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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】カラオケ装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
G10K15/04 302D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021123041
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023018780
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 聡
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-015211(JP,A)
【文献】特開2008-268369(JP,A)
【文献】特開2015-191087(JP,A)
【文献】特開平11-249674(JP,A)
【文献】特開2004-102147(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2107588(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する特定部と、
特定された前記第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された前記第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める算出部と、
前記第1の周波数の音名及び前記第2の周波数の音名が、前記ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する第1の判定部と、
前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、前記楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う評価部と、
を有するカラオケ装置。
【請求項2】
利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する特定部と、
特定された前記第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された前記第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める算出部と、
前記第1の周波数と前記第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合、且つ前記第1の周波数の音名及び前記第2の周波数の音名が、前記ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する第2の判定部と、
前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、前記楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う評価部と、
を有するカラオケ装置。
【請求項3】
前記スケール構成音は、楽曲毎に設定された少なくともナチュラルスケール、ハーモニックスケール、メロディックスケールを含む複数のスケールの構成音のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のカラオケ装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記加点処理として、前記採点処理により得られた採点値に対し、前記第1の差分値、及び/または前記第2の差分値に基づいて算出した点数を加点することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のカラオケ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ装置は、マイクにより入力された歌唱音声から抽出した歌唱音声データと、カラオケ演奏された楽曲の主旋律を示すリファレンスデータとを比較することにより、カラオケ歌唱の巧拙を採点する採点機能が搭載されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、カラオケ演奏に合わせてマイクから入力される歌唱音声信号から音高データ及び音長データを抽出し、カラオケ演奏に並行して読み出されるガイドメロディと比較することによって歌唱の巧拙を採点評価する技術が開示されている。
【0004】
また、特殊な歌唱技法を用いてカラオケ歌唱を行う者もいる。特許文献2には、特殊な歌唱技法としてビブラート歌唱を検出し、カラオケ歌唱を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-69216号公報
【文献】特開2008-268369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術を用いた場合、ビブラート歌唱を行うだけで採点結果が高くなる可能性がある。よって、カラオケ歌唱を行う利用者の中には、楽曲のコードやスケールを無視し、聴衆が不自然に感じるようなビブラート歌唱を行う者もいる。
【0007】
本発明の目的は、ビブラート歌唱を適切に評価することが可能なカラオケ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一の発明は、利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する特定部と、特定された前記第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された前記第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める算出部と、前記第1の周波数の音名及び前記第2の周波数の音名が、前記ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する第1の判定部と、前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、前記楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う評価部と、を有するカラオケ装置である。
また、上記目的を達成するための別の発明は、利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する特定部と、特定された前記第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された前記第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める算出部と、前記第1の周波数と前記第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合、且つ前記第1の周波数の音名及び前記第2の周波数の音名が、前記ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する第2の判定部と、前記第1の差分値及び前記第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、前記楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う評価部と、を有するカラオケ装置である。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビブラート歌唱を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るカラオケ装置を示す図である。
図2】第1実施形態に係るカラオケ本体を示す図である。
図3】第1実施形態に係るコード情報を示す図である。
図4】第1実施形態に係るカラオケ装置の処理を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る第1及び第2のピーク周波数、第1及び第2の周波数、音名、及び第1及び第2の差分値の関係の一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係るカラオケ本体を示す図である。
図7】第2実施形態に係るコード情報を示す図である。
図8】第2実施形態に係るカラオケ装置の処理を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る第1及び第2のピーク周波数、第1及び第2の周波数、音名、及び第1及び第2の差分値の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1図5を参照して、第1実施形態に係るカラオケ装置について説明する。
【0012】
==カラオケ装置==
カラオケ装置は、楽曲のカラオケ演奏、及び利用者がカラオケ歌唱を行うための装置である。図1に示すように、本実施形態に係るカラオケ装置Kは、カラオケ本体10、スピーカ20、表示装置30、マイク40、及びリモコン装置50を備える。
【0013】
カラオケ本体10は、選曲された楽曲のカラオケ演奏制御、歌詞や背景映像等の表示制御、マイク40を通じて入力された音声信号の処理といった、カラオケ演奏やカラオケ歌唱に関する各種の制御を行う。スピーカ20はカラオケ本体10からの放音信号に基づいて放音するための構成である。表示装置30はカラオケ本体10からの信号に基づいて映像や画像を画面に表示するための構成である。マイク40は利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声をアナログの音声信号に変換してカラオケ本体10に入力するための構成である。リモコン装置50は、カラオケ本体10に対する各種操作をおこなうための装置である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態に係るカラオケ本体10は、記憶手段10a、通信手段10b、入力手段10c、演奏手段10d、及び制御手段10eを備える。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。
【0015】
[記憶手段]
記憶手段10aは、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置である。記憶手段10aは、楽曲データを記憶する。
【0016】
楽曲データは、個々の楽曲を特定するための楽曲識別情報が付与されている。楽曲識別情報は、楽曲を識別するための楽曲ID等、各楽曲に固有の情報である。楽曲データは、伴奏データ、リファレンスデータ等を含む。伴奏データは、カラオケ演奏音の元となるデータである。リファレンスデータは、カラオケ演奏された楽曲の主旋律を示すデータである。
【0017】
楽曲データは、演奏区間に関する情報を含む。演奏区間は、カラオケ演奏が行われる区間である。演奏区間は、歌唱区間及び非歌唱区間を含む。歌唱区間は、たとえば、Aメロ、Bメロ、サビ等を構成する1小節のような、ある楽曲において歌唱すべき歌詞が設定されている区間である。非歌唱区間は、たとえば前奏、間奏、後奏を構成する1小節のような、ある楽曲において歌唱すべき歌詞が設定されていない区間である。
【0018】
本実施形態において、各演奏区間には、コード情報が付与されている。コード情報は、「C」、「Am」、「Em」等、演奏区間のコード進行を示す情報である。
【0019】
また、本実施形態において、各コード情報には、所定範囲におけるコード構成音が対応付けられている。たとえば、記憶手段10aは、コード情報にコード構成音を対応付けたテーブルを記憶している。
【0020】
たとえば、ピアノの鍵盤における「A0」~「C8」(全88)を所定範囲とする場合、コード情報「Am」には、音名「A0」、「C1」、「E1」、・・・・「A6」、「C7」、「E7」、「A7」、「C8」のコード構成音が対応付けられている(図3参照)。なお、楽曲データの各演奏区間にコード情報が付与されるのではなく、公知技術を用いて楽曲データを解析してコード進行を特定してもよい。
【0021】
記憶手段10aは、各楽曲に対応する歌詞テロップをカラオケ演奏に合わせて表示装置30等に表示させるための歌詞テロップデータ、カラオケ演奏時に表示装置30等に表示される背景映像のデータ、及び楽曲の属性情報を記憶する。楽曲の属性情報は、たとえば、歌手名、楽曲の音楽ジャンル等を含む。
【0022】
[通信手段・入力手段・演奏手段]
通信手段10bは、リモコン装置50との通信を行うためのインターフェースを提供する。入力手段10cは、利用者が各種の指示入力を行うための構成である。入力手段10cは、カラオケ本体10に設けられたボタン等である。或いは、リモコン装置50が入力手段10cとして機能してもよい。演奏手段10dは、制御手段10eの制御に基づき、楽曲のカラオケ演奏、及びマイク40を通じて入力された歌唱音声に基づく信号の処理を行う。
【0023】
[制御手段]
制御手段10eは、カラオケ装置Kにおける各種の制御を行う。制御手段10eは、CPUおよびメモリ(いずれも図示無し)を備える。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。
【0024】
本実施形態においてはCPUがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより、制御手段10eは、特定部100、算出部200、第1の判定部300、及び評価部400として機能する。
【0025】
(特定部)
特定部100は、利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する。
【0026】
ビブラート歌唱は、カラオケ歌唱において音を伸ばす際、音高をわずかに上下させることにより、声を揺らす技法である。ビブラート歌唱の検出は、たとえば、特許文献2に記載された技術等、公知の手法を用いることができる。ビブラート歌唱の検出は、たとえば、特定部100が行うことができる。本実施形態において、ビブラート歌唱の検出は、歌唱区間毎に実施される。
【0027】
第1のピーク周波数は、ビブラート歌唱に対応する歌唱音声データが示す周波数のうち、音高の推移が正から負に変化する点(すなわち、山)を示す周波数である。また、第2のピーク周波数は、ビブラート歌唱に対応する歌唱音声データが示す周波数のうち、音高の推移が負から正に変化する点(すなわち、谷)を示す周波数である。一般的に、ある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、第1のピーク周波数及び第2のピーク周波数はそれぞれ複数存在する。
【0028】
楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、特定部100は、ビブラート歌唱に対応する歌唱音声データを解析し、山を示す複数の第1のピーク周波数と、谷を示す複数の第2のピーク周波数とを特定する。
【0029】
(算出部)
算出部200は、特定された第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める。
【0030】
一の音名に対しては、一の周波数が対応付けられている。たとえば、音名「A4」に対応付けられた周波数の値が440Hzであるとする。この場合、音名「A3」に対応付けられた周波数の値は220Hzであり、音名「A5」に対応付けられた周波数の値は880Hzである。たとえば、記憶手段10aは、音名に周波数を対応付けたテーブルを記憶していてもよいし、算出部200は、所定の計算式により音名と周波数を対応付けてもよい。
【0031】
差分値は、一の周波数の値と他の周波数の値との差を示す値である。差分値は、cent値で示すことができる。cent値は、所定の計算式や公知の手法(たとえば、https://achapi2718.blogspot.com/2012/01/cent-java-script.html)を用いて算出できる。
【0032】
算出部200は、特定された第1のピーク周波数と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、その値が最も近似する周波数を第1の周波数として求める。そして、算出部200は、第1の周波数が対応付けられた音名を特定する。また、算出部200は、特定された第2のピーク周波数と、各音名に対応付けられた周波数の値とを比較し、その値が最も近似する周波数を第2の周波数として求める。そして、算出部200は、第2の周波数が対応付けられた音名を特定する。
【0033】
その後、算出部200は、特定された第1のピーク周波数と、求めた第1の周波数との差分値(すなわち、第1の差分値)を算出する。また、算出部200は、特定された第2のピーク周波数と、求めた第2の周波数との差分値(すなわち、第2の差分値)を算出する。
【0034】
なお、第1のピーク周波数及び第2のピーク周波数それぞれが複数特定された場合、算出部200は、特定された複数の第1のピーク周波数それぞれについて、第1の周波数の音名及び第1の差分値を算出し、且つ特定された複数の第2のピーク周波数それぞれについて、第2の周波数の音名及び第2の差分値を算出する。
【0035】
(第1の判定部)
第1の判定部300は、第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0036】
所定条件は、算出された差分値を判定するための条件である。所定条件は、たとえば、±30cent以内、±45cent以内のように、予め一の範囲が設定される。なお、第1の差分値と第2の差分値で異なる所定条件を設定してもよい。たとえば、第1の差分値の所定条件として「±30cent以内」を設定し、第2の差分値の所定条件として「±45cent以内」を設定してもよい。
【0037】
第1の判定部300は、ある歌唱区間のコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているコード構成音の音名の中に、第1の周波数の音名と一致する音名があるかどうかを確認する。また、第1の判定部300は、ある歌唱区間のコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているコード構成音の音名の中に、第2の周波数の音名と一致する音名があるかどうかを確認する。
【0038】
第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名それぞれが、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、第1の判定部300は、第1の差分値が所定条件を満たすかどうか、及び第2の差分値が所定条件を満たすかどうかを判定する。第1の判定部300は、判定結果を評価部400に出力する。
【0039】
なお、特定された複数の第1のピーク周波数それぞれについて、第1の周波数の音名及び第1の差分値が算出され、且つ特定された複数の第2のピーク周波数それぞれについて、第2の周波数の音名及び第2の差分値が算出された場合、第1の判定部300は、複数の第1の周波数の音名及び複数の第2の周波数の音名の全てが、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致するかどうかを判定する。或いは、この場合、第1の判定部300は、複数の第1の周波数の音名及び複数の第2の周波数の音名のうち、所定割合以上(たとえば、全体の半数以上や、第1の周波数の音名が半数以上且つ第2の周波数の音名が半数以上)が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致するかどうかにより、判定を行ってもよい。
【0040】
また、複数の第1の周波数の音名及び複数の第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致すると判定した場合、第1の判定部300は、複数の第1の差分値及び複数の第2の差分値の全てが所定条件を満たすかどうかを判定する。或いは、この場合、第1の判定部300は、複数の第1の差分値及び複数の第2の差分値のうち、所定割合以上(例えば、全体の半数以上や、第1の差分値が半数以上且つ第2の差分値が半数以上)が、所定条件を満たすかどうかにより、判定を行ってもよい。
【0041】
(評価部)
評価部400は、カラオケ歌唱の採点処理を行う。カラオケ歌唱の採点処理については、公知の手法を用いることができる。たとえば、評価部400は、利用者がカラオケ歌唱する楽曲のリファレンスデータ、及び当該利用者の歌唱音声に基づく歌唱音声データを用い、各歌唱区間を構成するノート毎の音高の一致度合いに基づいて、採点処理を行う。採点処理の結果は、たとえば0~100点の数値(採点値)で示すことができる。
【0042】
ここで、本実施形態にかかる評価部400は、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う。
【0043】
加点処理は様々な方法により行うことができる。たとえば、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、評価部400は、ある歌唱区間の採点値に対して予め決められた点数を加算したり、ある歌唱区間の採点値を所定割合だけ増加させることができる。或いは、評価部400は、ある歌唱区間を含む楽曲全体の採点値に対して、予め決められた点数を加算することも可能である。
【0044】
なお、第1の差分値及び第2の差分値の少なくとも一方が所定条件を満たさないと判定された場合、評価部400は、加点処理を行わず、通常の採点処理のみを行う。或いは、この場合、評価部400は、ある歌唱区間の採点値から予め決められた点数を減算したり、ある歌唱区間の採点値を所定割合だけ減少させることができる。
【0045】
==カラオケ装置Kの動作について==
次に、図4及び図5を参照して本実施形態におけるカラオケ装置Kの動作の具体例について述べる。図4は、カラオケ装置Kの動作例を示すフローチャートである。なお、この例では、音名「A4」に対応付けられた周波数の値が440Hzであるとする。また、第1の差分値の所定条件として「±30cent以内」が設定され、第2の差分値の所定条件として「±45cent以内」が設定されているとする。
【0046】
カラオケ装置Kは、利用者が選曲した楽曲Xのカラオケ演奏を行う(カラオケ演奏開始。ステップ10)。利用者は、楽曲Xのカラオケ歌唱を行う。
【0047】
利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲Xのある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合(ステップ11でYの場合)、特定部100は、ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する(第1のピーク周波数及び第2のピーク周波数を特定。ステップ12)。
【0048】
この例では、ビブラート歌唱が検出された楽曲Xの歌唱区間Sにおいて、4つの第1のピーク周波数PF1―1(530Hz)、PF1-2(525Hz)、PF1-3(516Hz)、PF1-4(520Hz)、及び4つの第2のピーク周波数PF2-1(430Hz)、PF2-2(443Hz)、PF2-3(446Hz)、PF2-4(436Hz)が特定されたとする。
【0049】
算出部200は、特定された第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める(第1の周波数の音名及び第1の差分値と、第2の周波数の音名及び第2の差分値とを算出。ステップ13)。
【0050】
この例において、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF1-1と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、その値が最も近似する周波数(ここでは523.251Hz)を第1の周波数F1-1として求める。そして、算出部200は、第1の周波数F1-1が対応付けられた音名N1-1(ここではC5)を特定する。同様に、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF1-2~PF1-4と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、それぞれの値が最も近似する周波数を第1の周波数F1-2~F1-4として求める。そして、算出部200は、第1の周波数F1-2~F1-4が対応付けられた音名N1-2~N1-4を特定する(図5参照)。
【0051】
その後、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF1-1(530Hz)と、求めた第1の周波数F1-1(523.251Hz)との差分値D1-1(ここでは+22.187cent)を算出する。同様に、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF1-2~PF1-4と、求めた第1の周波数F1-2~1-4との差分値D1-2~D1-4を算出する(図5参照)。差分値D1-1~D1-4は、「第1の差分値」に相当する。
【0052】
また、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF2-1と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、その値が最も近似する周波数(ここでは440Hz)を第2の周波数F2-1として求める。そして、算出部200は、第2の周波数F2-1が対応付けられた音名N2-1(ここではA4)を特定する。同様に、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF2-2~PF2-4と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、それぞれの値が最も近似する周波数を第2の周波数F2-2~F2-4として求める。そして、算出部200は、第2の周波数F2-2~F2-4が対応付けられた音名N2-2~N2-4を特定する(図5参照)。
【0053】
その後、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF2-1(430Hz)と、求めた第2の周波数F2-1(440Hz)との差分値D2-1(ここでは-39.800cent)を算出する。同様に、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF2-2~PF2-4と、求めた第2の周波数F2-2~2-4との差分値D2-2~D2-4を算出する(図5参照)。差分値D2-1~D2-4は、「第2の差分値」に相当する。
【0054】
第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合(ステップ14でYの場合)、第1の判定部300は、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0055】
たとえば、図5の例において、第1の判定部300は、歌唱区間Sのコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているコード構成音の音名の中に、第1の周波数F1-1の音名N1-1(C5)と一致する音名があるかどうかを確認する。
【0056】
ここで、歌唱区間Sのコード情報が「Am」であるとする。この場合、コード情報「Am」には、図3に示したコード構成音が対応付けられている。よって、第1の判定部300は、音名N1-1(C5)が、歌唱区間Sのコード情報に対応するコード構成音の音名(C5)と一致すると判定する。
【0057】
この場合、第1の判定部300は、第1のピーク周波数PF1-1と、第1の周波数F1-1との差分値D1-1が所定条件を満たすかどうかを判定する。この例において、差分値D1-1(+22.187cent)は所定条件(±30cent以内)を満たす。
【0058】
同様の処理を行うことにより、第1の判定部300は、音名N1-2~N1-4それぞれが、歌唱区間Sのコード情報に対応するコード構成音の音名と一致すると判定する。また、第1の判定部300は、差分値D1-2~D1-4がいずれも所定条件(±30cent以内)を満たすと判定する。
【0059】
一方、第1の判定部300は、歌唱区間Sのコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているコード構成音の音名の中に、第2の周波数F2-1の音名N2-1(A4)と一致する音名があるかどうかを確認する。
【0060】
ここで、歌唱区間Sのコード情報は「Am」である。よって、第1の判定部300は、音名N2-1(A4)が、歌唱区間Sのコード情報に対応するコード構成音の音名(A4)と一致すると判定する。
【0061】
この場合、第1の判定部300は、第2のピーク周波数PF2-1と、第2の周波数F2-1との差分値D2-1が所定条件を満たすかどうかを判定する。この例において、差分値D2-1(-39.800cent)は所定条件(±45cent以内)を満たす。
【0062】
同様の処理を行うことにより、第1の判定部300は、音名N2-2~N2-4それぞれが、歌唱区間Sのコード情報に対応するコード構成音の音名と一致すると判定する。また、第1の判定部300は、差分値D2-2~D2-4がいずれも所定条件(±45cent以内)を満たすと判定する。
【0063】
第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合(ステップ15でYの場合)、評価部400は、楽曲Xの採点処理を行う際に加点処理を行う(加点処理。ステップ16)。
【0064】
上述の通り、差分値D1-1~D1-4及び差分値D2-1~D2-4それぞれが所定条件を満たすと判定されたとする。この場合、評価部400は、たとえば歌唱区間Sの採点値に対して予め決められた点数を加算する。
【0065】
カラオケ装置Kは、楽曲Xのカラオケ演奏が終了するまで(ステップ17でYの場合)、ステップ11からステップ16の処理を繰り返し行う。なお、ステップ11、ステップ14、ステップ15でNの場合(すなわち、ビブラート歌唱が行われていない場合、またはビブラート歌唱が適切に行われていない場合)、評価部400は、加点処理を行わず、通常の採点処理のみを行う。また、楽曲X全体に対して加点処理を行う場合、評価部400は、カラオケ演奏が終了した後、ステップ16の処理を行う。
【0066】
以上から明らかなように、本実施形態に係るカラオケ装置Kは、利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する特定部100と、特定された第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める算出部200と、第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する第1の判定部300と、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う評価部400と、を有する。
【0067】
第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、ある歌唱区間において設定されたコードに沿ったビブラート歌唱が行われていると判定できる。また、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たす場合、自然なビブラート歌唱(コード構成音と比較して極端に高いまたは低い音高ではないビブラート歌唱)が行われていると判定できる。ここで、本実施形態に係るカラオケ装置Kによれば、第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するコード構成音の音名と一致する場合、且つ第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たす場合にのみ、ビブラート歌唱による加点処理を行う。すなわち、本実施形態に係るカラオケ装置Kによれば、ビブラート歌唱を適切に評価することができる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、図6から図9を参照して、第2実施形態に係るカラオケ装置について説明する。本実施形態では、コード構成音の代わりにスケール構成音を用いる例について述べる。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0069】
==カラオケ装置==
[記憶手段]
記憶手段10aは、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置である。記憶手段10aは、楽曲データを記憶する。
【0070】
また、本実施形態において、各コード情報には、スケール構成音が対応付けられている。たとえば、コード情報「Am」には、音名「A0」、「B0」、・・・・「E4」、「F#4」、「G#4」、・・・・「B7」、「C8」のスケール構成音が対応付けられている(図7参照)。なお、スケールは、メロディックスケール、ハーモニックスケール、ナチュラルスケール等、楽曲毎に設定されている。
【0071】
[制御手段]
本実施形態においてはCPUがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより、制御手段10eは、特定部100、算出部200、第2の判定部500、及び評価部400として機能する(図6参照)。
【0072】
(第2の判定部)
第2の判定部500は、第1の周波数と第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合、且つ第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0073】
所定音程は、第1の周波数と第2の周波数との差分値を判定するための条件である。所定音程は、たとえば短三度(300centに相当)、長二度(200centに相当)のように、予め一の値が設定される。第1の周波数と第2の周波数との差分値の算出は、は、第1の差分値及び第2の差分値を求める際に利用可能な手法と同様の手法を用いることができる。
【0074】
第2の判定部500は、算出部200が求めた第1の周波数と第2の周波数との差分値を算出し、当該差分値が所定音程以上であるかどうかを確認する。また、第2の判定部500は、ある歌唱区間のコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているスケール構成音の音名の中に、第1の周波数の音名と一致する音名があるかどうかを確認する。更に、第2の判定部500は、ある歌唱区間のコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているスケール構成音の音名の中に、第2の周波数の音名と一致する音名があるかどうかを確認する。
【0075】
第1の周波数と第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合、且つ第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名それぞれが、ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、第2の判定部500は、第1の差分値が所定条件を満たすかどうか、及び第2の差分値が所定条件を満たすかどうかを判定する。第2の判定部500は、判定結果を評価部400に出力する。
【0076】
なお、算出部200により求められた複数の第1の周波数(または複数の第2の周波数)のうち、少なくとも一部の値が異なる場合もありうる。この場合、第2の判定部500は、時系列に連続する第1の周波数と第2の周波数との差分値を求め、全ての差分値が所定音程以上であるかどうかを判定する。或いは、この場合、第2の判定部500は、複数の差分値のうち、所定割合以上(たとえば、全体の半数以上)が、所定音程以上であるかどうかを判定してもよい。
【0077】
==カラオケ装置Kの動作について==
次に、図8及び図9を参照して本実施形態におけるカラオケ装置Kの動作の具体例について述べる。図8は、カラオケ装置Kの動作例を示すフローチャートである。なお、この例では、音名「A4」に対応付けられた周波数の値が440Hzであるとする。また、所定音程として、短三度(300centに相当)が設定されているとする。また、第1の差分値の所定条件として「±30cent以内」が設定され、第2の差分値の所定条件として「±45cent以内」が設定されているとする。
【0078】
カラオケ装置Kは、ステップ20からステップ23において、第1実施形態で説明したステップ10からステップ13と同様の処理を行う。
【0079】
この例では、ビブラート歌唱が検出された楽曲Xの歌唱区間Sにおいて、4つの第1のピーク周波数PF3―1(590Hz)、PF3-2(595Hz)、PF3-3(580Hz)、PF3-4(585Hz)、及び4つの第2のピーク周波数PF4-1(430Hz)、PF4-2(443Hz)、PF4-3(446Hz)、PF4-4(436Hz)が特定されたとする。
【0080】
また、この例では、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF3-1と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、その値が最も近似する周波数(ここでは587.330Hz)を第1の周波数F3-1として求める。そして、算出部200は、第1の周波数F3-1が対応付けられた音名N3-1(ここではD5)を特定する。同様に、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF3-2~PF3-4と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、それぞれの値が最も近似する周波数を第1の周波数F3-2~F3-4として求める。そして、算出部200は、第1の周波数F3-2~F3-4が対応付けられた音名N3-2~N3-4を特定する(図9参照)。
【0081】
その後、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF3-1(590Hz)と、求めた第1の周波数F3-1(587.330Hz)との差分値D3-1(ここでは+7.853cent)を算出する。同様に、算出部200は、特定された第1のピーク周波数PF3-2~PF3-4と、求めた第1の周波数F3-2~3-4との差分値D3-2~D3-4を算出する(図9参照)。差分値D3-1~D3-4は、「第1の差分値」に相当する。
【0082】
また、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF4-1と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、その値が最も近似する周波数(ここでは440Hz)を第2の周波数F4-1として求める。そして、算出部200は、第2の周波数F4-1が対応付けられた音名N4-1(ここではA4)を特定する。同様に、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF4-2~PF4-4と、各音名に対応付けられた周波数とを比較し、それぞれの値が最も近似する周波数を第2の周波数F4-2~F4-4として求める。そして、算出部200は、第2の周波数F4-2~F4-4が対応付けられた音名N4-2~N4-4を特定する(図9参照)。
【0083】
その後、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF4-1(430Hz)と、求めた第2の周波数F4-1(440Hz)との差分値D4-1(ここでは-39.800cent)を算出する。同様に、算出部200は、特定された第2のピーク周波数PF4-2~PF4-4と、求めた第2の周波数F4-2~4-4との差分値D4-2~D4-4を算出する(図9参照)。差分値D4-1~D4-4は、「第2の差分値」に相当する。
【0084】
第1の周波数と第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合(ステップ24でYの場合)、且つ第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合(ステップ25でYの場合)、第2の判定部500は、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する。
【0085】
たとえば、図9の例において、第2の判定部500は、第1の周波数F3-1と第2の周波数F4-1との差分値を求め、所定音程と比較する。この例において、差分値は500cent(完全四度)となるため、所定音程(300cent)以上の条件を満たす。
【0086】
次に、第2の判定部500は、歌唱区間Sのコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているスケール構成音の音名の中に、第1の周波数F3-1の音名N3-1(D5)と一致する音名があるかどうかを確認する。
【0087】
ここで、歌唱区間Sのコード情報が「Am」であるとする。この場合、コード情報「Am」には、図7に示したスケール構成音が対応付けられている。よって、第2の判定部500は、音名N3-1(D5)が、歌唱区間Sのコード情報に対応するスケール構成音の音名(D5)と一致すると判定する。
【0088】
この場合、第2の判定部500は、第1のピーク周波数PF3-1と、第1の周波数F3-1との差分値D3-1が所定条件を満たすかどうかを判定する。この例において、差分値D3-1(+7.853cent)は所定条件(±30cent以内)を満たす。
【0089】
同様の処理を行うことにより、第2の判定部500は、音名N3-2~N3-4それぞれが、歌唱区間Sのコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致すると判定する。また、第2の判定部500は、差分値D3-2~D3-4がいずれも所定条件(±30cent以内)を満たすと判定する。
【0090】
一方、第2の判定部500は、歌唱区間Sのコード情報を参照し、当該コード情報に対応付けられているスケール構成音の音名の中に、第2の周波数F4-1の音名N4-1(A4)と一致する音名があるかどうかを確認する。
【0091】
ここで、歌唱区間Sのコード情報は「Am」である。よって、第2の判定部500は、音名N4-1(A4)が、歌唱区間Sのコード情報に対応するスケール構成音の音名(A4)と一致すると判定する。
【0092】
この場合、第2の判定部500は、第2のピーク周波数PF4-1と、第2の周波数F4-1との差分値D4-1が所定条件を満たすかどうかを判定する。この例において、差分値D4-1(-39.800cent)は所定条件(±45cent以内)を満たす。
【0093】
同様の処理を行うことにより、第2の判定部500は、音名N4-2~N4-4それぞれが、歌唱区間Sのコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致すると判定する。また、第2の判定部500は、差分値D4-2~D4-4がいずれも所定条件(±45cent以内)を満たすと判定する。
【0094】
第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合(ステップ26でYの場合)、評価部400は、楽曲Xの採点処理を行う際に加点処理を行う(加点処理。ステップ27)。
【0095】
上述の通り、差分値D3-1~D3-4及び差分値D4-1~D4-4それぞれが所定条件を満たすと判定されたとする。この場合、評価部400は、たとえば歌唱区間Sの採点値に対して予め決められた点数を加算する。
【0096】
カラオケ装置Kは、楽曲Xのカラオケ演奏が終了するまで(ステップ28でYの場合)、ステップ21からステップ27の処理を繰り返し行う。なお、ステップ21、ステップ24、ステップ25、ステップ26でNの場合(すなわち、ビブラート歌唱が行われていない場合、またはビブラート歌唱が適切に行われていない場合)、評価部400は、加点処理を行わず、通常の採点処理のみを行う。また、楽曲X全体に対して加点処理を行う場合、評価部400は、カラオケ演奏が終了した後、ステップ27の処理を行う。
【0097】
以上から明らかなように、本実施形態に係るカラオケ装置Kは、利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声に基づいて、楽曲のある歌唱区間においてビブラート歌唱が検出された場合、当該ビブラート歌唱における山を示す周波数である少なくとも一つの第1のピーク周波数と、ビブラート歌唱における谷を示す周波数である少なくとも一つの第2のピーク周波数とを特定する特定部100と、特定された第1のピーク周波数に最も近似する第1の周波数の音名、及び当該第1のピーク周波数と当該第1の周波数との第1の差分値を求め、且つ特定された第2のピーク周波数に最も近似する第2の周波数の音名、及び当該第2のピーク周波数と当該第2の周波数との第2の差分値を求める算出部200と、第1の周波数と第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合、且つ第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすかどうかを判定する第2の判定部500と、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たすと判定された場合、楽曲の採点処理を行う際に加点処理を行う評価部400と、を有する。
【0098】
第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、楽曲のスケールに沿ったビブラート歌唱が行われていると判定できる。また、第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たす場合、自然なビブラート歌唱(スケール構成音と比較して極端に高いまたは低い音高ではないビブラート歌唱)が行われていると判定できる。さらに、第1の周波数と第2の周波数との差分値が所定音程以上である場合にのみ判定を行うので、特に不自然に感じられ易い音高の変化が大きいビブラート歌唱を考慮した評価を行うことができる。ここで、本実施形態に係るカラオケ装置Kによれば、第1の周波数の音名及び第2の周波数の音名が、ある歌唱区間のコード情報に対応するスケール構成音の音名と一致する場合、且つ第1の差分値及び第2の差分値それぞれが所定条件を満たす場合にのみ、ビブラート歌唱による加点処理を行う。すなわち、本実施形態に係るカラオケ装置Kによれば、ビブラート歌唱を適切に評価することができる。
【0099】
<変形例>
上記実施形態の例において、評価部400は、加点処理として、採点処理により得られた採点値に対し、第1の差分値、及び/または第2の差分値に基づいて算出した点数を加点することができる。
【0100】
具体的に、評価部400は、第1の差分値の絶対値の平均値をx1とした場合に、得点y1(=0.5×(1-x1/z1))を加点し、第2の差分値の絶対値の平均値をx2とした場合に、得点y2(=0.5×(1-x2/z2))を加点することができる。すなわち、一のビブラート歌唱において第1のピーク周波数と第2のピーク周波数の全てがコード構成音(またはスケール構成音)の周波数と完全に一致した場合に、最高得点として「1.0」が加点される。z1は、第1の差分値に対応する所定条件の絶対値である。z2は、第2の差分値に対応する所定条件の絶対値である。
【0101】
たとえば、第1実施形態において、第1の差分値の絶対値の平均値x1は、15.728centとなる。また、第2の差分値の絶対値の平均値x2は、22.706centとなる。また第1の差分値に対応する所定条件の絶対値z1は「30」であり、第2の差分値に対応する所定条件の絶対値z2は「45」である。よって、得点y1は「0.238」となり、得点y2は「0.248」となる。
【0102】
評価部400は、たとえば、楽曲X全体の採点値(85点)に対し、歌唱区間Sのビブラート歌唱による得点(0.486=0.238+0.248)を加点し、85.486点という採点値を算出することができる。
【0103】
なお、評価部400は、得点y1及び得点y2の一方のみ(たとえば、値が大きい方のみ)を加点してもよい。また、第1の差分値及び第2の差分値の少なくとも一方が所定条件を満たさないと判定された場合、所定条件を満たさない差分値に基づく得点は負の値を示す。この場合、評価部400は、たとえば楽曲全体の採点値に対し、負の値を示す得点を加算(すなわち、減点)してもよい。
【0104】
<その他>
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100 特定部
200 算出部
300 第1の判定部
400 評価部
500 第2の判定部
K カラオケ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9