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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】建築物の設計方法および建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20250227BHJP
   E04B 1/04 20060101ALI20250227BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20250227BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
E04B1/24 A
E04B1/04 J
E04B2/56 632D
E04B1/348 H
E04B1/348 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021182190
(22)【出願日】2021-11-08
(65)【公開番号】P2023069938
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2024-06-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)施行による公開 公開日 2020年11月9日 施工場所 愛媛県松山市御幸1丁目513-1 (2)ウェブサイト1による公開 掲載日 (1) 2020年11月9日 (2) 2020年12月8日 (3-1,3-2) 2021年5月21日 ウェブサイトのURL トップページ(T1):https://www.matsuyama-u.ac.jp 発明の掲載ページ: (1) https://www.matsuyama-u.ac.jp/topics/topics-205861/ (2) https://www.matsuyama-u.ac.jp/guide/campus/miyuki/ (3-1) https://www.matsuyama-u.ac.jp/topics/topics-210206/ (3-2) https://www.d-pam.com/matsuyama-u/217505/index.html#target/page_no=1 (3)ウェブサイト2による公開 掲載日 2021年3月1日 ウェブサイトのURL トップページ(T2):https://shingaku.mynavi.jp/shikoku/ 発明の掲載ページ:https://shingaku.mynavi.jp/gakkou/2665/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (4)ウェブサイト3による公開 掲載日 2021年2月初旬 ウェブサイトのURL トップページ(T3):https://manabi.benesse.ne.jp 発明の掲載ページ:https://manabi.benesse.ne.jp/daigaku/school/3852/index.html (5)ウェブサイト4による公開 掲載日 (1) 2021年4月9日 (2) 2020年6月2日 ウェブサイトのURL トップページ(T4):https://www.toli.co.jp 発明の掲載ページ: (1) https://www.toli.co.jp/product/casestudy/case_id/80 (2) https://www.toli.co.jp/ir/pdf/ir_20210602.pdf (6)ウェブサイト5による公開 掲載日 2021年2月26日 ウェブサイトのURL トップページ(T5):https://www.shimz.co.jp 発明の掲載ページ:https://www.shimz.co.jp/works/jp_edu_202010_clubact.html (7)ウェブサイト6による公開 掲載日 2021年5月14日 ウェブサイトのURL トップページ(T6):https://www.daiki-axis.com 発明の掲載ページ:https://www.daiki-axis.com/portfolio/2419/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (8)ウェブサイト7による公開 掲載日 2021年5月20日 ウェブサイトのURL トップページ(T7):https://www.axona-aichi.com 発明の掲載ページ:https://www.axona-aichi.com/projects/archives/442 (9)刊行物 刊行物名 News Letter“TOLI CUBE”82 1頁 発行日 2021年3月31日 発行者名 東リ株式会社 (10)刊行物 刊行物名 東リ株式会社 2021年3月期決算説明会資料 11頁 発行日 2021年5月28日 (11)刊行物 刊行物名 学校法人松山大学 2020年度事業報告書 表紙 発行日 2021年5月 (12)取材による公開 公開日 2020年12月6日 公開場所 学校法人松山大学御幸キャンパス 「クラブ アクティビティ エリア」
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】多喜 茂
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 武浩
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 圭介
(72)【発明者】
【氏名】古城 拓哉
【審査官】岡崎 彦哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-350229(JP,A)
【文献】特開平4-049344(JP,A)
【文献】特開平2-311637(JP,A)
【文献】特開平9-221826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/04
E04B 2/56
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの軸中心間隔が設計上の基準寸法の倍数となるように配置される複数の柱と、当該複数の柱を繋ぐ複数の梁とで構成されるアウトフレームを1つの架構ユニットとして規定する架構ユニット規定工程と、
複数の前記架構ユニットを、互いの梁を共有するように水平方向に連続する任意の位置に配置する架構ユニット配置工程と、
連続する前記架構ユニットの内側の領域に、前記梁に沿って壁部を前記基準寸法の倍数となる長さに設定し、前記壁部で囲まれる閉区画を画定する壁部設定工程と、
前記壁部を前記梁が延設される梁延設方向の寸法が前記基準寸法となる複数の壁区画に区割りする壁部区割り工程と、
前記梁延設方向の寸法が単数または複数の前記壁区画と同一の寸法である複数の壁体を、前記壁区画に割り当てて前記壁部を構成する壁体割当て工程と、
複数の前記架構ユニットにわたって連続するスラブを設定するスラブ設定工程とを実施する建築物の設計方法。
【請求項2】
前記壁体割当て工程では、前記梁延設方向の寸法が単数または複数の前記壁区画と同一の寸法で構成が異なる複数の壁体を、任意の前記壁区画に割り当てる請求項1に記載の建築物の設計方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記壁体を、建築物の基礎に固定された耐震壁とする請求項1または請求項2に記載の建築物の設計方法。
【請求項4】
互いの軸中心間隔が基準寸法の倍数となるように配置された複数の柱と、当該複数の柱を繋ぐ複数の梁とで構成されるアウトフレームを1つの架構ユニットとし、互いの梁を共有するように水平方向に連続して配置された複数の架構ユニットと、
連続する前記架構ユニットの内側の領域に前記梁に沿って配置され、閉区画を画定する壁部と、
複数の前記架構ユニットにわたって連続するスラブとを備え、
前記壁部は、前記梁が延設される梁延設方向の寸法が前記基準寸法となる複数の壁区画に区割りされ、
前記梁延設方向の寸法が単数または複数の前記壁区画と同一の寸法である複数の壁体が前記壁区画に割り当てられ、前記壁部を構成している建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計方法および建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション、集合住宅、寮、部室棟のように、住居や部屋等の複数の閉区画を有する建築物の設計方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-138053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の建築物の設計方法では、建築物のバリエーションごとに柱、梁、壁部の配置や寸法を1から設定しなければないため、設計が煩雑になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、簡易に設計できる建築物の設計方法および建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建築物の設計方法は、互いの軸中心間隔が設計上の基準寸法の倍数となるように配置される複数の柱と、当該複数の柱を繋ぐ複数の梁とで構成されるアウトフレームを1つの架構ユニットとして規定する架構ユニット規定工程と、複数の前記架構ユニットを、互いの梁を共有するように水平方向に連続する任意の位置に配置する架構ユニット配置工程と、連続する前記架構ユニットの内側の領域に、前記梁に沿って壁部を前記基準寸法の倍数となる長さに設定し、前記壁部で囲まれる閉区画を画定する壁部設定工程と、前記壁部を前記梁が延設される梁延設方向の寸法が前記基準寸法となる複数の壁区画に区割りする壁部区割り工程と、前記梁延設方向の寸法が単数または複数の前記壁区画と同一の寸法である複数の壁体を、前記壁区画に割り当てて前記壁部を構成する壁体割当て工程と、複数の前記架構ユニットにわたって連続するスラブを設定するスラブ設定工程とを実施する。
【0007】
本発明によれば、軸中心間隔が基準寸法の倍数となる複数の柱および当該柱を繋ぐ梁を含む架構ユニットを、水平方向に連続する任意の位置に配置し、壁部を基準寸法で区割りした複数の壁区画に、当該壁区画と同一寸法の複数の壁体を割り当てるので、建築物のバリエーションごとに柱、梁、壁部の配置や寸法を1から設定しなくてもよく、建築物を簡易に設計することができる。
【0008】
本発明の建築物の設計方法において、前記壁体割当て工程では、前記梁延設方向の寸法が単数または複数の前記壁区画と同一の寸法で構成が異なる複数の壁体を、任意の前記壁区画に割り当ててもよい。
【0009】
本発明によれば、単数または複数の壁区画と同一の寸法で構成が異なる複数の壁体を、任意の前記壁区画に割り当てるので、建築物のバリエーションごとに異なる複数の壁体を容易に配置することができる。
【0010】
本発明の建築物の設計方法において、少なくとも1つの前記壁体を、建築物の基礎に固定された耐震壁としてもよい。
【0011】
本発明によれば、建築物の基礎に固定された耐震壁を壁体とするので、建築物の耐力を向上させることができる。
【0012】
本発明の建築物は、互いの軸中心間隔が基準寸法の倍数となるように配置された複数の柱と、当該複数の柱を繋ぐ複数の梁とで構成されるアウトフレームを1つの架構ユニットとし、互いの梁を共有するように水平方向に連続して配置された複数の架構ユニットと、連続する前記架構ユニットの内側の領域に前記梁に沿って配置され、閉区画を画定する壁部と、複数の前記架構ユニットにわたって連続するスラブとを備え、前記壁部は、前記梁が延設される梁延設方向の寸法が前記基準寸法となる複数の壁区画に区割りされ、前記梁延設方向の寸法が単数または複数の前記壁区画と同一の寸法である複数の壁体が前記壁区画に割り当てられ、前記壁部を構成している。
【0013】
本発明によれば、前述した建築物の設計方法と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る建築物の正面図。
図2】建築物の斜視図。
図3】建築物の平面図。
図4】(A)は、梁および耐震壁を示す平面図。(B)は、(A)のB-B線矢視図。(C)は、(A)のC-C線矢視図。
図5】(A)は、耐震壁を示す図。(B)は、(A)のB-B線矢視図。(C)は、(A)のC-C線矢視図。
図6】(A)は、基礎および耐震壁を示す正面図。(B)は、(A)のB-B線矢視図。
図7】スラブおよび梁通しパネルを示す図。
図8】建築物の設計方法を示すフローチャート。
図9】建築物の設計方法を示す図。
図10】建築物の設計方法を示す図。
図11】本発明の第2実施形態に係る建築物の平面図。
図12】本発明の第3実施形態に係る建築物の平面図。
図13】本発明の第4実施形態に係る建築物の平面図。
図14】本発明の変形例に係る建築物の耐震壁を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の記載で方向を示す場合、建築物100を図1に示すように観た場合を基準として記載する。また、第2実施形態以降において、第1実施形態と同じ構成および同様な機能を有する構成には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
[第1実施形態]
図1から図3おいて、建築物100は、互いの軸中心間隔が設計上の基準寸法SDの倍数となるように配置される複数の柱11と、当該複数の柱11を繋ぐ複数の梁12とで構成されるアウトフレームを1つの架構ユニット10とし、複数の架構ユニット10を互いに水平方向に連続する任意の位置に配置したフレーム構造を有している。
建築物100は、架構ユニット10としての架構ユニット10A、10B、壁部20、およびスラブ30を備えている。
【0017】
架構ユニット10A、10Bは、壁部20の外側に配置されたアウトフレーム構造となっている。架構ユニット10A、10Bは、それぞれ平面視で正方形状とされ、4隅の柱11が梁12で接続された構成を有している。
本実施形態の場合、架構ユニット10A、10Bは、前後方向の梁12を共有するように左右方向に連続して配置されるとともに、架構ユニット10Bが架構ユニット10Aに対して後方にずれて配置されている。架構ユニット10A、10Bでは、互いの梁12を共有するために、架構ユニット10Aの2本の柱11の間に架構ユニット10Bの1本の柱11が配置されている。このため、共有される梁12が梁12Aに分割され、当該梁12Aが架構ユニット10Aの2本の柱11と、当該柱11の間に配置される架構ユニット10Bの1本の柱11とを接続している。
【0018】
柱11は、断面略正方形状の角形鋼管で構成され、基礎40から2階の屋根スラブ30Aまで延設されている。
梁12は、H形鋼のフランジ間の空間を覆うように、当該フランジに平鋼が溶接された構成とされている(図4(B)、(C)参照)。
【0019】
壁部20は、連続する架構ユニット10A、10Bの内側に梁12に沿って配置され、当該壁部20で囲まれる閉区画CSを画定する。壁部20は、耐震壁21、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25を備えている。
壁部20には、建築物100の内外を仕切る外壁部20Aと、架構ユニット10A、10Bの閉区画CS間を仕切る内壁部20Bとがある。本実施形態の場合、外壁部20Aは、内壁部20Bとの接続部分が梁通し用パネル25で構成され、内壁部20Bは、梁12Aの下方に当該梁12Aに沿って配置された複数のALCパネル22で構成される。
【0020】
耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25は、壁部20を構成する壁体であり、それぞれ構成および機能が異なっている。また、耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25は、壁部20を梁12が延設される方向(以下、梁延設方向という)の寸法が基準寸法SDとなる複数の壁区画に区割りしたときに、梁延設方向の寸法が1つの壁区画と同一の寸法を有している。
【0021】
図4(A)~(C)に示すように、耐震壁21は、ウェブ211およびフランジ212を備えた断面略H形の鋼材で構成されている。本実施形態の場合、2つの耐震壁21が並んで配置され、互いのフランジ212が略L字形状のブラケット213を挟んでボルト接合されている。
フランジ212は、ウェブ211の一方の面および他方の面の両端部からそれらの面外方向に突出し、一方の面側よりも他方の面側の方で突出量が大きくなっている。フランジ212の上面には、当該上面から上方に突出するとともに、ウェブ211の一方の面側に延出した略L字形状のブラケット214が設けられている。
ブラケット213、214は、梁12の上面に設けられたブラケット121にボルト接合され、これによって耐震壁21の上端部が梁12に接合される。
【0022】
図5(A)に示すように、耐震壁21は、建築物100の1階から2階に上下に連続して設けられ、建築物100の基礎40から1階の床スラブ30B、2階の床スラブ30Bを貫通し、2階の屋根スラブ30Aまで延びている。耐震壁21には、スタッドジベル215が設けられ、耐震壁21におけるスタッドジベル215の周辺部がスラブ30や基礎40に埋め込まれている。耐震壁21の上端部は、図5(B)に示すように、2階の屋根スラブ30Aに埋め込まれている。耐震壁21の2階の床スラブ30Bに埋め込まれた部分は、図5(C)に示すように、互いにボルト接合されたブラケット121、216を介して梁12に接合されている。
【0023】
図6(A)、(B)に示すように、耐震壁21の下端部は、基礎梁41に無収縮モルタル42を挟んでアンカーボルト43で固定したベースプレート44に支持されるとともに、基礎梁41から1階の床スラブ30Bまで打ち増したコンクリートで根巻いている。当該耐震壁21のウェブ211の下端部には、アンカーボルト43との干渉を防ぐための切欠部217が設けられるとともに、補強リブ218が設けられている。また、ベースプレート44の上面には、ベースプレート44から上方に突出した裏当て金441が設けられ、当該裏当て金441に耐震壁21のフランジ212が位置決めされて溶接されている。
【0024】
ALCパネル22、サッシ窓23、および扉24は、スラブ30に埋め込まれた埋込みアンカーに上端部および下端部が固定されている。
サッシ窓23は、スラブ30に固定された固定窓23Aと、引き窓23Bとを備えている。
扉24は、例えば、開き戸、引き戸、折戸などであるが、本実施形態では引き戸で構成されている。
【0025】
図7(A)に示すように、梁通し用パネル25は、溶融亜鉛メッキを施したスチールパネル251で囲まれた空間にロックウール252が充填された構成とされている。梁通し用パネル25の下端部は、スラブ30に形成された溝31内で取付金具253を介してスラブ30に固定され、溝31内には、コンクリートやモルタルが充填される。梁通し用パネル25の上端部は、スラブ30に設けられたオールアンカー32に取付金具254を介して固定されている。
また、図7(B)に示すように、梁通し用パネル25の上端部には、梁12を通すための切欠部255が設けられ、切欠部255を含む梁通し用パネル25の上端部と梁12との隙間は、シール部材256で塞がれている。
【0026】
スラブ30は、架構ユニット10A、10Bにわたって連続して設けられ、平面視で架構ユニット10A、10Bの各辺から外側に同じ寸法だけ張り出した形状とされている。スラブ30には、屋根スラブ30Aと床スラブ30Bとがあり、2階の床スラブ30Bの一部はバルコニー50とされ、柵状の手すり51が設置されている。なお、図1では、手すり51が簡略化され、その外枠のみが示されている。
【0027】
以下、建築物100の設計方法について、図8のフローチャートに沿って、図8、9を参照しつつ説明する。
先ず、図8のステップST1において、軸中心間隔が基準寸法SDの倍数となるように配置される複数の柱11を梁12で繋いたアウトフレームを、1つの架構ユニット10として規定する(ステップST1、架構ユニット規定工程)。この際、架構ユニット10の平面形状や、架構ユニット10における柱11の数、太さ、長さ、軸間距離や、梁12の数、太さ、長さを任意に設定する。本実施形態の場合、例えば、基準寸法SDを600mmに設定するとともに、柱11の軸中心間隔を基準寸法SDの9倍となる5400mmに設定し、平面視で架構ユニット10A、10Bが正方形状となるように、4本の柱11を正方形状の4隅に配置する。なお、基準寸法SDは、架構ユニット10を規定する過程で設定されてもよいし、架構ユニット10を規定する前に予め設定されてもよい。
【0028】
次に、図9に示すように、複数の架構ユニット10A、10Bを、互いの梁12を共有するように水平方向に連続する任意の位置に配置する(ステップST2、架構ユニット配置工程)。図9では、梁12を分割した複数の梁12Aのうちの1本を共有するように、架構ユニット10A、10Bを配置している。
【0029】
次いで、図10に示すように、連続する架構ユニット10A、10Bの内側の領域に、梁12に沿って壁部20を基準寸法SDの倍数となる長さに設定し、壁部20で囲まれる閉区画CSを画定する(ステップST3、壁部設定工程)。この時点では、壁部20をどのような部材で構成するか決まっていなくてもよく、壁部20の配置が決まればよい。図10では、平面視で梁12から基準寸法SDを0.5倍した0.5SD離れた位置に壁部20を配置している。
【0030】
次に、壁部20を梁延設方向の寸法が基準寸法SDとなる複数の壁区画に区割りする(ステップST4、壁部区割り工程)。
【0031】
次いで、梁延設方向の寸法が単数または複数の壁区画と同一の寸法で構成が異なる複数の壁体を、任意の壁区画に割り当てて壁部20を構成する(ステップST5、壁体割当て工程)。図10では、耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25を壁体とし、それぞれを1つの壁区画と同一の寸法で構成して図10に示すように配置している。
【0032】
その後、複数の架構ユニット10A、10Bにわたって連続するスラブ30を設定する(ステップST6、スラブ設定工程)。
【0033】
以上のような実施形態によれば、軸中心間隔が基準寸法SDの倍数となる複数の柱11および当該柱11を繋ぐ梁12を含む架構ユニット10を、水平方向に連続する任意の位置に配置し、壁部20を基準寸法SDで区割りした複数の壁区画に、当該壁区画と同一寸法の複数の壁体を割り当てるので、建築物100のバリエーションごとに柱11、梁12、壁部20の配置や寸法を1から設定しなくてもよく、建築物100を簡易に設計することができる。
【0034】
また、壁区画と同一の寸法で構成が異なる複数の壁体を、任意の壁区画に割り当てるので、建築物100のバリエーションごとに異なる複数の壁体を容易に配置することができる。
【0035】
また、建築物100の基礎40に固定された耐震壁21を壁体とするので、建築物100の耐力を向上させることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図11に示すように、本実施形態では、架構ユニット10の数が第1実施形態と相違し、3つの架構ユニット10A、10B、10Cが設けられている。
【0037】
架構ユニット10A、10B、10Cは、前後方向の梁12を共有するように、左右方向に連続して順に配置されるとともに、架構ユニット10Bが架構ユニット10Aに対して後方に、架構ユニット10Cが架構ユニット10Bに対して後方に、それぞれずれて配置されている。架構ユニット10Bは、梁12Aを架構ユニット10A、10Cと共有しており、架構ユニット10Aの2本の柱11および架構ユニット10Cの2本の柱11は、それぞれの柱11の間に配置される架構ユニット10Cの1本の柱11を介して、梁12Aで接続されている。
【0038】
壁部20のうち内壁部20Bは、架構ユニット10A、10Cの閉区画CSと架構ユニット10Bの閉区画CSとを区切る2箇所に設けられている。なお、壁部20における耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25の配置は、第1実施形態と同様のため、第1実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0039】
[第3実施形態]
図12に示すように、本実施形態では、架構ユニット10A、10B、10Cの数や配置、耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25の配置が、第1実施形態と相違する。
【0040】
架構ユニット10A、10B、10Cは、前後方向の梁12を共有するように、左右方向に連続して順に配置されるとともに、架構ユニット10Bが架構ユニット10Aに対して後方に、架構ユニット10Cが架構ユニット10Bに対して前方に、それぞれずれて配置されている。
【0041】
耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25は、第1実施形態と構成が同じで、配置だけが異なるため、第1実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0042】
[第4実施形態]
図13に示すように、本実施形態では、架構ユニット10A、10B、10Cの数や配置、耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25の配置が、第1実施形態と相違する。
【0043】
架構ユニット10A、10Bは、左右方向の梁12を共有するように、前後方向に連続して順に配置されるとともに、架構ユニット10Bが架構ユニット10Aに対して右方にずれて配置されている。一方、架構ユニット10B、10Cは、前後方向の梁12を共有するように、左右方向に連続して順に配置されるとともに、架構ユニット10Cが架構ユニット10Bに対して後方にずれて配置されている。
【0044】
耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25は、第1実施形態と構成が同じで、配置だけが異なるため、第1実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0045】
[変形例]
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、水平方向に連続して配置する架構ユニット10の数は、4つ以上であってもよい。
架構ユニット10の平面形状は、正方形や長方形の矩形、菱形、平行四辺形等の四角形、三角形や5角形以上の多角形であってもよい。
柱11は、角形鋼管、円形鋼管、H形鋼等、どのような形状の鉄製のものでもよい。
梁12は、H形鋼がそのまま使用されてもよいし、H形鋼以外の鋼材が使用されてもよい。
【0046】
壁部20は、耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25の何れか1つまたは何れか複数の壁体で構成されてもよいし、耐震壁21、ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25以外の壁体を備えていてもよい。例えば、壁部20は、壁区画に割り当てられた耐震壁21、扉24、および梁通し用パネル25で構成されてもよい。
外壁部20Aは、平面視で梁12から基準寸法SD離れた位置に配置されてもよいし、基準寸法SDの倍数離れた位置に配置されてもよい。
外壁部20Aは、梁通し用パネル25に代えて、耐震壁21、ALCパネル22、またはサッシ窓23や、これら以外の壁体が梁12に干渉しない高さとされたものが使用され、このような壁体と屋根スラブ30Aとの間がシール部材256で塞がれてもよい。
内壁部20Bは、ALCパネル22に代えて、またはALCパネル22と併用して、耐震壁21およびサッシ窓23の何れか1つの壁体や、これら以外の壁体が使用されてもよい。
壁区画や壁体は、平面視で梁延設方向の寸法が基準寸法SDと同じ寸法とされてもよいし、基準寸法SDの2倍以上の倍数の寸法とされてもよいし、基準寸法SDの0.5倍や1.5倍等の寸法とされてもよい。
壁体は、スラブ30を貫いて複数階にわたって連続するように構成されてもよい。
【0047】
耐震壁21は、H形鋼やコ形の溝形鋼、どのような形状の鉄製のものであってもよく、ウェブ211の厚みを厚くしたり平鋼を重ねてウェブ211を構成したりしてフランジ212を備えていなくてもよいし、フランジ212がウェブ211の一方の面または他方の面側のみに設けられてもよいし、フランジ212が設けられずにブラケット213、214がウェブ211の両端部に設けられてもよい。
耐震壁21の並設数や互いの接合構造は、特に限定されず、耐震壁21が2つ並んで配置されなくてもよいし、耐震壁21が3つ以上並んで配置されてもよいし、耐震壁21同士がボルト接合ではなく溶接によって接合されてもよいし、耐震壁21同士がスラブ30や基礎40に埋め込まれる部分でのみ接合されてもよいし、耐震壁21同士がスラブ30や基礎40に埋め込まれていない部分でのみ接合されてもよいし、スラブ30や基礎40に埋め込まれる部分と埋め込まれない部分との両方で接合されてもよい。また、スラブ30や基礎40に埋め込まれていない部分を接合する場合、耐震壁21のフランジ212に等ピッチPTでボルト孔を設け、図14に示すように、これら全てのボルト孔に挿通したボルト219で耐震壁21同士を接合してもよいし、選択的に一部のボルト孔にのみ挿通したボルト219で耐震壁21同士を接合してもよい。このように、耐震壁21の並設数や互いの接合構造を変えることにより、耐震壁21の剛性を調整することができる。
架構ユニット10の壁区画に割り当てる耐震壁21の数は、特に限定されず、任意に設定することができる。割り当てる耐震壁21の数を変えることで、建築物100の見た目をあまり変えずに、建築物100における平面上の剛性の偏りを容易に解消することができる。
耐震壁21は、建築物100の基礎40に固定されてもよいし、スラブ30に固定されてもよい。
耐震壁21は、建築物100の1階から最上階に上下に連続していなくてもよく、この場合、1階と2階とで耐震壁21の配置が異なっていてもよいし、1階の耐震壁21の上端部が1階の屋根スラブ30A(2階の床スラブ30B)に埋め込まれてもよいし、2階の耐震壁21の上端部が2階の屋根スラブ30Aに、下端部が2階の床スラブ30B(1階の屋根スラブ30A)にそれぞれ埋め込まれてもよい。
耐震壁の材質、形状、設置数は、特に限定されず、例えば、耐震壁を鉄筋コンクリート造や木造としてもよいし、鉄筋コンクリート造の耐震壁を工場で製作(プレキャスト)したり、鉄筋コンクリート造の耐震壁に現場でプレストレスを導入したりしてもよいし、鉄筋コンクリート造または木造の耐震壁を耐震壁21と同じ形状にしてもよいし、耐震壁21とは異なる形状にしてもよい。
【0048】
ALCパネル22、サッシ窓23、扉24、および梁通し用パネル25の何れか1つの壁体または何れか複数の壁体は、基礎40に固定されてもよい。
梁通し用パネル25は、耐震壁21、ALCパネル22、またはサッシ窓23や、これら以外の壁体に梁12を通すための切欠部を設けたものであってもよい。
【0049】
スラブ30は、平面視で架構ユニット10A、10Bの各辺から外側に異なる寸法だけ張り出した形状とされてもよいし、架構ユニット10A、10Bの各辺から外側に張り出さない形状とされてもよい。
【0050】
バルコニー50は、あってもよいし、なくてもよいし、柵状でなく壁状に構成されてもよい。
【0051】
建築物100は、1階建てでもよいし、3階以上の建物でもよい。
【符号の説明】
【0052】
10、10A、10B、10C…架構ユニット、11…柱、12、12A…梁、20…壁部、21…耐震壁(壁体)、22…ALCパネル(壁体)、23…サッシ窓(壁体)、24…扉(壁体)、25…梁通し用パネル(壁体)、30…スラブ、40…基礎、CS…閉区画、SD…基準寸法。
図1
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図14