(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】後方流動成形の自動制御システム
(51)【国際特許分類】
B21D 22/16 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
B21D22/16 G
(21)【出願番号】P 2023078571
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0065115
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523174860
【氏名又は名称】イルクァンテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ナク ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ソン ス
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特公平02-056167(JP,B2)
【文献】特開2010-029893(JP,A)
【文献】特開2014-054646(JP,A)
【文献】特開2019-141872(JP,A)
【文献】特許第4055850(JP,B2)
【文献】特許第5376526(JP,B2)
【文献】特許第3622570(JP,B2)
【文献】特開2015-221443(JP,A)
【文献】特公平02-032049(JP,B2)
【文献】特表2004-516940(JP,A)
【文献】特開2009-160627(JP,A)
【文献】特開2008-173709(JP,A)
【文献】特許第3499233(JP,B2)
【文献】特許第0499233(JP,B2)
【文献】特開昭62-004513(JP,A)
【文献】特開2002-282949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0062967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方に流動成形する工程を自動で制御するシステムであって、
素材(12)を同心に支持するマンドレル(10)と、
前記マンドレル(10)の周辺に複数の成形ローラ(22)を配置し、それぞれの成形ローラ(22)にモーション機を備えた成形部材(20)と、
前記素材(12)に対応した前記成形部材(20)のモーションに関する信号を検出する検出部材(30)と、
前記成形ローラ(22)を後方に移送しつつ設定された少なくとも2つの地点で、深さの変動を誘発するように制御するコントローラ(40)と、を含み、
前記成形部材(20)は、3つの前記成形ローラ(22)にそれぞれ連結されるモーション機(24、26)で、個別的な移送及びデプスモーションを誘発し、
前記検出部材(30)は、前記素材(12)の延伸方向に一側に設置される近位検出器(31)、前記成形ローラ(22)の移送経路の他側に設置される遠位検出器(32)と、前記成形ローラ(22)の半径方向の深さ変位を検出する深さ検出器(34)とを備え、
前記コントローラ(40)は、CNCプログラムに連携して、前記成形ローラ(22)の2軸運動を順次実行し、前記素材(12)の凹部(12a)に要求される寸法に合わせて、加工を停止することを特徴とする後方流動成形の自動制御システム。
【請求項2】
前記検出部材(30)は、更に、前記成形ローラ(22)を通じて前記素材(12)に作用する荷重を検出する荷重検出器(36)を備えることを特徴とする請求項1に記載の後方流動成形の自動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動成形工程のモニタリングに関し、より具体的には、素材の回転状態で、複数のローラで加圧して移動しつつ、厚さの減少と長さの増加を誘発する後方流動成形の自動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、流動成形は、マンドレルと共に、その半径方向に移動する複数のローラを基に構成され、回転する素材をそれぞれのローラで加圧した状態で移動しつつ、素材の厚さを減少し、長さを伸ばして、製品(中間品)を形成する。量産工程の自動化制御において、ローラとマンドレルを含む全体構成品の寸法、成形前素材と成形後製品の寸法などを汎用CADで作成した後、流動成形CNCプログラムに変換して行う過程を経る。
【0003】
しかし、通常適用される後方流動成形でも、工程数が複雑であるため、生産の遅延や成形不良を招きやすい。
【0004】
これに対する対応策に関して、先行技術文献として、大韓民国公開特許公報第2009-0105591号(先行文献1)、大韓民国登録特許公報第0375702号(先行文献2)などがある。
【0005】
先行文献1は、フリーフォームをマンドレルに装着して回転させる第1のステップと、フリーフォームの外周面に成形ロールを加圧密着して、フリーフォームをシームレスチューブ形状に流動成形する第2のステップとを含む成形方法において、第2のステップは、成形ロールとマンドレルの中心軸間の垂直距離を調節する中間ステップを更に含み、コンピュータ数値制御(CNC)の作動方式を備えたコントロールユニットで制御される。
【0006】
先行文献2は、圧延ローラがフリーフォームに対して、放射状方向でマンドレルの軸線方向に加圧し、マンドレルに対して、圧延ローラが設定速度で長さ方向に沿って進むことで、フリーフォームの全主面で同時に且つ連続的に厚さを減少する流動成形するステップを含む。これにより、製作機構が簡単であり、スクラップが低減し、生産性と歩留まりを高める効果がある。
【0007】
しかし、前記した先行文献によると、製品の厚さが変動するように、被加工物に後方成形を適用する場合には、対比し難いという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第2009-0105591号公報 「厚さが変形した圧力容器ライナー及びその成形方法」 (公開日:2009.10.07.)
【文献】韓国登録特許第0375702号公報 「自動車合金ホイール製造用シームレスチューブの製造方法」 (公開日:2001.07.12.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような従来の問題点を改善するためになされたもので、本発明の目的は、素材の回転状態で一部の厚さが変動する製品を生成するため、後方に流動成形する過程において、厚さの変化による長さ偏差を防止することができる後方流動成形の自動制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、後方に流動成形する工程を自動で制御するシステムであって、素材を同心に支持するマンドレルと、前記マンドレルの周辺に複数の成形ローラを配置し、それぞれの成形ローラにモーション機を備えた成形部材と、前記素材に対応した成形部材のモーションに関する信号を検出する検出部材と、前記成形ローラを後方に移送しつつ設定された少なくとも2つの地点で、深さの変動を誘発するように制御するコントローラとを含むことを特徴とする。
【0011】
前記成形部材は、3つの成形ローラにそれぞれ連結されるモーション機で、個別的な移送及びデプスモーションを誘発する。
【0012】
前記検出部材は、素材の延伸方向に一側に設置される近位検出器、成形ローラの移送経路の他側に設置される遠位検出器と、成形ローラの半径方向の深さ変位を検出する深さ検出器とを備える。
【0013】
前記検出部材は、更に、成形ローラを通じて素材に作用する荷重を検出する荷重検出器を備える。
【0014】
前記コントローラは、CNCプログラムに連携して、成形ローラの2軸運動を順次実行し、素材の凹部に要求される寸法に合わせて、加工を停止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、一部の厚さが変動する製品を生成できる。また、本発明によると、被加工物を後方に流動成形する過程において、厚さの変化による長さ偏差を防止して、不良を減らすことができる。特に、多品種少量生産に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によるシステムを全体的に示す模式図である。
【
図2】本発明によるシステムに適用される加工原理の模式図である。
【
図3】本発明によるシステムの制御回路を示すブロック図である。
【
図4】本発明によるシステムによる加工状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、後方に流動成形する工程を自動で制御するシステムについて提案する。管やカップ形状の素材(被加工物)を投入して、逐次成形するフローフォーミングシステムを対象とするが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明によると、マンドレル10が、素材12を同心に支持する構造をなしている。
【0020】
図1に示すように、円筒状のマンドレル10の外周面に、素材12がロードされた状態を示す。素材12は、マンドレル10の一端で着脱可能にクランプされ、マンドレル10と一体に連動する。マンドレル10の一端には回転力を付与し、且つ、回転速度の調節が可能な回転駆動機15が連結される。
【0021】
また、本発明によると、前記マンドレル10の周辺に、複数の成形ローラ22を配置した成形部材20が、それぞれの成形ローラ22にモーション機を備えた構造である。
【0022】
図1において、成形部材20を構成する成形ローラ22、モーション機などを示している。成形ローラ22は、複数構成され、それぞれ後述するモーション機に連結される。成形ローラ22は、被動的に回転、又は別の動力で強制的回転を具現する。成形ローラ22が図面符号22′のように、マンドレル10の半径方向に近付くと共に、軸方向に移動しつつ、素材12の厚さと長さ変動が誘発する。
【0023】
本発明の詳細構成によると、前記成形部材20は、3つの成形ローラ22にそれぞれ連結されるモーション機24、26で、個別的な移送及びデプスモーションを誘発することを特徴とする。
【0024】
図1において、マンドレル10の半径方向に配置される3つの成形ローラ22がそれぞれ、モーション機24、26に連結されて、2軸に運動する状態を示している。第1のモーション機24は、成形ローラ22の半径方向運動を誘発する油圧シリンダで構成し、第2のモーション機26は、成形ローラ22の軸方向運動を誘発する直線駆動機で構成する。油圧シリンダは、素材と接触し、正確で且つ十分な加圧力を与えるように、サーボ制御可能な油圧駆動式が望ましいが、これに限定されるものではない。直線駆動機は、LMガイド、ラックピニオン、送りねじナットブロックから選択する。いずれの場合でも、モーション機24、26は、3つの成形ローラ22に対する個別のモーション制御が可能である。このような方式によると、素材の物性によらず、形状自由度を高め、成形荷重(エネルギー)を減らすことができる。
【0025】
一方、
図1のような形状に3つの成形ローラ22が配置される場合、垂直方向の成形ローラ22は、傾斜方向の成形ローラ22とモーションのパターンを区別することができる。マンドレル10の回転方向と速度によって、傾斜方向の2つの成形ローラ22に対する制御パターンも区別することができる。これは、流動成形に関する3次元解析ではなく、加工ステップで生成・蓄積される情報のDB化により決まる。
【0026】
図2(a)に示すように、素材12の中間で、一定の長さに亘って厚さが縮小する凹部12aを有した形状の製品に形成される状態を示す。前方成形の場合、成形ローラ22が素材の延伸方向に移送されて、凹部12aの形成が容易であるが、マンドレル10の長さが長くなるので、全体的な外形が増加し、作業性が低下する。これに対して、成形ローラ22が素材の延伸方向と反対に移送される後方成形の場合、短いマンドレル10を用いて、加工し易いため、通常適用される。
図2に示すように、前方成形の場合、成形ローラ22の1000mm移送が必要であるが、後方成形の場合、500mm移送で足りる。
【0027】
但し、後方成形において、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、規定の厚さ2.0mmの誤差によって、規定長さ1000mmに誤差が生じる。
図2(b)のように、厚さが1.9mmの場合は、長さが長くなって、1005mmとなり、
図2(c)のように、厚さが2.1mmの場合は、長さが短くなって、995mmとなって、規定の長さをずらすことになり、不良が発生する虞がある。
【0028】
また、本発明によると、検出部材30が、前記素材12に対応した成形部材20のモーションに関する信号を検出する構造をなしている。
【0029】
図3に示すように、検出部材30が、成形部材20、コントローラ40などと連携する状態を示している。量産現場で検出部材30の稼動は、CNCプログラムを基に、多数の経路コードを連携して具現される。それにもかかわらず、後方成形の場合、一部の厚さが変動する凹部12aを有した製品の成形過程において、厚さ-長さ寸法の調節が容易でない。検出部材30は、成形ローラ22のモーションに関する主要物理量を検出して、後述するコントローラ40によるシミュレーションを助ける。
【0030】
本発明の詳細構成によると、前記検出部材30は、素材12の延伸方向に一側に設置される近位検出器31と、成形ローラ22の移送経路の他側に設置される遠位検出器32と、成形ローラ22の半径方向の深さ変位を検出する深さ検出器34とを備えることを特徴とする。
【0031】
図3において、検出部材30を構成する近位検出器31、遠位検出器32、深さ検出器34などを示している。一側の近位検出器31と他側の遠位検出器32は、フォトセンサなどを用いた非接触方式で延伸する素材12の端部を検出する。近位検出器31と遠位検出器32は、マンドレル10の軸方向と平行な一直線上で、近位検出器31が遠位検出器32より成形ローラ22に隣接するように配置される。近位検出器31と遠位検出器32の離隔した距離差は、製品の凹部12aの長さ寸法に該当する。深さ検出器34は、レーザセンサ、赤外線センサ、超音波センサ、リニアスケール方式などから選択され、マンドレル10の半径方向にそれぞれの成形ローラ22の変位を検出する。その他に、成形ローラ22の軸方向移送距離を検出する変位センサを更に含む。
【0032】
本発明の詳細構成によると、前記検出部材30は、成形ローラ22を通じて、素材12に作用する荷重を検出する荷重検出器36を更に備えることを特徴とする。
【0033】
図3において、検出部材30を更に構成する荷重検出器36を例示しているが、これに限定されない。荷重検出器36は、成形部材20のモーション機24、26に設置され、成形ローラ22において、素材12に作用する荷重(圧力)を検出する。荷重検出器36の検出荷重は、半径方向だけではなく、軸方向も含まれる。その他に、マンドレル10の回転を検出する回転検出器などを含む。
【0034】
また、本発明によると、コントローラ40が、前記成形ローラ22を後方に移送しつつ設定された少なくとも2つの地点で、深さの変動を誘発するように制御する構造である。
【0035】
図3及び
図4に示すように、コントローラ40は、マイクロプロセッサ、メモリ、入出力インターフェースを搭載したマイコン回路で構成する。コントローラ40の入力インターフェースには、近位検出器31、遠位検出器32、深さ検出器34、荷重検出器36などが選択的に連結される。コントローラ40の出力インターフェースには、回転駆動機15、モーション機24、26などが連結される。コントローラ40は、量産現場に投入される諸素材12の設計/加工データを保存する外部のDBサーバ45と有無線通信で連結される。
【0036】
この時、コントローラ40が成形ローラ22の深さ変動を誘発する座標として、前記
図2の凹部12aに対応する
図3のa地点とb地点を含む。
【0037】
一方、コントローラ40は、近位検出器31と遠位検出器32の位置変動を誘発するように、それぞれの位置調節器41、42に搭載する。位置調節器41、42は、第2のモーション機26の直線駆動機と同様な方式で構成する。製品の凹部12aの長さ寸法に対応して、近位検出器31と遠位検出器32の位置変動が可能である。
【0038】
本発明の詳細構成によると、前記コントローラ40は、CNCプログラムと連携して、成形ローラ22の2軸運動を順次実行し、素材12の凹部12aに要求される寸法に合わせて、加工を停止することを特徴とする。
【0039】
図3及び
図4において、コントローラ40は、CAD/CAMプログラムを用いて、成形ローラ22の移動座標を反映するように変換されたCNC加工プログラムを、メモリに保存し行う。
図3(a)のように、成形ローラ22により後方成形が開始され、且つ、素材12の厚さ縮小に延伸して、その端部が近位検出器31に至ると、成形ローラ22が設定深さに下降して、凹部12aを形成し始める。以後、
図3(b)のように、素材12の端部が遠位検出器32に到達すると、直ぐ成形ローラ22が上昇し、以後、設定経路に仕上げ加工を経て、終了する。素材12の凹部12aが正常に成形された後に、一端又は両端を切断して、製品を完成する。
【0040】
このような量産現場の加工情報が、コントローラ40を経てDBサーバ45に蓄積されるので、多品種少量生産でも、工程管理にかかる手間を減らして、不良を減らし、生産性を向上できる。
【0041】
本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく、様々に修正及び変形できることは、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。そこで、このような変形例又は修正例は、本発明の特許請求の範囲に属すべきであるといえる。
【符号の説明】
【0042】
10: マンドレル
12: 素材
12a: 凹部
15: 回転駆動機
20: 成形部材
22: 成形ローラ
24: 第1のモーション機
26: 第2のモーション機
30: 検出部材
31: 近位検出器
32: 遠位検出器
34: 深さ検出器
36: 荷重検出器
40: コントローラ
41、42: 位置調節器
45:DBサーバ