(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20250227BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20250227BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20250227BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2024189678
(22)【出願日】2024-10-29
【審査請求日】2024-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】高齋 光弘
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 耕
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K35/363
B23K35/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、溶剤、チキソ剤及び活性剤を含有し、
前記チキソ剤が、下記一般式(T-0)で表される化合物を含む、フラックス。
【化1】
[式中、pは、2~8の整数である。]
【請求項2】
前記一般式(T-0)中のpが、2又は6である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記チキソ剤が、さらに、下記一般式(T-1)で表される化合物を含む、請求項1に記載のフラックス。
【化2】
[式中、qは、2~8の整数である。]
【請求項4】
前記一般式(T-1)中のqが、2又は6である、請求項3に記載のフラックス。
【請求項5】
前記チキソ剤が、さらに、下記一般式(T-2)で表される化合物を含む、請求項3に記載のフラックス。
【化3】
[式中、rは、2~8の整数である。Rは、炭素原子数11~19の脂肪族炭化水素基である。]
【請求項6】
前記一般式(T-2)中のrが、2又は6である、請求項5に記載のフラックス。
【請求項7】
前記一般式(T-2)中のRが、炭素原子数17の直鎖状アルキル基である、請求項5に記載のフラックス。
【請求項8】
前記一般式(T-0)で表される化合物の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上1質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項9】
前記一般式(T-0)で表される化合物と、前記一般式(T-1)で表される化合物との混合比が、
一般式(T-1)で表される化合物/一般式(T-0)で表される化合物、
で表される質量比として、4以上40以下である、請求項3に記載のフラックス。
【請求項10】
前記一般式(T-0)で表される化合物と、
前記一般式(T-1)で表される化合物と、
前記一般式(T-2)で表される化合物と、
の合計の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上10質量%以下である、請求項5に記載のフラックス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のフラックスと、はんだ粉末と、を含有する、ソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス及びソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を製造する際、基板に対する部品の固定、及び基板に対する部品の電気的な接続が、はんだ付けにより行われている。はんだ付けにおいては、フラックス、はんだ粉末、並びに、フラックス及びはんだ粉末を混合したソルダペーストが用いられる。
フラックスは、はんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面及びはんだに存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、両者の間に、金属間化合物が形成されるようになり強固な接合が得られる。
【0003】
ソルダペーストを使用したはんだ付けでは、まず、基板にソルダペーストが印刷された後、部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で、部品が搭載された基板が加熱される。これにより、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末が溶融して、部品が基板に接合することで接合体が得られる。
【0004】
前記はんだ付けの際、部品と基板との接合部の状態が重要となる。例えば、部品の酸化状態や、フラックスの活性度等により、部品表面の金属酸化物が除去されず、リフロー時に部品とソルダペーストとが融合しない現象(枕不良(HiP:Head in Pillow))が発生することがある。接合部がこのような枕不良(HiP)の状態であると、実装する部品と基板とは接合不良となってしまう。
かかる接合不良に対し、従来、活性剤として特定有機酸と特定ハロゲン化合物とを併用したり、これらの配合量を調整したりしたフラックスが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-102231号公報
【文献】特開2020-82106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、電子機器のコンパクト化及び基板の縮小に伴い、省スペースかつ高性能な部品が求められている。そのなか、主に高密度実装を目的として、BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)といった表面実装部品の使用が増えてきている。高密度実装では、狭いプロセスウィンドウのため、枕不良(HiP)が発生しやすく、BGA部品等でも起きやすい。
しかしながら、従来のフラックスでは、BGA部品等における枕不良(HiP)発生を抑制することは困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、枕不良(HiP)発生を抑制する効果を高められるフラックス、及びこれを含有するソルダペーストを提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
[1] 樹脂、溶剤、チキソ剤及び活性剤を含有し、
前記チキソ剤が、下記一般式(T-0)で表される化合物を含む、フラックス。
【0010】
【0011】
[2] 前記一般式(T-0)中のpが、2又は6である、[1]に記載のフラックス。
【0012】
[3] 前記一般式(T-0)で表される化合物の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上1質量%以下である、[1]又は[2]に記載のフラックス。
【0013】
[4] 前記チキソ剤が、さらに、下記一般式(T-1)で表される化合物を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0014】
【0015】
[5] 前記一般式(T-1)中のqが、2又は6である、[4]に記載のフラックス。
【0016】
[6] 前記一般式(T-0)で表される化合物と、前記一般式(T-1)で表される化合物との混合比が、
一般式(T-1)で表される化合物/一般式(T-0)で表される化合物、
で表される質量比として、4以上40以下である、[4]又は[5]に記載のフラックス。
【0017】
[7] 前記チキソ剤が、さらに、下記一般式(T-2)で表される化合物を含む、[4]~[6]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0018】
【化3】
[式中、rは、2~8の整数である。Rは、炭素原子数11~19の脂肪族炭化水素基である。]
【0019】
[8] 前記一般式(T-2)中のrが、2又は6である、[7]に記載のフラックス。
【0020】
[9] 前記一般式(T-2)中のRが、炭素原子数17の直鎖状アルキル基である、[7]又は[8]に記載のフラックス。
【0021】
[10] 前記一般式(T-0)で表される化合物と、前記一般式(T-1)で表される化合物と、前記一般式(T-2)で表される化合物と、の合計の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上10質量%以下である、[7]~[9]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0022】
[11] [1]~[10]のいずれか一項に記載のフラックスと、はんだ粉末と、を含有する、ソルダペースト。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、枕不良(HiP)発生を抑制する効果を高められるフラックス、及びこれを含有するソルダペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例の評価における、リフローのプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(フラックス)
第1の態様に係るフラックスの一実施形態は、樹脂、溶剤、チキソ剤及び活性剤を含有するものである。前記チキソ剤が、下記一般式(T-0)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0026】
【0027】
<樹脂>
本実施形態のフラックスが含有する樹脂には、ロジン、コポリマー等を用いることができる。コポリマーとしては、例えば、オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂が挙げられる。
【0028】
≪ロジン≫
本発明において「ロジン」とは、アビエチン酸を主成分とする、アビエチン酸とこの異性体との混合物を含む天然樹脂、及び天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体と呼ぶ場合がある)を包含する。
【0029】
天然樹脂におけるアビエチン酸の含有量は、一例として、天然樹脂に対して、40質量%以上80質量%以下である。
本明細書において「主成分」とは、化合物を構成する成分のうち、その化合物中の含有量が40質量%以上の成分をいう。
【0030】
アビエチン酸の異性体の代表的なものとしては、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸等が挙げられる。
前記「天然樹脂」としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0031】
本発明において「天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体)」とは、前記「天然樹脂」に対して水素化、脱水素化、中和、アルキレンオキシド付加、アミド化、二量化及び多量化、エステル化並びにDiels-Alder環化付加からなる群より選択される1つ以上の処理を施したものを包含する。
【0032】
ロジン誘導体としては、例えば、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。
変性ロジンとしては、水添ロジン、重合ロジン、重合水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、酸変性水添ロジン、無水酸変性水添ロジン、酸変性不均化ロジン、無水酸変性不均化ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物、ロジンアルコール、ロジンアミン、水添ロジンアルコール、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジン石鹸、水添ロジン石鹸、酸変性ロジン石鹸等が挙げられる。
ロジンアミンとしては、例えば、デヒドロアビエチルアミン、ジヒドロアビエチルアミン等が挙げられる。ロジンアミンは、いわゆる不均化ロジンアミンを意味する。
【0033】
≪オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂≫
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂は、アルケン由来の繰り返し単位(a1)と、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸(以下これを「(α置換)アクリル酸」という。)に由来する繰り返し単位(a2)とを有する。オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂は、繰り返し単位(a1)及び繰り返し単位(a2)以外に、これら以外の繰り返し単位(a3)を有してもよい。
(α置換)アクリル酸は、アクリル酸、又は、アクリル酸におけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているもの、の一方又は両方を意味する。
【0034】
[繰り返し単位(a1)]
繰り返し単位(a1)は、アルケン由来である。
前記アルケンとしては、例えば、CnH2nで表される化合物が挙げられる。ここで、nは、2以上の整数であり、2以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上3以下が更に好ましく、2が特に好ましい。
CnH2nで表される化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等が挙げられ、エチレン及びプロピレンからなる群より選択される一種以上が好ましく、エチレンがより好ましい。
【0035】
あるいは、繰り返し単位(a1)が由来するアルケンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
【0036】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂が有する繰り返し単位(a1)は、一種であってもよいし、二種以上であってもよい。
【0037】
[繰り返し単位(a2)]
繰り返し単位(a2)は、(α置換)アクリル酸由来である。繰り返し単位(a2)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。α位の炭素原子が置換基を有する場合、前記置換基としては、鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。前記アルキル基の炭素数としては、1~5が好ましい。
繰り返し単位(a2)としては、例えば、アクリル酸由来の繰り返し単位、メタクリル酸由来の繰り返し単位等が挙げられる。
【0038】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂が有する繰り返し単位(a2)は、一種であってもよいし、二種以上であってもよい。
【0039】
[繰り返し単位(a3)]
繰り返し単位(a3)は、繰り返し単位(a1)及び繰り返し単位(a2)以外の繰り返し単位である。
【0040】
繰り返し単位(a3)としては、例えば、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステル(以下これを「(α置換)アクリル酸エステル」という。)に由来する繰り返し単位、アルキレンオキシドに由来する繰り返し単位、芳香族基を有する繰り返し単位等が挙げられる。
【0041】
(α置換)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、又は、アクリル酸エステルにおけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているもの、の一方又は両方を意味する。前記置換基としては、炭素数1~5のアルキル基等が挙げられる。
【0042】
(α置換)アクリル酸エステルは、(α置換)アクリル酸とアルコールとの反応物である。アルコールとしては、例えば、炭素鎖が直鎖状である炭素数が1~24のアルコールが挙げられる。
【0043】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらのなかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t-ブチルが好ましい。
【0044】
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0045】
芳香族基を有する繰り返し単位としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基を有する繰り返し単位が挙げられる。フェニル基を有する繰り返し単位としては、例えば、スチレン又はその誘導体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0046】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂が繰り返し単位(a3)を有する場合、オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂が有する繰り返し単位(a3)は、一種であってもよいし、二種以上であってもよい。
【0047】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂において、繰り返し単位(a1)の含有量は、オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂の全体(100質量%)に対して、10質量%以上98質量%以下が好ましく、40質量%以上97質量%以下がより好ましく、65質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
繰り返し単位(a1)の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であることにより、接合体の電気的信頼性を高めやすくなる。繰り返し単位(a1)の含有量が、前記の好ましい範囲の上限値以下であることにより、経時でソルダペーストがはんだ粉末とフラックスとに分離することを抑制しやすくなる。また、温度変化によるフラックス残渣の割れを低減しやすくなる。また、はんだ付け性を高めやすくなる。また、フラックスにおけるオレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂の溶解性を高めやすくなる。
【0048】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂において、繰り返し単位(a2)の含有量は、オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂の全体(100質量%)に対して、2質量%以上90質量%以下が好ましく、3質量%以上60質量%以下がより好ましく、5質量%以上35質量%以下が更に好ましい。
繰り返し単位(a2)の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であることにより、経時でソルダペーストがはんだ粉末とフラックスとに分離することを抑制しやすくなる。また、温度変化によるフラックス残渣の割れを低減しやすくなる。また、はんだ付け性を高めやすくなる。また、フラックスにおけるオレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂の溶解性を高めやすくなる。
繰り返し単位(a2)の含有量が、前記の好ましい範囲の上限値以下であることにより、接合体の電気的信頼性を高めやすくなる。
【0049】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂が繰り返し単位(a3)を有する場合、オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂において、繰り返し単位(a3)の含有量は、オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂の全体(100質量%)に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0050】
オレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0051】
≪ロジン及びオレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂以外の樹脂≫
ロジン及びオレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂以外の樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。
変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等が挙げられる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
【0052】
本実施形態のフラックスにおいて、樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記のなかでも、樹脂は、ロジン及びコポリマーからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、変性ロジン、及びオレフィン/(α置換)アクリル酸樹脂からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、水添ロジン、重合ロジン、酸変性水添ロジン、及びエチレン/アクリル酸コポリマーからなる群より選択される少なくとも一種がさらに好ましく、水添ロジン、重合ロジン、及びエチレン/アクリル酸コポリマーからなる群より選択される少なくとも一種と、酸変性水添ロジンと、を組み合わせることが特に好ましい。
酸変性水添ロジンとしては、アクリル酸変性水添ロジンが好ましい。
【0053】
本実施形態のフラックス中の、樹脂の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
<溶剤>
本実施形態のフラックスが含有する溶剤としては、例えば、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。
【0055】
アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2’-オキシビス(メチレン)ビス(2-エチル-1,3-プロパンジオール)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2-ヘキシル-1-デカノール、オクタンジオール等が挙げられる。
【0056】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(EHDG)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール:HeDG)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル;モノアルキルプロピレングリコール等が挙げられる。
【0057】
テルピネオール類としては、例えば、α-ターピネオール、β-ターピネオール、γ-ターピネオール、ターピネオール混合物(すなわち、その主成分がα-ターピネオールであり、β-ターピネオール又はγ-ターピネオールを含有する混合物)等が挙げられる。
その他溶剤としては、例えばセバシン酸ジオクチル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0058】
本実施形態のフラックスにおいて、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、溶剤は、グリコールエーテル系溶剤が好ましく、特にはソルダペーストとした際の粘度安定性、はんだ粉末の溶融性の観点から、HeDG、EHDG及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種を用いることがより好ましい。
【0059】
本実施形態のフラックス中の、溶剤の含有量は、フラックスにおける残部であり、他の成分の含有量に応じて決定される。
例えば、本実施形態のフラックス中の、溶剤の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、20質量%以上70質量%以下であってもよいし、25質量%以上65質量%以下であってもよいし、30質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0060】
<チキソ剤>
本実施形態のフラックスが含有するチキソ剤は、後述の一般式(T-0)で表される化合物(以下「化合物(T0)」ともいう。)を含む。
本実施形態のフラックスが含有するチキソ剤は、前記化合物(T0)に加え、さらに、後述の一般式(T-1)で表される化合物(以下「化合物(T1)」ともいう。)を含むものが好ましい。
本実施形態のフラックスが含有するチキソ剤は、前記化合物(T0)に加え、さらに、後述の一般式(T-2)で表される化合物(以下「化合物(T2)」ともいう。)を含むものが好ましく、前記化合物(T0)及び前記化合物(T1)に加え、さらに、前記化合物(T2)を含むものがより好ましい。
本実施形態のフラックスが含有するチキソ剤は、前記化合物(T0)に加え、さらに、前記化合物(T0)、前記化合物(T1)及び前記化合物(T2)以外のその他チキソ剤を含んでもよい。
【0061】
本実施形態のフラックス中の、チキソ剤の総含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上14質量%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
≪一般式(T-0)で表される化合物≫
一般式(T-0)で表される化合物(化合物(T0))は、分子内に、12-ヒドロキシステアリン酸由来のヒドロキシ基(-OH)と、12-ヒドロキシステアリン酸由来のカルボキシ基(-COOH)と、のエステル結合(-CO-O-)を持つ。
【0063】
【0064】
前記式(T-0)中、pは、2~8の整数であり、2、6及び8からなる群より選択される少なくとも一つが好ましく、2及び6からなる群より選択される少なくとも一つがより好ましい。
【0065】
以下に、一般式(T-0)で表される化合物の具体例を示す。
【0066】
【0067】
本実施形態のフラックスにおいて、化合物(T0)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(T0)としては、一般式(T-0)中のp=6で表される化合物、一般式(T-0)中のp=2で表される化合物、一般式(T-0)中のp=6で表される化合物と一般式(T-0)中のp=2で表される化合物との組合せ、一般式(T-0)中のp=6で表される化合物と一般式(T-0)中のp=8で表される化合物との組合せが好適に挙げられる。
本実施形態のフラックス中の、化合物(T0)の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
化合物(T0)の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0068】
≪一般式(T-1)で表される化合物≫
一般式(T-1)で表される化合物(化合物(T1))は、分子内に、アルキレンジイミノ基(-NH-(CH2)q-NH-)を介して、2個の12-ヒドロキシオクタデカノイル基を持つ。
【0069】
【0070】
前記式(T-1)中、qは、2~8の整数であり、2及び6からなる群より選択される少なくとも一つが好ましい。
【0071】
以下に、一般式(T-1)で表される化合物の具体例を示す。
【0072】
【0073】
本実施形態のフラックスにおいて、化合物(T1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(T1)としては、一般式(T-1)中のp=6で表される化合物、一般式(T-1)中のp=2で表される化合物、一般式(T-1)中のp=6で表される化合物と一般式(T-1)中のp=2で表される化合物との組合せが好適に挙げられる。
本実施形態のフラックス中の、化合物(T1)の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上7質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。
化合物(T1)の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0074】
本実施形態のフラックスにおいては、前記化合物(T0)と前記化合物(T1)との混合比が、化合物(T1)/化合物(T0)、で表される質量比として、4以上40以下であることが好ましい。
かかる質量比が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0075】
≪一般式(T-2)で表される化合物≫
一般式(T-2)で表される化合物(化合物(T2))は、分子内に、アルキレンジイミノ基(-NH-(CH2)r-NH-)を介して、1個の12-ヒドロキシオクタデカノイル基と、アシル基(R-C(=O)-)とを持つ。
【0076】
【化9】
[式中、rは、2~8の整数である。Rは、炭素原子数11~19の脂肪族炭化水素基である。]
【0077】
前記式(T-2)中、rは、2~8の整数であり、2及び6からなる群より選択される少なくとも一つが好ましい。
前記式(T-2)中、Rは、炭素原子数11~19の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数11~17の脂肪族炭化水素基である。Rにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよいし、不飽和脂肪族炭化水素基でもよいし、直鎖状でもよいし、分岐鎖状でもよい。中でも、Rにおける脂肪族炭化水素基は、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素原子数17の直鎖状アルキル基であることがより好ましい。
【0078】
以下に、一般式(T-2)で表される化合物の具体例を示す。
【0079】
【0080】
本実施形態のフラックスにおいて、化合物(T2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(T2)としては、一般式(T-2)中のp=6で表される化合物、一般式(T-2)中のp=2で表される化合物が好適に挙げられる。
あるいは、化合物(T2)としては、一般式(T-2)中のR=C17H35-で表される化合物、一般式(T-2)中のR=C11H23-で表される化合物が好適に挙げられる。
あるいは、化合物(T2)としては、一般式(T-2)中のp=6,R=C17H35-で表される化合物、一般式(T-2)中のp=2,R=C17H35-で表される化合物、一般式(T-2)中のp=6,R=C11H23-で表される化合物、一般式(T-2)中のp=2,R=C11H23-で表される化合物が好適に挙げられる。
【0081】
本実施形態のフラックス中の、化合物(T2)の含有量が、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。
化合物(T2)の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0082】
本実施形態のフラックスにおいては、前記化合物(T0)と前記化合物(T2)との混合比が、化合物(T2)/化合物(T0)、で表される質量比として、1以上3以下であることが好ましく、1.2以上2.6以下であることがより好ましく、1.3以上2.5以下であることがさらに好ましい。
かかる質量比が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0083】
本実施形態のフラックスにおいて、チキソ剤は、前記化合物(T0)に加え、さらに、前記化合物(T1)を含むものが好ましい。これにより、HiP発生を抑制する効果がより高められる。
チキソ剤が前記化合物(T0)と前記化合物(T1)とを含む場合、これら2成分の合計の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上が特に好ましい。
例えば、これら2成分の合計の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上7質量%以下が好ましく、2質量%以上6質量%以下がより好ましく、3質量%以上5.5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
化合物(T0)と化合物(T1)との合計の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0084】
チキソ剤が前記化合物(T0)と前記化合物(T1)とを含む場合、これら2成分の合計の含有量(100質量%)に対する、前記化合物(T0)の含有量の割合は、2質量%以上25質量%以下であることが好ましく、4質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上19質量%以下であってもよい。
前記化合物(T0)と前記化合物(T1)との合計の含有量に対する、前記化合物(T0)の含有量の割合(質量比)が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0085】
チキソ剤が前記化合物(T0)と前記化合物(T1)とを含む場合、これら2成分の合計の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、4質量%以上が好ましく、かつ、前記化合物(T0)と前記化合物(T1)との混合比は、化合物(T1)/化合物(T0)、で表される質量比として、4以上40以下であることが好ましく、4以上30以下であることがより好ましく、4以上25以下であることがさらに好ましく、4以上10未満であることが特に好ましく、4以上9以下であることが最も好ましい。
【0086】
本実施形態のフラックスにおいて、チキソ剤は、前記化合物(T0)に加え、さらに、前記化合物(T1)と前記化合物(T2)とを含むものが好ましい。これにより、HiP発生を抑制する効果がよりいっそう高められる。
前記化合物(T0)と前記化合物(T1)と前記化合物(T2)とを含む場合、これら3成分の合計の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
化合物(T0)と化合物(T1)と化合物(T2)との合計の含有量が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0087】
チキソ剤が前記化合物(T0)と前記化合物(T1)と前記化合物(T2)とを含む場合、これら3成分の合計の含有量(100質量%)に対する、前記化合物(T0)の含有量の割合は、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上17.5質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
前記化合物(T0)と前記化合物(T1)と前記化合物(T2)との合計の含有量に対する、前記化合物(T0)の含有量の割合が、前記の好ましい範囲内であれば、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなる。前記の好ましい範囲の下限値以上であると、HiP発生を抑制する効果をより高められやすくなる。
【0088】
本実施形態のフラックスにおいて、前記化合物(T0)と前記化合物(T1)と前記化合物(T2)とを含む場合、これら3成分の好ましい混合割合は、例えば、3成分の合計の含有量(100質量%)に対して、前記化合物(T1)の含有量が50質量%以上87.5質量%以下であり、前記化合物(T2)の含有量が7.5質量%以上32.5質量%以下であり、前記化合物(T0)の含有量が5質量%以上17.5質量%以下である形態が挙げられる。
【0089】
≪その他チキソ剤≫
本実施形態のフラックスが含有するチキソ剤は、上述の化合物(T0)、化合物(T1)及び化合物(T2)以外のその他チキソ剤を含んでもよい。
その他チキソ剤としては、例えば、アミド系チキソ剤、エステル系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。
【0090】
アミド系チキソ剤としては、例えば、モノアミド、ビスアミド(但し、上述の化合物(T0)、化合物(T1)及び化合物(T2)を除く)、ポリアミドが挙げられる。
モノアミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、4-メチルベンズアミド、芳香族アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、置換アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールアミド、脂肪酸エステルアミド等が挙げられる。
ビスアミドとしては、例えば、エチレンビス脂肪酸(脂肪酸の炭素原子数C6~24)アミド、ヘキサメチレンビス脂肪酸(脂肪酸の炭素原子数C6~24)アミド、芳香族ビスアミド等が挙げられる。前記ビスアミドの原料である脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸(炭素原子数C18)、オレイン酸(炭素原子数C18)、ラウリン酸(炭素原子数C12)等が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、飽和脂肪酸ポリアミド、不飽和脂肪酸ポリアミド、芳香族ポリアミド、1,2,3-プロパントリカルボン酸トリス(2-メチルシクロヘキシルアミド)、環状アミドオリゴマー、非環状アミドオリゴマー等が挙げられる。
【0091】
前記環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー等が挙げられる。
【0092】
また、前記非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸とモノアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合等が挙げられる。モノカルボン酸又はモノアミンを含むアミドオリゴマーであると、モノカルボン酸、モノアミンがターミナル分子(terminal molecules)として機能し、分子量を小さくした非環状アミドオリゴマーとなる。また、非環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸と、ジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミド化合物である場合、非環状高分子系アミドポリマーとなる。更に、非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とモノアミンとが非環状に縮合したアミドオリゴマーも含まれる。
【0093】
エステル系チキソ剤としては、例えばエステル化合物が挙げられ、具体的には、硬化ひまし油、ミリスチン酸エチル等が挙げられる。
【0094】
ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、(D-)ソルビトール、モノベンジリデン(-D-)ソルビトール、モノ(4-メチルベンジリデン)-(D-)ソルビトール等が挙げられる。
【0095】
本実施形態のフラックスにおいて、その他チキソ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、チキソ剤は、アミド系チキソ剤及びエステル系チキソ剤からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、例えば、ポリアミド及び硬化ひまし油からなる群より選択される少なくとも一種を含むものが挙げられる。
【0096】
本実施形態のフラックス中の、その他チキソ剤の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0097】
<活性剤>
本実施形態のフラックスが含有する活性剤としては、有機酸、アミン化合物、ハロゲン化合物が挙げられる。
本実施形態のフラックスにおいて、活性剤は、2種以上を併用してもよい。活性剤には、有機酸、アミン化合物及びハロゲン化合物からなる群より選択されるものを用いることが好ましく、有機酸を少なくとも含むものを用いることがより好ましい。
本実施形態のフラックス中の、活性剤の総含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、25質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
≪有機酸≫
有機酸としては、例えば、カルボン酸、有機スルホン酸が挙げられる。このカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0099】
脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、2-ブロモヘキサン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、イソペラルゴン酸、カプリン酸、カプロレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ウンデカン酸、リンデル酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、ヒドノカーピン酸、マーガリン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、モロクチン酸、エレオステアリン酸、タリリン酸、バクセン酸、リミノレイン酸、ベルノリン酸、ステルクリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、例えば、サリチル酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2-キノリンカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸、p-アニス酸;ピコリン酸、ジピコリン酸、3-ヒドロキシピコリン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、シトラコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、o-フタル酸、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)等が挙げられる。
【0100】
また、カルボン酸としては、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸;2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸;ダイマー酸、トリマー酸、ダイマー酸に水素を添加した水添物である水添ダイマー酸、トリマー酸に水素を添加した水添物である水添トリマー酸等も挙げられる。
【0101】
有機スルホン酸としては、例えば、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。脂肪族スルホン酸としては、例えば、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸等が挙げられる。
【0102】
アルカンスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、2-ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。
アルカノールスルホン酸としては、例えば、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシペンタン-1-スルホン酸、1-ヒドロキシプロパン-2-スルホン酸、3-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシヘキサン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシデカン-1-スルホン酸及び2-ヒドロキシドデカン-1-スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸としては、例えば、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸及びジフェニルアミン-4-スルホン酸等が挙げられる。
【0103】
活性剤として有機酸を用いる場合には、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸のなかでは、ジカルボン酸を含むことが好ましく、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸及びアゼライン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
本実施形態のフラックス中の、有機酸の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上13質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以上12.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0104】
≪アミン化合物≫
アミン化合物としては、例えば、ロジンアミン、アゾール類、グアニジン類、アルキルアミン化合物、アミノアルコール化合物等が挙げられる。
ロジンアミンとしては、上記<ロジン>において例示したものが挙げられる。
【0105】
アゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、エポキシ-イミダゾールアダクト、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール化合物;1,2,4-トリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1-(1’,2’-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物;2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン等のトリアジン化合物;5-フェニルテトラゾール等のテトラゾール化合物が挙げられる。
【0106】
グアニジン類としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0107】
アルキルアミン化合物としては、例えば、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0108】
アミノアルコール化合物としては、例えば、1-アミノ-2-プロパノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。
【0109】
活性剤としてアミン化合物を用いる場合には、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のフラックス中の、アミン化合物の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0110】
≪ハロゲン化合物≫
ハロゲン化合物としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0111】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素とを反応させた化合物である。ここでのアミンとしては、脂肪族アミン、アゾール類、グアニジン類等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素の水素化物が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。
グアニジン類及びアゾール類としては、後述のアミンについての説明の中で例示したものが挙げられる。
【0112】
アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化脂肪族化合物が挙げられる。ハロゲン化脂肪族化合物は、脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものをいう。
ハロゲン化脂肪族化合物としては、ハロゲン化脂肪族アルコール、ハロゲン化複素環式化合物が挙げられる。ハロゲン化脂肪族アルコールとしては、例えば、1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、1-ブロモ-2-ブタノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、1,4-ジブロモ-2-ブタノール、trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール等が挙げられる。
【0113】
活性剤としてハロゲン化合物を用いる場合には、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ハロゲン化合物のなかでは、ハロゲン化脂肪族化合物を用いてもよく、ハロゲン化脂肪族アルコールを用いることが好ましい。
本実施形態のフラックス中の、ハロゲン化合物の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上2.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0114】
<その他成分>
本実施形態のフラックスは、上述した樹脂、溶剤、チキソ剤及び活性剤以外に、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
その他成分としては、例えば、金属不活性化剤、界面活性剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等)、シランカップリング剤、着色剤等が挙げられる。
【0115】
≪金属不活性化剤≫
金属不活性化剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、窒素化合物等が挙げられる。
ここでいう「金属不活性化剤」とは、ある種の化合物との接触により金属が劣化することを防止する性能を有する化合物をいう。
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノールのオルト位の少なくとも一方に嵩高い置換基(例えばt-ブチル基等の分岐状又は環状アルキル基)を有するフェノール系化合物をいう。
金属不活性化剤における窒素化合物としては、例えば、ヒドラジド系窒素化合物、アミド系窒素化合物、トリアゾール系窒素化合物、メラミン系窒素化合物等が挙げられる。
【0116】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコールポリオキシエチレン付加体、芳香族アルコールポリオキシエチレン付加体、多価アルコールポリオキシエチレン付加体、脂肪族アルコールポリオキシプロピレン付加体、芳香族アルコールポリオキシプロピレン付加体、多価アルコールポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、末端ジアミンポリエチレングリコール、末端ジアミンポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、脂肪族アミンポリオキシエチレン付加体、芳香族アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。
【0117】
以上説明したように、本実施形態のフラックスは、樹脂と、溶剤と、一般式(T-0)で表される化合物(化合物(T0))と、活性剤とを含有する。分子内に、12-ヒドロキシステアリン酸由来のヒドロキシ基(-OH)と、12-ヒドロキシステアリン酸由来のカルボキシ基(-COOH)と、のエステル結合(-CO-O-)を持つ化合物(T0)を採用したことにより、理由は定かではないが、かかるフラックスによれば、BGA部品等の実装における枕不良(HiP)発生を抑制する効果を高められる。
【0118】
好ましい実施形態(1)のフラックスは、化合物(T0)に加え、一般式(T-1)で表される化合物、すなわち、分子内に、アルキレンジイミノ基(-NH-(CH2)q-NH-)を介して、2個の12-ヒドロキシオクタデカノイル基を持つ化合物(T1)をさらに含有する。かかる好ましい実施形態(1)のフラックスによれば、BGA部品等の実装におけるHiP発生を抑制する効果をより高められる。
【0119】
あるいは、好ましい実施形態(2)のフラックスは、化合物(T0)及び化合物(T1)に加え、一般式(T-2)で表される化合物、すなわち、分子内に、アルキレンジイミノ基(-NH-(CH2)r-NH-)を介して、1個の12-ヒドロキシオクタデカノイル基と、アシル基(R-C(=O)-)とを持つ化合物(T2)をさらに含有する。かかる好ましい実施形態(2)のフラックスによれば、BGA部品等の実装におけるHiP発生を抑制する効果をいっそう高められる。
【0120】
また、上述の実施形態のフラックスによれば、BGA部品等の実装において、HiP発生の抑制に加え、ボイドの低減化も図れる。
【0121】
(ソルダペースト)
第2の態様に係るソルダペーストの一実施形態は、上述した実施形態のフラックスと、はんだ粉末と、を含有するものである。かかるソルダペーストは、上述した実施形態のフラックスと、はんだ粉末とを、公知の方法を使用して混合することにより調製できる。
はんだ粉末を構成するはんだ金属としては、公知の組成のはんだ合金を使用することができる。
はんだ合金は、Sn単体のはんだ、又は、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Sn-Pb系、あるいは、Sn-Pb系にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Pbを含まないはんだ合金が好ましく、SnとAgとCuとを含むはんだ合金からなるもの(Sn-Ag-Cu系のはんだ合金)がより好ましい。
【0122】
はんだ付け工程における、はんだ付けの条件は、はんだ合金の融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn-Ag-Cu系のはんだ合金を用いる場合には、溶融はんだの温度は、230~280℃であることが好ましく、240~260℃であることがより好ましい。あるいは、SnとBiとを含むはんだ合金(Sn-Bi系のはんだ合金)を用いる場合には、溶融はんだの温度は、170~220℃であることが好ましく、180~200℃であることがより好ましい。
ここでいう「Sn-Bi系のはんだ合金」とは、SnとBiとを主成分とするはんだ合金を意味する。一例として、SnとBiとの合計質量がはんだ合金全体の質量の90質量%以上であって、Biの質量がはんだ合金全体の質量の30~65質量%のはんだ合金が挙げられる。
【0123】
フラックスの含有量:
本実施形態のソルダペースト中、フラックスの含有量は、ソルダペーストの全質量に対して、5~30質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0124】
以上説明した本実施形態のソルダペーストによれば、上述した実施形態のフラックスが用いられているため、枕不良(HiP)発生を抑制する効果を高められる。
本実施形態のソルダペーストは、枕不良(HiP)が発生しやすいBGA、CSPといった表面実装部品とのはんだ付け用に特に適したものである。
【0125】
(接合体の製造方法)
第3の態様に係る接合体の製造方法の一実施形態は、部品と基板とをはんだ付けすることにより接合体を得る工程を含む方法である。かかる接合体の製造方法においては、前記はんだ付けの際、上述した第2の態様に係るソルダペーストを用いてリフローを行う。
以下、かかる接合体の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る接合体の製造方法は、ソルダペースト塗布工程、部品取付け工程、リフロー工程をこの順に含む方法である。
【0126】
[ソルダペースト塗布工程]
ソルダペースト塗布工程においては、第2の態様に係るソルダペーストを、基板の表面に塗布する。
基板としては、例えば、プリント配線基板、ウェーハ等が挙げられる。
ソルダペーストを塗布する方法としては、例えば、開口部を有するマスクを用いてソルダペーストを印刷塗布する方法、ディスペンサ等を用いてソルダペーストを吐出する方法、プローブピン等を用いてソルダペーストを転写する方法等が挙げられる。
【0127】
[部品取付け工程]
部品取付け工程においては、ソルダペーストが塗布された基板の所定位置に、部品を取り付ける。
部品としては、例えば、チップ、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器、コンデンサ、CSP(Chip Size Package)等の半導体パッケージ、BGA(Ball Grid Array)基板などが挙げられる。
【0128】
[リフロー工程]
リフロー工程における、リフロー操作の雰囲気は、例えば、窒素ガス雰囲気であってもよいし、還元性ガス雰囲気であってもよいし、大気雰囲気であってもよい。
還元性ガス雰囲気は、例えば、リフロー炉において還元性化合物を揮発させて形成されるものであってもよいし、液体の還元性化合物に対して窒素を通気させることにより得られる還元性ガスを、リフロー炉へ供給して形成されるものであってもよい。還元性化合物としては、ギ酸が好ましい。
大気雰囲気で行うリフロー(大気リフロー)とは、一般的に、加熱した空気(窒素約80vol%、酸素約20vol%)中で、はんだ付けを行うことをいう。
【0129】
リフロー工程においては、リフロー炉において、炉内を加熱し、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末の融点よりも高い温度(すなわち、ピーク温度)で、部品取り付け後の基板を加熱する(これを本加熱工程という)。
加熱温度としては、例えば、はんだ粉末の融点よりも5~30℃高い温度であってもよい。加熱時間としては、例えば、30秒~3分間であってもよい。
【0130】
リフロー工程は、本加熱工程の前に、プリヒート工程を有するものであってもよい。
プリヒート工程は、リフロー炉において、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末の融点よりも低い温度で、部品取り付け後の基板を加熱する。加熱温度としては、例えば、150~180℃であってもよい。加熱時間としては、例えば、1分~5分間であってもよい。
【0131】
以上説明した本実施形態に係る接合体の製造方法によれば、上述した本実施形態のフラックスを含有するソルダペーストが採用されていることで、部品と基板との接合部における、枕不良(HiP)の発生が抑制されて、高い信頼性のある接合体を製造することができる。特に、BGA、CSPといった表面実装部品がはんだ付けされる接合体を製造する方法として、かかる接合体の製造方法は有用である。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
<フラックスの調製>
(実施例1~65、比較例1~7)
表1~11に示す組成となるように、各成分を混合することにより、実施例及び比較例の各フラックスを調合した。
【0134】
表中、各成分の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対する割合(質量%)を示している。使用した原料を以下に示した。
「ビスアミドの総含有量」は、一般式(T-1)で表される化合物と、一般式(T-2)で表される化合物と、一般式(T-0)で表される化合物と、ヘキサメチレンビス(ラウリン酸アミド)と、の合計の含有量(質量%)を示している。
「一般式(T-1)/一般式(T-0)質量比」は、一般式(T-0)で表される化合物の含有質量に対する、一般式(T-1)で表される化合物の含有質量の比、を示している。
「一般式(T-2)/一般式(T-0)質量比」は、一般式(T-0)で表される化合物の含有質量に対する、一般式(T-2)で表される化合物の含有質量の比、を示している。
【0135】
・樹脂
ロジン及びコポリマーを用いた。
ロジンには、アクリル酸変性水添ロジン、水添ロジン、重合ロジンをそれぞれ用いた。
コポリマーには、エチレン/アクリル酸コポリマーを用いた。
【0136】
・溶剤
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(EHDG)、テトラエチレングリコールジメチルエーテルをそれぞれ用いた。
【0137】
・チキソ剤
ビスアミド、硬化ひまし油、ポリアミド(飽和脂肪酸ポリアミド、融点200℃以下)を用いた。
【0138】
ビスアミド
一般式(T-1)中のq=6で表される化合物
一般式(T-1)中のq=2で表される化合物
【0139】
一般式(T-2)中のr=6/R=C17H35-で表される化合物
一般式(T-2)中のr=2/R=C17H35-で表される化合物
一般式(T-2)中のr=6/R=C11H23-で表される化合物
一般式(T-2)中のr=2/R=C11H23-で表される化合物
【0140】
ヘキサメチレンビス(ラウリン酸アミド):下記化学式で表される化合物
【0141】
【0142】
一般式(T-0)中のp=6で表される化合物
一般式(T-0)中のp=2で表される化合物
一般式(T-0)中のp=8で表される化合物
【0143】
・活性剤
有機酸、アミン化合物及びハロゲン化合物を用いた。
有機酸には、ダイマー酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、2-ブロモヘキサン酸をそれぞれ用いた。
アミン化合物には、1,2,3-ベンゾトリアゾールを用いた。
ハロゲン化合物には、trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオールを用いた。
【0144】
・その他
酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名IRGANOX 245)、BASFジャパン社製)を用いた。
【0145】
<ソルダペーストの調製>
上述した実施例及び比較例の各フラックスと、下記のはんだ粉末と、をそれぞれ混合してソルダペーストを調合した。調合したソルダペーストは、いずれも、フラックスを11質量%、はんだ粉末を89質量%とした。
【0146】
はんだ粉末:Cuが0.5質量%と、Agが3.0質量%と、残部がSnとのはんだ合金からなる粉末。このはんだ合金の固相線温度は217℃であり、液相線温度は220℃である。前記はんだ粉末のサイズは、JIS Z 3284-1:2014における粉末サイズの分類(表2)において、記号5を満たすサイズ(粒度分布)である。
【0147】
<評価>
以下に示すようにして、枕不良(HiP)発生の抑制性の評価を行った。この評価結果を表1~11に示した。
【0148】
[枕不良(HiP)発生の抑制性の評価]
下記のプリント基板と、BGA部品とを用いた。
プリント基板:材質FR-4、厚さ0.8mm、ランド寸法は直径0.24mm、パッド径300μm、表面処理Cu-OSP
BGA部品:部品サイズ13mm×13mm、厚さ0.5mm、パッド径300μm、表面処理 無電解NiAu(ニッケル金);ボール組成M705(Sn-3.0Ag-0.5Cu)、ボールサイズ250μm、Bump pitch400μm、BGA Bump(I/O)個数432×BGA部品数3=1296個
【0149】
加熱処理:
BGA部品には、温度85℃/相対湿度85%RHの中で24時間の加熱処理を行った後、さらに、125℃で1時間の加熱処理を行った。
【0150】
プリント基板上に、厚さ0.08mmのメタルマスクを用いて、ソルダペーストを印刷した。この上に、前記加熱処理を施したBGA部品を搭載した。その後、大気雰囲気下でリフロー(大気リフロー)を行った。
リフロー条件(リフローのプロファイル)は、プリヒートを130~220℃で90秒間とし、220℃以上で42秒間加熱し続けた。その際のピーク温度を242℃とした。このリフローのプロファイルを
図1に示した。
【0151】
リフローの後、BGA Bumpの各々のBGAボールと、ソルダペーストと、の融合状態を確認し、両者が正しく融合せずに枕不良が発生していたBGAボールの個数をカウントした。そして、下記の判定基準に基づき、HiP発生の抑制性を評価した。ランク1~4を合格とし、ランク5を不合格とした。
判定基準
ランク1:0個
ランク2:1~3個
ランク3:4~7個
ランク4:8~10個
ランク5:11個以上
【0152】
【0153】
表1において、チキソ剤として一般式(T-1)で表される化合物を含有する、比較例1のフラックスを用いた場合、HiP発生の抑制性の評価が劣る結果であった。
一方、一般式(T-1)で表される化合物に代えて、一般式(T-0)で表される化合物を採用する、実施例1のフラックスを用いた場合には、比較例1のフラックスを用いた場合に比べて、枕不良が発生していたBGAボールの個数は減少し、HiP発生を抑制する効果が向上する結果であった。
【0154】
さらに、一般式(T-0)で表される化合物と、一般式(T-1)で表される化合物とを併用する、実施例5のフラックスを用いた場合では、枕不良が発生していたBGAボールの個数は著しく減少し、HiP発生を抑制する効果が格段に向上する結果であった。
【0155】
【0156】
【0157】
表2~3に示す結果から、一般式(T-1)で表される化合物/一般式(T-0)で表される化合物、で表される質量比が、4以上40以下であることにより、HiP発生を抑制する効果が高められやすくなること、が確認できる。
また、表3において、比較例1と実施例5~13との対比から、フラックスの総質量(100質量%)に対して、一般式(T-0)で表される化合物0.1質量%以上を含有することにより、HiP発生を抑制する効果が得られやすくなること、が確認できる。
【0158】
【0159】
表4において、実施例8、14及び19と、実施例15~18との対比から、一般式(T-0)で表される化合物と、一般式(T-1)で表される化合物とに加えて、さらに、一般式(T-2)で表される化合物を併用することにより、枕不良が発生していたBGAボールの個数をゼロにすることが可能となり、HiP発生を抑制する効果がいっそう得られやすくなることが確認できる。
【0160】
【0161】
表5において、実施例8、20及び21と、実施例22~24との対比から、一般式(T-0)で表される化合物と、一般式(T-1)で表される化合物とに加えて、さらに、一般式(T-2)で表される化合物を併用することにより、枕不良が発生していたBGAボールの個数をゼロにすることが可能となり、HiP発生を抑制する効果がいっそう得られやすくなることが確認できる。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
表6~11において、本発明を適用した実施例8及び25~65のフラックスを用いた場合、いずれも、評価の判定がランク3,2又は1であり、HiP発生を抑制する効果が良好であること、が確認できる。
【0169】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【要約】
【課題】枕不良(HiP)発生を抑制する効果を高められるフラックス、及びこれを含有するソルダペーストを提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂、溶剤、チキソ剤及び活性剤を含有するフラックスであって、チキソ剤が、一般式(T-0)で表される化合物を含むことを特徴とする。一般式(T-0)中、pは、2~8の整数である。
[化1]
【選択図】なし