(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20250227BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20250227BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250227BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
B41J2/01 501
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2020178252
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 克之
(72)【発明者】
【氏名】新田 良一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 光紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139948(WO,A1)
【文献】特開2011-213965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
C09D11/00- 13/00
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含み、
前記光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを5~30質量%含み、N,N-ジメチルアクリルアミドを5~30質量%含み、
前記光重合開始剤は、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくともいずれか一方を含み、
エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの合計量は、12質量%以下である、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。より詳細には、本発明は、多量の重合開始剤を必要とせず、かつ、各種性能が優れる光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TPOL(エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド)とIrgacure819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド)を含有する光硬化型インクジェット用インク組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインク組成物は、充分な硬化性を付与するためには一定量以上の開始剤が必要となる。しかしながら、硬化性を考慮し多量に開始剤を配合した場合には、塗膜性能が劣る。また、近年の安全性情報の改訂によりTPO((2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルフォスフィンオキサイド)を排除した配合設計が必要とされている。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、多量の重合開始剤を必要とせず、かつ、各種性能が優れる光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、顔料と光重合性化合物と所定の光重合開始剤とを含む光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0007】
(1)顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含み、前記光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを5~30質量%含み、N,N-ジメチルアクリルアミドを5~30質量%含み、前記光重合開始剤は、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくともいずれか一方を含み、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの合計量は、12質量%以下である、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0008】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、多量の重合開始剤を必要とせず、かつ、各種性能が優れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多量の重合開始剤を必要とせず、かつ、各種性能が優れる光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<光硬化型インクジェット印刷用インク組成物>
本発明の一実施形態の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物(以下、インク組成物ともいう)は、顔料と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含む。光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを5~30質量%含み、N,N-ジメチルアクリルアミドを5~30質量%含む。光重合開始剤は、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくともいずれか一方を含む。エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの合計量は、12質量%以下である。
【0011】
(顔料)
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、各種有機顔料、無機顔料である。
【0012】
有機顔料は、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等である。
【0013】
無機顔料は、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、群青、紺青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料等である。
【0014】
本実施形態のインク組成物の代表的な色相ごとの顔料の具体例は、以下のとおりである。イエロー顔料は、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等であり、C.I.Pigment Yellow 150、155、180、213等であることが好ましい。
【0015】
マゼンタ顔料は、C.I.Pigment Red 5、7、12、19、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等であり、C.I.Pigment Red 122、202、Pigment Violet 19等であることが好ましい。
【0016】
シアン顔料は、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等であり、C.I.Pigment Blue 15:4等であることが好ましい。
【0017】
ブラック顔料は、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等である。
【0018】
ホワイト顔料は、酸化チタン、酸化アルミニウム等であり、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタン等であることが好ましい。
【0019】
顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ホワイト以外の顔料の含有量は、インク組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、ホワイト以外の顔料の含有量は、インク組成物中、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。一方、ホワイト顔料の含有量は、インク組成物中、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、ホワイト顔料の含有量は、インク組成物中、18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、適度な着色力を有し、硬化塗膜の塗膜物性に悪影響を及ぼさない利点がある。
【0020】
(光重合性化合物)
光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを5~30質量%含み、N,N-ジメチルアクリルアミドを5~30質量%含む。
【0021】
・アミン変性オリゴマー
アミン変性オリゴマーは特に限定されない。一例を挙げると、アミン変性オリゴマーは、分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物のオリゴマーであるCN371、CN373、CN383、CN386(サートマー社製)等のアクリル化アミン化合物である。
【0022】
アミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、5質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましい。また、アミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、30質量%以下であればよく、20質量%以下であることが好ましい。アミン変性オリゴマーの含有量が5質量%未満である場合、表面硬化性、タック性、耐擦過性が劣る傾向がある。一方、アミン変性オリゴマーの含有量が30質量%を超える場合、インク組成物は、粘度が高くなりすぎたり、性能のバランスが悪くなる傾向がある。
【0023】
・N,N-ジメチルアクリルアミド
N,N-ジメチルアクリルアミドの含有量は、インク組成物中、5質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましい。また、N,N-ジメチルアクリルアミドの含有量は、インク組成物中、30質量%以下であればよく、20質量%以下であることが好ましい。N,N-ジメチルアクリルアミドの含有量が5質量%未満である場合、硬化性が低下する傾向がある。一方、N,N-ジメチルアクリルアミドの含有量が30質量%を超える場合、基材密着性が低下する傾向がある。
【0024】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくともいずれか一方を含む。
【0025】
本実施形態のインク組成物は、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの合計量は、12質量%以下であればよく、3質量%以上であることが好ましい。また、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの合計量は、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましい。エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドの合計量が12質量%を超える場合、バンディングが低下する傾向がある。
【0026】
(任意成分)
本実施形態のインク組成物は、上記成分のほか、適宜、以下の成分を含んでもよい。
【0027】
・有機溶剤
有機溶剤は特に限定されない。一例を挙げると、有機溶剤は、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル及びジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等である。有機溶剤は併用されてもよい。
【0028】
ジエチレングリコールジアルキルエーテルは、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルであることが好ましい。
【0029】
ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートは、炭素数6以下のアルキル基であるものが好ましく、炭素数3以下のアルキル基であるものがより好ましい。
【0030】
乾燥性の調整およびモタリング発生防止性をさらに向上させるために、有機溶剤は、引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体が併用されてもよい。
【0031】
引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体は、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等の(ポリ)エチレングリコールジエステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノエーテルモノエステル等である。
【0032】
また、溶媒全体の引火点を大きく変更しない範囲において、引火点が50~150℃の範囲内ではない、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤が併用されてもよい。
【0033】
・その他の光重合性モノマー
本実施形態のインク組成物は、上記のアミン変性オリゴマーをおよびN,N-ジメチルアクリルアミドのほか、その他の単官能または多官能の光重合性モノマーを含んでもよい。
【0034】
・単官能光重合性モノマー
単官能光重合性モノマーは、特に限定されない。一例を挙げると、単官能光重合性モノマーは、ベンジルメタアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート等単官能の(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ビニルメチルオキサゾリジノン、スチレン、(メタ)アクリル酸等である。
【0035】
単官能光重合性モノマーが含まれる場合において、単官能光重合性モノマーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、単官能光重合性モノマーの含有量は、インク組成物中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、単官能光重合性モノマーの含有量は、インク組成物中、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。単官能光重合性モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物の硬化塗膜は耐擦性等の塗膜耐性が優れるという利点がある。
【0036】
・多官能光重合性モノマー
多官能光重合性モノマーは特に限定されない。一例を挙げると、多官能光重合性モノマーは、分子中に炭素-炭素不飽和結合を複数有する化合物であり、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等である。
【0037】
多官能光重合性モノマーが含まれる場合において、多官能光重合性モノマーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、多官能光重合性モノマーの含有量は、インク組成物中、10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。また、多官能光重合性モノマーの含有量は、インク組成物中、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。多官能光重合性モノマーの含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物の硬化塗膜は基材密着性に優れるという利点がある。
【0038】
本実施形態のインク組成物は、アクリル系樹脂が含まれてもよい。アクリル系樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル樹脂は、有機溶剤に可溶な(メタ)アクリレートからなる重合体及びその共重合体などが挙げられる。その(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル、プロピル、またはブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等である。
【0039】
また、アクリル樹脂は、三菱ケミカル(株)製のBR-60(Tg:75℃)、BR-64(Tg:55℃)、BR-75(Tg:90℃)、BR-77(Tg:80℃)、BR-83(Tg:105℃)、BR-87(Tg:105℃)、BR-88(Tg:105℃)、BR-90(Tg:65℃)、BR-93(Tg:50℃)、BR-95(Tg:80℃)、BR-105(Tg:50℃)、BR-106(Tg:50℃)、BR-107(Tg:50℃)、BR-108(Tg:90℃)、BR-113(Tg:75℃)、BR-115(Tg:50℃)及びBR-116(Tg:50℃)等である。
【0040】
アクリル樹脂が含まれる場合において、アクリル樹脂の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル樹脂の含有量は、インク組成物中、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、アクリル樹脂の含有量は、インク組成物中、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
本実施形態のインク組成物は、性能が低下しない範囲内で、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂及びエチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が含まれてもよい。
【0042】
・その他の光重合開始剤
本実施形態のインク組成物に配合され得る上記以外の光重合開始剤は、特に限定されない。一例を挙げると、上記以外の光重合開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンおよび2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等である。
【0043】
これら光重合開始剤が含まれる場合において、これらの光重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤の含有量は、インク組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、インク組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
・増感剤
増感剤は特に限定されない。一例を挙げると、増感剤は、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等であることが好ましは、チオキサントン系増感剤であることがより好ましい。具体的には、増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤等である。市販品の代表例は、アントラセン系増感剤としては、DBA、DEA(川崎化成工業(株)製)、チオキサントン系増感剤としては、DETX、ITX(Lambson社製)等である。
【0045】
増感剤が含まれる場合において、増感剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、増感剤の含有量は、インク組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。また、増感剤の含有量は、インク組成物中、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。増感剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物の硬化塗膜の経時での色変化を抑制できるという利点がある。
【0046】
なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を含む場合、インク組成物は、黄色に変色しやすい。そのため、インク組成物は、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるため、色毎にチオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物およびクリアーインク組成物では、インク組成物は、増感剤として、チオキサントン系増感剤を含まないことが好ましい。また、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物では、光重合性化合物としてビニルアミド化合物を併用使用しているので、黄色に変色した硬化塗膜が退色し、色相の変化が問題となりやすい。そのため、光増感剤は、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物、およびイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しにくく、かつ、光重合性が他の色相より乏しいことから、光重合開始剤として、チオキサントン系増感剤を併用使用することが好ましい。
【0047】
・表面調整剤
表面調整剤は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤は、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等である。
【0048】
表面調整剤が含まれる場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤の含有量は、インク組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、表面調整剤の含有量は、インク組成物中、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。表面調整剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、良好な吐出安定性を示し、印刷画質に優れるという利点がある。
【0049】
・分散剤
分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤は、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物等である。これらの中でも、分散剤は、高分子化合物であることが好ましく、特開2004-083872号公報、国際公開第2003/076527号、国際公開第2004/000950号に記載されているカルボジイミド系化合物、塩基性官能基含有共重合物であるアジスパーPB821、822(味の素ファインテクノ(株)製)(酸価及びアミン価が共に10~20mgKOH/g)、ソルスパース56000(日本ルーブリゾール(株)製)、ソルスパース32000(日本ルーブリゾール(株)製)、ソルスパース39000(日本ルーブリゾール(株)製)、DISPERBYK(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が好ましい。
【0050】
分散剤が含まれる場合において、分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤の含有量は、顔料100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量%に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、粘度安定性に優れるという利点がある。
【0051】
インク組成物全体の説明に戻り、本実施形態のインク組成物の粘度は特に限定されない。一例を挙げると、インク組成物の粘度(25℃)は、30.0mPa・s以下であることが好ましく、20.0mPa・s以下であることがより好ましい。インク組成物の粘度が上記範囲内であることにより、インク組成物は、インクジェット印刷用ノズルから吐出されやすい。なお、粘度は、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定し得る。
【0052】
以上、本実施形態によれば、多量の重合開始剤を必要とせず、かつ、性能の優れた塗膜を形成し得るインク組成物が得られる。
【0053】
<インク組成物の調製方法>
本実施形態のインク組成物を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、インク組成物は、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合して調製し得る。
【0054】
<インク組成物の用途>
本実施形態のインク組成物は、紙基材を含む周知の用途に使用することができ、中でも特に耐擦過性が要求され、かつ非吸収性材料からなる基材の表面層に対して使用する場合に好適である。
【0055】
非吸収性材料は、金属、樹脂、セラミック等である。これらの中でも、インク組成物は、樹脂を基材とする表面層に対して使用すること、さらに、樹脂として塩化ビニル系重合体またはエチレン-酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる表面層を対象にして使用することが、耐水性等の点において好ましい。また、樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート、ターポリン、アクリル系樹脂等からなる場合、インク組成物は、密着性等が優れる。
【0056】
本実施形態のインク組成物を印字、硬化する方法は特に限定されない。一例を挙げると、印字、硬化する方法は、インク組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾したインク組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法である。基材への吐出(画像の印字)は、インク組成物をインクジェット記録用プリンターの低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、1~60μmとなるようにプリンタヘッドから吐出することにより実施し得る。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布されたインク組成物の塗膜に光を照射することにより実施し得る。
【0057】
インクジェット記録方式用プリンター装置は、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置であってもよい。また、塗膜の硬化における光源は、紫外線(UVランプ)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を用い得る。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0059】
使用した原料および調製方法を以下に示す。
(アミン変性オリゴマー)
CN371(Sartomer社製)
(光重合性化合物)
N,N-ジメチルアクリルアミド(単官能光重合性化合物、Tg:119℃)
N-ビニルカプロラクタム(単官能光重合性化合物、Tg:125℃)
ベンジルアクリレート(単官能光重合性化合物、Tg:11℃)
イソボルニルアクリレート(単官能光重合性化合物、Tg:88℃)
アクリロイルモルフォリン(単官能光重合性化合物、Tg:145℃)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(二官能光重合性化合物、Tg:43℃)
(光重合開始剤)
TPOL:エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
Omnirad 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Lambson社製)
(増感剤)
DETX:ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
(表面調整剤)
BYK-315N:ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン界面活性剤、固形分25質量%、溶剤成分:メトキシプロピルアセテートとフェノキシエタノールの質量比1/1の混合物(ビックケミー・ジャパン(株)製)
(色材(顔料))
PB15:4 ピグメントブルー15:4
P.R.122 ピグメントレッド122
P.Y.150 ピグメントイエロー150
P.Bk.7 ピグメントブラック7
(分散剤)
ソルスパース32000(日本ルーブリゾール(株)製)
PB821(味の素ファインテクノ(株)製)
【0060】
<実施例1~8および比較例1~7>
表1の配合(各材料の配合比率は質量%である)に従い、各材料を攪拌混合し、実施例1~8および比較例1~7の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得た。得られたインク組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
<粘度>
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をE型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で、粘度を測定した。
【0063】
<吐出安定性>
25℃の環境下に、低粘度インク用のインクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、各インク組成物とを24時間放置し、インクジェット記録装置およびインク組成物の温度を25℃とした。その後25℃で、各インク組成物を用いてPVC80(リンテック(株)製)上に、連続的に印刷して、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:インク組成物は、印刷の乱れがなく、安定して吐出できた。
△:インク組成物は、印刷の乱れが若干あったが、ほぼ安定して吐出できた。
×:インク組成物は、印刷の乱れがあったか、または、安定して吐出できなかった。
【0064】
<粘度安定性>
各インク組成物を密閉したガラス瓶に入れ、25℃および60℃の環境下で3週間静置した後、E型粘度計を使用して粘度を測定した。
((60℃ 3週間静置後の粘度値/25℃ 3週間静置後の粘度値)×100))-100の計算式により増粘率(%)を算出し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:増粘率は、10%未満であった。
△:増粘率は、10%以上、20%未満であった。
×:増粘率は、20%以上であった。
【0065】
<硬化性>
25℃の環境下に、低粘度インク用のインクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、各インク組成物とを24時間放置し、インクジェット記録装置およびインク組成物の温度を25℃とした。その後25℃で、各インク組成物を用いてPVC80(リンテック(株)製)上に、連続的に印刷した後、フォセオン・テクノロジー社製UV-LED光ランプにて、ランプとインクの塗布面との距離2cm下で、UV積算光量180mJ/cm2で硬化させた。この塗膜表面を指触して塗膜状態を目視で確認し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:塗膜に指紋が付着しなかった。
△:塗膜に若干指紋が付着した。
×:塗膜に指紋が付着した。
【0066】
<基材密着性>
市販のインクジェットプリンターでアクリル板(アクリライトL・S、三菱ケミカル(株)製)の表面に実施例および比較例で得られた各インク組成物を印刷し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜をカッターナイフでクロスカットし、カットした部分にセロハンテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン(株)製)を貼り、これを引き剥がすことにより硬化塗膜の剥離具合を以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:硬化塗膜の剥離率は、0%であった。
△:硬化塗膜の剥離率は、0%を超え、20%未満であった。
×:硬化塗膜の剥離率は、20%以上であった。
【0067】
<耐折り曲げ性>
市販のインクジェットプリンターでPETフィルム(E5100、東洋紡(株)製)の表面に実施例および比較例で得られた各インク組成物を印刷し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜を180℃折り曲げて、割れの状態を目視で確認し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:塗膜は、細かなクラック等の割れが生じなかった。
△:塗膜は、細かなクラックが生じた。
×:塗膜は、明らかな亀裂が生じた。
【0068】
<耐擦過性>
市販のインクジェットプリンターでPVC板(T938、タキロンシーアイ(株)製)の表面に実施例および比較例で得られた各インク組成物を印刷し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜に対し学振型堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製)を用いて、晒し布で荷重500g×100回擦った際の塗膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:塗膜の取られがなかった。
△:塗膜の表面に傷があった。
×:塗膜の明らかな取られが見られた。
【0069】
<耐溶剤性>
市販のインクジェットプリンターでPVC板(T938、タキロンシーアイ(株)製)の表面に実施例および比較例で得られた各インク組成物を印刷し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜に対し学振型堅牢度試験機((株)大栄科学精器製作所製)を用いて、エタノールを含んだ晒し布で荷重200g×10回擦った際の塗膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:塗膜の取られがなかった。
△:塗膜の表面に傷があった。
×:塗膜の明らかな取られが見られた。
【0070】
<バンディング>
市販のインクジェットプリンターでPVC板(T938、タキロンシーアイ(株)製)の表面に実施例および比較例で得られた各インク組成物を印刷し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜を変角光沢計(Gross Meter VG7000、日本電色工業(株)製)を用いて測定角度60°の条件での光沢度を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:測定値は、15.0以上であった。
△:測定値は、10.0以上15.0未満であった。
×:測定値は、10.0未満であった。
【0071】
表1に示されるように、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、吐出安定性、粘度安定性、硬化性、基材密着性、耐折り曲げ性、耐擦過性、耐溶剤性、バンディング性がいずれも優れた。一方、光重合開始剤を過剰に含む比較例1のインク組成物は、耐折り曲げ性およびバンディングの評価結果が劣った。エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドを使用していない比較例2は、バンディングの評価結果が劣った。光重合性化合物を過剰に含む比較例3のインク組成物は、基材密着性の評価結果が劣った。光重合性化合物の含有量が少ない比較例4のインク組成物は、硬化性の評価結果が劣った。N,N-ジメチルアクリルアミドを含まない比較例5のインク組成物は、粘度安定性の評価結果が劣った。アミン変性オリゴマーの含有量が少ない比較例6のインク組成物は、硬化性、耐折り曲げ性の評価結果が劣った。アミン変性オリゴマーを過剰に含む比較例7のインク組成物は、バンディングの評価結果が劣った。