4と、開閉スイッチ3に流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部5と、開閉スイッチ3と並列に電力線Lに接続される電力変換器6と、開閉スイッチ3及び電力変換器6を制御する制御部7とを備える。以下、各部について説明する。
【0014】
開閉スイッチ3は、電力線Lに設けられており、開閉スイッチ3が投入されると、電力系統10と負荷20とが電気的に接続され、開閉スイッチ3が開放されると、電力系統10と負荷20とが電気的に切り離されるものである。本実施形態において、開閉スイッチ3はサイリスタスイッチであり、後述する制御部7が電力変換器6を制御することにより、サイリスタスイッチが点弧又は消弧される。なお開閉スイッチ3はこれに限らず、半導体スイッチ、機械式スイッチ、又は、これらのハイブリッドスイッチであってもよい。
【0015】
系統電圧測定部4は、計器用変圧器を介して電力線Lに接続されており、開閉スイッチ3よりも電力系統10側の電圧を測定するものである。具体的に系統電圧測定部4は、開閉スイッチ3及び電力変換器6からなる並列回路よりも電力系統10側に計器用変圧器を介して接続されている。系統電圧測定部4により得られた系統電圧は、後述する制御部7に入力されて、開閉スイッチ3及び電力変換器6の制御に用いられる。
【0016】
スイッチ電流測定部5は、開閉スイッチ3及び電力変換器6からなる並列回路に設けられて、スイッチ電流を測定するものである。具体的にスイッチ電流測定部5は、開閉スイッチ3及び電力変換器6からなる並列回路において、開閉スイッチ3が設けられる電力線Lに流れる電流を測定している。
【0017】
電力変換器6は、注入トランスTを介して開閉スイッチ3に並列に設けられており、例えば二次電池(蓄電池)等の電力貯蔵装置(不図示)からの直流電力を交流電力に変換するものである。なお、電力変換器6は、例えば複数の半導体スイッチング素子を用いて構成されており、制御部7により制御される。
【0018】
また、注入トランスTと電力線Lとの間には、開閉スイッチ3と並列に接続される交流フィルタ8が設けられている。つまり交流フィルタ8は、開閉スイッチ3及び電力変換器6と互いに並列に接続されており、注入トランスTよりも電力線L側(すなわち、注入トランスTの一次側)に設けられている。この交流フィルタ8は、電力変換器6において交流と直流を変換する時に発生する高調波電流を吸収するものであり、互いに直列に接続された抵抗素子81とコンデンサ素子82とにより構成されている。
【0019】
そして本実施形態では、開閉スイッチ3と交流フィルタ8との間には、開閉スイッチ3に対して並列に接続され、かつ、交流フィルタ8に対して直列に接続された負荷過電圧抑制用のリアクトル素子9が設けられている。このリアクトル素子9は、交流フィルタ8よりも電力系統10側に設けられてもよく、負荷20側に設けられてもよい。
【0020】
制御部7は、開閉スイッチ3及び電力変換器6を制御するものである。ここで制御部7は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス等を備えた、汎用乃至専用のコンピュータであり、そのメモリに記憶させた所定のプログラムに従ってCPUや周辺機器を協働させることにより、以下の機能を発揮する。
【0021】
制御部7は、電力系統10の異常が発生した場合に、開閉スイッチ3及び電力変換器6を制御することで電圧補償制御を行うようにする。具体的に制御部7は、系統電圧測定部4から電力系統10の系統電圧を取得し、当該取得した系統電圧が所定範囲外である場合に、電力系統10の異常と判断して、開閉スイッチ3及び電力変換器6の制御を開始する。なお、本実施形態において、制御部7は、電力変換器6のオンとオフを繰り返してスイッチングを行い、電力変換器6から出力される電圧を制御するPWM制御を行うものであるが、これに限られない。以下、電力系統10の異常が発生した場合における制御部7の制御動作について説明する。
【0022】
具体的に制御部7は、電力系統10の異常(具体的には系統電圧の低下)が発生した場合、開閉スイッチ3を開放するとともに、系統電圧の低下分を電力変換器6から補償する電圧補償制御を行う。制御部7は、開閉スイッチ3を開放するスイッチ開放信号を駆動回路に出力し開閉スイッチ3を開放する。そして制御部7は、スイッチ電流測定部5から取得した電流値(開閉スイッチ3に流れる電流値)が0Aになると、開閉スイッチ3の開放が完了したと判断する。そして制御部7は、負荷電圧の目標値(例えば目標値)と系統電圧との差に基づいて電力指令値を算出し、算出した電力指令値を出力するように電力変換器6を制御する。
【0023】
そして制御部7は、系統電圧が復電すると、開閉スイッチ3を投入するように、開閉スイッチ3及び電力変換器6を制御する。具体的に制御部7は、系統電圧測定部4により測定された系統電圧に基づいて、電力系統10の復電を判定する。電力系統10の復電とは、系統電圧が定格電圧と同等である状態が一定時間継続することを言う。制御部7は、電力系統10の復電と判定した場合、開閉スイッチ3を投入するとともに、電力変換器6をゲートブロックする。具体的には、制御部7は、開閉スイッチ3を投入して電力系統10及び負荷20を電気的に接続するとともに、電力変換器6を停止して、電力変換器6が出力する電流を0にする。
【0024】
ここで、従来例における比較用の電源システムを用いたシミュレーション結果及び本実施形態における電源システム100を用いたシミュレーション結果を示す。比較用の電源システムとしては、本実施形態の電源システム100において、開閉スイッチ3に並列であり、かつ交流フィルタ8に直列に接続されたリアクトル素子9を備えないものを用いた。またいずれのシミュレーションも、開閉スイッチ3を閉じた正常時の状態から開始し、系統電圧の異常を生じさせて、開閉スイッチ3を開放するとともに電力変換器6を駆動させて電圧補償制御を行い、その後、系統電圧を復電させ、開閉スイッチ3を再投入させるものとした。
【0025】
図2及び図3に示すように、リアクトル素子9を備えない従来構成の電源システムでは、系統電圧が復電したタイミングで、急峻な回復電圧に伴うサージ電流が生じ、負荷過電圧が生じていることが分かる。また交流フィルタを流れる電流(フィルタC電流)も急激に増加し、コンデンサチャージの傾きが急であることが分かる。
【0026】
これに対して、本実施形態の電源システム100では、図4及び図5に示すように、系統電圧が復電したタイミングで、回復電圧に伴うサージ電流を抑制できており、負荷過電圧の発生を抑制できていることが分かる。また交流フィルタ8におけるコンデンサチャージの傾きが緩やかになり、負荷電圧の跳ね上がりを抑制できていることを確認できる。
【0027】
このように構成した本実施形態の電源システム100によれば、開閉スイッチ3に対して並列となり、かつ交流フィルタ8に対して直列となるように接続されたリアクトル素子9を備えているので、電力系統10が復電した際に、急峻な回復電圧に伴うサージ電流をリアクトル素子9で吸収することができ、これにより系統電圧回復時に生じる負荷過電圧を抑制することができる。
【0028】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0029】
例えば前記実施形態において、電源システム100は、スイッチ電流測定部5を備える構成であったが、スイッチ電流測定部5を備えない構成であってもよい。例えば、電源システム100は、スイッチ電流を0Aに収束させる、又は、スイッチ電流が0Aと交わるようにすればよい。
【0030】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
100・・・電源システム
10 ・・・電力系統
20 ・・・負荷
3 ・・・開閉スイッチ
4 ・・・系統電圧測定部
5 ・・・スイッチ電流測定部
6 ・・・電力変換器
7 ・・・制御部
8 ・・・交流フィルタ
9 ・・・リアクトル素子
L ・・・電力線

【要約】
【課題】系統電圧の低下分を電力変換器から補償する電源システムにおいて、系統電圧回復時に生じる負荷過電圧を抑制する。
【解決手段】前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線を開閉する開閉スイッチと、前記開閉スイッチに対して並列となるように前記電力線に接続され、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、前記開閉スイッチに対して並列となるように前記電力変換器と前記電力線との間に設けられた交流フィルタと、前記開閉スイッチに対して並列となり、かつ前記交流フィルタに対して直列となるように接続されたリアクトル素子と、前記開閉スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記電力系統の異常が発生した場合に、前記開閉スイッチを開放し、前記電力変換器を駆動させて前記負荷の電圧の低下を補償する補償制御を行い、前記電力系統が復電した場合に、前記開閉スイッチを投入するとともに、前記電力変換器を停止させる電源システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5