(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】建物のレジリエンス崩壊に伴う重大災害を予防するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20250227BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2024542297
(86)(22)【出願日】2023-02-23
(86)【国際出願番号】 KR2023002606
(87)【国際公開番号】W WO2023163524
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-08-22
(31)【優先権主張番号】10-2022-0024432
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0006045
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524266320
【氏名又は名称】ソテリアエイト カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンドク
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207128(JP,A)
【文献】特開2019-117195(JP,A)
【文献】特開2004-264235(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0085761(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0085168(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第112504710(CN,A)
【文献】福田 隆介,構造物のレジリエンス-自然災害に備えるキーワード-,コンクリート工学,2015年01月,Vol.53,No.1,92~96頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に取り付けられた振動センサ(120)により収集された振動データを含む情報を用いて前記建物の剛性を予測することで、前記建物のレジリエンス崩壊に伴う重大災害を予防するための方法であって、
(a)学習情報生成モジュール(10)により、前記振動データを含む入力情報および前記建物の剛性を含む出力情報が収集される段階;
(b)振動特性学習モジュール(20)が、前記入力情報および前記出力情報を用いて予測モデル(22)を学習する段階;
(c1)前記振動特性学習モジュール(20)に前記振動データが入力されると、前記建物の剛性が出力される段階;
(d)前記(c1)段階で出力された剛性が既に設定された危険レベルの大きさと比較される段階;
(e1)前記(
d)段階において、前記出力された剛性が前記既に設定された危険レベル以上である場合、前記(
c1)段階~前記(
d)段階が繰り返される段階;
(e2)前記(
d)段階において、前記出力された剛性が前記既に設定された危険レベル未満である場合、予め決められた単位期間中に前記建物に加えられた累積衝撃量と前記建物のレジリエンス閾値が比較される段階;
(f1)前記(e2)段階において、前記累積衝撃量が前記建物のレジリエンス閾値以下である場合、前記(c1)段階~前記(e2)段階が繰り返される段階;および
(f2)前記(e2)段階において、前記累積衝撃量が前記建物のレジリエンス閾値超過である場合、アラーム提供モジュール(40)が、建物利用者、隣接建物管理部およびインフラ管理部にアラームを提供する段階;
を含
み、
前記学習情報生成モジュール(10)は、剛性測定部(110)、前処理部(130)、異常気候および災害情報入力部(140)および利用情報測定部(150)を含み、
前記(a)段階は、
(a1)前記剛性測定部(110)により、正常ポイント(A)および劣化ポイント(B)の前記建物の剛性が収集される段階;
(a2)前記振動センサ(120)により、前記正常ポイント(A)および前記劣化ポイント(B)の前記振動データが収集される段階;
(a31)前記前処理部(130)が、前記振動データをFFT(fast fourier transformation)処理し、尖度(Kurtosis)を生成する段階;
(a32)前記前処理部(130)が、前記振動データを用いて、時間に応じた加速度、RMS、ピーク(peak)およびCF(crest factor)を演算する段階;
(a4)前記異常気候および災害情報入力部(140)により、気象情報および災害情報が収集される段階;および
(a5)前記利用情報測定部(150)により、時間帯別の混雑度および時間帯別の物流情報が収集される段階;
を含む、方法。
【請求項2】
前記振動特性学習モジュール(20)は、学習期間決定部(24)を含み、
前記(b)段階は、
(b1)前記尖度(Kurtosis)、前記加速度、前記RMS、前記ピーク、前記CF、前記時間帯別の混雑度、前記時間帯別の物流情報、前記気象情報および前記災害情報を含む前記入力情報が入力されると、前記建物の剛性を含む前記出力情報が出力されるように構成された予測モデル(22)が前記振動特性学習モジュール(20)により学習される段階;および
(b2)前記学習期間決定部(24)は、前記入力情報および前記出力情報を用いて情報損失値(reconstruction loss)を演算し、前記情報損失値を用いて学習期間を調節する段階;
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記(b2)段階の後に、(b3)補正モジュール(30)が、前記(b1)段階で出力された前記建物の剛性と、前記(a1)段階で収集された前記建物の
剛性の関係式を演算する段階;および
前記(c1)段階の後に、(c2)前記補正モジュール(30)が、前記(b3)段階で演算された前記関係式を用いて、前記(c1)段階で出力された前記建物の剛性を補正する段階;
をさらに含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記剛性測定部(110)は、前記建物の壁内部に形成された空洞(cavity)、前記空洞の深さおよび前記建物の剛性を測定するように構成された第1剛性測定装置(112);および
前記建物の剛性を測定するように構成された第2剛性測定装置(114);
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1剛性測定装置(112)が超音波探傷装置であり、
前記第2剛性測定装置(114)がシュミットハンマーである、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記(a32)段階で演算された前記加速度、前記RMS、前記ピークおよび前記CFのローデータ(raw data)の中で異常値の発生が判断される場合、n・σ以上のデータ(この際、nは正の実数)が前記入力情報から除外される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記入力情報は、前記建物の種類をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記累積衝撃量は、衝撃量演算部により演算され、
前記衝撃量演算部は、前記異常気候および災害情報入力部(140)および前記利用情報測定部(150)により収集される情報を用いて前記累積衝撃量を演算する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
建物に取り付けられた振動センサ(120)により収集された振動データを含む情報を用いて前記建物の剛性を予測することで、前記建物のレジリエンス崩壊に伴う重大災害を予防するための装置であって、
前記振動センサ(120)により収集された前記振動データを含む入力情報、および、剛性測定部(110)により収集された前記建物の剛性を含む出力情報を収集するように構成された学習情報生成モジュール(10);
前記入力情報が入力されると、前記出力情報を出力するように構成された予測モデル(22)を学習するように構成された振動特性学習モジュール(20);
前記振動特性学習モジュール(20)により出力された前記建物の剛性を補正するように構成された補正モジュール(30);および
前記補正モジュール(30)により補正された前記建物の剛性を用いてアラームを提供するか否かを決め、前記アラームを提供するように構成されたアラーム提供モジュール(40);
を含
み、
前記学習情報生成モジュール(10)は、
前記振動データを前処理するための前処理部(130)であって、
前記振動データを周波数ドメインに変換して尖度(Kurtosis)を生成するように構成されたFFT変換部(132);および
前記振動データから時間に応じた加速度、RMS、ピーク(peak)、およびCF(crest factor)を演算するための振動特性演算部(134)を含む、前処理部(130);
気象情報および災害情報が入力される異常気候および災害情報入力部(140);および
前記建物の利用情報を収集するように構成された利用情報測定部(150)であって、
時間帯別の混雑度を測定するように構成された利用者混雑度測定部(152)、および
時間帯別の物流情報が入力されるように構成された物流移動情報入力部(154)を含む、利用情報測定部(150);
を含む、装置。
【請求項10】
前記学習情報生成モジュール(10)は
、
前記剛性測定部(110)、前記振動センサ(120)、前記前処理部(130)、前記気象情報および災害情報入力部(140)、および前記利用情報測定部(150)からデータを受信および格納するように構成された学習情報データベース(160);
をさらに含む、請求項
9に記載の装置。
【請求項11】
前記入力情報は、前記加速度、前記RMS、前記ピーク、前記CF、前記尖度、前記気象情報、前記災害情報、前記時間帯別の混雑度および前記時間帯別の物流情報を含む、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記振動特性学習モジュール(20)は、学習期間決定部(24)を含み、
前記学習期間決定部(24)は、前記入力情報と前記出力情報との間の情報損失値(reconstruction loss)を用いて学習期間を調節する、請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記剛性測定部(110)は、前記建物の壁内部に形成された空洞(cavity)、前記空洞の深さおよび前記建物の剛性を測定するように構成された第1剛性測定装置(112);および
前記建物の剛性を測定するように構成された第2剛性測定装置(114);
を含む、請求項
9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の崩壊に伴う重大災害予防システムおよびこれを用いる方法に関し、より詳しくは、建物の老朽化に伴う破壊または建物の解体に伴う破壊による災害を予防するための重大災害予防システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この部分に記述された内容は、単に本開示の背景情報を提供するものであり、従来技術を構成するものではない。
【0003】
近年、建物の崩壊により死亡、失踪、および数千億に達する金銭的損失が引き起こされる事件が頻発している。さらには、再開発時の建物の解体および擁壁の崩壊などにより数多くの人的被害が発生している状況である。
【0004】
このような建物の崩壊に伴う被害を最小化するために、建物の異常挙動を予測し、アラームを提供する研究が増加している。
【0005】
ただし、従来の研究は、建物の挙動をモニターするために振動センサのみを用いるため、精度が低いという問題がある。
【0006】
また、建物利用者による衝撃や、異常気候、天災、災害などに伴う建物の劣化を考慮していないため、精度が低いという問題がある。
【0007】
このため、建物の剛性をさらに測定することができるが、精密な測定が難しいという問題がある。
【0008】
また、膨大な量の情報を体系的に分類したり前処理したりすることができず、建物の崩壊を予測する上で精度が低いという問題がある。
【0009】
なお、建物は一時的に剛性が弱くなることがあるが、この場合、再び建物の剛性が回復することを考慮しないで、誤った災害警報が提供され、混乱を引き起こすという問題がある。
【0010】
さらに、建物の崩壊時に隣接する建物およびインフラに甚大な被害が発生するにもかかわらず、これを体系的に通知できるシステムが不足しているという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、振動センサによりリアルタイムで収集される振動データを用いて、高い精度で建物の剛性を予測することができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本開示は、ユーザが建物利用者の混雑度、異常気候、災害情報を直接入力しなくても自動的に収集することができるため、利便性が増大することができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本開示は、超音波探傷装置の適用が不可能、または超音波探傷装置の結果を信頼し難い条件でも、高い信頼度を有する結果を得ることができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本開示は、入力情報の異常値を除外することで、良質の学習データを得ることができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本開示は、コンクリートに影響を与える様々な事象を考慮することができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本開示は、入力情報のラベリングにより学習精度をさらに向上することができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0017】
また、本開示は、建物構造の剛性の複合的なレジリエンス指標の測定および判断によりフォールスアラームを防止することができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本開示は、人的被害および二次被害を最小化することができるシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及していない他の課題は、以下の記載から通常の技術者に明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示の一実施形態によれば、建物に取り付けられた振動センサ120により収集された振動データを含む情報を用いて建物の剛性を予測することで、建物の崩壊に伴う重大災害を予防するための方法であって、(a)学習情報生成モジュール10により、振動データを含む入力情報および建物の剛性を含む出力情報が収集される段階;(b)振動特性学習モジュール20が、前記入力情報および前記出力情報を用いて予測モデル22を学習する段階;(c1)前記振動特性学習モジュール20に振動データが入力されると、建物の剛性が出力される段階;(d)前記(c1)段階で出力された剛性が既に設定された危険レベルの大きさと比較される段階;(e1)前記(d)段階において、前記出力された剛性が前記既に設定された危険レベル以上である場合、前記(c1)段階~前記(d)段階が繰り返される段階;(e2)前記(d)段階において、前記出力された剛性が前記既に設定された危険レベル未満である場合、予め決められた単位期間中に前記建物に加えられた累積衝撃量と建物のレジリエンス閾値が比較される段階;(f1)前記(e2)段階において、前記累積衝撃量が前記建物のレジリエンス閾値以下である場合、前記(c1)段階~前記(e2)段階が繰り返される段階;および(f2)前記(e2)段階において、前記累積衝撃量が前記建物のレジリエンス閾値超過である場合、アラーム提供モジュール40が、建物利用者、隣接建物管理部、およびインフラ管理部にアラームを提供する段階;を含む、方法を提供する。
【0021】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記学習情報生成モジュール10は、剛性測定部110、前処理部130、異常気候および災害情報入力部140、および利用情報測定部150をさらに含み、前記(a)段階は、(a1)前記剛性測定部110により、正常ポイントAおよび劣化ポイントBの建物の剛性が収集される段階;(a2)前記振動センサ120により、正常ポイントAおよび劣化ポイントBの振動データが収集される段階;(a31)前記前処理部130が、前記振動データをFFT(fast fourier transformation)処理し、尖度(Kurtosis)を生成する段階;(a32)前記前処理部130が、前記振動データを用いて、時間に応じた加速度、RMS、ピーク(peak)、およびCF(crest factor)を演算する段階;(a4)前記異常気候および災害情報入力部140により、気象情報および災害情報が収集される段階;および(a5)前記利用情報測定部150により、時間帯別の混雑度および時間帯別の物流情報が収集される段階;を含む。
【0022】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記振動特性学習モジュール20は、学習期間決定部24を含み、前記(b)段階は、(b1)前記尖度(Kurtosis)、加速度、RMS、ピーク、CF、時間帯別の混雑度、時間帯別の物流情報、気象情報および災害情報を含む入力情報が入力されると、建物の剛性を含む出力情報が出力されるように構成された予測モデル22が振動特性学習モジュール20により学習される段階;および(b2)前記学習期間決定部24は、前記入力情報および前記出力情報を用いて情報損失値(reconstruction loss)を演算し、前記情報損失値を用いて学習期間を調節する段階;を含む。
【0023】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による方法は、前記(b2)段階の後に、(b3)補正モジュール30が、前記(b1)段階で出力された建物の剛性と、前記(a1)段階で収集された建物の関係式を演算する段階;および前記(c1)段階の後に、(c2)前記補正モジュール30が、前記(b3)段階で演算された関係式を用いて、前記(c1)段階で出力された建物の剛性を補正する段階;をさらに含む。
【0024】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記剛性測定部110は、建物の壁内部に形成された空洞(cavity)、前記空洞の深さおよび建物の剛性を測定するように構成された第1剛性測定装置112;および前記建物の剛性を測定するように構成された第2剛性測定装置114を含む。
【0025】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記第1剛性測定装置112が超音波探傷装置であり、前記第2剛性測定装置114がシュミットハンマーである。
【0026】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記(a32)段階で演算された加速度、RMS、ピーク、およびCFのローデータ(raw data)の中で異常値(outlier)の発生が判断される場合、n・σ以上のデータ(この際、nは正の実数)が前記入力情報から除外される。
【0027】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記入力情報は、建物の種類をさらに含む。
【0028】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記累積衝撃量は、衝撃量演算部により演算され、前記衝撃量演算部は、前記異常気候および災害情報入力部140および利用情報測定部150により収集される情報を用いて前記累積衝撃量を演算する。
【0029】
また、本開示の一実施形態によれば、建物に取り付けられた振動センサ120により収集された振動データを含む情報を用いて建物の剛性を予測することで、建物の崩壊に伴う重大災害を予防するための装置であって、振動センサ120により収集された振動データを含む入力情報、および剛性測定部110により収集された建物の剛性を含む出力情報を収集するように構成された学習情報生成モジュール10;前記入力情報が入力されると、前記出力情報を出力するように構成された予測モデル22を学習するように構成された振動特性学習モジュール20;前記振動特性学習モジュール20により出力された建物の剛性を補正するように構成された補正モジュール30;および前記補正モジュール30により補正された建物の剛性を用いてアラームを提供するか否かを決め、アラームを提供するように構成されたアラーム提供モジュール40;を含む、装置を提供する。
【0030】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記学習情報生成モジュール10は、前記振動データを前処理するための前処理部130として、前記振動データを周波数ドメインに変換して尖度(Kurtosis)を生成するように構成されたFFT変換部132;および前記振動データから時間に応じた加速度、RMS、ピーク(peak)、およびCF(crest factor)を演算するための振動特性演算部134を含む前処理部130;気象情報および災害情報が入力される異常気候および災害情報入力部140;建物の利用情報を収集するように構成された利用情報測定部150として、時間帯別の混雑度を測定するように構成された利用者混雑度測定部152;および時間帯別の物流情報が入力されるように構成された物流移動情報入力部154を含む利用情報測定部150;および前記剛性測定部110、前記振動センサ120、前記前処理部130、前記気象情報および災害情報入力部140、および前記利用情報測定部150からデータを受信および格納するように構成された学習情報データベース160;を含む。
【0031】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記入力情報は、前記加速度、RMS、ピーク、CF、尖度、気象情報、災害情報、時間帯別の混雑度、および時間帯別の物流情報を含む。
【0032】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記振動特性学習モジュール20は、学習期間決定部24を含み、前記学習期間決定部24は、前記入力情報と前記出力情報との間の情報損失値(reconstruction loss)を用いて学習期間を調節する。
【0033】
また、好ましくは、本開示の一実施形態による前記剛性測定部110は、建物の壁内部に形成された空洞(cavity)、前記空洞の深さおよび建物の剛性を測定するように構成された第1剛性測定装置112;および前記建物の剛性を測定するように構成された第2剛性測定装置114を含む。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、振動センサにより収集される情報を用いて建物の剛性を予測することで、建物の異常挙動(abnormal behavior)を検出することができる。これにより、建物の破壊または崩壊の発生前に予め対処できるという効果がある。
【0035】
また、利用情報測定部、異常気候および災害情報入力部は、既に入力された資料を用いるか、または外部データベースと協働して情報を収集するように構成されるため、実際にはユーザが振動センサにより収集される振動データのみを入力すればよいという効果がある。
【0036】
また、超音波探傷装置の結果に対する信頼度が低くなる環境でシュミットハンマーがさらに用いられることで、結果に対する信頼度を向上できるという効果がある。
【0037】
また、超音波探傷装置の使用が困難な環境でシュミットハンマーを代替的に選択することで、どのような環境でもコンクリートの内部強度を測定できるという効果がある。
【0038】
また、入力資料のうち、加速度、RMS、ピーク、およびCFの中で異常値(outlier)の発生が判断される場合、1σ以上の値が除外されるため、得られる情報のうち、ノイズとして扱われ得るデータが除外され、良質の学習データが得られるという効果がある。
【0039】
また、本開示は、コンクリートに影響を与える気候変化や災害を考慮するため、より高い精度で建物の剛性を予測できるという効果がある。
【0040】
また、コンクリートに影響を与える利用者も考慮するため、より高い精度で建物の剛性を予測できるという効果がある。
【0041】
また、コンクリートに影響を与える積載物流および移送システムの積載量および流れに伴う構造体の荷重も考慮するため、より高い精度で建物の剛性を予測できるという効果がある。
【0042】
また、振動データのラベリングにより学習精度がさらに向上するという効果がある。
【0043】
また、一時的な建物の剛性の弱化が本当に建物の破壊または崩壊を引き起こさないと判断するため、建物の剛性のレジリエンス(Resilience)を考慮してフォールスアラーム(false alarm)を防止することができる。これにより、不要な避難、不安感の醸成などを防止できるという効果がある。
【0044】
また、建物を利用する利用者に提供されるアラームにより、利用者が建物の崩壊が発生する前に予め建物を脱出することができるため、人的被害を最小化できるという効果がある。
【0045】
また、測定対象となる建物周辺の隣接建物利用者および常駐人員にもアラームが提供されることができるため、二次被害を最小化できるという効果がある。
【0046】
また、通信会社、電気公社、消防署、韓国電力公社、都市ガス公社などの機関や省庁にアラームが提供されることで、二次被害を最小化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本開示の一実施形態による重大災害予防システムのブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態による重大災害予防方法のフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施形態による学習情報生成モジュールのブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態によるデータの流れを示したものである。
【
図5】本開示の一実施形態による振動センサおよび前処理部により処理されるデータを説明するためのものである。
【
図6】本開示の一実施形態による利用情報測定部により処理されるデータを説明するためのものである。
【
図7】本開示の一実施形態による尖度(Kurtosis)を説明するためのものである。
【
図8】本開示の一実施形態による重大災害予防システムにより予測された数値と実際の数値を比較したものである。
【
図9】本開示の一実施形態によるアラーム提供モジュールがアラームを提供する範囲を説明するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本開示の一部の実施形態を例示的な図面により詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付するにあたり、同一の構成要素に対しては他の図面上に表示されるときにも可能な限り同一の符号を付するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するにあたり、関連する公知の構成または機能に関する具体的な説明が本開示の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0049】
本開示による実施形態の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、i)、ii)、a)、b)などの符号を用いてもよい。このような符号はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものにすぎず、その符号により当該構成要素の本質または序列や順番などが限定されることはない。本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」または「備える」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0050】
本開示において、「建物の剛性」とは、振動センサが取り付けられた付近の内部強度を意味する。建物は、コンクリートで建設されるのが一般的であるため、本開示における建物の剛性は、振動センサが取り付けられた地点でのコンクリート強度と理解することが好ましい。本開示では、建物の剛性の単位がMpaであることを前提に説明する。
【0051】
また、本開示において、「建物のレジリエンス(resilience)」とは、建物の局所部位に短期間に集中された力が加えられた後、建物の剛性が一時的に低下した後、再び本来の剛性に回復しようとする性質を意味する。以下、レジリエンスを超え、これ以上本来の剛性に回復しない累積衝撃量を「建物のレジリエンス閾値」と称する。
【0052】
また、本開示において、重大災害予防システム1は、建物以外にも擁壁、橋梁、ダムを含むコンクリート施設物に適用することができるが、説明の便宜上、建物に適用する場合を想定して説明する。
【0053】
重大災害予防システムの概要
図1は、本開示の一実施形態による重大災害予防システムのブロック図である。
図2は、本開示の一実施形態による重大災害予防方法のフローチャートである。
【0054】
本開示の一実施形態によれば、建物に取り付けられた一つ以上の振動センサにより収集される振動データが重大災害予防システム1に入力されると、重大災害予防システム1は、建物の剛性、より具体的には建物を構成するコンクリートの内部強度(単位は、好ましくはMPa)を出力するように構成される。また、予測される建物の剛性が危険レベル以上であると判断され、重大災害が予想される場合には、アラームを提供することで、重大災害からの被害者を最小化することができる。すなわち、本開示によれば、振動センサにより収集される情報を用いて建物の剛性を予測することで、建物の異常挙動(abnormal behavior)を検出することができる。これにより、建物の破壊または崩壊の発生前に予め対処できるという効果がある。
【0055】
このために、本開示の一実施形態による重大災害予防システム1は、学習情報生成モジュール10、振動特性学習モジュール20、補正モジュール30、およびアラーム提供モジュール40の全部または一部を含む。
【0056】
学習情報生成モジュール10は、振動特性学習モジュール20が学習するために必要な情報を生成するように構成される。このために、学習情報生成モジュール10は、剛性測定部110、振動センサ120、前処理部130、異常気候および災害情報入力部140、利用情報測定部150、および学習情報データベース160の全部または一部を含む。学習情報生成モジュール10の学習情報の生成に関する詳細な説明は、
図3~
図7を参照して詳細に説明する。
【0057】
振動特性学習モジュール20は、学習情報生成モジュール10により生成および収集された情報を用いて、建物の剛性を予測できる予測モデルを学習するように構成される。振動特性学習モジュール20の構成および機能に関しては、
図4を参照して詳細に説明する。
【0058】
補正モジュール30は、振動特性学習モジュール20により出力された建物の剛性と、実際の建物の剛性との相関関係を用いて、出力された建物の剛性を実際の建物の剛性の値に近似的に補正するように構成される。補正モジュール30の機能に関しては、
図8を参照して詳細に説明する。
【0059】
アラーム提供モジュール40は、補正された建物の剛性が予め決められた危険レベル(threshold)に達したと判断されると、建物利用者および隣接建物の管理事務所、測定対象建物と関連したインフラ施設にアラームを提供するように構成される。アラーム提供モジュール40に関しては、
図9を参照して詳細に説明する。
【0060】
図2を参照して、本開示の一実施形態による重大災害予想システムを用いた重大災害予想方法の全体的な順序を説明する。
【0061】
振動セン120、利用情報測定部150、異常気候および災害情報入力部140により予測モデル入力情報(input information)が収集され、剛性測定部110により予測モデル出力情報(output information)が収集される(S200)。
【0062】
振動特性学習モジュール20は、S
200段階で収集された情報の全部または一部を用いて、予測モデル22(
図4参照)を学習する(S210)。この際、予測モデル22は、振動センサ120によりセンシングされた情報を含む情報が入力されると、建物の剛性を出力するように構成される。
【0063】
予め決められた学習期間だけ学習が完了すると、予測モデル22に振動センサ120により予測モデルの学習に用いられなかった新しいセンシング情報が入力され、建物の剛性(具体的にはコンクリートの内部強度)が出力される(S220)。一方、利用情報測定部150、異常気候および災害情報入力部140は、既に入力された資料を用いるか、または外部データベース(例えば、気象庁のデータベース)と協働して情報を収集するように構成されるため、実際にはユーザは振動センサにより収集される振動データのみを入力すればよいという効果がある。この際、好ましくは、出力された建物の剛性が補正モジュール30により補正されることができるが、これは設計者の必要に応じて適切に選択可能であることに留意しなければならない。
【0064】
その後、出力および/または補正された建物の剛性が既に設定された危険レベル(threshold)と比較される。S230段階において、仮に、出力された建物の剛性が既に設定された危険レベル以上であると判断されると、S220段階に戻る。すなわち、危険数値よりも大きいため、アラームが鳴らないようにするためである。
【0065】
仮に、出力された建物の剛性が既に設定された危険レベル(threshold)よりも低いと判断されると、アラーム提供モジュール40は、単位期間中に累積された累積衝撃と、建物のレジリエンス閾値とを比較する(S240)。S240段階において、仮に、累積衝撃が建物のレジリエンス閾値以下であると判断されると、S220段階に戻る。
【0066】
S240段階において、累積衝撃が建物のレジリエンスよりも大きいと判断されると、アラーム提供モジュール40がアラームを提供する(S250)。この際、アラーム提供モジュール40は、建物利用者および隣接建物の管理事務所、測定対象建物と関連したインフラ施設にアラームを提供することができる。
【0067】
以下、S200~S220段階について詳細に説明する。
【0068】
学習のためのデータ収集および前処理
図3は、本開示の一実施形態による学習情報生成モジュールのブロック図である。
図5は、本開示の一実施形態による振動センサおよび前処理部により処理されるデータを説明するためのものである。
図6は、本開示の一実施形態による利用情報測定部により処理されるデータを説明するためのものである。
図7は、本開示の一実施形態による尖度(Kurtosis)を説明するためのものである。
【0069】
図3および
図5~
図7を参照して、学習のためのデータの種類について説明する。
【0070】
図3を参照すると、本開示の一実施形態による学習情報生成モジュール10は、剛性測定部110、振動センサ120、前処理部130、異常気候および災害情報入力部140、利用情報測定部150、および学習情報データベース160の全部または一部を含む。
【0071】
剛性測定部110は、建物の一部分に設置または取り付けられ、建物の剛性を測定するように構成される。
【0072】
剛性測定部110は、正常ポイントAおよび劣化ポイントBにそれぞれ取り付けられることができる。ここで、正常ポイントAおよび劣化ポイントBは、精密安全診断結果により決められる地点である。精密安全診断とは、法令により提供される基準に従って行われる建物安全診断を意味する。精密安全診断結果は、建物の所有者または建物の利害関係者がアクセスできる外部データベース(図示せず)に格納され、精密安全診断結果を用いて、正常と判断された正常ポイントAおよび老朽化に伴う構造体強度の劣化と判断された劣化ポイントBそれぞれに剛性測定部110が取り付けられる。
【0073】
剛性測定部110は、超音波探傷装置112およびシュミットハンマー114を含む。
【0074】
超音波探傷装置112は、取り付けられた建物に超音波を送信し、反射される超音波を受信するように構成される。また、送信した超音波と反射される超音波を比較し、建物の壁内部に形成された空洞(cavity)を検出することができる。また、建物の壁内部に形成された空洞の深さおよび建物の剛性を測定することができる。
【0075】
シュミットハンマー(Schmidt Hammer)114は、コンクリートの内部強度を試験するように構成される。このために、シュミットハンマーは、取り付けられた壁面に衝撃を加え、反発度を測定して内部強度を推定するように構成される。
【0076】
一方、本開示による剛性測定部110は、超音波探傷装置112を基本的に含み、シュミットハンマー114を選択的にまたは追加的に含むことができる。これは、超音波探傷装置112の使用が困難な環境でシュミットハンマー114を代替的に選択することで、どのような環境でもコンクリートの内部強度を測定できるという効果があるためである。一般的に超音波探傷装置112がシュミットハンマー114よりも高い精度を有するものではあるが、シュミットハンマー114の場合、操作方法が簡単かつ安価であるため、様々な場所に適用できるという利点がある。したがって、一部の限られた環境では、超音波探傷装置112の代わりにシュミットハンマー114を用いることができる。
【0077】
振動センサ120は、振動データを収集するように構成され、このために、正常ポイントAおよび劣化ポイントBにそれぞれ取り付けられる。
【0078】
前処理部130は、振動センサ120により収集された振動データを処理するように構成される。このために、前処理部130は、FFT変換部132および振動特性演算部134を含む。
【0079】
振動データは、時間に応じた加速度に関する情報である(
図5参照)。FFT変換部132は、振動データを時間領域(time domain)から周波数領域(frequency domain)に変換して周波数データを生成するように構成される。FFT変換部132により処理された周波数データは、周波数に対する加速度情報、または周波数に対する振幅(amplitude)情報であってもよい。
【0080】
周波数に対する加速度情報は、
図5のFFT変換部132の下方に示されたグラフのような形状で現れることができる。周波数に対する振幅情報は、
図7に示されたグラフのように尖度(Kurtosis)形状で現れることができる。
【0081】
振動特性演算部134は、振動データを用いて、加速度、RMS(root means square)、ピーク(peak)、およびCF(crest factor)を演算するように構成される。加速度、RMS、ピーク、CFは、
図5の振動特性演算部134の下方に示されたグラフを用いて理解することができる。
【0082】
振動特性演算部134は、まとめられた加速度、RMS、ピーク、およびCFにおいてノイズに近いと判断されるデータ、すなわち、異常値がデータに存在すると判断されると、これを特定の範囲を通じて除外させることで良質のデータを構築することができる。加速度、RMS、ピーク、およびCFは、第1期間単位で第2期間中にまとめられた振動データから確認される情報であり、特定の範囲から外れる値を除外することが好ましい。ここで、第1期間は例えば10秒であり、第2期間は10分であってもよく、特定の範囲は1σであってもよい。ただし、これは、例示的な数値にすぎず、第1期間、第2期間の長さおよび特定の範囲は、ユーザにより適切に設計変更が可能であることに留意する。このように加速度、RMS、ピーク、およびCFのうち、特定の範囲(例えば、1σ)以上の値が除外されるため、得られる情報のうち、ノイズとして扱われ得るデータ、すなわち、異常値が除外され、良質の学習データが得られるという効果がある。
【0083】
異常気候および災害情報入力部140は、コンクリートの劣化に影響を及ぼす気象変化および災害が入力されるように構成される。設計時に考慮できなかった酷寒や猛暑、大雨、地震、台風などの事象が発生する場合、コンクリートからなる構造物が影響を受けることになる。異常気候および災害情報入力部140には、定められた期間、例えば、一週間または一四半期単位を基準に気象変化および災害情報が入力される。本開示は、コンクリートに影響を与える気候変化や災害を考慮するため、より高い精度で建物の剛性を予測できるという効果がある。
【0084】
利用情報測定部150は、建物の時間に応じた利用情報が入力されるように構成される。このために、利用情報測定部150は、利用者混雑度測定部152および物流移動情報入力部154を含む。
【0085】
利用者混雑度測定部152は、時間帯別の混雑度(
図6の(a)参照)を測定するように構成される。
図6の(a)は、2022年7月~8月の時間帯別の仁川空港利用者数の平均を示したものである。
図6の(a)を参照すると、8時から20時までの利用者が最も多いことが分かる。利用者の荷重に応じた衝撃も建物の剛性に影響を与える。本開示は、コンクリートに影響を与える利用者も考慮するため、より高い精度で建物の剛性を予測できるという効果がある。
【0086】
物流移動情報入力部154は、時間帯別の物流情報(
図6の(b)参照)が入力されるように構成される。
図6の(b)は、2022年7月~8月の時間帯別に仁川空港に配置される貨物の重量平均を示したものである。
図6の(b)を参照すると、9時から20時までの貨物の重量が最も重いことが分かる。すなわち、9時から20時の間に観測される振動データは、オフィスや居住用の建物であれば、建物に出入りする貨物の重量が重要ではないが、物流倉庫や空港であれば、建物に出入りする貨物の重量が建物の剛性に影響を与える。本開示は、コンクリートに影響を与える物流の重量も考慮するため、より高い精度で建物の剛性を予測できるという効果がある。
【0087】
時間帯別の混雑度を用いて、最も混雑度の小さい早朝時間帯(Ta)および最も混雑度の高い昼間時間帯(Tb)を抽出することができる。
図6の例によれば、Taは5時から6時までであり、Tbは17時から18時までであってもよい。当該時間帯を考慮して当該時間帯での振動データがラベリング(labeling)され、予測モデル22に入力されることができる。同様に、時間帯別の物流情報を用いて、振動データをさらにラベリング(labeling)してもよい。振動データのラベリングにより学習精度がさらに向上するという効果がある。
【0088】
一方、
図6に示された情報は、利用者混雑度および物流移動情報を説明するための例示的なものであり、建物の種類などに応じて得られる情報が異なることができる。
【0089】
学習情報データベース160は、剛性測定部110、振動センサ120、前処理部130、異常気候および災害情報入力部140、利用情報測定部150により収集されたデータを受信および格納するように構成される。この際、好ましくは、学習情報データベース160は、受信した情報をデータセット化して格納する。例えば、学習情報データベース160は、入力される情報をベクトル化して格納することができる。
【0090】
学習情報データベース160に建物の種類がさらに入力されることができる。建物の種類としては、例えば、一般建物、百貨店、スーパー、公共施設(例えば、体育施設、図書館など)、空港、学校、コンクリート擁壁、産業団地のインフラ施設などが挙げられる。
【0091】
学習情報データベース160は、振動特性学習モジュール20の要求がある場合、格納したデータセットを振動特性学習モジュール20に送信することができる。
【0092】
学習モデルの入力資料、出力資料、および予測結果
図4は、本開示の一実施形態によるデータの流れを示したものである。
【0093】
図4を参照すると、振動特性学習モジュール20は、予測モデル22を学習するように構成される。予測モデル22は、振動センサ120および前処理部130により収集または処理された加速度、RMS、ピーク、CF、および尖度(Kurtosis)、利用者混雑度測定部152により測定された時間帯別の混雑度、物流移動情報入力部154に入力された時間帯別の物流情報、異常気候および災害情報入力部140に入力された気象情報および災害情報を入力資料とし、剛性測定部110により測定された建物の剛性を出力資料とする。
【0094】
好ましくは、予測モデル22は、教師なし学習(Unsupervised learning)または強化学習(Reinforcement Learning)モデルにより実現されることができる。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、ANN(artificial neural network)、CNN(convolutional neural network)、RNN(recurrent neural networks)、ベイジアンネットワーク(Bayesian network)、LSTM(Long Short-Term Memory)、GAN(Generative adversarial network)、Transformer、決定木(decision tree)のいずれかにより実現されてもよく、必ずしも前記モデルに限定されるものではなく、どのような種類の予測用モデルにより実現されてもよい。
【0095】
時系列振動データの異常検出は、観測値ポイントの異常、データ傾向性の変化による異常などを検出するものであり、異常の程度を示すanomaly scoreを時系列区間ごとに測定し、前述した人工知能予測モデルの各方法ごとにanomaly scoreを測定する方式は、「Reconstruction error」、「Prediction error」、および「Dissimilarity」というカテゴリーに分けることができ、ここでは、各予測モデルに最適なanomaly scoreを測定する。
【0096】
例えば、LSTMとAutoencoder方式を用いる場合、予測モデルの作動方式が時系列データを低次元空間にエンコードさせた後、エンコードされたベクトルを再びデコードさせる方式でreconstruction errorを測定する。このように測定されたReconstruction errorは、正常データである場合、その値が小さく、異常データである場合、その値が大きくなることを仮定して異常データの検出を行う。
【0097】
振動特性学習モジュール20は、学習期間を任意に定めてもよいが、好ましくは、より高い精度の結果を得るために学習期間を調節してもよい。このために、振動特性学習モジュール20は、学習期間決定部24をさらに含むことができる。
【0098】
学習期間決定部24は、予測モデル22により出力された建物の剛性、および予測モデル22に入力される入力資料と出力資料の差に対する情報損失値(reconstruction loss)を考慮して学習期間を再設定することができる。具体的には、情報損失値の変則(anomaly)の程度が予め設定された基準(threshold)範囲内に入るまで学習期間を調節することができる。これにより、予測モデル22がどのような種類の学習モデルにより実現されても適切な学習期間を設定することができ、既に与えられたデータの様々なモデルに対する互換性が高くなることができる。
【0099】
図8は、本開示の一実施形態による重大災害予防システムにより予測された数値と実際の数値を比較したものである。
【0100】
図8を参照すると、実際の建物の剛性(actual軸参照)と、振動特性学習モジュール20により出力された建物の剛性(predicted軸参照)が高い相関度を有することが確認される。
【0101】
ただし、実際の建物の剛性と出力された建物の剛性がある程度の差があり得るため、予測モデル22により出力された建物の剛性を補正する必要がある。このために、本開示の重大災害予防システム1は、補正モジュール30を介して、出力された建物の剛性が実際の建物の剛性に近似するように、出力された建物の剛性を補正することができる。例えば、補正モジュール30は、線形回帰(linear regression)を用いて、出力された建物の剛性を補正することができる。ただし、これは一例にすぎず、ユーザにより適切な補正式を選択できることに留意する。
【0102】
以下、出力された建物の剛性を用いてアラームを提供するか否かについて判断する方法について詳細に説明する(
図2のS230~S250段階参照)。
【0103】
アラーム提供方法
図2のS230段階によれば、アラーム提供モジュール40は、出力された建物の剛性が既に設定された危険レベル(threshold)よりも大きいか否かを判断することができる。この際、既に設定された危険レベルは、建物の構造基準などに関する規則で指定された構造安全基準強度であってもよい。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、安全管理者または建物の所有者の管理レベルに応じて調整が可能である。
【0104】
仮に、出力された建物の剛性が既に設定された危険レベル以上であると判断された場合、アラーム提供モジュール40がアラームを提供しないことに決める。したがって、振動センサ120を用いて振動データを収集する段階に再び戻る。
【0105】
図2のS240段階によれば、出力された建物の剛性が既に設定された危険レベル未満であると判断された場合、アラーム提供モジュール40は、累積衝撃が建物のレジリエンス閾値よりも大きいか否かを判断する。
【0106】
建物の局所部位に短期間に集中された力が加えられた後には、建物の剛性が一時的に低下し得る。このような衝撃が累積される場合、建物がレジリエンスを失うことになる。ここで、建物がレジリエンスを失う衝撃量の大きさをレジリエンス閾値という。累積された衝撃量の大きさは、予め設定された期間、すなわち、単位期間に建物に加えられる衝撃量の大きさを累積したものである。このために、別途設けられた衝撃量演算部(図示せず)は、異常気候および災害情報入力部140および利用情報測定部150により測定または入力される情報を用いて累積衝撃量を演算することができる。
【0107】
例えば、異常気候および災害情報入力部140により測定対象となる建物周辺で地震が発生したことが確認されると、衝撃量演算部は、地震の震度、震源までの距離、および地震の持続時間を用いて、建物に加えられる衝撃量の大きさを演算することができる。または、利用情報測定部150により1時間の間に建物の利用可能な人員の2倍以上の人員および物流が検出される場合、衝撃量演算部は、利用者および物流の自重により建物に加えられる衝撃量の大きさを演算することができる。
【0108】
S240段階において、累積衝撃量の大きさが建物のレジリエンス閾値以下であると判断された場合、アラーム提供モジュール40がアラームを提供しないことに決める。したがって、振動センサ120を用いて振動データを収集する段階に再び戻る。すなわち、一時的な建物の剛性の弱化による結果が本当に建物の破壊または崩壊を引き起こさないと判断したものであり、フォールスアラーム(false alarm)を防止することができる。これにより、不要な避難、不安感の醸成などを防止できるという効果がある。
【0109】
S240段階において、累積衝撃量の大きさが建物のレジリエンス閾値よりも大きいと判断された場合、S250段階のようにアラーム提供モジュール40がアラームを提供することに決める。
【0110】
ここで、アラーム提供モジュール40が提供するアラームは、建物内の利用者に提供されるアラーム、隣接建物管理部に提供されるアラーム、および建物と関連したインフラ施設に提供されるアラームを含む。
【0111】
建物内の利用者に提供されるアラームは、例えば、スピーカ(speaker)またはディスプレイ(display)を介して提供されることができる。または、建物内の利用者の端末に設置されたアプリケーション(例えば、百貨店のアプリケーション)を介してプッシュアラームなどを提供することができる。これにより、建物を利用する利用者が建物の崩壊が発生する前に予め建物を脱出することができるため、人的被害を最小化できるという効果がある。
【0112】
隣接建物管理部に提供されるアラームは、隣接建物に設けられた管理部に設けられた端末などを介して提供されることができる。ここで、隣接建物は、
図9に示すように、測定対象建物と対面する建物および施設物を含むことができる。測定対象建物が崩壊する場合、崩壊時に発生する落石や粉塵などにより、隣接建物に二次被害が発生し得る。一方、隣接建物管理部にアラームが提供されると、落石および衝撃による被害に備えることができ、隣接建物利用者および常駐人員にもアラームが提供されることができるため、二次被害を最小化できるという効果がある。
【0113】
建物と関連したインフラ施設に提供されるアラームは、例えば、架空高圧線、通信施設、高圧タンク、変電所、都市ガスおよび上水道を主管する機関、省庁、および施設に提供されることができる。電気、通信、ガス、水道などのインフラに危害が加えられる場合には広範囲に被害が発生し得る。したがって、通信会社、電気公社、消防署、韓国電力公社、都市ガス公社などの機関や省庁にアラームが提供されることで、二次被害を最小化できるという効果がある。
【0114】
以上の説明は本実施形態の技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本実施形態が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本実施形態の本質的な特性から逸脱しない範囲内で様々な修正および変形が可能である。したがって、本実施形態は本実施形態の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、このような実施形態により本実施形態の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施形態の保護範囲は後述する特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内のすべての技術思想は本実施形態の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0115】
1 ・・・重大災害予防システム
10 ・・・学習情報生成モジュール
20 ・・・振動特性学習モジュール
30 ・・・補正モジュール
40 ・・・アラーム提供モジュール
110 ・・・剛性測定部
120 ・・・振動センサ
130 ・・・前処理部
140 ・・・異常気候および災害情報入力部
150 ・・・利用情報測定部
160 ・・・学習情報データベース
【要約】
本開示の一実施形態によれば、建物に取り付けられた振動センサ120により収集された振動データを含む情報を用いて建物の剛性を予測することで、建物の崩壊に伴う重大災害を予防するための方法であって、(a)学習情報生成モジュール10により、振動データおよび建物の剛性が収集される段階;(b)振動特性学習モジュール20が、予測モデル22を学習する段階;(c1)振動特性学習モジュール20に振動データが入力されると、建物の剛性が出力される段階;(d)前記(c1)段階で出力された剛性が既に設定された危険レベルの大きさと比較される段階;(e2)前記(d1)段階において、出力された剛性が既に設定された危険レベル未満である場合、予め決められた単位期間中に建物に加えられた累積衝撃量と建物のレジリエンス閾値が比較される段階;および(f2)前記(e2)段階において、累積衝撃量が前記建物のレジリエンス閾値超過である場合、アラーム提供モジュール40が、建物利用者、隣接建物管理部、およびインフラ管理部にアラームを提供する段階;を含む、方法を提供する。
【選択図】
図1