(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2021078865
(22)【出願日】2021-05-07
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029561(JP,A)
【文献】特表2020-520116(JP,A)
【文献】特開2020-136669(JP,A)
【文献】特開平07-147273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記チャンバ内に設けられ、HFガス及びC
xH
yF
zガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。)を含む反応ガスの供給源に接続されるガス供給部と、
前記ガス供給部から前記チャンバ内に供給される前記反応ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
制御部であって、前記制御部は、前記基板支持器によって支持される基板のシリコン含有膜をエッチングするために、前記反応ガスの総流量に対して前記HFガスの流量割合が最も大きくなるように前記反応ガスを前記チャンバ内に供給するよう前記ガス供給部を制御し、かつ、前記チャンバ内の前記反応ガスからプラズマを生成するよう前記プラズマ生成部を制御するように構成される、制御部と、
を備え、
前記チャンバ内で前記プラズマに暴露される部分の少なくとも一部が導電性のシリコン含有材料で構成されている、基板処理装置。
【請求項2】
前記チャンバ内に供給される前記C
xH
yF
zガスの流量は、前記反応ガスの総流量に対して5体積%以上である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記チャンバの内壁は、導電性のシリコン含有材料からなるライナーが取り付けられて構成されている、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板支持器に対向して配置される上部電極をさらに備え、
前記上部電極は、前記ガス供給部を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記上部電極は、前記反応ガスを前記チャンバ内に供給する複数のガス吐出孔を有する天板を備え、前記天板が導電性のシリコン材料で構成されている、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記チャンバに負の直流電圧又は低周波RF電力を供給するための電源を備える請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記上部電極に負の直流電圧又は低周波RF電力を供給するための電源を備える請求項4
又は請求項5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記チャンバを構成する側壁は、前記ガス供給部を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
チャンバ内の基板支持器上にシリコン含有膜を有する基板を準備する工程と、
HFガス及びC
xH
yF
zガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。)を含む反応ガスを前記チャンバ内に供給する
工程であって、前記反応ガスは、前記反応ガスの総流量に対して前記HFガスの流量割合が最も大きい工程と、
前記シリコン含有膜をエッチングするために、前記チャンバ内に供給された前記反応ガスからプラズマを生成する工程と、を含み、
前記チャンバ内で前記プラズマに暴露される部分の少なくとも一部が導電性のシリコン含有材料で構成されている、基板処理方法。
【請求項10】
前記C
xH
yF
zガスの流量は、前記反応ガスの総流量に対して5体積%以上である、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記チャンバの内壁は、前記導電性のシリコン含有材料からなるライナーが取り付けられて構成されている、請求項9又は請求項10のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記プラズマを生成する工程において、前記チャンバに負の直流電圧又は低周波RF電力を供給する、請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記チャンバを構成する側壁は、前記反応ガスを前記チャンバ内に供給するガス供給部を備える、請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記基板支持器に対向して配置される上部電極をさらに備え、前記上部電極は、前記反応ガスを前記チャンバ内に供給するガス供給部を備える、請求項9乃至請求項12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記上部電極は、前記反応ガスを前記チャンバ内に供給する複数のガス吐出孔を有する天板を備え、前記天板が導電性のシリコン材料で構成されている、請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記プラズマを生成する工程において、前記上部電極に負の直流電圧又は低周波RF電力を供給する、請求項14又は請求項15のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記C
xH
yF
zガスは、C
4H
2F
6ガス、C
4H
2F
8ガス、C
3H
2F
4ガス及びC
3H
2F
6ガスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9乃至請求項16のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記反応ガスは
、ハロゲン含有ガス、酸素含有ガス及び窒素含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項9乃至請求項17のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記反応ガスは、リン含有ガスをさらに含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記反応ガスは、リン含有ガスをさらに含む、請求項9乃至請求項18のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にはプラズマを処理するチャンバの内側をコーティングする技術が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマによる損傷を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、チャンバと、前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、前記チャンバ内に配けられ、HFガス及びCxHyFzガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。)を含む反応ガスの供給源に接続されるガス供給部と、前記ガス供給部から前記チャンバ内に供給される前記反応ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、を備え、前記チャンバ内で前記プラズマに暴露される部分の少なくとも一部が導電性のシリコン含有材料で構成されている、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、プラズマによる損傷を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】チャンバ本体12の断面構造の一例を説明するための図である。
【
図5】エッチング後のマスク膜MKの形状の一例を示す図である。
【
図6】ステップST3における基板Wの断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。基板処理装置は、チャンバと、チャンバ内に設けられた基板支持器と、チャンバ内に設けられ、HFガス及びCxHyFzガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。)を含む反応ガスの供給源に接続されるガス供給部と、ガス供給部からチャンバ内に供給される反応ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、を備え、チャンバ内でプラズマに暴露される部分の少なくとも一部が導電性のシリコン含有材料で構成されている。
【0010】
一つの例示的実施形態において、チャンバ内に供給されるCxHyFzガスの流量は、反応ガスの総流量に対して5体積%以上である。
【0011】
一つの例示的実施形態において、チャンバの内壁は、導電性のシリコン含有材料からなるライナーが取り付けられて構成されている。
【0012】
一つの例示的実施形態において、基板支持器に対向して配置される上部電極をさらに備え、上部電極は、ガス供給部を有する。
【0013】
一つの例示的実施形態において、上部電極は、反応ガスをチャンバ内に供給する複数のガス吐出孔を有する天板を備え、天板が導電性のシリコン材料で構成されている。
【0014】
一つの例示的実施形態において、チャンバに負の直流電圧又は低周波RF電力を供給するための電源を備える。
【0015】
一つの例示的実施形態において、上部電極に負の直流電圧又は低周波RF電力を供給するための電源を備える。
【0016】
一つの例示的実施形態において、チャンバを構成する側壁は、ガス供給部を有する。
【0017】
一つの例示的実施形態において、基板処理方法が提供される。基板処理方法は、チャンバ内の基板支持器上にシリコン含有膜を有する基板を準備する工程と、HFガス及びCxHyFzガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。)を含む反応ガスをチャンバ内に供給する工程と、シリコン含有膜をエッチングするために、チャンバ内に供給された反応ガスからプラズマを生成する工程と、を含み、チャンバ内でプラズマに暴露される部分の少なくとも一部が導電性のシリコン含有材料で構成されている。
【0018】
一つの例示的実施形態において、CxHyFzガスの流量は、反応ガスの総流量に対して5体積%以上である。
【0019】
一つの例示的実施形態において、チャンバの内壁は、導電性のシリコン含有材料からなるライナーが取り付けられて構成されている。
【0020】
一つの例示的実施形態において、プラズマを生成する工程において、チャンバに負の直流電圧又は低周波RF電力を供給する。
【0021】
一つの例示的実施形態において、チャンバを構成する側壁は、反応ガスをチャンバ内に供給するガス供給部を備える。
【0022】
一つの例示的実施形態において、基板支持器に対向して配置される上部電極をさらに備え、上部電極は、反応ガスをチャンバ内に供給するガス供給部を備える。
【0023】
一つの例示的実施形態において、上部電極は、反応ガスをチャンバ内に供給する複数のガス吐出孔を有する天板を備え、天板が導電性のシリコン材料で構成されている。
【0024】
一つの例示的実施形態において、プラズマを生成する工程において、上部電極に負の直流電圧又は低周波RF電力を供給する。
【0025】
一つの例示的実施形態において、CxHyFzガスは、C4H2F6ガス、C4H2F8ガス、C3H2F4ガス及びC3H2F6ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0026】
一つの例示的実施形態において、反応ガスは、リン含有ガス、ハロゲン含有ガス、酸素含有ガス及び窒素含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む。
【0027】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
<基板処理装置1の構成>
図1は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置1を概略的に示す図である。
図1に示す基板処理装置1は、チャンバ10を備える。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供する。チャンバ10はチャンバ本体12を含む。チャンバ本体12は、略円筒形状を有する。
【0029】
チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。基板Wは、通路12pを通して内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送される。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉される。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられる。
【0030】
チャンバ本体12の底部上には、支持部13が設けられている。支持部13は、絶縁材料から形成される。支持部13は、略円筒形状を有する。支持部13は、内部空間10sの中で、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部13は、基板支持器14を支持している。基板支持器14は、内部空間10sの中で基板Wを支持するように構成されている。
【0031】
基板支持器14は、下部電極18及び静電チャック20を有する。基板支持器14は、電極プレート16を更に有し得る。電極プレート16は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0032】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20の上面の上に載置される。静電チャック20は、本体及び電極を有する。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有し、誘電体から形成される。静電チャック20の電極は、膜状の電極であり、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極は、スイッチ20sを介して直流電源20pに接続されている。静電チャック20の電極に直流電源20pからの電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間に静電引力が発生する。基板Wは、その静電引力によって静電チャック20に引き付けられて、静電チャック20によって保持される。
【0033】
基板支持器14上には、エッジリング25が配置される。エッジリング25は、リング状の部材である。エッジリング25は、シリコン、炭化シリコン、又は石英などから形成され得る。基板Wは、静電チャック20上、且つ、エッジリング25によって囲まれた領域内に配置される。
【0034】
下部電極18の内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、チャンバ10の外部に設けられているチラーユニットから配管22aを介して熱交換媒体(例えば冷媒)が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管22bを介してチラーユニットに戻される。基板処理装置1では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、熱交換媒体と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0035】
基板処理装置1には、ガス供給ライン24が設けられている。ガス供給ライン24は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給する。
【0036】
基板処理装置1は、上部電極30を更に備える。上部電極30は、基板支持器14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成される。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0037】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34の下面は、内部空間10sの側の下面であり、内部空間10sを画成する。天板34は、天板34をその板厚方向に貫通する複数のガス吐出孔34aを有する。
【0038】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムなどの導電性材料から形成される。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。支持体36は、ガス拡散室36aから下方に延びる複数のガス孔36bを有する。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0039】
ガス供給管38には、流量制御器群41及びバルブ群42を介して、ガスソース群40が接続されている。ガス供給管38、流量制御器群41及びバルブ群42は、ガスの供給源を構成している。当該ガスの供給源は、ガスソース群40を更に含んでいてもよい。ガスソース群40は、複数のガスソースを含む。複数のガスソースは、処理ガスのソースを含む。ガスソース群40は、少なくとも、HFガスのソース及びCxHyFzガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。)のソースを含む。流量制御器群41は、複数の流量制御器を含む。流量制御器群41の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含む。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、流量制御器群41の対応の流量制御器及びバルブ群42の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。
【0040】
基板処理装置1では、チャンバ本体12の内壁面及び支持部13の外周に沿って、シールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、チャンバ本体12に反応副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムなどのセラミックから形成され得る。
【0041】
支持部13とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜(酸化イットリウムなどの膜)を形成することにより構成される。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを含む。
【0042】
基板処理装置1は、高周波電源62及びバイアス電源64を備えている。高周波電源62は、高周波電力HFを発生する電源である。高周波電力HFは、プラズマの生成に適した第1の周波数を有する。第1の周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。高周波電源62は、整合器66及び電極プレート16を介して下部電極18に接続されている。整合器66は、高周波電源62の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるための回路を有する。なお、高周波電源62は、整合器66を介して、上部電極30に接続されていてもよい。高周波電源62は、一例のプラズマ生成部を構成している。
【0043】
バイアス電源64は、電気バイアスを発生する電源である。バイアス電源64は、下部電極18に電気的に接続されている。電気バイアスは、第2の周波数を有する。第2の周波数は、第1の周波数よりも低い。第2の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。電気バイアスは、高周波電力HFと共に用いられる場合には、基板Wにイオンを引き込むために基板支持器14に与えられる。一例では、電気バイアスは、下部電極18に与えられる。電気バイアスが下部電極18に与えられると、基板支持器14上に載置された基板Wの電位は、第2の周波数で規定される周期内で変動する。なお、電気バイアスは、静電チャック20内に設けられたバイアス電極に与えられてもよい。
【0044】
基板処理装置1においてプラズマ処理が行われる場合には、処理ガスがガスの供給源(ガスソース群40、ガス供給管38等)から上部電極30のガス供給部を介して内部空間10sに供給される。また、高周波電力HF及び/又は電気バイアスが供給されることにより、上部電極30と下部電極18との間で高周波電界が生成される。生成された高周波電界が内部空間10sの中の処理ガスからプラズマを生成する。
【0045】
基板処理装置1は、電源70を備えてもよい。電源70は、上部電極30の天板34及びチャンバ本体12に接続されている。電源70は、プラズマ処理中に負極性の直流電圧又は低周波電力を上部電極30及びチャンバ本体12の少なくともいずれか一方に供給するように構成されている。プラズマ中の正イオンは、負電位となった上部電極30及び/又はチャンバ本体12に引き込まれて衝突する。直流電圧又は低周波電力はパルス波として供給してもよく、連続波として供給してもよい。一例では、直流電源70は、上部電極30の天板34及びチャンバ本体12のいずれか一方のみに接続され、当該一方のみに負極性の直流電圧を供給するように構成されてよい。
【0046】
基板処理装置1は、制御部80を更に備え得る。制御部80は、プロセッサ、メモリなどの記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。制御部80は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部80では、入力装置を用いて、オペレータが基板処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部80では、表示装置により、基板処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、基板処理装置1で各種処理を実行するために、プロセッサによって実行される。プロセッサは、制御プログラムを実行し、レシピデータに従って基板処理装置1の各部を制御する。一つの例示的実施形態において、制御部80の一部又は全てが基板処理装置1の外部の装置の構成の一部として設けられてよい。
【0047】
<チャンバ10内のプラズマ暴露部分の構成>
一例では、チャンバ10のうち、内部空間10sで生成されるプラズマに暴露される部分は、導電性のシリコン含有材料で構成されている。
【0048】
図2は、チャンバ本体12の断面構造の一例を説明するための図である。
図2に示すように、チャンバ本体12は、外側から内側(内部空間10sに面する側)に向かって、第1の層122と第2の層124とを備える。
【0049】
第1の層122は、チャンバ本体12の外壁を構成する。第1の層122は、例えばアルミニウムで形成される。第2の層124は、チャンバ本体12の内壁を構成する。第2の層124は、内部空間10sに生成されるプラズマに暴露される部分である。第2の層124は、導電性を有するシリコン含有材料から形成される。当該シリコン含有材料は、例えば、シリコン(単結晶シリコン、多結晶シリコン)や炭化シリコンでよい。第2の層124の厚みは、例えば5mm~50mmでよい。第2の層を構成するシリコン含有材料の表面は、カーボンによるコーティングがされてよい。
【0050】
第2の層124は、第1の層122に着脱自在に取り付けられてよい。例えば、第2の層124は、第1の層122の内周面を覆う形状のライナー(内張り)として構成し、当該ライナーを第1の層122に着脱自在に取り付けてよい。一例では、第2の層124は、第1の層122と一体化して形成してよい。例えば、第1の層122の内周面にシリコン含有材料をコーティングして第2の層124を一体化して形成してよい。
【0051】
チャンバ本体12は、3つ以上の層を有してよく、例えば、第1の層122と第2の層124との間に第1の層122や第2の層122とは異なる材料からなる1つまたは複数の層をさらに有してよい。また、チャンバ本体12は、単層でもよく、チャンバ本体12全体が導電性を有するシリコン含有材料から構成されてよい。チャンバ本体12の内側(内部空間10sに面する側)の表面は、カーボンによるコーティングがされてよい。
【0052】
上部電極30の天板34の下面は、内部空間10sに面しており、チャンバ本体12の第2の層と同じく、プラズマに暴露される部分である。天板34は、導電性のシリコン含有材料で構成されている。天板34は、例えば、シリコン(単結晶シリコン)や炭化シリコンで形成されてよい。天板34を構成する材料と、チャンバ本体12の第2の層とは、同一の材料でもよいし、異なる材料でもよい。天板34の下面は、例えばカーボンによるコーティングがされてよい。
【0053】
一例において、チャンバ本体12及び上部電極30のプラズマ暴露部分の一部のみを導電性のシリコン含有材料で構成してよい。例えば、上部電極30の天板34を導電性のシリコン含有材料で構成し、チャンバ本体12は、表面に酸化イットリウム等の耐腐食性を有する膜を形成したアルミニウムで構成してよい。また例えば、チャンバ本体12の内壁の一部又は全部を導電性のシリコン含有材料からなる第2の層124で構成し、上部電極30の天板34は、例えば、石英等の絶縁材料で構成してもよい。
【0054】
また、チャンバ本体12内のその他の部材のうち、内部空間10sで生成されるプラズマに暴露され得る部材、例えば、シールド46やバッフルプレート48を、導電性のシリコン材料で構成してよい。
【0055】
<基板Wの一例>
図3は、基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、本処理方法が適用され得る基板の一例である。基板Wは、シリコン含有膜SFを有する。基板Wは、下地膜UF及びマスク膜MKを有してよい。
図3に示すように、基板Wは、下地膜UF、シリコン含有膜SF及びマスク膜MKがこの順で積層されて形成されてよい。
【0056】
下地膜UFは、例えば、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等でよい。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0057】
シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、Si-ARC膜でよい。シリコン含有膜SFは、多結晶シリコン膜を含んでよい。シリコン含有膜SFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。シリコン酸化膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及び多結晶シリコン膜からなる群から選択される少なくとも2種を含む積層膜であってよい。例えば、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜と多結晶シリコン膜とが交互に積層されて構成されてよい。また例えば、シリコン含有膜SFは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層されて構成されてもよい。
【0058】
下地膜UF及び/又はシリコン含有膜SFは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。下地膜UF及び/又はシリコン含有膜SFは、平坦な膜であってよく、また、凹凸を有する膜であってもよい。
【0059】
マスク膜MKは、シリコン含有膜SF上に形成されている。マスク膜MKは、シリコン含有膜SF上において少なくとも1つの開口OPを規定する。開口OPは、シリコン含有膜SF上の空間であって、マスク膜MKの側壁S1に囲まれている。すなわち、
図3において、シリコン含有膜SFは、マスク膜MKによって覆われた領域と、開口OPの底部において露出した領域とを有する。
【0060】
開口OPは、基板Wの平面視(基板Wを
図3の上から下に向かう方向に見た場合)において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、穴形状や線形状、穴形状と線形状との組み合わせであってよい。マスク膜MKは、複数の側壁S1を有し、複数の側壁S1が複数の開口OPを規定してもよい。複数の開口OPは、それぞれ線形状を有し、一定の間隔で並んでライン&スペースのパターンを構成してもよい。また、複数の開口OPは、それぞれ穴形状を有し、アレイパターンを構成してもよい。
【0061】
マスク膜MKは、例えば、有機膜や金属含有膜である。有機膜は、例えば、スピンオンカーボン膜(SOC)、アモルファスカーボン膜、フォトレジスト膜でよい。金属含有膜は、例えば、タングステン、炭化タングステン、窒化チタンを含んでよい。マスク膜MKは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。開口OPは、マスク膜MKをエッチングすることで形成されてよい。マスク膜MKは、リソグラフィによって形成されてもよい。
【0062】
<本処理方法の一例>
図4は、基板処理装置1における基板処理方法の一例(以下「本処理方法」という。)を示すフローチャートである。本処理方法は、基板Wの誘電膜DFをエッチングするために、基板Wが配置されたチャンバ内に処理ガスを供給してプラズマを生成する例である。本処理方法は、基板を準備する工程(ステップST1)と、処理ガスの供給をする工程(ステップST2)と、プラズマを生成する工程(ステップST3)とを含む。なお、ステップST2とステップST3とは、並行して実行されてよい。
【0063】
以下の例では、
図3に示す基板Wに対して
図4に示す本処理方法を実行する場合を例に説明する。以下の例では、
図1に示す制御部80が、基板処理装置1の各部を制御して本処理方法が実行される。
【0064】
(ステップST1:基板の準備)
ステップST1において、基板Wをチャンバ10の内部空間10s内に準備する。内部空間10s内において、基板Wは、基板支持器14の上面に配置され、静電チャック20により保持される。基板Wの各構成を形成するプロセスの少なくとも一部は、内部空間10s内で行われてよい。また、基板Wの各構成の全部又は一部が基板処理装置1の外部の装置又はチャンバで形成された後、基板Wが内部空間10s内に搬入され、基板支持器14の上面に配置されてもよい。
【0065】
(ステップST2:処理ガスの供給)
ステップST2において、ガス供給部から内部空間10s内に処理ガスを供給する。処理ガスは、基板Wに形成されたシリコン含有膜SFをエッチングするために用いられるガスである。
【0066】
処理ガスは、反応ガスとして、フッ化水素(HF)ガス及びCxHyFzガス(x及びzは1以上の整数であり、yは0以上の整数である。以下「CF・CHF系ガス」という。)を含む。
【0067】
HFガスは、処理ガス中の反応ガスの総流量に占める流量割合が最も大きくてよい。HFガスの流量は、例えば、反応ガスの総流量に対して50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上又は95体積%以上でよい。また、HFガスの流量は、例えば、反応ガスの総流量に対して100体積%未満、99.5体積%以下、98体積%以下又は96体積%以下としてよい。一例では、フッ化水素ガスの流量は、反応ガスの総流量に対して、70体積%以上96体積%以下に調整される。なお、本実施形態では、反応ガスに、貴ガス等の不活性ガスは含まれないものとする。
【0068】
なお、HFガスの一部又は全部に代えて、プラズマ処理中に、チャンバ内でフッ化水素(HF)種を生成可能なフッ素含有ガスを用いてもよい。HF種は、フッ化水素のガス、ラジカル及びイオンの少なくともいずれかを含む。一例では、フッ素含有ガスは、ハイドロフルオロカーボンガスであってよい。また、フッ素含有ガスは、水素源及びフッ素源を含む混合ガスであってもよい。水素源は、例えば、H2、NH3、H2O、H2O2又はハイドロカーボン(CH4、C3H6等)であってよい。フッ素源は、NF3、SF6、WF6、XeF2、フルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンであってよい。
【0069】
CF・CHF系ガスは、例えば、CF4ガス、C3F8ガス、C4F6ガス、C4F8ガス、CH2F2ガス、CHF3ガス、CH3Fガス、C2HF5ガス、C2H2F4ガス、C2H3F3ガス、C2H4F2ガス、C3HF7ガス、C3H2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス、C3H3F5ガス、C4H2F6ガス、C4H5F5ガス、C4H2F8ガス、C5H2F6ガス、C5H2F10ガス及びC5H3F7ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。一例において、CF・CHF系ガスは、C4H2F6ガス、C4H2F8ガス、C3H2F4ガス及びC3H2F6ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0070】
CF・CHF系ガスの流量は、処理ガス中の反応ガスの総流量に対して、例えば、1体積%以上でよく、5体積%以上でもよい。CF・CHF系ガスの流量は、HFガスの流量に比べて少なくてよく、例えば、反応ガスの総流量に対して20体積%以下、15体積%以下、10体積%以下でよい。
【0071】
本処理方法に用いる処理ガスは、シリコン含有膜SFの材料、マスク膜MKの材料、下地膜UFの材料、マスク膜MKが有するパターン、エッチングの深さ、アスペクト比等に基づいて適宜選択されてよい。例えば、処理ガスは、反応ガスとして、リン含有ガス、ハロゲン含有ガス、窒素含有ガス及び酸素含有ガスからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでよい。
【0072】
リン含有ガスは、シリコン含有膜SFのエッチングにおいて、シリコン含有膜SFの側壁を保護する。リン含有ガスは、PF3ガス、PF5ガス、POF3ガス、HPF6ガス、PCl3ガス、PCl5ガス、POCl3ガス、PBr3ガス、PBr5ガス、POBr3ガス、PI3ガス、P4O10ガス、P4O8ガス、P4O6ガス、PH3ガス、Ca3P2ガス、H3PO4ガス及びNa3PO4ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。これらガスの中で、PF3ガス、PF5ガス、PCl3ガス等のハロゲン化リン含有ガスを使用してもよく、また例えば、PF3ガス、PF5ガス等のフッ化リン含有ガスを使用してもよい。
【0073】
ハロゲン含有ガスは、シリコン含有膜SFのエッチングにおいて、マスク膜MKやシリコン含有膜SFの形状を調整し得る。ハロゲン含有ガスは、フッ素以外のハロゲン元素を含むガスでよい。ハロゲン含有ガスは、塩素含有ガス、臭素含有ガス及び/又はヨウ素含有ガスであってよい。塩素含有ガスは、例えば、Cl2ガス、SiCl2ガス、SiCl4ガス、CCl4ガス、BCl3ガス、PCl3ガス、PCl5ガス、POCl3ガス等でよい。臭素含有ガスは、HBrガス、CBr2F2ガス、C2F5Brガス、PBr3ガス、PBr5ガス、POBr3ガス等でよい。ヨウ素含有ガスとしては、HIガス、CF3Iガス、C2F5Iガス、C3F7Iガス、IF5ガス、IF7ガス、I2ガス、PI3ガス等でよい。一例では、ハロゲン含有ガスとして、Cl2ガス及び/又はHBrガスが使用される。
【0074】
窒素含有ガスは、エッチングおけるマスク膜MKの開口OPの閉塞を抑制し得る。窒素含有ガスは、例えば、NF3ガス、N2ガス及びNH3ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスでよい。
【0075】
酸素含有ガスは、窒素含有ガスと同様に、エッチングにおけるマスク膜MKの開口OPの閉塞を抑制し得る。酸素含有ガスは、例えば、O2、CO、CO2、H2O及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスでよい。一例では、酸素含有ガスは、H2O以外のガスであり、例えば、O2、CO、CO2及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。酸素含有ガスは、マスク膜MKへのダメージが少なく、モホロジーの悪化を抑制し得る。
【0076】
図5は、エッチング後のマスク膜MKの形状の一例を示す図である。
図5は、基板Wと同一の構造を有するサンプル基板を基板処理装置1においてエッチングした場合のマスク膜MKの形状(平面視)の一例である。
図5において、「No.」は、エッチングしたサンプル基板の試料番号を示す。「処理ガス」は、エッチングに使用した処理ガスを示し、「A」は、HFガス、C
4H
2F
6ガス、O
2ガス、NF
3ガス、HBrガス及びCl
2ガスを含む処理ガス(以下「処理ガスA」という。)を示す。処理ガスAは、HFガスを反応ガスの総流量に対して80体積%以上含み、O
2ガスを反応ガスの総流量に対して4~5体積%含んでいる。「処理ガス」の「B」は、NF
3ガス含まず、その分O
2ガスの流量を増加させた点を除き、処理ガスAと同一の処理ガス(以下「処理ガスB」という。)を示す。処理ガスBは、O
2ガスを反応ガスの総流量に対して6~7体積%含む。「上部電極印加」の「あり」は、エッチング中に基板処理装置1の上部電極30に負極性の直流電圧を供給したことを示し、「なし」は、上部電極30に負極性の直流電圧を供給しなかったことを示す。
図5の「マスク形状」からは、「上部電極印加」の「あり」の場合でも「なし」の場合でも、NF
3を含む処理ガスAを用いた場合(試料1及び試料3)は、開口OPの真円度の悪化や、マスク膜MKの表面に段差が生じたことが分かる。一方、NF
3ガスを含まず、O
2ガスの流量を増加させた処理ガスBを用いた場合(試料2及び試料4)は、開口OPの真円度が高く、またマスク膜MKの表面に段差が生じておらず、処理ガスAを用いた場合(試料1及び試料3)に比べて、マスク膜MKのモホロジーが改善したことが分かる。
【0077】
処理ガスは、例えば、上述した反応ガスに加えて不活性ガス(Ar等の貴ガス)を含んでよい。
【0078】
内部空間10s内に供給された処理ガスの圧力は、チャンバ本体12に接続された排気装置50の圧力調整弁を制御することで調整される。処理ガスの圧力は、例えば、5mTorr(0.7Pa)以上100mTorr(13.3Pa)以下、10mTorr(1.3Pa)以上60mTorr(8.0Pa)以下、又は20mTorr(2.7Pa)以上40mTorr(5.3Pa)以下でよい。
【0079】
(ステップST3:プラズマの生成)
図6は、ステップST3における基板Wの断面構造の一例を示す図である。ステップST3において、プラズマ生成部(高周波電源62及び/又はバイアス電源64)から高周波電力及び/又は電気バイアスを供給すると、上部電極30と基板支持器14との間で高周波電界が生成される。これにより、内部空間10s内に供給された処理ガスからプラズマが生成される。
【0080】
HFガス及びCF・CHF系ガスから生成されるプラズマは、HF種を含む。ステップST3において、プラズマ中のHF種は基板Wに引き寄せられ、シリコン含有膜SF中のシリコンと反応し、フッ化シリコン化合物として揮発する。すなわち、HF種は、シリコン含有膜SFのエッチャントとして機能する。このとき、CF・CHF系ガスに含まれる炭素は、マスク膜MKの表面に炭素を堆積させ、当該表面を保護し得る。このようにして、
図6に示すように、マスク膜MKの開口OPの形状に基づいて、マスク膜MKに形成された開口OPから連続して、シリコン含有膜SFの側壁S2で規定された凹部RC(例えばホールやトレンチ状の凹部)が形成される。凹部RCのアスペクト比は、20以上でよく、30以上、40以上、50以上、又は100以上でもよい。
【0081】
ステップST3において、基板支持器14の温度を低温に制御してよい。HF系ラジカルの吸着係数は、低温においてより増加する。そのため、基板支持器14の温度を低温に制御して基板Wの温度の上昇を抑制することで、凹部RCの底部BTでのHF種(エッチャント)の吸着が促進される。これにより、シリコン含有膜SFのエッチングレートが向上し得る。基板支持器14の温度は、例えば、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下又は-40℃以下、-70℃以下でもよい。基板支持器14の温度は、チラーユニットから供給する熱交換媒体により調整され得る。
【0082】
本実施形態では、基板処理装置1のチャンバ10を構成する部材のうち、内部空間10sで生成されるプラズマに暴露される部分(以下「プラズマ暴露部分」という。)は、導電性のシリコン含有材料で構成されている。チャンバ10を構成する部材としては、例えば、チャンバ本体12、上部電極30がある。プラズマ暴露部分に含まれるシリコンは、ステップST3において、プラズマ中のHF種と反応し、フッ化シリコン化合物としてプラズマ暴露部分の表面から揮発し得る。すなわちプラズマ暴露部分の表面がエッチングされ得る。しかし、ステップST3においては、CF・CHF系ガスに含まれる炭素が導電性のシリコン含有材料で構成されるプラズマ暴露部分に堆積し当該暴露部分を保護する。これにより、プラズマ暴露部分の表面が過度にエッチングされて削られる(損傷する)ことが抑制できる。なお、本発明者らの実験によれば、プラズマ暴露部分を導電性のシリコン含有材料ではなく石英で構成した場合は、HFガスからなる処理ガスにCF・CHF系ガスを添加しても(反応ガスの総流量に対して1体積%)プラズマ暴露部分(石英)の損傷の程度に改善はみられなかった。これは、CF・CHF系ガスに含まれる炭素が、石英中の酸素と反応してCOを生成するために消費され、プラズマ暴露部分に対する保護効果を十分に発揮できなかったためであると考えられる。
【0083】
また、本実施形態では、プラズマ暴露部分がエッチングされても、生じるのは、上述のとおり揮発性の高いフッ化シリコン化合物である。そのためプラズマ処理後に当該フッ化シリコン化合物を内部空間10sから容易に除去することができ、内部空間10sにおけるパーティクルの増加を抑制することができる。
【0084】
ステップST3において、電源70から負極性の直流電圧を上部電極30及びチャンバ本体12に供給してよい。これにより、プラズマ中の正イオンは、負電位となった上部電極30及び/又はチャンバ本体12に引き込まれて衝突する。これにより、プラズマ暴露部分からシリコンや2次電子が放出される。プラズマ暴露部分の表面がより削られるので、例えば、CF・CHF系ガスの流量が多い場合等に炭素がプラズマ暴露部分に過剰に堆積することを抑制できる。一例において、上部電極30のみに負極性の直流電圧を供給し、チャンバ本体12の電位は0に保ってもよい。またチャンバ本体12のみに負極性の直流電圧を供給してもよい。一例において、電源70は直流電圧にかえて低周波電力を上部電極30及び/又はチャンバ本体12に供給してもよい。なお、プラズマ中に酸素が含まれる場合は、放出されたシリコンは酸素と結合して酸化シリコン化合物としてマスクMK上に堆積し、保護膜として機能し得る。
【0085】
放出された二次電子は、プラズマ密度の向上に寄与する。また、二次電子は、マスク膜MKを改質し、マスク膜MKのエッチング耐性を向上させ得る。さらに、二次電子の照射により、基板Wの帯電状態が中和され、エッチングにより形成された凹部RC内へのイオンの直進性が高められ得る。以上により、マスク膜MKに対するシリコン含有膜SFのエッチングの選択比の改善、エッチングにより形成される凹部RCの形状異常の抑制、エッチングレートの改善等の効果が得られ得る。
【0086】
<実施例>
基板処理装置1を用いて、開口のないフォトレジスト膜を有するブランケット基板Wに対して本処理方法を実行し、プラズマ生成から10分後の内部空間10s内のプラズマの組成を四重極型質量分析計(quadrupole mass analyzer)を用いて測定した。
【0087】
実施例1では、基板処理装置1として、天板34を単結晶のシリコンで構成し、チャンバ本体12をイットリウムコーティングされたアルミニウムで構成したものを用いた。処理ガスは、HFガスとC4H2F6ガスとを100:1の流量比(体積比)で含んでいた。プラズマ生成中の基板支持器14の温度は-40℃に設定した。
【0088】
実施例2は、処理ガスのHFガスとC4H2F6ガスとの流量比を100:5とした以外は、実施例1と同一である。
【0089】
参考例1は、処理ガスをHFガスのみとした以外は、実施例1と同一である。
【0090】
実施例1、実施例2及び参考例1にかかる四重極型質量分析計の測定結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1及び実施例2は、参考例1に比べてSiF3の量が減少するとともにHFの量が増加していた。SiF3は天板34のシリコンがプラズマ中のHF種と反応して生成される反応生成物であるから、SiF3の量が減少していることは、天板34においてシリコンとHF種との反応が抑制されたことを示している。すなわち、実施例1及び実施例2は、参考例1に比べて、天板34においてシリコンとHF種との反応が抑制され、天板34の表面のエッチング(削れ)が抑制されたと考えられる。また天板34におけるHF種の消費が抑制された結果として、実施例1及び実施例2は、参考例1に比べて基板Wに供給されるHF種の量が増加したと考えられる。この理由は、処理ガスとしてC4H2F6ガスを含む実施例1及び実施例2では、CH・CHF系ガスを含まない参考例1とは異なり、天板34で炭素が堆積して天板34の表面が保護されたためであると考えられる。C4H2F6ガスの流量を増加させた実施例2は、実施例1に比べてプラズマ中のSiF3の量が減少するとともにHFの量が増加した。これは、実施例2では、天板34における炭素の堆積量が実施例1よりも多くなり、天板34の表面の保護効果が実施例1に比べて大きくなったためであると考えられる。
【0091】
【0092】
以上の各実施形態は、説明の目的で説明されており、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。
【0093】
例えば、本処理方法において、ステップST1の前に、チャンバ10内のプラズマ暴露部分にプリコートを形成するようにしてよい。プラズマ処理を開始する前に、プリコートを形成することで、プラズマ暴露部分の表面が過剰に削られる(損傷する)ことを抑制できる。
【0094】
プリコートは、炭素を含む膜であってよい。プリコートは、一例では、上述したCF・CHF系ガスからプラズマを生成することにより形成することができる。プリコートは、例えば、Chemical Vapor Deposition (CVD)やAtomic Layer Deposition (ALD)により形成することができる。
【0095】
プリコートは、基板Wを1枚処理する毎に実行してもよいが、所定枚数又は所定ロット数の基板Wを処理した後に実行してもよい。あるいは、所定時間の基板処理後に実行してもよい。
【0096】
また例えば、容量結合型の基板処理装置1以外にも、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いた基板処理装置を用い、当該基板処理装置のチャンバ内でプラズマに暴露される部分の少なくとも一部を導電性のシリコン含有材料で構成してよい。当該基板処理装置はガス供給部をチャンバの側壁に備えてよい。
【符号の説明】
【0097】
1……基板処理装置、10……チャンバ、10s……内部空間、12……チャンバ本体、122……第1の層、124……第2の層、14……基板支持器、16……電極プレート、18……下部電極、20……静電チャック、30……上部電極、34……天板、50……排気装置、62……高周波電源、64……バイアス電源、70……電源、80……制御部、CT……制御部、SF……シリコン含有膜、MK……マスク膜、OP……開口、PF……保護膜、RC……凹部、UF……下地膜、W……基板