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特許7641094電気デバイスにおける絶縁破壊事象及び部分放電事象を音響により検出するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】電気デバイスにおける絶縁破壊事象及び部分放電事象を音響により検出するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20250227BHJP
【FI】
G01R31/12 A
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020104955
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021009139
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】16/447,774
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】セバーンズ, クリストファー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハル, ジョン アール.
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-147890(JP,A)
【文献】特開平09-178712(JP,A)
【文献】特開平09-229993(JP,A)
【文献】特開平01-277775(JP,A)
【文献】特開平05-045402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0091597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気デバイスの絶縁破壊又は部分放電を音響により検出するためのシステムであって、
前記電気デバイスの音響振動を検出するよう構成された、少なくとも1つの電気音響(EA)トランスデューサと、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサに電気的に接続されたコントローラ
4つの脚部を有する四辺形検出回路であって、前記4つの脚部のうちの3つは既知の電気抵抗を有し、前記4つの脚部のうちの1つが前記電気デバイスを含み、前記四辺形検出回路は前記コントローラに電気的に接続されている、四辺形検出回路と
を備え、
前記コントローラは、メモリに記憶された命令を実行するよう構成されており、前記命令は、実行されると、前記コントローラに、少なくとも、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから信号を受信することと、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号を解析することと、
前記解析に基づいて、前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記電気デバイスの部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むかどうかを判定することと、
前記四辺形検出回路から少なくとも1つの測定値を受信することと、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動に関連する前記データを含むという判定に応じて、前記判定を、前記四辺形検出回路から受信した前記少なくとも1つの測定値に基づいて検証することと、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動に関連する前記データを含むという判定に応じて、警報を生成することとを実施させる、システム。
【請求項2】
前記四辺形検出回路が、ホイートストンブリッジとシェーリングブリッジのうちの一方である、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動に関連する前記データを含むという前記判定を検証するために、前記命令は、実行されると、前記コントローラに、少なくとも、
前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動の期間及び前記メモリに記憶された音速から、前記電気デバイスの誘電体内の、部分放電を発生させているボイドの、少なくとも1つの物理的寸法の第1推定値を算出することと、
前記四辺形検出回路から受信した前記少なくとも1つの測定値から、前記ボイド内の電場を算出し、かつ、算出された前記電場から、前記電気デバイスの前記誘電体内の前記ボイドの前記少なくとも1つの物理的寸法の第2推定値を算出することと、
前記少なくとも1つの物理的寸法の前記第1推定値と、前記少なくとも1つの物理的寸法の前記第2推定値とを比較することとを更に実施させる、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記EAトランスデューサが、前記電気デバイスの誘電体に機械的に連結されて前記音響振動を検出するよう構成された、コンタクトマイクである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記EAトランスデューサが、前記電気デバイスの誘電体に機械的に連結されて前記音響振動を検出するよう構成された、圧電マイクである、請求項1に記載の電気システム。
【請求項6】
前記音響振動が前記電気デバイスの誘電体における構造的なものであり、前記EAトランスデューサが、前記電気デバイスの前記誘電体に機械的に連結されて前記音響振動を検出するよう構成される、請求項1に記載の電気システム。
【請求項7】
電気デバイスの部分放電を音響により検出するための方法であって、
少なくとも1つの電気音響(EA)トランスデューサに電気的に接続されたコントローラによって、前記少なくとも1つのEAトランスデューサから信号を受信することであって、前記EAトランスデューサは、前記電気デバイスに機械的に連結されており、かつ前記電気デバイスの音響振動を検出するよう構成されている、信号を受信することと、
前記コントローラによって、前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号を解析することと、
前記コントローラによって、かつ前記解析に基づいて、前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記電気デバイスの部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むかどうかを判定することと、
前記コントローラによって、4つの脚部を有する四辺形検出回路から少なくとも1つの測定値を受信することであって、前記4つの脚部のうちの3つは既知の電気抵抗を有し、前記4つの脚部のうちの1つが前記電気デバイスを含み、前記四辺形検出回路は前記コントローラに電気的に接続されている、少なくとも1つの測定値を受信することと、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動に関連する前記データを含むという判定に応じて、前記コントローラによって、前記判定を、前記四辺形検出回路から受信した前記少なくとも1つの測定値に基づいて検証することと、
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動に関連する前記データを含むという判定に応じて、警報を生成することとを含む、方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した前記信号が、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動に関連する前記データを含むという前記判定を検証するために、
前記コントローラによって、前記部分放電の周波数範囲内の前記音響振動の期間及びメモリに記憶された音速から、前記電気デバイスの誘電体内の、前記部分放電を発生させているボイドの、少なくとも1つの物理的寸法の第1推定値を算出することと、
前記コントローラによって、前記四辺形検出回路から受信した前記少なくとも1つの測定値から、前記ボイド内の電場を算出し、かつ、算出された前記電場から、前記電気デバイスの前記誘電体内の前記ボイドの前記少なくとも1つの物理的寸法の第2推定値を算出することと、
前記コントローラによって、前記少なくとも1つの物理的寸法の前記第1推定値と、前記少なくとも1つの物理的寸法の前記第2推定値とを比較することとを更に含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示の分野は、概して、電気デバイス内の絶縁破壊及び/又は部分放電を検出するためのシステム及び方法に関し、より詳細には、電気デバイスの絶縁破壊を音響により検出するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
電気的構成要素(プリント回路基板やプリント配線基板の誘電体基板など)を試験するための、少なくともいくつかの既知の方法は、この構成要素を、大きな直流電流(DC)又は交流電流(AC)の電場に曝露すること、及び、絶縁破壊が発生するのを所定の時間(例えば60秒間)待つことを含む。この種の試験(一般に「耐性試験(withstand test)」と称される)において、構成要素内で漏れ電流を上回る電流が検出されなければ、その構成要素は、通常稼働時に絶縁破壊を引き起こす傾向がありうる物理的な欠陥も不具合もないと見なされうるので、使用に適すると見なされうる。この方法の欠点の1つは、絶縁破壊は(誘電絶縁体の破壊を絶対にもたらすというわけではない「部分放電(partial discharge)」であっても)、構成要素の誘電体における欠陥(例えばボイド若しくは空洞)に宇宙線が投射される(又はその他のイオン化事象若しくは自由電子生成事象が生じる)までは、かつそのようなことが起こらない限りは、発生しない可能性があることである。その結果として、たとえ試験を受けても、欠陥が検出されないことがある。
【0003】
電気的構成要素を試験するための別の技法は、構成要素に大きな交流電流(AC)の電場を印加することを含みうる。この種の試験においては、構成要素は、その構成要素内の絶縁破壊及び/又は部分放電を示す電流スパイクがないか、一定の期間にわたって観察されうる。この方法の欠点の1つは、試験される構成要素が、試験手順自体によって典型的な稼働範囲を超える電気的ストレスに曝露されることにより、この構成要素の稼働寿命が短縮されうることである。別の欠点は、構成要素が一定の期間にわたって観察される必要があるので、試験手順に時間がかかりうることである。
【0004】
この「背景技術」部分は、本開示に関連しうる技術分野の様々な態様を読者に紹介するためのものであり、本開示の説明及び/又は特許請求は下記で行われる。この記載部分は、本開示の様々な態様についてのより深い理解を促進するための背景技術情報を読者に提供する上で、役立つと考えられる。したがって、これらの記載事項は、この観点から読むべきものであって、従来技術を承認するもの(admissions of prior art)として読むべきものではないと、理解すべきである。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、電気デバイスの絶縁破壊又は部分放電を音響により検出するためのシステムが提供される。このシステムは、電気デバイスの音響振動を検出するよう構成された、少なくとも1つの電気音響(EA)トランスデューサと、少なくとも1つのEAトランスデューサに電気的に接続されたコントローラとを、含む。コントローラは、メモリ記憶された命令を実行するよう構成されており、命令は、実行されると、コントローラに、少なくとも、少なくとも1つのEAトランスデューサから信号を受信することと、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号を解析することと、解析に基づいて、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、電気デバイスの部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むかどうかを判定することと、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むという判定に応じて、警報を生成することとを実施させる。
【0006】
別の態様では、電気システムが提供される。この電気システムは、電気デバイスと、電気デバイスの音響振動を検出するよう構成された少なくとも1つの電気音響(EA)トランスデューサと、少なくとも1つのEAトランスデューサに電気的に接続されたコントローラとを、含む。コントローラは、メモリ記憶された命令を実行するよう構成されており、命令は、実行されると、コントローラに、少なくとも、少なくとも1つのEAトランスデューサから信号を受信することと、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号を解析することと、解析に基づいて、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、電気デバイスの部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むかどうかを判定することと、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むという判定に応じて、警報を生成することとを実施させる。
【0007】
更に別の態様では、電気デバイスの絶縁破壊又は部分放電を音響により検出するための方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの電気音響(EA)トランスデューサに電気的に接続されたコントローラによって、少なくとも1つのEAトランスデューサから信号を受信することであって、EAトランスデューサは、電気デバイスに機械的に連結されており、かつ電気デバイスの音響振動を検出するよう構成されている、信号を受信することと、コントローラによって、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号を解析することと、コントローラによって、かつ解析に基づいて、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、電気デバイスの部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むかどうかを判定することと、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むという判定に応じて、警報を生成することとを、含む。
【0008】
上述した態様に関連して記述した特徴の、様々な改良版が存在する。また、上述した態様には更なる特徴も組み込まれうる。かかる改良版及び更なる特徴は、個別に存在することも、又は何らかの組み合わせで存在することもある。例えば、例示している実施形態のいずれかに関連して後述する様々な特徴は、上述した態様のいずれかに組み込まれることも、単独であることも、又は何らかの組み合わせであることもある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電を音響により検出するための例示的なシステムのブロック図である。
図2】電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電を音響により検出するための別の例示的なシステムの回路図である。
図3】電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電を音響により検出するための例示的なプロセスを示すフロー図である。
図4図2に示しているシステムのいくつかの出力波形のグラフであり、このグラフ内では、電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電は発生していない。
図5図2に示しているシステムのいくつかの出力波形のグラフであり、このグラフ内では、電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電が発生している。
図6図2に示しているシステムのいくつかの出力波形の拡大グラフであって、このグラフ内では電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電が発生している、電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電により増速圧力波(accelerating pressure wave)が生じることを示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々な実施形態の具体的な特徴が、一部の図面に示され、他の図面には示されていないことがあるが、これは単に便宜のためにすぎない。どの図面のどの特徴も、他のどの図面のどの特徴とも組み合わされて参照され、かつ/又は特許請求されうる。
【0011】
特に指示がない限り、本書で提供される図面は、本開示の実施形態の特徴を示すことを意図している。かかる特徴は、本開示の一又は複数の実施形態を含む多種多様なシステムに適すると考えられる。そのため、図面は、本書で開示している実施形態の実践のために必要となる、当業者には既知の従来的な特徴を全て含むことは、意図していない。
【0012】
電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電を音響により検出するためのシステム及び方法について、説明する。例示的な一実施形態では、電気デバイスの誘電体における欠陥又は不具合(ボイドや空洞など)の結果として、電気デバイスの内部の又は表面上の部分的な放電が発生しうる。この欠陥は、デバイスが現場で稼働するにつれて経時的に悪化しうるので、電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電と見なされうる。
【0013】
絶縁破壊及び/又は部分放電を検出するために、電気音響トランスデューサ(コンタクトマイクなど)が、電気デバイスに(例えばデバイスの誘電体に)機械的に連結されうる。電気音響デバイスは、部分放電に関連する周波数範囲内の音響振動を検出するよう、チューニング又は構成されうる。部分放電は、例えば、誘電体内にEAトランスデューサが検出しうる機械的圧力波を誘起しうる。コントローラ又はプロセッサが、EAトランスデューサによって提供されるデータ信号を受信し、解析しうる。部分放電に関連する周波数の範囲内の音響振動(例えば周波数スパイク)が発生すると、コントローラは、デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電の発生可能性を示す警報を生成しうる。
【0014】
本書に記載のシステム及び方法の技術的効果は、少なくとも、(a)電気デバイスの誘電体に連結された電気音響トランスデューサを使用する、部分放電及び/又は絶縁破壊を表わす音響振動の音響検出、(b)四辺形検出回路を使用する、部分放電及び/又は絶縁破壊を表わす一又は複数の回路特性の検出、(c)四辺形検出回路から得られた回路特性を使用する、部分放電及び/又は絶縁破壊の検証、(d)電気音響トランスデューサから受信した信号のピークの、周波数スパイク間のピークツーピーク距離又は間隔の比較に基づく、部分放電及び/又は絶縁破壊の検証、及び(e)部分放電及び/又は絶縁破壊が発生したという警報、警告、又はその他の表示の生成を、含む。
【0015】
したがって、本書で使用される場合、「絶縁破壊(dielectric breakdown)」という語は、電位が異なる2つ以上の導電体を絶縁するための誘電性又は電気絶縁性の完全喪失をもたらす事象を指し示しうる。本書で使用される場合、「破裂放電(disruptive discharge)」という語は、電気的事象であって、その場合に、電荷及びそれによって生じた電流(電荷移動の速度)が、電圧電位が異なる導電体間に大きな故障電流が流れることを可能にするのに十分になる、事象である。固体絶縁システムにおいて、破裂放電は、材料を破壊し、少なくとも部分的に、導電体間にいかなる分離も提供できなくしうる。液体ベース又は気体ベースの絶縁システムでは、この損傷は可逆的であるが、影響を受けた電気機器又は関連する電気システムは壊れるか、さもなければ、保護作用により非通電状態となる。絶縁破壊は、デバイス又はアセンブリの表面上でも発生しうるが、かかる表面上の絶縁は、弱いか、さもなければ不完全なものである。
【0016】
したがって、本書で使用される場合、「部分放電(partial discharge)」という語は、電圧ストレスが限界値を超過した時に、導電体間の絶縁システムを部分的にのみ橋絡する、放電を指し示しうる。かかる部分的な放電は、導電体に隣接して発生することも、隣接して発生しないこともある。誘電体構造物の内部では(例えば、プリント配線基板内又はプリント回路基板内の場合)、エポキシの層剥離やボイドといった不具合が、捕獲ガス(trapped gas)を内包することがある。電場ストレス及び温度が十分な条件下では、電荷はボイドの近傍又はボイド内に蓄積しうる。十分な局所電場が存在していれば、ガスはイオン化されて、ボイド内のガスを通じた局所電荷蓄積の放出が可能になりうる。自由電子及びイオンの移動によって生じた加熱が、ガスの急速加熱をもたらすことにより、次いで、高圧パルスが発生する。この高圧パルスは次いで、音響エネルギー又は機械的エネルギーとして、周囲の誘電体構造物を通じて伝達される。本書に記載の音響センサ及び音響トランスデューサは、妥当な周波数を検出するよう、妥当な周波数向けに設計され、「部分放電」、「破裂放電」、又は「絶縁破壊」を検出するために、信号処理が使用されうる。表面部分放電の発生可能性もあるが、これも音響エネルギーを発生させうる。音響エネルギーは、誘電体構造物内に、導電体内に、境界面に、更に周囲の気体又は液体の誘電体内で、伝達される。
【0017】
電気デバイス内で部分放電が発生すると、この放電が、電気デバイス(又はその誘電体)内に音響振動を誘起することがあり、この音響振動は、本書に記載しているように、検出され、解析されうる。振動は、一般に、おおよそ500kHz~250MHzの周波数範囲(ただしその他の周波数範囲であることもある)において共振しうる。
【0018】
図1は、電気デバイス102の絶縁破壊を音響により検出するための例示的なシステム100のブロック図であるシステム100は、電気デバイス102とコントローラ108とを含む。電気デバイス102は、誘電体104と、電気音響(EA)トランスデューサ106とを含む。コントローラ108は、メモリ110とプロセッサ112とを含む。
【0019】
この例示的な実施形態では、誘電体104は、任意の好適な誘電体又は誘電体基板(例えば、プリント回路基板(PCB)、プリント配線基板(PWB)、回転機械の巻線若しくはコイル、及び/又はその他の任意の電気デバイス若しくは電気回路の製造において使用される、任意の誘電複合物又は誘電多層積層体)を含みうる。
【0020】
電気デバイス102は、誘電体104に装着され、かつ一又は複数の電気トレース、ワイヤ、はんだ接合などによって電気的に接続された、複数の構成要素も含みうる。電気デバイスに含まれるこれらの構成要素は、一般には本開示を理解するうえで中心的な要素ではないが、例えば、一又は複数のレジスタ、一又は複数のキャパシタ、一又は複数のインダクタ、一又は複数の切替デバイス(例えばトランジスタ、MOSFET、IGBT、BJTなど)、及び/又は、その他の多種多様なハードウェア構成要素を含みうる。
【0021】
少なくとも一部の実施形態では、電気デバイスは、別のシステム又はデバイス(例えばモニタ、エアコンプレッサ、制御パネル若しくはディスプレイ、及び/又はその他の任意の望ましいデバイス若しくはシステム)を制御又はモニタするよう、動作可能でありうる。加えて、少なくとも一部の実施形態では、電気デバイス102は、航空宇宙関連システム(航空機など)に搭載され、この航空機又は航空宇宙関連システムの一又は複数のシステム若しくはサブシステムを制御する。
【0022】
EAトランスデューサ106は、多種多様な電気音響トランスデューサのうちの任意のもの(例えばコンタクトマイク、圧電マイク若しくはセラミック圧電マイク、並びに/又は、電気デバイス102及び/若しくは誘電体104に機械的に連結され、かつ電気デバイス102及び/若しくは誘電体104内の構造的音響振動を検出することが可能な、その他の任意のEAトランスデューサなど)である。この例示的な実施形態では、EAトランスデューサ106は、電気デバイス102の誘電体104又は別の部分に機械的に連結されている。
【0023】
一部の実施形態では、1を上回る数のEAトランスデューサ106が、誘電体104に機械的に連結されうる。例えば、各々が特定の周波数範囲にチューニングされた、又は各々が誘電体104の特定の部分を「聞く(listen to)」よう配置された、複数のEAトランスデューサが実装されうる。他の実施形態では、EAトランスデューサ106は、一又は複数のエアマイク(構造的振動ではなく空気の振動に感応する)を含みうる。
【0024】
一部の実施形態では、単一又は複数のEAトランスデューサ106は、大型アセンブリの恒久的構成要素として、誘電体104に機械的に連結されうる。例えば、単一又は複数のEAトランスデューサ106であって、各々が特定の周波数範囲にチューニングされた、又は各々が誘電体104の特定の部分を「聞く」よう配置されたEAトランスデューサが、アセンブリの一部として実装されうる。プリント回路基板の実施形態では、分離して装着されたEAトランスデューサ106と、関連する制御駆動回路108,110、及び112とが、完成品のプリント回路アセンブリの一部になりうる。これにより、アセンブリの耐用期間中に不具合又は損傷を「セルフモニタリング(self-monitoring)」することが可能になり、このことが、予防的な又は条件に基づく整備又は交換も可能にする。
【0025】
本書で詳細に記述しているように、EAトランスデューサ106は、特定の周波数範囲内の音響振動を検出し、それに応じて出力信号を生成するよう、構成されうる。少なくとも一部の実施形態では、EAトランスデューサ106は、誘電体104の絶縁破壊又は電気破壊に関連する周波数範囲内の構造的音響振動を検出するよう、選択されうるか、又は構成されうる。例えば、上述したように、誘電体104内の絶縁破壊又は部分的な放電(PD)によって引き起こされた音響振動は、一般に、おおよそ500kHz~250MHzの周波数範囲(ただしその他の周波数範囲にも適応しうる)において共振しうる。その結果として、EAトランスデューサは、かかる高キロヘルツ~低メガヘルツの範囲内の音響振動を検出するよう、構成されうる。
【0026】
音響振動の検出に応じて、EAトランスデューサ106は出力信号を生成しうる。この出力信号は、PDが発生したことを示すデータ(例えば周波数データ)を含みうる。場合によっては、EAトランスデューサ106によって出力された信号を増幅するために、増幅器又はプレ増幅器がEAトランスデューサ106に接続されうることもある。同様に、一部の実施形態では、PDに関連しない周波数を除外するために、フィルタ(バンドパスフィルタなど)がEAトランスデューサ106に接続されうる。
【0027】
図2は、電気デバイス102の絶縁破壊及び/又は部分放電を音響により検出するための別の例示的なシステム200の回路図である。システム200は、システム100に類似しており、上述したシステム100の部品を含む。システム200は、四辺形検出回路202も含む。四辺形検出回路202は、シェーリングブリッジ(若しくはシェーリングブリッジの変形版)、ホイートストンブリッジ、及び/又はその他の類似の回路でありうる。
【0028】
ゆえに、四辺形検出回路202は、第1脚部204と、第2脚部206と、第3脚部208と、第4脚部210とを含みうる。4つの脚部のうちの3つ(例えば脚部204~208)の電気的特性は既知でありうる。例えば、脚部204~208は、一又は複数のキャパシタ、レジスタ、及び/又はインダクタを含んでよく、これによって、脚部204~208の電気抵抗、インダクタンス、及び/又は静電容量が既知となりうる。電気回路102は、第4脚部210に含まれうるか、又は接続されうる。
【0029】
ゆえに、第1~第3の脚部204~208に関連する既知の値を使用して、かつ一又は複数の既知の電圧電流方程式(キルヒホッフの法則など)を使用して電気回路の電気的特性を求めることによって、電気回路102の一又は複数の電気的特性が得られることが、認識されよう。例えば、四辺形検出回路202から収集されるデータは、電気回路102の両端間の電圧(V)、第3脚部208と第4脚部210(すなわち電気回路102)との間の差動電圧(V)、及び電気回路102を通過する電流(i1-3)を含みうる。
【0030】
システム100及び/又はシステム200は、稼働中に、PD(又は絶縁破壊)がないか、電気デバイス102を試験するために使用されうる。例えば、システム100又は200は、電気回路102のリアルタイムの健全性モニタリングを実施するために使用されうる。別の実施形態では、システム100又は200は、試験機関において(例えば、電気回路102が試験及び解析のために現場から取り外されている場合のように)電気回路102を試験するために使用されうる。
【0031】
図3は、電気デバイス102のPD及び/又は絶縁破壊を音響により検出するための例示的なプロセス300を示すフロー図である。この例示的な実施形態では、コントローラ108が、EAトランスデューサ106からデータ信号を受信する(ステップ302)。このデータ信号は、EAトランスデューサ106によって検出された音響振動があればそれを表わす、周波数データを含みうる。例えば、PDが発生した場合、データ信号は、絶縁破壊の周波数範囲内の振幅スパイクを含みうる(後述する更なる説明を参照のこと)。
【0032】
データ信号の受信に応じて、コントローラ108は、このデータ信号を解析しうる(ステップ304)。例えば、コントローラ108は、データ信号を解析して、周波数スパイクが存在しているかどうか、又は、絶縁破壊及び/若しくは部分放電の周波数範囲内で発生したかどうかを判定しうる(スパイク306)。かかる周波数スパイクが存在している場合、コントローラ108は、絶縁破壊及び/又は部分放電が発生したと判定し、そのことを示す警報を生成しうる(ステップ308)。警報は、例えば、コンピュータディスプレイ上で、又は可聴の若しくはその他の種類の警報として、ユーザに提供されうる。一方、データ信号がPD又は絶縁破壊を表わす周波数スパイクを含まない場合、コントローラ108は、リアルタイムで又は実質的にリアルタイムで電気デバイス102を継続的にモニタしつつ、この時間領域内でEAトランスデューサから継続的レポートを受信しうる(ステップ302に戻る)。
【0033】
更に、一部の実施形態では、電気回路102の一又は複数の回路特性が、四辺形検出回路202を使用して、コントローラ108によって測定及び/又は算出されうる具体的には、上述したように、電気回路102の両端間の電圧(V)、第3脚部208と第4脚部210(すなわち電気回路102)との間の差動電圧(V)、及び電気回路102を通過する電流(i1-3)のいずれもが、特定されうる。これらのデータは、PD若しくは絶縁破壊が発生したかどうかを個別に判定するために使用されてよく、又は、EAトランスデューサから受信したデータを裏付けるために、EAトランスデューサ106から受信したデータ信号と併せて使用されうる。例えば、EAトランスデューサ106から受信したデータ信号が上述したような周波数スパイクを含んでいる場合、データスパイクが電気デバイス102内のPDによって引き起こされたことを裏付けるために、四辺形検出回路からのデータが使用されうる。
【0034】
図4は、(図2に示している)システム200のいくつかの出力波形のグラフ400であり、このグラフでは、電気デバイス102内でPDは発生していない。図5は、システム200の出力波形のグラフ500であり、このグラフではPDが発生している。より詳細には、グラフ400及び500は、電気回路102の両端間の電圧(V)、第3脚部208と第4脚部210(すなわち電気回路102)との間の差動電圧(V)、電気回路102を通過する電流(i1-3)、及びEAトランスデューサ106から受信したデータ信号(VEA)を示している。図4及び図5では、Vは、実際の値の千分の一に低減されている。これらの図では、Vを測定するために、分圧器を有する高電圧プローブが使用されたからである。
【0035】
グラフ400及び500に示しているデータを評価するために、一実施形態では、コントローラ108は、上述したように、データ信号(VEA)が絶縁破壊及び/又は部分放電の周波数範囲内の周波数スパイクを含むかどうかを判定しうる。図5を参照すると、かかる周波数スパイク502が示されている。図4のグラフ400では、EAトランスデューサ106から受信したデータ信号は、(周波数スパイク502のような)周波数スパイクを含んでいない(PDが発生していないことを示す)。少なくとも一部の実施形態では、データ信号(VEA)に示される絶縁破壊及び/又は部分放電の範囲内の周波数スパイクは、電気回路102で何らかの絶縁破壊及び/又は部分放電が発生したと結論付けるのに十分なものでありうる。
【0036】
別の実施形態では、コントローラ108は、四辺形検出回路202から受信又は収集したデータに基づいて、PD又は絶縁破壊が発生したかどうかを検証しうる。例えば、コントローラ108は、グラフ500から、周波数スパイク502が発生した際の、電気回路102の両端間の電圧(V)を特定しうる。この例では、周波数スパイク502の時のVは、おおよそ1840Vrmである。加えて、コントローラ108は、メモリ110から誘電体104の厚さを検索し、誘電体104内のボイド又は空洞の想定上の形状に基づいて、PDを引き起こしたボイド又は空洞内の電場(E)を算出する。具体的には、コントローラ108は、次の方程式から電場を算出しうる:数1この方程式において、Eはボイド内の電場であり、eは誘電体の比誘電率であり、Eoは誘電体内の電場である。
【0037】
上記の方程式では、誘電体の厚さを250μmと仮定すると、Evoidはおおよそ1.39×10V/mに等しくなると算出されうる
【0038】
コントローラ108は、上記で示したように算出されたボイド内の電場(Evoid)を使用し、次の方程式を用いて、推定ボイド半径を更に特定しうる:数2
【0039】
上記の方程式では、aは推定ボイド半径であり、Pはボイド内の空気圧(単位はパスカル)である。したがって、コントローラは、推定ボイド半径(a)を求めるために、算出されたボイド内の電場(Evoid)及び、推定又は測定されたボイド内の空気圧(P)を代入しうる。
【0040】
この例では、四辺形検出回路202から受信したデータから算出されるボイド半径(a)は16μmとなる。
【0041】
四辺形検出回路202から収集されたデータからボイド半径(a)が算出されると、このボイド半径(a)は、周波数スパイク502の持続時間又は期間を算出又は推定すること、及び周波数スパイク502の期間をメモリ110に記憶された音速で割ることによって、検証されうる。例えば、メモリ110に343m/sという音速が記憶されており、周波数スパイク502の期間が40nsである場合、コントローラ108は、13.6μmという推定ボイド半径(b)を算出しうる。
【0042】
コントローラ108は、四辺形検出回路202から得られた推定ボイド半径(a)と、EAトランスデューサ106から受信したデータ信号から得られた推定ボイド半径(b)とを比較しうる。この2つの推定値が互いの一定のパーセンテージ許容誤差の範囲内にあれば、コントローラ108はここで、周波数スパイク502は、電気デバイス102内の部分放電を実際に表わしていると、結論付け(又は検証し)うる。つまり部分放電は、半径が約13~16μmのボイド内のイオン化ガスを通る放電により生じているということになりうる。
【0043】
図6は、図5に示している出力波形の拡大グラフ600である。図6は概して、部分放電により生じた周波数スパイク502及び増速圧力波を詳細に示している。したがって、図6は、電気回路102の両端間の電圧(V)、第3脚部208と第4脚部210(すなわち電気回路102)との間の差動電圧(V)、電気回路102を通過する電流(i1-3)、及びEAトランスデューサ106から受信したデータ信号(VEA)を示している。
【0044】
コントローラ108は、このスケールで、電気デバイス102の誘電体104内でPDが発生したことについて、第3の検証を実施しうる。具体的には、図示しているように、周波数スパイク502が時点tにおいて発生している場合、誘電体104内の(又は、空気マイクが使用されていれば、ボイドに内包された空気内の)音響振動は、時点tの第2ピーク602、時点tの第3ピーク604、及び時点tの第4ピーク606まで振動する。
【0045】
PDは誘電体104内で熱エネルギーを放出するという事実の結果として、周波数スパイク502と第1の後続ピーク602との間の第1時間間隔(A)が測定されうる。同様に、ピーク602と第2の後続ピーク604との間の第2の時間間隙(B)、及びピーク604と第3の後続ピーク606との間の第3の時間間隙(C)も測定されうる。一般に、前に発生したピークと後に発生したピークとの間の時間間隙は、誘電体104内の音速が、結果として生じる温度上昇に比例して増大する(すなわち、少なくとも一部の事例においては、伝達媒体が加熱されるほど、音響振動の伝導が高速になることが予想されうる)につれて、短くなると予想されうる。
【0046】
ゆえに、コントローラ108は、周波数スパイク502が実際に部分放電の結果であったと検証するために、周波数スパイク502と後続のピーク602との間の時間間隙(例えば時間間隙A)と、ピーク602とピーク604との間の時間間隙(すなわち時間間隙B)及び/又はピーク604とピーク606との間の時間間隙(すなわち時間間隙C)との比較も行いうる。時間間隙B及び/又は時間間隙Cが時間間隙Aよりも短ければ、コントローラ108は、周波数スパイク502はPDの結果として生じたと判定(又は検証)しうる。時間間隙Cと時間間隙Bとの同様の比較も実施されうる。
【0047】
上記で簡潔に説明したように、一部の実施形態は、複数のEAトランスデューサ106を含みうる。複数のEAトランスデューサ106は、多種多様な理由により含まれうる。例えば、一実施形態では、複数のEAトランスデューサ106の各EAトランスデューサ106は、そのEAトランスデューサ106の近位の領域又はゾーンにおけるPDを検出するか、又は「聞く」ために、構造物に配置されうる。関連する実施形態では、複数のEAトランスデューサ106は、誘電体構造物におけるPDの所在地を正確に特定するという目的のために、誘電体構造物に配置されうる。例えば、誘電体構造物に3つのEAトランスデューサ106が配置されている場合、この誘電体構造物におけるPDの正確な所在地が、各EAトランスデューサ106における音響到来の時点(すなわち、各EAトランスデューサ106が音響振動を検出した時点)に基づいて、(例えば、三角測量又は三辺測量によって)幾何学的に特定されうることが、認識されよう。
【0048】
電気デバイスの絶縁破壊及び/又は部分放電を音響により検出するためのシステム及び方法の技術的効果は、(a)電気デバイスの誘電体に連結された電気音響トランスデューサを使用する、部分放電及び/又は絶縁破壊を表わす音響振動の音響検出、(b)四辺形検出回路を使用する、部分放電及び/又は絶縁破壊を表わす一又は複数の回路特性の検出、(c)四辺形検出回路から得られた回路特性を使用する、部分放電及び/又は絶縁破壊の検証、(d)電気音響トランスデューサから受信した信号のピークの、周波数スパイク間のピークツーピーク距離又は間隔の比較に基づく、部分放電及び/又は絶縁破壊の検証、及び(e)部分放電及び/又は絶縁破壊が発生したという警報、警告、又はその他の表示の生成を、含む。
【0049】
本書に記載のシステムおよび方法は、本書に記載の具体的な実施形態に限定されるわけではなく、むしろ、システムの構成要素及び/又は方法のステップは、それら以外の本書に記載の構成要素及び/又はステップとは別個に利用されうる。
【0050】
本開示の様々な実施形態の具体的な特徴は、一部の図面に示され、他の図面には示されていないことがあるが、これは単に便宜のためにすぎない。本開示の原理によれば、ある図面のどの特徴も、他のどの図面のどの特徴とも組み合わされて参照され、かつ/又は特許請求されうる。
【0051】
本書で使用される場合、単数で記載され、かつ「1つの(a又はan)」という語に続く要素又はステップは、この要素又はステップの複数形を除外することが明示的に記述されていない限りかかる除外は行われないものであると、理解すべきである。更に、本開示の「一実施形態(one embodiment又はan embodiment)」への言及は、記載されている特徴を同様に包含する追加の実施形態の存在を除外すると解釈されることを、意図するものではない。
【0052】
この明細書では、最良のモードを含む様々な実施形態を開示して、いかなる当業者にもかかる実施形態の実践(任意のデバイス又はシステムを作製し使用すること、及び統合された任意の方法を実施することを含む)を可能にするために、例を使用している。特許性がある範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が想到するその他の例も含みうる。かかるその他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言とごくわずかな相違しかない均等な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0053】
注:以下の条項は、本開示の更なる態様について説明している。
【0054】
条項1.
電気デバイスと、
電気デバイスに機械的に連結されており、かつ電気デバイスの音響振動を検出するよう構成された、少なくとも1つの電気音響(EA)トランスデューサと、
少なくとも1つのEAトランスデューサに電気的に接続されたコントローラであって、メモリ記憶された命令を実行するよう構成されており、命令は、実行されると、コントローラに、少なくとも、
少なくとも1つのEAトランスデューサから信号を受信することと、
少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号を解析することと、
解析に基づいて、少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、電気デバイスの部分放電の周波数範囲内の電気デバイスの音響振動に関連するデータを含むかどうかを判定することと、
少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むという判定に応じて、警報を生成することとを実施させる、コントローラとを備える、電気システム。
【0055】
条項2.
4つの脚部を有する四辺形検出回路を更に備え、4つの脚部のうちの3つは既知の電気抵抗を有し、4つの脚部のうちの1つが電気デバイスを含み、四辺形検出回路はコントローラに電気的に接続される、条項1に記載の電気システム。
【0056】
条項3.
四辺形検出回路が、ホイートストンブリッジとシェーリングブリッジのうちの一方である、条項2に記載の電気システム。
【0057】
条項4.
命令は、実行されると、コントローラに、少なくとも、
四辺形検出回路から少なくとも1つの測定値を受信することと、
少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むという判定に応じて、この判定を、四辺形検出回路から受信した少なくとも1つの測定値に基づいて検証することとを更に実施させる、条項2に記載の電気システム。
【0058】
条項5.
少なくとも1つのEAトランスデューサから受信した信号が、部分放電の周波数範囲内の音響振動に関連するデータを含むという判定を検証するために、命令は、実行されると、コントローラに、少なくとも、
部分放電の周波数範囲内の音響振動の期間及びメモリに記憶された音速から、電気デバイスの誘電体内の、部分放電を発生させているボイドの、少なくとも1つの物理的寸法の第1推定値を算出することと、
四辺形検出回路から受信した少なくとも1つの測定値から、ボイド内の電場を算出し、かつ、算出された電場から、電気デバイスの誘電体内のボイドの少なくとも1つの物理的寸法の第2推定値を算出することと、
少なくとも1つの物理的寸法の第1推定値と、少なくとも1つの物理的寸法の第2推定値とを比較することとを更に実施させる、条項4に記載の電気システム。
【0059】
条項6.
電気デバイスが航空宇宙関連システムを制御するよう構成されており、航空宇宙関連システムは、部分放電の周波数範囲よりも低い周波数範囲内の周囲ノイズを発生させる、条項1に記載の電気システム。
【0060】
条項7.
音響振動が電気デバイスの誘電体における構造的なものであり、EAトランスデューサが、電気デバイスの誘電体に機械的に連結されて音響振動を検出するよう構成される、条項1に記載の電気システム。
【0061】
条項8.
EAトランスデューサが、電気デバイスの誘電体に機械的に連結されて音響振動を検出するよう構成されたコンタクトマイクである、条項1に記載の電気システム。
【0062】
条項9.
EAトランスデューサが、電気デバイスの誘電体に機械的に連結されて音響振動を検出するよう構成された圧電マイクである、条項1に記載の電気システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6