(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】デジタル放送受信装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/4425 20110101AFI20250227BHJP
H04N 21/488 20110101ALI20250227BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
H04N21/4425
H04N21/488
H04B1/16 C
(21)【出願番号】P 2021105610
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】阪辻 修
【審査官】富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-68185(JP,A)
【文献】特開2020-150521(JP,A)
【文献】特開2016-181875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と表示処理部とを備えるデジタル放送受信装置であって、
前記制御部は、
選局中のチャンネルの放送信号の受信状態の良否を示す受信状態値を取得し、
前記チャンネルの放送方式を判定し、
前記判定された放送方式に対応する前記放送方式の安定受信に必要な所要安定受信状態値に基づいて、前記受信状態値を変換し、
前記表示処理部は、前記変換した受信状態値を表示部に表示させるデジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記判定された放送方式が第1の放送方式の場合、目標値を前記第1の放送方式の安定受信に必要な第1の所要安定受信状態値で除算した第1の係数を前記受信状態値に乗算することにより、前記受信状態値を変換し、
前記判定された放送方式が第2の放送方式の場合、前記目標値を前記第2の放送方式の安定受信に必要な第2の所要安定受信状態値で除算した第2の係数を前記受信状態値に乗算することにより、前記受信状態値を変換する、請求項1記載のデジタル放送受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記判定された放送方式が第1の放送方式の場合、目標値と前記第1の放送方式の安定受信に必要な第1の所要安定受信状態値との差分を前記受信状態値に加算することにより、前記受信状態値を変換し、
前記判定された放送方式が第2の放送方式の場合、前記目標値と前記第2の放送方式の安定受信に必要な第2の所要安定受信状態値との差分を前記受信状態値に加算することにより、前記受信状態値を変換する、請求項1記載のデジタル放送受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記判定された放送方式が第1の放送方式の場合、第1の変換式を用いて、前記受信状態値を変換し、
前記判定された放送方式が第2の放送方式の場合、第2の変換式を用いて、前記受信状態値を変換し、
前記判定された放送方式が第1の放送方式であり且つ前記受信状態値が前記第1の放送方式の安定受信に必要な第1の所要安定受信状態値である場合の前記第1の変換式により算出される第1の値と、前記判定された放送方式が第2の放送方式であり且つ前記受信状態値が前記第2の放送方式の安定受信に必要な第2の所要安定受信状態値である場合の前記第2の変換式により算出される第2の値と、の差が所定値より小さい請求項1記載のデジタル放送受信装置。
【請求項5】
制御部と表示処理部とを備えるデジタル放送受信装置であって、
前記制御部は、
複数の放送信号それぞれについて、前記放送信号の選局を行い、選局した前記放送信号の放送方式を取得し、選局した前記放送信号の受信状態の良否を示す受信状態値を取得し、
前記放送方式に対応する前記放送方式の安定受信に必要な所要安定受信状態値に基づいて、前記受信状態値を変換し、
前記表示処理部は、前記変換した受信状態値を表示部に表示させるデジタル放送受信装置。
【請求項6】
前記受信状態値は、C/N値である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデジタル放送受信装置。
【請求項7】
前記受信状態値は、受信強度である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデジタル放送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
設置状態の如何に関わらず存在している要因による不具合を検知するデジタル放送受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2K放送と4K8K放送とでは、安定受信に必要な受信強度が異なる。そのため、現在の受信強度が、2K放送では十分であるが、4K8K放送では不十分な場合があり、ユーザが受信機の設定(特にアンテナの方向の設定)を行う場合に分かりにくい。
【0005】
本発明の一態様は、受信機の設定に関してユーザが分かり易いデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るデジタル放送受信装置は、制御部と表示処理部とを備えるデジタル放送受信装置であって、前記制御部は、選局中のチャンネルの放送信号の受信状態の良否を示す受信状態値を取得し、前記チャンネルの放送方式を判定し、前記判定された放送方式に対応する前記放送方式の安定受信に必要な所要安定受信状態値に基づいて、前記受信状態値を変換し、前記表示処理部は、前記変換した受信状態値を表示部に表示させる。
【0007】
本発明の一態様に係るデジタル放送受信装置は、制御部と表示処理部とを備えるデジタル放送受信装置であって、前記制御部は、複数の放送信号それぞれについて、前記放送信号の選局を行い、選局した前記放送信号の放送方式を取得し、選局した前記放送信号の受信状態の良否を示す受信状態値を取得し、前記放送方式に対応する前記放送方式の安定受信に必要な所要安定受信状態値に基づいて、前記受信状態値を変換し、前記表示処理部は、前記変換した受信状態値を表示部に表示させるデジタル放送受信装置。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るデジタル放送受信装置の構成図の一例である。
【
図2】実施の形態に係る放送方式に基づく受信品質の表示処理のフローチャートの一例である。
【
図3】放送方式に基づく受信品質の表示処理の表示画面の一例である。
【
図4】実施の形態に係る放送方式に基づく受信強度の表示処理のフローチャートの一例である。
【
図5】放送方式に基づく受信強度の表示処理の表示画面の一例である。
【
図6】実施の形態に係る複数の衛星番号それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理のフローチャートの一例(BS右旋の場合)である。
【
図7】複数の衛星番号それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理の表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、実施の形態に係るデジタル放送受信装置の構成図の一例である。
【0011】
デジタル放送受信装置100は、メインシステム部10、スピーカ60、表示部70を有する。また、デジタル放送受信装置100は、外部のアンテナ部(受信機)80と接続されている。デジタル放送受信装置は、例えば、テレビジョン受像機である。アンテナ部80は、アンテナ82およびブースタ84を有する。アンテナ82は放送信号を受信し、受信した放送信号をブースタ84へ送信する。ブースタ84は、アンテナ82から供給された所定の周波数帯域の周波数の放送信号を増幅する。
【0012】
メインシステム部10は、アンテナ部80から入力されたテレビジョン放送信号を処理し、当該放送信号の示す音声をスピーカ60から出力し、当該放送信号の示す映像を表示部70から出力する。メインシステム部10は、制御部12、チューナ部14、復調部16、デスクランブルおよびデマックス処理部18、音声処理部20、表示処理部24、記憶部26、およびフラッシュメモリ28を備えている。
【0013】
制御部12は、デジタル放送受信装置100の各部を統括的に制御する。制御部12は、選局したデジタル放送チャンネルから得られるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)情報により選局中のチャンネルの放送方式を識別する。制御部12は、復調部16から選局中のチャンネルにおけるC/N(受信信号品質)値を取得する。また、制御部12は、チューナ部14から選局中のチャンネルにおける受信強度(受信信号強度)値を取得することができる。C/N(受信信号品質)値および受信強度(受信信号強度)値は、放送信号の受信状態の良否を示す受信状態値の一例である。
【0014】
チューナ部14は、外部のアンテナ部80から受信した放送信号の伝送チャンネルを選局する。
【0015】
復調部16は、チューナ部14から得られた放送信号を復調してデジタル信号を生成する。
【0016】
デスクランブルおよびデマックス処理部18は、復調部16から入力された放送信号のスクランブルの解除処理を行い、解除処理した信号を映像信号と、音声信号と、その他の信号(字幕用データ等)とに分割する。分割された映像信号は表示処理部24に出力され、分割された音声信号は音声処理部20に出力される。
【0017】
表示処理部24は、制御部12、及びデスクランブルおよびデマックス処理部18の少なくとも1つから入力された信号を表示部70に表示できるように処理を行うことによって表示用データを生成し、生成した表示用データを表示部70へ出力する。
【0018】
表示部70は、表示処理部24から入力される表示用のデータを、表示面に表示する。表示部70は、例えば、液晶パネルまたは有機EL(Electro-Luminescence)パネル等である。
【0019】
音声処理部20は、制御部12、及びデスクランブルおよびデマックス処理部18の少なくとも1つから入力された信号の処理を行うことによって音声データを生成し、生成した音声データをスピーカ60へ出力する。音声処理部20は、例えば、アンプ等の音声出力処理回路で構成できる。
【0020】
スピーカ60は、音声処理部20から入力される音声データを外部へ出力する。
【0021】
記憶部26は、制御部12が制御プログラムを展開する主記憶部として使用される。記憶部26は、例えば、RAM(Random Access Memory)である。
【0022】
フラッシュメモリ28は、各種の情報を格納可能な不揮発性の記憶機器であり、主記憶部である記憶部26に対し、補助記憶部として使用される。尚、補助記憶部として、フラッシュメモリ28に限られず、例えば、ハードディスクドライブ等を用いてもよい。
【0023】
次に、C/N値に基づく受信品質の表示処理について、
図2、3を参照して説明する。
【0024】
図2は、実施の形態に係る放送方式に基づく受信品質の表示処理のフローチャートの一例である。
図3は、放送方式に基づく受信品質の表示処理の表示画面の一例である。
【0025】
先ず、制御部12は、ユーザの操作により、複数のチャンネルのうちのいずれかのチャンネルを選局する。
【0026】
ステップS201において、制御部12は、選局したチャンネルの放送信号のC/N値を復調部16から取得する。
【0027】
ステップS202において、制御部12は、選局したチャンネルの放送方式を識別する情報が含まれるTMCC情報をデスクランブルおよびデマックス処理部18から取得する。
【0028】
ステップS203において、制御部12は、ステップS202で取得したTMCC情報から、選局したチャンネルの放送方式を判定する。選局したチャンネルの放送方式が4K8K放送であると判定された場合、制御はステップS204に進み、選局したチャンネルの放送方式が4K8K放送でない(すなわち、選局したチャンネルの放送方式が2K放送である)と判定された場合、制御は、ステップS205に進む。4K8K放送は、例えば、4KのBS(4K-BS)放送、8KのBS(8K-BS)放送、4KのCS110度(4K-CS110度)放送、および8KのCS110度(8K-CS110度)放送等がある。2K放送は、例えば、2KのBS(2K-BS)放送、2KのCS110度(2K-CS110度)放送、および2Kの地上波放送等がある。尚、実施の形態おいて、デジタル放送受信装置100は2K-BS放送、4KのBS(4K-BS)放送、または8KのBS(8K-BS)放送を受信している場合を説明する。
【0029】
ステップS204において、制御部12は、ステップS201で取得したC/N値に対して4K8K用の受信信号品質の変換を行い、4K8K用の受信信号品質を算出する。具体的には、例えば、4K-BS放送および8K-BS放送においては16APSK7/9という変調方式が適用されている。この方式の放送を受信するために必要な受信C/N値(所要C/N)は理論上約13dBとされている。安定した受信状態を保つためには所要C/Nにマージンを加えた約15dBのC/N値(所要安定受信状態値)が必要と考えられる。制御部12は、C/N値が15dBの時にユーザが設置調整の指標とするための受信品質(目標受信品質)となるような変換式を用いる。尚、目標受信品質は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。所要C/Nにマージンを加えた値は、安定して放送を受信するために必要な所要安定受信状態値の一例である。所要C/N、マージン、および所要安定受信状態値は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。
【0030】
例えば、設置調整の指標として受信品質(目標受信品質)が100であるとすると、単純な乗算による変換式を用いる場合、乗算の係数は目標受信品質を所要安定受信状態値(所要C/N値にマージンを加算した値)で除算した値=100/15となる。したがって、制御部12は、ステップS201で取得したC/N値に上記係数を乗算して、4K8K用の受信信号品質を算出する。設置調整の指標として受信品質(目標受信品質)は、目標値の一例である。尚、上記の乗算を用いた変換式は、一例であり、加算、減算、または除算を用いてもよく、加減乗除算を組み合わせてもよい。
【0031】
ステップS205において、制御部12は、ステップS201で取得したC/N値に対して2K用の受信信号品質の変換を行い、2K用の受信信号品質を算出する。具体的には、例えば、2K-BS放送においてはTC-8PSK2/3という変調方式が適用されている。この方式の放送を受信するために必要な受信C/N値(所要C/N)は理論上約9dBとされている。C/N値は受信環境の影響を受けて変動することから、安定した受信状態を保つためには所要C/Nにマージンを加えた約11dBのC/N値(所要安定受信状態値)が必要と考えられる。制御部12は、C/N値が11dBの時にユーザが設置調整の指標とするための受信品質(目標受信品質)となるような変換式を用いる。尚、目標受信品質は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。所要C/Nにマージンを加えた値は、安定して放送を受信するために必要な所要安定受信状態値の一例である。所要C/N、マージン、および所要安定受信状態値は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。
【0032】
例えば、設置調整の指標とするための受信品質(目標受信品質)を100と設定すると、単純な乗算による変換式を用いる場合、乗算の係数は目標受信品質を所要安定受信状態値(所要C/N値にマージンを加算した値)で除算した値=100/11となる。したがって、制御部12は、ステップS201で取得したC/N値に上記係数を乗算して、2K用の受信品質を算出する。
【0033】
ステップS206において、表示処理部24は、ステップS204またはS205で算出された受信品質を表示部70に表示させる。
【0034】
具体的には、例えば、ステップS201において、C/N値=16.5が取得され、ステップS203において、放送方式が4K8K放送と判定された場合、ステップS204において、4K8K用の受信信号品質が算出される。ステップS204で述べたように目標受信品質を100とすると、4K8K用の受信信号品質は、16.5*(100/15)=110となる。表示処理部24は、目標受信品質である「100」を用いて、
図3に示すように「受信信号品質が100以上になるようにアンテナの向き、ブースタ等の調整をして下さい。」と表示部70に表示させる。さらに、表示処理部24は、算出した4K8K用の受信信号品質である「110」を現在値として表示部70に表示させる。また、表示処理部24は、選局されたチャンネルの衛星番号(トラスポンダ番号)であるBS-17を表示部70に表示させる。例えば、フラッシュメモリ28にチャンネルと衛星番号とが対応付けられて予め記憶され、表示処理部24は、選局されたチャンネルに対応する衛星番号をフラッシュメモリ28から取得して表示部70に表示させる。また、表示処理部24は、放送信号から取得したデータに基づいて衛星番号を表示部70に表示させてもよい。例えば、表示処理部24は、復調された放送信号に含まれるデータ(放送方式が4K8K放送の場合はTLV-NIT、放送方式が2K放送の場合はNIT)を取得する。TLV-NITに含まれるtlv_stream_idは16ビットのデータであり、そのうち5ビットが衛星中継器の番号である。例えば、衛星番号がBS-17であればtlv_stream_idの16ビットのうち5ビットは「10001」となっている。NITに含まれるtransport_stream_idは16ビットのデータであり、そのうち5ビットが衛星中継器の番号である。例えば、衛星番号がBS-17であれば、transport_stream_idの16ビットのうち5ビットは「10001」となっている。表示処理部24は、tlv_stream_idまたはtransport_stream_idに含まれる衛星中継器の番号に基づいて、衛星番号を表示部70に表示させてもよい。
【0035】
また、表示処理部24は、放送信号を復調して得られる他のデータから選局されたチャンネルの衛星番号を取得しても良いし、インターネット上やLAN(Local Area Network)上の所定のサーバから選局されたチャンネルの衛星番号を取得してもよい。このサーバにはチャンネルと衛星番号とを対応付けて予め記憶させておき、このサーバに問い合わせる際、選局されたチャンネルの情報を送信し、対応する衛星番号を返信するようにしておいてよい。
【0036】
また、実施の形態において、C/N値の代わりにMER(変調誤差比:Modulation Error Ratio)またはBER(Bit Error Rate)を用いてもよい。
【0037】
従来、放送信号の受信状態を表す数値(信号品質の指標)として、デジタル放送受信装置内のチューナ部または復調部で取得するC/N値や受信強度値を用い、各受信装置メーカーの商品仕様によってC/N値や受信強度値を加工して表示している。
【0038】
ここで、放送が開始された4K/8K衛星放送においては、同じBS内で従来の2K放送と4K/8K放送のチャンネルが混在し、110度CS放送においても同様にチャンネルが混在している。しかし、それぞれの放送方式が異なるため、受信装置が安定して受信ができる信号のC/N値、受信強度値に差がある。そのため、上記の受信状態を表す数値化に際して、BS/CS110度放送ごとに定めた数値の加工(乗算係数など)を一律に用いると、安定受信に必要な数値(信号品質の指標)が放送方式ごとに異なることになり、設置調整においてユーザに混乱を与えてしまう可能性がある。
【0039】
例えば、2K-BS放送のチャンネルで受信機の設置調整を行う場合、安定受信に必要なC/Nは11dB程度なのに対して、4K-BS放送のチャンネルで受信機の設置調整を行う場合、安定受信に必要なC/Nは15dB程度になり、同じ係数を乗じて表示すると異なる値を指標に設置調整することになり、ユーザにとって分かりにくくなる。
【0040】
これを回避するため、実施の形態では、放送方式ごとに乗じる係数を変え、安定受信可能な設置調整の指標値を統一することでユーザの調整作業を簡素化、効率化することができる。
【0041】
上記の例で説明すると放送方式が2K-BS等の2K放送の場合の変換式の乗算の係数を100/11、放送方式が4K-BS等の4K8K放送の場合の変換式の乗算の係数の係数を100/15とすれば、設置調整の指標値は、2K放送と4K8K放送の場合も100となり共通化することができる。
【0042】
実施の形態のデジタル放送受信装置によれば、例えば、放送方式が2K放送か4K8K放送であるかによらず、変換後に表示される受信品質に関して安定して受信するための目標値が同じとなるので、ユーザはアンテナやブースタの設定が分かりやすくなり、利便性が向上する。
【0043】
尚、上述の実施の形態において説明した一例では、放送方式が4K8K放送であり且つC/N値が4K8K放送の所要安定受信状態値(=15)である場合、4K8K用の受信信号品質は目標受信品質と同じ100が算出され、放送方式が2K放送であり且つC/N値が2K放送の所要安定受信状態値(=11)である場合、2K用の受信信号品質は目標受信品質と同じ100が算出される。このように、C/N値がその放送方式の所要安定受信状態値である場合に、2K放送と4K8K放送のいずれの場合でも、変換式により算出された値(4K8K用の受信信号品質および2K用の受信信号品質)は同じ値(=100)となるが、C/N値がその放送方式の所要安定受信状態値である場合に、各放送方式で算出される値が同じとなる変換式を用いていたが、C/N値がその放送方式の所要安定受信状態値である場合に各放送方式で算出される値の差が所定値より小さくなるような変換式であればよい。これにより、より簡易な計算式を用いることができ、計算処理の簡易化ができる。
【0044】
例えば、所定値は、C/N値がその放送方式の所要安定受信状態値である場合に、各放送方式で同じ変換式を用いて算出される値の差である。具体的には、2K放送と4K8K放送のいずれの場合でも、C/N値に100/15を乗算する変換式を用いると、放送方式が4K8K放送であり且つC/N値が4K8K放送の所要安定受信状態値(=15)の場合、算出される値は100となり、放送方式が2K放送であり且つC/N値が2K放送の所要安定受信状態値(=11)の場合、算出される値は73となり、算出された2つの値の差は27(=100-73)である。よって、この場合、所定値は27である。
【0045】
この場合、放送方式が2K放送の場合に用いる変換式は、C/N値が2K放送の所要安定受信状態値(=11)のときに、73より大きい値(ただし、100以下)が算出される変換式であればよい。
【0046】
このようにすれば、各放送方式において所要安定受信状態値の場合にそれぞれ算出される値の乖離が小さくなる(27より小さくなる)ため、各放送方式で同じ変換式を用いて、算出した値を表示する場合よりは改善されていると言え、アンテナやブースタの設定が分かり易くなる。
【0047】
また、各放送方式の変換式は、C/N値がその放送方式の所要安定受信状態値である場合に、各放送方式で変換式を用いて算出される値の差が、表示部70に表示させる場合の算出された値(受信品質)の最小ステップよりも小さくなる変換式でもよい。例えば、最小ステップおよび所定値は1でもよい。例えば、表示部70に表示される算出された値(受信品質)が小数を切り捨てて整数で表示するようにしている場合、C/N値がその放送方式の所要安定受信状態値である場合に、各放送方式で変換式を用いて算出される値の差が1未満となるようにする。具体的は、放送方式が4K8K放送であり且つC/N値が4K8K放送の所要安定受信状態値(=15)である場合、4K8K用の受信信号品質が100未満99以上の値(例えば99.8)となり、放送方式が2K放送であり且つC/N値が2K放送の所要安定受信状態値(=11)である場合、2K用の受信信号品質が100未満99以上の値(例えば99.2)となる変換式を用いてもよい。この場合、放送方式が4K8K放送であり且つC/N値が4K8K放送の所要安定受信状態値(=15)である場合の4K8K用の受信信号品質と放送方式が2K放送であり且つC/N値が2K放送の所要安定受信状態値(=11)である場合の2K用の受信信号品質は、99として表示されるので、
図3に示すように「受信信号品質が100以上になるようにアンテナの向き、ブースタ等の調整をして下さい。」と表示しても概ね正しいと言え、矛盾なく表示できる。
【0048】
また、デジタル放送受信装置100は、以下に説明するように放送方式に基づく受信強度の表示処理を行ってもよい。
【0049】
図4は、実施の形態に係る放送方式に基づく受信強度の表示処理のフローチャートの一例である。
図5は、放送方式に基づく受信強度の表示処理の表示画面の一例である。
【0050】
先ず、制御部12は、ユーザの操作により、複数のチャンネルのうちのいずれかのチャンネルを選局する。
【0051】
ステップS401において、制御部12は、選局したチャンネルの放送信号の受信強度値をチューナ部14から取得する。
【0052】
ステップS402において、制御部12は、選局したチャンネルの放送方式を識別する情報が含まれるTMCC情報をデスクランブルおよびデマックス処理部18から取得する。
【0053】
ステップS403において、制御部12は、ステップS402で取得したTMCC情報から、選局したチャンネルの放送方式を判定する。選局したチャンネルの放送方式が4K8K放送であると判定された場合、制御はステップS404に進み、選局したチャンネルの放送方式が4K8K放送でない(すなわち、選局したチャンネルの放送方式が2K放送である)と判定された場合、制御は、ステップS405に進む。
【0054】
ステップS404において、制御部12は、ステップS401で取得した受信強度値に対して4K8K用の受信信号強度の変換を行い、4K8K用の受信信号強度を算出する。具体的には、例えば、4K-BS放送および8K-BS放送においては16APSK7/9という変調方式が適用されている。この方式の放送を受信するために必要な受信強度値(所要受信強度値)はチューナ感度に依存するが2K-BS受信時よりも高い必要があり、本実施の形態では-65dBmとする。安定した受信状態を保つためには所要受信強度値にマージン(=5)を加えた、約-60dBmの受信強度値が必要と考えられる。制御部12は、受信強度値が-60dBmの時にユーザが設置調整の指標とするための受信強度(目標受信強度)となるような変換式を用いる。尚、目標受信強度は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。所要受信強度値にマージンを加えた値は、安定して放送を受信するために必要な所要安定受信状態値の一例である。所要受信強度値、マージン、および所要安定受信状態値は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。
【0055】
例えば、設置調整の指標として受信強度(目標受信強度)が60とすると、単純な加算による変換式を用いる場合、加算値は目標受信強度値と所要受信強度値にマージンを加算した値との差分=120(=60-(-65+5))となる。したがって、制御部12は、ステップS401で取得した信号受信強度値に加算値を加算して、4K8K用の受信信号強度を算出する。所要受信強度値にマージンを加えた値は、安定して放送を受信するために必要な所要受信状態値の一例である。設置調整の指標として受信強度(目標受信強度)は、目標値の一例である。尚、上記の加算を用いた変換式は、一例であり、減算、乗算、または除算を用いてもよく、加減乗除算を組み合わせてもよい。
【0056】
ステップS405において、制御部12は、ステップS401で取得した受信強度値に対して2K用の受信信号品質の変換を行い、2K用の受信信号強度を算出する。具体的には、例えば、2K-BS放送においてはTC-8PSK2/3という変調方式が適用されている。この方式の放送を受信するために必要な受信強度値(所要受信強度値)はチューナ感度に依存するが、本実施の形態では-70dBmとする。受信強度値は受信環境の影響を受けて変動することから、安定した受信状態を保つためには所要受信強度値にマージン(=5)を加えた、約-65dBmの受信強度値が必要と考えられる。制御部12は、受信強度値が-65dBmの時にユーザが設置調整の指標とするための受信強度(目標受信強度)となるような変換式を用いる。尚、目標受信強度は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。所要受信強度値にマージンを加えた値は、安定して放送を受信するために必要な所要安定受信状態値の一例である。所要受信強度値、マージン、および所要安定受信状態値は、例えば、予め設定され、フラッシュメモリ28に記憶されている。
【0057】
例えば、設置調整の指標とするための受信強度(目標受信強度)が60とすると、単純な加算による変換式を用いる場合、加算値は目標受信強度と所要受信強度値にマージンを加算した値との差分=125(=60-(-70+5))となる。したがって、制御部12は、ステップS401で取得した受信強度値に上記加算値を加算して、2K用の受信信号強度を算出する。
【0058】
ステップS406において、表示処理部24は、ステップS404またはS405で算出された受信強度を表示部70に表示させる。
【0059】
具体的には、例えば、ステップS401において、受信強度値=-50が取得され、ステップS403において、放送方式が4K8K放送と判定された場合、ステップS404において、4K8K用の受信信号強度が算出される。ステップS404で述べたように目標受信強度を60とすると、4K8K用の受信信号品質は、-50+120=70となる。表示処理部24は、目標受信強度である「60」を用いて、
図3に示すように「受信信号強度が60以上になるようにアンテナの向き、ブースタ等の調整をして下さい。」と表示部70に表示させる。さらに、表示処理部24は、算出した4K8K用の受信信号強度である「70」を現在値として表示部70に表示させる。また、表示処理部24は、選局されたチャンネルの衛星番号であるBS-17を表示部70に表示させる。
【0060】
実施の形態のデジタル放送受信装置によれば、例えば、放送方式が2K放送か4K8K放送であるかによらず、変換後に表示される受信強度に関して安定して受信するための目標値が同じとなるので、ユーザはアンテナやブースタの設定が分かりやすくなり、利便性が向上する。
【0061】
また、デジタル放送受信装置100は、以下に説明するように複数の衛星番号(トラスポンダ番号)それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理を行ってもよい。すなわち、デジタル放送受信装置100は、衛星放送で用いられるトラスポンダ(中継器)毎の放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理を行ってもよい。
【0062】
図6は、実施の形態に係る複数の衛星番号それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理のフローチャートの一例(BS右旋の場合)である。
図7は、複数の衛星番号それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理の表示画面の一例である。
【0063】
尚、実施の形態では、右旋円偏波を用いたBS放送(BS右旋)について、複数の衛星番号それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理を行う。
【0064】
ステップS601において、制御部12は、BS右旋の衛星番号をすべて取得する。制御部12は、上述のように、衛星番号をフラッシュメモリ28から取得してもよいし、放送信号から取得したデータに基づいて衛星番号を取得してもよい。
【0065】
ステップS602において、制御部12は、ステップS601で取得した衛星番号のうち未選択の衛星番号を1つ選択する。
【0066】
ステップS603において、制御部12は、ステップS602で選択した衛星番号に含まれるチャンネルを1つ選局する。
【0067】
ステップS604の処理は、ステップS201の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0068】
ステップS605の処理は、ステップS401の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0069】
ステップS606の処理は、ステップS202の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0070】
ステップS607の処理は、ステップS203の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0071】
ステップS608の処理は、ステップS204の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0072】
ステップS609の処理は、ステップS404の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0073】
ステップS610の処理は、ステップS205の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0074】
ステップS611の処理は、ステップS405の処理と同様であるため、説明の詳細は省略する。
【0075】
ステップS612において、表示処理部24は、ステップS602で選択した衛星番号を表示部70に表示させる。
【0076】
ステップS613において、表示処理部24は、ステップS608またはS610で算出された受信品質をステップS602で選択した衛星番号の受信品質として表示部70に表示させる。
【0077】
ステップS614において、表示処理部24は、ステップS609またはS611で算出された受信強度をステップS602で選択した衛星番号の受信強度として表示部70に表示させる。
【0078】
ステップS615において、表示処理部24は、ステップ607で判定された放送方式をステップS602で選択した衛星番号の放送方式として表示部70に表示させる。
【0079】
ステップS616において、制御部12は、未選択の衛星番号があるか否か判定し、未選択の衛星番号があると判定された場合(すなわち、ステップS601で取得した衛星番号のうちステップS602で選択していない衛星番号がある場合)、制御はステップS602に戻り、未選択の衛星番号が無いと判定された場合、処理を終了する。
【0080】
図6の複数の衛星番号それぞれの放送方式に基づく受信品質および受信強度の表示処理により、
図7に示すように、衛星番号それぞれの受信品質、受信強度、および放送方式が表示される。これにより、ユーザは、衛星番号それぞれの受信品質、受信強度、および放送方式の一覧を見ることができ、安定して受信できない衛星番号があるか否かが容易に分かる。
【0081】
尚、上述の実施の形態は、C/N値または受信強度の変換式を、放送方式が2Kか4K8Kであるかで変えていたが、さらに詳細に場合分けしてもよい。例えば、放送方式が、2KのBS放送、4KのBS放送、8KのBS放送、地上波放送、および2KのCS110度放送、および4KのCS110度放送のそれぞれに応じて、異なる変換式を用いて、C/N値または受信強度を変換してもよい。
【0082】
(ソフトウェアによる実現例)
デジタル放送受信装置100の制御ブロック(特に、制御部12、チューナ部14、復調部16、デスクランブルおよびデマックス処理部18、音声処理部20、および表示処理部24)は、集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現可能であり、またCPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、デジタル放送受信装置100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROMまたは記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM等を備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、制御部12、チューナ部14、復調部16、デスクランブルおよびデマックス処理部18、音声処理部20、および表示処理部24として動作し、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムは、伝送可能な任意の伝送媒体を介して上記コンピュータに供給されてよい。
【0083】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく変形可能であり、上記の構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0084】
100 デジタル放送受信機
12 制御部
24 表示処理部
70 表示部
80 アンテナ部