IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20250227BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 91/08 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20250227BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C08L15/00
B60C1/00 A
C08L9/00
C08L91/08
C08L47/00
C08L101/12
C08K3/36
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020168246
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2021059727
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】16/592,817
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】クロード・チャールズ・ヤコビー
(72)【発明者】
【氏名】フリダ・ズル
(72)【発明者】
【氏名】ニハット・アリ・イシトマン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・パトリック・マレー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フランクリン・スピルカー
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506508(JP,A)
【文献】特開2015-078365(JP,A)
【文献】米国特許第06350807(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第109942910(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴム20~100重量部、および(B)ポリブタジエン0~40重量部からなるエラストマー;並びに前記エラストマー100重量部(phr)を基準として、
(C)プロセス油0~20phr;
(D)30℃を超えるTgを有する、C5/C9樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)/C9樹脂およびテルペン樹脂から選択される炭化水素樹脂40~80phr;および
(E)シリカ100~180phr
を含む加硫可能なゴム組成物、ここで前記溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴムがシリル基で官能化されているか、または前記溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴムがアルコキシルシラン基および任意にアミノ基で官能化されている、
を含むトレッドを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴムが、メトキシおよびエトキシからなる群から選択されるアルコキシ基で置換されたシリル基で官能化されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴムが、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択されるアルキル基で置換されたシリル基で官能化されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
[001]タイヤが良好な湿潤スキッド抵抗、低い転がり抵抗および良好な摩耗特性を有することは非常に望ましい。湿潤スキッド抵抗および牽引特性を犠牲にすることなく、タイヤの摩耗特性を改善するのは従来非常に困難であった。これらの性質は、タイヤを製造する際に用いられるゴムの動的粘弾性に大いに依存する。
【0003】
[002]転がり抵抗を減少させてタイヤのトレッド摩耗特性を改善するために、高反発性のゴムが、従来からタイヤトレッドゴムコンパウンドを製造する際に用いられてきた。他方、タイヤの湿潤スキッド抵抗を増すために、大きいエネルギー損を受けるゴムが、一般にタイヤのトレッドに用いられてきた。これら2つの粘弾性的に一致しない性質のバランスを取るために、様々な種類の合成と天然ゴムの混合物が、通常、タイヤトレッドに用いられている。
【0004】
[003]雪面上での牽引を増進するためのトレッドを有するタイヤが所望されることもある。タイヤトレッドについて、様々なゴム組成物を提案することができる。ここで、難題は、トレッドが低温の冬季条件に対して、特に乗り物の雪上運転に使用することが意図される場合、-30℃でより低い弾性率E’を有することにより示されるようなトレッドゴム組成物の硬化した剛性を低減することである。
【0005】
[004]湿潤、転がり抵抗、摩耗および低温(例えば、冬季)性能を増進する一方で、それらの両方の湿潤牽引を維持することについて、そのようなタイヤトレッドゴム組成物を提供するにはかなりの難題を呈すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,652,310号
【文献】米国特許第7,214,731号
【文献】米国特許第4,704,414号
【文献】米国特許第6,123,762号
【文献】米国特許第6,573,324号
【文献】米国特許第6,608,125号
【文献】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Standard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版、the Institute of Petroleum,United Kingdom
【文献】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【文献】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~346頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[005]本発明は、エラストマー100重量部(phr)を基準として、
(A)-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴム約20~約100phr;
(B)ポリブタジエン0~約40phr;
(C)プロセス油0~20phr;
(D)30℃を超えるTgを有する樹脂40~80phr;および
(E)シリカ100~180phr
を含む加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤを対象とする。
【0009】
[006]本発明は、タイヤを製造する方法をさらに対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[007]エラストマー100重量部(phr)を基準として、
(A)-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴム約20~約100phr;
(B)ポリブタジエン0~約40phr;
(C)プロセス油0~20phr;
(D)30℃を超えるTgを有する樹脂40~80phr;および
(E)シリカ100~180phr
を含む加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤが開示される。
【0011】
[008]さらに、タイヤを製造する方法が開示される。
[009]ゴム組成物は、-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する官能化イソプレン-ブタジエンゴム(IBR)を20~100phr、代替として70~95phr含む。イソプレン-ブタジエンゴムは様々な官能基で官能化されていてもよい。一実施形態において、イソプレン-ブタジエンゴムはシリル基で官能化されている。一実施形態において、イソプレン-ブタジエンゴムは、イソプレンおよびブタジエンの共重合により得られ、イソプレン-ブタジエンゴムは、ポリマー鎖にシリル基が結合していることを特徴とする。一実施形態において、シリル基は、メトキシおよびエトキシなどの1種または複数のアルコキシ基、メチル、エチルおよびプロピルなどのアルキル基、またはジエチルアミノおよびジメチルアミノなどのアルキルアミノ基またはビニル基で置換されていてもよい。
【0012】
[010]シリル基は、イソプレン-ブタジエンゴム鎖に結合している限り、イソプレン-ブタジエンゴムの重合開始末端、重合停止末端、主鎖および側鎖のいずれに結合していてもよい。しかし、シリル基は、ポリマー末端でのエネルギーの消失が抑制されてヒステリシス損特性が改善されるので、好ましくは重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0013】
[011]さらに、(コ)ポリマーゴムのポリマー鎖に結合したシリル基の含有率は、好ましくはイソプレン-ブタジエンゴムの0.5~200mmol/kgである。含有率は、より好ましくはイソプレン-ブタジエンゴムの1~100mmol/kg、特に好ましくはイソプレン-ブタジエンゴムの2~50mmol/kgである。
【0014】
[012]シリル基は、それが(コ)ポリマー鎖に結合している限り、(コ)ポリマーの重合開始末端、重合停止末端、主鎖および側鎖のうちのいずれに結合していてもよい。しかし、エネルギーの消失は(コ)ポリマー末端から抑制されてヒステリシス損特性を改善することができるので、シリル基は、好ましくは重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0015】
[013]本発明のタイヤトレッドゴムブレンドに使用されるIBRは、溶液重合によって合成することができる。そのような溶液重合は、通常、1種または複数の芳香族、パラフィンまたは環状パラフィン化合物であってよい炭化水素溶媒中で実行される。これらの溶媒は通常、1分子当たり4~10炭素原子を含み、重合条件下で液体になる。適切な有機溶媒の幾つか代表的な例は、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを、単独でまたは混合物として含む。
【0016】
[014]IBRの合成に用いられる溶液重合において、通常、重合媒体中にモノマーが約5~約35重量パーセントある。そのような重合媒体は、いうまでもなく、有機溶媒、1,3-ブタジエンモノマーおよびイソプレンモノマーから構成される。ほとんどの場合、重合媒体は、モノマーを10~30重量パーセント含むことが好ましい。一般には、重合媒体は、モノマーを20~25重量パーセント含むことがより好ましい。
【0017】
[015]本発明のタイヤトレッドゴムコンパウンドにおいて使用されるIBRの合成に使用されるモノマー装填組成は、典型的には、イソプレンを約20重量パーセント~約50重量パーセント含み、1,3-ブタジエンモノマーを約50重量パーセント~約80重量パーセント含む。典型的には、モノマー装填組成は、イソプレンを約25重量パーセント~約35重量パーセントおよび1,3-ブタジエンを約65重量パーセント~約85重量パーセント含むことが好ましい。
【0018】
[016]IBRは典型的には連続的な方式で合成される。そのような連続工程において、モノマーおよび有機リチウム開始剤は、反応容器または直列の反応容器に連続的に供給される。反応容器中の圧力は、通常、重合反応の条件下で実質上液相を維持するのに十分である。反応媒体は一般に、共重合のあいだ約70℃~約140℃の範囲内にある温度で維持される。一般に、共重合を直列の反応容器中で行い、重合が進むにつれて反応容器毎に反応温度を上げていくことが好ましい。例えば、第1の反応器中の温度は約70℃~90℃の範囲内に維持され、第2の反応器中の温度は約90℃~約100℃の範囲内に維持される、2つの反応器システムを使用することが望ましい。
【0019】
[017]IBRは従来の有機リチウム開始剤を使用して合成されてもよく、またはネオジムを含む触媒系を使用して合成されてもよい。
[018]開始剤として使用することができる有機リチウム化合物は、通常、有機モノリチウム化合物である。好ましい有機リチウム化合物は、式R--Li[式中、Rは1~約20炭素原子を含有するヒドロカルビル基を表わす。]によって表わすことができる。一般に、そのような有機リチウム化合物は1~約10炭素原子を含む。使用することができる有機リチウム化合物の幾つか代表的な例は、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、n-オクチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、p-トリルリチウム、1-ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、p-トリルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4-ブチルシクロヘキシルリチウムおよび4-シクロヘキシルブチルリチウムを含む。
【0020】
[019]使用される有機リチウム開始剤の量は、合成されるIBRに所望される分子量に依存する。有機リチウム開始剤の量は、55~140の範囲内にあるムーニーML1+4粘度を有するIBRの生成をもたらすように選択される。
【0021】
[020]すべてのアニオン重合の一般則として、製造されるポリマーの分子量(ムーニー粘度)は使用される触媒の量に反比例する。一般則として、有機リチウム化合物約0.01~約1phm(モノマー100部当たりの重量部)が使用される。ほとんどの場合、有機リチウム化合物を約0.015~約0.1phm使用することが好ましく、有機リチウム化合物を約0.025phm~0.07phm使用することが最も好ましい。
【0022】
[021]ゲル化を防止するために、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などの微量の極性調節剤の存在下でそのような重合を行うことが重要である。この理由で、使用される反応容器中へ極性調節剤を連続供給することが非常に望ましい。ルイス塩基として働くエーテルおよび第三級アミンは、使用することができる極性調節剤の代表的な例である。典型的な極性調節剤の幾つか特定の例は、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-フェニルモルホリンなどを含む。ジピペリジノエタン、ジピロリジノエタン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、TMEDAおよびテトラヒドロフランは、非常に好ましい調節剤の代表である。
【0023】
[022]場合によって、1,2-ブタジエンはまた連続的に反応帯域に供給することができる。1,2-ブタジエンは、典型的には10~約500ppm(百万部当たりの部)の範囲内にある濃度で重合媒体中に存在する。1,2-ブタジエンは、一般に約50ppm~約300ppmの範囲内にあるレベルで存在することが好ましい。一般に1,2-ブタジエンは、約100ppm~約200ppmの範囲内にあるレベルで存在することがより好ましい。
【0024】
[023]極性調節剤は、典型的には約0.01:1~約0.2:1の範囲内にある極性調節剤と有機リチウム化合物のモル比で存在する。極性調節剤と有機リチウム開始剤のモル比が約0.2:1より大きいと、生成するIBRのガラス転移温度を極性調節剤が上げるように作用するので、これを超えるべきでない。
【0025】
[024]次いで、生成したIBRは有機溶媒から回収される。IBRは、傾瀉法、濾過、遠心分離などの標準技法によって有機溶媒から回収することができる。多くの場合、1~約4炭素原子を含む低級アルコールを高分子溶液に添加することによって有機溶媒からIBRを析出させることが望ましい。ポリマーセメントからのIBRの析出に適する低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコールおよびt-ブチルアルコールを含む。ポリマーセメントからIBRを析出させる低級アルコールの利用は、また、リチウム末端基を不活性化する。IBRが有機溶媒から回収された後、水蒸気ストリッピングをゴム中の揮発性有機化合物のレベルを下げるために使用することができる。
【0026】
[025]溶液重合IBRは-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度を有する。エラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度またはTgへの言及は、本明細書において言及される場合は、未硬化状態のそれぞれのエラストマーもしくはエラストマー組成物の、またはことによるとエラストマー組成物の事例の硬化状態のガラス転移温度を表わす。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、例えばASTM D7426または同等物に従って毎分10℃の昇温速度でピーク中央値として適切に求めることができる。
【0027】
[026]例えばアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオエーテル、ヒドロキシル、ビニルなどの基で置換されたシリル基を含有する溶液重合IBRは、また官能化IBRとして使用されてもよい。シリカおよびカーボンブラック充填剤と、ならびにポリマーの不飽和部と化学的に相互作用することができるので、そのような官能基は有用である。そのような官能化IBRは、当業界で公知の、官能性開始剤、官能性モノマーまたは官能性停止剤を使用して製造されてもよい。官能化IBRは、IBRの一端もしくは両端に付加した、および/またはポリマー鎖の長手に沿って付加した官能基を含んでもよい。
【0028】
[027]適切な官能化IBRは、例えば米国特許第5,652,310号の手順に従って製造されてもよい。
[028]溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴムは、-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度を有する。エラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度またはTgへの言及は、本明細書において言及される場合、エラストマー組成物の事例の未硬化状態またはことによると硬化状態におけるそれぞれのエラストマーもしくはエラストマー組成物のガラス転移温度を表わす。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、例えばASTM D7426または同等のものに従って毎分10℃の昇温速度でピーク中央値として適切に求めることができる。
【0029】
[029]ゴム組成物はさらに、ポリブタジエンを0~約40phr、代替として5~30phr含んでもよい。一実施形態において、ポリブタジエンは、95パーセントを超えるcis1,4含有率、および-90~-110℃の範囲のTgを有する。他の実施形態において、ポリブタジエンは20~50重量パーセントの範囲のcis1,4含有率、または5~20重量パーセントの範囲のビニル含有率を有する。適切なブタジエンゴムは、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製されてもよい。BRは、好都合には、例えば少なくとも90パーセントのcis1,4含有率、および約-90℃~約-110℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とすることができる。-108℃のTgおよび96%のcis1,4含有率を有する、GoodyearからのBudene(登録商標)1223などの適切なポリブタジエンゴムが市販されている。
【0030】
[030]ゴム組成物は、プロセス油を0~20phr、代替として4~15phr含んでもよい。通常、エラストマーを増量するために使用される増量油として、プロセス油がゴム組成物に含まれていてもよい。プロセス油はまた、ゴム配合時のオイルの直接添加によってゴム組成物に含まれていてもよい。使用されるプロセス油は、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に加えられるプロセス油の両方に含まれていてもよい。適切なプロセス油は、芳香族、パラフィン、ナフテン、および低PCA油、例えば、MES、TDAEおよび重質ナフテン油、植物油、例えば、ヒマワリ、大豆およびサフラワー油、ならびにオレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノール酸アルキルおよびパルミチン酸アルキルからなる群から選択される脂肪酸のモノエステルを含む、当業界で公知である様々なオイルを含む。
【0031】
[031]適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含む。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum,United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版に見いだすことができる。
【0032】
[032]適切なTDAE油は、Klaus Dahleke KGからのTudalen SX500、H&R GroupからのVivaTec 400およびVivaTec 500、ならびにBPからのEnerthene 1849、ならびにRepsolからのExtensoil 1996として利用可能である。オイルは、オイルとして単独でまたは増量したエラストマーの形のエラストマーと一緒に利用可能であることがある。
【0033】
[033]適切な植物油は、例えば一定の不飽和度を含有するエステルの形である大豆油、ヒマワリ油およびキャノーラ油を含む。
[034]ゴム組成物はさらに、30℃を超えるTgを有する樹脂を40~80phr、代替として50~70phr含む。
【0034】
[035]一実施形態において、樹脂は、C5/C9樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)/C9樹脂、およびテルペン樹脂から選択される炭化水素樹脂であってよい。
[036]一実施形態において、樹脂は、30℃より高いガラス転移温度を有する、C5およびC9炭化水素分画を含むC5/C9炭化水素樹脂である。樹脂についてのTgの適切な測定は、ASTM D6604または同等物によるDSCである。炭化水素樹脂は、約80℃を超える軟化点を有し、これは環球式軟化点と時には呼ばれることがあるASTM E28によって求められる。
【0035】
[037]適切なC5/C9樹脂は、芳香族、非芳香族成分の両方を含んでもよい。C5/C9樹脂の違いは、主として炭化水素成分が由来する供給原料中のオレフィンによる。C5/C9樹脂は、可変量のピペリレン、イソプレン、モノオレフィン、および非重合性のパラフィン系化合物を含有するC4~C6分画から形成された炭化水素鎖を有する「脂肪族」炭化水素成分を含んでいてもよい。そのようなC5/C9樹脂は、ペンテン、ブタン、イソプレン、ピペリレンに基づき、含まれるシクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンの量は少ない。またC5/C9樹脂は、スチレン、キシレン、アルファメチルスチレン、ビニルトルエンおよびインデンなどの芳香族単位から形成されるポリマー鎖を有する「芳香族」炭化水素構造を含んでいてもよい。
【0036】
[038]本発明によると、ゴム配合において使用されるC5/C9樹脂は、ピペリレン、イソプレン、アミレンなどのオレフィン、および環状成分を含む。またC5/C9樹脂は、スチレン系成分およびインデン系成分などの芳香族オレフィンを含んでいてもよい。
【0037】
[039]ピペリレンは一般に、cis-1,3-ペンタジエン、trans-1,3-ペンタジエン、および混合1,3-ペンタジエンを含むがこれらに限定されないC5ジオレフィンの蒸留分または合成混合物である。一般に、ピペリレンはイソプレンなどの分岐C5ジオレフィンを含まない。一実施形態において、C5/C9樹脂は、ピペリレンを40~90%(重量による)、または50~90%、より好ましくは60~90%有する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂はピペリレンを70~90%有する。
【0038】
[040]一実施形態において、C5/C9樹脂は実質上イソプレンを含まない。別の実施形態において、C5/C9樹脂はイソプレンを最大15%、またはイソプレンを10%未満含む。さらに別の実施形態において、C5/C9樹脂はイソプレンを5%未満含む。
【0039】
[041]一実施形態において、C5/C9樹脂は実質上アミレンを含まない。別の実施形態において、C5/C9樹脂はアミレンを最大40%、またはアミレンを30%未満、またはアミレンを25%未満含む。さらに別の実施形態において、C5/C9樹脂はアミレンを最大10%含む。
【0040】
[042]環状体は、一般に、C5およびC6の環状オレフィン、ジオレフィンの蒸留分または合成混合物、およびそれからの二量体である。環状体は、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエンおよび1,4-シクロヘキサジエンを含むがこれらに限定されない。好ましい環状体はシクロペンタジエンである。ジシクロペンタジエンは、エンド形、エキソ形のいずれであってもよい。環状体は、置換されていてもされていなくてもよい。好ましい置換環状体は、C1~C40の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、好ましくは1個または複数のメチル基で置換されたシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンを含む。一実施形態において、C5/C9樹脂は、最大60%の環状体または最大50%の環状体を含んでいてもよい。通常の最低限界は、環状体を少なくとも約0.1%もしくは少なくとも約0.5%を含むか、または約1.0%含む。少なくとも1つの実施形態において、C5/C9樹脂は、環状体を最大20%、またはより好ましくは環状体を最大30%含んでもよい。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は、環状体を約1.0~約15%または環状体を約5~約15%含む。
【0041】
[043]C5/C9樹脂中にあってもよい好ましい芳香族は、スチレン、インデン、スチレンの誘導体およびインデンの誘導体の1つまたは複数を含む。特に好ましい芳香族オレフィンは、スチレン、アルファメチルスチレン、ベータメチルスチレン、インデン、およびメチルインデン、およびビニルトルエンを含む。芳香族オレフィンは、一般に、C5/C9樹脂中に、5~45%、またはより好ましくは5~30%存在する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は芳香族オレフィンを10~20%含む。
【0042】
[044]スチレン成分は、スチレン、スチレンの誘導体、および置換スチレンを含む。一般に、スチレン系成分は、インデン系などの縮合環を含まない。一実施形態において、C5/C9樹脂は、スチレン系成分を最大60%またはスチレン系成分を最大50%含む。一実施形態において、C5/C9樹脂は、スチレン系成分を5~30%、またはスチレン系成分を5~20%含む。好ましい実施形態において、C5/C9樹脂はスチレン系成分を10~15%含む。
【0043】
[045]C5/C9樹脂は、インデン系成分を15%未満、またはインデン系成分を10%未満含んでもよい。インデン系成分は、インデンおよびインデンの誘導体を含む。一実施形態において、C5/C9樹脂はインデン系成分を5%未満含む。別の実施形態において、C5/C9樹脂は実質上インデン系成分を含まない。
【0044】
[046]好ましいC5/C9樹脂は、160℃で300~800センチポアズ(cP)、またはより好ましくは、160℃で350~650cPの溶融粘度を有する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂の溶融粘度は、160℃で375~615cPまたは160℃で475~600cPである。溶融粘度は、Brookfield粘度計によってASTM D6267の「J」型スピンドルを用いて測定することができる。
【0045】
[047]一般に、C5/C9樹脂は、約600g/モルより大きい、または約1000g/モルより大きい重量平均分子量(Mw)を有する。少なくとも1つの実施形態において、C5/C9樹脂は、1650~1950g/モル、または1700~1900g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。好ましくは、C5/C9樹脂は、1725~1890g/モルの重量平均分子量を有する。C5/C9樹脂は、450~700g/モル、または500~675g/モル、またはより好ましくは520~650g/モルの数平均分子量(Mn)を有していてもよい。C5/C9樹脂、5850~8150g/モル、またはより好ましくは6000~8000g/モルのz-平均分子量(Mz)を有していてもよい。Mw、MnおよびMzは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0046】
[048]一実施形態において、C5/C9樹脂は、4以下の多分散指数(「PDI」、PDI=Mw/Mn)を有する。特に好ましい実施形態において、C5/C9樹脂は2.6~3.1のPDIを有する。
【0047】
[049]好ましいC5/C9樹脂は、約-30℃~約100℃、または約0℃~80℃、または約40~60℃、または45~55℃、またはより好ましくは48~53度(摂氏)のガラス転移温度(Tg)を有する。示差走査熱量測定法(DSC)が、C5/C9樹脂のTgを測定するために使用されてもよい。
【0048】
[050]別の実施形態において、C5/C9樹脂は水素化されていてもよい。
[051]一実施形態において、C5/C9樹脂は、ピペリレンを50~90%(重量による)、イソプレンを0~5%、アミレンを10~30%、環状体を0~5%、スチレン系を0~10%、およびインデン系を0~10%含む。
【0049】
[052]一実施形態において、C5/C9樹脂は、ピペリレンを50~90%(重量による)、イソプレンを0~5%、アミレンを10~30%、環状体を2~5%、スチレン系を4~10%、およびインデン系を4~10%含む。
【0050】
[053]一実施形態において、C5/C9は、ピペリレンを約60%(重量による)、アミレンを約22%、環状体を約3%、スチレンを約6%およびインデンを約6%含み、さらに160℃で436cPの溶融粘度;855g/モルのMn;1595g/モルのMw;3713g/モルのMz;1.9のPDI;および47℃のTgを有する。
【0051】
[054]C5/C9樹脂またはDCPD/C9樹脂は、さらに、1H NMRによって測定してその芳香族水素含有率を特徴とすることができる。一実施形態において、C5/C9樹脂は、25モルパーセント未満の芳香族水素含有率を有する。一実施形態において、C5/C9樹脂は、3~15モルパーセントの間にある芳香族水素含有率を有する。
【0052】
[055]有用な炭化水素ポリマー添加剤の例は、ExxonMobil Chemical Companyから市販されているポリマー添加剤のOpperaシリーズであり、Oppera 373を含むがこれらに限定されない。
【0053】
[056]一実施形態において、樹脂はDCPD/C9樹脂である。適切なDCPD/C9樹脂は、約10モルパーセントの芳香族水素含有率を有するOppera 383として利用可能な水素化されたDCPD/C9樹脂である。
【0054】
[057]一実施形態において、樹脂はテルペン樹脂である。一実施形態において、樹脂は、リモネン、アルファピネンおよびベータピネンの少なくとも1つのポリマーで構成されたテルペン樹脂であってよい。
【0055】
[058]語句「オレフィン性不飽和を含有するゴムまたはエラストマー」は、様々な合成ゴムだけでなく天然ゴムとその様々な未加工および再生形態の両方を含むように意図される。本発明の記載において、「ゴム」、「エラストマー」という用語は、ほかに規定されなければ、交換可能に使用されてもよい。用語「ゴム組成物」、「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、様々な原料および材料とブレンドまたは混合されたゴムを指すように交換可能に使用され、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合技術の当業者に周知されている。
【0056】
[059]加硫可能なゴム組成物は、シリカを約100~約180phr、代替として120~150phr含んでもよい。
[060]ゴムコンパウンドに使用されてもよい一般に使用される珪質顔料は、従来の火成および沈降珪質顔料(シリカ)を含むが、沈降シリカが好ましい。本発明において好ましく用いられる従来からの珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られたものなどの沈降シリカである。
【0057】
[061]そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定して、好ましくは1グラム当たり約40~約600平方メートルの範囲、より普通には約50~約300平方メートルの範囲のBET表面積を有することを特徴とすることができる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。
【0058】
[062]また従来のシリカは、通常、約100~約400、より普通には約150~約300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴としてもよい。
[063]従来のシリカは、例えば電子顕微鏡によって求めて0.01~0.05ミクロンの範囲の平均究極粒子寸法を有すると予想することができるが、シリカ粒子は、寸法がさらに小さくてよく、またはことによるとより大きくてもよい。
【0059】
[064]様々な市販のシリカ、例えば本明細書において例示のみでありこれらに限定されないが、PPG Industriesから名称210、243、315などを有するHi-Sil商標の下で市販されているシリカ;Rhodiaからの、例えばZ1165MPおよびZ165GRの名称を有する入手可能なシリカ、およびDegussa AGから入手可能な、例えば名称VN2およびVN3を有するシリカなどが使用されてもよい。
【0060】
[065]予備疎水化した沈降シリカが使用されてもよい。予備疎水化とは、シリカが前処理されていること、すなわち、ゴム組成物へのその添加に先立って、予備疎水化した沈降シリカが少なくとも1種のシランを用いる処理によって疎水化されることを意味する。適切なシランは、アルキルシラン、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシリルポリスルフィドおよびオルガノメルカプトアルコキシシランを含むがこれらに限定されない。代替として、ゴム内でシリカカップリング剤とインサイチューで沈降シリカを反応させる代わりに、ゴムと前処理されたシリカを混ぜ合わせる前に、沈降シリカは、例えば、アルコキシオルガノメルカプトシランまたはアルコキシシランとアルコキシオルガノメルカプトシランの組み合わせで構成されるシリカカップリング剤で前処理されてもよい。例えば、米国特許第7,214,731号を参照すること。様々な前処理された沈降シリカについては、例えば、米国特許第4,704,414号、第6,123,762号および第6,573,324号を参照すること。適切な前処理または予備疎水化したシリカは、例えばPPGからのAgilon 400として市販されている。
【0061】
[066]加硫可能なゴム組成物は、カーボンブラックを約1~約20phr含んでもよい。
[067]一般に使用されるカーボンブラックは、従来の充填剤として使用することができる。そのようなカーボンブラックの代表的な例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、M332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991を含む。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収および34~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0062】
[068]好ましくは、タイヤ成分に使用されるゴム組成物は、従来の硫黄含有有機ケイ素化合物をさらに含んでもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
Z-Alk-S-Alk-Z V
[式中、Zは、
【0063】
【化1】
【0064】
からなる群から選択され、ここで、Rは、1~4炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Rは、1~8炭素原子のアルコキシまたは5~8炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは1~18炭素原子の二価炭化水素であり、nは整数2~8である。]のものである。
【0065】
[069]本発明に従って使用されてもよい硫黄含有有機ケイ素化合物の特別の例としては、以下のものを含む:3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリオクタオキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキサオキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-2’’-エチルヘキサオキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリイソオクタオキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(メトキシジエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロネクソキシシリルプロピル)テトラスルフィド(3,3’-bis(tricyclonexoxysilylpropyl)tetrasulfide)、3,3’-ビス(トリシクロペンタオキシシリルプロピル)トリスルフィド、2,2’-ビス(トリ-2’’-メチルシクロヘキサオキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3-メトキシエトキシプロポキシシリル3’-ジエトキシブトキシ-シリルプロピルテトラスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルsec.ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(メチルブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジt-ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(フェニルメチルメトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルイソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキサオキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメチルエチルメルカプトシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(メチルジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、2,2’-ビス(メチルエトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジエチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(エチルジ-sec.ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ブチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(フェニルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-フェニルエトキシブトキシシリル3’-トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’-ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルドデシル)ジスルフィド、18,18’-ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、18,18’-ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリル-ブテン-2-イル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシルエン)テトラスルフィド、5,5’-ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド。
【0066】
[070]好ましい硫黄含有有機ケイ素化合物は3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)スルフィドである。最も好ましい化合物は3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式Vについて、好ましくは、Zは、
【0067】
【化2】
【0068】
である
[式中、Rは2~4炭素原子のアルコキシであり、2個の炭素原子が特に好ましく;alkは2~4炭素原子の二価炭化水素であり、3個の炭素原子が特に好ましく;nは整数2~5であり、2および4が特に好ましい。]。
【0069】
[071]別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示される化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHを含み、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている。
【0070】
[072]一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、炭化水素系ジオール(例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール)のS-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]チオオクタノエートとの反応生成物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はMomentive Performance MaterialsからのNXT-Z(商標)である。
【0071】
[073]別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。
【0072】
[074]ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であってもよい。概して言えば、式Iの化合物の量は0.5~20phrの範囲である。好ましくは、量は1~10phrの範囲である。
【0073】
[075]ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、ならびに加工添加剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な構成要素の硫黄加硫可能なゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合することができることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫可能な材料および硫黄加硫された材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。好ましくは、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrの範囲であり、1~6phrの範囲が好ましい。抗酸化剤の典型的な量は約1~約5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~346頁に開示されているものなどであってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は約1~5phrを含む。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、約0.5~約5phrを含む。酸化亜鉛の典型的な量は約2~約5phrを含む。ワックスの典型的な量は1~5phrを含む。多くの場合、微晶質のワックスが使用される。釈解剤の典型的な量は0.1~1phrを含む。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0074】
[076]促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の性質を改善するために使用される。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は、0.5phr~4phr、好ましくは約0.8~約2.0phrの範囲の合計量で使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の性質を改善するために約0.05~約3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な性質に相乗効果を生み出すと予想することができ、どちらかの促進剤の単独使用によって製造されたものより多少良好である。さらに、通常の加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤が使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。好ましくは、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、好ましくはグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物である。
【0075】
[077]ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、通常、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階、続いて生産的混合段階において混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、通常、従来は「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合され、ここで、通常、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知されている。ゴム組成物は、熱力学的混合ステップにかけられてもよい。熱力学的混合ステップは、一般に、140℃から190℃の間のゴム温度を生ずるのに適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱力学的作業の好適な継続時間は、運転条件および成分の量および性質の関数として変動する。例えば、熱力学的作業は1~20分であってもよい。
【0076】
[078]ゴム組成物はタイヤのトレッドに組み入れることができる。
[079]本発明の空気入りタイヤはレースタイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農耕用、地ならし機、オフロード、トラック用タイヤなどであってよい。好ましくはタイヤは、乗用車用またはトラック用タイヤである。タイヤはまたラジアルまたはバイアスであってよいが、ラジアルが好ましい。
【0077】
[080]本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般に100℃~200℃の範囲の従来の温度で実行される。好ましくは、加硫は110℃~180℃の範囲の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、当業者にとって公知で、容易に明白になる様々な方法によって組み立て、成形、成型および硬化することができる。
【0078】
[081]以下の実施例は本発明を説明する目的のために提示され、本発明を限定しない。特に他の方法で特定されない限り、部はすべて重量部である。
【実施例
【0079】
[082]この実施例は、本発明によるゴム組成物の利点を説明する。ゴムコンパウンドは、phrで与えられる量を有する、表1に示す配合に従って混合した。コンパウンドは硬化させ、表2に示すような物理的性質に関して試験した。官能化IBRで構成された本発明のゴム組成物は、トレッドコンパウンドの予想される湿潤、RRおよび摩耗の性質において同時の改善を実証する。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
[083]主題発明を説明する目的で特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、主題発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を本明細書において行なうことができることはこの技術の当業者には明白であろう。
【0083】
[発明の実施形態]
1. エラストマー100重量部(phr)を基準として、
(A)-100℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する溶液重合官能化イソプレン-ブタジエンゴム約20~約100phr;
(B)ポリブタジエン0~約40phr;
(C)プロセス油0~20phr;
(D)30℃を超えるTgを有する樹脂40~80phr;および
(E)シリカ100~180phr
を含む加硫可能なゴム組成物を含むトレッドを有する、空気入りタイヤ。
2. 官能化イソプレン-ブタジエンゴムがシリル基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
3. 官能化イソプレン-ブタジエンゴムが、アルコキシ基、アルキル基およびアルキルアミノ基からなる群の少なくとも1つの成員で置換されたシリル基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
4. 官能化イソプレン-ブタジエンゴムが、メトキシおよびエトキシからなる群から選択されるアルコキシ基で置換されたシリル基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
5. 官能化イソプレン-ブタジエンゴムが、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択されるアルキル基で置換されたシリル基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
6. 官能化イソプレン-ブタジエンゴムが、ジエチルアミノおよびジメチルアミノからなる群から選択されるアルキルアミノ基で置換されたシリル基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
7. 樹脂が、ピペリレンを50~90%(重量による)、イソプレンを0~5%、アミレンを10~30%、環状体を0~5%、スチレン系を0~10%およびインデン系を0~10%含むC5/C9樹脂である、1に記載の空気入りタイヤ。
8. 樹脂が、ピペリレンを50~90%(重量による)、イソプレンを0~5%、アミレンを10~30%、環状体を2~5%、スチレン系を4~10%およびインデン系を4~10%含むC5/C9樹脂である、1に記載の空気入りタイヤ。
9. 樹脂がC5/C9樹脂であり、25モルパーセント未満の芳香族水素含有率を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
10. 樹脂がC5/C9樹脂であり、3から15モルパーセントの間の芳香族水素含有率を有する、1に記載の空気入りタイヤ。
11. 溶液重合イソプレン-ブタジエンゴムが、アルコキシシラン基および場合によってアミノ基で官能化されている、1に記載の空気入りタイヤ。
12. オイルが、芳香族、パラフィン、ナフテン、MES、TDAE、重質ナフテン油および植物油からなる群から選択される、1に記載の空気入りタイヤ。
13. 官能化イソプレン-ブタジエンゴムの量が70~95phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
14. ポリブタジエンの量が5~30phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
15. オイルの量が4~15phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
16. 樹脂の量が50~70phrの範囲である、1に記載の空気入りタイヤ。
17. ポリブタジエンが95パーセントを超えるcis1,4含有率、および-80~-110℃の範囲のTgを有する、1に記載の空気入りタイヤ。