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特許7641005コンジュゲート型ウイルス様粒子および抗腫瘍免疫リダイレクタとしてのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】コンジュゲート型ウイルス様粒子および抗腫瘍免疫リダイレクタとしてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20250227BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250227BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20250227BHJP
   C07K 14/025 20060101ALI20250227BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250227BHJP
   C12N 15/37 20060101ALI20250227BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250227BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20250227BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20250227BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250227BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250227BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250227BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20250227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C12N7/01
C07K19/00
C12N15/62 Z ZNA
C07K14/025
C12N15/12
C12N15/37
A61K35/76
A61K39/12
A61K47/65
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021537224
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 US2019068619
(87)【国際公開番号】W WO2020139978
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】62/785,502
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521079592
【氏名又は名称】ヴェリミューン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【弁理士】
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョシュア ウェイユアン
(72)【発明者】
【氏名】インガバット,ナッタ
(72)【発明者】
【氏名】マツイ,ケン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0260792(US,A1)
【文献】特表平10-506796(JP,A)
【文献】特表2014-509605(JP,A)
【文献】国際公開第2008/154868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61P
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のヒトパピローマウイルスカプシドタンパク質、および
融合タンパク質であって、少なくとも1種のフリンプロテアーゼ切断ペプチド配列と、少なくとも1種のリコールタンパク質とを含む、融合タンパク質
を含む、ヒトパピローマウイルスウイルス様粒子(VLP)であって、
前記リコールタンパク質が、少なくとも1種のエピトープを含み、
前記融合タンパク質が、前記パピローマウイルスカプシドタンパク質に付着し、45アミノ酸以下の長さであり、かつ
前記フリンプロテアーゼ切断ペプチド配列が、前記パピローマウイルスカプシドタンパク質と前記リコールタンパク質の間に位置し、
前記VLPが、癌細胞に結合することができる、または癌細胞に結合し、
腫瘍微小環境における前記VLPからの前記少なくとも1種のリコールタンパク質の放出により、前記少なくとも1種のリコールタンパク質と前記癌細胞表面に存在する主要組織適合性(MHC)分子との複合体が形成され、その結果、T細胞が活性化され、それによって前記癌細胞の増殖が阻害される、ヒトパピローマウイルスウイルス様粒子(VLP)。
【請求項2】
前記少なくとも1種のエピトープが:
病原体エピトープであり、
MHC分子と複合体を形成するペプチド配列を含み、および/または
配列番号1~83の1つまたは複数から選択される配列を有する、請求項1に記載のVLP。
【請求項3】
前記ヒトパピローマウイルスカプシドタンパク質が、ヒトパピローマウイルスL1および/またはヒトパピローマウイルスL2カプシドタンパク質である、請求項1または2に記載のVLP。
【請求項4】
前記プロテアーゼ切断ペプチド配列が、ジスルフィド結合、チオールエステル結合、アミド結合、または化学架橋の形成に適した条件下で、前記融合タンパク質を架橋剤に曝露することによって作成される共有結合を介してコンジュゲートされることにより、前記少なくとも1種のカプシドタンパク質に付着する、請求項1~のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項5】
前記融合タンパク質が、少なくとも2種のリコールタンパク質を含むか、または前記VLPが、それぞれが異なるリコールタンパク質を含む少なくとも2種の融合タンパク質を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項6】
前記少なくとも1種のヒトパピローマウイルスカプシドタンパク質が、特有の組織型へのトロピズムを示す、請求項1~のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項7】
前記トロピズムが、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を発現する細胞または組織へのトロピズムである、請求項に記載のVLP。
【請求項8】
前記エピトープの配列が、小児ワクチン由来である、請求項1~のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項9】
前記少なくとも1種のエピトープが、ウイルスエピトープであり、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、帯状疱疹ウイルス、風疹、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、バリオラウイルス、狂犬病ウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、ジカウイルス、サイトメガロウイルス、またはエプスタイン・バーウイルス由来である、請求項1~のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項10】
前記少なくとも1種のエピトープが、バクテリアエピトープであり、ボルデテラ・パータシス、クロストリジウム・テタニ、クラミジア・トラコマティス、ジフテリア、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、ニューモコッカス、ビブリオ・コレラ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、腸チフス、大腸菌、サルモネラ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、リケッチア、トレポネーマ・パリダム、ストレプトコッカス、バシラス・アントラシス、クロストリジウム・ボツリナム、またはエルシニア菌由来である、請求項1~のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項11】
前記少なくとも1種のエピトープが、寄生虫エピトープであり、エントアメーバ・ヒストリティカ、トキソプラズマ・ゴンディ、トリキネラ、トリコモナス、トリパノソーマ、またはプラスモジウム由来である、請求項1~10のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項12】
前記少なくとも1種のエピトープが、ヒトT細胞エピトープである、請求項1~11のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、前記少なくとも1種のヒトパピローマウイルスカプシドタンパク質のシステイン、リジン、またはアルギニン残基を介して前記少なくとも1種のヒトパピローマウイルスカプシドタンパク質にコンジュゲートしている、請求項1~12のいずれか1項に記載のVLP。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のヒトパピローマウイルスウイルス様粒子(VLP)の薬学的に有効な量を含む、癌の治療のための薬学的組成物。
【請求項15】
癌の治療のための薬剤の製造における、請求項1~13のいずれか1項に記載のヒトパピローマウイルスウイルス様粒子(VLP)を含む組成物の使用。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載のヒトパピローマウイルスウイルス様粒子(VLP)の薬学的に有効な量を含む、癌の治療に使用するための薬学的組成物。
【請求項17】
前記エピトープが、小児ワクチン由来であり、対象における免疫応答を誘発する、請求項14または16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記エピトープが、対象における過去の免疫またはワクチン接種に存在するエピトープに対応する、請求項14または16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記エピトープが、ワクチン由来であり、前記ワクチンが、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、肝炎ワクチン、または、はしか-ムンプス-風疹(MMR)ワクチンである、請求項14または16に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記癌が、小細胞肺癌、肝細胞癌、肝臓癌、黒色腫、転移性黒色腫、副腎癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳もしくは中枢神経系癌、乳癌、子宮頸癌、結腸もしくは直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、妊娠性トロホブラスト疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭もしくは下咽頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔もしくは副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、口腔または中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、成人の混合細胞型びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の大細胞型びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の大細胞型免疫芽球性びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の小型非切れ込み核細胞性びまん性アグレッシブリンパ腫、濾胞性リンパ腫、頭頸部癌、子宮内膜もしくは子宮癌腫、非小細胞肺癌、骨肉腫、膠芽腫、または転移癌のうちの1つまたは複数である、請求項14または16に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる、2018年12月27日出願の米国特許仮出願第62/785,502号の優先権および利益を主張する。
【0002】
EFS-Webを介して提出された配列表の参照
EFS-Webの法的枠組みおよび37CFR§§1.821-825(MPEP§2442.03(a)参照)に準じて、ASCII対応テキストファイルの形態の配列表(表題「8002PCT_ST25.txt」として2019年12月26日に28,572バイトのサイズで作成)が、本出願と同時に提出されており、この配列表の全内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、腫瘍を優先的に結合するコンジュゲート型ウイルス様粒子(VLP)に関する。本発明のVLPは、VLPが結合された腫瘍を選択的に攻撃する既存のリコールタンパク質特異性T細胞を利用してT細胞応答を誘発できるリコールタンパク質を含む。
【背景技術】
【0004】
背景
米国国立癌研究所によれば、全癌死亡率は、減少し続けており:全癌罹患率は、男性で下降し、女性では変化がない。5年生存率もまた、全てではないがほとんどの一般的癌で改善してきた。とはいうものの2017年には米国だけで、さらなる1,688,780例の新たな癌症例が診断され、600,920例の癌死亡があると推定される。典型的な癌処置としては、化学療法、放射線照射、および手術が挙げられる。しかし手術は、高度に侵襲性であり、多くの場合、特に転移後は奏功しない。化学療法および放射線照射は、効果的であるが、過酷な副作用を生じ、生活の質を劇的に低減する。これらの処置にもかかわらず、多くの癌は依然として難治性であり、原発腫瘍の低減または排除に成功したとしても、転移癌との闘いには無効である可能性がある。標的化デリバリーは、これらの疾患の処置を改善するための最も有望な、しかし最も挑戦的な機会になった。デリバリービヒクルを開発する最初の試みは、抗体-薬物コンジュゲートであった。ほぼ全ての例で、目的は、細胞障害性T細胞(CTL)を癌細胞の部位に送達して、癌細胞の選択的殺傷を実現することである。より近年になり、そのような免疫療法を利用して免疫系を刺激し、かつ癌細胞表面に優先的に存在するタンパク質を特異的に標的化し、癌細胞の標的排除をもたらす、試みがなされた。そのような治療は、それらが標的特異的であり、潜在的に非特異的自己免疫なしに毒性が低いという点で魅力的である。それらはまた、手術、放射線照射または化学療法に比較して侵襲性および外傷性が低いと見なされる。しかし、癌関連抗原を基にした癌ワクチンは、例えば臨床的免疫原性、免疫寛容およびオフターゲット効果に乏しいため、限定的な成功を有する可能性がある。その上、そのような方法は典型的には、所与の患者の癌に特異的な癌関連抗原を同定して癌の効果的標的化を実現することを必要とする。
【0005】
こうしてこのアプローチは、ほとんどの癌関連抗原が免疫系により寛容され、乏しい免疫応答をもたらす自己抗原であるため、多くの場合奏功しなかった。重要なことに、ゴールドスタンダードの動物モデルにおけるこれらの特異的な癌抗原特異性免疫療法により実証された成功は、必ずしもヒトに転換可能ではなかった。最後になるが、癌に罹患した患者が全員、腫瘍上で同じ抗原を発現するとは限らず、こうして広範囲の適用可能性については限界がある。近年になりこの分野は、癌特異性ネオエピトープをもたらし得る患者の個々の腫瘍変異に注目するよう切り替わっている。「ネオアンチゲン」と称されるこれらのネオエピトープを抗原として利用することは、癌ワクチンの領域をよみがえらせた。しかしこれは、大変長い開発時間を伴い、経費がかかり、かつ広範囲での実行が困難な、非常に個人向けの治療である。同様の限界が、治癒的であるがコンジュゲート型抗原受容体T細胞を基にした(CAR-T細胞)方策でも見られる。
【0006】
支持を得てきた治療薬の一分類は、免疫チェックポイント遮断療法である。この処置方式は、腫瘍の成長および進行が、免疫系による特異的標的化および破壊を予防する能力により駆動される、という前提に基づく。これを考慮して、チェックポイント阻害療法は、そのような「免疫抑制」をよみがえらせ、それにより免疫系の適当かつ効果的な抗腫瘍機能を再始動するように作用する。事実、これらの治療は、過去に非常に予後不良であった種々の癌(黒色腫、大腸癌)で著しい利益を示した。しかし、腫瘍微小環境が癌を根絶する内在性抗腫瘍免疫細胞の能力をくじくことは、よく確立されている。つまり、チェックポイント経路のメンバーであるプログラム細胞死1(PD-1)またはプログラム死リガンド1(PD-L1)を標的とする薬物は、免疫抑制経路を遮断するよう働き、癌と戦う体内の免疫系を支援することが示されている。あいにくチェックポイント阻害薬は、患者の大部分で働かず、70%という残念な非応答率である。これは主として、腫瘍に浸潤し得る既存の抗腫瘍CD8+ T細胞免疫応答の欠如による。このためチェックポイント阻害薬は一般に、特に腫瘍が出現部位で発達する早期発達期の間に、著しい抗腫瘍免疫浸潤(「冷たい腫瘍」または「非免疫原性」として知られる場合もある)が欠くことの多い癌を処置する際には無効と見なされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この結果として、現行の処置は、毒性、限定された応答者集団(非常に多種の癌に適用可能でない)の同様の認識される限界が依然としてあり、最も重要なことに、それらはまた、開発段階で法外に高い経費がかかり、患者にとってより高額の医療費を生じる。それゆえ、免疫寛容および免疫浸潤欠如の問題を巧みに回避し得る代替的な免疫療法方策を考慮することが重要であり、こうして個々の患者の癌タイプの余計な特徴づけを行わずに強力で持続可能な癌特異的T細胞応答を生成して腫瘍の成長、進行および転移を阻害する組成物および方法が、依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
様々な実施形態において、癌細胞を結合できる、またはそれに結合するカプシドタンパク質と;腫瘍の存在下で優先的に切断される少なくとも1種のタンパク質切断配列を含む融合タンパク質と;患者の体内に存在するT細胞により結合され得る、またはそれにより結合されるエピトープである配列を有するタンパク質またはその断片である少なくとも1種のリコールタンパク質、を含む、コンジュゲート型ウイルス様粒子(「VLP」)が、提供される。
【0009】
様々な実施形態において、カプシドタンパク質は、パピローマウイルス由来である。様々な実施形態において、パピローマウイルスは、L1タンパク質を含む。様々な実施形態において、リコールタンパク質は、病原体のエピトープを含む。様々な実施形態において、VLPは、少なくとも2種のリコールタンパク質を含む融合タンパク質を少なくとも1種含む。様々な実施形態において、VLPは、少なくとも2種の融合タンパク質を含み、このタンパク質はそれぞれ、別個のリコールタンパク質を含む。様々な実施形態において、リコールタンパク質の少なくとも2種は、同じ病原体の異なるT細胞エピトープからの配列を有するタンパク質またはその断片である。様々な実施形態において、リコールタンパク質の少なくとも2種は、異なる病原体のための異なるT細胞エピトープからの配列を有するタンパク質またはその断片である。
【0010】
様々な実施形態において、病原体は、ウイルス、バクテリア、真菌、または寄生虫である。様々な実施形態において、エピトープは、ヒトワクチンのエピトープの配列または配列のサブセットに由来するか、またはそれらで構成される。様々な実施形態において、ワクチンは、早期小児ワクチンまたは成人用に認可されたワクチンである。様々な実施形態において、融合タンパク質は、ジスルフィドリンケージ(linkage)、マレイミドリンケージ(linage)、またはアミドリンケージを介して、カプシドタンパク質のシステイン、リシン、またはアルギニンにコンジュゲートされる。様々な実施形態において、カプシドタンパク質および融合タンパク質は、1つの融合タンパク質として隣接して発現される。様々な実施形態において、ワクチンは、病原体に対するワクチンである。様々な実施形態において、病原体は、ウイルス、バクテリア、真菌、または寄生虫である。様々な実施形態において、ワクチンは、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、帯状疱疹ウイルス、風疹、肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルス、もしくはB型肝炎ウイルス、もしくはC型肝炎ウイルス、インフルエンザA型もしくはB型ウイルス、はしかウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、バリオラ(天然痘)ウイルス、狂犬病ウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、またはジカウイルス、またはサイトメガロウイルス、またはエプスタイン・バーウイルスへの免疫性を誘発する。様々な実施形態において、ワクチンは、バクテリア感染への免疫性を誘発し、バクテリアは、ボルデテラ・パータシス、クロストリジウム・テタニ、クラミジア・トラコマティス、ジフテリア、ヘモフィルス・インフルエンザ、髄膜炎菌、例えばACWY型髄膜炎菌、ニューモコッカス、ビブリオ・コレラ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、腸チフス、大腸菌、サルモネラ、レジオネラ・ニューモフィラ、リケッチア、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum pallidum)、A群もしくはB群ストレプトコッカス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、バシラス・アントラシス、クロストリジウム・ボツリナム、またはエルシニアspである。様々な実施形態において、寄生虫は、エントアメーバ・ヒストリティカ、トキソプラズマ・ゴンディ、トリキネラsp、例えばトリキネラ・スピラリス、トリコモナスsp、例えばトリコモナス・バギナリス、トリパノソーマsp、例えばトリパノソーマ・ブルセイ・ガンビエンセ、トリパノソーマ・ブルセイ・ロデシエンセ、もしくはトリパノソーマ・クルジ、またはプラスモジウム、例えばプラスモジウム・ファルシパルム、プラスモジウム・ビバックス、もしくはプラスモジウム・マラリアである。
【0011】
様々な実施形態において、VLPは、総CD8+ T細胞のベースラインの少なくとも2倍の閾値でT細胞応答を誘発できる。様々な実施形態において、CD8+ T細胞は、CD69+でもある。様々な実施形態において、CD8+ T細胞は、CD69+CD103+でもある。様々な実施形態において、CD8+ T細胞は、非リンパ器官から発生した組織常在型メモリーT細胞(TRM細胞)である。様々な実施形態において、カプシドタンパク質は、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(「HSPG」)を選択的に結合できる。
【0012】
様々な実施形態において、コンジュゲート型ウイルス様粒子(VLP)を投与することを含む、癌の対象を処置する方法が提供され、VLPは、(a)癌細胞に結合できるカプシドタンパク質と;(b)少なくとも(i)腫瘍の存在下で優先的に切断される切断配列、および(ii)少なくとも1種のリコールタンパク質、を含む融合タンパク質、を含み、上記リコールタンパク質は、患者の体内に存在するT細胞により結合され得るエピトープである配列を有するタンパク質またはその断片であり、切断配列は、リコールタンパク質に結合される。様々な実施形態において、リコールタンパク質の第二の投与は、コンジュゲート型VLPとして送達される。様々な実施形態において、リコールタンパク質の第二の投与は、ワクチンとして送達される。様々な実施形態において、リコールタンパク質の第二の投与は、アジュバント中の単離されたペプチドとして送達される。
【0013】
様々な実施形態において、(i)患者の既存の免疫性を測定すること;および(ii)それを必要とする患者への投与のために適切なコンジュゲート型VLPを選択すること、を含む、それを必要とする患者にコンジュゲート型ウイルス様粒子(VLP)を提供するための方法が、提供され、上記VLPは、(a)癌細胞に結合できるカプシドタンパク質と;(b)少なくともi)腫瘍の存在下で優先的に切断される切断配列、およびii)少なくとも1種のリコールタンパク質、を含む融合タンパク質、を含み、上記リコールタンパク質は、患者の体内に存在するT細胞により結合され得るエピトープである配列を有するタンパク質またはその断片であり、切断配列は、カプシドタンパク質に結合され、T細胞エピトープは、総CD8+CD69+陽性T細胞のベースラインのT細胞を誘発できる。
【0014】
様々な実施形態において、ブースティングワクチンが、患者に送達される。様々な実施形態において、ブースティングワクチンは、コンジュゲート型VLPの投与の少なくとも2週間後に送達される。様々な実施形態において、ブースティングワクチンは、コンジュゲート型VLPの投与2週間前に送達される。様々な実施形態において、ワクチンは、帯状疱疹ワクチン、PREVNAR13(登録商標)ワクチン、HEPLISAV-B(登録商標)ワクチン、MMR-IIワクチン、ZOSTAVAXR(登録商標)、またはENGERIX-B(登録商標)である。様々な実施形態において、ワクチンは、帯状疱疹用である。様々な実施形態において、ワクチンは、PREVNAR13(登録商標)である。様々な実施形態において、ワクチンは、HEPLISAV-B(登録商標)である。様々な実施形態において、対象は、少なくとも50歳のヒト患者である。様々な実施形態において、患者は、CAR-T、治療用ワクチン、チェックポイント阻害薬、腫瘍溶解性ウイルス、ネオアンチゲンワクチン、ネオアジュバント、化学療法、放射線照射、手術で過去に処置されたが、抗腫瘍効果を有することが過去に示されなかった。様々な実施形態において、リコールタンパク質は、腫瘍関連抗原でない。様々な実施形態において、方法は、腫瘍の成長、進行または転移を阻害する。
【0015】
様々な実施形態において、腫瘍は、小細胞肺癌、肝細胞癌、肝臓癌、肝細胞癌、黒色腫、転移性黒色腫、副腎癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳もしくは中枢神経系(CNS)癌、乳癌、原発臓器不明の癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、妊娠性トロホブラスト疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭および下咽頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、口腔および中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、脾辺縁帯リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(節外性または節性)、成人の混合細胞型びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の大細胞型びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の大細胞型免疫芽球性びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の小型非切れ込み核細胞性びまん性アグレッシブリンパ腫、もしくは濾胞性リンパ腫、頭頸部癌、子宮内膜もしくは子宮癌腫、非小細胞肺癌、骨肉腫、膠芽腫、または転移癌である。一実施形態において、癌は、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌または黒色腫である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】開示されるコンジュゲート型VLPの作用機序を示す。
図2A】C57BL/6マウスについての経時的なマウスTC-1腫瘍成長を示し、TC-1腫瘍は、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびルシフェラーゼの両方を発現する。
図2B】VLPで処置された(明るい方の網掛けピーク)、またはVLPで処置されていない(暗い方の網掛けピーク)のどちらかのC57BL/6マウスから摘出されたTC-1腫瘍の分析から作成された、蛍光活性化セルソーティングフローサイトメトリー(FACS)データのグラフ表示を示す。左のパネルは、GFPでゲートされ、右のパネルは、VLPに特異的なフィコエリトリン(PE)コンジュゲート型抗マウス抗体を用いて検出されたVLPに対しゲートされる。
図3A】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。特に、図3Aおよび3Bは、それぞれ5.5時間目および8.5時間目の、種々の濃度のE7ペプチドのみでまたはVLPにコンジュゲートされたE7ペプチドと共にインキュベートされた、B16-LUC細胞を示す。
図3B】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。特に、図3Aおよび3Bは、それぞれ5.5時間目および8.5時間目の、種々の濃度のE7ペプチドのみでまたはVLPにコンジュゲートされたE7ペプチドと共にインキュベートされた、B16-LUC細胞を示す。
図3C】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。同様に、図3Cおよび3Dは、それぞれ5.5時間目および8.5時間目の、E7ペプチドのみでまたはVLPにコンジュゲートされたE7ペプチドと共にインキュベートされた、ID8細胞を示す。
図3D】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。同様に、図3Cおよび3Dは、それぞれ5.5時間目および8.5時間目の、E7ペプチドのみでまたはVLPにコンジュゲートされたE7ペプチドと共にインキュベートされた、ID8細胞を示す。
図4A】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。特に、図4Aおよび4Bは、B16-LUC細胞およびネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共にインキュベートされたE7コンジュゲート型VLPで、細胞障害性がそれぞれ8.5時間と22.5時間の間で改善されることを示す。
図4B】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。特に、図4Aおよび4Bは、B16-LUC細胞およびネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共にインキュベートされたE7コンジュゲート型VLPで、細胞障害性がそれぞれ8.5時間と22.5時間の間で改善されることを示す。
図4C】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。同様に、図4Cおよび4Dは、ID8細胞およびネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共にインキュベートされたE7コンジュゲート型VLPで、細胞障害性がそれぞれ8.5時間と22.5時間の間で改善されることを示す。
図4D】時間依存的様式でのインビトロのB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ腫瘍細胞モデルにおけるHPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果を示す。同様に、図4Cおよび4Dは、ID8細胞およびネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共にインキュベートされたE7コンジュゲート型VLPで、細胞障害性がそれぞれ8.5時間と22.5時間の間で改善されることを示す。
図5】それぞれ23時間および23.5時間のタイムポイントで終了する2つの別の研究の後のB16ルシフェラーゼおよびID8ルシフェラーゼ細胞に及ぼす、HPV16 E7コンジュゲート型VLP(バッチF1~F3)のE7 T細胞介在性細胞障害効果のバッチ一貫性(batch consistency)を示す。図5Aおよび図5Bは、B16-LUC細胞においてE7ペプチドにコンジュゲートされたコンジュゲート型VLPの3つの独立に作製されたバッチのE7 T細胞介在性細胞障害効果の、それぞれ23時間目および23.5時間目のタイムポイントで終了する2つの別の研究を示す。図5Aおよび図5Bは、ID8細胞においてE7ペプチドにコンジュゲートされたコンジュゲート型VLPの3つの独立に作製されたバッチのE7 T細胞介在性細胞障害効果の、それぞれ23時間目および23.5時間目のタイムポイントで終了する2つの別の研究を示す。
図6A】それぞれ23または23.5時間のタイムポイントで終了する2つの別の研究の後のMC38細胞に及ぼす、HPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果のバッチ一貫性を示す。コンジュゲートされたE7コンジュゲート型VLPの3つの異なるバッチについて、図6Aは、23時間のタイムポイント研究からの結果を表す。
図6B】それぞれ23または23.5時間のタイムポイントで終了する2つの別の研究の後のMC38細胞に及ぼす、HPV16 E7コンジュゲート型VLPのE7 T細胞介在性細胞障害効果のバッチ一貫性を示す。コンジュゲートされたE7コンジュゲート型VLPの3つの異なるバッチについて、図6Bは、23.5時間のタイムポイント研究からの結果を表す。
図7A】MHC拘束性H-2D HPV16 E7ペプチド、緩衝液対照、E7にコンジュゲートされたVLP、または非コンジュゲート型VLPのみのどれかを注射されたC57BL/6マウスにおける、バイオルミネッセンスにより測定されたインビボ有効性データを提供する。各例において、マウスはその後、ネズミの特異的H-2D HPV16 E7 T細胞を注射された。図7Aは、全ての対照および被験マウスについての結果を示す。図7Aの個々のラインは、それぞれ全ての対照および被験マウスについての平均腫瘍成長を表す。
図7B】MHC拘束性H-2D HPV16 E7ペプチド、緩衝液対照、E7にコンジュゲートされたVLP、または非コンジュゲート型VLPのみのどれかを注射されたC57BL/6マウスにおける、バイオルミネッセンスにより測定されたインビボ有効性データを提供する。各例において、マウスはその後、ネズミの特異的H-2D HPV16 E7 T細胞を注射された。図7Bは、緩衝液対照の結果を提供する。図7Bの個々のラインは、各群における別のマウスを表す。
図7C】MHC拘束性H-2D HPV16 E7ペプチド、緩衝液対照、E7にコンジュゲートされたVLP、または非コンジュゲート型VLPのみのどれかを注射されたC57BL/6マウスにおける、バイオルミネッセンスにより測定されたインビボ有効性データを提供する。各例において、マウスはその後、ネズミの特異的H-2D HPV16 E7 T細胞を注射された。図7Cは、非コンジュゲート型VLPについての結果を提供する。
図7D】MHC拘束性H-2D HPV16 E7ペプチド、緩衝液対照、E7にコンジュゲートされたVLP、または非コンジュゲート型VLPのみのどれかを注射されたC57BL/6マウスにおける、バイオルミネッセンスにより測定されたインビボ有効性データを提供する。各例において、マウスはその後、ネズミの特異的H-2D HPV16 E7 T細胞を注射された。図7Dは、E7コンジュゲート型VLPについての結果を提供する。
図7E】MHC拘束性H-2D HPV16 E7ペプチド、緩衝液対照、E7にコンジュゲートされたVLP、または非コンジュゲート型VLPのみのどれかを注射されたC57BL/6マウスにおける、バイオルミネッセンスにより測定されたインビボ有効性データを提供する。各例において、マウスはその後、ネズミの特異的H-2D HPV16 E7 T細胞を注射された。図7Eは、E7ペプチドのみについての結果を提供する。
図8A】腫瘍体積の評定による、HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)に対する、急性免疫応答を有するB16.F10マウスにおけるE7コンジュゲート型VLP抗腫瘍免疫リダイレクションのインビボ有効性を示して、即ちマウスは、ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)ワクチン接種後に2週間処置された。図8Aは、対照VLP、即ち非コンジュゲート型VLP、およびE7コンジュゲート型VLPを含む様々な試料の注射後日数に対比した腫瘍サイズデータのグラフ表示を提供する。
図8B】腫瘍体積の評定による、HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)に対する、急性免疫応答を有するB16.F10マウスにおけるE7コンジュゲート型VLP抗腫瘍免疫リダイレクションのインビボ有効性を示して、即ちマウスは、ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)ワクチン接種後に2週間処置された。図8Bは、対照VLP、即ち非コンジュゲート型VLP、およびE7コンジュゲート型VLPを含む、様々な試料のB16.F10腫瘍細胞注射後のマウス生存率のグラフ表示を提供する。
図8C】腫瘍体積の評定による、HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)に対する、急性免疫応答を有するB16.F10マウスにおけるE7コンジュゲート型VLP抗腫瘍免疫リダイレクションのインビボ有効性を示し、即ちマウスは、ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)ワクチン接種後に2週間処置された。図8CおよびDは、HPV16 E7免疫応答がメモリーフェーズにあったこと、即ち、マウスがペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)ワクチン接種後に6週間処置されたこと、および処置前の腫瘍体積が50~100mmの間であったこと以外は、図8Aおよび8Bと同様である。マウスはその後、腫瘍でチャレンジされ、E7コンジュゲート型VLPがマウスに注射され、生存率が定量された。
図8D】腫瘍体積の評定による、HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)に対する、急性免疫応答を有するB16.F10マウスにおけるE7コンジュゲート型VLP抗腫瘍免疫リダイレクションのインビボ有効性を示し、即ちマウスは、ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)ワクチン接種後に2週間処置された。図8CおよびDは、HPV16 E7免疫応答がメモリーフェーズにあったこと、即ち、マウスがペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)ワクチン接種後に6週間処置されたこと、および処置前の腫瘍体積が50~100mmの間であったこと以外は、図8Aおよび8Bと同様である。マウスはその後、腫瘍でチャレンジされ、E7コンジュゲート型VLPがマウスに注射され、生存率が定量された。
図9A】インビトロでOVAコンジュゲート型VLPとインキュベートされたマウス腫瘍細胞のSIINFEKL/K(SEQ ID NO:2)FACS解析を示す。図9Aは、ID8-LUC(上のパネル)、B16-LUC (中央のパネル)、およびMC38(下のパネル)細胞とOVAペプチドのみまたはOVAコンジュゲート型VLPとのインキュベーションから得られたFACSデータを示す。
図9B】インビトロでOVAコンジュゲート型VLPとインキュベートされたマウス腫瘍細胞のSIINFEKL/K(SEQ ID NO:2)FACS解析を示す。図9Bは、OVAペプチドと複合体化したMHC-Iに特異的なH-2D抗体の結合により染色された、同じ細胞、ID8-LUC(上のパネル)、B16-LUC (中央のパネル)、およびMC38(下のパネル)を示す。
図10A】HLA.A2陽性HCT116細胞(図10A)、OVCAR3細胞(図10B)、およびMCF7細胞(図10C)を含む様々な不死化ヒト腫瘍細胞株のCMVコンジュゲート型VLPで惹起された免疫リダイレクション細胞障害性の棒グラフデータを提供する。各グラフの棒は、左から右に、抗原なし、1μg/mLのCMV pp65 HLA-A0201(NLVPMVATV)(SEQ ID NO:3)ペプチド(以後、「CMVペプチド」)のみ、VLPのみ、即ち、2.51μg/mLの非コンジュゲート型VLP、2.5μg/mLのVLPにコンジュゲートされたCMVペプチド、および14pg/mLのCMVペプチドのみで実施されたテストを表す。
図10B】HLA.A2陽性HCT116細胞(図10A)、OVCAR3細胞(図10B)、およびMCF7細胞(図10C)を含む様々な不死化ヒト腫瘍細胞株のCMVコンジュゲート型VLPで惹起された免疫リダイレクション細胞障害性の棒グラフデータを提供する。各グラフの棒は、左から右に、抗原なし、1μg/mLのCMV pp65 HLA-A0201(NLVPMVATV)(SEQ ID NO:3)ペプチド(以後、「CMVペプチド」)のみ、VLPのみ、即ち、2.51μg/mLの非コンジュゲート型VLP、2.5μg/mLのVLPにコンジュゲートされたCMVペプチド、および14pg/mLのCMVペプチドのみで実施されたテストを表す。
図10C】HLA.A2陽性HCT116細胞(図10A)、OVCAR3細胞(図10B)、およびMCF7細胞(図10C)を含む様々な不死化ヒト腫瘍細胞株のCMVコンジュゲート型VLPで惹起された免疫リダイレクション細胞障害性の棒グラフデータを提供する。各グラフの棒は、左から右に、抗原なし、1μg/mLのCMV pp65 HLA-A0201(NLVPMVATV)(SEQ ID NO:3)ペプチド(以後、「CMVペプチド」)のみ、VLPのみ、即ち、2.51μg/mLの非コンジュゲート型VLP、2.5μg/mLのVLPにコンジュゲートされたCMVペプチド、および14pg/mLのCMVペプチドのみで実施されたテストを表す。
図11】VLPコンジュゲーションについての還元条件のSDS-PAGE解析の写真である。左のレーンは、分子量標準のレーンである。ゲルの次のレーンは、RG1 VLPに対する様々な比のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を用いる様々なコンジュゲーション反応条件である。
図12】RG1 VLPに対する様々な比のTCEPを利用する、コンジュゲーション反応後のコンジュゲート型VLPの透過型電子顕微鏡測定(TEM)により作成された写真である。左上のパネルは、10:1比でのTCEPとRG1との反応後のコンジュゲーションの結果を示す。右上のパネルは、3:1比での同じ反応を示し、左下は5:1、右下は1:1での同じ反応を示す。
図13】ゲルに示された通りVLPコンジュゲーション反応の間にTCEPとの様々な比で還元されたRG1 VLPでのコンジュゲーションレベルの、SDS-PAGE解析の写真である。
図14A】様々なワクチンエピトープにコンジュゲートされたWT VLP(図14A)およびRG1(図14B)の、SDS-PAGE解析の写真を提供する。
図14B】様々なワクチンエピトープにコンジュゲートされたWT VLP(図14A)およびRG1(図14B)の、SDS-PAGE解析の写真を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な記載
定義
この明細書は、本開示の例示的実施形態および適用を記載する。しかし本発明は、これらの例示的実施形態および適用に、またはこの例示的実施形態および適用が動作する手法もしくは本明細書に記載される手法に、限定されない。本発明の教示の様々な実施形態、特色、目的および利点が、明細書および添付の図面および特許請求の範囲から明白となろう。本明細書で用いられる用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含むこと」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有すること」、「有する」、「有すること」、「包含する(include)」、「包含する(includes)」、および「包含すること」、ならびにそれらの変形例は、限定であることを意図せず、包括的であるか、または制限がなく、追加の、列挙されていない添加物、成分、整数、要素、または方法ステップを除外しない。例えば特色のリストを含む工程、方法、システム、組成物、キット、または装置は、必ずしもこれらの特色のみに限定されず、そのような工程、方法、システム、組成物、キット、または装置に明確に列挙されていない、またはそれらに本質的に備わらない他の特色を包含してもよい。
【0018】
「約」は、値を決定するために用いられるデバイスまたは方法の誤差の標準偏差をこの値が包含することを示すために用いられる。
【0019】
本明細書で用いられる用語「コンジュゲート型ウイルス様粒子」または「コンジュゲート型VLP」は、VLPのカプシドタンパク質に結合された融合タンパク質も含むVLPである。
【0020】
本明細書で用いられる用語「切断配列」は、部位特異的プロテアーゼがタンパク質を切断または切除する特異的ペプチド配列、またはよりしばしば、ペプチドモチーフを包含してよい。切断部位は、例えばアフィニティタグを切り離し、それにより自然なタンパク質配列を回復させるため、またはタンパク質を不活性化させるため、またはタンパク質を活性化させるために用いられ得る。本発明において、切断は、タンパク質分解切断を指している。様々な実施形態において、タンパク質分解切断は、タンパク質の最終的な成熟の前にペプチダーゼ、プロテアーゼまたはタンパク質分解切断酵素により実行される。タンパク質はまた、例えばミスフォールドタンパク質の、細胞内プロセシングの結果として、切断され得る。タンパク質のタンパク質分解プロセシングの別の例は、分泌タンパク質またはオルガネラに標的化されたタンパク質であり、それらは、細胞外環境または特異的オルガネラへの放出前に特異的シグナルペプチダーゼにより除去されるシグナルペプチドを有する。本発明の一実施形態において、切断配列は、フリンにより特異的に認識され、フリンは、コンジュゲート型VLPからリコールタンパク質を切断および放出し、リコールタンパク質を腫瘍表面へのローディングに利用可能にする。様々な実施形態において、切断配列は、システイン、リシンおよび/またはアルギニン残基で構成され、それはリコールタンパク質をVLPから切断することを可能にするだけでなく、リコールタンパク質を、腫瘍の部位に選択的に存在するフリンなどの切断タンパク質による放出まで、カプシドタンパク質にコンジュゲートするアンカーとして働く。
【0021】
「エピトープ」は、固有の免疫グロブリンによる認識を作製する、もしくは認識されるアミノ酸残基のセット、またはT細胞の環境下ではT細胞受容体タンパク質および/もしくは主要組織適合性(MHC)受容体による認識に必須のそれらの残基である。エピトープのアミノ酸残基は、隣接する/連続である必要はない。インビボまたはインビトロの免疫系の環境において、エピトープは、免疫グロブリン、T細胞受容体および/またはHLA分子により認識される三次元構造を一緒になって形成する、一次、二次および三次ペプチド構造などの、分子の集合的特色と、電荷の、複合物であってもよい。
【0022】
本発明の融合タンパク質は、少なくとも(1)腫瘍の表面の部位で優先的に切断される切断配列と、(2)患者の体内に存在するT細胞により結合され得るエピトープである配列を有するタンパク質またはその断片である少なくとも1種のリコールタンパク質と、(3)VLPに共有結合でつなげることができるもの、を含む。コンジュゲート型VLPは、腫瘍細胞に優先的に結合する(それがコンジュゲートされるだけならば、VLPについて上記の通り結合、除去、編集するが、さもなければ前述のものを除去する)。
【0023】
「HPV」および「ヒトパピローマウイルス」は、ヒトに感染できるパピローマウイルス科のメンバーを指す。それらのトロピズムにより定義されるHPVの2種の主要な群(生殖器/粘膜および皮膚群)が存在し、そのそれぞれが、複数のウイルス「型」または「系統/遺伝子型」(例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV32など)を含有する。
【0024】
本明細書で用いられる「ヒトワクチン」は、ヒトにおける固有の疾患への免疫性を改善する生物学的調製物を意味する。ワクチンは典型的には、疾患原因物質(病原体)に似た抗原性物質(複数可)を含有し、多くの場合、疾患原因物質の細菌、その毒素または1つもしくは複数の免疫原性表面タンパク質の弱毒化または殺傷された形態から作製される。抗原性物質は、身体の免疫系を刺激して、疾患の原因を外来物として認識し、それを破壊し、かつそれを「記憶し」、それにより免疫系は、万が一実際の感染/暴露が起こった場合に、これらの病原体のいずれかをより容易に認識および破壊できる。ヒトワクチンとしては、ウイルス疾患およびバクテリア疾患に対するワクチンが挙げられる。様々な実施形態において、ウイルス疾患に対するワクチンとしては、A型、B型、E型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、はしかウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、天然痘ウイルスおよび黄熱ウイルスが挙げられる。開発中のウイルス疾患に対するヒトワクチンとしては、デングワクチン、東部馬脳炎ウイルス、HTLV-1 Tリンパ球白血病ワクチンおよび呼吸器多核体ウイルスワクチンが挙げられる。そのようなワクチンとしては、幾つかの実施形態において、現在開発中のワクチン、または現在、米国食品医薬品局(FDA)で認可されているワクチン接種が挙げられる。適合性のあるワクチンの例を、表2に列挙する。本発明の実施形態は、列挙されたワクチンに限定されず、ヒト対象において免疫性を提供するために開発された任意のワクチンに適用され得る。
【0025】
特許請求の範囲および/または本明細書で用いられる場合、「阻害すること」、「低減すること」もしくは「予防」、またはこれらの用語の任意の変形例は、腫瘍の量、進行および/または転移を阻害すること、低減すること、または予防すること、または低減することなどの、所望の結果を実現するための任意の測定可能な減少または完全な阻害/低減もしくは排除を包含する。
【0026】
「MHC」または「主要組織適合性複合体」は、免疫系が外来物質を認識するのを援助する細胞表面に見出されるタンパク質をコードする遺伝子群である。MHCタンパク質は、高等脊椎動物の全てに見出される。MHC分子の2つの主要な型、つまりMHCクラスIおよびMHCクラスII、が存在する。ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒトのMHC分子はヒト白血球抗原(HLA)とも称される)をコードする3種の異なる遺伝子座:HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cが存在する。HLA-A01、HLA-A02、およびHLA-A11は、これらの遺伝子座から発現され得る異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0027】
「パピローマウイルス」は、パピローマウイルス科(papillomaviridae)の全てのメンバーを指す。パピローマウイルスのタイプおよびそれぞれのVLPを作製する能力の詳しいリストが、この発行物:“Classification of papillomaviruses (PVs) based on 189 PV types and proposal of taxonomic amendments,” de Villers et al., 401(l):70-79, 2010, PMID: 20206957(全ての表)、を利用して参照され得る。
【0028】
本明細書で用いられる「優先的に切断されるタンパク質」は、融合タンパク質が腫瘍の部位のカプシドタンパク質から優先的に切断されることを意味する。この優先的腫瘍部位切断は、(1)融合タンパク質上の独特の切断配列、および/または(2)独特の腫瘍微小環境、が原因の場合がある。例えば、一実施形態において、融合タンパク質は、腫瘍細胞において高濃度で発現されることが知られている酵素フリンにより優先的に切断される、切断配列を含む。
【0029】
本明細書で用いられる「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、任意の固有の数のアミノ酸に制限されず、これらの用語は時として、本明細書で互換的に用いられる。本発明のタンパク質およびそれらをコードする核酸の特性およびアミノ酸配列は、周知であり、日常的に決定され得、様々な公知データベースからダウンロードされ得る(例えば、NCBI GenBankデータベース参照)。幾つかの配列が、本明細書で提供される。しかし幾つかの配列の情報は、日常的に更新され(例えば、過去のエントリーの誤りを修正するため)、そのためタンパク質およびそれらをコードする核酸についての更新(修正)された情報は、本出願に包含される。本明細書で議論される配列データベース中に提供される情報は、参照により組み入れられる。
【0030】
本明細書で用いられる「リコールタンパク質」は、患者または対象が過去に暴露されたワクチンまたは病原体に由来するタンパク質またはその断片を指し、この過去の暴露が、リコールタンパク質を認識しリコールタンパク質に特異的である持続可能なT細胞をもたらした。リコールタンパク質は、腫瘍特異性抗原と識別される。
【0031】
「リコール応答」は、患者の体内に存在するワクチンまたは他の病原体により感作された抗原感作された細胞障害性T細胞、Th1 T細胞、Th2 T細胞、および/またはB細胞がリコールタンパク質を結合する、免疫応答である。
【0032】
本明細書で用いられる「対象」または「必要とする対象」は、腫瘍/癌を有する、または腫瘍/癌を有したことがある、または前癌状態の病気もしくは細胞を有する任意の動物を包含する。適切な対象(患者)は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットまたは豚などの実験動物、ウシなどの畜産動物、イヌまたはウマなどの競技動物、ウマ、イヌまたはネコなどの家畜またはペット、非ヒト霊長類、およびヒトを包含する。
【0033】
本明細書で用いられる「T細胞応答」は、T細胞が抗原に遭遇するとT細胞により誘発される免疫応答を指す。ナイーブ成熟T細胞は、B細胞、マクロファージ、および樹状細胞により提示される抗原に遭遇すると活性化され、武装したエフェクターT細胞を生成する。エフェクターT細胞は、細胞障害性T細胞に分化するCD8+ T細胞、または主として液性免疫応答を誘導するCD4+ T細胞のどちらかである。T細胞免疫応答はさらに、病原体による次のチャレンジからの防護を与える免疫記憶を発生する。様々な実施形態において、T細胞応答は、総CD8+ T細胞のベースラインの少なくとも2倍の閾値である。様々な実施形態において、CD8+ T細胞はまた、CD69+である。
【0034】
「治療的組成物」は、設計され患者に投与される組成物である。治療的組成物、例えば治療性コンジュゲート型VLP含有組成物は、良性のもしくは悪性の腫瘍、またはそのような腫瘍のリスクがある患者/対象を処置するために用いられる。幾つかの実施形態において、コンジュゲート型VLPは、腫瘍/癌の阻害または再発を増強しようとして、過去に腫瘍を有し現在は明白に腫瘍/癌を有しない対象に投与される。
【0035】
「ウイルス様粒子」または「VLP」は、ウイルスに似ているがウイルス遺伝子材料を欠く粒子に自己組織化し得るエンベロープまたはカプシドタンパク質などの、ウイルス構造タンパク質で構成された多タンパク質構造を指す。VLPは、非感染性かつ非複製性であり、その上、ウイルスと形態学的に類似している。本明細書に開示されるVLPは、腫瘍細胞に結合するか、または腫瘍細胞に本質的に備わるトロピズムを有する。
【0036】
「VLPワクチン」は、本明細書に記載されるコンジュゲート型VLPを1、2、3、4、5個、またはより多く含有する配合剤を指す。一実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲート型VLPを含む組成物は、対象の体内に既に存在する免疫性をリダイレクトするため、そしてそれにより対象における腫瘍の増殖、成長、および/または転移を阻害するために対象に投与される形態である。典型的には、VLPワクチンは、例えば吸入による、乾燥粉末、およびアラムなどの追加的アジュバントを含む配合剤の投与もまた企図されるが、本明細書に記載される組成物が懸濁または溶解される従来の生理食塩水または緩衝水性溶液媒体を含む。本発明の組成物は、腫瘍の増殖、成長、および/または転移を阻害するために用いられ得る。宿主への導入の際、本発明のコンジュゲート型VLP含有組成物(例えば、VLPワクチン)は、非限定的に、サイトカインの生成、および/または細胞障害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞の活性化、および/または他の細胞応答を含む免疫応答を誘起できる。
【0037】
コンジュゲート型ウイルス様粒子
様々な実施形態において、開示されるのは、対象の癌を処置するためのコンジュゲート型VLPである。様々な実施形態において、本明細書に記載される組成物は、カプシドタンパク質を含み、上記カプシドタンパク質は、癌細胞を結合する。様々な実施形態において、本明細書に記載された組成物は、少なくとも(1)腫瘍の存在下で優先的に切断される切断配列と、(2)少なくとも1種のリコールタンパク質、を含む融合タンパク質をさらに含み、上記リコールタンパク質は、患者の体内に存在するT細胞により結合されるエピトープである配列を有するタンパク質またはその断片である。様々な実施形態において、切断配列は、カプシドタンパク質に結合される。
【0038】
カプシドタンパク質。様々な実施形態において、VLPが、提供される。VLPは、ウイルス構造粒子、即ちウイルスに似ているがウイルスのウイルス遺伝子材料を欠く粒子に自己組織化するカプシドタンパク質で構成される。VLPは、それらが非感染性であり、かつ腫瘍細胞を特異的に標的化してそれに結合するように再操作され得るため、優れた送達分子である。
【0039】
HPVカプシド(VLPおよびシュードビリオン(PsV))が腫瘍トロピズムを有し、例えば卵巣および肺癌細胞を含む、腫瘍細胞に直接結合し感染することが、報告された。様々な実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲート型VLPは、優先的に腫瘍細胞に結合し、例えばそれらは、非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞により結合し、コンジュゲート型VLPの存在が、浸潤したCD8+ T細胞を引き付ける積極的な炎症促進性腫瘍微細環境をもたらし得る。同時に、VLPは、過去のワクチン接種または感染からもたらされかつリコールタンパク質のCD8+ T細胞エピトープを認識する適応性のメモリーT細胞による応答を刺激し得る。様々な実施形態において、これらの強力な応答は、免疫寛容を迂回し、腫瘍細胞にこの既存の免疫性を受け易くし、それにより腫瘍の成長、進行および転移を阻害できる。
【0040】
正常細胞に比べて腫瘍細胞に優先的に結合する任意のVLPが、本発明で用いられてよい。様々な実施形態において、VLPは、動物ウイルスに基づくVLPである。様々な実施形態において、動物ウイルスに基づくVLPは、HBVcまたはHPVに由来する。様々な実施形態において、VLPは、MS2、Qβ、またはP22などのバクテリオファージに基づくVLPである。様々な実施形態において、VLPは、カウピークロロティックモットルウイルス(CCMV)またはカウピーモザイクウイルス(CPMV)などの植物ウイルスに基づくVLPである。様々な実施形態において、VLPは、GlaxoSmithKlineのENGERIX(登録商標)(B型肝炎ウイルス)およびCERVARIX(登録商標)(ヒトパピローマウイルス)、ならびにMerck and Co., Inc.のRECOMBIVAX HB(登録商標)(B型肝炎ウイルス)およびGARDASIL(登録商標)(ヒトパピローマウイルス)を含む、現在商業化されている防護的なVLPに基づくワクチンである。VLPの他の実施形態としては、インフルエンザウイルス、パルボウイルスおよびノーウォークウイルスなどの臨床試験または前臨床評価の最中であるVLPに基づくワクチン候補が挙げられる。様々な実施形態において、VLPは、ハムスターポリオーマウイルス、オニテナガエビノダウイルス、HBsAg、HCV、レトロウイルス、またはHBcである。
【0041】
一実施形態において、VLPは、パピローマウイルス由来の構造タンパク質で構成される。パピローマウイルスのビリオンは、L1タンパク質の72の五量体(カプソマー)を含有する。L1タンパク質は、真核細胞中で発現される場合にネイティブビリオンと形態学的に判別不能であるカプシド様構造に自己会合できる。L1モノマーは、12のb鎖、6のループ(BC、CD、DE、EF、FG、HI)、および5のらせん(H1~H5)を含有する。ループのほとんどは、カプシドの外表面に向かって高度に露出され、本明細書に記載される通り、例えばジスルヒドリンケージ、マレイミドリンケージによる、「クリック」ケミストリーによる、またはポリイオン性ドッキング部位への結合による、これらのループの1つへの融合タンパク質の付着は、これらのエリアで、VLPの外表面に提示されるリコールタンパク質をもたらすであろう。
【0042】
パピローマウイルスVLP。様々な実施形態において、パピローマ(PV)L1タンパク質、またはPVL1およびPVL2タンパク質を含むコンジュゲート型VLPが、提供される。VLPは、幾つかの実施形態において、パピローマL1およびL2タンパク質の両方を含む。
【0043】
一実施形態において、コンジュゲート型パピローマウイルスVLPは、L1カプシドタンパク質および融合タンパク質を含む。他の実施形態において、コンジュゲート型VLPは、L1カプシドタンパク質、L2カプシドタンパク質、および融合タンパク質を含む。L1ポリペプチドは、完全長L1タンパク質またはL1ポリペプチド断片であり得る。具体的実施形態において、完全長L1タンパク質またはL1ポリペプチド断片は、会合できるVLPであり、即ちL1ポリペプチドは、自己会合して、より高次の組織に自己会合する能力を有するカプソマーを形成し、それによりVLPを形成するであろう。より具体的実施形態において、VLPは、約50nmの、72カプソマーまたは360コピーのL1タンパク質で構成される構造物である、完全に会合されたパピローマウイルスカプシドを含む。
【0044】
L1配列は、今日まで同定された実質的に全てのパピローマウイルス遺伝子型について知られており、これらのL1配列または断片のいずれかが、本発明の組成物中で使用されることが企図される。L1ポリペプチドの例としては、完全長L1ポリペプチド、例えばHPV16 L1ポリペプチド、SEQ ID NO:、ネイティブC末端が欠如したL1トランケーション、ネイティブN末端を欠くL1トランケーション、および内部ドメインを欠くL1トランケーションが挙げられるが、これらに限定されない。L1タンパク質は、例えば修飾L1タンパク質、例えばHPV16 L2アミノ酸17~36(RG1エピトープ)がHPV16 L1のDE表面ループに挿入された修飾HPV16 L1タンパク質であってもよい(Schellenbacher et al., 2013, J. Invest Dermatol; 133(12):2706-2713;Slupetzky et al., 2007, Vaccine. 25:2001-2010;Kondo et al., 2008, J. Med. Virol., 80:841-6;Schellenbacher et al., 2009,Virol., 83:10085-10095:およびCaldeira et al., 2010, Vaccine, 28:4384-93参照)。
【0045】
L2ポリペプチドは、完全長L2タンパク質またはL2ポリペプチド断片であり得る。L2配列は、今日まで同定された実質的に全てのパピローマウイルス遺伝子型について知られており、これらのL2配列または断片のいずれかが、本発明中で使用され得る。L2ポリペプチドの例としては、完全長L2ポリペプチド、例えばHPV16 L2ポリペプチド、SEQ ID NO:、ネイティブC末端を欠くL2トランケーション、ネイティブN末端を欠くL2トランケーション、および内部ドメインを欠くL2トランケーションが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
パピローマウイルスVLPは、任意の動物パピローマウイルスからのL1、かつ場合によりL2ポリペプチド、またはそれらの誘導体もしくは断片を用いて形成され得る。こうしてヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、シカ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウサギなどのパピローマウイルスの任意の公知の(または本明細書の以後に同定される)L1の、かつ場合によりL2の配列が、本発明のVLPまたはカプソマーを調製するために用いられ得る(パピローマウイルスの遺伝子型およびそれらの関連性のほぼ完全な列挙については、参照により本明細書に組み入れられるde Villiers et al., Virology, 324:17-27,2004を参照されたい)。
【0047】
様々な実施形態において、VLPは、パピローマウイルス(PV)L1タンパク質、またはPV L1およびPV L2タンパク質で構成される。パピローマウイルスは、小さな二本鎖の環状DNA腫瘍ウイルスである。パピローマビリオンのシェルは、大部分のL1カプシドタンパク質および少量のL2カプシドタンパク質を含有する。真核または原核生物発現系における、単独でのまたはL2タンパク質と組み合わせたL1タンパク質の発現は、カプソマーおよびVLPの会合をもたらすことが知られている。本明細書で用いられる用語「カプソマー」は、完全長L1タンパク質またはその断片を含む、パピローマウイルスL1ポリペプチドの五量体会合を意味するものとする。ネイティブL1カプシドタンパク質は、分子間ジスルフィド結合を介し自己会合して、五量体(カプソマー)を形成し得る。
【0048】
パピローマウイルスビリオンは、L1タンパク質の72の五量体(カプソマー)を含有してよい(Trus et al, Nat. Struct. Biol., 4:413-420,1997参照)。L1タンパク質は、真核細胞中で発現される場合ネイティブビリオンと形態学的に判別不能であるカプシド様構造に自己会合できる(Buck et al., J. Virol., 5190-97, 2008;およびRoy et al., Hum. Vaccin., 5-12, 2008参照。両者とも参照により本明細書に組み入れられる)。L1モノマーは、12の鎖、6のループ(BC、CD、DE、EF、FG、HI)、および5のらせん(H1~H5)を含有する。ループのほとんどは、カプシドの外表面に向かって高度に露出され、本明細書に記載される通り、例えばジスルヒドリンケージ、マレイミドリンケージによる、「クリック」ケミストリーによる、またはポリイオン性ドッキング部位への結合による、これらのループの1つへの融合タンパク質の付着は、これらのエリアで、VLPの外表面で提示されるリコールタンパク質をもたらすであろう。
【0049】
特定の実施形態において、VLPを形成するために用いられるL1および場合によりL2ポリペプチドは、非ヒトパピローマウイルス、またはHPV-6、HPV-11、HPV-16、およびHPV-18以外のヒトパピローマウイルス遺伝子型由来である。例えばL1および/またはL2タンパク質は、HPV1、2、3、4、5、6、8、9、15、17、23、27、31、33、35、38、39、45、51、52、58、66、68、70、76、または92由来であってよい。
【0050】
様々な実施形態において、本明細書で提示されるコンジュゲート型VLPは、1種または複数の癌細胞に結合する。これは一部には、腫瘍細胞に特異的なタンパク質および/または分子への、VLPの選択性による。様々な実施形態において、VLPは、腫瘍細胞の表面で優先的に発現される、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合する。本明細書で用いられる「癌細胞に結合すること」は、コンジュゲート型VLPが腫瘍細胞に接近し得るような、および融合タンク質がVLPから切断され得るような、およびリコールタンパク質が腫瘍細胞上に存在するMHC受容体に結合し得るような、コンジュゲート型VLPのカプシドタンパク質と腫瘍細胞との非共有結合性相互作用の形成を指す。
【0051】
動物ウイルスに基づくVLP。本明細書の他の箇所に記載されるVLPに加えて、VLPは、B型肝炎ウイルスに由来してもよい。B型肝炎ウイルスは、内部タンパク質カプシドと、他のタンパク質を含有する脂質エンベロープとで構成される。2種の異なるVLPが、内部カプシドを形成するコア抗原、または脂質と共に自然にナノ粒子(NP)を形成する表面抗原のどちらかを用いて、ウイルスから生成され得る。B型肝炎コア(HBc)抗原は、240コピーの単一タンパク質から形成される。これらのタンパク質は最初に二量体を形成し、その後、五量体または擬似六量体ジャンクションでT54正十二面体の幾何学的構造に会合する。VLPは、大腸菌のサイトゾル蓄積および無細胞タンパク質合成を含む複数の技術を利用して生成されてきた。会合したVLPは典型的には、サイズ排除クロマトグラフィーまたは分画遠心法を利用して精製される。個々のコートタンパク質は次に、尿素でVLPを分解することにより得られており、これは積荷およびVLP再会合を同時に可能にする。
【0052】
バクテリオファージウイルスに基づくVLP。様々な実施形態において、VLPは、バクテリオファージウイルスに基づくVLPに由来する。3種のバクテリオファージMS2、Qb、およびサルモネラ・ティフィムリウムP22は全て、腸内バクテリア、最も顕著には大腸菌に感染する。3種全てが、核酸が充填されたウイルスカプシドのみで構成されるが、P22は、MS2およびQbと大きく異なる。MS2およびQbは、90のホモダイマーで構成され、コートタンパク質に結合することによりVLP自己組織化を惹起するためにRNAゲノム中の特異的ステムループヘアピン二次構造を必要とする。その一方でP22は、最大415のコートタンパク質、100~300の足場タンパク質および12のポータルタンパク質(portal proteins)で構成される。しかしP22 VLPは、420のコートタンパク質および100~300の足場タンパク質のみからなるように操作されており、それは続いてグアニジン塩酸塩で除去され、コートタンパク質のみを残す。HBV VLPのように、これらのVLPは、十二面体の幾何学的構造で会合する。3種全てが、大腸菌で生成され得るが、Qbは、酵母でも生成され得、QbおよびMS2の両方は、無細胞タンパク質合成を利用して生成され得る。MS2 VLPは、サイズ排除クロマトグラフィー、分画遠心法、または固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(ヘキサヒスチジンタグを含有するVLPの場合)を利用して精製されてきた。酸または尿素を用いて精製MS2 VLPを分解して二量体を得ることができ、その後、二量体は、分解剤の除去およびステムループRNAの添加の後に再会合され得る。Qb VLPは、サイズ排除クロマトグラフィーを利用して精製されており、二量体は、酸を用いてVLPを分解することにより得ることができ、その後、MS2と同様に再会合され得る。P22 VLPは、サイズ排除クロマトグラフィーまたは分画遠心法を利用して精製されており、酸を用いて分解して、コートタンパク質を得ることもできる。足場タンパク質の添加は、P22 VLPを再会合するために必要であるが、これらは次に、除去され得る。これらのバクテリオファージ由来VLPは、塩濃度を上昇させる代わりに追加的生体分子(RNAまたはタンパク質)を用いて自己会合を開始する、会合刺激において主に、HBc VLPと異なる。
【0053】
植物ウイルスを基にしたVLP。様々な実施形態において、VLPは、植物ウイルスに基づくVLPである。様々な実施形態において、植物ウイルスに基づくVLPは、カウピーの葉のCCMVおよびCPMVに由来する。どちらのウイルスも、脂質エンベロープを有しない。両方のVLPは、正十二面体の幾何学的構造で会合する、CCMV VLPは、90のホモダイマーから形成され、大腸菌または酵母で生成され得る。それらは、ヘキサヒスチジン伸長を有するコートタンパク質を用いて、サイズ排除クロマトグラフィーまたは固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを利用して精製されてきた。46,62の二量体を、会合したVLPを0.5M CaClに対し透析することにより、またはヘキサヒスチジンタグ付きの二量体を直接精製することにより、得ることができる。質量比1:6で二量体をRNAと組み合わせること、およびpHを4~5に低下させることは、自己会合を誘導する。その一方でCPMVは、60コピーのVP60タンパク質から形成され、これは最初に、L型およびS型コートタンパク質(それぞれ60コピー)にタンパク質分解されなければならない。残念ながら、VLPは、大腸菌または酵母を用いて生成できず、昆虫細胞または植物が、用いられなければならない。VLPは、分画遠心法を利用して精製されてきたが、コートタンパク質は、利用可能な量で得られていない。VLPを大腸菌で生成できないこと、または精製コートタンパク質を得られないことは、標的化薬物送達の別の難題を追加するが、CPMVは、その表面にリガンドおよび容易に提示し、かつそのゲノムとの関連により積荷する能力により、治療的使用について活発に評価されてきた。他の実施形態において、植物ウイルスに基づくVLPは、タバコモザイクウイルス(TMV)である。
【0054】
VLPの腫瘍特異性。様々な実施形態において、VLPは、腫瘍細胞に優先的に結合する。VLPの腫瘍優先性は、VLPの電荷(正または負)、形状およびサイズ(異なるアスペクト比のフィラメントおよび異なる径の球)、シールディング(様々なサイズおよび比重の自己タンパク質/ペプチドおよびポリマー)、および標的化(受容体のリガンド、または様々な比重の異なるリンカー上で提示される環境因子)を含む複数の原因から発生し得る。
【0055】
電荷に関して、様々な実施形態において、VLPは、正の表面電荷を含有する。正電荷のVLPは、循環中により長く留まる。負電荷を付与する細胞膜中のプロテオグリカンと、正電荷を付与する腫瘍間質空間内のコラーゲンとの豊富な存在により、正電荷粒子は、哺乳動物細胞への結合を増強する可能性がより高く、凝集を回避し腫瘍組織に透過することがより上手くできる。これらの電荷に基づく効果を実証する幾つかの例として、ヒト子宮頸癌中のネイティブCPMVよりも効率的に8倍取り込まれることが見出されたポリアルギニン修飾されたCPMVが挙げられる。
【0056】
形状に関係して、VLPの形状および柔軟性は、腫瘍全体に拡散するVLPの能力において追加的役割を担うであろう。例えば、球形粒子と形状粒子の間の拡散プロファイルの比較が、回転楕円体モデルを利用してCPMVおよびTMVで実施され、CPMV(球形)は一定の拡散プロファイルを受けるが、TMV(棒状)は極めて急速な早期ローティングフェーズを伴う2相の核酸挙動を呈し、それが針のように作用する軸上の運動に起因し得ることが示された。細長い粒子により与えられる幾つかの他の有利な特性としては、血管壁へのより良好なマージネーション、および相互作用の表面積がより大きいことによるより強力な接着が挙げられ、それは腫瘍のホーミングへの意味合いだけでなく、心臓血管疾患の標的化の増強も有する。
【0057】
受動的な腫瘍ホーミング特性の他に、ウイルスと特定細胞の自然な相互作用も、活用され得る。CPMV(カウピーモザイクウイルス)は特に、内皮細胞、癌細胞および炎症細胞上で見出される表面ビメンチンと相互作用する際に独特の特異性を呈する。表面ビメンチンへのCPMVのネイティブの親和性は、深さ最大500μmの微小血管系の高解像度イメージングを可能にし、それは、他のナノ粒子は凝集し血管系を遮断する傾向があるため、他のナノ粒子の使用により実行できない。この相互作用は、子宮頸癌、乳癌および結腸癌細胞株を含む一連の癌細胞への送達、アテローム病変の描写、ならびに腫瘍血管系および血管新生の生体内イメージングなどの様々な適用に用いられ得る。存在する内因性関連の別の例は、細胞内への鉄輸送のための重要な受容体であり、かつ数多くの癌細胞株により高度に上方制御される、トランスフェリン受容体(TfR)を有するCPVである。色素標識後であっても、CPVは、TfRへのその特異性を保持し、HeLa子宮頸癌細胞、HT-29結腸癌細胞、およびMDA-MB-231乳癌細胞上に見出される受容体に結合することが示された。
【0058】
様々な実施形態において、VLPは、腫瘍細胞表面上で優先的に発現されるタンパク質を標的化できる。そのようなタンパク質は典型的には、腫瘍細胞の表面で過剰発現されるが、全てではないがいくつかは、血中、即ち血清中でも見出され得る。そのような表面マーカの非限定的例としては、CEA(癌胎児性抗原)、E-カドヘリン、EMA(上皮膜抗原;MUC-1としても知られる)、ビメンチン、フィブロネクチン、Her2/neu(ヒト上皮成長因子受容体2型、Erb B2とも呼ばれる)、αvβ3インテグリン、EpCAM(上皮細胞接着分子)、FR-α(葉酸受容体アルファ)、PAR(ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体)、およびトランスフェリン受容体(腫瘍細胞で過剰発現される)が挙げられる。
【0059】
ペプチドは多くの場合、それらの膜貫通型タンパク質の認識に基づき癌性細胞を標識するために用いられる。ほとんどの通例用いられるペプチドは、L-アルギニン、グリシンおよびL-アスパラギン酸で構成される、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)である。RGDは最初、インテグリンに結合する糖タンパク質であるフィブロネクチンの細胞結合ドメインから単離され、細胞-細胞および細胞-細胞外マトリックス(ECM)付着、ならびにコラーゲン、フィブリンおよびプロテオグリカンを結合することによるシグナル伝達に関与する。RGDペプチドは、細胞表面インテグリンの一タイプであるαvβに対し最高の親和性を有し、αvβは、腫瘍内皮細胞で高度に発現されるが、正常な内皮細胞では発現されない。様々な実施形態において、そのようなペプチド配列は、コンジュゲート型VLP内に組み込まれる。
【0060】
融合タンパク質。様々な実施形態において、融合タンパク質は、切断配列を含む。切断配列は、腫瘍細胞により、または腫瘍細胞の付近で優先的に切断され得る任意の配列であり得る。融合タンパク質中へのこの切断配列の挿入は、タンパク質を、それが腫瘍微小環境に入るまで不活性にしておくことを可能にする。癌組織中の固有のプロテアーゼの活性上昇を活用することにより、リコールタンパク質はVLPから放出されず、リコールタンパク質が腫瘍微小環境に入るまでMHC受容体を能動的にコートできる。複数のプロテアーゼが、腫瘍微小環境中で活性であると当該技術分野で知られている。例えば、複数のメタロ-、システイン-およびセリンプロテアーゼが、知られている。癌治療の観点から、追加的な魅力は、プロドラッグ切断を担うプロテアーゼが癌細胞からではなく腫瘍の間質成分から生じ得るため、腫瘍微小環境中への活性薬物放出の方向は癌細胞のみにより発現される標的に依存しないことである。代わりにそれは、標的を表す全体的な腫瘍エコシステムである。
【0061】
リコールタンパク質。様々な実施形態において、リコールタンパク質は、エピトープであり、それは、対象の体内に既に存在する、T細胞またはT細胞集団により認識される。様々な実施形態において、この存在するT細胞またはT細胞集団は、以前の感染またはワクチン接種により存在する。本発明の様々な実施形態において、リコールタンパク質は、T細胞により結合され得るエピトープである。様々な実施形態において、リコールタンパク質は、対象の体内に既に存在するT細胞により結合され得るエピトープである。この文脈において、「結合され得る」は、「エピトープ」が細胞の表面で提示され、そこでそれがMHC分子に直接結合されることを意味する。MHC Iにより提示可能なT細胞エピトープは、細胞障害性CD8 Tリンパ球(CDS T細胞またはCTL)のT細胞受容体により結合され得る。MHC Iにより提示可能なT細胞エピトープは、典型的には9~12アミノ酸長のペプチドである。様々な実施形態において、T細胞応答誘発ペプチドの放出を可能にし、MHCクラスIを介して直接提示できる、コンジュゲート型VLPが、提供される。放出されたリコールタンパク質は、サイトゾルでの抗原プロセシング機構への送達を必要としないため、T細胞応答誘発ペプチドは、短い時間で標的細胞の表面で提示される。こうして、本発明の一実施形態において、標的細胞の投与後8.5時間未満で、T細胞応答誘発ペプチドが、MHCクラスI分子を介して標的細胞の表面で提示される。本発明の別の実施形態において、標的細胞へのコンジュゲート型VLPの導入後23.5時間未満で、T細胞応答誘発ペプチドが、MHCクラスI分子を介して標的細胞の表面で提示される。本発明の別の実施形態において、コンジュゲート型VLPは、標的細胞へのコンジュゲート型VLPの投与後6時間未満内に、標的細胞に対するT細胞の細胞障害性を媒介できる。
【0062】
様々な実施形態において、融合タンパク質は、少なくとも2種のリコールタンパク質を含む。これらのリコールタンパク質は、異なるタンパク質に由来するエピトープであってもよく、またはそれらは、同じタンパク質のエピトープであってもよい。様々な実施形態において、病原体は、ウイルス、バクテリア、真菌または寄生虫である。
【0063】
様々な実施形態において、既存のT細胞は、ワクチンエピトープに特異的である。様々な実施形態において、エピトープは、早期小児ワクチンに由来する。様々な実施形態において、既存の免疫性は、過去のヒトワクチン投与の結果である。
【0064】
ウイルスの非限定的例としては、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、帯状疱疹ウイルス、風疹、肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルスもしくはB型肝炎ウイルスもしくはC型肝炎ウイルス、インフルエンザ、例えばA型もしくはB型、はしかウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、バリオラ(天然痘)ウイルス、狂犬病ウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、またはジカウイルスが挙げられる。
【0065】
バクテリアの非限定的例としては、ボルデテラ・パータシス、クラミジア・トラコマティス、クロストリジウム・テタニ、ジフテリア、ヘモフィルス・インフルエンザ、髄膜炎菌、ニューモコッカス、ビブリオ・コレラ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、BCG、腸チフス、大腸菌、サルモネラ、レジオネラ・ニューモフィラ、リケッチア、トレポネーマ・パリダム、A群もしくはB群ストレプトコッカス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、バシラス・アントラシス、クロストリジウム・ボツリナム、またはエルシニアspバクテリアが挙げられる。
【0066】
寄生虫の非限定的例としては、エントアメーバ・ヒストリティカ、トキソプラズマ・ゴンディ、トリキネラsp、例えばトリキネラ・スピラリス、トリコモナスsp、例えばトリコモナス・バギナリス、トリパノソーマsp、例えばトリパノソーマ・ブルセイ・ガンビエンセ、トリパノソーマ・ブルセイ・ロデシエンセ、もしくはトリパノソーマ・クルジ、またはプラスモジウム、例えばプラスモジウム・ファルシパルム、プラスモジウム・ビバックス、もしくはプラスモジウム・マラリアが挙げられる。
【0067】
様々な実施形態において、リコールタンパク質は、表1に含まれるリストから選択される:
【表1】
【0068】
様々な実施形態において、エピトープは、ヒトワクチンのエピトープに由来する。様々な実施形態において、ワクチンは、早期小児ワクチンである。適切なワクチンの特定の非限定的例を、以下の表2に列挙する:
【表2】
【0069】
様々な実施形態において、リコールタンパク質エピトープは、タンパク質分解切断に続いて放出され、エピトープは、MHCクラスI分子に結合する。MHCクラスI分子は、HLA-A、B、および/またはCファミリー由来であってよい。MHCクラスI分子に結合する特異的エピトープは、表1または表2に列挙されたもののいずれかであってよい。MHCクラスI分子そのものは、以下の非限定的例の1つまたは複数であってよい:HLA-A02:01、HLA-A03:01、HLA-A11:01、HLA-A201、HLA-A020101、HLA-A0203、HLA-A0206、HLA-A2、HLA-A2.1、またはHLA-A02。
【0070】
本発明の一態様において、リコールタンパク質は、約8アミノ酸~約50アミノ酸長、または約8アミノ酸~約45アミノ酸長、または約8アミノ酸~約40アミノ酸長、約8アミノ酸~約35アミノ酸長、または約8アミノ酸~約30アミノ酸長、約8アミノ酸~約25アミノ酸長、約8アミノ酸~約20アミノ酸長、または約8アミノ酸~約15アミノ酸長である。本発明の一態様において、融合タンパク質は、約13アミノ酸~約50アミノ酸長、または約13アミノ酸~約45アミノ酸長、または約13アミノ酸~約40アミノ酸長、約13アミノ酸~約35アミノ酸長、または約13アミノ酸~約30アミノ酸長、約13アミノ酸~約25アミノ酸長、約13アミノ酸~約20アミノ酸長、または約13アミノ酸~約15アミノ酸長である。本発明の一態様において、CD8+ T細胞エピトープは、例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17アミノ酸長であってよい。
【0071】
切断配列。様々な実施形態において、リコールタンパク質が腫瘍細胞表面のMHCに結合し得るように、リコールタンパク質をVLPから放出させることができる切断配列が、提供される。様々な実施形態において、VLPは、エンドソームを回避し、分解し、それらの治療性カーゴを機能性形態でサイトゾルに放出する。様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPおよび/またはコンジュゲート型VLPの融合タンパク質は、腫瘍細胞内のタンパク質分解酵素による切断を受け易く、VLPまたは融合タンパク質中の標的切断配列の位置は、標的部位の切断がコンジュゲート型VLPからのCD8+ T細胞エピトープを含むリコールタンパク質の全てまたは一部を放出し、それが腫瘍細胞のMHCクラスI分子と複合体化するようなものである。コンジュゲート型VLPの充分な量は、熟練の技術者により容易に決定され、その量は、例えば対象の特徴、例えば対象の年齢、性別、および/または病気、ならびに腫瘍の特徴、例えば型、体積、および発達状況に依存することは、察知されよう。
【0072】
切断配列は、細胞に存在する任意のプロテアーゼにより認識されてよい。少なくとも569の公知のプロテアーゼが、記載されている(Lopez-Otin, et al., Nature Reviews Cancer, 7(10):800-808, 2007)。全ての同定されたヒトタンパク質分解酵素は、5種の触媒分類:メタロプロテアーゼ、セリン、トレオニン、システインおよびアスパラギン酸プロテアーゼに分類される。標的化され得る潜在的プロテアーゼの非限定的リストが、5種の大まかな分類(最大数から最小数の順に):メタロプロテアーゼ、セリン、システイン、トレオニンおよびアスパラギン酸プロテアーゼに分配される最もよく研究されたプロテアーゼを要約した表である、表3で示されている。これらのプロテアーゼの幾つかは、健常細胞に比べて癌細胞で過剰発現されることが見出されている。
【0073】
様々な実施形態において、切断配列は、プロテアーゼフリン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、例えばMMP1、2、3、7、8、9、11、13、14、もしくは19、ADAM(ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ)、例えばADAM8、9、10、15、17、もしくは28、カテプシン、例えばカテプシンD、G、H、もしくはN、エラスターゼ、プロテイナーゼ-3、アズロシジン、またはADAMTS-1により認識される。様々な実施形態において、切断配列は、フリンプロテアーゼにより認識される。様々な実施形態において、切断配列は、少なくとも4つのアミノ酸残基を含み、そのうち少なくとも3つは、アルギニン残基である。様々な実施形態において、切断配列は、少なくとも4つのアミノ酸残基を含み、そのうち少なくとも3つは、アルギニン残基であり、1つは、リシン残基またはアルギニン残基のどちらかである。様々な実施形態において、切断配列は、R-X-R/K-Rである。様々な実施形態において、切断配列は、追加の残基を含む。様々な実施形態において、切断配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、または9の追加的アルギニン残基をさらに含む。アルギニンは正に荷電され、正電荷アルギニン残基のより長い鎖が、より負に荷電されたVLPの表面にこのペプチドをより接近させることは、知られている。
【表3】
略語:AD:アルツハイマー病;ADAM:ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼドメインプロテアーゼ;COPD:慢性閉塞性肺疾患;ER:小胞体;RA:関節リウマチ
【0074】
様々な実施形態において、融合タンパク質は、VLPのカプシドタンパク質に結合されなければならない。融合タンパク質をカプシドタンパク質に結合させる方法が、複数存在する。本発明の様々な実施形態において、切断配列は、マレイミドリンケージまたはアミドリンケージを通してコンジュゲートされる(以下で議論する)。融合タンパク質は、VLPのカプシドタンパク質上の任意の残基に連結されてよいが、ジスルフィドリンケージ、マレイミドリンケージ、およびアミドリンケージが、リコールタンパク質をシステイン、リシン、またはアルギニン残基にコンジュゲートすることにより形成される。
【0075】
VLPの表面機能化
本明細書に記載されたVLPは、リコールタンパク質を送達するように機能化されなければならならず、リコールタンパク質は、コンジュゲート型VLPの表面で提示されなければならない。様々な実施形態において、リコールタンパク質は、カプシドタンパク質上のシステイン残基を通してVLPにコンジュゲートされてよい。そのようなシステイン分子は、自然に、またはVLPの表面で突然変異により提示され得る。様々な実施形態において、VLPは、VLPのカプシド様正十二面体構造を維持しながら、VLPの表面のシステイン残基のスルフヒドリル基を還元するのに充分な還元条件に供される。その遊離スルフヒドリル基のため、システインは、酸化条件下で他のスルフヒドリル含有リガンドとスルフィド結合を容易に、かつ自然に形成するであろう。あるいはマレイミド上に付加された一連の化合物が、6.5~7.5の間のpHでシステイン残基とチオエステルリンケージを容易に、かつ不可逆的に形成する。
【0076】
様々な実施形態において、融合タンパク質は、VLP上のリシン残基にコンジュゲートされてもよい。リシン残基は、その第一級アミンのため、容易に修飾される。n-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル反応と称される反応(NHSが反応の一部として放出されるため)を利用して、アミド結合が、表面露出リシン残基で形成される。この反応は、pH7.2~pH9の間で自然に起こる。この付着化学は、MS2上でトランスフェリンを提示するために用いられており、それはVLPが血液脳関門を経細胞輸送することを可能にし、神経障害の治療薬の新しいライブラリーを開拓することを可能にする。
【0077】
様々な実施形態において、融合タンパク質はまた、アスパラギン酸またはグルタミン酸残基にコンジュゲートされてもよい。システインおよびリシンを含む方策と異なり、これらの残基へのカップリングは、複数のステップを必要とする。第一に、カルボン酸は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて活性化されなければならない。一旦活性化されると、それは、NHSと反応して、NHSエステルを形成するであろう。カルボン酸側鎖が本質的にNHSエステルになるので、露出した第一級アミンを有するリガンドを用いて安定なアミド結合を形成できる。
【0078】
様々な実施形態において、VLPは、正電荷アミノ酸の領域を含む融合タンパク質に結合できる表面露出エリア上の負電荷アミノ酸の領域を含む。様々な実施形態において、負電荷アミノ酸の領域は、片側または両側が、ポリアニオン:システイン、またはより具体的にはポリグルタミン酸:システイン、またはポリアスパラギン酸;システインと称される1つまたは複数のシステイン残基により隣接されてよい。そのような例では、VLPおよび融合タンパク質のコンジュゲーションは、VLPと融合タンパク質の間の相補性アミノ酸電荷の非共有結合と、システイン間のジスルフィド結合とから生じる。様々な実施形態において、システイン(複数可)は、任意の二次/三次構造がシステイン(複数可)に接近して電荷アミノ酸領域をもたらすように、電荷アミノ酸の領域から1つまたは複数のアミノ酸離れている。本発明の様々な実施形態において、融合タンパク質は、末端システインとCD8+ T細胞エピトープの間に位置する相補性ポリイオン:システイン配列および酵素切断部位を含むVLPに融合タンパク質を付着させるために少なくとも1つのリコールタンパク質およびポリイオン:システインを含む。様々な実施形態において、融合タンパク質は、末端システインと、少なくとも1つのリコールタンパク質と、末端システインとリコールタンパク質(複数可)の間に位置する酵素切断配列とを含む。
【0079】
コンジュゲート型VLPを生成する際に用いられ得る負電荷アミノ酸としては、例えばグルタミン酸およびアスパラギン酸が挙げられる。これらのアミノ酸は、単一で、例えばポリグルタミン酸として、または組み合わせて用いられ得る。具体的実施形態において、領域は、グルタミン酸を含む。負電荷アミノ酸の数は、変化してよく、約4~約20アミノ酸、約6~約18アミノ酸、または約8~約16アミノ酸などを包含し得る。具体的実施形態において、領域は、約8の負電荷アミノ酸を含む。より具体的な実施形態において、領域は、EEEEEEEEC(E8C)(SEQ ID NO:84)を含む。別の実施形態において、領域は、CEEEEEEEEC(SEQ ID NO:85)を含む。ジスルフィド結合を介して融合タンパク質をVLPにコンジュゲートするための方法は、知られている。例えば、融合タンパク質上のポリアルギニンシステイン部分の存在は、L1粒子の様々なループ中に存在するポリアニオン部位(EEEEEEEEC、E8C、SEQ ID NO:84)へのペプチドのドッキングを可能にする。2つのシステイン残基の間の共有結合での架橋は、この会合を酸化条件下で不可逆的にするはずである。コンジュゲーション反応では、精製されたHPV粒子を、コンジュゲーション緩衝液(20mM Tris/HCl pH=7.5、150mM NaCl、5%グリセロール、0.5mM CaCl)中で透析し、その後、ペプチドおよび酸化試薬を添加し、その反応を4℃で16時間進行させる。インキュベーションの終了時に、反応混合物を、サイズ排除カラム(SEPHADEX(登録商標) G-100、Pharmacia、米国ニュージャージー州、容量20ml、流速1ml/分、10mM Tris/HCl(pH=7.4)、150mM NaCl、0.5mM CaCl)にアプライして、非コンジュゲート型ペプチドを除去し、緩衝液を交換する。空隙容積に溶出するコンジュゲート型粒子を、SDS-PAGEでL1タンパク質の存在により同定する。コンジュゲート型粒子を、電子顕微鏡測定により分析する。当業者は、日常的実験を通して、表面露出エリアにポリイオン領域、例えば1つまたは複数のループを含み、かつVLP会合能力のある、VLPを作製できる。
【0080】
様々な実施形態において、融合タンパク質は、コートタンパク質に遺伝的に融合される。様々な実施形態において、融合タンパク質は、VLPに共有結合または非共有結合のどちらかで連結されてよい。例えば、負電荷および正電荷アミノ酸の結合を介して、またはマレイミドに基づくコンジュゲーションを介して、リコールタンパク質をVLPに付着させるよりむしろ、融合タンパク質をコードする核酸配列が、発現の際に融合タンパク質が生成されるように、カプシドタンパク質をコードする核酸に挿入されてよく、そこでリコールタンパク質はカプシドタンパク質のループに挿入されVLPの表面で提示される。
【0081】
様々な実施形態において、非天然アミノ酸が、融合タンパク質をVLPにコンジュゲートするために用いられてもよい。20のアミノ酸の他に、多くの非天然アミノ酸が、部位特異的タンパク質コンジュゲーション反応に用いられてきた。例えば、アジドホモアラニン(AHA)またはp-アミノ-フェニルアラニン(pAF)が、コンジュゲーションのためにVLPコートタンパク質に組み込まれてよい。これらのアミノ酸は、2つの方法:グローバルなメチオニン置換およびアンバー終止コドン抑制、でタンパク質に組み込まれる。AHAはメチオニンと非常に類似しているため、AHAは、メチオニン供給が律速的であれば各AUGコドンで組み込まれ、これはグローバルメチオニン置換と称される。メチオニンまたは無細胞タンパク質合成のための栄養素要求性バクテリアが、メチオニンの利用可能性を限定するために用いられ得る。アンバー終止コドン抑制は、pAFを組み込むであろう。アンバー終止コドン抑制は、非ネイティブ合成酵素と、天然アミノ酸と反応しないtRNAとを利用して、非天然アミノ酸をアンバー終止コドンUAGで組み込む。アジドを提示するAHAは、銅(I)触媒によるアジド-アルキン環化付加(「クリック」反応)に参加し、アルキン含有リガンドと共有結合性のトリアゾール環を形成する。
【0082】
様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、少なくとも10分の1のウイルスコートタンパク質を含み、リコールタンパク質を提示してよい。様々な実施形態において、ウイルスコートタンパク質の少なくとも5分の1が、リコールタンパク質を提示してよい。様々な実施形態において、ウイルスコートタンパク質の約半分が、リコールタンパク質を提示してよい。様々な実施形態において、ウイルスコートタンパク質の約3分の2が、リコールタンパク質を提示してよい。様々な実施形態において、ウイルスコートタンパク質のほぼ全てが、リコールタンパク質を提示してよい。
【0083】
処置の方法
本発明の様々な実施形態における、それを必要とする患者にコンジュゲート型VLPを投与することにより、それを必要とする対象の癌を処置するための方法。本発明の方法は、本発明のコンジュゲート型VLPを、腫瘍の成長、進行または転移を阻害するのに充分な量で、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞の細胞障害活性を刺激することを含む、サイトカイン生成および/または細胞免疫性、詳細には自然免疫性を刺激するのに充分な量でそれを必要とする対象に投与される。本発明の様々な実施形態において、それを必要とする対象は、過去に腫瘍を処置されたことがあり、現在は医療基準により癌を有しないまたは疾患を有しないと見なされる対象である。
【0084】
手短に述べると、記載されるコンジュゲート型VLPの作用機序を、図1に表す。VLPは、腫瘍細胞に特異的に結合する(図1の左側の腫瘍細胞)。VLP上のリコールタンパク質エピトープはその後、フリンによりタンパク質分解切断され、それは腫瘍微小環境で過剰発現される。これは順次、コンジュゲート型VLPからのエピトープ放出および腫瘍MHCクラス1分子上へのエピトープのローディング(「エピトープコーティング」)をもたらす。(図1、中央の分解立体図はVLPからのエピトープがロードされたブロック状のMHI分子を示す)。エピトープでコートされた腫瘍細胞はその後、1つまたは複数の小児ワクチンT細胞および既存のCD8 T細胞により病原体感染細胞として認識され、惹起された免疫リダイレクション応答を生じる。(図1、右端の図解)。即ちこの認識事象は、病原体および小児ワクチンに対する宿主に既存の免疫記憶が、腫瘍微小環境中の腫瘍に対抗して活性化し、腫瘍を攻撃し破壊することをもたらす。腫瘍細胞の破壊は、既存の免疫応答の成分が癌細胞抗原に暴露されることをもたらし得る。したがって、殺傷された腫瘍細胞から放出される抗原は、追加的な腫瘍特異性CD8 T細胞を動員する免疫応答、またはその後このエリアで追加の腫瘍細胞を攻撃するために進行するT細胞の「第二の波」を開始するであろう。これは、癌細胞抗原に対抗する内在性免疫応答の誘発をもたらすことができ(一般に「エピトープスプレディング」として知られる)、抗腫瘍免疫記憶に導く。
【0085】
こうして、本明細書に開示される方法は、個体自身の既存の適応記憶免疫系を利用して癌細胞を攻撃することによる、個体において癌を処置する方法である。本明細書に記載される方法は、本来は癌への応答で誘発されなかったが、代わりに日常的なワクチン接種計画により、または自然な環境に存在する微生物および病原体を介して誘発される、既存の免疫応答を個体が有する、という事実を利用する。癌細胞は、通常は既存の免疫応答を誘発する細菌抗原を発現しないため、そのような免疫応答が癌を攻撃することは予期されない。しかし本発明の方法によれば、そのような既存の免疫応答が、動員されて対象の癌を攻撃、殺傷、および浄化する可能性がある。これは、癌の内部または表面に、対象の既存の免疫応答により認識されることが知られた1種または複数の抗原を導入し、免疫応答の細胞が抗原提示癌細胞を攻撃することをもたらすことにより実現される。さらに、癌細胞の破壊は、既存の免疫応答成分が追加の癌細胞抗原に暴露されることをもたらし得る。こうして、本発明の一般的方法は、既存の免疫応答が癌を攻撃するように、癌の部位に個体中の既存の細菌またはワクチン免疫応答を動員することにより実践され得る。こうして一般に、1)VLPを腫瘍細胞に結合させること、腫瘍細胞表面での提示のためにVLPからエピトープを切断してエピトープのMHC結合に導くこと、エピトープに対抗する対象の既存のリコールされた免疫性によりロードされたMHCを認識すること、ならびに第二の波およびその後の長期抗腫瘍性免疫性を惹起すること、を含む、この方法に関与する4つのステップが存在する。
【0086】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータが、ヒトにおける使用のために様々な投与量を配合する際に用いられてよい。そのような組成物の投与量は、好ましくはED50を含む循環濃度の範囲内にあり、ほとんど、または全く毒性を有しない。投与量は、用いられる投与剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化してよい。本発明の方法で用いられる任意の組成物では、治療的有効用量が、最初に細胞培養アッセイから推定されてよい。用量が、動物モデルにおいて配合されて、細胞培養で決定されたIC50(症状の最大半量阻害を実現する試験組成物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を実現してよい。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量を正確に決定するために用いられてよい。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより、測定されてよい。
【0087】
多くの例において、VLP含有組成物の複数回投与、通常は多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回もしくはより多く、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回もしくはより多く、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回を超えないもしくはより多くのワクチン接種(それらの間の全範囲を含む)を有することが望ましであろう。ワクチン接種は通常、1、2、3、4、5、6週~5、6、7、8、9、10、11週~12週/月/年の間隔が置かれ(それらの間の全ての値および範囲を含む)、より通常は3~5週間隔であろう。
【0088】
様々な実施形態において、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量をそれを必要とする対象に投与することによるマクロファージおよびナチュラルキラー細胞の細胞障害活性を刺激するための方法が、提供される。マクロファージおよびナチュラルキラー細胞は、腫瘍微小環境に存在するものであってよい。本発明の一態様において、コンジュゲート型VLPは、腫瘍微小環境に既に存在するマクロファージおよびナチュラルキラー細胞の細胞障害活性を刺激するのに効果的な量で、対象に投与される。本発明の様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞を腫瘍微小環境に誘引するのに効果的な量で、対象に投与される。
【0089】
本発明の様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、リコールタンパク質に抗体の充分な数を結合させてマクロファージ、好中球およびナチュラルキラー細胞を誘引し刺激するのに効果的な量で、対象に投与される。
【0090】
本発明の様々な実施形態において、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量をそれを必要とする対象に投与することによる、存在するメモリーCD8+ T細胞の細胞障害活性を腫瘍細胞または腫瘍微小細胞にリダイレクトするための方法が、提供される。好ましくは、コンジュゲート型VLPのリコールタンパク質のT細胞エピトープは、対象が能動的にワクチン接種されたことのある病原体のもの、または過去に対象に感染した病原体のものであり、対象は、腫瘍細胞上のMHCクラスI分子と複合体を形成したT細胞エピトープを認識するメモリーCD8+ T細胞を有する。本発明の一態様において、コンジュゲート型VLPの有効量は、メモリーCD8+ T細胞を腫瘍微小環境に誘引するのに充分な量である。本発明の態様において、コンジュゲート型VLPの有効量は、腫瘍微小環境に存在するメモリーCD8+ T細胞を刺激するのに充分な量である。
【0091】
様々な実施形態において、腫瘍は、小細胞肺癌、肝細胞癌、肝臓癌、肝細胞癌、黒色腫、転移性黒色腫、副腎癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、原発臓器不明の癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍(gist)、妊娠性トロホブラスト疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭および下咽頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、口腔および中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、脾辺縁帯リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(節外性または節性)、成人の混合細胞型びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の大細胞型びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の大細胞型免疫芽球性びまん性アグレッシブリンパ腫、成人の小型非切れ込み核細胞性びまん性アグレッシブリンパ腫、もしくは濾胞性リンパ腫、頭頸部癌、子宮内膜もしくは子宮癌腫、非小細胞肺癌、骨肉腫、膠芽腫、または転移癌である。好ましい実施形態において、癌は、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌または黒色腫である。
【0092】
本明細書で用いられる用語「癌」は、リンパ腫、リンパ性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞細胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部の癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸の癌、膣の癌、外陰の癌、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟部組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱の癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盂の癌、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumors)、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽細胞腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、およびユーイング肉腫などの、増殖性疾患を指し、上記癌のいずれかの難治性の型、または上記癌の1つもしくは複数の組み合わせも含む。
【0093】
本発明の一態様は、本発明のコンジュゲート型VLPを対象に投与することによる、それを必要とする対象において癌を処置するための方法であり、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、ウイルス誘導性癌、例えばHPV子宮頸癌、HPV+口腔癌、EBV鼻咽頭癌に対し奏功しなかった治療性癌ワクチン(「治療性ワクチン」)のものである。方法は、対象がワクチンに対し能動的にワクチン接種したが処置に対し抗腫瘍効果を有して応答しなかったかどうかを決定することを含む。患者はその後、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量を対象に投与し、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、対象に感染した、過去に対象に投与されたワクチン中の抗原決定基のものである。
【0094】
様々な実施形態において、本発明のコンジュゲート型VLPを対象に投与することによる、それを必要とする対象の癌を処置するための方法が提供され、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、ウイルス誘導性癌、例えばHPV子宮頸癌、HPV+口腔癌、EBV鼻咽頭癌に対し奏功しなかったCAR-T細胞療法(「CAR-T」)のものである。方法は、対象がCAR-Tで能動的に処置されたが処置に対し抗腫瘍効果を有して応答しなかったかどうかを決定することを含む。患者はその後、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量を対象に投与し、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、対象に感染した、過去に対象に投与されたCAR-T中の抗原決定基のものである。
【0095】
様々な実施形態において、本発明のコンジュゲート型VLPを対象に投与することによる、それを必要とする対象の癌を処置するための方法が提供され、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、癌に対して奏功しなかったワクチンまたはCAR-T細胞療法のものである。方法は、対象がCAR-Tで能動的に処置されたが処置に対し抗腫瘍効果を有して応答しなかったかどうかを決定することを含む。患者はその後、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量を投与され、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、対象に感染した、過去に対象に投与されたCAR-T中の抗原決定基のものである。
【0096】
VLPは、アジュバント特性を有する。幾つかの実施形態において、本発明のコンジュゲート型VLP組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる、免疫応答の追加的な非特異的刺激物質の使用により増強され得る。適切なアジュバントとしては、サイトカイン、毒素またはアラムなどの合成組成物などの、全ての許容できる免疫刺激性化合物が挙げられる。
【0097】
アジュバントとしては、水中油エマルジョン、油中水エマルジョン、無機塩、ポリヌクレオチド、および天然物質が挙げられるが、これらに限定されない。用いられ得る特異的アジュバントとしては、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、y-インターフェロン、GM-CSF、BCG、水酸化アルミニウムもしくは他のアルミニウム化合物などのアルミニウム塩、thur-MDPおよびnor-MOPなどの、MDP化合物、CGP(MTP-PE)、リピドA、およびモノホスホリルリピドA(MPL)、または不活性化細菌剤が挙げられる。2%スクアレン/Tween80エマルジョン中にバクテリアから抽出された3成分、つまりMPL、トレハロースジミコール酸(TOM)、および細胞壁骨格(CWS)を含有する、RIBI。MHC抗原がさらに、用いられてよい。
【0098】
コンジュゲート型VLP組成物に対するアジュバントの影響を実現する様々な方法としては、リン酸緩衝生理食塩液中の約0.05~約0.1%溶液として一般的に用いられる、水酸化またはリン酸アルミニウム塩(アラム)、約0.25%溶液として用いられる糖の合成ポリマー(例えば、CARBOPOL(登録商標))との混合物、それぞれ約70℃~約101℃の範囲の温度での30秒間~2分間の熱処理による組成物中のタンパク質の凝集物などの薬剤の使用が挙げられる。アルブミンに対するペプシン処理(Fab)抗体での再活性化による凝集物;バクテリア細胞、例えばC.パルバム、グラム陰性菌の内毒素もしくはリポ多糖成分との混合物;生理学的に許容できる油性ビヒクル、例えばモノオレイン酸マンニド(Aracel A(商標))中のエマルジョン、または保護置換基として用いられる、ペルフルオロカーボン(FLUOSOL-DA(登録商標))の20%溶液によるエマルジョンもまた、アジュバント効果を生成するのに用いられてよい。典型的なアジュバントは、完全フロイントアジュバント(死菌のマイコバクテリウム・ツベルクローシスを含有)、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウムである。
【0099】
ヒトへの投与の場合、種々の適切なアジュバントが、熟練の研究者に明白であろう。これらは、例えば、アジュバントとしてのアラム-MPL、または同等の配合剤、認可されたHPVワクチンCERVARIX(登録商標)中で用いられるASO4、AS03、AS02、MF59、Montanide、GPI-0100などのサポニンを基剤とするアジュバント、CpGを基剤とするアジュバント、またはイモキモドを含む。が本発明の実施形態において、アジュバントは、VLPと単に混合されるよりむしろ、VLPに生理学的にカップリングされるか、またはVLPにカプセル化される。アジュバントに加えて、免疫応答を増強する生物学的応答調節物質(BRM)を同時投与することが、望ましい場合がある。BRMは、T細胞免疫性を上方制御すること、またはサプレッサ細胞活性を下方制御することが示されている。そのようなBRMとしては、シメチジン(CIM;1200mg/d)(Smith/Kline、米国ペンシルベニア州);または低用量シクロホスファミド(CYP;300mg/ml)(Johnson/Mead、米国ニュージャージー州)およびγ-インターフェロン、IL-2もしくはIL-12などのサイトカイン、またはB-7などの免疫ヘルパー機能に関与するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態において、これらの遺伝子は、対象への送達を容易にするためにVLPによりカプセル化される。
【0100】
有効成分としてポリペプチドまたはペプチド配列(複数可)を含有する組成物の調製は、当該技術分野で一般によく理解されている。典型的には、そのような組成物は、液体溶液もしくは懸濁液のどちらかとして注射液として調製されるが、注射に先立ち液体中の溶液または懸濁液に適した固体の形態が、調製される場合もある。調製物は、乳化されてもよい。免疫原性の有効成分は多くの場合、医薬的に許容でき有効成分と相溶性がある賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールエタノールなど、およびそれらの組み合わせである。加えて、所望なら、組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、またはワクチンの有効性を増強するアジュバントなどの補助的物質の量を含有してよい。具体的実施形態において、ワクチンは、物質の組み合わせと配合される。
【0101】
本発明のコンジュゲート型VLPを含む組成物は、対象へのインビボ投与に適した生物学的適合性形態である。医薬組成物は、医薬的に許容できる担体をさらに含む。用語「医薬的に許容できる」は、動物、より詳細にはヒトでの使用のために、連邦の規制当局もしくは州政府により認可されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認識された薬局方に列挙されていることを意味する。用語「担体」は、それと共にVLPが投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、非限定的にピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などを含む、石油、動物起源、植物起源または合成起源のものを含む、水および油などの滅菌液であり得る。医薬組成物が経口投与される場合、水が、担体であってよい。医薬的組成物が静脈内投与される場合、生理食塩水および水性デキストロースが、担体であってよい。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、注射用溶液のための液体担体として用いられてよい。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク(dried slim milk)、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。医薬組成物はまた、微量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。
【0102】
本発明のコンジュゲート型VLPを含む医薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性配合剤などの形態をとり得る。経口配合剤は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムほかの標準的担体を含んでよい。具体的実施形態において、医薬組成物は、患者への妥当な投与のための形態を提供するように、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量を、適切な量の医薬的に許容できる担体と共に含む。配合剤は、投与様式に適するべきである。
【0103】
本発明の医薬組成物は、非限定的に、静脈内、筋肉内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、窩内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、子宮頸内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内(intraosteal)、骨内(intraosseous)、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊椎内、滑液包内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、経口、非経口、皮下、膣、直腸、口腔、舌下、鼻内、イオン導入手段または経皮の手段を含む、任意の特有の投与経路により投与されてよい。最も適切な経路は、静脈内注射または経口投与である。特有の実施形態において、組成物は、標的エリアに、またはその付近に、例えば腫瘍内注射で投与される。
【0104】
水性溶液中での非経口投与では、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝されるべきであり、液体希釈剤が最初に、充分な生理食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特有の水性溶液は、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、および腹腔内投与に特に適する。この関連において、用いられ得る滅菌水性媒体は、本開示に照らせば当業者に理解されるであろう。例えば1つの投与量が、等張NaCl溶液に溶解され、皮下点滴療法液に添加され得るか、または提案された輸液部位に注射され得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 1990参照)。投与量の若干の変化が、対象の条件に応じて、必ず起こるであろう。投与の担当者は、任意の事象において、個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0105】
本発明のコンジュゲート型VLP含有組成物は、吸入により投与されてよい。特定の実施形態において、組成物は、エアロゾルとして投与され得る。本明細書で用いられる用語「エアロゾル」または「エアロゾル化組成物」は、気体中の固体または液体粒子の懸濁物を指す。この用語は一般に、固体または液体形態から懸濁固体または液体薬物粒子を含む吸入可能な形態に、蒸発、噴霧、または他の方法で変換された組成物を指すために用いられてよい。そのようなエアロゾルは、呼吸器系を介して組成物を送達するために用いられ得る。本明細書で用いられる用語「呼吸器系」は、酸素の吸い込みおよび二酸化炭素の吐き出しを担う体内の臓器系を指す。この系は一般に、鼻から肺胞までの空気通路の全てを含む。哺乳動物において、それは肺、気管支、細気管支、気管、鼻腔、および横隔膜を含むと見なされる。本開示の目的では、呼吸器系への組成物の送達は、薬物が呼吸器系の空気通路の1つまたは複数へ、特に肺へ送達されることを示す。
【0106】
他の投与様式に適した追加的配合剤としては、坐剤(肛門または膣適用のため)、および幾つかの例では、経口配合剤が挙げられる。坐剤の場合、従来の結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコール(polyalkalene glycol)またはトリグリセリドを含んでよく、そのような坐剤は、約0.5%~約10%、好ましくは約1%~約2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成されてよい。経口配合剤は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性配合剤、または粉末の形態をとり、約10%~約95%の有効成分、好ましくは約25%~約70%の有効成分を含有する。
【0107】
コンジュゲート型VLP組成物は、中性のまたは塩の形態としてワクチンに配合されてよい。医薬的に許容できる塩としては、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基で形成される)、ならびに例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来してよい。
【0108】
本発明の医薬組成物はまた、追加のアジュバントの有効量を含み得る。本明細書で言及される通り、パピローマウイルスVLPは、アジュバント特性を有する。適切な追加的アジュバントとしては、フロイント完全または不完全、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、Pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、ジニトロフェノール、ならびにカルメット・ゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウム・パルム、および非毒性コレラ毒素などの潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
貯蔵および使用の通常条件下で、これらの調製物は、微生物の生育を予防する防腐剤を含有する。全ての例で、医薬形態は、滅菌性でなければならず、容易に注射され得る程度に流体でなければならない。それはまた、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、バクテリアおよび真菌などの微生物の混入作用から予防されなければならない。
【0110】
担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。妥当な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合は必要とされる粒子径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物作用の予防は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされ得る。多くの例で、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸ナトリウムおよびゼラチンの組成物中での使用によりもたらされ得る。
【0111】
滅菌注射溶液は、適切な溶媒中の必要量のコンジュゲート型VLPを先に列挙した様々な原材料と共に組み込むことにより調製され、必要に応じて、その後濾過滅菌される。一般的に分散物は、塩基性分散媒および先に列挙したものからの必要な他の原材料を含有する滅菌ビヒクルに種々の滅菌有効成分を組み込むことにより調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それらは、事前に濾過滅菌された溶液から活性成分と任意の追加的な所望の原材料との粉末を生じる。
【0112】
本発明の異なる態様は、コンジュゲート型VLPを含む組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の幾つかの実施形態において、CD8+ T細胞エピトープを含む標的ペプチドを含むコンジュゲート型VLPは、腫瘍を処置するため、またはそのような腫瘍の再発を予防するために患者に投与される。そのような組成物は一般に、医薬的に許容できる担体または水性媒体中に溶解または分散されるであろう。
【0113】
適切なVLPを提供する方法
様々な実施形態において、(1)患者における既存の免疫性を測定すること、および(2)必要とする患者の投与のために適切なコンジュゲート型VLPを選択すること、を含む、コンジュゲート型VLPを、それを必要とする患者に提供するための方法が、提供される。患者に投与する適切なコンジュゲート型VLPは、患者のT細胞プロファイルに依存するであろう。適切なコンジュゲート型VLPは、ベースラインのCD8+細胞の総数の少なくとも2倍であるT細胞応答を誘発できるものであろう。様々な実施形態において、適切なコンジュゲート型VLPは、ベースラインのCD8+の総数または総CD8+ CD69+ T細胞の2倍であるT細胞応答を誘発できるものであろう。目的は、患者のワクチン接種歴に基づき、または病原体への暴露前に、適切なコンジュゲート型VLPを選択することである。どのコンジュゲート型VLPが適切であるかを決定することは、(1)患者の問診;(2)患者の医療記録の再調査;および/または(3)患者のT細胞プロファイルを評定すること、を通して実現され得る。
【0114】
様々な実施形態において、1種より多くのリコールタンパク質が、腫瘍に向けられる免疫応答を誘発するのに適切であってよい。様々な実施形態において、どちらか一方のリコールタンパク質を担うコンジュゲート型VLPが、適切であろう。様々な実施形態において、1種より多くのリコールタンパク質が、発現され、VLPに結合される。様々な実施形態において、単一の融合タンパク質が、1種より多くのリコールタンパク質を含む。様々な実施形態において、異なるリコールタンパク質を含む複数の融合タンパク質が、VLPにコンジュゲートされるであろう。様々な実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるコンジュゲート型VLPの集団と、医薬的に許容できる賦形剤とを含む。様々な実施形態において、対象に投与されるコンジュゲート型VLPは、同一である。様々な実施形態において、異なるリコールタンパク質(複数可)を担うコンジュゲート型VLPが、対象に投与される。
【0115】
過去のワクチン接種に基づく選択。本発明の様々な実施形態において、適切なコンジュゲート型VLPを選択する方法が、それを必要とする対象に投与するために提供される。様々な実施形態において、これは、対象が所与の病原体、例えば寄生虫、バクテリア、またはウイルス、例えばはしかまたはポリオに対し能動的にワクチン接種されたことがあるかどうかを確認すること、およびその後、本明細書に開示されるコンジュゲート型VLPを選択し対象に投与すること、を含み、ここでリコールタンパク質のCD8+ T細胞エピトープは、それに対し対象が免疫付与された病原体由来である。様々な実施形態において、対象のワクチン接種歴は、対象の医療記録を再調査することにより得られる。様々な実施形態において、対象のワクチン接種歴は、対象に問診することにより得られる。
【0116】
過去の感染に基づく選択。様々な実施形態において、それを必要とする対象への投与のために適切なコンジュゲート型VLPを選択する方法は、対象が過去に所与の病原体、例えば寄生虫、バクテリア、またはウイルス、例えばはしかまたはポリオに感染したことがあり、かつ感染が解消されたかどうかを確認することを含む。様々な実施形態において、対象はその後、対象が過去に感染した上記病原体を含むリコールタンパク質を含む、コンジュゲート型VLPを投与される。
【0117】
対象の医療記録を再調査すること、または対象に問診することにより、対象が特有の病原体に感染したかどうかを確認してよい。特有のMHCクラスI分子に結合するCD8+ T細胞エピトープの非限定的例を、表1に表す。方法はまた、どのMHCクラスI決定基(複数可)を対象の細胞が発現するかを決定すること、およびその後、本発明のコンジュゲート型VLPを投与すること、を含んでよく、ここでリコールタンパク質のCD8+ T細胞エピトープは、対象のMHCクラスI決定基(複数可)と複合体を形成する、ワクチン中の病原体または対象に過去に感染した病原体の抗原成分のCD8+ T細胞エピトープである。
【0118】
T細胞応答を測定すること。様々な実施形態において、患者のT細胞プロファイルが、当該技術分野で公知の様々な技術を利用して、適切なコンジュゲート型VLPを選択するために評定される。その後、このプロファイルは、投与する適切なコンジュゲート型VLPを選択するために用いられる。そのような技術としては、インターフェロンγレベルを測定すること、Ag特異性CD8+ T細胞を単離するフローサイトメトリーを利用すること、および/または細胞障害性アッセイが挙げられる。インターフェロンγ(T細胞活性化のマーカ)を測定するための、単離されたT細胞の細胞内染色。あるいはインターフェロンγのための酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイが、実行されてよい。この技術は、患者のT細胞プロファイルのハイスループット評定を可能にする。この方法は、100,000~300,000細胞の中の1つを検出できる可能性がある。手短に述べると、特異的サイトカインのモノクローナル抗体を、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)付きマイクロプレート上にプレコートする。CD8+ T細胞を、樹状細胞および個々のペプチドと共にウェルにピペット注入し、マイクロプレートを、加湿された37℃のCOインキュベータ内に24~48時間の範囲の期間、配置する。インキュベーションの間、固定された抗体が、細胞から分泌されたサイトカインを結合する。洗浄の後、選択された分析物に特異的な検出抗体を、ウェルに添加する。洗浄に続いて、ストレプトアビジンにコンジュゲートされた酵素を添加し、基質を添加する。用いられる基質に従い有色の沈殿物が形成し、サイトカイン分泌部位にスポットが出現し、個々のスポットは単一の生成細胞を表す。
【0119】
様々な実施形態において、本明細書に記載される発明は、(1)患者/参加者からPBMCを収集すること(あらかじめワクチン接種された試料)、(2)抗IFN-γ抗体でコートすることによりELISPOTプレートを調製すること(1晩インキュベートする)、(3)PBMCを、該当するペプチドのプールの1つ、つまりT細胞応答を誘発すると予期されるものと共にインキュベートすること(1~2日間のインキュベーション)、(4)プレートを洗浄し、ビオチン化二次抗体を添加すること(2、3時間インキュベートすること)、(5)プレートを洗浄し、アビジンコンジュゲート型西洋ワサビペルオキシダーゼを添加し、インキュベートすること、(6)プレートを洗浄し、アミノエチルカルバゾール(AEC)を2、3分間添加すること、(7)反応を停止させること(水)、および(8)ELISPOTリーダで可視化すること、を含む、患者のT細胞プロファイルを評定することにより、適切なコンジュゲート型VLPを決定してそれを必要とする患者に投与する方法を提供する。開示される方法は、最大で100,000~300,000細胞の中の1つを検出し得る。抗原特異性T細胞の頻度の2倍増加が、シグナルと見なされるべきである。
【0120】
様々な実施形態において、T細胞増殖は、3H(トリチウム化)-チミジンにより測定され得る。そのような方法は、感受性があり、ハイスループットアッセイに用いられ得る。そのような技術はまた、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)およびKi64細胞内染色を含む。
【0121】
トロピズムに基づきリコールタンパク質を選択すること。いくつかのウイルスが特有の組織型へのトロピズムを示すことは、当該技術分野で知られている。例えば脳組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、JCウイルス、はしか、LCMウイルス、アルボウイルスおよび狂犬病が挙げられるが、これらに限定されず;目の組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;鼻の組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび呼吸器多核体ウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;口の組織、例えば口腔粘膜、歯肉、唾液腺、咽頭へのトロピズムを示すウイルスとしては、単純ヘルペスウイルスI型およびII型、ムンプスウイルス、エプスタイン・バーウイルスならびにサイトメガロウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;肺組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、インフルエンザA型およびB型ウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、ならびにSARSコロナウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;神経組織、例えば脊髄へのトロピズムを示すウイルスとしては、ポリオウイルスおよびHTLV-1が挙げられるが、これらに限定されず;心臓組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、コクサッキーBウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;肝臓組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、A、BおよびC型肝炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;胃腸組織、例えば胃および大腸および小腸へのトロピズムを示すウイルスとしては、アデノウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス、およびコロナウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;膵臓組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、コクサッキーBウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;皮膚組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス6、天然痘、伝染性軟属腫、パピローマウイルス、パルボウイルスB19、風疹、はしかおよびコクサッキーAウイルスが挙げられるが、これらに限定されず;生殖組織へのトロピズムを示すウイルスとしては、単純ヘルペスウイルス2型、パピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
様々な実施形態において、それを必要とする対象の癌を処置するための方法は、本発明のコンジュゲート型VLPを対象に投与することにより提供され、ここでリコールタンパク質は、癌の供給源である組織(「供給組織」)へのトロピズムを有する病原体のCD8+エピトープである。様々な実施形態において、適切なコンジュゲート型VLPは、腫瘍細胞の供給組織を最初に決定すること、ならびにその後、(1)それに対し患者が、存在するCD8+ T細胞を既に有し、かつ(2)腫瘍の供給組織へのトロピズム有する、リコールタンパク質を選択すること、により選択される。選択されたコンジュゲート型VLP(複数可)はその後、それを必要とする対象に投与される。
【0123】
様々な実施形態において、肺癌を処置するための方法は、対象が、肺細胞に感染する病原体、例えばインフルエンザウイルス、例えばインフルエンザA型またはB型ウイルスに対し能動的にワクチン接種したことがあるかどうかを決定すること、その後、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量を投与すること、を含み、ここでリコールタンパク質のCD8+ T細胞エピトープは、ワクチン中に含有される病原体の抗原決定基のものであり、T細胞エピトープは、対象のMHC分子クラスIと複合体を形成する。肺癌を処置するための本発明の方法の一態様において、対象が、肺細胞に感染する病原体、例えばインフルエンザウイルス、例えばインフルエンザA型またはB型ウイルスに感染したことがあるかどうかを決定すること、その後、本発明のコンジュゲート型VLPの有効量を投与すること、を含み、ここでリコールタンパク質のCD8+ T細胞エピトープは、その病原体のものであり、T細胞エピトープは、対象のMHCクラスI分子と複合体を形成する。
【0124】
本発明の一態様は、本発明のコンジュゲート型VLPを投与することにより、一般に頭頸部癌と称される癌群の一部である、口腔癌を処置するための方法であって、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、口腔組織へのトロピズムを有する病原体、例えばムンプスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルスまたは単純ヘルペスウイルス1型のものである。方法は、それを必要とする対象が、例えばムンプスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルスもしくは単純ヘルペスウイルス1型に対し能動的にワクチン接種したことがあるかどうか、またはそれらに感染したことがあるかどうかを決定すること、および対象が過去にワクチン接種されたこと、または感染されたことがあるならば、本発明のコンジュゲート型VLPを対象に投与することを含み、ここでリコールタンパク質のCD8+エピトープは、ムンプスウイルスもしくははしかウイルスのもの、または対象が受けたワクチンの抗原成分のもの、または過去に対象に感染した病原体、即ちムンプス、はしか、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルスもしくは単純ヘルペスウイルス1型の抗原成分のものである。
【0125】
併用療法
様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、他の癌治療薬と共投与されてよい。さらに、幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたコンジュゲート型VLPは、他の癌処置療法、例えば放射線療法、化学療法、手術、および/または免疫療法と併せて投与される。本発明の幾つかの態様において、本明細書に記載されるコンジュゲート型VLPは、チェックポイント阻害剤と併せて投与される。様々な実施形態において、キメラVLPは、免疫アゴニストと併せて投与されてよい。様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、治療性ワクチンでの処置と併せて投与されてよい。様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、T細胞(CAR-T細胞)を発現するコンジュゲート型抗原受容体での処置と併せて投与されてよい。様々な実施形態において、コンジュゲート型VLPは、別の癌免疫製品での処置と併せて投与されてよい。本発明のコンジュゲート型VLPおよび他の治療もしくは治療薬は、同じまたは異なる投与経路により同時に、または連続で投与され得る。本発明の方法における使用のための治療薬(複数可)の同一性および量の決定は、当業者に知られる標準的技術を利用して、当業者により容易に行われ得る。
【0126】
実施例
実施例1
コンジュゲート型VLPはインビボでマウス腫瘍に結合する
腫瘍に結合する、記載されたコンジュゲート型VLPの能力は、提案された作用機序の重要な第一ステップである(図1参照)。インビボでのVLPの結合を、ネズミ子宮頸癌モデルTC-1を利用して評定した。手短に述べると、非コンジュゲート型VLPを、Expi293F(商標)ヒト細胞(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム所在)において、Expi293F(商標)Expression Systemを用いて生成する。このプロトコルでは、培地120mL中の360×10細胞を、250mL振とうフラスコ中で調製する。これに続いて、HPV16 L1 VLPを発現させるために、細胞を、HPV16 L1遺伝子発現ベクター(Cat#89910、Addgene、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ所在)で、製造業者(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム所在)のプロトコルを介してトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、72時間保持し、その後、回収した。HPV粒子を、洗浄剤溶解によりExpi293F細胞から放出し、溶解物を、薄い洗浄剤、例えばBrij58またはTriton X-100と37℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートされた溶解物からのVLPをその後、塩化ナトリウムの添加により可溶化した。溶解物をその後、低速遠心分離により透明にした。カプシドを、高塩抽出と、その後の、製造業者の使用説明(Sigma-Aldrich、米国ミシガン州セントルイス所在)に従うOPTIPREP(商標)(ヨージキサノール)ステップグラジエントを通した超遠心分離により、細胞片および洗浄剤から分離した。VLP調製物の純度を、製造業者のプロトコル(Biorad Laboratories、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)に従い染色したSDS-PAGE Coomassie染色ゲル(4~20%CRITERION(商標)ゲル)により決定し、粒子の形態学を、電子顕微鏡測定(EM)により評定した。(WO2018/237115も参照)。
【0127】
他の場所で報告されたHPV16 L1野生型タンパク質配列は、以下の通りである(SEQ ID NO:86):
【化1】
【0128】
機能性アッセイのために、生きているC57BL/6マウス(n=5、The Jackson Laboratory、米国マサチューセッツ州バーハーバー所在)に、ルシフェラーゼ/緑色蛍光タンパク質(GFP)発現TC-1腫瘍細胞(2×10細胞)を皮下注射した。マウスを、腫瘍の成長の一貫性を確認するため、および触知可能な腫瘍が観察されるまで(約7mm径)、およそ2週間モニタリングした。(図2A参照)。マウス3匹に、VLP50μgを静脈内注射した。マウス2匹を、非処置対照とした。VLP注射後16~24時間後に、マウス全5匹を殺処分し、腫瘍を摘出した。腫瘍をその後、コラゲナーゼで消化した後、第一にVLPに特異的なHPV16抗V5抗マウス抗体(Abcam、米国カリフォルニア州ベーリンゲーム所在)で、蛍光活性化セルソーティング(FACs)染色緩衝液(1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS))中にて4℃で1:100の希釈で処置した。1時間後に、細胞を次いで、FACs染色緩衝液で2回洗浄して、VLPに特異的なヤギフィコエリトリン(PE)コンジュゲート型抗マウス抗体(R&D systems、米国ミネソタ州ミネアポリス所在)により4℃で1:100の希釈でさらに1時間染色した。細胞をその後、再度FACs染色緩衝液で2回洗浄した後、蛍光活性化セルソーティング(FACS)サイトメトリーにより分析し、(1)第一に、腫瘍細胞のみについて選別するためにGFPでゲーティングし、(2)第二に、選別された腫瘍細胞をVLPの存在について評定した。(図2B参照。右のパネルおよび左のパネルは、それぞれ異なるマウスから作成されたデータである)。図2Bは、左および右の両パネルのヒストグラムプロットでの右側へのシフトにより示された通り、コンジュゲート型VLPが腫瘍に結合できたことを実証する。
【0129】
実施例2
コンジュゲート型VLPはインビトロでヒト腫瘍に結合する
インビトロでヒト腫瘍に結合するコンジュゲート型VLPの能力をテストするために、5種のヒト腫瘍細胞株:OVCAR3、MDA-MB231、HCT116、PC-3、およびSKOV3(ATCC、米国バージニア州マナサス所在)を評定する。それぞれの細胞株を最初に、6ウェルプレート内の1つのウェルに播種する。16~24時間後に、細胞を、0.05%トリプシンを用いて溶解する。細胞をその後、カウントして、1×10細胞にし、遠心分離し、上清を除去した後、FACS緩衝液(PBS中の1%FBS)100μLに再懸濁する。次に0.3μg/mlのコンジュゲート型VLPを、インビトロでそれぞれの培養物に添加して、培養物を、最適生育条件下で24時間インキュベートする。結合がHSPG特異性であることを示すために、コンジュゲート型VLPを、ヘパリン(最終濃度0.1mg/ml)を含んでまたは含まずにプレインキュベートし、4℃で(エンドサイトーシスを予防するため)1時間インキュベートする。結合の1時間後に、細胞を、FACS緩衝液1mLで2回洗浄した後、再度FACS緩衝液100μLに再懸濁する。試料をその後、VLPに特異的なPEコンジュゲート型抗マウス抗体と4℃で1時間インキュベートする。1時間後に、細胞を、洗浄し、フローサイトメトリーによる分析のためFACS緩衝液に再懸濁する。結合をその後、実施例1ならびに図2Aおよび2Bでのように、ヒストグラムプロットで右側へのシフトにより示される通り、総PE+細胞または幾何平均蛍光発光のどちらかに対する陽性率%として評定する。
【0130】
実施例3
コンジュゲート型VLPはインビボでヒト腫瘍に結合する
記載されたコンジュゲート型VLPをさらに、インビボでヒト腫瘍に結合するそれらの能力を評定するためにテストする。最初の実験では、マウスにヒト卵巣癌細胞株OVCAR3腫瘍細胞(3×10細胞)を注射する。注射後およそ2週間目に、平均腫瘍体積はおよそ10mm体積であると予期される。注射後3週間目に、腫瘍担持マウスにCu2+またはZn2+放射線標識VLPを投与する。VLPの生体分布および腫瘍特異性を、4、12、24、および48時間目に評定する。腫瘍をその後、計量、放射能計数、ウイル微小分布および細胞共局在解析のために取り出す。腫瘍に加え、肝臓、脾臓、腎臓などの様々な主要臓器を、イメージング法を利用してVLPの存在について、および腫瘍へのVLPホーミングの有効性を評定するための組織学的検査について評定する。さらなる実験では、マウスにHCT116、PC-3、またはSKOV3などの他の腫瘍細胞株を、同じ実験プロトコルに従って注射する。
【0131】
実施例4
時間依存的様式でのインビトロでの腫瘍細胞のVLP誘導T細胞介在性殺傷
エピトープを腫瘍細胞表面のMHCタンパク質に送達し、次に存在するT細胞を対象腫瘍細胞にリダイレクトして腫瘍細胞の細胞障害性殺傷を導く、コンジュゲート型VLPの能力を、インビトロでテストした。本発明者らは、ネズミ腫瘍モデルがより臨床的に関連性があるので、このモデルにおいてヒトパピローマウイルスHPV16 E7抗原への既存のネズミ記憶応答を利用して概念実証での有効性を実証することを選択した。HPV16 E7は、オボアルブミン(OVA)などの多く用いられる人工抗原に反して、真のヒトウイルス抗原である。複数の異なるE7抗原特異性CD8+ T細胞が、異なるHLA-I(MHC-I)遺伝子を有する健常ヒトドナーの末梢血中に見出されることは、知られている。それゆえ、E7の使用は、関連性があり、非ウイルス関連性悪性疾患(腫瘍)を標的とする既存のCD8 T細胞応答のリダイレクションを示す概念実証を提供し、かつこの系を他のヒトウイルス抗原に拡張するための堅実な基盤(solid base)として作用する。
【0132】
VLPのコンジュゲーション。コンジュゲート型VLPを生成するために、リコールタンパク質を、N末端にマレイミド分子、続いてプロテアーゼ切断部位を含み、CD8+リコールエピトープで終結する、即ちN末端マレイミド-RRRRRVKR-エピトープ(Genscript、米国ニュージャージー州所在)を含むポリカチオン性18量体~20量体ペプチドとして、85%より大きな純度になるように合成した。試料を、凍結乾燥材料として届け、ジメチルスルホキシド(DMSO)で1~20mMの濃度に希釈した。コンジュゲート型VLPを、以下のプロトコルを介して、コンジュゲーションのために調製した。最初に、少なくとも1mg/mLの濃度のVLPを、コンジュゲーション反応緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、pH6.5、500mM NaCl、2mM EDTA、0.05%Tween80)で、緩衝液を3回交換しながら(2~8℃で3+1h、3+1h、および一晩16+3h)透析した。翌日に、VLPを次いで、10:1モル比のTCEP:L1(モノマー)比で、L1モノマー濃度を0.77mg/mLとして、室温で振とうせずに1時間、TCEPで処置した。続いて、コンジュゲーションを、ペプチド:L1モノマーモル比5:1で18~20量体ペプチドを添加し、L1モノマーの最終濃度を0.58mg/mLにすることにより、実施した。反応物を、200rpmで1時間振とうした。コンジュゲーションに続いて、反応の内容物を、透析カセット(MWCO=1000kDa)を用いて冷温(2~8℃)で約3+1時間、透析に供した(PBS、pH7.0+0.1、500mM NaCl、0.05%Tween80)。次に、内容物を、40,000rpmおよび16℃で16時間、密度勾配超遠心分離(UC)OPTIPREP(商標)勾配(DPBS、0.8M NaCl中)に供した。33~39%の間のOPTIPREP(商標)の界面から開始して画分(1~3)を収集し、その後、低温室で3+1、3+1および16+3時間、最終的な透析(MWCO=1000kDa)に供した。精製に続いて、試料を、ゲル電気泳動/Coomassie染色により分析して、約55kDaを超えるL1バンドのシフトを通してコンジュゲーション率%を決定した。
【0133】
コンジュゲート型VLPの定量。生成物の濃度および融合タンパク質のコンジュゲーション率%を、還元SDS-PAGE(4~20% CRITERION(商標) TGX Stain-Free(商標) Precast Gels、18 Well Comb、30μL、1.0mm、Bio-Rad、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)により決定した。加えて、5μg~2.5μgの間の量の非コンジュゲート型VLP対照および5種の既知BSA標準(Sigma Life Science、米国ミズーリ州セントルイス所在)を、対照として常に含む。ゲルを、製造業者のプロトコルに従い泳動し、その後、続いて製造業者のプロトコルに従いCoomassieゲル染色(Coomassie Brilliant Blue R-250 dye、Bio-Rad、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)に供した。コンジュゲーション量および/または率%を、製造業者のプロトコルに従いBioRadソフトウエア画像解析を利用してデンシトメトリー解析により決定した。
【0134】
ペプチドの設計。ペプチドを、上記の通りN-末端マレイミドRRRRRVKR-エピトープを含むように設計する。それゆえペプチドは、リコールタンパク質のN末端のマレイミド分子を、続いてリコールタンパク質配列の上流にフリン切断配列RXR/KR(SEQ ID NO:89)を含む。例示的なフリン切断配列:ARG VAL LYS ARG(SEQ ID NO:90)。
【0135】
機能性アッセイでは、ルシフェラーゼ遺伝子(B16-lucおよびID8-luc)を過剰発現するネズミB16(黒色腫/皮膚)およびID8(卵巣)腫瘍細胞を、培養で生育した。正常環境下では、これらの2種のネズミ腫瘍細胞株B16およびID8は、これらの細胞系がHPV16 E7抗原を発現しないため、ネズミHPV16 E7特異性CD8+ T細胞により殺傷されないであろう。細胞を、培養により生育し、一晩播種した。翌日に、細胞を次いで(1)3種の異なる濃度のHPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)(1μg/ml、100pg/ml、1pg/mL)、(2)HPV16 E7-コンジュゲート型VLP(2.5μg/mL)、(3)非コンジュゲート型(対照)VLP(2.5μg/mL)、で処置するか、または(4)非処置のままにした。細胞をその後、洗浄し、様々なE:T比(エフェクタ:標的比)でネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共培養した。共培養後の総最終容量は、200μLであった。細胞生存能力を、これらの細胞がルシフェラーゼを過剰発現するため細胞生存能力の代用マーカとして用いられるルシフェラーゼの発現を測定することにより、共培養の特定時間後に測定した。低減したルシフェラーゼ活性は、より多くの細胞死を示し、より大きな免疫リダイレクション、つまりより大きな細胞障害性を示唆した。
【0136】
HPV16 E7コンジュゲート型VLPおよびHPV16 E7ペプチドへの応答は、両方の癌細胞株において時間依存性および濃度依存性であった。共培養の5.5時間後に、E7ペプチドのみ(1μg/mL)およびコンジュゲート型VLP(2.5μg/mL)の両方は、B16-lucにおける有意なレベルのT細胞介在性細胞障害性を実証した。(図3A、B16-LUCおよび図3C、ID8を参照)。追加の細胞障害性が、共培養を8.5時間行った場合に観察され、細胞障害のレベルはE:T比10でB16-LUC細胞(図4B)ではおよそ50%であり、ID8-LUC細胞(図4D)ではおよそ38~58%であった。同様に、図4は、より長い時間22.5時間で実現された類似の結果を示す。具体的に、図4Aおよび4Bは、B16-LUC細胞およびネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞とインキュベートされたE7コンジュゲート型VLPで、細胞障害性がそれぞれ8.5時間~22.5時間の間で改善されることを示す。同様に、図4Cおよび4Dは、ID8細胞およびネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞とインキュベートされたE7コンジュゲート型VLPで、細胞障害性が8.5時間~22.5時間の間で改善されることを示す。
【0137】
これらの結果は、より高濃度(1μg/mL)でのE7ペプチドおよびE7コンジュゲート型VLPが、時間依存性の腫瘍細胞殺傷を呈することを示唆する。これはさらに、E7コンジュゲート型VLPが腫瘍細胞殺傷を実現するために腫瘍細胞上のMHC受容体のフリン切断およびエピトープコーティングを受けることを示唆する。
【0138】
実施例5
濃度依存的様式での腫瘍細胞のVLP誘導E7 T細胞介在性殺傷
E7 T細胞介在性殺傷は、E7コンジュゲート型VLP濃度依存性であることも示された。ルシフェラーゼ遺伝子(B16-lucおよびID8-luc)を過剰発現するネズミB16(黒色腫/皮膚)およびID8(卵巣)腫瘍細胞を、播種した。24時間後に、細胞を次いで、(1)HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)(1μg/ml、1ng/ml)、(2)HPV16 E7-コンジュゲート型VLP(2.5μg/mL、0.025μg/ml)、(3)非コンジュゲート型(対照、2.5μg/mL)VLPで処置するか、または(4)非処置のままにした。細胞をその後、洗浄し、様々なE:T比(エフェクタ:標的比)でCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共培養した。共培養後の総最終容量は、200μLであった。細胞生存能力を、これらの細胞がルシフェラーゼを過剰発現するため細胞生存能力の代用マーカとして用いられるルシフェラーゼの発現を測定することにより、共培養の特定時間後に測定した。低減したルシフェラーゼ活性は、より大きな免疫リダイレクション、つまりより大きな細胞障害性を示した。
【0139】
HPV16 E7コンジュゲート型VLPおよびHPV16 E7ペプチドへの応答は、両方の癌細胞株において濃度依存性であった。E7ペプチドのみ(1μg/mL)およびVLPにコンジュゲートされたE7(2.5μg/mL)両方は、両方の細胞株における顕著なレベルのT細胞介在性細胞障害を実証した。(図3Aおよび3BのB16-LUC、ならびに図3Cおよび3DのID8参照)。図3は特に、1pg/mLのE7ペプチド単独は、タイムポイントにかかわらず、腫瘍細胞殺傷をたとえあったとしても極わずかしか呈さず、一方で100pg/mLおよび1μg/mLのE7ペプチドは、タイムポイントにかかわらず、有意な腫瘍細胞障害性を呈したことを示す。同様に、細胞障害性の濃度依存性が、図4のE7コンジュゲート型VLPで観察された。(図4Aおよび4BのB16-LUC、ならびに図4Cおよび4DのID8参照)。図4では、細胞障害性の顕著な上昇が、タイムポイント(8.5時間または22.5時間)にかかわらず両方の細胞株で、2.5μg/mLのコンジュゲート型VLP対0.025μg/mLコンジュゲート型VLPの間で観察された。こうして、図3および4は、細胞障害性が、B16-LUC細胞およびネズミCD8+HPV16 E7特異性T細胞とインキュベートされたE7ペプチドおよびE7コンジュゲート型VLPの両方について、濃度が上昇するにつれて改善されることを示す。
【0140】
実施例6
VLP調製物のバッチ一貫性。免疫リダイレクションを実施し得るコンジュゲート型VLPを作製する記載された工程が確実に一貫するように、「F1、F2、およびF3」と称するE7ペプチドコンジュゲート型VLPの複数の別個に作製されたバッチを、検査した。ルシフェラーゼ遺伝子(B16-lucおよびID8-luc)を過剰発現するネズミB16(黒色腫/皮膚)およびID8(卵巣)腫瘍細胞を、播種した。24時間後に、細胞を、(1)HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)(1μg/ml)、(2)HPV16 E7-コンジュゲート型VLPバッチF1、F2、およびF3(2.5μg/mL)、(3)非コンジュゲート型(対照、2.5μg/mL)VLPインキュベートするか、または(4)非処置のままにした。全てのバッチF1~F3は、一貫しており、E7 T細胞を活性化でき、かつ2つの別の実験でそれぞれ23または23.5時間後にB16-lucおよびID8-luc細胞の殺傷を示した。(B16-luc細胞についてはそれぞれ図5Aおよび5B、ID8-luc細胞についてはそれぞれ図5Cおよび5Dを参照)。
【0141】
別の腫瘍細胞株MC38ネズミ結腸腫瘍株におけるバッチ一貫性をさらに実証するために、細胞を、製造業者に示唆された条件に従い培養で生育させた。通常の環境下では、MC38細胞株がネズミE7抗原を発現しないため、この細胞株は、ネズミHPV16 E7特異性T細胞により殺傷されないであろう。MC38細胞をその後、(1)E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)(1μg/ml)、(2)バッチF1、F2、およびF3のHPV16 E7-コンジュゲート型VLP(2.5μg/mL)、(3)非コンジュゲート型(対照、2.5μg/mL)VLPで処置するか、または(4)非処置のままにした。細胞をその後、洗浄し、様々なE:T比(エフェクタ:標的比)でCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共培養した。共培養後の総最終容量は、200μLであった。細胞生存能力を、共培養の特定時間の後に測定した。この実施例では、MC38はルシフェラーゼを発現しないため、細胞生存能力を、確立された細胞生存能力アッセイ試薬:CELLTITER-GLO(登録商標)(PROMEGA、米国ウィスコンシン州所在)を用いて測定した。このアッセイは、細胞生存能力のマーカであるATPを検出しそれに結合する、ルシフェラーゼ発現化学プローブを提供する。このため低減されたルシフェラーゼ活性は、より多くのMC38細胞死を示し、より大きな免疫リダイレクション、つまりより大きな細胞障害性を示唆する。全てのバッチF1~F3は、それらの機能性活性において一貫しており、E7 T細胞を活性化でき、2つの別の実験でそれぞれ23および23.5時間後にMC38細胞の殺傷を示した。(それぞれ図6Aおよび6B参照)。
【0142】
実施例7
E7コンジュゲート型VLPによるC57BL/6マウスにおけるインビボ抗腫瘍免疫リダイレクション
HPV16 E7-コンジュゲート型VLP(ネズミMHC制限H-2D HPV16 E7ペプチドにコンジュゲートされたコンジュゲート型VLP)の有効性を、インビボで評定した。合計20匹のC57BL/6マウスに、ID8-ルシフェラーゼ細胞(0.015×10細胞/マウス)を腹腔内(I.P.)注射した。6日目に、マウスを、ルシフェラーゼ発光イメージングを介して腫瘍成長および定着についてチェックした。(IVIS(登録商標) Spectrum in vivo imaging system、Perkin Elmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム所在)。5日目に、マウスを、処置群に分離し、その後、(1)緩衝液のみ、(2)非コンジュゲート型VLP(100μg)、(3)ネズミCD8+ HPV16 E7特異性T細胞+E7ペプチドコンジュゲート型VLP(n=5、100μg)、および(4)E7ペプチドのみ(30μg、n=5)で処置する。1時間後に、全てのマウスにおよそ1×10の4日目の刺激後CD8+ HPV16 E7特異性T細胞(200μL/マウス)を注射した。6日目および7日目に、各マウスで2度目の処置を施したが、追加の刺激後T細胞は添加されなかった。マウスをその後、モニタリングし、イメージングする。処置の有効性を、腫瘍成長および転移の代用物として作用する発光イメージングによりモニタリングする。
【0143】
結果は、図7に提供され、E7コンジュゲート型VLP治療が処置60日目後であってもE7特異性T細胞をID8ネズミ腫瘍にリダイレクトして腫瘍形成を制御できたことを示す。(図7Aおよび図7D)。対照的に、非コンジュゲート型VLP(図7C)または緩衝液のみ(図7B)などの対照は、なんらかの腫瘍防御または制御を示すことができなかった。若干の防御が、ペプチドのみにより与えられたが(図7E)、ペプチドのみに対比してE7コンジュゲート型VLPでのペプチドの全死亡率がペプチドのみに比較して低かったことを詳述することが重要である。さらに、ペプチドは、不完全な防御を提供し、VLPの腫瘍特異性標的化が外因性ペプチドのみの注射に比較して重要であることを示唆する。
【0144】
実施例8
E7コンジュゲート型VLPによるB16.F10マウスにおけるインビボ抗腫瘍免疫リダイレクション
HPV16 E7 VLPの有効性を、別のネズミ腫瘍モデル(B16.F10、ATCC、米国バージニア州オールドタウン・マナサス(Old Town Manassas)所在)で評定した。腫瘍が腹腔内で生育されるID8卵巣ネズミモデルとは異なり、B16.F10マウス腫瘍モデルは、皮下の腫瘍モデルである。この実験では、20匹のマウスに最初、HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)をワクチン接種した。2週間後に、マウスがHPV16 E7四量体(H-2D/HPV16 E7(RAHYNIVTF)(SEQ ID NO:1)MHC四量体染色)を介するHPV16 E7ペプチドに特異的な免疫応答を有することを検証した。手短に述べると、全血(2~3滴)を、マウスの尾静脈から収集し、抗原特異性CD8 T細胞応答についてE7四量体(H-2D/HPV16 E7(RAHYNIVTF)(SEQ ID NO:1)MHC四量体染色、MBL International、米国マサチューセッツ州ウーバーン所在)を用いるフローサイトメトリーによりチェックした。その後、マウスの大腿部左脇にB16.F10ルシフェラーゼ細胞(0.5×10細胞/マウス)を皮下注射した。腫瘍成長体積を、バーニアキャリパーを用いて測定し、体積を、式(W×L)/2(式中、W(幅)は、2つの直交する尺度の短い方であり、L(長さ)は、2つのうちの長い方である)を利用して計算した。マウスを、触知可能な腫瘍(約7mm径)が観察されるまで、2日ごとにモニタリングした。次にマウスを、以下の通り様々な処置群に分割した:(1)緩衝液のみ(n=5);(2)非コンジュゲート型VLP(「対象」VLP)(n=5);(3)E7-コンジュゲート型VLP(n=5);および(4)ペプチドのみ。全ての処置群は、用量あたり5μgの指示された成分を受けた。全部で4種の処置を、1日おきに、マウスに投与した。マウスをその後、モニタリングして、腫瘍体積を評定した。処置の有効性を、腫瘍体積の成長および生存率を介してモニタリングし、エンドポイント生存率は、腫瘍成長体積が1500mmに達した時である。結果は、腫瘍成長効果の遅延が、対照VLP、E7コンジュゲート型VLPおよびE7ペプチド群で観察されたことを示す。(図8Aおよび図8B参照)。しかし、最終的に全ての腫瘍が、1500mmのエンドポイントサイズに達した。(図8A)。全ての対照マウスは、17日目までに生存エンドポイントに達した(図8B)。処置マウスは、19~22日目まで生存した。E7コンジュゲート型VLP処置群からのマウス1匹は、全ての腫瘍を完全に退縮させ、80日より長い間腫瘍のない状態であった(図8B参照)。
【0145】
特異的ウイルスメモリーT細胞の重要性、およびそれらの存在率上昇が改善された治療転帰をもたらすかどうかをさらにテストするために、マウスをまた、「高」および「低」T細胞頻度の群に分離し(説明については以下を参照)、即ち、PBMC中により高頻度の末梢HPV16 E7 T細胞を有したそれらのマウスを、それを有しないマウスと対比した。マウスを最初に、HPV16 E7ペプチドRAHYNIVTF(SEQ ID NO:1)でワクチン接種して、抗ウイルス免疫記憶応答を生成させた。ワクチン接種マウスを、およそ6週間、単独で放置して、HPV16 E7に対する免疫記憶を確立した。免疫原性をチェックするために、マウスを「高」および「低」T細胞頻度に分離した。手短に述べると、全血(2~3滴)を、マウスの尾静脈から収集し、抗原特異性CD8 T細胞応答についてE7四量体(H-2D/HPV16 E7(RAHYNIVTF)(SEQ ID NO:1)MHC四量体染色、MBL International、米国マサチューセッツ州ウーバーン所在)を用いるフローサイトメトリーによりチェックした。HPV16 E7四量体特異性T細胞応答の頻度は、1~50%の間であった。1~14%の間の範囲であるT細胞頻度を有したマウスを、「低」と見なし、15%~50%の間の範囲であるT細胞頻度を有したマウスを、「高」と見なした。その後、全てのマウスの大腿部左脇に、B16.F10黒色腫細胞(0.5×10細胞/マウス)を皮下注射した。腫瘍成長体積を、バーニアキャリパーを用いて測定し、体積を、式(W×L)/2(式中、W(幅)は、2つの直交する尺度の短い方であり、L(長さ)は、2つのうちの長い方である)を利用して計算した。腫瘍体積を、E7コンジュゲート型VLPまたは対照VLP(非コンジュゲート型VLP)での処置を開始する前に、50~100mmに到達させた。
【0146】
結果は、図8Cおよび図8Dに表され、腫瘍成長効果の遅延が、E7コンジュゲート型VLPで処置されたマウスで観察されたが、VLPのみで処置された対照群では観察されなかったことを示す。(図8C参照)。しかし、最終的に全ての腫瘍が、32日目までに1500mmのエンドポイントに達した。(図8D)。全ての対照マウスは、17日目までに生存エンドポイントに達した(図8B参照)。処置マウスは、「低」T細胞頻度のマウスでは24日目まで、または「高」T細胞頻度のマウスでは32日目まで生存した。(図8D)。処置の非存在下では、高頻度のまたは低頻度のE7特異性メモリーT細胞を有したマウスの間で、B16.F10腫瘍成長における差異はなかった。(図8C)。対照的に、処置群の腫瘍成長は、腫瘍成長がより良好に制御されたため、より高いE7 T頻度を有するマウスがE7コンジュゲート型VLP処置に対しより良好に応答したことを示唆するようであった。(図8D)。しかし、データのさらなる研究は、個々のマウスが精査された場合明白な傾向を明らかにしなかった。これは、全てのマウスが50~100mmの間の腫瘍を有したら処置が施されたため、「可変的な」腫瘍サイズによる可能性がある。一般に、より小さな腫瘍を有する(50mmに近い)マウスがコンジュゲート型VLP処置により良好に応答することが観察されたが、これはより高い既存のT細胞PBMC頻度に必ずしも相関しなかった。これは、免疫リダイレクション効果が、他の潜在的E7特異性T細胞、即ち組織常在性メモリーT細胞による可能性がある。それにもかかわらず、これらのデータは、免疫リダイレクションが、チェックポイント難治性であることが知られる困難なB16.F10マウスモデルであっても可能であることを示唆する。
【0147】
実施例9
インビトロでのマウス腫瘍細胞上のMHC-I受容体へのVLPペプチドローディングの検出
コンジュゲート型VLPから腫瘍細胞上のMHC-I受容体へのペプチドローディングを直接検出するアッセイシステムを、開発した。このアッセイは、OVA-コンジュゲート型VLP(「OVA-VAL」)と、OVA(SINFEKL)/K(SEQ ID NO:2)複合体を特異的に認識する抗体(フルオロフォアコンジュゲート型抗OVA(SINFEKL)/K(SEQ ID NO:2)抗体、MBL International、米国マサチューセッツ州ウーバーン所在)の使用を伴うが、任意の他のペプチド/MHC-I複合体の使用は伴わない。
【0148】
この目的に向けて、標的細胞(B16-LUC、ID8-LUC、およびMC38)を、96ウェルプレートに0.02×10細胞/ウェルで配置した。翌日に、OVAコンジュゲート型VLP(2.5μg/ml)を、標的腫瘍細胞と37℃で1時間インキュベートし、続いて大規模洗浄を行って全ての未結合材料を除去した。次に、フルオロフォアコンジュゲート型抗OVA(SINFEKL)/K(SEQ ID NO:2)抗体を、1:100(総容量100μL、即ち1μL)の希釈で4℃で30分間細胞に直接添加した。このインキュベーションに続いて、過剰の抗体を洗い流し、細胞を、FACSフローサイトメトリーによりOVA(SINFEKL)/K(SEQ ID NO:2)複合体の存在について解析した。予測通り、OVA(SINFEKL)/K(SEQ ID NO:2)複合体が、OVA-コンジュゲート型VLPとのインキュベーション後に、3種の異なるマウス腫瘍細胞中で検出された。(図9参照)。
【0149】
図9Aは、ID8-LUC(上のパネル)、B16-LUC(中央のパネル)、およびMC38(下のパネル)細胞とOVAペプチドのみまたはOVA-コンジュゲート型VLPとのインキュベーションから得られたFACSデータを示す。これは、OVA-コンジュゲート型VLPがこれらの腫瘍細胞に結合し、それらのペプチドが切断され、次に切断されたペプチドが腫瘍MHC-I分子に結合したことを示す。それゆえ、VLPの設計は、意図した機能を実施することが検証され、即ちこのエピトープペプチドは、フリンにより切断され、ペプチドは、腫瘍細胞表面のMHC I分子により結合される。これらの知見は、OVA以外の他のウイルスペプチドに適用可能のはずである。差別的なOVA(SINFEKL)/K(SEQ ID NO:2)複合体がネズミ腫瘍全体で検出されたことに言及することも重要であり、さらなる研究は、ローディングが腫瘍表面の表面MHCクラスIの利用可能性に依存し得ることを示唆する。(図示しない)。図9Bは、MHC-I複合体に特異的なH2-D抗体(PE抗マウスH-2D b抗体、抗H-2D、Biolegend、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在)の結合により染色された、同じ細胞、ID8-LUC(上のパネル)、B16-LUC(中央のパネル)、およびMC38(下のパネル)を示す。
【0150】
実施例10
HCMV pp65抗原にコンジュゲートされたVLPを用いるヒト不死化腫瘍細胞株に対するヒトCD8+ T細胞ウイルス免疫性のリダイレクション
他の抗原またはエピトープを用いて免疫リダイレクションを惹起する、記載されたコンジュゲート型VLP系の能力を、免疫性をリダイレクトするヒトサイトメガロウイルス(HCMV)pp65抗原コンジュゲート型VLPの能力を検討することによりさらに調査した。コンジュゲート型VLPを、上に記載されるように作製した。HCMVを選択する理論的根拠は、HCMVが健常個体において高度に優勢であり(ヒト集団の50~90%に感染)かつ大部分が無症候性である、という知識に基づいた。(Longmate et al., Immunogenetics, 52(3-4): 165-73, 2001; Pardieck et al., F1000R.es, 7, 2018;およびvan den Berg et al., Med. Microbiol. Immunol, 208(3-4):365-373, 2019参照)。重要なことに、HCMVは、疾患を予防するために長期生存型細胞免疫性を必要とする生涯持続性感染を確立する。このため、高齢者のウイルス感染を強力に制御するために長年にわたり開発された複雑な細胞介在性抗ウイルス適応免疫が癌を処置するために再利用され、役立てられる可能性がある、と仮定するのが合理的である。
【0151】
インビトロ細胞障害性アッセイ。ヒト標的細胞、HTC112、ヒト結腸癌、MCF7、ヒト乳癌またはOVACAR3、ヒト卵巣癌(ATCC、米国バージニア州マナサス所在)を、96ウェルプレートに0.01~0.2×10/ウェル/100μLで一晩播種した。翌日(約20~22時間後)、各細胞系列を以下の条件下にて37℃で1時間インキュベートした:(1)最終濃度1μg/mLのCMVペプチド、(2)最終濃度2.5μg/mLの対照VLP(ペプチドなし)、(3)最終濃度2.5μg/mLのCMV-コンジュゲート型VLP、および最終濃度14pg/mLのCMVペプチド(2.5μg/mLのCMV-VLPにコンジュゲートされたペプチドと同等)。1時間後に、細胞を、培地200μLで3回、力強く洗浄して、非特異的結合を除去した。ヒト患者ドナーCMV T細胞(ASTARTE Biologies、米国ワシントン州シアトル所在)を、E:T(エフェクター細胞:標的細胞)比10:1で添加し、組織培養インキュベータで24時間インキュベートした。共培養後の最終的な総容量は、200μLであった。細胞生存応力を、共培養の特定時間後に測定した。この実験では、上記ヒト細胞がルシフェラーゼを発現しないため、細胞生存能力を、細胞生存能力アッセイ試薬:CELLTITER-GLO(登録商標)(PROMEGA、米国ウィスコンシン州所在)を用いて測定した。このアッセイは、細胞生存能力のマーカであるATPを検出しそれに結合するルシフェラーゼ発現化学プローブを提供する。こうしてルシフェラーゼ活性の低減は、より多くのヒト不死化細胞死を示し、より大きな免疫リダイレクション、つまりより大きな細胞障害性を示唆する。
【0152】
結果を図10に提供する。CMVコンジュゲート型VLPは、ヒト健常ドナーCMV pp65-特異性CD8+ T細胞(Astarte Biologies, Inc.米国ワシントン州ボセル所在)、不死化HLA.A2陽性ヒト結腸癌細胞(HCT116、図10A)、ヒト卵巣癌細胞(OVCAR3、図10B)およびヒト乳癌細胞(MCF7、図10C)を殺傷するのに効果的であった。マウスおよびヒト系の両方で、対照VLP、即ちペプチドコンジュゲーションなしは、標的細胞の殺傷を誘導せず、または腫瘍細胞単独とのCD8+ T細胞の共インキュベーションでも殺傷を誘導しなかった。ヒト細胞株を用いたこれらの一連のインビトロ研究では、1μg/mLのCMVペプチドは1060nMのペプチドに相当し、一方で2.5μg/mLのCMV-コンジュゲート型VLP中のVLP表面にコンジュゲートされたCMVペプチドと同等のモル数は約0.024nMであることが、決定された。こうして、腫瘍細胞を殺傷する同等のT細胞リダイレクションが、CMVペプチドのみのほぼ44,000分の1を利用したにもかかわらず、コンジュゲート型VLPにより惹起された。重要なことに、VLPにコンジュゲートされたCMV(pp65)ペプチドのみの0.024nMと同モルの濃度は14pg/mLであることが、決定された。細胞障害性が14pg/mLの遊離ペプチドのみでテストされた場合、腫瘍細胞の殺傷は、全ての3種のヒト標的細胞においてほとんど、または全く観察されなかった(図10C)。これは、免疫リダイレクションを容易にするために、腫瘍細胞への外因性遊離ペプチドローディングのみに比較してペプチドローディングを増強することにおける、コンジュゲート型VLPの能力を強調する。
【0153】
実施例11
VLPコンジュゲーション方法
2種のコンジュゲーションアプローチを、融合タンパク質:(1)野生型HPVワクチン(WT-VLP);および(2)コンジュゲート型HPVワクチン(WT-VLPに比較して単一L1モノマーあたり2つの追加的システイン残基を有し、それゆえRG1 VLP表面に720の余分なシステインを有するRG1 VLP)、へのVLPのコンジュゲーションのための候補としてテストした。各テストでは、VLPを最初に、室温で1時間のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)との反応により還元した。この還元ステップは、次のステップ、つまりVLPへのペプチドのマレイミドコンジュゲーションのためにVLP上の遊離システインを「放出する」ために必要とされた。還元と、リコールタンパク質の上流で直接合成されたマレイミド分子を利用するマレイミドコンジュゲーションとに利用されたプロトコルは、上記の通りであった。
【0154】
追加のRG1ペプチド配列挿入を有するRG1 VLP L1タンパク質配列は、以下の通りである(SEQ ID NO:87)
【化2】
【0155】
還元ステップがない場合、検出可能なコンジュゲーションは、ほとんど、または全く起こらない(図13のレーン3および図14のレーン5)。コンジュゲーションの効率を、SDS-PAGE(CRITERION(商標)ゲル、4~20%アクリルアミド、BioRad、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)上のVLPのCoomassie染色を実施してコンジュゲート型および非コンジュゲート型VLPの相対量を決定することにより決定する。(図11参照)。コンジュゲーションが起こらない場合、TCEP:RG1 VLP 1:1レーンに見られる通り単一バンドのみが存在するであろう。対照的に、TCEP:RG1比 3:1~10:1での複数のバンドは、コンジュゲーションが起こることを示し、それゆえ還元ステップの重要性も検証する。VLPがジスルフィド結合により保持され、こうしてTCEPの付加がVLPを損傷し得ることも知られているが、TCEP:RG1比 5:1および3:1は、TEM(透過電子顕微鏡測定)の下で無傷のコンジュゲート型VLPを示し、それにより粒子完全性に影響を及ぼさずにRG1コンジュゲーションに適するTCEP量を示す。(図12参照)。
【0156】
TCEP濃度がどのようにVLPへの融合タンパク質のカップリング効率を決定するかの関連性を、VLPに対する還元剤の追加的な比(74:1まで)でさらに検討した(図13参照)。RG1に対するTCEPの最高比(例えば、74:1)では、最大5か所のカップリング部位が、単一L1モノマーに存在する。対照的に、WT-VLPは、TCEPがどのような比でテストされたとしても、L1モノマーあたり1か所のみのカップリング部位を生じた。
【0157】
実施例12
ヒトコンジュゲート型VLPはインビトロおよびインビボで腫瘍細胞障害性を惹起する
既存の免疫リコール応答により容易に認識および排出され得る一般的な感染性ウイルス抗原ペプチドで腫瘍細胞を選択的にロードする能力は、様々なネズミモデルを用いてインビトロおよびインビボの両方で評価されるべきである。実施例1~11に見られる通り、HPV(ヒトパピローマウイルス)16型 E7抗原からのネズミMHC制限H-2DHPV16 E7ペプチドを用いて、HPV16 E7コンジュゲート型VLP(E7-VLP)を作製し、腫瘍細胞ID8(卵巣)、B16(黒色腫)、およびMC38(結腸)に特異的に結合することを示した。E7コンジュゲート型VLPからのE7ペプチドの切断は、腫瘍細胞上のMHCクラスI受容体への特異的E7ペプチド結合をもたらし、それによりそれらの腫瘍細胞、この場合ネズミCD8+ HPV16 E特異性T細胞を、抗原特異性CTL介在性の殺傷を受け易くさせる。実施例10に見られる通り、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)pp65抗原コンジュゲート型VLPを用いて、この結果は、ヒト健常ドナーCMV pp65特異性CD8+ T細胞にも拡張された。
【0158】
ほとんどのヒト個体は、インフルエンザ、HPV16、CMV、EBVおよび他の小児ワクチン(MMR、水疱瘡、HEPB)に対する既存の免疫性を有するため、または有する可能性があるため、同じ実験方法が、記載されたVLPを他の免疫原性HLA-A2制限ペプチドにコンジュゲートするために採用されてよい。HLA-A2制限ペプチドは、それらが米国において最も広く用いられるヒトMHCクラスI対立遺伝子であるため、これらの実験に選択されるであろう。上記のN2末端にフリン切断部位を有するHLA-A2制限エピトープに、様々なVLPをコンジュゲートした。特異的エピトープを、表4に提供する。
【表4】
【0159】
各構造物を、上記の通りSDS-PAGEにより分析した。(図14参照)。図14Aは、以下のペプチドへのWT HPV VLPのコンジュゲートを表す:MOVA2(SIINFEKL(SEQ ID NO:2))、インフルエンザV1、HepB V1、はしかV1、およびVZV V1。(融合タンパク質は、上記の通り米国ニュージャージー州のGenescriptにより純度80%で合成される)。同様に、図14Bは、MOVA2(SIINFEKL)、インフルエンザV1、HepB V1、はしかV1、およびVZV V1を含むRG1 VLPのコンジュゲートを表す。
【0160】
これらの構築物は、実施例と同様に、腫瘍細胞に局在化する、腫瘍細胞に結合する、それらのエピトープをタンパク質分解切断させる、および放出されたエピトープを腫瘍MHC I受容体により結合させてT細胞介在性免疫応答を惹起する、それらの能力について、テストされる。HLA-A2が陽性である細胞株が、上記の通り用いられる。そのような細胞株としては、例えばMDA-MB231、HCT116、およびPC-3などのヒト腫瘍が挙げられる。加えて、ルシフェラーゼ遺伝子を過剰発現しHLA-A2(それぞれB16-AAD、TC1-AAD、およびID8-AAD)を過剰発現するネズミB16(黒色腫/皮膚)、TC-1(子宮頸)、およびID8(卵巣)腫瘍細胞サブクローンを、作製した。これらの細胞株の全ては、培養で生育され得る。通常の環境下では、これらの細胞株は、これらが細胞表面でそれぞれの小児ワクチンまたは自然感染抗原を発現または提示しないため、上記の表に列挙されたエピトープに特異的なウイルス特異性CD8+ T細胞により殺傷されないであろう。細胞をその後、(1)1μg/ml、100pg/mlおよび1pg/mlの投与量での上記の表4の特異的ウイルス抗原ペプチド;(2)特異的ウイルス抗原コンジュゲート型VLP(2.5μg/mL);(3)非コンジュゲート型(対照)VLPと共にインキュベートするか;または(4)非処置(緩衝液を用いる)とする。細胞をその後、洗浄し、それぞれの抗原特異性T細胞と様々なE:T比(エフェクタ:標的比)で共培養する。細胞生存能力を、ヒト腫瘍ではCELLTITER-GLO(登録商標)アッセイにより、またはネズミ腫瘍ではルシフェラーゼの発現を測定することにより、測定する。低減されたルシフェラーゼ活性は、より大きな細胞障害性を示し、より大きな免疫リダイレクションを示唆する。
【0161】
インビボでこれをテストするために、ナイーブトランスフェニックHLA-A2またはHLA-AADマウスに、HepB、MMRおよび水疱瘡などの小児ワクチンを接種して(上記の表2参照)、既存の細胞障害性Tリンパ球(CTL)ウイルス応答を作製する。CTL応答を、それぞれのウイルスペプチドへのHLA-A2特異性四量体を用いて評価する。充分なCTL応答が確認されたら、マウスにルシフェラーゼ発現HLA-A2陽性腫瘍株ID8-ADD(卵巣)、B16-AAD(黒色腫)、またはTC-1 AAD(子宮頸)腫瘍細胞を注射する。腫瘍の生育を、連日モニタリングする。マウスが、平均体積10mmの触知可能な腫瘍を発症したら、ペプチドコンジュゲート型VLPを100μg/マウス/週で3週間継続して腫瘍担持マウスに投与する。コンジュゲート型VLPを用いる本明細書に記載の抗腫瘍免疫リダイレクション療法の有効性を、非処置群に対する腫瘍体積および生存率を介して測定する。別の実験で、同じ研究を、小児ワクチンの代わりにペプチドをHLA-A2またはHLA-AADマウスに直接ワクチン接種すること以外は上記のように、実行する。
【0162】
実施例13
コンジュゲート型VLPへの暴露後にヒト腫瘍で処置されたマウスの生存率
免疫不全マウスに、MHCクラス1 HLA-A2を過剰発現するヒト腫瘍細胞を注射する。例としては、PC-3、HCT112、およびMDA-MB231、が挙げられる。同時に、マウスに、以下のエピトープ(以下の表5)の1つを含む融合タンパク質にコンジュゲートされたコンジュゲート型VLPで過去に刺激されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)(10細胞)を注射する:
【表5】
【0163】
上記の通りリコールタンパク質を含有する融合タンパク質を含むコンジュゲート型VLPをその後、3週間にわたりマウスに週1回注射する。コンジュゲート型VLPで刺激されたヒトPBMCの2回目の注射をその後、14日目にマウスに注射する。腫瘍の形成は、コンジュゲート型VLPを提供されなかった対照に比較して、阻害されると予測される。
【0164】
実施例14
コンジュゲート型VLP免疫リダイレクション特性はフリン切断に依存的である
腫瘍特異性は、一部には、腫瘍細胞上のフリンの存在増加が原因である。フリン切断部位(cite)を含有する融合タンパク質にコンジュゲートされたコンジュゲート型VLPの特異性を確認するために、2種の実験を実行する。最初の実験では、フリン切断部位を有しないVLPを、作製する。細胞障害性アッセイをその後実行して、フリン切断部位なしに、ペプチドは腫瘍細胞にロードされ得ないことを実証する。ルシフェラーゼ遺伝子(B16-lucおよびID8-luc)を過剰発現するネズミB16(黒色腫/皮膚)およびID8(卵巣)腫瘍細胞を、培養で生育させる。細胞をその後、(1)E7ペプチド(1μg/ml、1ng/mL);(2)HPV16 E7(フリン切断配列が欠如)コンジュゲート型VLP(2.5μg/mL、0.025μg/mL);または(3)非コンジュゲート型(対照、2.5μg/mL)VLPで処置する。細胞をその後、洗浄し、様々なE:T比(エフェクタ:標的比)でCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共培養する。細胞生存能力をその後、ルシフェラーゼの検出により測定する。低減したルシフェラーゼ活性は、より大きな免疫リダイレクション、つまりより大きな細胞障害性を示す。
【0165】
2番目の実験では、HLA-A2 MHCクラス1分子を過剰発現するように、フリン欠損細胞株FD11を操作する(FD11/AAD)。細胞障害性アッセイをその後、この細胞株を用いて実行して、フリンを有さない場合にペプチドが腫瘍細胞上にロードし得ないことをさらに実証する。ルシフェラーゼを過剰発現するFD11/AAD腫瘍細胞を、培養で生育させる。細胞をその後、(1)E7ペプチド(1μg/ml、1ng/mL);(2)HPV16 E7コンジュゲート型VLP(2.5μg/ml、0.025μg/mL);または(3)非コンジュゲート型(対照、2.5μg/mL)VLPで処置する。細胞をその後、洗浄し、様々なE:T比(エフェクタ:標的比)でCD8+ HPV16 E7特異性T細胞と共培養する。細胞生存能力を、ルシフェラーゼの活性/発現を測定することにより測定する。低減したルシフェラーゼ活性は、より大きな免疫リダイレクション、つまりより大きな細胞障害性を示した。
【0166】
実施例15
腫瘍リチャレンジ実験
記載されたコンジュゲート型VLPにより原発腫瘍を過去に治癒されたマウスの、腫瘍リチャレンジを生き残る能力を評定する。コンジュゲート型VLPによる腫瘍の処置で生存しているマウス(n=20)を、最後の腫瘍の消失後4週間目に同じ腫瘍(1×10の生きた細胞)でリチャレンジする。腫瘍またはコンジュゲート型VLPのどちらかに暴露されていないナイーブマウスの群(n=20)に、対照として同じ腫瘍を注射する。処置マウス3匹およびナイーブマウス3匹をその後、VLP治療前、VLP治療後、およびリチャレンジ後に殺処分する。腫瘍および脾臓をその後、ImmunoSEQアッセイ(Adaptive Biotechnologies Corp.、ワシントン州シアトル所在)によるTCRβハイスループットシーケンシングのために調製する。コンジュゲート型VLPにより原発腫瘍を過去に治癒されたマウスは、二次的なリチャレンジへの抵抗性を呈すると予測され、コンジュゲート型VLP方策が腫瘍再発に対する防御システムの免疫応答を誘導できることを示す。VLP治療前、VLP治療後、およびリチャレンジ後などの、様々な段階でのマウスの異なるTCRクローンプロファイルを、観察する。
図1
図2A
図2B
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B