(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】ワーク搬送用ハンド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250227BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2021104036
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】井浦 惇
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-86086(JP,A)
【文献】特表2016-538711(JP,A)
【文献】特表2020-516065(JP,A)
【文献】特開2017-200712(JP,A)
【文献】特開2020-161585(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230125(WO,A1)
【文献】特開2019-208020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持する支持体と、
前記支持体に配置された複数の吸着機構と、を備え、
前記吸着機構は、第1位置と、前記第1位置よりも上方の第2位置とに上下動可能な昇降体を備え、
前記昇降体は、上方に向けて拡がり、かつ上端に第1開口を有し、弾性変形可能な吸着パッドを含み、
前記昇降体が前記第1位置にあるとき、前記第1開口が前記ワークにより密閉可能であり、かつ前記吸着パッドの内側のパッド内空間と、前記昇降体の外部に位置する第2開口とが遮断可能であり、
前記昇降体が前記第2位置にあるとき、前記パッド内空間と前記第2開口とが連通する、ワーク搬送用ハンド。
【請求項2】
前記吸着機構は、前記パッド内空間および前記第2開口の双方に通じるシール部を備え、
前記昇降体が前記第1位置にあるとき、前記パッド内空間と前記第2開口とが前記シール部によって遮断される、請求項1に記載のワーク搬送用ハンド。
【請求項3】
前記昇降体は、前記吸着パッドの下方に位置し、かつ当該吸着パッドが固定されるパッド固定部を含み、
前記吸着機構は、前記パッド固定部を上下動可能に案内するガイド部を備え、
前記パッド固定部には、前記パッド内空間と前記シール部との双方に通じる連通孔が形成されている、請求項2に記載のワーク搬送用ハンド。
【請求項4】
前記パッド固定部は、下方を向く第1底面と、前記第1底面よりも上方に位置し、かつ平面視において前記第1底面の少なくとも一部を囲む第1外周面と、を有し、
前記ガイド部は、前記第1底面に対向する第2底面と、前記第2底面よりも上方に位置し、かつ前記第1外周面の少なくとも一部を囲む第1内周面と、を有し、
前記シール部は、前記第1底面と前記第2底面との間に介在する、請求項3に記載のワーク搬送用ハンド。
【請求項5】
前記支持体は、支持体上面および当該支持体上面から凹む凹部を有し、
前記パッド固定部は、前記凹部に配置されている、請求項3または4に記載のワーク搬送用ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の薄板状のワークを搬送するのに用いられるワーク搬送用ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの製造に用いられるガラス基板や半導体の製造に用いられる半導体ウエハなどの薄板状ワークの搬送装置は、たとえばロボットのエンドエフェクタとして負圧を利用した真空吸着の機能を備えたハンドを設けて構成される(たとえば特許文献1を参照)。同文献に示されるように、真空吸着の機能を備えたハンドには、当該ハンドの上面に臨むようにして、負圧を作用させる状態と作用させない状態を選択可能な複数の吸着パッドが設けられる。ハンドに載せられた板状ワークは、ポンプの駆動によって吸着パッドに作用させられる負圧により、当該吸着パッドに密着把持される。この状態において、ワークをハンドから滑落させることなく高速搬送することが可能となる。
【0003】
しかしながら、上記従来の真空吸着機能を備えたハンドを使用する場合、真空吸着用のポンプが別途必要となる。また、ポンプにより真空吸引するためのエア配管、および負圧の作用状態を切り替えるバルブ等を、ロボットの限られたスペースに配置する必要がある。したがって、ロボットに設けられる真空吸着のための構成が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、真空吸着用のポンプやロボット内部の配管が無くてもワークを吸着把持することが可能なワーク搬送用ハンドを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0007】
本発明によって提供されるワーク搬送用ハンドは、ワークを支持する支持体と、前記支持体に配置された複数の吸着機構と、を備え、前記吸着機構は、第1位置と、前記第1位置よりも上方の第2位置とに上下動可能な昇降体を備え、前記昇降体は、上方に向けて拡がり、かつ上端に第1開口を有し、弾性変形可能な吸着パッドを含み、前記昇降体が前記第1位置にあるとき、前記第1開口が前記ワークにより密閉可能であり、かつ前記吸着パッドの内側のパッド内空間と、前記昇降体の外部に位置する第2開口とが遮断可能であり、前記昇降体が前記第2位置にあるとき、前記パッド内空間と前記第2開口とが連通する。
【0008】
好ましい実施の形態においては、前記吸着機構は、前記パッド内空間および前記第2開口の双方に通じるシール部を備え、前記昇降体が前記第1位置にあるとき、前記パッド内空間と前記第2開口とが前記シール部によって遮断される。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記昇降体は、前記吸着パッドの下方に位置し、かつ当該吸着パッドが固定されるパッド固定部を含み、前記吸着機構は、前記パッド固定部を上下動可能に案内するガイド部を備え、前記パッド固定部には、前記パッド内空間と前記シール部との双方に通じる連通孔が形成されている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記パッド固定部は、下方を向く第1底面と、前記第1底面よりも上方に位置し、かつ平面視において前記第1底面の少なくとも一部を囲む第1外周面と、を有し、前記ガイド部は、前記第1底面に対向する第2底面と、前記第2底面よりも上方に位置し、かつ前記第1外周面の少なくとも一部を囲む第1内周面と、を有し、前記シール部は、前記第1底面と前記第2底面との間に介在する。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記支持体は、支持体上面および当該支持体上面から凹む凹部を有し、前記パッド固定部は、前記凹部に配置されている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、前記吸着パッドは、軟質樹脂材料またはゴム材料により構成されており、前記パッド固定部および前記ガイド部の各々は、前記吸着パッドよりも硬質な材料により構成される。
【0013】
好ましい実施の形態においては、前記パッド固定部は、金属材料により構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワーク搬送用ハンドによれば、ワークを支持体に載せると、吸着パッドの内側のパッド内空間が負圧状態となり、吸着パッドによってワークを吸着把持することができる。一方、ワークをステージ等に載せると、パッド内空間と、昇降体の外部に位置する第2開口とが連通し、吸着パッドによるワークの吸着力が無くなる。したがって、本発明のワーク搬送用ハンドによれば、真空吸着用のポンプやそれに付随する配管等を用いることなく、ワークを吸着把持して搬送することが可能である。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るワーク搬送用ハンドの第1実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う拡大断面図である。
【
図3】吸着機構によりワークを吸着把持する状態を示す
図2と同様の断面図である。
【
図4】作用を説明するための図であって、
図2と同様の断面図である。
【
図5】作用を説明するための図であって、
図2と同様の断面図である。
【
図6】本発明に係るワーク搬送用ハンドの第2実施形態を示す、
図2と同様の断面図である。
【
図7】吸着機構によりワークを吸着保持する状態を示す
図6と同様の断面図である。
【
図8】作用を説明するための図であって、
図6と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0018】
図1および
図2は、本発明に係るワーク搬送用ハンドの第1実施形態を示している。本実施形態のワーク搬送用ハンドA1は、支持体1および複数の吸着機構2を備えている。
【0019】
本実施形態において、支持体1は、ワークが載置されるプレートであり、図示しない搬送ロボットのアーム端に連結されたベース部材から一体に水平方向に延びている。支持体1は、基部11および一対のフォーク部12を有する。基部11は、搬送ロボットの上記ベース部材に固定されている。一対のフォーク部12は、各々基部11につながり、平面視において当該基部11から二股状に延びている。支持体1の材質は特に限定されないが、たとえばアルミニウム合金、セラミックス材料、あるいは炭素繊維強化プラスチックなどの高剛性軽量材料によって構成される。
【0020】
複数の吸着機構2は、支持体1(一対のフォーク部12)に互いに離間して配置されている。本実施形態において、4つの吸着機構2を具備しており、2つの吸着機構2が一対のフォーク部12の基端側に各別に配置され、他の2つの吸着機構2が一対のフォーク部12の先端側に各別に配置されている。なお、吸着機構2の数および配置については本実施形態に限定されず、種々の構成をとり得る。
【0021】
吸着機構2の具体的構成について、
図2を参照しつつ説明する。本実施形態において、吸着機構2は、昇降体20、ガイド体30およびシール部40を含んで構成される。昇降体20は、フォーク部12(支持体1)に支持されており、上下動可能である。
【0022】
昇降体20は、パッド固定部21および吸着パッド22を含む。本実施形態において、パッド固定部21は、概略円板状であり、底面211、外周面212、外向フランジ213、パッド用凹部214、シール部用凹部215および連通孔216を有する。
【0023】
底面211は、パッド固定部21の下端面であり、下方を向いている。外周面212は、底面211よりも上方に位置し、平面視において底面211の少なくとも一部を囲んでいる。外向フランジ213は、パッド固定部21(外周面212)の下端部から径方向外方に延びる。本実施形態において、外向フランジ213は、平面視において外周面212を囲む円環状である。パッド用凹部214は、パッド固定部21の上面から下方に凹んでおり、吸着パッド22を配置するための部位である。シール部用凹部215は、パッド固定部21の底面211から凹む環状溝であり、シール部40を配置するための部位である。連通孔216は、パッド固定部21の上面(パッド用凹部214の底面)から底面211まで上下方向に通じる貫通孔であり、パッド固定部21の中心位置に形成されている。
【0024】
本実施形態において、吸着パッド22は、パッド固定部21に支持されており、ベース部221およびパッド部222を有する。吸着パッド22は、軟質樹脂材料またはゴム材料により構成される。ベース部221は、概略円板状であり、パッド用凹部214に収容されている。このベース部221は、接着等の適宜手段によりパッド固定部21に固定される。
【0025】
パッド部222は、ベース部221の外周部上端につながっている。パッド部222は、平面視においてベース部221を囲んでいる。パッド部222は、上方に向けて拡がる筒状部分であり、上端が開口している。パッド部222は、その上端において第1開口O1を有する。パッド部222は、その厚さが比較的小さくされており、容易に弾性変形可能である。
【0026】
ベース部221の中心位置には、孔221aが形成されている。孔221aは、ベース部221の上面から下面まで上下方向に通じる貫通孔である。孔221aの上端は、パッド部222に囲まれた内側空間に通じている。本実施形態では、パッド部222に囲まれた内側空間および孔221aの内側空間により、吸着パッド22の内側の空間(パッド内空間S1)が形成される。孔221aの下端は、パッド固定部21の連通孔216に通じている。
【0027】
吸着パッド22の材質は特に限定されないが、たとえばシリコーンゴムやフッ素ゴムにより構成される。上記パッド固定部21は、吸着パッド22(パッド部222)よりも硬質な材料(たとえば硬質樹脂材料)により構成される。パッド固定部21の材質は特に限定されないが、たとえば摺動性や耐摩耗性に優れたポリアセタール樹脂により構成される。
【0028】
フォーク部12(支持体1)には、たとえば円形の凹部13が形成されている。凹部13は、フォーク部12の上面12aから下方に凹んでいる。本実施形態では、この凹部13に、パッド固定部21が配置されている。本実施形態において、凹部13は、凹部底面131および凹部内周面132を有する。凹部底面131は、上方を向いており、パッド固定部21の底面211に対向している。凹部内周面132は、凹部底面131の外周につながり、凹部底面131よりも上方に位置する。
【0029】
本実施形態において、ガイド体30は、環状をなしており、円筒部31を有する。ガイド体30は、たとえば円筒部31の上端から径方向外方に延びる外向フランジを有し、当該外向フランジが凹部13の周囲の上面12a(フォーク部12)に重なる状態でフォーク部12(支持体1)に固定されている。円筒部31は、凹部13の凹部内周面132に内挿されている。凹部13内における円筒部31の上下方向の寸法は、凹部13の上下方向の寸法よりも小である。円筒部31の内周にはガイド面311が形成されている。ガイド面311は、パッド固定部21の外周面212の一部を囲んでいる。ガイド面311の内径寸法は、パッド固定部21の外周面212の外径寸法よりも少し大きくされている。これにより、昇降体20(パッド固定部21)は、ガイド体30(円筒部31のガイド面311)に案内されて上下動可能である。そして、ガイド面311(ガイド体30)と外周面212(パッド固定部21)との間には僅かな隙間が形成されている。本実施形態において、ガイド面311と外周面212との間の隙間は、昇降体20の外部に位置する第2開口O2に相当する。また、
図2から理解されるように、平面視において、円筒部31は、パッド固定部21の外向フランジ213と重なる。これにより、昇降体20(パッド固定部21)の上下動ストロークの上端は、円筒部31の下面にパッド固定部21の外向フランジ213が当接することにより規定される。
【0030】
ガイド体30は、たとえば吸着パッド22(パッド部222)よりも硬質な材料(たとえば硬質樹脂材料)により構成される。ガイド体30の材質は特に限定されないが、たとえば摺動性や耐摩耗性に優れたポリアセタール樹脂により構成される。
【0031】
シール部40は、本実施形態においては、パッド固定部21のシール部用凹部215に配置されている。シール部40は、平面視において環状をなしており、ブロック部41および延出片42を有する。ブロック部41は、その大部分がシール部用凹部215に収容される。延出片42は、ブロック部41の下端から延びており、薄肉のリップ状である。図示した例では、ブロック部41の下端内周部と下端外周部の双方から、一対の延出片42が延びる。シール部40は、軟質樹脂材料またはゴム材料により構成される。
【0032】
本実施形態において、シール部40は、パッド固定部21の底面211と凹部13の凹部底面131との間に介在している。
図2に示すように、シール部40は、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、昇降体20の外部に位置する第2開口O2との双方に通じている。昇降体20(パッド固定部21)が上下動ストロークの下端位置にあるとき、シール部40は、凹部13の凹部底面131に密着し、底面211および凹部底面131の間を塞ぐ。これにより、昇降体20(パッド固定部21)の上下動ストロークの下端は、凹部底面131により規定される。また、シール部40が凹部13の凹部底面131に密着して底面211および凹部底面131の間を塞ぐ状態においては、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、ガイド体30およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが遮断される。
【0033】
本実施形態において、パッド固定部21の底面211は、本発明の「第1底面」に相当し、パッド固定部21の外周面212は、本発明の「第1外周面」に相当する。凹部13の凹部底面131は、本発明の「第2底面」の一例に相当し、ガイド体30のガイド面311は、本発明の「第1内周面」の一例に相当する。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0035】
ワーク搬送用ハンドA1によって薄板状のワークを搬送する際、支持体1によって当該ワークを支持する。ここで、
図3に示すように、ワークWは吸着機構2におけるパッド部222(吸着パッド22)の上に載り、昇降体20(パッド固定部21)は、ワークWの自重によって最も下がった位置にある。パッド部222は略水平に拡がった状態となり、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1が大幅に減少するとともに、パッド部222の第1開口O1がワークWにより密閉される。
【0036】
また、パッド固定部21の下端に配置されたシール部40は、凹部底面131に密着しており、底面211および凹部底面131の間を塞ぐ。このとき、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、ガイド体30およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが、シール部40によって遮断される。パッド固定部21に形成された連通孔216は、パッド内空間S1に通じ、また、底面211および凹部底面131の間の空間にも通じている。これにより、パッド内空間S1と、連通孔216と、底面211、凹部底面131およびシール部40で囲まれた空間と、により密閉空間が形成されており、当該密閉空間は、大気圧未満に減圧された状態(負圧状態)となる。したがって、
図3に示す状態において、ワークWは、パッド部222(吸着機構2)により吸着把持されており、水平移動させて搬送することが可能である。
図3に示すように、昇降体20(パッド固定部21)が最も下がった位置は、本発明の「第1位置」に相当する。
【0037】
次に、たとえばワークWを搬送先のステージ(図示せず)に置く際、
図4に示すように支持体1(フォーク部12)を降下させながら、ワークWを図示しないステージに載せ替える。ここで、支持体1を下げ始めても、パッド部222がワークWに吸着した状態が続いている。このため、昇降体20(パッド固定部21)は、
図3に示した場合と比べて、支持体1に対して相対的に上方に位置する。そうすると、シール部40が凹部底面131から離れ、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、ガイド体30およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが連通する。
【0038】
パッド内空間S1と、ガイド体30およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが連通する状態では、第2開口O2から空気が流入し、連通孔216、パッド内空間S1へと流れ込む。そうすると、
図5に示すように、パッド内空間S1は大気圧状態に戻り、パッド部222(吸着パッド22)についてはワークWの吸着力が無くなる。
図5に示す状態では、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通しており、昇降体20(パッド固定部21)は、
図3に示した場合と比べて、支持体1に対して相対的に上方に位置する。
図4、
図5に示す状態において、昇降体20(パッド固定部21)は、本発明の「第2位置」にある。その後、パッド部222はワークWから離れ、昇降体20(パッド固定部21)は、自重によって支持体1の凹部13内に落下し、
図2に示す状態に戻る。
【0039】
ワーク搬送用ハンドA1は、支持体1と、支持体1に配置された複数の吸着機構2と、を備える。吸着機構2は昇降体20を備え、当該昇降体20は、第1位置と、当該第1位置よりも上方の第2位置とに上下動可能である。昇降体20は、吸着パッド22を含む。吸着パッド22(パッド部222)は、上方に向けて拡がり、かつ上端に第1開口O1を有し、弾性変形可能である。昇降体20が第1位置にあるとき、第1開口O1がワークWにより密閉され、また、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、昇降体20の外部に位置する第2開口O2とが遮断される。その一方、昇降体20が第2位置にあるとき、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通する。
【0040】
このような構成によれば、ワークWを支持体1に載せると、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1が負圧状態となり、パッド部222(吸着パッド22,吸着機構2)によってワークWを吸着把持することができる。一方、ワークWをステージ等に載せると、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通し、パッド部222(吸着パッド22,吸着機構2)によるワークWの吸着力が無くなる。したがって、本実施形態のワーク搬送用ハンドA1によれば、真空吸着用のポンプやそれに付随する配管等を用いることなく、ワークWを吸着把持して搬送することが可能である。
【0041】
吸着機構2は、シール部40を備える。シール部40は、パッド内空間S1および第2開口O2の双方に通じる。昇降体20が第1位置にあるとき、パッド内空間S1と第2開口O2とがシール部40によって遮断される。このようなシール部40を具備する構成によれば、昇降体20が第1位置にあるときに、パッド内空間S1と第2開口O2とを適切に遮断することができる。したがって、パッド内空間S1の負圧状態が適切に維持され、その結果、吸着パッド22によってワークWをより確実に吸着把持することができる。
【0042】
昇降体20は、吸着パッド22の下方に位置するパッド固定部21を含み、このパッド固定部21の吸着パッド22が固定される。吸着機構2は、パッド固定部21を上下動可能に案内するための凹部底面131およびガイド面311(ガイド部)を備える。パッド固定部21には連通孔216が形成されており、当該連通孔216は、パッド内空間S1とシール部40との双方に通じる。このような構成によれば、昇降体20を適切に上下動させることができ、昇降体20の動きが安定する。
【0043】
パッド固定部21は、下方を向く底面211(第1底面)と、底面211よりも上方に位置し、かつ平面視において底面211(第1底面)の少なくとも一部を囲む外周面212(第1外周面)と、を有する。本実施形態では、ガイド部として、底面211に対向する凹部底面131(第2底面)と、凹部底面131よりも上方に位置し、かつ外周面212の一部を囲むガイド面311(第1内周面)と、を有する。シール部40は、底面211と凹部底面131との間に介在する。このような構成によれば、昇降体20の上下動の動きが安定するとともに、昇降体20が第1位置にある状態から支持体1に対して相対的に上方に移動し始めると、パッド内空間S1と第2開口O2とが速やかに連通する。したがって、吸着パッド22によるワークWの吸着が不当に続くことが抑制される。
【0044】
フォーク部12(支持体1)は、上面12aから凹む凹部13を有する。パッド固定部21は、凹部13に配置されている。このような構成によれば、支持体1およびこの支持体1に配置された吸着機構2の全体の上下方向の寸法を抑制することができる。
【0045】
図6は、本発明に係るワーク搬送用ハンドの第2実施形態を示している。なお、
図6以降の図面において、上記実施形態のワーク搬送用ハンドA1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0046】
図6に示したワーク搬送用ハンドA2においては、上記実施形態のワーク搬送用ハンドA1と比べて、ガイド体30を具備しておらず、この点がワーク搬送用ハンドA1と大きく異なる。また、パッド固定部21は外向フランジ213を有しておらず、外周面212は底面211の外周縁につながっている。上記実施形態と同様に、パッド固定部21は、凹部13に配置されている。凹部13の凹部内周面132は、パッド固定部21の外周面212を囲んでいる。凹部内周面132の内径寸法は、パッド固定部21の外周面212の外径寸法よりも少し大きくされている。これにより、昇降体20(パッド固定部21)は、凹部内周面132に案内されて上下動可能である。そして、凹部内周面132(凹部13)と外周面212(パッド固定部21)との間には僅かな隙間が形成されている。本実施形態において、凹部内周面132と外周面212との間の隙間は、昇降体20の外部に位置する第2開口O2に相当する。
【0047】
昇降体20(パッド固定部21)が上下動ストロークの下端位置にあるとき、シール部40は、凹部13の凹部底面131に密着し、底面211および凹部底面131の間を塞ぐ。これにより、昇降体20(パッド固定部21)の上下動ストロークの下端は、凹部底面131により規定される。シール部40が凹部13の凹部底面131に密着して底面211および凹部底面131の間を塞ぐ状態においては、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、凹部13およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが遮断される。
【0048】
本実施形態において、パッド固定部21は、たとえば金属材料により構成される。金属材料により構成されたパッド固定部21は、樹脂材料により構成される場合と比べて、重量が大きくなる。
【0049】
本実施形態において、パッド固定部21の底面211は、本発明の「第1底面」に相当し、パッド固定部21の外周面212は、本発明の「第1外周面」に相当する。凹部13の凹部底面131は、本発明の「第2底面」の一例に相当し、凹部13の凹部内周面132は、本発明の「第1内周面」の一例に相当する。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0051】
ワーク搬送用ハンドA2によって薄板状のワークを搬送する際、支持体1によって当該ワークを支持する。ここで、
図7に示すように、ワークWは吸着機構2におけるパッド部222(吸着パッド22)の上に載り、昇降体20(パッド固定部21)は、ワークWの自重によって最も下がった位置にある。パッド部222は略水平に拡がった状態となり、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1が大幅に減少するとともに、パッド部222の第1開口O1がワークWにより密閉される。
【0052】
また、パッド固定部21の下端に配置されたシール部40は、凹部底面131に密着しており、底面211および凹部底面131の間を塞ぐ。このとき、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、凹部13およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが、シール部40によって遮断される。パッド固定部21に形成された連通孔216は、パッド内空間S1に通じ、また、底面211および凹部底面131の間の空間にも通じている。これにより、パッド内空間S1と、連通孔216と、底面211、凹部底面131およびシール部40で囲まれた空間と、により密閉空間が形成されており、当該密閉空間は、大気圧未満に減圧された状態(負圧状態)となる。したがって、
図7に示す状態において、ワークWは、パッド部222(吸着機構2)により吸着把持されており、水平移動させて搬送することが可能である。
図7に示すように、昇降体20(パッド固定部21)が最も下がった位置は、本発明の「第1位置」に相当する。
【0053】
たとえばワークWを搬送先のステージ(図示せず)に置く際、支持体1(フォーク部12)を降下させながら、ワークWを図示しないステージに載せ替える。ここで、支持体1を下げ始めても、パッド部222がワークWに吸着した状態が続いている。このため、昇降体20(パッド固定部21)は、
図7に示した場合と比べて、支持体1に対して相対的に上方に位置する。そうすると、シール部40が凹部底面131から離れ、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、凹部13およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが連通する。
【0054】
パッド内空間S1と、凹部13およびパッド固定部21の間の隙間(第2開口O2)とが連通する状態では、第2開口O2から空気が流入し、連通孔216、パッド内空間S1へと流れ込む。そうすると、
図8に示すように、パッド内空間S1は大気圧状態に戻り、パッド部222(吸着パッド22)についてはワークWの吸着力が無くなる。
図8に示す状態では、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通しており、昇降体20(パッド固定部21)は、
図7に示した場合と比べて、支持体1に対して相対的に上方に位置する。
図8に示す状態において、昇降体20(パッド固定部21)は、本発明の「第2位置」にある。その後、パッド部222はワークWから離れ、昇降体20(パッド固定部21)は、自重によって支持体1の凹部13内に落下し、
図6に示す状態に戻る。
【0055】
ワーク搬送用ハンドA2は、支持体1と、支持体1に配置された複数の吸着機構2と、を備える。吸着機構2は昇降体20を備え、当該昇降体20は、第1位置と、当該第1位置よりも上方の第2位置とに上下動可能である。昇降体20は、吸着パッド22を含む。吸着パッド22(パッド部222)は、上方に向けて拡がり、かつ上端に第1開口O1を有し、弾性変形可能である。昇降体20が第1位置にあるとき、第1開口O1がワークWにより密閉され、また、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1と、昇降体20の外部に位置する第2開口O2とが遮断される。その一方、昇降体20が第2位置にあるとき、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通する。
【0056】
このような構成によれば、ワークWを支持体1に載せると、吸着パッド22の内側のパッド内空間S1が負圧状態となり、パッド部222(吸着パッド22,吸着機構2)によってワークWを吸着把持することができる。一方、ワークWをステージ等に載せると、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通し、パッド部222(吸着パッド22,吸着機構2)によるワークWの吸着力が無くなる。したがって、本実施形態のワーク搬送用ハンドA2によれば、真空吸着用のポンプやそれに付随する配管等を用いることなく、ワークWを吸着把持して搬送することが可能である。
【0057】
吸着機構2がワークWを吸着把持して昇降体20が第1位置にある状態から、昇降体20が支持体1に対して相対的に上方に移動すると、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通する。本実施形態において、パッド固定部21は、金属材料により構成されており、重量が比較的大きい。このような構成によれば、パッド内空間S1と第2開口O2とが連通した後、パッド固定部21の自重によって、吸着パッド22がワークWから速やかに離れる。したがって、ワークWの搬送効率の向上が期待できる。その他にも、上記実施施形態のワーク搬送用ハンドA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0059】
上記実施形態において、シール部40がパッド固定部21の底面211側に配置される場合について説明したが、シール部40が凹部13の凹部底面131側に配置される構成としてもよい。また、上記実施形態では、シール部40がリップ状の延出片42を有する構成について例示したが、シール部の具体的な構成は種々変更可能である。たとえばシール部をOリングや板状のシール部材によって構成してもよい。凹部底面131側にシール部を配置する場合、シール部は環状でなくもよい。上記実施形態では、パッド固定部21の底面211と凹部13の凹部底面131との間にシール部40が介在する場合について説明したが、これに限定されず、たとえばパッド固定部21の外周面212と凹部13の凹部内周面132との間にシール部40が介在する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
A1,A2:ワーク搬送用ハンド、1:支持体、12a:上面(支持体上面)、13:凹部、131:凹部底面(第2底面)、132:凹部内周面(第1内周面)、2:吸着機構、21:パッド固定部、211:底面(第2底面)、212:外周面(第1外周面)、216:連通孔、22:吸着パッド、30:ガイド体、311:ガイド面(第1内周面)、40:シール部、O1:第1開口、O2:第2開口、S1:パッド内空間、W:ワーク