(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】プローブ及びこれをハイスループットシーケンシングに適用するターゲット領域の濃縮方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20250227BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250227BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20250227BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250227BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12N15/09 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2020518408
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2018096078
(87)【国際公開番号】W WO2019062289
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-04-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】201710918635.3
(32)【優先日】2017-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520104352
【氏名又は名称】アモイ ダイアグノスティクス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リンファ
(72)【発明者】
【氏名】リ,シュハオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲ,フイジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,バオレイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ニン
(72)【発明者】
【氏名】ルアン,リ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リモウ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】中村 浩
【審判官】小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101067156号明細書(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105925675号明細書(CN,A)
【文献】Sientific Reports, 2016, 6:24051, pp.1-9
【文献】Genome Research, 2013, Vol.23, pp.843-854
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’末端からリンカーアーム、マスク配列1、UID配列1
、Tag1配列
、Tag2配列、マスク配列2、伸長アームの順であり、前記UID配列1が3~12個のランダムな塩基で構成され;前記マスク配列1は、リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基であり;前記マスク配列2は、
前記伸長アームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基であることを特徴とし、
前
記Tag1配列は、配列5’-CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC-3’であり、ここで前記配列の3’末端は、0~16個の塩基を減らすことができ、
前
記Tag2配列は、配列5’-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’であり、ここで前記配列の5’末端は、0~19個の塩基を減らすことができ、
前記リンカーアームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列であ
り、
前記伸長アームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列である、シーケンシング用プローブ。
【請求項2】
5’末端からリンカーアーム、マスク配列1
、Tag1配列
、Tag2配列、UID配列2、マスク配列2、伸長アームの順であり、前記UID配列2が3~12個のランダムな塩基で構成され;前記マスク配列1は、リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基であり;前記マスク配列2は、
前記伸長アームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基であることを特徴とし、
前
記Tag1配列は、配列5’-CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC-3’であり、ここで前記配列の3’末端は、0~16個の塩基を減らすことができ、
前
記Tag2配列は、配列5’-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’であり、ここで前記配列の5’末端は、0~19個の塩基を減らすことができ、
前記リンカーアームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列であ
り、
前記伸長アームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列である、シーケンシング用プローブ。
【請求項3】
5’末端からリンカーアーム、マスク配列1、UID配列1
、Tag1配列
、Tag2配列、UID配列2、マスク配列2、伸長アームの順であり;前記UID配列1及びUID配列2は、いずれも3~12個のランダムな塩基で構成され;前記マスク配列1は、リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基であり;前記マスク配列2は、
前記伸長アームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基であることを特徴とし、
前
記Tag1配列は、配列5’-CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC-3’であり、ここで前記配列の3’末端は、0~16個の塩基を減らすことができ、
前
記Tag2配列は、配列5’-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’であり、ここで前記配列の5’末端は、0~19個の塩基を減らすことができ、
前記リンカーアームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列であ
り、
前記伸長アームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列である、シーケンシング用プローブ。
【請求項4】
前記Tag1配列
と前記Tag2配列との間に、1~3個のデオキシウラシル塩基であるdU領域が存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記伸長アームが修飾され;
代替的に、前記リンカーアームの5’末端は、リン酸化修飾が行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項6】
前記伸長アームは、ホスホロチオエート修飾が行われることを特徴とする、請求項
5に記載のプローブ。
【請求項7】
前記リンカーアームのTm値は、伸長アームのTm値より2℃以上高いことを特徴とする、請求項
6に記載のプローブ。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブを使用することを特徴とする、ハイスループットシーケンシングに適用されるターゲット領域の濃縮方法。
【請求項9】
テンプレートDNAは、前記プローブとハイブリダイズ、伸長、ライゲーションして第1の産物を得るハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーションの反応ステップと、
過剰プローブ及びテンプレートDNAを酵素で切断して消化し、タグ付きプライマーを使ってPCR増幅して第2の産物を得る第2の産物取得ステップと、
第2の産物を精製してライブラリーを得る精製ステップと、
ライブラリーをシーケンサーにロードしてシーケンシングするステップと、
を含むことを特徴とする、請求項
8に記載のハイスループットシーケンシングに適用されるターゲット領域の濃縮方法。
【請求項10】
前記ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーションの反応ステップ:テンプレートDNAと請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブは、先にハイブリダイズしてからポリメラーゼ、リガーゼを加えて伸長、ライゲーションさせて第1の産物を得得ることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーション反応の反応系及び反応プロセスは、テンプレートがDNAの場合、
精製水 6μL;
50ng/μLのテンプレートDNA 2μL;
3×10
-3μMの請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブ 1μL;
10×Ampligase Buffer 1μL;
プロセスは、95℃で5分間変性させ、60℃で2時間インキュベーションすることであり;その後、上記反応系に以下の試薬を加えて、伸長、ライゲーション反応を行い、反応プロセスは60℃で1時間インキュベーションすることであり;
精製水 1.4μL;
1mM dNTPs 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase 1μL;
10×Ampligase Buffer 0.5μL;
50mM NAD+ 0.1μL;
Phusion(登録商標) High-Fidelity DNA
Polymerase 1μL;
又はテンプレートがRNAの場合、
ヌクレアーゼフリー水 5.5μL;
50ng/μLのテンプレートRNA 2μL;
3×10
-3μMの前記プローブ 1μL;
RNase Inhibitor 0.5μL;
10×Ampligase Buffer 1μL;
70℃で2分間変性させ、65℃で2時間インキュベーションした後、
1mMのdNTPs 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase 1μL;
10×Ampligase Buffer 1μL;
50mMのNAD+ 0.1μL;
5× First-Strand Buffer 4μL;
100mMのDTT 2μL;
SMART MMLV RT 1μL;
上記の試薬を加え、42℃で1時間反応させて伸長、ライゲーション反応を行うことを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーション反応ステップは、テンプレートDNA、請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブ、ポリメラーゼ及びリガーゼを同時に添加し、ハイブリダイゼーション、伸長、ライゲーションを同時に行って第1の産物を得ることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーション反応の反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
精製水 3.4μL;
50ng/μLのテンプレートDNA 2μL;
3×10
-3μMの前記プローブ 1μL;
1mM dNTPs 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase 1μL;
10×Ampligase Buffer 1μL;
50mM NAD+ 0.1μL;
Phusion(登録商標) HiFi DNA Polymerase
0.5μL;
反応プロセスは、95℃5分間、60℃3時間である、
ことを特徴とする、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の産物取得ステップは、先に過剰プローブ及びテンプレートDNAをエキソヌクレアーゼで消化し、次に第1の産物をUSER酵素で線形化してからタグ付きプライマーによってPCR増幅して、第2の産物を得ることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の産物を得る反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
第1の産物
Exonuclease I 0.5μL;
Exonuclease III 0.5μL;
37℃で40分間インキュベーションし、95℃で5分間インキュベーションし;
さらに以下の試薬を加え:
2× iProof HF Master Mix 50μL;
精製水 29μL;
20μMのタグ付き上流プライマー 2μL;
20μMのタグ付き下流プライマー 2μL;
USER酵素 1μL;
インキュベーション37℃15分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温することを特徴とする、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の産物を得るステップは、エキソヌクレアーゼ、タグ付き上流プライマー及びタグ付き下流プライマーを同時に添加し、酵素切断・消化、線形化及びPCR増幅を同時に行って第2の産物を得;
前記タグ付き上流プライマー及びタグ付き下流プライマーの3’末端にホスホロチオエートを修飾し、5’末端にホスホロチオエート、アミノ或いはスペンサーアームを修飾することで、エキソヌクレアーゼによって切断されることを防止することを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の産物を得る反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
第1の産物 18μL;
Exonuclease Lambda 0.5μL;
Exonuclease III 1μL;
2× iProof HF Master Mix 50μL;
H
2O 29.5μL;
20μMのタグ付き上流プライマー 2μL;
20μMのタグ付き下流プライマー 2μL;
反応プロセスは、インキュベーション37℃40分間、インキュベーション95℃5分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温することであり;
又はテンプレートがRNAの場合の反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
第1の産物 10.1μL;
Exonuclease I 1μL;
RNase A 0.1μL;
RNase H 0.1μL;
2× iProof HF Master Mix 50μL;
H
2O 24.8μL;
20μMのタグ付き上流プライマー 2μL;
20μMのタグ付き下流プライマー 2μL;
インキュベーション37℃60分間、インキュベーション95℃5分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング60℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして27サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温する、
ことを特徴とする、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記タグ付きプライマー内の上流プライマー構造は、5’末端から開始し
、シーケンシング時にクラスター生成に用いられる配列領域、index配列領域及
び前記Tag1配列に逆相補的なペア全長配列領域であり;
タグ付きプライマー内の下流プライマー構造は、5’末端から開始し
、シーケンシング時にクラスター生成に用いられる配列領域、index配列領域及
び前記Tag2全長配列領域である、
ことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーシーケンシング分野に関し、特に、プローブ及びこれをハイスループットシーケンシングに適用するターゲット領域の濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイスループットシーケンシング技術の急速な発展につれ、シーケンシング効率が大幅に向上し、時間が大幅に短縮され、コストも大幅に削減され、遺伝子検出法は革命的な変化を遂げ、その技術が大規模、産業化された方向に向けて発展している。ハイスループットシーケンシング全体的なコストは大幅に削減されたが、高深度全ゲノムシーケンスコスト及び大規模なシーケンスデータを解読する複雑さは、研究者がやはり難しいと感じる。ターゲットシーケンシング技術の出現は、上記の困難をある程度緩和した。ターゲットシーケンシングは、興味のある遺伝子領域を濃縮やシーケンシングする研究戦略である。ターゲット領域シーケンシングの主な利点は、特定領域に対しシーケンシングを行うことができ、シーケンシングコストを効果的に削減し、シーケンシング深度を深め、特定領域の遺伝的変異情報をより経済的かつ効率的に研究できる。
【0003】
現在、ターゲット領域の濃縮を実現するのは、主に:ハイブリッドキャプチャー技術、マルチプレックスPCR技術及び分子反転プローブ技術(Molecular Inversion Probe,MIP)の3つの方法がある。ハイブリッドキャプチャー技術:まず物理方法又は酵素切断法によってゲノムDNAが断片化され、PCR増幅のため、両端にアダプターが接続される。次に、ビオチン標識プローブとハイブリダイズし、ハイブリダイズされていないDNAは磁気ビーズでキャプチャーされずに洗い流される。最後に、濃縮されたDNAサンプルをPCR増幅、シーケンシングにかける。ハイブリッドキャプチャーの特徴は、優れたスケーラビリティとエクソームまたはさらに大きなサイズのターゲット領域をキャプチャーできるが、欠点は操作手順が複雑で、周期が長く、コストが高く、比較的多い特別機器が必要になる。
【0004】
マルチプレックスPCR増幅技術は、標的配列に基づいて特異的なプライマーを設計し、多重増幅を通じて對標的配列を濃縮する。マルチプレックスPCR技術の操作が簡単で、運用が柔軟で、安価で、分析が簡単で、機器への要求も最小限で、標的配列の濃縮及びライブラリー構築を数時間で完了できる。超深度シーケンシングを利用すると、アンプリコンシーケンシングは、複雑なサンプルの超低周波数の変異を検出することができ、癌などの疾患の臨床研究に特に適している。その欠点は、比較的小さな標的配列のキャプチャーに適しているだけであり、増幅阻害、プライマーの交差増幅、深刻なプライマー二量体などの問題を解決する必要がある。
【0005】
分子反転プローブ技術は、新型マルチ標的配列決定方法であり、この方法には簡単な操作手順、少量のサンプル、低コスト、高精度などの利点がある。ただし、ハイスループットシーケンシング分野における分子反転プローブの運用は未熟であり、ハイブリダイゼーション時間が長く、エラー率が高く、操作ステップが複雑であるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された分子反転プローブ技術を利用して、簡単、迅速、高効率かつ正確なターゲット領域の濃縮方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、プローブを提供しており、前記プローブは5’末端からリンカーアーム、マスク配列1、UID配列1、Illumina(登録商標) Tag1配列(Tag1配列)、Illumina(登録商標) Tag2配列(Tag2配列)、マスク配列2、伸長アームの順であり、前記UID配列1が3~12個のランダムな塩基で構成され;前記マスク配列1は、リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基であり;前記マスク配列2は、0~3個のリンカーアームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基であることを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様では、プローブを提供しており、前記プローブは5’末端からリンカーアーム、マスク配列1、Illumina(登録商標) Tag1配列、Illumina(登録商標) Tag2配列、UID配列2、マスク配列2、伸長アームの順であり、前記UID配列2が3~12個のランダムな塩基で構成され;前記マスク配列1は、リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基であり;前記マスク配列2は、0~3個のリンカーアームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基であることを特徴とする。
【0009】
本発明の別の態様では、プローブも提供しており、前記プローブは5’末端からリンカーアーム、マスク配列1、UID配列1、Illumina(登録商標) Tag1配列、Illumina(登録商標) Tag2配列、UID配列2、マスク配列2、伸長アームの順であり;前記UID配列1及びUID配列2は、いずれも3~12個のランダムな塩基で構成され;前記マスク配列1は、リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基であり;前記マスク配列2は、0~3個のリンカーアームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基であることを特徴とする。
【0010】
本発明の別の態様では、上記プローブをベースにして、Illumina(登録商標) Tag1配列とIllumina(登録商標) Tag2配列との間に、1~3個のデオキシウラシル塩基であるdU領域が存在するプローブをさらに提供する。
【0011】
さらに、前記リンカーアームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列であり;
前記Illumina(登録商標) Tag1配列及びIllumina(登録商標) Tag2配列は、Illumina(登録商標)プラットフォーム用の任意のライブラリー調製キット内のトランスポゾンAdapters、アダプター上の配列又はその相補又は逆相補配列の任意の組み合わせであり;
伸長アームは、核酸テンプレートと相補的に結合する15-45bpの塩基配列である。
【0012】
さらに、前記伸長アームが修飾され;好ましくは、ホスホロチオエート修飾が行われ;
より好ましくは、リンカーアームのTm値は、伸長アームのTm値より2℃以上高く;
代替的に、前記リンカーアームの5’末端は、リン酸化修飾が行われ;
代替的に、前記Illumina(登録商標) Tag1配列及びIllumina(登録商標) Tag2配列は、Illumina(登録商標)プラットフォーム用ライブラリー調製キット内のトランスポゾンAdapters、アダプター上の配列又はその相補配列の任意の組み合わせから選択される。
【0013】
本発明の別の態様では、前記プローブを使用し、ハイスループットシーケンシングに適用されるターゲット領域の濃縮方法も提供し、
テンプレートDNAは、前記プローブとハイブリダイズ、伸長、ライゲーションして第1の産物を得るハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーションの反応ステップと、
過剰プローブ及びテンプレートDNAを酵素で切断して消化し、タグ付きプライマーを使ってPCR増幅して第2の産物を得る第2の産物取得ステップと、
第2の産物を精製してライブラリーを得る精製ステップと
ライブラリーをシーケンサーにロードしてシーケンシングするステップと、
を含む。
【0014】
さらに、前記ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーションの反応ステップ:テンプレートDNAと前記プローブは、先にハイブリダイズしてからポリメラーゼ、リガーゼを加えて伸長、ライゲーションさせて第1の産物を得;
好ましくは、反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
精製水 6μL;
50ng/μLのテンプレートDNA 2μL;
3I10-3μMの前記プローブ 1μL;
10IAmpligase Buffer 1μL;
プロセスは、95℃で5分間変性させ、60℃で2時間インキュベーションすることであり;その後、上記反応系に以下の試薬を加えて、伸長、ライゲーション反応を行い、反応プロセスは60℃で1時間インキュベーションすることであり;
精製水 1.4μL;
1mM dNTPs 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase 1μL;
10IAmpligase Buffer 0.5μL;
50mM NAD+ 0.1μL;
Phusion(登録商標) High-Fidelity
DNA Polymerase 1μL;
又はテンプレートがRNAの場合、
ヌクレアーゼフリー水 5.5μL;
50ng/μLのテンプレートRNA 2μL;
3I10-3μMの前記プローブ 1μL;
RNase Inhibitor 0.5μL;
10IAmpligase Buffer 1μL;
70℃で2分間変性させ、65℃で2時間インキュベーションした後、以下の試薬を加え、42℃で1時間反応させて伸長、ライゲーション反応を行い;
1mMのdNTPs 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase 1μL;
10IAmpligase Buffer 1μL;
50mMのNAD+ 0.1μL;
5I First-Strand Buffer 4μL;
100mMのDTT 2μL;
SMART MMLV RT 1μL;
又は、テンプレートDNA、前記プローブ、ポリメラーゼ及びリガーゼを同時に添加し、ハイブリダイゼーション、伸長、ライゲーションを同時に行って第1の産物を得;
好ましくは、反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
精製水 3.4μL;
50ng/μLのテンプレートDNA 2μL;
3I10-3μMの前記プローブ 1μL;
1mM dNTPs 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase 1μL;
10IAmpligase Buffer 1μL;
50mM NAD+ 0.1μL;
Phusion(登録商標) HiFi DNA Polymerase
0.5μL;
反応プロセスは、95℃5分間、60℃3時間である。
【0015】
さらに、前記第2の産物取得ステップは、先に過剰プローブ及びテンプレートDNAをエキソヌクレアーゼで消化し、次に第1の産物をUSER酵素で線形化してからタグ付きプライマーによってPCR増幅して、第2の産物を得;
好ましくは、反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
第1の産物
Exonuclease I 0.5μL;
Exonuclease III 0.5μL;
37℃で40分間インキュベーションし、95℃で5分間インキュベーションし;
さらに以下の試薬を加え:
2I iProof HF Master Mix 50μL;
精製水 29μL;
20μMのタグ付き上流プライマー 2μL;
20μMのタグ付き下流プライマー 2μL;
USER酵素 1μL;
インキュベーション37℃15分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温し;
又はエキソヌクレアーゼ、タグ付き上流プライマー及びタグ付き下流プライマーを同時に添加し、酵素切断・消化、線形化及びPCR増幅を同時に行って第2の産物を得;
前記タグ付き上流プライマー及びタグ付き下流プライマーの3’末端にホスホロチオエートを修飾し、5’末端にホスホロチオエート、アミノ或いはスペンサーアームを修飾することで、エキソヌクレアーゼによって切断されることを防止し;
好ましくは、テンプレートがDNAの場合の反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
第1の産物 18μL;
Exonuclease Lambda 0.5μL;
Exonuclease III 1μL;
2I iProof HF Master Mix 50μL;
H2O 29.5μL;
20μMのタグ付き上流プライマー 2μL;
20μMのタグ付き下流プライマー 2μL;
反応プロセスは、インキュベーション37℃40分間、インキュベーション95℃5分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温することであり;
又はテンプレートがRNAの場合の反応系及び反応プロセスは、次の通りであり、
第1の産物 10.1μL;
Exonuclease I 1μL;
RNase A 0.1μL;
RNase H 0.1μL;
2I iProof HF Master Mix 50μL;
H2O 24.8μL;
20μMのタグ付き上流プライマー 2μL;
20μMのタグ付き下流プライマー 2μL;
インキュベーション37℃60分間、インキュベーション95℃5分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング60℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして27サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温する。
【0016】
さらに、前記タグ付きプライマー内の上流プライマー構造は、5’末端から開始し、Illumina(登録商標)シーケンシング時にクラスター生成に用いられる配列領域、index配列領域及びIllumina(登録商標) Tag1配列に逆相補的なペア全長配列領域であり;
タグ付きプライマー内の下流プライマー構造は、5’末端から開始し、Illumina(登録商標)シーケンシング時にクラスター生成に用いられる配列領域、index配列領域及びIllumina(登録商標) Tag2全長配列領域である。
【0017】
その実施過程は、具体的に次の部分が含まれる。
【0018】
1.プローブと核酸サンプルのハイブリダイゼーション
プローブと核酸サンプルのハイブリダイゼーションは、プローブの伸長アーム及びリンカーアームが一本鎖核酸サンプルの標的領域と相補的なペア配列を持っていることを意味し、適切なハイブリダイゼーション体系及び温度の下でハイブリダイゼーションが行われる。核酸サンプルは、DNA、RNA又はRNAの逆転写により得られたcDNAであり、DNAとcDNA又はDNAとRNAの混合物であり得る。
図1では、改善されたMIPプローブ構造の1つを示す。プローブの由来は、様々な合成方法であるか、合成後に分子生物学的手法によって改造することができる。プローブは、次の8つの部分の構造で構成され、すなわち、1)核酸テンプレートに相補的に結合する可変長リンカーアーム(15~45 nt);2)リンカーアームに対応するテンプレート上流の配列に相補的でない0~3個のランダムな塩基で、マスクとして機能し;3)1~2個のUID(Unique Identifier)配列で、前記UID配列は、3~12個のランダムな塩基で構成され、オリジナルテンプレートの標識配列を区別するために用いられ;4)Illumina
(登録商標)シーケンシングプラットフォームシーケンシングの標識配列1(Tag1,Illumina
(登録商標) Nextera Library Prep Kits内のNextera Transposase Adapters Read 2の1つの配列セグメントの逆相補配列5’-CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC-3’)に用いられ、前記配列3’末端は0~16個の塩基を減らすことができ;5)0~3個のデオキシウラシル(dU)塩基;6)Illumina
(登録商標)シーケンシングプラットフォームシーケンシングの標識配列2(Tag2,Illumina
(登録商標) TruSeq試薬キット5末端のアダプター上の1つの配列セグメント5’-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’)に用いられ、前記配列5’末端は0~19個の塩基を減らすことができ;ここで、シーケンシングに用いられる2つの標識配列1と2は、Illumina
(登録商標)プラットフォーム用の任意のライブラリー調製キット内のトランスポゾンAdapters、アダプター上の配列又はその相補配列の任意の組み合わせであってもよい。7)伸長アームに対応するテンプレート下流の配列に相補的でない1~3個のランダムな塩基で、マスクとして機能し;8)核酸テンプレートと相補的に結合する可変長伸長アーム(15~45 nt)。伸長アームには、ホスホロチオエート修飾又はその他の修飾が可能であり;プローブの合成時、リンカーアームの5’末端にリン酸化を修飾し、合成時リン酸化修飾を行わず、リン酸化反応を通じてプローブの5’末端にリン酸化を修飾するよう選択できる)。
【0019】
2.伸長、リガーゼ連結反応
プローブの伸長アーム及びリンカーアームが標的領域に固定された後、DNAポリメラーゼの重合機能を利用して、伸長アームの3’末端からリンカーアームの5’末端まで伸長する。忠実度の高いDNAポリメラーゼが好ましい。テンプレートがRNAの場合、逆転写酵素で伸長される。次に、リガーゼによりニックを連結して環状産物を得る。当然、ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーションの反応は1つのステップで同時に実施することもできる。
【0020】
3.エキソヌクレアーゼによる線形プローブ及び核酸の消化
後続のPCR増幅に対する核酸サンプル及び過剰プローブの影響を排除するため、一本鎖エキソヌクレアーゼ及び二本鎖エキソヌクレアーゼでプローブ及び一本鎖・二本鎖核酸サンプルを消化し、環状産物のみを残す。エキソヌクレアーゼは、単一の酵素でも複数の酵素の混合物でもよい。
【0021】
4.環状産物の線形化、PCR増幅
PCR増幅効率を高めるため、USER酵素で環状産物を線状に切断してからプローブ構造内のシーケンシング標識配列と同じ又は相補的な構造を含有する上流・下流プライマー(CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTTCTGCCTGTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG(ホスホロチオエート修飾を経ていないSEQ ID NO:9)及びAATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTATAGCCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(ホスホロチオエート修飾を経ていないSEQ ID NO:10)によりライブラリー増幅を行う。下線部分は、index配列で、混合ライブラリーのシーケンシング時に異なるライブラリーの標識を区別するために用いられ、その配列が変更できる。
【0022】
当然、エキソヌクレアーゼとPCR試薬(USER酵素を含まない)を混合し、先に酵素切断反応を実施してからホスホロチオエート修飾を行った上流・下流プライマーによりライブラリー増幅を行うこともできる。
【0023】
5.ライブラリーの精製
ライブラリーから酵素、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、イオン、プライマー及びプライマー二量体などの不純物を除去するため、Beckman社製のAgencourt AMPure XP磁気ビーズでライブラリーを精製し、電気泳動後の切り出したゲル回収又はカラム精製などの他の方法で精製してもよい。
【0024】
6.ハイスループットシーケンシング
調製されたライブラリーは、濃度、フラグメントの品質管理に合格した後、ハイスループットシーケンサーでシーケンシングする。本発明に係るライブラリーシーケンシング方法は、可逆終止法を含むが、これに限定されず、他のシーケンシングプラットフォームであってもよい。シーケンシングタイプは、シングルエンドシーケンシング又はダブルエンドシーケンシングにできる。本発明の実施形態では、前記シーケンシングプラットフォームは、Illumina(登録商標)であり、シーケンシングタイプがダブルエンドシーケンシングである。
【発明の効果】
【0025】
従来のMIP方法に比べると、本発は、次の有利な効果を奏する。
【0026】
1.本発明は、Illumina(登録商標) Nextera及びIllumina(登録商標) TruSeqアダプター上の配列をプローブのバックボーン配列として使用し、シーケンシング時にシーケンシングプライマーを別途添加する必要がないため、実験プロセスが簡素化される。
【0027】
2.本発明は、PCRタグ付きプライマーを修飾し、酵素切断試薬及びPCR試薬を反応管に同時に加えることができため、操作ステップを減らす。
【0028】
3.本発明は、RNAをテンプレートとして使用してターゲット領域を直接キャプシャーすることができ、先に逆転写を行う必要がないため、実験プロセスが簡素化される。
【0029】
4.本発明は、UID構造を導入することにより、PCR増幅で得られた反復配列を除去し、エラー率を著しく低下させ、サンプルの真の突然変異頻度を復元する。プローブ構造内にdU塩基を導入し、USER酵素により環状テンプレートを線形化してPCR増幅効率を高めて、PCR増幅エラーを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明し、前記実施例は添付図面に例示され、ここで、同一又は類似の符号は、同一又は類似の要素或いは同一又は類似の機能を有する要素を表す。以下、図面に描写される実施例は例示的なものであり、本発明を説明することを意図しているが、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。具体的技術又は条件が実施例内に明記されていない場合、この分野内の文献に記載される技術又は条件、或いは製品の説明書に基づいて実施する。使用する試薬又は機器がメーカーを明記していない場合は、均しく市場から購入できる従来の製品である。
【0032】
以下のプライマー及びプローブは、いずれも生工生物工程(上海)股▲ふん▼有限公司によって合成された。
【0033】
本実施例で使用されるHCT15細胞は、普諾賽生物、上海研域生物工程有限公司などのバイオ企業から購入し、その後従来のDNA抽出方法によってそのDNAを抽出することができる。
【0034】
NCI-H3122細胞系は、上海澤葉生物科技有限公司、上海継和生物科技有限公司などの企業から購入し、その後従来のRNA抽出方法によってそのRNAを抽出することができる。
【0035】
以下に、
図1のプローブ構造を参照しつつ実施例内のプローブ構造を説明する。
【0036】
[実施例1]
改善されたMIPプローブライブラリーによるターゲット領域の濃縮
本実施例では、ヒト乳癌感受性遺伝子(BRCA)を標的とする4つのプローブが使用された。実験は、2群に分けられ、実験群1がdU構造を含まないプローブであり、実験群2がdU構造を含むプローブであり、その他の構造及び配列が同じである。
【0037】
注:Bは、G、T又はCを表し;Dは、G、A又はTを表し;Hは、A、T又はCを表し;Vは、G、A又はCを表し;Nは、A、T、C又はGを表し;5Phosは、リン酸化修飾を表し;-s-は、2個の塩基間にホスホロチオエートを修飾することを表す。
【0038】
実験群1のプローブ配列は、次の通りである。
【0039】
【0040】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、NNNNNNNNNNNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、波線の下線が伸長アームである。
【0041】
【0042】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、VVがマスク配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNNNNNNNNNNがUID配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0043】
【0044】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、VBDがマスク配列1、NNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNがUID配列2、BDBがマスク配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0045】
【0046】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、Bがマスク配列1、NNNNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNNNがUID配列2、Hがマスク配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0047】
実験群2プローブ配列は、次の通りである。
【0048】
【0049】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、NNNNNNNNNNNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、dUがデオキシウラシル、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、波線の下線が伸長アームである。
【0050】
【0051】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、VVがマスク配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、dUがデオキシウラシル、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNNNNNNNNNNがUID配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0052】
【0053】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、VBDがマスク配列1、NNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、dUがデオキシウラシル、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNがUID配列2、BDBがマスク配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0054】
【0055】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、Bがマスク配列1、NNNNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、dUがデオキシウラシル、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNNNがUID配列2、DBHがマスク配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0056】
ハイブリダイゼーション反応系は、次の通りであり、
精製水 6μL;
50ng/μLのHCT15細胞系DNA 2μL;
3I10-3μM P01-04又はP05-08プローブの等量混合合物
1μL;
10IAmpligase Buffer (Epicentre)
1μL。
【0057】
プロセスは、95℃で5分間変性させ、60℃で2時間インキュベーションすることであり;その後、上記ハイブリダイズ産物に以下の試薬を加えて、伸長、ライゲーション反応を行い、反応プロセスは60℃で1時間インキュベーションすることであり;
精製水 1.4μL;
1mM dNTPs (NEB) 1μL;
5 U/μL Ampligase DNA ligase (Epicentre)
1μL;
10IAmpligase Buffer (Epicentre)
0.5μL;
50mM NAD+(NEB) 0.1μL;
Phusion(登録商標) High-Fidelity DNA
Polymerase(NEB) 1μL。
【0058】
過剰プローブ及びDNAをエキソヌクレアーゼで消化する。さらに上記産物に以下の試薬を加え、
Exonuclease I (NEB) 0.5μL;
Exonuclease III(NEB) 0.5μL。
【0059】
37℃で40分間インキュベーションし、95℃で5分間インキュベーションした。
【0060】
dU構造含有群の環状産物を線状の一本鎖に切断するため、PCR反応内にUSER酵素を加えた。すなわち、さらに上記産物に以下の試薬を加えた。
【0061】
2I iProof HF Master Mix(Bio-Rad)
50μL;
精製水 29μL;
20μMのタグ1付きプライマー 2μL;
20μMのタグ2付きプライマー 2μL;
USER酵素(NEB) 1μL。
【0062】
【0063】
ここで、波線で下線が引かれた配列がIllumina(登録商標) TruSeq試薬キットの5末端アダプター上の1つの配列セグメントであり、本発明のプローブ構造内のIllumina(登録商標) Tag2はこの配列セグメントの5’末端から0~19個の塩基を減少することである。二重下線は、Illumina(登録商標)シーケンシング時にクラスター生成に用いられる配列であるため、変更できない。下線部分は、均しくindex配列であり、配列が変更できる。点線で下線が引かれたIllumina(登録商標) Nextera Transposase Adapters Read 2の1つの配列セグメントは、本発明のプローブ構造内のIllumina(登録商標) Tag1と逆相補ペアである。
【0064】
タグ付きプライマー配列は、環状産物のPCR増幅に用いられ、Tag1、2配列をIllumina(登録商標)ライブラリー調製キットの他のトランスポゾンAdapters、アダプター上の配列又はその他の組み合わせで置き換えた場合、下線及び波線・点線が引かれた位置の配列を適宜変更する必要がある。
【0065】
インキュベーション37℃15分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温した。
【0066】
増幅終了後、Agencourt AMPure XP磁気ビーズでライブラリーを精製した。次にライブラリーの品質管理を行い、Illumina(登録商標)シーケンサーにロードしてシーケンシングした。
【0067】
【0068】
表1から、dU構造含有プローブのテンプレート回収率は、dU構造非含有プローブに比べると、ほとんど変わらないが、ライブラリーの収率を大幅に向上できることが分かる。
【0069】
[実施例2]
リンカーアーム、伸長アームの融解温度(Tm)値を最適化するMIPプローブライブラリーによるターゲット領域の濃縮
プローブ配列は、次の通りである。
【0070】
P09:
P5に基づいて、その3’末端の最後の3つの塩基間でホスホロチオエート修飾が行われた。
【0071】
P10:
P6に基づいて、その3’末端の最後の3つの塩基間でホスホロチオエート修飾が行われた。
【0072】
P11:
P7に基づいて、その3’末端の最後の3つの塩基間でホスホロチオエート修飾が行われた。
【0073】
P12:
P8に基づいて、その3’末端の最後の3つの塩基間でホスホロチオエート修飾が行われた。
【0074】
PCRプライマー配列は、実施例1と同じであり、すなわち、タグ1付きプライマー配列は実施例1内のタグ1付きプライマー配列と同じであり;ここでのタグ2付きプライマー配列は、実施例1内のタグ2付きプライマー配列と同じである。
【0075】
本実施例では、プローブの設計時リンカーアームのTm値は、伸長アームより2℃以上高く、伸長アームにホスホロチオエート修飾が行われた。実験は2群に分けられ、対照群がP05~P08プローブを用い、最適化群が最適化後のP09~P12プローブを用い、具体的なステップは次の通りである。
【0076】
1.ハイブリダイゼーション、伸長及びライゲーションの反応を表3に示す。
【0077】
【0078】
反応プロセスは、95℃5分間、60℃3時間であった。
【0079】
2.上記反応系に以下の試薬をさらに加えて酵素切断反応を行い、反応プロセスは、37℃で40分間インキュベーションし、95℃で5分間インキュベーションすることであった。
【0080】
Exonuclease I(NEB) 0.5μL;
Exonuclease III(NEB) 0.5μL;
Exonuclease Lambda(NEB) 0.5μL;
3.上記反応系に以下の試薬を加えて産物の線形化及びPCR増幅を行った。
【0081】
2I iProof HF Master Mix(Bio-Rad) 50μL;
精製水 34μL;
20μMのタグ1付きプライマー 2μL;
20μMのタグ2付きプライマー 2μL;
USER酵素(NEB) 1μL。
【0082】
ここでのタグ1付きプライマー配列は、実施例1内のタグ1付きプライマー配列と同じであり;ここでのタグ2付きプライマー配列は、実施例1内のタグ2付きプライマー配列と同じである。
【0083】
反応プロセス:インキュベーション37℃15分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温した。
【0084】
4.増幅終了後、Agencourt AMPure XP磁気ビーズでライブラリーを精製した。次に、ライブラリーの品質管理を行い、Illumina(登録商標)シーケンサーにロードしてシーケンシングした。分析結果を表4に示す。
【0085】
【0086】
表4から、本実施例の方法を用いると、最適化群のライブラリー収率及びテンプレート回収率は、対照群より著しく高いことが分かる。
【0087】
[実施例3]
改善されたプロセスのMIPスキームによるターゲット領域の濃縮
本実施例では、最適化プロセスは、酵素切断試薬、PCR試薬を反応管に同時に加えた。ハイブリダイゼーション反応系は、次の通りである。
【0088】
精製水 6μL;
50ng/μLのHCT15細胞系DNA 2μL;
3I10-3μM P05-08プローブの等量混合物 1μL;
10IAmpligase Buffer (Epicentre)
1μL。
【0089】
プロセスは、95℃で5分間変性させ、60℃で2時間インキュベーションした。その後、上記ハイブリダイズ産物に以下の試薬をさらに加えて、伸長、ライゲーション反応を行い、反応プロセスは60℃で1時間インキュベーションした。
【0090】
精製水 1.4μL
1mM dNTPs (NEB) 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase (Epicentre)
1μL;
10IAmpligase Buffer (Epicentre)
0.5μL;
50mM NAD+(NEB) 0.1μL;
Phusion(登録商標) High-Fidelity DNA
Polymerase(NEB) 1μL。
【0091】
過剰プローブ及びDNAをエキソヌクレアーゼで消化してからPCR増幅を行った。上記産物に以下の試薬を加えた。反応プロセスは、インキュベーション37℃40分間、インキュベーション95℃5分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング58℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして26サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温した。
【0092】
Exonuclease Lambda 0.5μL;
Exonuclease III 1μL;
2I iProof HF Master Mix(Bio-Rad)
50μL;
H2O 29.5μL;
20μMのタグ3付きプライマー 2μL;
20μMタグ4付きプライマー 2μL。
【0093】
【0094】
タグ3付きプライマー配列は、タグ1付きプライマーに基づいて5’末端にホスホロチオエート修飾が行われ、タグ4付きプライマー配列はタグ2付きプライマーに基づいて5’末端にホスホロチオエート修飾が行われた。
【0095】
増幅終了後、Agencourt AMPure XP磁気ビーズでライブラリーを精製した。次に、ライブラリーの品質管理を行い、Illumina(登録商標)シーケンサーにロードしてシーケンシングした。ライブラリー収率は、58.5ng、テンプレート回収率は22.4%であり、酵素切断試薬とPCR試薬の混合スキームが実現可能であり、操作プロセスが簡素化されていることが分かる。
【0096】
[実施例4]
改善されたプロセスのMIPスキームでRNAテンプレートに対しターゲット領域を濃縮
本実施例のプローブ配列は、次の通りである。
【0097】
【0098】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、HVDがマスク配列1、NNNNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、dUがデオキシウラシル、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNNNがUID配列2、HHHがマスク配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0099】
【0100】
ここで、5’末端から開始し、下線は、リンカーアーム、HVDがマスク配列1、NNNNNがUID配列1、二重下線がIllumina(登録商標) Tag1、dUがデオキシウラシル、点線の下線がIllumina(登録商標) Tag2、NNNNNがUID配列2、BBBがマスク配列2、波線の下線が伸長アームである。
【0101】
本実施例では、ヒトEML4-ALK(-棘皮動物微小管結合タンパク質様4-未分化リンパ腫キナーゼ)融合遺伝子を標的とする2つのプローブを使用した。ハイブリダイゼーション反応条件は次の通りである。
【0102】
ヌクレアーゼフリー水(NEB) 5.5μL;
50ng/μLのH3122細胞系RNA 2μL;
3I10-3μM P13-14プローブの等量混合物 1μL;
RNase Inhibitor(TaKaRa) 0.5μL;
10IAmpligase Buffer (Epicentre)
1μL。
【0103】
プロセスは、70℃で2分間変性させ、65℃で2時間インキュベーションした。その後、上記ハイブリダイズ産物に以下の試薬を加え、反応プロセス:42℃で1時間伸長、ライゲーション反応を行った。
【0104】
1mM dNTPs (NEB) 1μL;
5U/μL Ampligase DNA ligase (Epicentre)
1μL;
10IAmpligase Buffer (Epicentre)
1μL;
50mM NAD+(NEB) 0.1μL;
5I First-Strand Buffer(TaKaRa)
4μL;
100mM DTT(TaKaRa) 2μL;
SMART MMLV RT(TaKaRa) 1μL。
【0105】
過剰プローブ、RNA及びDNA-RNAハイブリッド鎖上のRNAをエキソヌクレアーゼ、エンドリボヌクレアーゼで消化してからPCR増幅を行った。
【0106】
上記産物に以下の試薬を加えた。反応プロセスは、インキュベーション37℃60分間、インキュベーション95℃5分間、予備変性98℃30秒間、変性98℃10秒間、アニーリング60℃30秒間、伸長72℃30秒間を1サイクルとして27サイクルを行い;72℃で2分間伸長し、4℃で保温した。
【0107】
Exonuclease I 1μL;
RNase A 0.1μL;
RNase H 0.1μL;
2I iProof HF Master Mix(Bio-Rad)
50μL;
H2O 24.8μL;
20μMのタグ1付きプライマー 2μL;
20μMのタグ2付きプライマー 2μL。
【0108】
ここでのタグ1付きプライマー配列は、実施例1内のタグ1付きプライマー配列と同じであり;ここでのタグ2付きプライマー配列は、実施例1内のタグ2付きプライマー配列と同じである。
【0109】
増幅終了後、Agencourt AMPure XP磁気ビーズでライブラリーを精製した。次に、ライブラリーの品質管理を行い、Illumina(登録商標)シーケンサーにロードしてシーケンシングした。結果を表5に示す。
【0110】
【0111】
実験群1~3は、3つの反復であった。表5から、ライブラリーシーケンシング結果のマッピング率は95%以上で、カバレッジが100%であり、改善されたプロセスMIPスキームがテンプレートとしてRNAを使用してターゲット領域を濃縮することができることを示している。
【0112】
以上の実施例は、本発明の技術的手段を説明するためにのみ使用され、限定するものではない。本発明は好ましい実施例を参照しつつ詳細に説明されるが、当業者は本発明の技術的手段の精神及び範囲から逸脱することなく、技術的手段に対し修正又は均等範囲内の置換を行うことができ、それらはすべて本発明の特許請求の範囲に網羅されるべきであることを理解されたい。
【配列表】