(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】木材及び竹材に適用する水性接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 107/00 20060101AFI20250227BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20250227BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20250227BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250227BHJP
C08G 69/48 20060101ALI20250227BHJP
C09J 109/08 20060101ALI20250227BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20250227BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C09J107/00
C08G18/62 004
C08G18/64 015
C08G18/76 057
C08G69/48
C09J109/08
C09J129/04
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2023123336
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-07-31
(32)【優先日】2023-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】523287643
【氏名又は名称】安聯材料科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林振隆
(72)【発明者】
【氏名】夏漢聲
(72)【発明者】
【氏名】張育豪
(72)【発明者】
【氏名】李降雲
(72)【発明者】
【氏名】陳嘉益
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-121021(JP,A)
【文献】特開昭63-189487(JP,A)
【文献】特開2007-077206(JP,A)
【文献】特開平07-026209(JP,A)
【文献】特開2021-130731(JP,A)
【文献】特開2022-173841(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109401674(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0071049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10
C09J9/00-201/10
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C08G69/00-69/50
C08G18/00-18/87
C08G71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材及び竹材に適用する水性接着剤であって、その水性接着剤は水溶性高分子、合成ゴムラテックスおよび天然ラテックスから構成される主剤とイソシアネートまたは第4級アンモニウム塩ポリマーから選択される硬化剤を含み、前記主剤と前記硬化剤の重量比は200:1から1:1であり、前記水溶性高分子はポリビニルアルコールであり、前記主剤の総固体量の2~30重量%を占め、前記合成ゴムラテックスはスチレンブタジエンゴムラテックスおよびカルボン酸官能基を含有するスチレンブタジエンゴムラテックスからなる群から選択され、前記合成ゴムラテックスは、主剤の全固形分の2~60重量%を占め、前記天然ラテックスは前記主剤の総固体量の5~90重量パーセントを占め
、
前記第4級アンモニウム塩ポリマーが1種以上の第4級アンモニウム塩ポリマーを含み、第4級アンモニウム塩ポリマーがポリアミドポリアミン-エピクロロヒドリン (polyaminoamide-epichlorohydrin、PAE)であることを特徴とする、木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項2】
主剤と硬化剤との重量比が100:1から10:3であることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項3】
水溶性高分子が主剤の全固形分の3~25重量%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項4】
前記主剤中の前記水溶性高分子の加水分解モルパーセント(hydrolysis mol%)は70~99.8%であることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項5】
前記合成ゴムラテックスが前記主剤の全固形分の3~55重量%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項6】
前記天然ラテックスが主剤の全固形分の5~85重量%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項7】
前記天然ラテックスが主剤の全固形分の5~75重量%を占めることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項8】
前記天然ラテックスが、エポキシ化天然ラテックスおよび脱蛋白天然ラテックスの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【請求項9】
イソシアネートが1種以上のイソシアネートを含み、イソシアネートはイソシアネート官能基(isocyanate)を含む化合物またはそのポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の木材及び竹材に適用する水性接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の接着剤、特に木材及び竹材に適用する水性接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木材や竹材に使われている接着剤には、フェノール(phenol)、尿素(urea)、メラミン(melamine)、ホルムアルデヒド(formaldehyde)などの石油化学物質が使用されてきた。これらの石化原料またはその誘導体から製造された接着剤は優れた接着性、機械的強度、耐温性および耐水性を提供することが多く、低コストで手軽な価格なため、様々なメリットがあり代替が困難な製品である。しかし、環境保護への意識が台頭し、人々が健康について重要視するつれ、石油化学製品を原料とする接着剤の欠点が明らかになってきた。
【0003】
ホルムアルデヒドの良好な反応性により、ホルムアルデヒドを含む尿素ホルムアルデヒド樹脂接着剤(Urea Formaldehyde Resin Adhesive)は通常、高い接着力、良好な耐熱性、良好な耐水性という利点を備えている。現在、木材や竹材に塗布される接着剤の80%以上には依然として尿素ホルムアルデヒド接着剤が使用されているが、ホルムアルデヒドは人体への発がん性につながる毒性物資であることが証明されており、さらにホルムアルデヒドを含む接着剤を使用した木材や竹材は様々な家具や内装建材、室内装飾品などに使用されており、その中でホルムアルデヒドの放散サイクルは10~15年にも及ぶことがある。
【0004】
発がん性リスクとなるホルムアルデヒドの含有量についての規制は世界各国でますます厳しくなっており、生態環境の持続可能性を高め、人体へのリスクを軽減できる、ホルムアルデヒドを含まない新しい形態の接着剤を開発することは一つの明確な目標となっている。
【0005】
ホルムアルデヒドフリーバイオマス接着剤は、ホルムアルデヒドを使用しないだけでなく、さらにバイオマス素材を取り入れた接着剤である。近年、大豆たんぱく(soy protein)、リグニン(Lignin)、でんぷん(Starch)、タンニン(Tannins)は木材の接着剤によく使われるバイオマス素材である。しかし、その接着強度は弱く、耐水性に劣るなどの欠点があるため、商業用途にはまだあまり使われていない。その中で、大豆タンパクは1930年代から木材の接着に応用され始めたが、接着強度が低いことが批判されている欠点としてあり、米国特許公告第US9493693号において関連の改善が開示されたが、実際に商業化に応用すると、依然として加熱温度が高く、時間が長く、エネルギー消耗が多いなどの問題がある。また、大豆たんぱくは、実務上、加工操作が容易でなく、作業者が適応しにくいという問題がある。
【0006】
また、リグニンやタンニンは構造的に安定しているが、反応性も低く、通常、反応性を高めるためには化学修飾が必要である。さらに、リグニン自体はフェノール官能基(phenol)を含有しており、フェノール樹脂に添加されることが多いが、その欠点は反応性が悪く、かつ反応温度が高いことと耐水性が優れないことある。でんぷんは天然高分子であり、食品添加にもよく応用され、水素結合はその主要作用力であるが、水素結合作用力は一般化学反応共有結合より遥かに弱い。でんぷんは接着剤として使用されるが、耐水性と接着力が弱く、でんぷんを修飾することで化学反応の共有結合を増やしているが、耐水性と適合度は依然として商業化のニーズに符合しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠点に従って、本発明は主に、木材または竹材に塗布できる水性接着剤を提供し、天然で再生可能な原材料を導入し、石油化学製品への依存を効果的に低減し、関連産業の持続可能性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は木材または竹材に応用できる水性接着剤を提供することであり、そのバイオマス原料は天然ラテックスであり、環境保護無毒の水溶性高分子を配合し、さらに例えばイソシアネートまたは第4級アンモニウム塩ポリマーなどの適切な硬化剤を混合し、木材および竹材に良好な耐水性、接着強度および機械強度を提供できる。
【0009】
本発明の目的は木材および竹材に応用できる接着剤を提供することであり、それは主剤と硬化剤から構成される。主剤は水溶性高分子、合成ゴムラテックス、天然ラテックスを含む。硬化剤はイソシアネート類化合物またはそのポリマー、あるいは第4級アンモニウム塩ポリマー水溶液である。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、水溶性高分子、合成ゴムラテックス及び天然ラテックスからなる主剤と、イソシアネート又は第4級アンモニウム塩ポリマーから選択される硬化剤とを含む、木材又は竹材に適用可能な水性接着剤を開示する。そのうち、主剤と硬化剤の重量比は200:1から1:1である。水溶性高分子はポリビニルアルコールであり、主剤の総固体量の2~30重量%を占める。合成ゴムラテックスはスチレンブタジエンゴムラテックスおよびカルボン酸官能基を含有するスチレンブタジエンゴムラテックスからなる群から選択され、合成ゴムラテックスは、主剤の全固形分の2~60重量%を占めている。天然ラテックスは主剤の固形分全体の5~90重量%を占めている。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、主剤と硬化剤の重量比は、100:1から10:3である。
【0012】
本発明の好ましい実施例において、水溶性高分子は主剤の総固体量の3~25重量パーセントを占める。
【0013】
本発明の好ましい実施例において、水溶性高分子は主剤の総固体量の5~25重量パーセントを占める。
【0014】
本発明の好ましい実施例において、水溶性高分子は主剤の総固体量の10~25重量パーセントを占める。
【0015】
本発明の好ましい実施例において、主剤中の水溶性高分子の加水分解モル%(hydrolysis mol%)は70~99.8%である。
【0016】
本発明の好ましい実施例において、主剤中の水溶性高分子の加水分解モル%は80~99.8%である。
【0017】
本発明の好ましい実施例において、主剤中の水溶性高分子の加水分解モル%は85~99.5%である。
【0018】
本発明の好ましい実施例において、合成ゴムラテックスは主剤の総固体量の3~55重量パーセントを占める。
【0019】
本発明の好ましい実施例において、合成ゴムラテックスは主剤の総固体量の3~40重量パーセントを占める。
【0020】
本発明の好ましい実施例において、合成ゴムラテックスは主剤の総固体量の3~30重量パーセントを占める。
【0021】
本発明の好ましい実施例において、天然ラテックスは主剤の総固体量の5~85重量パーセントを占める。
【0022】
本発明の好ましい実施例において、天然ラテックスは主剤の総固体量の5~75重量パーセントを占める。
【0023】
本発明の好ましい実施例において、天然ラテックスは主剤の総固体量の10~60重量パーセントを占める。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、天然ラテックスは植物から得られ、天然ラテックスはエポキシ化天然ラテックスまたは脱蛋白天然ラテックスも含む。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、イソシアネートは、1つまたは複数のイソシアネートを含み、イソシアネートは、イソシアネート官能基(isocyanate)を含む化合物またはそのポリマーである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、第4級アンモニウム塩ポリマーは、1つまたは複数の第4級アンモニウム塩ポリマーを含み、第4級アンモニウム塩ポリマーは、ポリアミドポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂(polyaminoamide-epichlorohydrin、PAE)である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、無機または有機フィラーをさらに含み、ここで、無機フィラーは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫酸バリウム、カオリン、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびガラス繊維の少なくとも一つまたはその組み合わせから選ばれ、有機フィラーは、でんぷん、リグニン、タンニン、セルロース、糖および木粉の少なくとも一つまたはその組み合わせから選ばれる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、消泡剤、増粘剤、チキソトロピー剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤などの助剤がさらに含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一実施形態において、本発明は、木材または竹材に使用するための水性接着剤を提供する。ここで、水性接着剤は主剤と硬化剤を含む。そのうち、主剤は水溶性高分子、および、合成ゴムラテックス、および、天然ラテックスから構成される。硬化剤は、イソシアネートまたは第4級アンモニウム塩ポリマーから選択できる。
主剤と硬化剤の重量比は200:1から1:1である。水溶性高分子はポリビニルアルコールであり、主剤の総固体量の2~30重量%を占める。合成ゴムラテックスは、スチレンブタジエンゴムラテックスおよびカルボン酸官能基を含有するスチレンブタジエンゴムラテックスからなる群から選択され、合成ゴムラテックスは、主剤の全固形分の2~60重量%を占めている。天然ラテックスは主剤全固形分の5~90重量%を占める。一実施形態では、主剤と硬化剤の重量比は、100:1から10:3の範囲であってよい。
【0030】
本発明で使用する原料天然ラテックスは、植物に由来する天然ラテックスである。
天然ラテックスの化学構造は、主にイソプレンからなる高分子ポリマーからなり、ラテックスの形態で水中に分散している。
本発明で使用する天然ラテックスは、人工的な化学的修飾を加えることなく、すぐに使用することができる。天然ラテックスは疎水性に優れ、使用上、水分を除去した後に耐水性に優れる高分子ゴム膜材を形成する。接着剤に応用することで、被着体の耐水性を大幅に向上できる。天然ラテックスの欠点は、安定性が低いことであり、一実施形態では、安定剤としてアンモニア水、水酸化カリウム、またはキレート剤を添加してもよい。一実施形態では、安定剤及び静菌剤として天然ラテックス水溶液の中に0.1~1重量パーセントのアンモニア水を添加してもよい。
【0031】
本発明の主剤において、天然ラテックスの占める割合が低すぎると、バイオマスを添加して環境を持続可能に向上させる意義が失われ、逆に添加しすぎると水分がわずかに揮発しやすくなり、天然ラテックスが痂皮化しやすくなって塗布しにくくなる。一実施例において、天然ラテックスは主剤の全固形分の5~85重量パーセントを占める。一実施例において、天然ラテックスは主剤の全固形分の5~75重量パーセントを占める。一実施例において、天然ラテックスは主剤の全固形分の10~60重量パーセントを占める。
【0032】
一実施形態では、本発明の天然ラテックスは、エポキシ化天然ラテックスまたは脱蛋白天然ラテックスを含む。エポキシ化天然ラテックスは化学反応によって分子鎖の二重結合にエポキシ官能基に形成し、反応性を向上させ、架橋強度を増加させ、耐熱性、耐水性および接着力の機械的強度を向上させる。脱蛋白天然ラテックスはラテックス中の蛋白質成分を除去するため、カビ腐敗の確率を減少できる。
【0033】
本発明における水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。 水溶性ポリマーの添加により、硬化剤との間の反応性が促進され、接着性や耐水性が向上する。一実施例において、水溶性高分子の加水分解モルパーセントは80~99.8%である。一実施例において、水溶性高分子の加水分解モルパーセント(hydrolysis mol%)は85~99.5%である。本発明において、加水分解率が低すぎると反応性が低下し、それに伴って強度が低下する。一実施形態では、水溶性ポリマーは、主剤の全固形分の3~25重量%を占める。
一実施形態では、水溶性ポリマーは、主剤の全固形分の5~25重量%を占める。
一つの実施形態において、水溶性ポリマーは、主剤の全固形分の10~25重量%を占める。
【0034】
本発明の主剤である合成ゴムラテックスは、硬化剤との反応性を促進し、接着性や耐水性を向上させることができる。一実施形態では、本発明の合成ゴムラテックスは、主剤の全固形分の3~55重量%を占める。
一実施形態では、合成ゴムラテックスは、主剤の全固形分の3~40重量%を占める。
一実施形態では、合成ゴムラテックスは、主剤の全固形分の3~30重量%を占める。
【0035】
本発明の硬化剤は主に主剤との架橋反応を行うことを提供する。一実施形態では、イソシアネートは、1つまたは複数のイソシアネートを含み、イソシアネートは、イソシアネート官能基(isocyanate)を含む化合物またはそのポリマーである。一実施形態では、イソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)であってもよく、2, 2’-MDI、2, 4’-MDIおよび4, 4’-MDIの3つの異性体、さらにはそのオリゴマー(crude MDI または polymeric MDI)を含む。一実施形態では、イソシアネートは、トルエンジイソシアネートtolylene -2, 4- tolylene -2, 6- diisocyanate (TDI)およびその異性体であってもよい。一実施形態において、イソシアネートは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4, 4’-diisocyanato-dicyclohexylmethane, H12MDI)およびその異性体であってもよい。一実施形態において、イソシアネートは、また、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)およびその異性体であってもよい。一実施形態では、イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)であってもよい。一実施形態では、イソシアネートは、3, 3’―ジメチルビフェニル-4, 4’-ジイソシアネートo-Tolidine diisocyanate (TODI)であってもよい。
【0036】
また、本発明の硬化剤は、第4級アンモニウムポリマーであってもよく、1つまたは複数の第4級アンモニウムポリマーから構成されてもよい。一実施形態では、第4級アンモニウム塩ポリマーは、ポリアミドアミン(polyamidoamine)とエピクロロヒドリン(epichlorohydrin)との反応から形成される第4級アンモニウム塩ポリマー(polyaminoamide epichlorohydrin、PAE)であってもよい。このポリマーは、化学式1で表される構造を有し、ここでnは整数であり、本発明の好ましい実施形態では、第4級アンモニウム塩ポリマーは、1つまたは複数の第4級アンモニウム塩ポリマーを含み、第4級アンモニウム塩ポリマーは、ポリアミドポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂(polyaminoamide-epichlorohydrin、PAE)である。その化学式は式(1)である:
式(1)
【0037】
一実施形態において、無機または有機フィラーをさらに含み、無機フィラーは、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫酸バリウム、カオリン、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたはガラス繊維からなり、有機フィラーは、でんぷん、リグニン、タンニン、セルロース、糖または木材粉からなる。
【0038】
一実施形態では、本発明の主剤は、製造プロセスの要求にさらに適合させるために、消泡剤、増粘剤、チキソトロピー剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤などを含む助剤を添加することができる。あるいは、接着剤の固形分量を増やす、不透明度を向上させる、コストを低減させるなど、異なる特性に対する追加の要求を満たすために、本発明の主剤は、無機または有機フィラーを添加することができる。ここで、無機充填物は炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫酸バリウム、カオリン、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム或はガラス繊維を含む。有機フィラーはでんぷん、リグニン、タンニン、セルロース、糖または木粉を含む。
【0039】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を説明する。
【0040】
[実施例1]
10グラムのポリビニルアルコール(PVA)水溶液(BP-05、30重量%、長春人造樹脂)を取り、20グラムのスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂(LBT04、申豊特用応材)を加え、よく均一に混ぜた後、50グラムの天然ラテックス(60重量%、タイ製)を加え、均一に攪拌して水性接着剤の主剤を完成させる。水性接着剤の硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)を用いる。10グラムのMDIを80グラムの主剤に加え、均一に攪拌してから使用できる。SS-EN 205(Adhesives-Wood adhesives for non-structural applications-Determination of tensile shear strength of lap joints)に記載された方法により木板を接着し、その規定に従って機械的引張試験片を作製する。引張試験片が完成した後、SS-EN 12765(Classification of thermosetting wood adhesives for nonstructural applications)のC 4標準に従って機械的引張側試験を行い、試験結果は表1に示す。
【0041】
[実施例2]
10グラムのポリビニルアルコール(PVA)水溶液(BP-05、30 重量%、長春人造樹脂)を取り、20グラムのスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂(LBT04、申豊特用応材)を加え、均一によく混合した後、50グラムの天然ラテックス(60重量%、タイ製)を加え、均一によく攪拌して水性接着剤の主剤を完成させる。水性接着剤の硬化剤として第4級アンモニウム塩ポリマー(PAE、長春人工樹脂)を用い、 PAE 10 グラムを主剤80 グラムに加え、均一によく攪拌して使用する。SS-EN 205(Adhesives-Wood adhesives for non-structural applications-Determination of tensile shear strength of lap joints)に記載された方法により木板を接着し、その規定により機械的引張試験片を作製する。引張試験片が完成した後、SS-EN 12765(Classification of thermosetting wood adhesives for nonstructural applications)のC 4標準に従って機械的引張側試験を行い、試験結果は表1に示す。
【0042】
[実施例3]
50グラムのポリビニルアルコール(PVA)水溶液(BP-05, 30重量%、長春人造樹脂)を取り、20グラムのスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂(LBT04、申豊特用応材)を加え、均一によく混合した後、10グラムの天然ラテックス(60 重量%、タイ製)および20グラムの炭酸カルシウムを加え、均一によく攪拌して水性接着剤の主剤を完成させる。水性接着剤の硬化剤として ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)を用い、MDIを10g取り、主剤100gに加えてよくかき混ぜて使用する。SS-EN 205(Adhesives-Wood adhesives for non-structural applications-Determination of tensile shear strength of lap joints)に記載された方法により木板を接着し、その規定により機械的引張試験片を作製する。引張試験片が完成した後、SS-EN 12765(Classification of thermosetting wood adhesives for nonstructural applications)のC 4標準に従って機械的引張側試験を行い、その試験結果は表1に示す。
【0043】
[実施例4]
20グラムのポリビニルアルコール(PVA)水溶液(BP-05主剤30重量%、主剤、長春人造樹脂)を取り、50グラムのスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂(LBT04、主剤申豊特用応材)を加え、均一によく混合した後、10グラムの天然ラテックス(60 重量%主剤タイ産)および20グラムの炭酸カルシウムを加え、均一によく攪拌して水性接着剤の主剤を完成する。水性接着剤の硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate主剤MDI)を使用し、MDIを10g取り、主剤100gに加えてよくかき混ぜて使用する。SS-EN 205(Adhesives-Wood adhesives for non-structural applications-Determination of tensile shear strength of lap joints)に記載された方法により木板を接着し、その規定により機械的引張試験片を作製する。引張試験片が完成した後、SS-EN 12765(Classification of thermosetting wood adhesives for nonstructural applications)のC 4標準に従って機械的引張側試験を行い、その試験結果は表1に示す。
【0044】
[比較例1]
40グラムのスチレンブタジエンゴム(SBR)樹脂(LBT04主剤申豊特用応材)を取り、40グラムの天然ラテックス(60重量%主剤タイ産)と20グラムの炭酸カルシウムを加え、均一に混合撹拌して水性接着剤の主剤を完成する。水性接着剤の硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate主剤MDI)を用い、MDI 10グラムを主剤100 グラムに加え、均一によく攪拌して使用する。SS-EN 205(Adhesives-Wood adhesives for non-structural applications-Determination of tensile shear strength of lap joints)に記載された方法により木板を接着し、その規定に従って機械的引張試験片を作製する。引張試験片の完成後、SS-EN 12765(Classification of thermosetting wood adhesives for nonstructural applications)のC 4標準に従って機械的引張側試験を行い、その試験結果は表1に示す。
【0045】
[比較例2]
40グラムのポリビニルアルコール(PVA)水溶液(BP-05主剤30重量%主剤、長春人造樹脂)を取り、40グラムの天然ラテックス(60重量%主剤、タイ産)と20グラムの炭酸カルシウムを加え、均一によく混合攪拌して水性接着剤の主剤を完成させる。水性接着剤の硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)を用い、MDI 10 グラムを主剤100 グラムに加え、よく攪拌して使用する。SS-EN 205(Adhesives-Wood adhesives for non-structural applications-Determination of tensile shear strength of lap joints)に記載された方法により木板を接着し、その規定により機械的引張試験片を作製する。引張試験片の完成後、SS-EN 12765(Classification of thermosetting wood adhesives for nonstructural applications)のC 4標準に従って機械的引張側試験を行い、その試験結果は表1に示す。
【0046】
上述した実施例1~4と比較例1~2で作製した接着剤及び組成物と接着強度試験の結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
実施例1及び実施例2を参照されたい。実施例1の配合を用いて製造された水性接着剤で接着された木板は、最も厳しいC 4標準を通過することができる。実施例2では、硬化剤としてPAEを使用しており、実施例2の配合を用いて製造された水性接着剤で接着された木板の強度は、MDIを硬化剤として使用した実施例1よりもわずかに低かったが、それでもC 4標準に合格した。
【0049】
実施例3を参照されたい。実施例3の配合では、ポリビニルアルコールの添加量が増加する。さらに、炭酸カルシウムを添加して水性接着剤全体の固形分を増加させる。このように、実施例3で配合した水性接合剤で接合した木版の接合強度は依然として影響を受けず、C4標準に合格している。
【0050】
実施例4を参照されたい。実施例4の配合によりスチレンブタジエンゴムの比率を向上させている。また炭酸カルシウムを添加して水性接着剤の全体固形分を向上させる。このようにして、実施例4の配合物を使用して製造された水性接着剤で接着された木板の接着強度は、依然として影響を受けず、C 4標準に合格することができる。
【0051】
比較例1を参照されたい。比較例1でポリビニルアルコールを添加せずに作製した水性接着剤は、比較例1の配合で作製した水性接着剤で接着した木板の湿潤状態での接着強度は著しく低下しており、C 4標準も合格できなかった。
【0052】
比較例2を参照されたい。比較例2は、スチレンブタジエンゴムを添加せずに作製した水性接着剤であり、比較例2の配合で作製した水性接着剤で接着した木板の湿潤状態での接着強度が著しく低下しており、C 4標準も合格できなかった。
【0053】
以上のように、本発明の水性接着剤は、ホルムアルデヒドを使用せず、かつ天然の再生可能な原料を導入し、石油化学製品への依存を有効に減少させることができる。本発明が使用する生質材料は天然ラテックスであり、ゴムラテックスと環境に優しく無毒の水溶性高分子を配合し、さらに適切な硬化剤を混合して製造する。本発明の水性接合剤は、木材や竹材に優れた耐水性、接合強度、機械的強度を与える。
【0054】
上記の記載は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神および原理の範囲内でなされたいかなる修正、均等物による置換、改良なども、本発明の範囲内に含まれるべきである。