(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】電池の外装材用シーラントフィルム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/121 20210101AFI20250227BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250227BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20250227BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20250227BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20250227BHJP
【FI】
H01M50/121
B32B27/32 E
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/129
(21)【出願番号】P 2020185858
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019233091
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社DNP高機能マテリアル彦根
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 大介
(72)【発明者】
【氏名】長岡 孝司
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/209184(WO,A1)
【文献】特開2018-156849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が電池用外装材の最内層の表面となる第1無延伸フィルム層と、該第1無延伸フィルム層の他方の面側に積層される1層以上の他の無延伸フィルム層とを含む複層材であり、
前記第1無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体と、プロピレンのホモ重合体と、滑剤とを含み、前記ランダム共重合体とホモ重合体の合計量に対するホモ重合体の含有率が5wt%~30wt%であ
り、
前記第1無延伸フィルム層の他方の面側に積層される他の無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体を含む層であることを特徴とする電池の外装材用シーラントフィルム。
【請求項2】
前記第1無延伸フィルム層における滑剤濃度が200ppm~3000ppmである請求項1に記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【請求項3】
前記他の無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体と、滑剤とを含み、該他の無延伸フィルム層における滑剤濃度が500ppm~5000ppmである請求項
1または2に記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【請求項4】
電池用外装材の金属箔層に接合される無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体を含む層である請求項1~
3のうちのいずれかに記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【請求項5】
前記
複層材が、前記第1無延伸フィルム層の他方の面に第2無延伸フィルム層を中間層として第3無延伸フィルム
層が積層された3層構造であり、
前記第2無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体を含む層であり、
前記第3無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体を含む層である請求項1~
3のうちいずれかに記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【請求項6】
耐熱性樹脂層と、請求項1~
5のうちのいずれかに記載の電池の外装材用シーラントフィルムと、これら両層間に配置された金属箔層とを含むことを特徴とする電池用外装材。
【請求項7】
50℃以下で保持するエージング後において、前記電池の外装材用シーラントフィルムの第1無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤析出量が0.2μg/cm
2~1.0μg/cm
2である請求項
6に記載の電池用外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電池の外装材を構成するシーラントフィルム、およびこのシーラントフィルムを最内層として用いた電池用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等のモバイル電気機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ等の蓄電デバイスの外装材としては、従来の金属缶に代えて、耐熱性樹脂層/接着剤層/金属箔層/接着剤層/熱可塑性樹脂層(内側シーラント層)からなる積層体が用いられている。また、電気自動車等の電源、蓄電用途の大型電源、キャパシタ等も上記構成の積層体(外装材)で外装されることも増えてきている。前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。
【0003】
このような立体形状にピンホールや破断等なく良好状態に成形するには内側シーラント層の表面の滑り性を向上させることが求められる。内側シーラント層の表面の滑り性を向上させて良好な成形性を確保するものとして、外装樹脂フィルム、第1の接着剤層、化成処理アルミニウム箔、第2の接着剤層、シーラントフィルムを順次積層した積層材において、特定の樹脂を用いかつ滑剤量を規定したシーラントフィルムが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたシーラントフィルムは、α-オレフィンの含有量が2~10重量%であるプロピレンとα-オレフィンのランダム共重合体から成り、これに滑剤を1000~5000ppm含有させたものである。
【0005】
特許文献2に記載されたシーラントフィルムは、2層のエチレン・プロピレンランダムコポリマフィルムでエチレン・プロピレンブロックコポリマフィルムを挟んだフィルムと内層側に配される第2ポリプロピレン層とを有する積層フィルムであり、第2プロピレン層に滑剤が添加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-288865号公報
【文献】特許第5211461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術では、外装材(積層材)の生産工程での加温保持時間や保管期間によって表面滑剤析出量のコントロールが難しく、必ずしも良好な成形性が得られないことがあった。また、外装材の表面に滑剤が過度に析出すると、成形金型の成形面に滑剤が付着堆積していって白粉(滑剤による白粉)が発生する。このような白粉が成形面に付着堆積した状態になると、白粉の除去を行うことで外装材の生産性が低下するという問題があったりと、このように滑剤による成形性改善には限界があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した技術背景に鑑みて、滑剤の析出量が適正量に制御された電池の外装材用シーラントフィルム、およびこのシーラントフィルムを最内層として配置された電池用外装材の提供を目的とする。
【0009】
即ち、本発明は下記[1]~[7]に記載の構成を有する。
【0010】
[1]一方の面が電池用外装材の最内層の表面となる第1無延伸フィルム層と、該第1無延伸フィルム層の他方の面側に積層される1層以上の他の無延伸フィルム層とを含む複層材であり、
前記第1無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体と、プロピレンのホモ重合体と、滑剤とを含み、前記ランダム共重合体とホモ重合体の合計量に対するホモ重合体の含有率が5wt%~30wt%であることを特徴とする電池の外装材用シーラントフィルム。
【0011】
[2]前記第1無延伸フィルム層における滑剤濃度が200ppm~3000ppmである前項1に記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【0012】
[3]前記第1無延伸フィルム層の他方の面側に積層される他の無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体を含む層である前項1または2に記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【0013】
[4]前記他の無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体と、滑剤とを含み、該他の無延伸フィルム層における滑剤濃度が500ppm~5000ppmである前項3に記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【0014】
[5]電池用外装材の金属箔層に接合される無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体を含む層である前項1~4のうちのいずれかに記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【0015】
[6]前記積層材が、前記第1無延伸フィルム層の他方の面に第2無延伸フィルム層を中間層として第3無延伸フィルムが積層された3層構造であり、
前記第2無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体を含む層であり、
前記第3無延伸フィルム層が、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体を含む層である前項1~5ののうちいずれかに記載の電池の外装材用シーラントフィルム。
【0016】
[7]耐熱性樹脂層と、前項1~6のうちのいずれかに記載の電池の外装材用シーラントフィルムと、これら両層間に配置された金属箔層とを含むことを特徴とする電池用外装材。
【0017】
[8]エージング後において、前記電池の外装材用シーラントフィルムの第1無延伸フィルム層の表面に存在する滑剤析出量が0.2μg/cm2~1.0μg/cm2である前項7に記載の電池用外装材。
【発明の効果】
【0018】
上記[1]に記載のシーラントフィルムは複層材であり、電池用外装材の最内層となる第1無延伸フィルム層を構成する樹脂がプロピレンのランダム共重合体とホモ重合体の混合物であるから、結晶性が高くなって剛性が高くなる。このため、この第1無延伸フィルム層によって電池用外装材が補強されて成形性が向上する。また、結晶性が高くなることによってエージングによる滑剤の析出が制御されるので、白粉の過剰な析出を防止しながら、優れた成形性が得られる。
【0019】
上記[2]に記載のシーラントフィルムは滑剤濃度が200ppm~3000ppmに規定されているので、このシーラントフイルムを用いた電池用外装材は特に成形性が優れている。
【0020】
上記[3]に記載のシーラントフィルムは、前記第1無延伸フィルム層以外の層としてプロピレンのブロック共重合体を含む層が含まれているので、シーラントフィルムの靱性が高まり、このシーラントフイルムを用いた電池用外装材の成形性がさらに向上する。
【0021】
上記[4]に記載のシーラントフィルムは、プロピレンのブロック共重合体を含む層における滑剤の濃度が500ppm~5000ppmに規定されているので、このシーラントフイルムを用いた電池用外装材は特に成形性が優れている。
【0022】
上記[5]に記載のシーラントフィルムは、電池用外装材の金属箔層に接合される側にプロピレンのランダム共重合体を含む層を有しているので金属箔層との密着性が高い。
【0023】
上記[6]に記載のシーラントフィルムは、電池用外装材の最内層となる第1無延伸フィルム層を構成する樹脂がプロピレンのランダム共重合体とホモ重合体の混合物であるから滑剤の析出量が適正量に制御され、第3無延伸フィルム層を構成する樹脂がプロピレンのランダム重合体であるから金属箔層との高い密着性が得られ、中間層の第2無延伸フィルム層を構成する樹脂がプロピレンのブロック共重合体であるから高い靱性が得られる。
【0024】
上記[7]に記載の電池用外装材は、最内層となるシーラントフィルムの第1無延伸フィルム層により滑剤の析出量が適正量に制御されるので成形性が向上する。
【0025】
上記[8]に記載の電池用外装材は、電池の外装材用シーラントフィルムの第1無延伸フィルムの表面に0.2μg/cm2~1.0μg/cm2の滑剤が析出しているので、白粉の過剰な発生はなく、かつ成形性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のシーラントフィルムを用いた電池用外装材の断面図である。
【
図2】
図1の電池用外装材を用いた電池の外装体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[シーラントフィルムおよび電池用外装材]
図1に、本発明の電池用外装材の一実施形態を示す。
【0028】
電池用外装材1は、バリア層としての金属箔層10の一方の面に第1接着剤層11を介してシーラントフィルム20が積層され、前記金属箔層10の他方の面に第2接着剤層12を介して耐熱性樹脂層30が積層されたラミネート材である。前記シーラントフィルム20は本発明の電池の外装材用シーラントフィルムの一実施形態である。以下の説明において「電池の外装材用シーラントフィルム」を略して「シーラントフィルム」と称することがある。
【0029】
前記シーラントフィルム20は、第1無延伸フィルム層21、第2無延伸フィルム層22および第3無延伸フィルム層23が順次積層された3層材であり、第3無延伸フィルム層23が接着剤層11によって金属箔層10に接合されている。従って、前記第1無延伸フィルム層21が電池用外装材1の最内層であり、第2無延伸フィルム層22とは反対側の面が露出して電池用外装材1の表面となっている。
【0030】
前記第1無延伸フィルム層21は、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体(以下「ランダム共重合体」と略する)と、プロピレンのホモ重合体(以下「ホモ重合体」と略する)と、滑剤とを含有している。
【0031】
前記ランダム共重合体にホモ重合体を加えるとランダム共重合体単独の場合よりも結晶性が高くなって剛性が高くなる。このため、金属箔層10に積層するシーラントフィルム20にランダム共重合体およびホモ重合体を含む第1無延伸フィルム層21が含まれていると、金属箔層10が補強されて割れ難くなり、電池用外装材1の成形性が向上する。
【0032】
前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。また、前記ランダム共重合体におけるプロピレンを除く他の共重合成分の含有率は0.5wt%~20wt%の範囲が好ましく、特に1wt%~10wt%の範囲が好ましい。
【0033】
前記ランダム共重合体とホモ重合体の合計量に対するホモ重合体の含有率は5wt%~30wt%である。前記ホモ重合体の含有率が5wt%未満では成形性向上効果が少なく、30wt%を超えると結晶性が高くなりシール温度が上がることでシーラントが流れる可能性があるからである。前記ホモ重合体の特に好ましい含有率は5wt%~15wt%である。
【0034】
また、前記第1無延伸フイルム層21に用いる滑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
【0035】
前記飽和脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。前記不飽和脂肪酸アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0036】
前記置換アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、N-オレイルパルチミン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。また、前記メチロールアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチロールステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0037】
前記飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0038】
前記不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0039】
前記脂肪酸エステルアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアロアミドエチルステアレート等が挙げられる。
【0040】
前記芳香族系ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。
【0041】
前記第1無延伸フィルム層における滑剤濃度は200ppm~3000ppmの範囲が好ましい。前記滑剤濃度が200ppm未満では成形性が不足し、3000ppmを添加すれば十分に成形性が向上するのでそれを超える多量の添加はコスト面で好ましくない。特に好ましい滑剤濃度は500ppm~2000ppmである。
【0042】
また、上述したように、第1無延伸フィルム21はホモ重合体を混合させたことで結晶性が高い。電池用外装材1の製造工程で貼り合わせた積層物にエージング処理を施すと第1無延伸フィルム21に含まれる滑剤がフィルムの表面に析出するが、第1無延伸フィルム21の結晶性が高いので過剰な滑剤が析出することはない。従って、第1無延伸フィルムはホモ重合体に起因する高い結晶性によって滑剤の析出量が制御され、白粉の過剰な発生を防止しながら、優れた成形性が得られる。
【0043】
前記第1無延伸フィルム層21にはアンチブロッキング剤を含有させてもよい。前記アンチブロッキング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ粒子、アクリル樹脂粒子、ケイ酸アルミニウム粒子等が挙げられる。前記アンチブロッキング剤の粒子径は、平均粒子径で0.1μm~10μmの範囲にあるのが好ましく、中でも平均粒子径で1μm~5μmの範囲にあるのがより好ましい。前記アンチブロッキング剤を第1無延伸フィルム層21に含有させる際のその含有濃度は100ppm~5000ppmに設定されるのが好ましい。また、前記アンチブロッキング剤は第1無延伸フィルム層以外の層に含有させてもよい。
【0044】
前記アンチブロッキング剤(粒子)を電池用外装材1の最内層を形成する第1無延伸フィルム層21に含有させることにより、最内層の表面に微小突起を形成しフィルム同士の接触面積を小さくしてシーラントフィルム同士のブロッキングを抑制できる。また、前記滑剤とともにアンチブロッキング剤(粒子)を含有させることで前記成形時のすべり性をさらに向上させることができる。
【0045】
本発明のシーラントフィルムは上述した第1無延伸フィルム層の他に1層以上の無延伸フィルム層を含む複層材である。
【0046】
他の無延伸フィルム層を構成する樹脂として、共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体(以下「ブロック共重合体」と略する)を推奨できる。前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等やさらにエチレン‐プロピレン共重ゴムといったオレフィン系樹脂によるエラストマー成分等が挙げられる。前記ブロック共重合体におけるプロピレンを除く他の共重合成分の含有率は10wt%~30wt%の範囲が好ましく、特に10wt%~20wt%の範囲が好ましい。
【0047】
シーラントフィルムを構成する層にブロック共重合体を含む層を加えることにより靱性が高まって成形性がさらに向上する。また、この無延伸フィルム層にも滑剤が含まれていることが好ましく、滑剤濃度は500ppm~5000ppmが好ましい。滑剤濃度が500ppm未満では表面に作用する滑剤量が不足するため、滑り性が悪化するからであり、5000ppmを超えると表面に滑剤が多量に析出してしまい、周囲を汚染する可能性が高くなるからである。特に好ましい滑剤濃度は700ppm~3000ppmである。前記ブロック共重合体を含む層に用いる滑剤は第1無延伸フィルム層に用いる滑剤に準じる。
【0048】
また、シーラントフィルムにおいて、金属箔層に接合する層は金属箔層と密着性の高い層で構成されていることが好ましい。第1無延伸フィルム層の樹脂成分の一つであるランダム共重合体、即ち共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体は金属箔層に対して密着性の高い樹脂であり、金属箔層側の層をランダム共重合体を含む層で構成することが好ましい。なお、前記ランダム共重合体の層に滑剤を含有させる場合は金属箔層との接着を阻害させない範囲であることが好ましく、滑剤濃度は50ppm~1000ppmが好ましい。また、金属箔層側に配置するランダム共重合体を含む層におけるランダム共重合体および滑剤は第1無延伸フィルム層におけるランダム共重合体および滑材に準じる。
(3層構造のシーラントフィルム)
図1の3層構造のシーラントフィルム20は、中間層の第2無延伸フィルム層22が上述したブロック共重合体を含む層で構成され、金属箔層10に接合される第3無延伸フィルム層が上述したランダム共重合体を含む層で構成されている。中間層として滑剤を含有する第2無延伸フィルム層22を配置することにより、第1無延伸フィルム層21の表面から析出する滑剤量を制御し易くなり、白粉の過剰な析出を抑えることができる。また、前記第2無延伸フィルム層22を構成する樹脂として上述のブロック共重合体を用いることが好ましく、シーラントフィルム20の靱性が高まって電池用外装材1の成形性が向上する。前記第3無延伸フィルム層23を構成する樹脂として上述のランダム共重合体を用いることが好ましく、金属箔層10との高い密着性が得られる。
【0049】
本発明のシーラントフィルムの好ましい厚さは20μm~100μmであり、特に好ましい厚さは20μm~80μmである。また、上述した3層構造のシーラントフィルム20において各層の好ましい厚さの割合は、第1無延伸フィルム層21が5~20%、第2無延伸フィルム層22が60~90%、第3無延伸フィルム層23が5~20%である。
【0050】
なお、本発明のシーラントフィルムは第1無延伸フィルム層の一方の面が露出する複層材であること以外に限定はなく、層の数は限定されない。また、第1無延伸フィルム層以外の層の構成材料も上述した第2無延伸フィルム層および第3無延伸フィルム層の推奨材料に限定されない。
[シーラントフィルムおよび電池用外装材の製造方法]
前記シーラントフィルム20は、多層押出成形、インフレーション成形、Tダイキャストフィルム成形等の成形法により製造されるのが好ましい。
【0051】
前記電池用外装材1は、金属箔層10の一方の面に第1接着剤層11を介して前記シーラントフィルム20の第3無延伸フィルム層23を貼り合わせ、他方の面に第2接着剤層12を介して耐熱性樹脂層30を貼り合わせることにより製造することができる。貼り合わせの順序は限定されない。また、全ての層を貼り合わせ後にエージングを行うことにより、シーラントフィルム20の表面、即ち第1無延伸フィルム層21の表面に滑剤を析出させることが好ましい。エージング条件として50℃以下で保持する熱処理を推奨できる。エージング温度が50℃を超えると、滑剤が過剰に析出し、白粉と呼ばれる固化した滑剤が周囲を汚染する可能性が高くなる。エージング時間は限定されないが、エージングによって接着剤を硬化させるので、使用する接着剤の硬化時間を勘案してエージング時間を設定する。
【0052】
エージング後の電池外装材1において、シーラントフィルム20の第1無延伸フィルム層21の表面に析出する滑剤量、即ち電池用外装材1の最内層の表面に存在する滑剤量が0.2μg/cm2~1.0μg/cm2の範囲であることが好ましい。滑剤析出量を前記範囲とすることにより、成形時に良好な滑り性を発現するとともに、白粉の表出を防止できる。第1無延伸フィルム21の表面における特に好ましい滑剤析出量は0.4μg/cm2~0.8μg/cm2である。
【0053】
図2に、本発明の電池用外装材1で作製した電池の外装体2を示す。
【0054】
前記外装体2は、立体形状の本体40とフラットな蓋板45とからなる。前記本体40は、平面視角形の凹部41とこの凹部41の開口縁から外方に延びるフランジ42を有している。前記蓋板45は本体40のフランジ42の外回り寸法と同寸である。そして、前記凹部40と蓋板45によって囲まれた空間がベアセル50の収納用空間を形成している。
【0055】
前記外装体2の本体40は、フラットシートの電池用外装材1に対し、張り出し成形、深絞り成形等の塑性変形加工を施して、凹部41を形成し、凹部41の周囲の未変形部分をフランジ42の外回り寸法にトリミングしたものである。前記凹部41の形成に際しては、電池用外装材1のシーラントフィルム20が凹部41の内面となり、耐熱性樹脂層30が凹部41の外面となるように塑性変形加工を施す。前記シーラントフィルム20は強度が高くかつ表面に析出した滑剤の作用により滑り性が良いので、塑性変形加工によって深い凹部41を形成することができる。前記蓋板45はフラットシートの電池用外装材1を所要寸法に裁断したものである。
【0056】
本発明の電池用外装材において、シーラントフィルム以外の層は周知の材料を適宜用いることができ、貼り合わせ方法も特に限定されない。以下に、シーラントフィルムを除く層の好適材料について説明する。
【0057】
金属箔層10は、電池用外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層10としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔等が挙げられ、中でも、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)を用いるのが好ましい。前記金属箔層10の厚さは、5μm~120μmであるのが好ましい。5μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、120μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層10の厚さは、10μm~80μmであるのがより好ましい。
【0058】
前記金属箔層10は、少なくともシーラントフィルム20側の面に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処
理を施す。
【0059】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0060】
耐熱性樹脂層30を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、シーラントフィルム20を構成する樹脂の融点より10℃以上、好ましくは20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いる。この条件を満たす樹脂として、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層30としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層30は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0061】
前記耐熱性樹脂層30の厚さは、2μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは2μm~50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは7μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0062】
前記第1接着剤層11を構成する接着剤としては、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤等を推奨できる。
【0063】
第2接着剤層12を構成する接着剤としては、ウレタン系接着剤、オレフィン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等を推奨できる。
【実施例】
【0064】
図1に示す3層構造のシーラントフィルム20および電池用外装材1を作製した。
【0065】
実施例1~14および比較例1、2の電池用外装材に共通する材料は以下のとおりである。
【0066】
金属箔層10として、厚さ40μmのアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成したものを使用した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2である。
【0067】
耐熱性樹脂層30として厚さ25μmの二軸延伸6ナイロンフィルムを用いた。
【0068】
第1接着剤層11として、2液硬化型マレイン酸変性プロピレン接着剤を用いた。前記2液硬化型マレイン酸変性ポリプロピレン接着剤は、主剤としてのマレイン酸変性ポリプロピレン(融点80℃、酸価10mgKOH/g)100質量部、硬化剤としてのヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート体(NCO含有率:20質量%)8質量部、さらに溶剤が混合されてなる接着剤溶液からなる。前記接着剤溶液の塗布量は固形成分量として2g/m2である。
【0069】
第2接着剤層12として、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いた。
【0070】
実施例1~14および比較例1、2のシーラントフィルムの3つの層に共通する材料は以下のとおりである。
【0071】
共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するランダム共重合体として、エチレン-プロピレンランダム共重合体を用いた。前記ランダム共重合体におけるエチレン含有量は5wt%である。
【0072】
共重合成分としてプロピレンおよびプロピレン以外のモノマーを含有するブロック共重合体として、エチレン-プロピレンブロック共重合体を用いた。前記ブロック共重合体におけるエチレン含有量は20wt%である。
【0073】
滑剤として、実施例1~11、13、14および比較例1、2はエルカ酸アミドを用い、実施例12はベヘン酸アミドを用いた。
【0074】
アンチブロッキング剤としてとして平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いた。
【0075】
また、実施例1~14および比較例1、2のシーラントフィルム20の総厚および3つの層の厚さは共通であり、総厚が40μmであり、第1無延伸フィルム層21が6μm、第2無延伸フィルム層22が28μm、第3無延伸フィルム層23が6μmである。
[シーラントフィルムおよび電池用外装材の作製]
実施例1~14および比較例2のシーラントフィルムにおいて、第1無延伸フィルム層21を構成する樹脂組成物は、ランダム共重合体とホモ重合体を表1に記載した割合で含有し、さらに滑剤およびアンチブロッキング剤を表1に記載された濃度で含有している。また、比較例1のシーラントフィルムの第1無延伸フィルム層21を構成する樹脂組成物は、ランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなる。第2無延伸フィルム層22を構成する樹脂組成物は、全ての例においてブロック共重合体と滑剤とからなり、各例の滑剤濃度は表1に示すとおりである。第3無延伸フィルム層23は、全ての例においてランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなり、滑剤濃度およびアンチブロッキング剤濃度は表1に示すとおりである。
【0076】
前記金属箔層10の片面に第2接着剤層12を形成して耐熱性樹脂層30をドライラミネートした。また、前記金属箔層10の反対側の面に第1接着剤層11を形成してシーラントフィルム20を貼り合わせる準備を行った。
【0077】
一方、シーラントフィルム20は、Tダイを用いて各層の材料となる樹脂組成物を共押しすることにより3層構造の積層材に成形した。成形したシーラントフィルム20は、第3無延伸フィルム層23を先に準備した金属箔層10の第1接着剤層11に重ね、積層物をゴムニップロールと100℃に加熱したラミネートロールとの間に挟み込んでドライラミネートして
図1の電池用外装材1の形態とした。次いで、作製した電池用外装材1を40℃で10日間保持してエージングを行った。
【0078】
作製した各例の電池用外装材1の滑剤析出量、成形性、白粉について下記の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
(滑剤析出量)
各電池用外装材1から縦100mm×横100mmの矩形状の試験片を2枚切り出した後、これら2枚の試験片を重ね合わせて互いのシーラントフィルム20の周縁部同士をヒートシール温度200℃でヒートシールして袋体を作製した。この袋体の内部空間内にシリンジを用いてアセトン1mLを注入し、シーラントフィルム20の第1無延伸フィルム層21の表面とアセトンとが接触した状態で3分間放置した後、袋体内のアセトンを抜き取った。この抜き取った液中に含まれる滑剤量をガスクロマトグラフを用いて測定、分析することにより、第1無延伸フィルム層21の表面に存在する滑剤量(μg/cm2)を求めた。即ち、電池用外装材1の最内層である第1無延伸フィルム層21表面1cm2あたりの滑剤量を求めた。
【0079】
この滑剤析出量の測定はエージング前およびエージング後の2回行った。
(成形性)
成形深さフリーのストレート金型を用い、エージング後の電池用外装材1に対し下記成形条件で深絞り1段成形を行って凹部を形成し、凹部のコーナー部にピンホールが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べた。なお、ピンホールの有無は、ピンホールを透過してくる透過光の有無を目視により観察することにより調べた。
【0080】
成形条件
成形型…パンチ:33.3mm×53.9mm、ダイ:80mm×120mm、コーナーR:2mm、パンチR:1.3mm、ダイR:1mm
しわ押さえ圧…ゲージ圧:0.475MPa、実圧(計算値):0.7MPa
材質…SC(炭素鋼)材、パンチRのみクロムメッキ
前記電池用外装材1に形成した凹部は、
図2の電池の外装体2の本体40の凹部41に相当し、前記成形型のパンチの寸法が凹部41の内部の平面寸法に対応し、成形深さが凹部41の深さに対応する。
(白粉)
エージング後の各電池用外装材1から縦600mm(MD方向)×横100mmの矩形状の試験片を切り出した後、得られた試験片をシーラントフィルム20の第1無延伸フィルム層21面を上側にして試験台の上に載置し、この試験片の上面に、黒色のウェスが巻き付けられて表面が黒色を呈しているSUS製錘(質量1.3kg、接地面の大きさが55mm×50mm)を載せた状態で、該錘を試験片の上面と平行な水平方向に引張速度4cm/秒で引っ張ることによって錘を試験片の上面に接触状態で長さ400mmにわたって引張移動させた。引張移動後の錘の接触面のウェス(黒色)を目視で観察し、ウェス(黒色)の表面に白粉が顕著に生じていたものを「×」とし、白粉がある程度(中程度)生じていたものを「△」とし、白粉が殆どないか又は白粉が認められなかったものを「○」とした。ただし、本試験において中程度(△)の評価に該当する試験片は無かった。
【0081】
なお、上記黒色のウェスとしては、TRUSCO社製「静電気除去シートS SD2525 3100」を使用した。
【0082】
【0083】
表1より、第1無延伸フィルム層をランダム共重合体とホモ重合体の混合物で構成することにより成形性が向上することを確認した。また、実施例1~14と比較例1を対照すると、第1無延伸フィルム層にホモ重合体を加えることにより滑剤による白粉量を増加させることなく成形性の向上が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明にかかるシーラントフィルムを用いて製作された電池用外装材は、リチウム2次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)等の蓄電デバイス、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ、全固体電池等の外装材として用いられる。
【符号の説明】
【0085】
1…電池用外装材
2…電池の外装体
10…金属箔層
11…第1接着剤層
12…第2接着剤層
20…シーラントフィルム(電池の外装材用シーラントフィルム)
21…第1無延伸フィルム層
22…第2無延伸フィルム層
23…第3無延伸フィルム層
30…耐熱性樹脂層