(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】トング
(51)【国際特許分類】
A47G 21/10 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
A47G21/10 Z
(21)【出願番号】P 2021081447
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】595130816
【氏名又は名称】株式会社北原産業
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅越 睦弘
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0375071(US,A1)
【文献】実開昭55-089586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体により構成され、
左本体及び右本体は、内側対向位置に設けた左支点部及び右支点部を後方に設けた左前部及び右前部と、連結部を設けた左後部及び右後部とからなり、
左支点部及び右支点部と連結部との間に、左支点部及び右支点部から左前部及び右前部が延びる方向に交差する溝部をそれぞれ設けられてなり、
左支点部及び右支点部の接触する対向部分が嵌合する関係に形成されることにより、
連結部により左後部及び右後部を連結し、左支点部及び右支点部の対向部分を嵌合させた状態で左前部及び右前部の一部又は全部を弾性変形させながら開閉させるトング。
【請求項2】
左本体及び右本体は、左後部及び右後部を繋ぐヒンジ軸を連結部とする請求項1記載のトング。
【請求項3】
左本体及び右本体は、左後部及び右後部の内側対向位置に設けられたスナップボタン嵌合の凸部及び凹部を連結部とする請求項1又は2記載のトング。
【請求項4】
左支点部及び右支点部は、左前部及び右前部の開閉方向と並行な凹溝と、凹溝に嵌合する凸条とが、対向部分に割り当てて形成される請求項1~
3いずれか記載のトング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体により構成されたトングに関する。
【背景技術】
【0002】
トングは、例えば大皿に盛られた料理を小分けに取り分ける場合に利用される。通常のトングは、1枚の金属板を折り曲げて弾性変形するヒンジ軸を形成し、並行に揃えた左本体及び右本体から構成されるU字状の構成(一体型)であったり、2枚の金属板をそれぞれ弾性変形する左本体及び右本体とし、左本体及び右本体が離れた状態で左後部及び右後部を接続した構成(別体型)であったりする。一体型のトングは、ヒンジ軸の弾性変形により、別体型のトングは左本体及び右本体の弾性変形により、左本体及び右本体が繰り返して開閉できるようになっている。
【0003】
一体型又は別体型いずれのトングも、初めに設定された左本体及び右本体の幅より大きな料理を掴むことが難しい。そこで、特許文献1が開示するトング(自在鋏具)は、左本体及び右本体の後部を接続した別体型で、接続した後部近傍の内側に当接する突起を設け、突起より後部よりを押すことで、突起より前部が初めに設定された幅よりも開くようにしている(実用新案登録請求の範囲)。左本体及び右本体の材質は明示されていないが、トングを構成することから、当接する突起を支点として、左本体及び右本体が弾性変形して開閉するものと想像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示するトングは、突起を支点として突起より前部を大きく開き、左本体及び右本体による弾性変形を大きくできる。これから、特許文献1が開示するトングは、例えば軽量化や使い捨てを鑑み、弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体を例えば樹脂製シートから形成しても、左本体及び右本体が開閉できるトングを構成できる。しかし、特許文献1が開示するトングは、対向する突起を当接させるだけなので、弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体が捩れて突起がずれてしまい、突起より前部をうまく開閉できない場合が考えられる。
【0006】
左本体及び右本体の後部における連結部の位置が固定できるのであれば、突起のずれる虞も低減されるが、左本体及び右本体が挟む料理によっては、やはり突起のずれを防ぐことが難しく、料理を落としかねない。そこで、軽量化や使い捨てを鑑み、弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体を例えば樹脂シートから形成するトングを提供するため、左本体及び右本体を大きく開くための支点として突起を利用することとして、突起のずれを防ぐ構造について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果開発したものが、弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体により構成され、左本体及び右本体は、内側対向位置に設けた左支点部及び右支点部を後方に設けた左前部及び右前部と、連結部を設けた左後部及び右後部とからなり、左支点部及び右支点部の接触する対向部分が嵌合する関係に形成されることにより、連結部により左後部及び右後部を連結し、左支点部及び右支点部の対向部分を嵌合させた状態で左前部及び右前部の一部又は全部を弾性変形させながら開閉させるトングである。弾性を備えた薄肉の左本体及び右本体は、金属シート又は樹脂シートのプレス成形品や、パルプモールドされた紙型成形品が例示される。
【0008】
連結部は、左後部及び右後部を連結し、左本体及び右本体の位置関係を特定する。連結部は、使用状態で左後部及び右後部を連結していればよいので、左後部及び右後部を分離不能する構成でも、左後部及び右後部を分離可能する構成でもよい。左支点部及び右支点部は、連結部により左後部及び右後部が連結された状態で左前部及び右前部を開閉させる際、互いが接触する対向部分を押し付け合うように嵌合し、位置ずれしない。左支点部及び右支点部は、接触する対向部分が嵌合する関係にあれば、対向部分の形状を問わない。左前部及び右前部は、左支点部及び右支点部が後方に位置するほど、初期状態で大きく開き、それだけ開閉範囲を大きくできる。
【0009】
左後部及び右後部を分離不能に連結する連結部は、左後部及び右後部を繋ぐヒンジ軸がある。左後部及び右後部の連結部がヒンジ軸である左本体及び右本体は、ヒンジ軸を介して同一平面に展開される金属シート又は樹脂シートのプレス成形品や、パルプモールドされた紙型成形品として形成できる。左本体及び右本体は、一部又は全部を弾性変形させた左前部及び右前部を開閉させる。左前部及び右前部の一部は、左支点部及び右支点部近傍寄りが好ましい。左支点部及び右支点部より後方に位置するヒンジ軸は、左前部及び右前部の開閉方向と無関係なので、向きを自由に設定できる。連結部であるヒンジ軸は、左本体及び右本体の位置関係を特定し、左支点部及び右支点部をずれなく嵌合させる。
【0010】
また、左後部及び右後部を分離自在に連結する連結部は、左後部及び右後部の内側対向位置に設けられたスナップボタン嵌合の凸部及び凹部がある。分離可能な連結部であるスナップボタン嵌合の凸部及び凹部は、上記分離不能な連結部であるヒンジ軸と併用できる。凸部及び凹部とヒンジ軸とを併用する場合、左本体及び右本体は分離不能になる。凸部及び凹部は、左支点部及び右支点部より後方に位置することから、ヒンジ軸同様、左前部及び右前部の開閉方向と無関係に配置できる。凸部及び凹部は、着脱自在なスナップボタン嵌合ができればよく、凸部及び凹部の形状や組み合わせ個数は自由である。
【0011】
左本体及び右本体は、左支点部及び右支点部と連結部との間に、左支点部及び右支点部から左前部及び右前部が延びる方向に交差する溝部をそれぞれ設けるとよい。溝部は、左本体及び右本体の対向する縁部を横断する長さが好ましいが、それより短くてもよい。また、溝部は、直線的に連続することが好ましいが、曲線的又は断続的でもよい。更に、溝部は、1条でも構わないが、複数条あると好ましい。複数条の溝部は、それぞれの姿勢及び間隔を特定しないが、平行かつ等間隔に並べるとよい。
【0012】
左支点部及び右支点部は、左前部及び右前部の開閉方向と並行な凹溝と、凹溝に嵌合する凸条とが、対向部分に割り当てて形成されるとよい。凹溝及び凸条は、左前部及び右前部の開閉方向と平行に延びている形状であれば、長さを問わず、両者の長さが一致しても、異なってもよい。凹溝及び凸条は、直線状であることを基本とするが、無理なく嵌合できれば若干曲がっていても、屈曲していてもよい。凹溝及び凸条は、1組で十分であるが、複数組あっても構わない。複数組の凹溝及び凸条は、それぞれがすべて左前部及び右前部の開閉方向と並行であればよく、平行かつ等間隔に並べるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトングは、軽量化や使い捨て可能な金属シート又は樹脂シートのプレス成形品やパルプモールドされた紙型成形品から左本体及び右本体を形成しながら、左前部及び右前部の左支点部及び右支点部を左後部及び右後部の連結部に寄せてできるだけ後方に設けることにより、左前部及び右前部を大きく開閉できるほか、左前部及び右前部の内側対向位置に設けた左支点部及び右支点部の嵌合により、左前部及び右前部の開閉に際して左支点部及び右支点部のずれを防止できる。これは、左支点部及び右支点部の接触する対向部分を嵌合関係に形成したことの効果である。
【0014】
左後部及び右後部を繋ぐヒンジ軸である連結部は、左本体及び右本体の位置関係を特定するほか、分離不能な左本体及び右本体のいずれかの紛失を防止できる利点がある。また、左後部及び右後部の内側対向位置に設けられたスナップボタン嵌合の凸部及び凹部である連結部は、左本体及び右本体の位置関係を特定するほか、分離自在な左本体及び右本体いずれかのみの交換を可能にする利点がある。
【0015】
左支点部及び右支点部と連結部との間に設ける溝部は、左前部及び右前部の開閉に際して弾性変形する左前部及び右前部の復元力が左後部及び右後部に伝達されることを抑制又は防止して、連結部により連結された左後部及び右後部を離れ難くする。これにより、左後部及び右後部の連結状態が維持されるので、左支点部及び右支点部と連結部との距離を小さくして左前部及び右前部を大きく開いた初期状態を実現し、それだけ左前部及び右前部の開閉範囲を大きくできる。これは、本発明のトングの使い勝手を向上させる。
【0016】
左支点部及び右支点部が左前部及び右前部の開閉方向と並行な凹溝と、凹溝に嵌合する凸条とを対向部分に割り当てて形成されると、左前部及び右前部が開閉方向に直交する向きにずれることを防止する。これは、開閉する左前部及び右前部が常に正しい位置関係で開閉できることを意味し、例えば左前部及び右前部が料理を挟んだ状態でずれて料理を落下させるような不足の事態の発生を防止する効果をもたらす。
【0017】
このように、本発明のトングは、使い勝手がよく、挟んだ料理を落下させない機能を有しながら、金属シート又は樹脂シートのプレス成形品やパルプモールドされた紙型成形品から左本体及び右本体が構成されることで使い捨てできるので、料理を挟むトングとしてだけではなく、様々場面での利用が検討される。例えば、医療現場や研究又は実験現場で直接手に触れることのできない汚物又は廃棄物の処理や、介護や日常生活の中から出る汚物(清掃ゴミを含む)やペット又は小動物の糞や死骸の処理に本発明のトングが利用できる。いずれの場面でも、本発明のトングは使い捨てできるため、衛生面が保証される利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用したトングの一例の斜視図である。
【
図4】本例のトングを展開した状態の斜視図である。
【
図5】本例のトングの左前部及び右前部を閉じた状態の平面図である。
【
図6】本例のトングの左前部及び右前部を閉じた状態の正面図である。
【
図7】本例のトングの左前部及び右前部を閉じた状態の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のトング1は、例えば
図1~
図3に見られるように、弾性を備えた樹脂シートから形成された略左右対称な左本体2及び右本体3により構成される。本例のトング1は、左本体2及び右本体3が左後部22と右後部32とをヒンジ軸4により繋いだ1葉の樹脂シート(
図4参照)として提供される。1葉の樹脂シートとして提供されたトング1は、利用者がヒンジ軸4により折り畳み、左後部22の凹部24と右後部32の凸部34とをスナップボンタン嵌合させて、使用状態(
図1~
図3参照)に組み立てる。
【0020】
左本体2及び右本体3は、使用状態において、スナップボタン嵌合の連結部を構成する凹部24及び凸部34と、嵌合関係にある左支点部23及び右支点部33とを除いて、全体が左右に鏡面対象な構造である。本例のトング1は、左前部21及び右前部31の前端が下り勾配の直線状に傾斜しており、掴む料理に合わせて鋭角な角部を用いるか、鈍角中ドブを用いるかを決めて、上下を入れ替えて使用する。このとき、左本体2及び右本体3が鏡面対象な構造であることから、上下位を入れ替えた場合の使用感に大きな違いを生じさせない利点がある。
【0021】
左本体2は、右本体3に対する内側対向位置に設けた左支点部23を後端に設けた左前部21と、連結部を構成するヒンジ軸4や凹部24を設けた左後部22とからなる。左前部21及び左後部22は、別体であっても構わないが、本例のように一体の部材であることが、取扱の利便性が高く、好ましい。本例の左本体2は、左前部21の開閉範囲をできるだけ大きくするため、左前部21の後端に左支点部23を設けている。そして、左後部22は、左溝部25を介して、左前部21の後端に接続している。
【0022】
左後部22は、後縁の上下角部を丸めた側面視略長方形の板状で、ヒンジ軸4により右本体3の右後部32と繋がり、外方に向けて突出する楕円形の凹部24を設けている。凹部24は、開口縁が半径内向きに少し張り出した構造で、楕円形とすることで変形代を確保し、凸部34とスナップボタン嵌合する。また、本例の左後部22は、左支点部23と連結部(ヒンジ軸4及び凹部24)との間に、左支点部23から左前部21が延びる方向に直交して左後部22を横断する3条の左溝部25を設けている。本例の左溝部25は、ヒンジ軸4に一部重複しているが、ヒンジ軸4から完全に離れていてもよい。
【0023】
左前部21は、直線状の上縁と、下方へ凸に湾曲した下縁と、前方へ傾斜した直線状の前縁とに囲まれ、左外方に膨らんだ左膨出部212からなる上下非対称な構造である。左膨出部212は、左支点部23から前方に、内方へ凹ませた左凹み部213を形成し、全体の剛性を高めている。左支点部23は、左凹み部213を含む左膨出部212の後端に設けている。これにより、左本体2は、弾性変形できる部分を左支点部23近傍に限定させながら、左前部21全体を一体的に開閉動作させる。左支点部231は、右本体3に向けて凸な略方形の膨出部分で、上下方向中間位置に、左支点部23から左前部21が延びる方向へ延びる凸条231を形成している。
【0024】
右本体3は、上記左本体2の鏡面対称構造でほとんど同じであり、左本体2に対する内側対向位置に設けた右支点部33を後端に設けた右前部31と、連結部を構成するヒンジ軸4や凸部34を設けた右後部32とからなる。右前部31及び右後部32も、本例のように一体の部材であると、取扱の利便性が高い。本例の右本体3は、右前部31の開閉範囲をできるだけ大きくするため、左本体2に揃えて、右前部31の後端に右支点部33を設けている。右後部32は、右溝部35を介して、右前部31の後端に接続している。
【0025】
右後部32は、後縁の上下角部を丸めた側面視略長方形の板状で、ヒンジ軸4により左本体2の左後部22と繋がり、内方に向けて突出する断面円形の凸部34を設けている。凸部34は、開口縁が半径内向きに少し張り出した構造で、楕円形である左後部22の凹部24を弾性変形させてスナップボタン嵌合する。また、本例の右後部32は、右支点部33と連結部(ヒンジ軸4及び凸部34)との間に、右支点部33から右前部31が延びる方向に直交して右後部32を横断する3条の右溝部35を設けている。本例の右溝部35は、ヒンジ軸4に一部重複しているが、ヒンジ軸4から完全に離れていてもよい。
【0026】
右前部31は、右支点部331以外、左前部21の鏡面対称構造の右膨出部312からなる上下非対称な構造である。右膨出部312は、右支点部33から前方に、内方へ凹ませた右凹み部313を形成し、全体の剛性を高めている。右支点部33は、右凹み部313を含む右膨出部312の後端に設けている。これにより、右本体3は、弾性変形できる部分を右支点部33近傍に限定させながら、左前部21全体を一体的に開閉動作させる。右支点部33は、左本体2に向けて凸な略方形の膨出部分で、上下方向中間位置に、右支点部33から右前部31が延びる方向へ延びる凹溝331を形成している。
【0027】
このほか、本例のトング1は、左前部21の前縁の上端から少し下がった位置に、右本体3に向けて凸な左爪部211を設け、右前部21の前縁の上端にある角部の位置に、左本体2に向けて凸な右爪部311を設けている。左爪部211及び右爪部311は、トング1の使用状態で左本体2及び右本体3を閉じた際に噛み合うことで、料理を挟んだ左前部21及び右前部31が上下方向にずれることを防ぐ。左爪部211及び右爪部311は、噛み合って左前部21及び右前部31が上下方向にずれることを防げればよいので、それぞれを設ける位置は本例に拘らない。
【0028】
本例のトング1は、ヒンジ軸4により折り畳み、左後部22及び右後部32の凸部34及び凹部24をスナップボタン嵌合させて左後部22及び右後部32を密着させ、左支点部23及び右支点部33の凸条231及び凹溝331を嵌合させて左前部21及び右前部31を左右に大きく開いた使用状態(
図1~
図3参照)に組み立てる。本例のトング1は、左前部21及び右前部31の湾曲した下縁の一部と左後部22及び右後部32の後縁の丸めた下角部とを接地させて、テーブル等に置くことができる。テーブルに置かれたトング1は、左前部21及び右前部31の下縁が湾曲しているため、料理を掴む左前部21及び右前部31の前縁の下角部をテーブルから離しておくことができ、衛生的である。
【0029】
本例のトング1は、左凹み部213及び右凹み部313を指で掴み、左凹み部213及び右凹み部313を押すことにより、
図5~
図7に見られるように、左支点部23及び右支点部33近傍を弾性変形させて左前部21及び右前部31を閉じ、左前部21及び右前部31の前縁の鋭角な下角部で料理(図示略)を挟む。実際には、トング1をどのように使用するかは使用者次第であるため、例えばトング1を上下反転させ、左前部21及び右前部31の前縁の鈍角な上角部で料理を挟んだり、左前部21及び右前部31の前縁全体を使って料理を挟んだりしてもよい。
【0030】
左支点部23及び右支点部33は、左前部21及び右前部31の開閉に際して近傍の弾性変形により互いが押し付けられ、凸条231及び凹溝331を嵌合させて、左前部21及び右前部31が上下方向にずれなくなる。左本体2及び右本体3は、既述したように、左前部21及び右前部31の剛性が高く、それぞれが一体的に開閉動作する。上下方向にずれずに一体的に開閉動作する左前部21及び右前部31は、左前部21及び右前部31の前縁の下角部で掴む料理の落下を防止し、左凹み部213及び右凹み部313に当てた指のずれを防いでトング1の使用感を向上させる。
【0031】
料理が大きい場合、左前部21及び右前部31は離れており、左前部21及び右前部31を閉じる方向に力を入れることができるため、料理自体が滑らない限り、料理を落下させることはない。料理が小さかったり、薄かったりした場合、左前部21及び右前部31が前端を接触させ(
図6参照)、左前部21及び右前部31をこれ以上閉じることができなくなる。この場合、左爪部211及び右爪部311が噛み合うことで、左前部21及び右前部31が上下方向にずれることを防ぎ、料理を落下させない。
【0032】
左前部21及び右前部31は、当接する左支点部23及び右支点部33を超えて前縁が接触するまで閉じることができる。これにより、左支点部23及び右支点部33近傍の弾性変形が大きくなり、左前部21及び右前部31の復元力も大きくなる。本発明のトング1は、左溝部25及び右溝部35により左前部21及び右前部31の復元力が左後部22及び右後部32に伝達されにくくして、スナップボタン嵌合した凸部34及び凹部24の分離を防ぐ。こうして、左支点部23及び右支点部33を中心として左前部21及び右前部31が大きく開く初期状態が維持され、トング1の大きな開閉範囲が確保される。
【符号の説明】
【0033】
1 トング
2 左本体
21 左前部
211 左爪部
212 左膨出部
213 左凹み部
22 左後部
23 左支点部
231 対向する凸条
24 スナップボタン嵌合の凹部
25 左溝部
3 右本体
31 右前部
311 右爪部
312 右膨出部
313 右凹み部
32 右後部
33 右支点部
331 対向する凹溝
34 スナップボタン嵌合の凸部
35 右溝部
4 ヒンジ軸