(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】ミル用臼体及びそのミル装置
(51)【国際特許分類】
A47J 42/04 20060101AFI20250227BHJP
A47J 42/24 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
A47J42/04
A47J42/24
(21)【出願番号】P 2024137005
(22)【出願日】2024-08-16
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390007490
【氏名又は名称】ジャパンポーレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】金澤 和彦
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/109836(JP,A1)
【文献】中国実用新案第218219868(CN,U)
【文献】中国実用新案第208030897(CN,U)
【文献】特開2009-091191(JP,A)
【文献】特開2006-193424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/04
A47J 42/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋状で多条の内周刃が形成された環状の外刃と、
前記外刃の内周孔に挿入して回転駆動され、外周面に螺旋状で多条の外周刃が形成されている略円錐体状の内刃と、を備えるミル用臼体であって、
前記外刃、及び前記内刃の基材は、材質がセラミックスであり、前記基材の表面は、釉薬がかけられ焼成されたガラス質の表皮を有し、
前記内刃は、その上部外周面に複数の突起が設けられると共に、前記突起の外周面に目の粗い螺旋状の送り刃が形成され、
前記外刃は、前記内刃の挿入側である下端開口とは反対側の開口である上端開口が略三角形状であり、
前記上端開口の縁部と前記送り刃との距離が、長い箇所と短い箇所が設けられている
ことを特徴とするミル用臼体。
【請求項2】
請求項1に記載のミル用臼体において、
前記内周刃、及び前記外周刃の刃先は、前記ガラス質が研削された凹凸表面を有する研削面であり、
前記研削面は、前記ガラス質が欠けた波状の凹凸面を有している
ことを特徴とするミル用臼体。
【請求項3】
請求項
2に記載のミル用臼体において、
前記内周刃の下部の前記研削面は球面又は円錐面に形成されており、前記外周刃の下部は球面又は円錐面である
ことを特徴とするミル用臼体。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のミル用臼体を用いたミル装置であって、
前記内刃の回転駆動は手動ハンドルである
ことを特徴とするミル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミル用臼体及びそのミル装置に関する。更に詳しくは、コーヒー豆、胡麻、茶葉、香辛料等の食品用被粉砕物を挽くための手動式、電動式等に用いるミル用臼体及びそのミル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
古くからコーヒー豆、胡麻、茶葉、香辛料等の食品用の被粉砕物を挽くための器具は、手動式、電動駆動方式等が知られており、種々の方法、機構が提案され広く使用されている。この中で、本出願人は、手動式のミル装置を提案した。このミル装置において、被粉砕物を粉砕するための臼体は、内周に刃形が形成された環状の外刃と、この外刃に挿入して回転駆動され、外周面に刃形が形成されている略円錐体状の内刃とからなる臼体を有するミル装置を提案した(例えば、特許文献1)。この臼体は、セラミックス製のものも提案されている。更に、本出願人は、外刃、内刃からなる臼体において、曳きムラが少なく、所望の粒径を有する粉体を多く生成して粒度安定を実現できる刃形を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017/109836
【文献】WO2020/217500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、コーヒー豆等の被粉砕物を粉砕すると、臼体の外刃、内刃に形成された刃形は使い続けると摩耗して、切れ味が悪くなる。切れ味が悪くなると、微細な粉体が多くなり、コーヒー豆の場合、渋み等の雑味の原因にもなる。また、例えば、コーヒー豆、香辛料等を金属製の臼体で挽くと、味に敏感な人は金属臭を感じてしまい金属製の臼体はふさわしくない。そこで本出願人は、セラミックス製の臼体を提案し、製造販売しているが、セラミックス製の臼体は、硬いのでコーヒー豆、香辛料等の被粉砕物を挽くと、僅かであるが刃の先端が欠けやすい問題もある。更に、被粉砕物を粉砕するとき、可能なかぎり、粉砕後は迅速に排出することが好ましい。一般に、セラミックスは、硬くてもろい、摩耗しにくい、耐熱性がある、腐食に強い等の特性が知られている。しかし、セラミックス製の臼体は、その焼成後に研磨等の表面加工はされない。そのために表面に荒さがあるので、これに被粉砕物が引っ掛かり、外刃、内刃で粉砕された被破砕物が粉砕位置から排出され難いという問題がある。被粉砕物を粉砕するとき、粉砕物の排出が円滑でないと、被粉砕物が粉砕されても加圧されてより粒径が小さい粉状となり易い。
【0005】
本発明は、以上の諸問題を背景に以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、セラミックス製の臼体で被粉砕物の切れ味が良い、ミル用臼体及びそのミル装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、セラミックス製の臼体で粉砕物の排出性が高い、ミル用臼体及びそのミル装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、セラミックス製の臼体で再研削できる、ミル用臼体及びそのミル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1のミル用臼体は、内周面に螺旋状で多条の内周刃が形成された環状の外刃と、前記外刃の内周孔に挿入して回転駆動され、外周面に螺旋状で多条の外周刃が形成されている略円錐体状の内刃とからなる臼体を有するミル装置において、前記外刃、及び前記内刃の基材は、材質がセラミックスであり、前記基材の表面は、釉薬がかけられ焼成されたガラス質の表皮を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明2のミル用臼体は、本発明1において、前記内周刃、及び前記外周刃の刃先は、前記セラミックス及び/又は前記ガラス質が研削された凹凸表面を有する研削面であることを特徴とする。
本発明3のミル用臼体は、本発明2において、前記研削面は、前記ガラス質が欠けた波状の凹凸面を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明4のミル用臼体は、本発明1又は2において、前記内周刃の下部の前記研削面は球面又は円錐面に形成されており、前記外周刃の下部は球面又は円錐面であることを特徴とする。
本発明5のミル装置は、本発明1~3において、前記内刃の回転駆動は手動ハンドルであることを特徴とする。
【0009】
[セラミックス]
本発明でいうセラミックスは、ミル用臼体の外刃、内刃を構成する材質であり、特殊なものではなく、一般に陶器、磁器等と呼ばれているもので、無機材料からなるものである。金属・プラスチックと比べて、硬くてもろい・摩耗しにくく、耐熱性があり腐食にも強い特性がある。
【0010】
[釉薬]
本発明でいう釉薬は、外刃、内刃を構成するセラミックスの表面に塗布されて形成されるもので、焼成されてガラス質の表皮を形成するものであり、陶器、磁器等で使用されている一般的なものである。従って、釉薬は、粒子径のサイズも一般的な粒径が、例えば、約7μm以下程度のガラス粉末等を含むもので、かつ例えば、長石、粘土、石灰石、珪石、滑石等を含んでいるものである。また、釉薬におけるガラス粉末の含有量は、特に限定されないが、ガラス粉末の含有量は、釉薬に含まれる固形分の総重量に対して、例えば、50重量%以上100重量%未満が好ましく、70重量%以上100重量%未満がより好ましい。
[ガラス質の表皮]
本発明でいうガラス質の表皮は、ミル用臼体を構成しセラミックスからなる外刃、内刃の表面に形成された層であり、コーヒー粒等の被破砕物を破砕する刃先となるものである。ガラス質の表皮は、硬くて、研削されて角部は鋭い刃先を形成するので、コーヒー豆等のような被破砕物の剪断、圧砕等に用いると、切れ味が良くなり破砕効率が良い。
[研削面]
本発明でいう研削面とは、内周刃、及び外周刃の刃先を構成する、セラミックス及び/又はガラス質が研削、又は研磨された凹凸表面を有する部分をいう。研削面の加工は、固定砥石による研削、内周刃、及び外周刃を遊離砥粒による共摺りによる研磨でも良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の臼体は、本体がセラミックス製の臼体で、この表面がガラス質の表皮が焼成で形成されているので、硬くて被粉砕物の切れ味がよく、粉砕後の粉砕物の排出も円滑で、かつ、摩耗後に再研削、再研磨も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、コーヒー用ミル装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、コーヒー用ミル装置の分解部品図である。
【
図4】
図4は、外刃と内刃を示す拡大縦断面図である。
【
図5】
図5は、下方から見た外刃と内刃を示す拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、上方から見た外刃と内刃を示す拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、外刃の刃を円錐砥石で研磨する方法と研削砥石を示す外観図である。
【
図8】
図8は、外刃の刃を半球形砥石で研磨する方法と研削砥石を示す外観図である。
【
図9】
図9は、外刃の刃を球形砥石で研磨する方法と研削砥石を示す外観図である。
【
図10】
図10は、内刃の刃を円筒状の円錐砥石で研磨する方法と研削砥石を示す断面図である。
【
図11】
図11は、外刃の研磨された刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
【
図12】
図12は、外刃の研磨しない刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
【
図13】
図13は、内刃の研磨された刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
【
図14】
図14は、内刃の研磨しない刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はコーヒー用ミル装置の外観を示す外観図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3はコーヒー用ミル装置の分解部品図である。
図1から
図3に示すように、ミル装置1は、コーヒー豆5を粉砕してコーヒー粉5aにする粉砕ユニット2と、この粉砕ユニット2内で回転する内刃8に下端が連結される駆動軸3と、この駆動軸3に一端が連結される操作ハンドル4とを備えている。操作ハンドル4の他端には、把持して操作するためのグリップ16が設けられている。粉砕ユニット2は、上下が開口された筒状の容器本体6と、この容器本体6内の下部に回動不能に固着され内周面に螺旋状で多条の内周刃7aが球面状に形成された環状の外刃7と、この外刃7内に臨ませた状態で駆動軸3の下部に回動不能に挿通され外周面に螺旋状で多条の外周刃8aが形成された略円錐形状の内刃8と、駆動軸3の下端のネジ部3aに螺合された調整ナット9とを備えている。そして、このうちの内刃8は、回り止め部材10を介して駆動軸3に回動不能に外嵌されている。
【0014】
容器本体6の上端開口6aに着脱可能に嵌着される円盤状の蓋11と、容器本体6の下端開口6bに着脱可能に嵌着される、上方に開いた有底筒状の貯溜容器12が備えられている。このような破砕ユニット2において、蓋11、容器本体6、貯溜容器12は、例えば合成樹脂製、金属製、セラミックス製であり、このうちの蓋11の平面視略中央には、軸孔11aが開口されている。容器本体6内部の軸心上には、筒状の軸支部13aが配置され、この軸支部13aは、固定部13bを介して容器本体6の内壁6cに固定されている。これら軸支部13aと固定部13bとから軸受け13が形成される。そして、このうちの軸支部13aの上下端には、位置決め用のワッシャー14、15が内嵌されている。これにより、駆動軸3は、その上端を軸孔11aに挿通して上方に突出させると共に、途中部分をワッシャー14、15によって軸受け13に回動可能に支持することができる。
【0015】
図4は外刃7と内刃8を示す拡大縦断面図、
図5は下方から見た外刃7と内刃8を示す拡大斜視図、
図6は上方から見た外刃7と内刃8を示す拡大斜視図である。
図4から
図6に示すように、外刃7は、セラミックス製であり、内周刃7aとして、その上部内周面には、目の粗い送り刃7a1が形成されている。また、外刃7の下端開口縁は外側に向かって傾斜状に拡径して形成され、この傾斜面に目の細かな粉砕刃7a2が球面に形成されている。内刃8も、セラミックス製であり、外周刃8aとして、その上部外周面には、目の粗い螺旋状の送り刃8a1が形成される一方、下部外周面に目の細かな粉砕刃8a2が円錐面に形成されている。更に、内刃8には、上下に貫通する貫通孔8bが形成されている。回り止め部材10は、例えば合成樹脂製であり、上下に貫通する軸孔10aが形成され、この軸孔10aに前述の駆動軸3が挿通されている。この駆動軸3の下部側面に突設した突条3b、3bが、回り止め部材10の軸部10bのスリット部分10b1に係止されるようにして、回り止め部材10を駆動軸3に回動不能に挿通することができる。
【0016】
そして、軸部10bを内刃8の貫通孔8bに下方から挿通することにより、回り止め部材10の軸部10bの先端のフランジ部分10b2を、内刃8の貫通孔8bの開口縁に係止している。また、軸部10bの外周に上向きに形成した複数の係止突部(図示せず)を、内刃8の下面の複数の係止凹部8cに嵌合係止させることにより、回り止め部材10を内刃8に対して回動不能に取り付けることができる。加えて、前述の調整ナット9は、例えば合成樹脂製であり、上下に貫通するネジ孔9aが形成され、このネジ孔9aに前述の駆動軸3のネジ部3aが螺挿されている。この調整ナット9の上部には、回り止め部材10の下面に回転摺動可能な環状部9bが形成されている。これにより、内刃8の貫通孔8bに回り止め部材10の軸部10bを挿通して、内刃8と回り止め部材10を回動不能に取り付けて一体化している。また、駆動軸3の下端を回り止め部材10の軸孔10aに挿通し、駆動軸3の突条3b、3bを軸部10bのスリット部分10b1に係止することにより、回り止め部材10を介して内刃8を駆動軸3に回動不能に挿通することができる。
【0017】
更に、調整ナット9のネジ孔9aに駆動軸3の下端のネジ部3aを螺挿することにより、容器本体6に回動不能に固着した外刃7と、駆動軸3を回動不能に挿通した内刃8とにおける各粉砕刃7a2,8a2同士を、互いに対面させた状態で配置することができる。加えて、駆動軸3の位置決め用の前述のワッシャー15と、回り止め部材10のフランジ部分10b2との間の駆動軸3上には、付勢バネ33が巻回されている。ネジ部3aに螺嵌された調整ナット9を回転することにより、回り止め部材10と一体化した内刃8を付勢バネ33の弾性力に抗しながら外刃7に向かって押動することができる。これにより、粉砕刃7a2,8a2間の間隔を精密に変更し、コーヒー粉5aの粒度の細かな調整が可能となる。
【0018】
以上のような構成において、このミル装置1を使って粉砕処理を行う際は、まず、操作ハンドル4を駆動軸3の上端から取り外した後、粉砕ユニット2の蓋11を容器本体6から上方に脱着させて上端開口6aを開放し、この上端開口6aから容器本体6内へコーヒー豆5を投入する。すると、投入されたコーヒー豆5は容器本体6内を流下していき、筒状の外刃7と、この外刃7に下方から内挿された略円錐形状の内刃8との間の隙間19に入り込む。その後、再び蓋11で容器本体6の上端開口6aを閉止し、蓋11の軸孔11aから突出した駆動軸3の上端に操作ハンドル4の一端を連結させる。それから、容器本体6を一方の手で持ち、他方の手で操作ハンドル4のグリップ16を把持して回転させると、内刃8が回転して外刃7と内刃8との間でコーヒー豆5がすり潰される。できたコーヒー粉5aは、下方の貯溜容器12の内部空間内に流下して堆積される。そして、この貯溜容器12を容器本体6から下方に脱着させて、貯溜容器12内のコーヒー粉5aを取り出して使用することができる。
【0019】
この際、コーヒー豆5は、容器本体6内に固着された外刃7の上部内周面の送り刃7a1と、この外刃7に対して一方向に手動回転する内刃8の上部外周面の送り刃8a1との間の隙間19で、粉砕されつつ強制的に下方へ送り込まれる。その後、外刃7と内刃8に形成された粉砕刃7a2、8a2間で更に細かく粉砕された状態で効率よく排出されるようにしている。更に、前述の如く、駆動軸3下端に螺合した調整ナット9を使って、内刃8を駆動軸3に沿って軸心方向前後に進退させ、粉砕刃7a2,8a2間の間隔を精密に変更し、コーヒー豆5の種類や好みに応じてコーヒー粉5aの粒度を調整するようにしている。
【0020】
本発明の実施の形態の外刃7、内刃8はセラミックスであり、釉薬を掛けて焼成している。外刃7、内刃8の素材は強化磁器土(ヤマカ陶料株式会社(本社:日本国岐阜県)製、製品名IMP-1(アルミナ含有。)、添加剤として解膠剤A2を添加)であり、所定の形状に成形した後、乾燥させる。釉薬は製品名SAG-8(ヤマカ陶料株式会社製、添加剤としてにがりを添加)を使用した。乾燥させた外刃7、内刃8に、この釉薬を塗布した後、電気炉で、焼成温度1280℃、焼成時間約10時間で酸化焼成している。なお、外刃7、内刃8は、常法により成形して乾燥後、素焼きした後、焼成しても良い。本発明の実施の形態では、この釉薬を掛けて焼成した外刃7、内刃8を研削砥石で研削し、ガラス質の表面を磨いて使用している。
図7は外刃7の刃(粉砕刃7a2)を円錐砥石74で研磨する方法と研削砥石を示す外観図である。
【0021】
図8は外刃7の刃(粉砕刃7a2)を半球形砥石75で研磨する方法と研削砥石を示す外観図である。
図9は外刃7の刃(粉砕刃7a2)を球形砥石76で研磨する方法と研削砥石を示す外観図である。
図10は内刃8の刃(粉砕刃8a2)を円筒状の円錐砥石83で研削する方法と研削砥石を示す断面図である。
図7から
図10の研削砥石を使った研削方法の他に、外刃7と内刃8を摺り合わせて(共摺り)、研磨する方法もある。この研磨は、例えば酸化セリウム研磨剤等の遊離砥粒である研磨剤で研磨するものである。
図11(a)から
図11(f)は外刃7の研磨された刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
図11(a)は倍率50倍、
図11(b)は倍率100倍、
図11(c)は倍率200倍、
図11(d)は倍率300倍、
図11(e)は倍率500倍、
図11(f)は倍率1000倍である。
図12(a)から
図12(e)は外刃7の研磨していない刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
【0022】
図12(a)は倍率50倍、
図12(b)は倍率100倍、
図12(c)は倍率200倍、(d)は倍率300倍、
図12(e)は倍率500倍である。
図13(a)から
図13(f)は内刃8の研磨された刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
図13(a)は倍率50倍、
図13(b)は倍率100倍、
図13(c)は倍率500倍、
図13(d)は倍率1000倍、
図13(e)は倍率2000倍、
図13(f)は倍率3000倍である。
図14(a)から
図14(e)は内刃8の研磨していない刃先部分を走査電子顕微鏡(SEM)で見た表面写真である。
図14(a)は倍率50倍、
図14(b)は倍率100倍、
図14(c)は倍率200倍、
図14(d)は倍率500倍、
図14(e)は倍率1000倍である。
【0023】
図11から
図14の走査電子顕微鏡写真に示すように、釉薬を掛けて研磨した外刃7、内刃8は、釉薬のガラス質が研削された波状の微細凹凸面を有している。この微細凹凸面は、表面の凹凸が少なく、表面の荒さが小さいので、被粉砕物が引っ掛からず、外刃7、内刃8で粉砕された被破砕物が粉砕位置から排出されやすいので、被粉砕物の切れ味が良い。また、外刃7、内刃8の表面がガラスの表皮で被覆されているので、摩耗して切れ味が悪くなったら、再研削して切れ味を良くすることが可能になる。
【0024】
[その他の実施の形態]
前述した外刃7、内刃8は、釉薬のガラス質を研削加工により波状の微細な凹凸面を形成している。しかしながら、この微細な凹凸面の形成には、研削加工は必須ではない。ミル装置1を使用すると、焼成されたままの外刃7、内刃8は、コーヒー豆等の被破砕物を破砕することにより刃先が摩耗していく。特に、刃先表面の釉薬のガラス質の部分は、使用初期から徐々に摩耗し、この摩耗は微細な凹凸面となる。即ち、釉薬をかけた外刃7、内刃8は、使用により、自然に刃先が構成される。但し、偏摩耗したときは、再研削、再研磨等により形状を整えると良い。また、外刃7の研削には、円錐砥石74、半球形砥石75、球形砥石76を用い、内刃8の研削には、円錐砥石83を用いた。しかしながら、これらの砥石の形状は、これに限定されることはなく、例えば、内刃8の研削に凸球面、凹球面等を有する砥石で研削してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…ミル装置
11…蓋
11a…軸孔
12…貯溜容器
13…軸受け
13a…軸支部
13b…固定部
14、15…ワッシャー
16…グリップ
19…隙間
2…粉砕ユニット
3…駆動軸
3b…突条
3a…ネジ部
33…付勢バネ
4…操作ハンドル
5…コーヒー豆
5a…コーヒー粉
6…容器本体
6a…上端開口
6b…下端開口
6c…内壁
7…外刃
74…円錐砥石
75…半球形砥石
76…球形砥石
7a…内周刃
7a1…送り刃
7a2…粉砕刃
8…内刃
83…円錐砥石
8a…外周刃
8a1…送り刃
8a2…粉砕刃
8b…貫通孔
8c…係止凹部
9…調整ナット
9a…ネジ孔
9b…環状部
10…回り止め部材
10a…軸孔
10b…軸部
10b1…スリット部分
10b2…フランジ部分
【要約】
【課題】セラミックス製の臼体で、切れ味を良くする表面が釉薬からなるガラス質の切刃が形成されたミル用臼体である。
【解決手段】
内周面に螺旋状で多条の内周刃7aが形成された環状の外刃7、この外刃7の内周孔に挿入して回転駆動され、外周面に螺旋状で多条の外周刃8aが形成されている略円錐体状の内刃8からなるミル装置の臼である。外刃7、及び内刃8の基材は、材質がセラミックスであり、基材の表面は、破砕刃となる釉薬がかけられ焼成されたガラス質の表皮を有している。刃先は、セラミックス及びガラス質が研削された凹凸表面を有するものである。
【選択図】
図5