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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】流体オートサンプラ及び培養器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250227BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20250227BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/26
G01N35/02 A
G01N35/02 D
【請求項の数】 48
(21)【出願番号】P 2021504141
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019026335
(87)【国際公開番号】W WO2019195836
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】62/654,335
(32)【優先日】2018-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520228197
【氏名又は名称】ルマサイト, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ハート
(72)【発明者】
【氏名】コリン ヘバート
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット マッコイ
(72)【発明者】
【氏名】シュウェタ クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フィールド
(72)【発明者】
【氏名】ザカリー エバンズ
(72)【発明者】
【氏名】アダム ラブラーノ
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン ラプマ
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0349387(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0090979(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033543(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0054222(US,A1)
【文献】特開2011-123068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0048392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の試料の自動分析用の装置であって、前記装置は、
液体又は粒子を含む試料の流れを自動化するように構成された、真空システム、圧力ベースのシステム、空気圧システム、ポンプ、蠕動ポンプ、ダイヤフラム、または注射器と、
前記試料をインキュベートするように構成された試料容器と、
混合(680)、試料送達(670)及び圧力調節(660)のための3つの内管を含む外管(650)を含む、流体処理用の構成要素を含む、構成要素のアセンブリと、を含む、装置。
【請求項2】
前記試料は、ポリマー、金属、ガラス又は合金ベースの粒子、生体細胞、植物細胞(藻類細胞など)、原核細胞(細菌)、真核細胞、酵母、真菌、カビ細胞、赤血球、ニューロン、卵細胞(卵子)、精子、白血球、好塩基球、好中球、好酸球、単球、リンパ球、マクロファージ、血小板、小胞、エキソソーム、間質細胞、スフェロイドなどの多細胞構成体、間葉細胞及び誘導多能性幹細胞(iPSC)のほか、核、ミトコンドリア又は葉緑体をはじめとする亜細胞成分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記自動分析は、光学力ベースの測定、レーザ力細胞診、自動顕微鏡法、キャピラリー電気泳動、単一細胞液滴マイクロ流体工学、単一細胞ゲノミクス、配列決定装置、質量分析及び核酸又はタンパク質の分析、増幅又は修飾を実行するように構成される機器によって実行される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記構成要素のアセンブリは、X、Y及びZ次元のモータ、真空と正圧の適用を制御するスイッチ、マイクロ流体管材、ウェルプレートブロック、電子圧力制御器、温度制御を備える場合と備えない場合がある空気圧又は流体混合装置、前記試料容器用の温度制御ユニット、前記試料容器又は他のシステム構成要素を平行移動させるか搬送するための機械的構成要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記試料は、単一ウェル、単一バイアル又はマルチウェルプレートに存在する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記試料容器に対してシールを形成するように構成された封止面またはガスケットと、前記シールを貫通して前記試料のヘッドスペース及び液体にアクセスする構成要素をさらに具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記流体処理用の構成要素は、マイクロ流体管材又はウェルプレートを滅菌するように構成された光源を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記流体処理用の構成要素は、さらに、
前記試料容器に流体的に接続された1つ又は複数の目的容器への接続具と、
制御された方法で前記試料容器に流体を出し入れするための1つ又は複数の別個のシステムと、を具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
弁を使用して、流体を前記内管のうちの1つ又は複数に優先的に駆動するか、流体が前記内管のうちの1つ又は複数に入るのを防止する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
流体を移動させるための前記1つ又は複数の別個のシステムは、真空システム、圧力ベースのシステム又は蠕動ポンプ、ダイヤフラム、注射器又は他のタイプなどのポンプを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記流体処理用の構成要素は、前記試料容器又はその区画に対して気密シールを作成するマニホールド内に位置する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記外管は、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、ガラス/毛細管又は他の材料から構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記内管は、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、ガラス/毛細管又は他の材料から作成される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記内管は、継手、鞘、口金又は他のハウジングなどのコネクタを使用して可逆的な方法で前記外管に接続されるか、糊、エポキシ、セメント又は他の接着剤の使用を介して恒久的な方法で外管に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記外管及び内管は、ステレオリソグラフィ、デジタル光処理、熱溶解積層法、選択的レーザ焼結、選択的レーザ溶融、電子ビーム溶融、積層物体製造、結合剤噴射、材料噴射又は他の技術などの3D印刷をはじめとする積層造形技術を使用することにより、1つ又は複数の材料タイプの単一部品として製造される、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記外管及び内管は、レーザパターニング及びフッ化水素酸(HF)又は水酸化カリウム(KOH)のエッチング及び接合プロセスを使用してガラスから製造される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記内管は、前記システム内の前記試料容器又は他の容器に送達することができる流体の1つ又は複数のリザーバに接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
送達された前記流体は、前記装置内で増殖している付着細胞を分離するために使用される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記試料容器は、バイアル又は6個、12個、24個、48個、96個、192個、288個、384個、1536個又は任意の特注の数のウェルを備えるウェルプレートを具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記外管は、前記試料容器の底面から細胞を機械的に掻き落とすことができる、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記外管は、硬質又は軟質のプラスチック、金属、セラミックから作成された楔形状、ウェーハ形状、舌形状又は他の形状の取付具を有し、前記試料容器の底面から細胞を機械的に掻き落とすことができる、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記内管のうちの1つ又は複数が、気泡を前記システムの管材から1つ又は複数の容器又は流体貯蔵部に押し出すのに充分なほど高い最大圧力で貯蔵部に接続されている、請求項10に記載の装置。
【請求項23】
流量計などの流れを監視するための機構をさらに具備する、請求項8に記載の装置。
【請求項24】
前記流れを監視するための機構は、前記システムに接続された前記試料容器又は他の任意の容器又は入れ物に出し入れされる流体の量を計算するために使用される流量計を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記試料を滅菌することは、1つ又は複数の光源からの紫外線によって前記装置内に滅菌野を作成することを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項26】
前記1つ又は複数の光源は、紫外線(UV)殺菌ランプ、UV-A、UV-B、UV-C、発光ダイオード(LED)、レーザ、あるいは紫外線又は他の広い波長又は狭い波長の他の光源を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
光を1つ又は複数の特定の領域又は表面に包含するか、方向付けるか、反射するために、構造又は表面を使用する、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記1つ又は複数の光源は、前記装置内の静的構成要素に取り付けられる、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記1つ又は複数の光源は、前記装置内の可動構成要素に取り付けられる、請求項25に記載の装置。
【請求項30】
前記装置は、前記試料容器に対してシールを形成するように構成された封止面またはガスケットをさらに具備し、前記シールは、ゴム、ポリマー、シリコン、Viton(商標)、プラスチック又は他の任意の適切な材料から作成された気密シールを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
前記流体処理用の構成要素の前記外管は前記気密シールを突き刺すことができる、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記シールと接触する前記外管の端部は、尖っていないか、斜めに切断されるか、あるいは他の方法でシールの容易な貫通を可能にするように構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
空気及び圧力の変化が前記外管の内側と外側との間を通過することを可能にするために、液体の表面の上に位置して前記シールの下に位置する前記外管の底部の上に穴又は切り欠きがある、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記シールは、前記流体処理用の構成要素の前記外管によって突き刺された後、気密を維持するように構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記試料容器又はその構成要素は、前記試料の上にヘッドスペースを作成する気密シールを有し、前記装置が選択的に、制御された温度、ヘッドスペースのガス濃度及び試料混合の下で前記試料を連続的にインキュベートするように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項36】
前記流体処理用の構成要素の前記外管は前記気密シールを突き刺すことができる、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記シールと接触する前記外管の端部は、尖っていないか、斜めに切断されるか、あるいは他の方法でシールの容易な貫通を可能にするように構成される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
空気及び圧力の変化が前記外管の内側と外側との間を通過することができるようにするために、前記液体の表面の上に位置して前記シールの下に位置する前記外管の底部の上に穴又は切り欠きがある、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
前記シールは、前記流体処理用の構成要素の前記外管によって突き刺された後、気密を維持するように構成される、請求項36に記載の装置。
【請求項40】
前記ヘッドスペースに圧送されたガスが、濾過又は他の適切な手段の結果として、無菌である、請求項35に記載の装置。
【請求項41】
センサを、前記ヘッドスペース又は試料の温度、pH、ガス濃度又は他のパラメータを測定するために実装する、請求項35に記載の装置。
【請求項42】
浮遊細胞を前記試料容器内で増殖させる、請求項35に記載の装置。
【請求項43】
付着細胞が、マイクロキャリア、繊維ベースの膜、ディスク又は他の構造、あるいは培地と混合するか灌流することができる他の適切な成長基質に取り付けられた前記試料容器内で増殖する、請求項35に記載の装置。
【請求項44】
前記試料内の細胞は、機械的手段、磁気的手段、空気圧的手段、流体的手段又は他の手段によって混合される、請求項1に記載の装置。
【請求項45】
前記試料容器は、複数の別個の補助容器から構成される、請求項35に記載の装置。
【請求項46】
各補助容器は、それ自体のヘッドスペース、制御装置及びセンサアレイを有する、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記構成要素のアセンブリは、生化学物質又は他の生物学的成分などの試薬を前記試料に追加するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項48】
前記構成要素のアセンブリは、さらに、
i)機器に送達される液体または粒子の流量を選択するように構成された電子圧力制御器、調整器及び/又は流量計、
ii)前記試料の内容物を混合するように構成された機械的、磁気的、空気圧的、又は流体的な混合システム、
iii)前記試料を加熱及び/又は冷却するように構成された温度制御、
iv)前記試料を滅菌するように構成された1つまたは複数の光源、
v)前記試料容器に対してシールを作成するように構成された封止面又はガスケット、
vi)これらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、1つ又は複数の容器からの自動化されたナノ/マイクロ/ミリ流体試料採取を可能にする装置と、その装置を使用する方法とに関する。容器は、1つのウェル又はバイアルから複数のマルチウェルプレートまでの範囲の容器を含む場合がある。さらに、本明細書で提供される装置は、個々のウェルの内容物を混合し、生物学的調査のための滅菌野を作成し、材料の安定性及び細胞ベースの推移の監視のための温度、二酸化炭素濃度をはじめとする細胞増殖条件などのパラメータを制御することができる。
【背景技術】
【0002】
試料の保管、処理、分析のための自動化システムの使用が増えたことは、自動化の分野での広範な研究につながった。現在の試料採取システムは、試料採取のために試料を保管ゾーンから積み込みゾーンに移動することができるロボットアームと、試料を懸濁状態に保つことができる磁気的又は機械的な攪拌部材と、試料保管温度又は分析温度を調整することができる加熱ゾーン又は冷却ゾーンとから構成される。
【0003】
先行技術には、分析研究のさまざまな分野を包含するいくつかの自動試料採取装置(例えば、液体クロマトグラフィーで使用するための特許文献1(米国特許第4,713,974号明細書))が含まれるが、正確で一貫したナノリットルの流量制御と、充分な試料混合と、試料処理のための信頼性の高い温度制御とが不足しているため、レーザ力細胞診(LFC)を使用する生物学的細胞分析に先行技術を使用することができない。
【0004】
Wilhelmらの特許文献2(米国特許第4,816,730号明細書)には、電子制御ステッピングモータによって駆動される試料保持用の把持機構を備え、垂直運動、水平運動及び回転運動が可能なロボットアームから構成され、複数の物体を処理して移動させる装置の使用が記載されている。Schmidtらの特許文献3(米国特許第6,872,362号明細書)にはさらに、バイアルカップ周りの磁場を変化させるさまざまな異なる方法によって駆動される磁気攪拌棒を備えるように構成されたバイアルカップを有する動力付きオートサンプラの使用が記載されている。そのような先行技術には、試料を移動させて混合する方法が記載されているが、このような方法は、LFC機器を使用する生物学的細胞分析に充分なものではない。必要なのは、空気圧に基づく非接触混合と温度制御された単一ウェル又はマルチウェルプレートブロックの使用による充分な混合と温度維持とによって生物学的細胞の完全性を維持しながら、単一ウェルから複数のマルチウェルプレートまでの範囲の容器の保管、混合及び試料採取を可能にする改良された装置である。
【0005】
一連の積み重ね又は回収を垂直又は水平に可能にする(特許文献4(中国実用新案第204136215号明細書)及び特許文献5(米国特許出願公開第2004/0206419号明細書))か、積み込み及び積み降ろし用のカセットを利用する(特許文献6(米国特許第9,744,535号明細書))か、プレートのロット全体のマガジン又はタワーラックへの同時積み重ね又は回収を実施する(特許文献7(米国特許第6,086,319号明細書))、ロボット機構を備えた自動ウェルプレート積み重ね又は回収システムが利用可能である。さらに、以前の設計では、ウェルプレートを、積み重ねる順序に関係なく、ランダム(非順次)な方法で保管タワーに積み込むか同タワーから取り外すことができる(特許文献8(米国特許第7,670,555号明細書))。ただし、必要なのは、磁気インターフェースを利用し、そのようなウェルプレートの自動試料採取のための多重分析法と組み合わせて使用することができるウェルプレート培養を可能にする非順次的な方法にて、所望のウェルプレートの特定の自動検出、選択、所望のウェルプレートの保管タワーへの積み重ね又は同タワーからの回収を実現する機能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,713,974号明細書
【文献】米国特許第4,816,730号明細書
【文献】米国特許第6,872,362号明細書
【文献】中国実用新案第204136215号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0206419号明細書
【文献】米国特許第9,744,535号明細書
【文献】米国特許第6,086,319号明細書
【文献】米国特許第7,670,555号明細書
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、1つのウェル又はバイアルから複数のマルチウェルプレートまでの範囲の容器からの自動化された(及び任意選択で培養された)ナノ/マイクロ/ミリ流体試料採取を可能にする装置と、同装置を使用する方法とに関する。さらに、装置は、個々のウェルの内容物を混合し、生物学的調査のための滅菌野を作成し、材料の安定性と細胞ベースの推移の監視のための温度、二酸化炭素濃度をはじめとする細胞増殖条件を制御することができる。
【0008】
さらに具体的には、本明細書に記載の新規な装置は、流量計と協調して使用される電子圧力制御器及び/又は調整器の使用を通じて、ミリ/マイクロ/ナノ流体流量の決定のほか、気泡抜きが含まれるが、ここに挙げたものに限定されない流体監視を達成する。新規な装置は、試料ウェル又はバイアルに小さな気泡を注入するか、電子圧力制御器(EPC)に結合された真空ポンプを使用して試料又は空気を吸引して分配することにより、試料の混合をさらに可能にする。さらに、本発明は、生物学的材料が機器のハウジングを汚染しないことを確実なものにするために、紫外線放射などの手段を使用して、針及びウェルプレート領域周りに滅菌野を作成する能力を有する。装置は、熱電冷却モジュールを使用して試料の温度を制御することにより、試料採取前に試料を任意選択で培養するようにさらに設計される。モジュール間の電流を逆にすることにより、熱電冷却器はこのほか、温度を変更し、必要に応じて試料を加熱するか培養することができる。混合、滅菌及び温度制御を、装置の設定に応じて、別々に実施したり、順番に実施したり、及び/又は同時に実施したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態、「オートサンプラ」の外箱を示す概略図である。
図2図2は、オートサンプラ及び針マニホールドアセンブリの内部動作を示す水平方向の概略図である。
図3図3は、オートサンプラ内の動作ステージを示す上面図である。
図4図4は、Laser Force Cytology機器(Radiance(商標))と連動するオートサンプラを示す概略図である。
図5図5は、自動混合の線図を示す概略図である。
図5A図5Aは、マイクロ流体針設計の実施形態を示す概略図である。
図5B図5Bは、自動試料採取及び混合マニホールドの詳細を示す図である。
図6A-1】図6A-1は、代表的な紫外線滅菌野を示す正面概略図である。
図6A-2】図6A-2は、代表的な紫外線滅菌野を示す側面概略図である。
図6B図6Bは、代表的な紫外線滅菌野を示す概略図であって、滅菌混合及び試料送達のためのシステムを提供する図である。
図6C図6Cは、代表的な紫外線滅菌野を示す概略図であって、滅菌管の詳細を示す図である。
図7A図7Aは、個々のウェルプレート培養器を示す実施形態の概略図である。
図7B図7Bは、個々のウェル又はバイアル培養器を示す図である。
図8図8は、多重化のための搬送構造の実施形態を提供する図である。
図9A図9Aは、マルチプレートロボットハンドラの概略図である。
図9B図9Bは、通常の操作下で取り付けられたプレートと、移動のために取り外されたプレートとを示すマルチプレートロボットハンドラの実施形態を提供する図である。
図10A図10Aは、細胞分離のためのオートサンプラの実施形態の使用を示す概略図であって、容器/バイアルの床に置かれている細胞を示す図である。
図10B図10Bは、細胞剥離のためのオートサンプラの実施形態の使用を示す概略図であって、容器/バイアルの床から除去された/分離された細胞を示す図である。
図11図11は、試薬送達システムの実施形態を示す概略図である。
図12図12は、剥離チップ/アダプタの使用を含む細胞分離方法の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、さまざまな特徴を有する特定の実施形態を参照して説明される。本発明の範囲又は主旨から逸脱することなく、本発明の実施にてさまざまな修正及び変更を施すことができることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、このような特徴が、所与の用途又は設計の要件及び仕様に基づいて、単独で使用されるか、任意の組み合わせで使用され得ることを認識するであろう。当業者であれば、本発明の実施形態のシステム及び装置が本発明の方法のうちのいずれかによって使用することができ、本発明の任意の方法が本発明のシステム及び装置のいずれかを使用して実施することができることを認識するであろう。さまざまな特徴を含む実施形態がこのほか、そのようなさまざまな特徴から構成されるか、基本的に構成され得る。本発明の他の実施形態が、本発明の仕様及び実施を考慮することから当業者には明らかであろう。提供される本発明の説明は、本質的に単なる例示であり、このため、本発明の本質から逸脱しない変形が本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0011】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が、以下の説明に記載されるか図面に示される構成要素の構成の詳細及び配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、さまざまな方法で実施するか実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定を目的とするものと考えるべきではないことを理解されたい。
【0012】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語はいずれも、この技術及び方法論に含まれ、当業者によって一般に理解されるか使用されるであろうものと同じ意味を有する。
【0013】
2018年4月7日に出願された米国仮特許出願番号第62/654,335号をはじめ、本明細書に記載のテキスト及び参考文献は、その全体が組み込まれている。
【0014】
試料の分析を自動化するための新規な装置が本明細書で提供される。この装置では、試料は、バイアル、容器、ウェル、マルチウェルプレートなどに存在する。このほか、そのような装置を使用するための方法が提供される。装置は、本明細書では「オートサンプラ」と呼ばれることがある。特定の実施形態では、オートサンプラは、機械又は手動による分析のために、所望の体積及び/又は所定の体積の試料を取得するために使用されてもよい。例えば、オートサンプラは、マルチウェルプレート、バイアル又は他の容器からナノ/マイクロ/ミリ流体試料を回収するために使用されてもよく、そのような試料は、さまざまな体積であり、さまざまな細胞又は粒子から構成されることがある。次に、オートサンプラは、液体、粒子又は細胞用の流体ベースの機器又はシステム、例えば、レーザ力細胞診(LFC)を使用する機器などによる分析のために、適切な媒体/構成/容器に試料を提示する。
【0015】
図面を参照すると、図1は、オートサンプラ装置(110)の外側の実施形態の概略図を提供する。この装置では、単一又は複数のマルチウェルプレート又はバイアルを、2つに分かれたドア(120)が開いたときに、プレートブロック(216、図2を参照)に積み込むことができる。代替の実施形態では、ドアは、開いたままであるか、単一の格納式又は折り畳み式のドア又は他の開口設計の変形例から構成されてもよい。140は、試料流体が110から410又は他のLFC又は光学に基づく技術に移行するための進入点及び放出点である。
【0016】
図2及び図3に示すように、一実施形態では、図1の120は、(オートサンプラドアを開閉するための)制御器盤によって駆動される2つのモータ(200)を利用して開く。モータは、低摩擦チャネル(214)のドアを摺動させて開くために、歯付きドアラック(212)と噛み合うリングギア(210)を回転させる。試料は、必要に応じて加熱されるか冷却され得る温度制御ブロック(216)に取り付けられたウェルプレートに積み込まれる。
【0017】
針及び針マニホールドアセンブリ(226)は、針(298)及び空気圧接続具(294)を保持する可撓性ポリマー、プラスチック、シリコーン、カーボン又は金属の基部などの適切な材料(目的に応じて任意の代替材料が機能するであろう)と、バイアル又はウェルプレートを封止するための封止面(230)と、良好な封止を容易にするためのバネ式支持構造体(232)と、から構成される。針は、専用の試料及び混合管が、さらに大きな直径の針の外部構造内に収容されているマルチ管設計から構成されてもよい。特定の実施形態では、針は、プレートシールを貫通するための鋭利な端部などの追加の修正を含んでもよい。
【0018】
特定の実施形態では、走行レール(228)が、X軸及びY軸に沿った内部機構の移動を可能にするように位置決めされ、ケーブル搬送装置(296)が、移動中にケーブルの安全な移動を確実なものにするように取り付けられる。X軸には296は描かれていない。追加のモータ又はモータのセット(295)が、送りネジを回してブロック(216)を動かすことにより、Z次元での動きを可能にする。
【0019】
特定の実施形態では、216の温度制御は、熱電冷却(TEC)モジュール及び温度制御盤(310(図3を参照))に接続されたサーミスタを使用して達成されてもよい。温度制御には、試料の加熱又は冷却が含まれることがある。ファン(218)が、ヒートシンク(220)から熱を除去するために、常に動作するか、必要に応じて動作する。216以降の構成要素を、移動するプラットフォームに結合し、216を、X軸、Y軸及びZ軸上のオートサンプラの範囲内で搬送することができる。この動きは、産業用コンピュータ(320)とモータ(340)の組み合わせによって制御される。X軸及びY軸の移動の場合、産業用コンピュータ制御の340は、タイミング滑車(360)を回転させ、ベルトを駆動してガントリープレートを、そのY軸(380)及びX軸(382)に沿って移動させる。Z軸の移動の場合、産業用コンピュータ駆動の340は送りネジ(222)を両方とも包含する。222は、デルリン(Delrin)移動ナット(224)を使用して上下のZ軸運動を生成するために使用される。目的のために任意のトラベルナットを利用することができる。任意の軸の動作制御には、位置フィードバックがある場合とない場合がある。
【0020】
図4は、110と、110の適用のために利用可能な実施形態であるRadiance(商標)機器(410)との間の接合部分を示す。これとは別に、110は、任意のLFC機器、光学力機器、マイクロ流体機器又は他の機器に適用するために変更され得る。一実施形態では、110と他の機器との間の接合部分は、図4に示す通りであり、流体、試料及び電子信号、通信又は他の情報を含むが、ここに挙げたものに限定されない2つの機器間の転送を可能にする。
【0021】
図5は、自動試料採取及び混合システムの実施形態を示す。混合中の試料の完全性を促進するために、試料採取管(530)の底部と(マルチウェルプレートとして示される)試料採取容器の底部との間のZ距離(550)を調整して、空気圧混合システムを試料ごとに微調整することができる。試料採取は、バイアル又はウェルプレート(700)を針マニホールドアセンブリ(226)に対して物理的に移動させるか押し付けることによって達成される。封止面又はガスケット(230)を、針マニホールドアセンブリとウェルプレート(700)又はバイアルとの間に封止を作成するために使用する。次に、バイアル又は試料採取ウェルのヘッドスペース(560)内の圧力を制御することにより、バイアル又は試料採取ウェルに出入りする流量を調整することができる。これは、図5Bに詳細に示すように、内部チャンバ(570)によって可能になる。5Bの側面図に示すように、内部チャンバ(570)は、上部の2カ所と下部の1カ所で開いている。上部の2カ所は、マニホールドが外管(540)と継手(580)とにそれぞれ気密に接続する場所である。下部の1カ所は、マニホールドの底部詳細図に示す、マニホールド(226)の底部にある内部チャンバに接続された追加の開いた場所である。外管(540)は内部チャンバ(570)を通過し、図示のようにマニホールド(226)から突き出て延びる。これにより、試料採取中に外管(540)を試料に沈めることができる。しかし、外管(540)の外径は、内部チャンバ(570)の直径よりも小さいため、ウェルプレート又はバイアルが封止面(230)に押し付けられたときに気密封止を実施することができる。管材(590)が継手(580)を介してマニホールド(226)の上部に気密に取り付けられる。図示のように、管材(590)は、電子圧力制御器又は何らかの代替の圧力源又は真空源(595)に接続される。次に、発生源(595)の圧力を調整することにより、ヘッドスペース560内の圧力を正確に制御することができる。これは1つの特定の実施形態であり、他の実施形態では、必要に応じて、マニホールド内にさらに多くの開口部を有することがあり得ることに留意されたい。混合でも試料採取でも、さらに大きな外側の管又は針(540)を共有する別々の管(それぞれ500と530)を使用する。内管(500及び530)は、必要に応じて、混合又は試料送達を改善するか修正するために、異なる直径又は同一の直径から構成されてもよい。内管と外管の材料は異なっていてもよく、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、ガラス/毛細管、炭素繊維、複合材料又は他の適切な材料で構成されてもよい。内管は、さまざまなコネクタによって外管に接続されてもよい。内管と外管との間のこのようなコネクタは、継手、鞘又は他のハウジングなどの再利用可能なものか、接着剤やエポキシなどの恒久的なものにすることができる。管はこのほか、3D印刷又は他の製造技術を使用して、単一の材料又は複数の材料から構成されてもよい。設計例を図5Aに示す。一実施形態では、真空対応電子圧力制御器(EPC)(520)を、液体が514及び520に入るのを防ぐのに役立つ真空トラップ(512)を含有するマニホールド(510)に直接接続され得る管材に接続する。マニホールド510と真空トラップ512とは、気密封止を形成するように接続され、管材514と管材505との間の空気圧接続を可能にする。管材505は、真空源が弁の反対側のO管材500と、ウェルプレート700又は試料バイアルに包含される試料とから隔離することができるように、弁に接続される。弁は、電磁弁、ピンチ弁、回転弁又はボール弁であり得るが、ここに挙げたものに限定されない。管材は弁の両側で接続され、気密及び液密封止を生じさせる。
【0022】
試料の内容物を混合するために、真空対応のEPC(520)が、最初に、ある長さの管材(514)に負圧を加える。ほぼ同時に(事前に、同時に、あるいは後に)、弁516が開き、陰圧が512、505、516及び500を通って伝播することを可能にし、液体が試料容器から混合管材に引き出されることを可能にする。設定された時間が経過すると、EPCは、液体の流れを逆転させて試料ウェルに戻すために、真空レジーム(PEPC<Patmospheric)から正圧レジーム(PEPC>Patmospheric)に切り替わる。このサイクルは、試料を適切に混合するために1回又は複数回実施されてもよい。試料が完全に混合された時点で、試料は、LFC又は他の機器140によって取り出される。試料は、ヘッドスペース圧力ベースの試料採取方法を利用するか、機器内の真空によって採取することができる。
【0023】
図6Aは、紫外線(UV)殺菌ランプ、発光ダイオード(LED)又は他の光源(610)を所望の電力で所望の距離をあけて利用することによって、110又は他のオートサンプラシステム内に滅菌野を作成する方法を示す。この光源は、所定の間隔、所定の2倍の間隔又は他のさまざまな間隔で取り付けられ、反射遮蔽に取り付けられるか固定された滅菌対象空間又は反射遮蔽の近傍にある滅菌対象空間の背面、前面、側面、上部又は底部に配置される。一実施形態の正面図が図6A-1に示され、上面図及び側面図が図6A-2に示される。滅菌対象領域は、研磨されたアルミニウム又は他の充分に反射性の材料(620)の連続的な配置又は対象を定めた配置によって封じ込めることができる。この遮蔽はこのほか、滅菌対象領域が充分に紫外線に暴露されている間、内部配線をはじめとする構成要素を繰り返し紫外線に暴露することから保護する目的に役立つ。遮蔽はこのほか、特定の場所に紫外線を集束したり、及び/又は反射したりするように設計されたミラー、レンズ又は他の光学要素640の形態であってもよい。紫外線源610は、オートサンプラ110の静的構成要素に取り付けられてもよく、あるいはウェルプレート700と同じプレート又は他の場所に取り付けられて、針アセンブリ226に対する紫外線源の動きを可能にすることができる。さらに、ウェルプレート700はZ軸に沿って移動して、滅菌に好ましい位置を提供してもよい。紫外線源をこのほか、針アセンブリ226を滅菌するためにウェルプレートブロック216に直接組み込む可能性も否定できない。ウェルプレートブロックは、ブロック内に内蔵される紫外線源が針アセンブリを滅菌するように、針アセンブリの下の位置に移動するであろう。追加の構造又は支持要素630を統合して、紫外線源の位置決めを支援することがあり得る。滅菌に必要な電力と時間は、除去する対象のキル因子を達成するために必要なエネルギーを計算することによって決定される。
【0024】
図6Bは、滅菌混合及び試料送達用のシステムを示す。培養器、生物学的安全キャビネット、層流フード又は他の装置からオートサンプラ110への移動中に試料の無菌性を維持するために、ウェルプレートは気密シール632で覆われてもよい。このシールは、ゴム、ポリマー、シリコン、Viton(商標)、プラスチック又は他の任意の適切な材料から作成されてもよい。試料は、培養器内に入ると、針アセンブリ226がウェルプレートの上に位置決めされるため、移動中、密封されたままである。試料採取及び混合中、プレートは、針アセンブリがプレートのシール632を貫通して試料にアクセスするように、Z次元で垂直に移動する(試料採取位置)。一実施形態の別の詳細を図6Cに示す。断面図に見られるように、外管650は、混合(680)、試料送達(670)及び圧力調節(660)のための3つの内管を包含する。外管は、底部にて尖っていなくても、図のように斜めに切断されても、あるいは別の方法でシール632を容易に貫通できるように構成されてもよい。内管は、必要に応じて、混合、試料送達又は圧力調節を改善するか変更するために、異なる直径又は同一の直径で構成されてもよい。内管と外管の材料は異なっていることがあり、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、ガラス/毛細管又は他の材料から構成されてもよい。内管は、さまざまなコネクタによって外管に接続されてもよい。このようなコネクタは、継手、鞘又は他のハウジングなどの再利用可能なものであり得るか、接着剤やエポキシなどの恒久的なものであり得る。内管と外管との間のこの接続により、655で示すように、気密封止が作成される。圧力調節管(660)は、管内の空気の圧力を調節することができる電子圧力制御器に接続される。このほか、管の底部の上方には、空気と圧力の変化が外管の内側と外側との間を通過することができるようにする穴又は切り欠き(657)がある。試料採取位置(試料採取位置は、針の底部が液体の下に沈められ、気密シールを突き刺したときの位置である)では、針アセンブリは、混合管680及び試料送達管670が沈められるようにシール632を突き刺すが、切り欠き657は液体の表面より上方であり、シールの下にある。これにより、密閉された容積675が作成され、その圧力は、圧力調節管660に接続されたEPCによって制御することができる。これにより、試料を試料採取管670内に押し上げることができる。
【0025】
理想的な培養条件下で単一プレートを連続的に培養する能力は、所望の試料採取時間の間、110にて図7Aに示すように存在することができる自己完結型の培養チャンバの組み込みを必要とする。この設計は、X軸とY軸が226周りのプレートの動きに対応することができるさまざまなサイズの複数のウェルプレートに適合されてもよい。ウェルプレート(700)の上部には、プラスチック、プレキシガラス、ガラス又は他の適切な材料から作成されることがあり得る培養チャンバ(720)が取り付けられる。チャンバの上部は、試料採取針で突き刺されるが、気密性を維持し得るシール(710)を有するであろう。チャンバはこのほか、ウェルプレートの縁に沿って封止するために、底縁(715)周りにシールを有してもよい。代替の実施形態では、ウェルプレート700及び培養チャンバは、依然として上部シール710を含むが、下部シール715を必要としないであろう1つの一体型部品に組み合わされてもよい。これにより、細胞増殖のための適切な条件を作り出すために制御され得るヘッドスペース725を作り出すであろう。チャンバの温度制御は、216の温度を調節することによって可能になるのに対して、720内に収まり、無菌性を維持するために市販のHEPAフィルター(740)に適合した管材又はホース(730)を介してCO2がチャンバに圧送される。CO2及びO2を、圧縮ガスボンベ750などの供給源から供給することがあり得る。システムには、pH、溶存ガス(O2、CO2など)代謝物又は他の任意の検出可能な要件を監視するための追加の検知ノードを取り付け得る。細胞が、チャンバ内で増殖し、針アセンブリによって上部シールを突き刺すことによって定期的に試料採取されるであろう。ウェルから細胞を吸い取るための真空ベースのシステム又はいくつかの代替手段を使用してヘッドスペースの全体的な圧力を上げることによって、細胞を試料採取ウェルから移すことがあり得る。
【0026】
浮遊細胞増殖(又は他の任意の目標)を可能にするための試料内容物の混合が、機械的手段、磁気的手段、空気圧的手段、流体的手段又は他の手段によって達成されてもよい。具体的な例には、各ウェル又はバイアル内の磁気床、下、上又は側面から作動する磁気攪拌棒又は羽根車が含まれるが、ここに挙げたものに限定されない。
【0027】
代替の実施形態では、図7Bに示すように、ウェルは、それぞれが独自の個別のチャンバ720を有する別個の容器によって図示のように置き換えられてもよい。ガスを引き続き供給し、細胞増殖の理想的な条件を達成するために温度を制御するであろう。上記と同じ方法で細胞を試料採取することがあり得る。
【0028】
複数のプレートを自動的に試料採取することができる多重化システムを作成するために、1つ又は複数の搬送システムを使用して、図8に示すように、X-Yアレイ(820)の円形(800)又は正方形/長方形のいずれかで基部プレートを支持することができる。多重化されたアレイは、複数の自己培養チャンバを包含するか、全試料が並列又は直列に隣接する、さらに大きな培養チャンバを組み込んでもよい。輪720及び710を使用して、800を組み込むことができる。216に取り付けられた回転ロッド(810)が、機械的動力を介して動かされたときにウェルプレートの円回転を可能にするであろう。このような複数のトレイは、試料採取針にアクセスするために、X軸、Y軸及びZ軸で移動することがあり得る。
【0029】
図9Aは、固定された高さによって分割され、ロボットハンドラと組み合わせて使用することができるマルチプレート保管タワー(900)を示す。ロボットアームは、タワー内の任意の空間でプレートを回収するようにプログラムすることができる(例えば、図の位置1-8では、設計の要求に応じてトレイの数を増減することができる)。このシステムは、オートサンプラの一部として統合されても、オートサンプラの真下に位置しても、オートサンプラに隣接して位置づけられてもよい。ロボットアームは、機械的手段、(電磁石をはじめとする)磁気的手段、電子的手段又は他の手段など、プレートのいずれかを除去するための任意の数の方法を使用することがあり得る。このシステムで使用される個々のウェルプレートは、ロボットシステムと協調して機能するように設計されてもよい。例えば、図9Bに示す一実施形態では、プレートは、2つの隣接する側面に磁石を有する。通常の動作中、磁石910は、プレートを所定の位置に保持するのに役立つ。プレートを動かすために、ロボットアーム920は、プレートをラック内に保持している磁気結合を切断するのに充分な力を提供し、図示のようにプレートを取り外す。その後、プレートをオートサンプラ又は試料採取するための他の装置に移送することができる。一実施形態では、細胞はこのほか、試料採取後にタワーに戻ることがあり得る。付随的に増殖する細胞に対応するために、オートサンプラには、増殖基質の表面から細胞を分離する機能が装備されることになる。この細胞分離法のいくつかの実施形態を図10に示す。システムは、以下の構成要素の一部又は全部から構成されてもよい。液体を、専用の管材又は取り外し可能なチップを使用して、ウェルに出し入れすることができる。細胞をトリプシン、TrypLE(商標)、Accutase(商標)又は他の細胞分離試薬などの試薬で処理した時点で、柔軟なプラスチックの掻き落とし具、薄い金属の刃又は先端に取り付けられたプラスチックの刃のいずれかで物理的に掻き落とし、細胞を完全に除去して懸濁する。これとは別に、液体の流れを使用して細胞を懸濁し、上記の混合システムを含む分析に細胞を利用することができるようにすることで、細胞を除去して再懸濁するために必要な流れを供給することがあり得る。液体を混合システム(図5)によって除去し、次に試薬添加システム(図10)から新しい液体(新鮮なPBS)を添加して、細胞を再懸濁し、破片を洗い流すことがあり得る。ウェルプレートブロック216の温度制御をこのほか、細胞を分離するか再懸濁するのを支援するために使用することがあり得る。添加することがあり得る試薬には、PBS又は他の緩衝材、トリプシン又は他の細胞分離溶液、培地、固定剤、試料(細胞や培地など)、EDTA又は他の任意の目的の液体が含まれる。図11は試薬送達システムを示す。これは、いずれかの電子圧力制御器を使用して、試料を含有するバイアルに分配される液体試薬の上方のヘッドスペースを加圧することによって実現される。これとは別に、蠕動ポンプ、注射器ポンプ又は他のポンプを使用して、試薬の試料バイアル又は入れ物への流れを駆動することがあり得る。オートサンプラ内の別の場所に位置づけられるであろう物理的な細胞分離方法を図12に示す。試料を分析する準備ができた時点で、バイアル又はウェルプレートを図12に示す掻き落とし具に対して全体的に往復するであろう。固定された軟質プラスチック、ゴム又はポリマーの掻き落とし具、薄い金属刃、先端に取り付けられたプラスチック刃に対してウェルプレート又はバイアルブロックを3次元で移動することによって達成される物理的掻き落としのいずれかを使用して、細胞を完全に除去して懸濁することができる。
【0030】
一実施形態では、1つ又は複数の試料の自動分析のための装置が本明細書では提供され、自動分析のプロセスは自動フローを含み、試料は試料容器内の液体又は粒子を含み、装置は、液体及び/又は粒子ベースの機器による分析評価のための1つ(又は複数)の試料の処理を可能にする構成要素のアセンブリを含む。装置は、オートサンプラと呼ばれる場合がある。このほか、そのような装置を使用するための方法が提供される。
【0031】
装置内の自動フローは、真空システム、圧力ベースのシステム、空気圧システム、ポンプ、蠕動ポンプ、ダイヤフラム又は注射器をはじめとする、試料を移動するためのシステムを含んでもよい。一実施形態では、空気圧フローなどの自動フローは、分析される試料の性質、分析される試料の数及び/又は分析評価を実施するために使用される流体及び/又は粒子ベースの機器のタイプを含むが、ここに挙げたものに限定されない分析パラメータに基づいてカスタマイズされてもよい。一実施形態では、供給源から送達までの試料の流量、即ち、装置、機器又はRadiance(商標)などの光学力ベースの機器への送達の場合の流量は、0.01~50□L/分の範囲であってもよい。代替の実施形態では、流量は、0.1~100□L/分、0.5~500□L/分又は2~2000□L/分の範囲であってもよい。試料の流量は、最適な効率と一貫性のために独自にカスタマイズされて調整され、読み取り機器と連携して、迅速で正確な分析評価を容易なものにする可能性がある。
【0032】
一実施形態では、本明細書に記載のオートサンプラ装置によって分析された試料は、ポリマー、金属、ガラス又は合金ベースの粒子、生体細胞、植物細胞(藻類細胞など)、原核細胞(細菌)、真核細胞、酵母、真菌、カビ細胞、赤血球、ニューロン、卵細胞(卵子)、精子、白血球、好塩基球、好中球、好酸球、単球、リンパ球、マクロファージ、血小板、小胞、エキソソーム、間質細胞、スフェロイドなどの多細胞構成体、間葉細胞及び誘導多能性幹細胞(iPSC)のほか、核、ミトコンドリア又は葉緑体などの亜細胞成分を含む場合があるが、ここに挙げたものに限定されない。試料は、合成的に製造されるか、天然資源から得られる場合がある。試料は、涙、唾液、痰、血液、血漿、リンパ液、尿、汗、膿、鼻汁又は精子を含むが、ここに挙げたものに限定されない体液又は身体的物質から得られる場合がある。
【0033】
一実施形態では、流体及び/又は粒子ベースの機器による分析評価には、光学力の測定、レーザ力細胞診、自動顕微鏡法、キャピラリー電気泳動、単一細胞液滴マイクロ流体工学、単一細胞ゲノミクス、配列決定装置、質量分析及び核酸又はタンパク質の分析、増幅又は修飾が含まれるが、ここに挙げたものに限定されない。
【0034】
一実施形態では、構成要素のアセンブリには、X、Y及びZ次元のモータ、限られたスイッチ、マイクロ流体管材、ウェルプレートブロック、流れを達成するために流体全体にわたるヘッドスペース圧力を制御する電子圧力制御器、温度制御を備える場合もあれば備えない場合もある空気圧又は流体混合装置、流体処理用の構成要素、温度制御を備える場合もあれば備えない場合もある試料採取容器、試料採取容器又は他のシステム構成要素を変換するための機械的構成要素を含む場合があるが、ここに挙げたものに限定されない。特定の実施形態では、1つ(又は複数)の試料は、単一ウェル、単一バイアル又はマルチウェルプレートに存在してもよい。試料採取管及び/又はウェルプレートなどの構成要素のアセンブリは、滅菌されてもよい。特定の実施形態では、装置は、試料のヘッドスペース及び液体にアクセスするためにシールを貫通する構成要素をさらに備える。
【0035】
一実施形態では、1つ(又は複数)の試料の処理には、流体及び/又は粒子ベースの機器に送達される液体又は粒子の流量の選択、試料の内容物の混合、試料の培養、試料の加熱、試料の冷却、試料の滅菌、試料を包含するバイアル又はウェルプレートに対する封止の作成、生化学物質などの試薬又は細胞などの他の生物学的成分の試料への一定期間の追加からなる群から選択された活動が含まれる。
【0036】
特定の実施形態では、装置内の流体処理のための構成要素には、試料容器内に収まる外管、外管の直径内に収まる1つ又は複数の個別の内管、試料採取容器に流体的に接続された1つ又は複数の目的容器への接続具、制御された方法で流体を試料採取容器に出し入れするための1つ又は複数の別個のシステムが含まれる。いくつかの実施形態では、弁を使用して、流体を1つ又は複数の内管に優先的に駆動するか、流体が1つ又は複数の内管に入るのを防いでもよく、流体を移動させるためのシステムには、真空システム、圧力ベースのシステム又は蠕動ポンプ、ダイヤフラム、注射器などのポンプが含まれてもよい。特定の実施形態では、流体処理装置は、試料採取容器又はその区画に対して気密封止を作成するマニホールド内に位置する。外管は、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、ガラス/毛細管又は他の材料から構成されてもよい。管は、金属、プラスチック、セラミック、複合材料、ガラス/毛細管又は他の材料から構成されてもよい。いくつかの実施形態では、内管は、継手、鞘、口金又は他のハウジングなどのコネクタを使用して可逆的に外管に接続されるか、エポキシ、セメント又は他の接着剤を使用して恒久的に外管に接続される。いくつかの実施形態では、外管及び内管は、ステレオリソグラフィ、デジタル光処理、熱溶解積層法、選択的レーザ焼結、選択的レーザ溶融、電子ビーム溶融、積層物体製造、結合剤噴射、材料噴射又はその他の技術などの3D印刷をはじめとする積層造形技術の使用を通じて、1つ又は複数の材料タイプの単一部品として製造される。さらに、外管及び内管は、レーザパターン形成及びフッ化水素酸(HF)又は水酸化カリウム(KOH)のエッチング及び結合プロセスを使用してガラスから製造されてもよい。追加の実施形態では、装置の内管は、システム内の試料採取容器又は他の容器に送達することができる流体の1つ又は複数の貯蔵部に接続される。流体は、試料装置内で増殖している付着細胞を分離するために送達されてもよい。試料容器は、バイアル又は6個、12個、24個、48個、96個、192個、288個、384個、1536個又は任意の特注の数のウェルを含むウェルプレートを含んでもよい。
【0037】
一実施形態では、外管は、試料容器の底面から細胞を機械的に掻き落とすことができる(例えば、図12を参照のこと)。例えば、外管は、硬質又は軟質のプラスチック、金属、セラミックから作成された楔形状、ウェーハ形状、舌形状又は他の形状の取付具を有してもよく、試料容器の底面から細胞を機械的に掻き落とすことができてもよい。
【0038】
一実施形態では、内管は、気泡をシステム管材から1つ又は複数の容器又は流体貯蔵部に押し出すのに充分な高さの最大圧力で貯蔵部に接続される。
【0039】
一実施形態では、本発明のオートサンプラによって利用される空気圧は、ユーザの必要に応じて調整されてもよい。例えば、特定の実施形態では、圧力は、0~200psig、0~150psig、1~100psig、1~50psig又は50psigであってもよい。特定の実施形態では、1つ又は複数の内管を通る流れは、流量計を使用して監視される。
【0040】
一実施形態では、装置は、流量計などの流れを監視するための機構をさらに備える。流量計は、システムに接続された試料容器又は他の任意の容器又は入れ物に出入りする流体の量を計算するために使用されてもよい。
【0041】
一実施形態では、試料を滅菌する活動は、紫外線の生成を通じて表面を滅菌することができる1つ又は複数の光源を備える試料採取装置内に滅菌野を作成することを含む。光源は、紫外線(UV)殺菌灯、UV-A、UV-B、UV-C、発光ダイオード(LED)、レーザ、あるいは紫外線又は他の広い波長又は狭い波長の光源であってもよい。一実施形態では、装置は、1つ又は複数の特定の領域又は表面に光を収容するか、方向付けするか、反射するための構造又は表面をさらに備える。光源は、試料採取装置内の静的構成要素に取り付けても、試料採取装置内の可動構成要素に取り付けてもよい。
【0042】
特定の実施形態では、試料を含有するバイアル又はウェルプレートに対するシールには、ゴム、ポリマー、シリコン、Viton(商標)、プラスチック又は他の任意の適切な材料から作成された気密シールが含まれる。流体処理装置の外管は、気密シールを突き刺すことが可能であってもよい。シールと接触する外管は、尖っていなくても、斜めに切断されても、あるいは別の方法で封止を容易に貫通することができるように構成されてもよい。一実施形態では、シールは、流体処理装置の外管によって突き刺された後、気密を維持するように構成される。
【0043】
一実施形態では、穴又は切り欠きを、液体の表面の上に位置してシールの下に位置する外管の底部の上方に位置づけて、空気及び圧力の変化が外管の内側と外側との間を通過することができるようにする。
【0044】
一実施形態では、試料容器又はその構成要素は、試料流体の上方にヘッドスペースを作成する気密シールを有し、制御された温度、ヘッドスペースガス濃度及び試料混合の下で連続的に培養されてもよい。流体処理装置の外管は、気密シールを突き刺すことができてもよく、シールと接触する外管の端部は、尖っていなくても、斜めに切断されても、あるいは別の方法でシールの容易な貫通を可能にするように構成されてもよい。一実施形態では、穴又は切り欠きを、液体の表面の上に位置してシールの下に位置する外管の底部の上方に位置づけて、空気及び圧力の変化が外管の内側と外側との間を通過することができるようにする。シールは、流体処理装置の外管によって突き刺された後、気密を維持するように構成されてもよい。
【0045】
一実施形態では、ヘッドスペースに圧送されたガスは、濾過又は他の適切な手段の結果として無菌であってもよい(図7A及び図7B)。
【0046】
一実施形態では、センサを、ヘッドスペース又は試料容積の温度、pH、ガス濃度又は他のパラメータを測定するために実装する。
【0047】
一実施形態では、浮遊細胞を、1つ又は複数の試料容器で増殖させてもよい。
【0048】
一実施形態では、付着細胞を、マイクロキャリア、繊維ベースの膜、ディスク又は他の構造、あるいは培地と混合するか灌流することができる他の適切な成長基質に取り付けられた1つ又は複数の試料容器で増殖させてもよい。
【0049】
一実施形態では、細胞を、機械的手段、磁気的手段、空気圧的手段、流体的手段又は他の手段によって混合してもよい。
【0050】
一実施形態では、試料容器は、複数の別個の補助容器から構成されてもよい。
【0051】
一実施形態では、各補助容器は、それ自体のヘッドスペース、制御及びセンサアレイを有する。
【0052】
特定の実施形態では、本発明のオートサンプラ装置は、混合及びその後の分析のために1つ又は複数の試薬を試料貯蔵部に送達する特徴をさらに備える。
【0053】
一実施形態では、複数のプレートが多重化システムにて載置されるか構成され、必要に応じてオートサンプラ装置によってアクセスされる。プレートには、必要に応じて、培養、滅菌などを実施してもよい。一実施形態では、装置は、円形、矩形又は他の形態のシステムに複数の別個のプレートを積み込むことに対応するようにさらにカスタマイズされてもよい。ウェルプレートは、自動システムによってマルチプレート保管装置に積み込むことができたり、及び/又はウェルプレートは、機械的手段、磁気的手段、電磁的手段又は他の手段を介してタワーに取り付けられたりしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図5B
図6A-1】
図6A-2】
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12